JP7132566B2 - チキソトロピー性を有するゲルを用いる多層3次元細胞培養足場システム - Google Patents
チキソトロピー性を有するゲルを用いる多層3次元細胞培養足場システム Download PDFInfo
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Description
(1)それぞれ独立した1以上のマイクロ流路を介して、チキソトロピー性を有するゲルから形成されるコア層の材料を含む液に細胞を懸濁した懸濁液と、該コア層の外周部に形成されるシース層の材料を含む溶液と、該シース層の外周部にゲル化剤溶液とを同時に貯留液中に吐出することにより、コア層を囲むゲル化したシース層を積層する工程と、
(2)細胞を培養する工程と、
を含む、3次元細胞培養方法を提供する。
(1)それぞれ独立した1以上のマイクロ流路を介して、チキソトロピー性を有するゲルから形成されるコア層の材料を含む液に細胞を懸濁した懸濁液と、該コア層の外周部に形成されるシース層の材料を含む溶液と、該シース層の外周部にゲル化剤溶液とを同時に貯留液中に吐出し、コア層を囲むゲル化したシース層を積層して、多層3次元細胞培養足場システムを製造するマイクロ流体デバイスと、
(2)細胞を培養するインキュベーターと、
を含む、3次元細胞培養システムを提供する。
本発明の実施形態の1つは、チキソトロピー性を有するゲルから形成されるコア層と、該コア層の外周部にシース層とを有する、多層3次元細胞培養足場システムである。
本発明のもう1つの実施形態は、前記多層3次元細胞培養足場システムを用いて製造される生物学的材料である。該生物学的材料は、前記多層3次元細胞培養足場システムのコア層で細胞を培養することにより製造できる。
本発明のもう1つの実施形態は、前記多層3次元細胞培養システムを用いる3次元細胞培養方法である。
(1)それぞれ独立した1以上のマイクロ流路を介して、チキソトロピー性を有するゲルから形成されるコア層の材料を含む液に細胞を懸濁した懸濁液と、該コア層の外周部に形成されるシース層の材料を含む溶液と、該シース層の外周部にゲル化剤溶液とを同時に貯留液中に吐出することにより、コア層を囲むゲル化したシース層を積層する工程と、
(2)細胞を培養する工程と、
を含むことができる。
本発明のもう1つの実施形態は、多層3次元細胞培養足場システムの製造方法である。
1以上のマイクロ流路から、それぞれ独立したマイクロ流路を介して、チキソトロピー性を有するゲルから形成されるコア層の材料を含む液に細胞を懸濁した懸濁液と、該コア層の外周部に形成されるシース層の材料を含む溶液と、該シース層の外周部にゲル化剤溶液とを同時に貯留液中に吐出することにより、コア層を囲むゲル化したシース層を積層する工程を含む。
本発明のもう1つの実施形態は、3次元細胞培養システムである。
(1)それぞれ独立した1以上のマイクロ流路を介して、チキソトロピー性を有するゲルから形成されるコア層の材料を含む液に細胞を懸濁した懸濁液と、該コア層の外周部に形成されるシース層の材料を含む溶液と、該シース層の外周部にゲル化剤溶液とを同時に貯留液中に吐出し、コア層を囲むゲル化したシース層を積層して、多層3次元細胞培養足場システムを製造するマイクロ流体デバイスと、
(2)細胞を培養するインキュベーターと、
を含むことができる。
コア層液
特開2012-087256号公報に記載の方法に従って作製したセルロースナノファイバー(CNF)(レオクリスタC-2SP)を第一工業製薬株式会社から入手した。前記セルロースナノファイバーは、セルロース繊維成分および水成分を含有する粘性水系組成物であって、セルロース繊維成分の含有量が、粘性水系組成物全体の0.01~5.0wt%の範囲である粘性水系組成物である。前記セルロース繊維の数平均繊維径が2~150nmであって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中の各グルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化変性されてアルデヒド基、ケトン基およびカルボキシル基のいずれかとなったものであり、上記アルデヒド基およびケトン基の一部ないし全部は還元されており、カルボキシル基の含量が0.6~2.0mmol/g、セミカルバジド法による測定でのアルデヒド基とケトン基の合計含量が0.3mmol/g以下であり、フェーリング試薬によるアルデヒド基の検出が認められない、セルロース繊維である。該セルロース繊維は、例えば、セルロースに対して、(1)酸化反応工程、(2)還元工程、(3)精製工程、(4)分散工程(微細化処理工程)等を行うことにより製造し、取得することができる。
アルギン酸ナトリウム(194-13321、和光純薬工業株式会社、大阪)を超純水に溶解し、1.0wt%アルギン酸ナトリウム溶液を調製した。
塩化カルシウムを超純水に溶解し、200mM塩化カルシウム溶液を調製した。
多層3次元細胞培養足場システムの製造工程を模式的に示す図1に従って、簡潔には、それぞれ独立したマイクロ流路を介して、コア層液と、シース層溶液と、ゲル化剤溶液とを同時に貯留液(200mM塩化カルシウム溶液)中に吐出することにより、コア層にシース層を積層した多層3次元細胞培養足場システムを製造した。コア層液、シース層溶液及びゲル化剤溶液を30~50:70:70(μL/min)の流量比で吐出した。
多層3次元細胞培養足場システムは、ピンセットで取り扱うのに十分な強度を有していた。また、ピンセットで引張りながら多層3次元細胞培養足場システムを回収することによって、直径約200μm、長さ数十cm以上の多層3次元細胞培養足場システムを製造することができた。図2は、製造中の多層3次元細胞培養足場システムの写真と、その拡大図である。拡大図では、細胞を含むコア層(直径;約100μm)と、アルギン酸ゲルのシース層(厚さ;約50μm)とが観察できた。
材料及び方法
原則として、実施例1と同様に、多層3次元細胞培養足場システムを製造した。
ピンセットで引張りながら回収した多層3次元細胞培養足場システムを、DMEM(10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン-ストレプトマイシン)中に入れ、37°C、5%CO2及び飽和水蒸気雰囲気下でインキュベーションした。細胞は、培養5日目から培養21日目まで分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリン-ストレプトマイシンを含有するDMEM)で培養した。なお、比較のために、引張りながらポリスチレン(PS)製の支持台(外径約3cmで、中央に直径約2cmの穴を開けた、厚さ約0.5mmの環状PSシート)に巻き付けて回収した多層3次元細胞培養足場システムと、引張ることなく、(シリコンチューブを先端に取り付けた20mLディスポーザブルシリンジで)吸い取りながら回収した多層3次元細胞培養足場システムとを用いた。
培養7日目に、C2C12細胞を定法に従って蛍光染色した。核はヘキスト33342(H3570、サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)で、アクチンはアレクサフルオロ568ファロイジン(A12380、サーモフィッシャーサイエンティフィック)で、ミオシン重鎖はアンチMYH(SC-20641、コスモ・バイオ、東京)とGoat Anti-Rabbit IgG H&L アレクサフルオロ488(ab150077、アブカム、英国)で染色した。染色した細胞を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。
図3は多層3次元細胞培養足場システムの伸長回収の影響を観察した顕微鏡写真である。引張ることなく回収した多層3次元細胞培養足場システムでは、培養を継続するに従い細胞が形成する構造体の長さが短くなっていったが、引張りながら回収した多層3次元細胞培養足場システムでは、2cm以上の連続した構造体を安定して形成することができた。
図4は、分化培地で培養した細胞の免疫染色図である。青色は核、赤色はアクチン、緑色はミオシン重鎖を示す。培養5日目から培養21日目まで分化培地を使用することにより、細胞は長軸方向に配向し、細胞の融合と、長大な筋管の形成を観察することができた。
[比較例1]
材料及び方法
0.25wt%CNF分散液の代わりに2mg/mLアテロコラーゲン(DEM-02、高研、東京)を含有するDMEMを用いた以外は、原則として、実施例2と同様に、多層3次元細胞培養足場システムを製造し、細胞を培養した。
図5は、CNFの代わりにアテロコラーゲンを使用した多層3次元細胞培養足場システムの経時変化を観察した顕微鏡写真の図である。アテロコラーゲンを用いた多層3次元細胞培養足場システムでは、細胞の流出及び培養3日目に細胞の凝集が観察された。これは、アテロコラーゲンがゲル化していないため、又は、ゲル化に時間が掛かるため、又はゲル化する前に流出してしまったため、であると示唆された。なお、アテロコラーゲンの代わりにCNFを使用した多層3次元細胞培養足場システム(本発明)では、細胞の流出及び凝集が観察されなかった(実施例2を参照せよ。)。
[比較例2]
材料及び方法
0.25wt%CNF分散液の代わりにCNFを含まないHBSを用いた以外は、原則として、実施例2と同様に、多層3次元細胞培養足場システムを製造し、細胞を培養した。
図6は、CNFやアテロコラーゲンを使用しなかった多層3次元細胞培養足場システムの経時変化を観察した顕微鏡写真の図である。HBSのみで調製した細胞懸濁液を用いた多層3次元細胞培養足場システムでは、細胞の流出及び培養3日目に細胞の凝集が観察された。これは、細胞が担持できていないためであると示唆された。なお、CNFを使用した多層3次元細胞培養足場システム(本発明)では、細胞の流出及び凝集が観察されなかった(実施例2を参照せよ。)。
材料及び方法
原則として、実施例1と同様に、多層3次元細胞培養足場システムを製造した。本実施例では、CNFの特性の違いによる細胞培養への影響を評価するために、下記の4種類のCNFを用いた。
繊維径:約3~4nm(標準)、繊維長:約1380nm(標準)
B.レオクリスタRC-2SP(低置換度品*)
繊維径:約3~4nm(標準)、繊維長:約1380nm(標準)
C.レオクリスタRC-2SP(低置換度品*)
繊維径:約3nm~1μm(太)、繊維長:約1380nm(標準)
D.レオクリスタRC-2SP
繊維径:約3~4nm(標準)、繊維長:約100nm(短)
*:低置換度品とは、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)触媒酸化の度合い(酸化度)が低い製品である。
図7は、4種類のCNFの特性の違いによる細胞培養への影響を観察した顕微鏡写真である。CNF(B)及び(C)を用いた場合には、繊維径及び繊維長の両方が標準であるCNF(A)を用いた場合と同様に、細胞は伸長し、細胞融合した細胞構造体も観察することができた。このことから、CNFの繊維径や酸化度は細胞培養に影響を与えないことが分かった。繊維長が短いCNF(D)を用いた場合には、細胞が凝集した。このことから、繊維長は細胞の増殖や伸長に重要であることが明らかとなった。また、細胞は多層3次元細胞培養足場システム内に構築されたCNFネットワークを介して伸展したと示唆された。
材料及び方法
原則として、実施例1と同様に、多層3次元細胞培養足場システムを製造した。本実施例では、フィルター処理の代わりに、細胞を懸濁する前に、CNFを15~20分間超音波処理した。その後、ウシ大動脈内皮細胞(BAEC)と、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)とを細胞密度が2.0×107 cells/mL(hMSC:BAEC=7:3)となるように、細胞とCNFの分散液を調製した。また、コア層液と、シース層溶液と、ゲル化剤溶液とを同時に貯留液(150mM塩化カルシウム溶液)中に吐出し、BAEC及びhMSCを含む多層3次元細胞培養足場システムを製造した。コア層液、シース層溶液及びゲル化剤溶液を70:70:70(μL/min)の流量比で吐出した。
BAEC及びhMSCを含む多層3次元細胞培養足場システムを、DMEM(10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン-ストレプトマイシン)中に入れ、37°C、5%CO2及び飽和水蒸気雰囲気下で20日間インキュベーションした。その後、実施例1と同様に、核はヘキスト33342(H3570、サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)で、アクチンはアレクサフルオロ568ファロイジン(A12380、サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて細胞蛍光染色を行い、染色した細胞を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。
図8は、BAECと、hMSCとを共培養した細胞の蛍光染色の顕微鏡像である。本発明の多層3次元細胞培養足場システムにおいて、管腔構造を有する構造体を形成することができた。
骨格筋などの配向した組織や血管などの長大で多層の組織を作製するためには、長大な培養場で前駆細胞の位置や配列を3次元的に精緻に制御する方法が有効である。
Claims (6)
- チキソトロピー性を有するゲルから形成されるコア層と、該コア層の外周部にシース層とを有し、前記コア層がセルロースナノファイバーを含む、多層3次元細胞培養足場システム。
- 前記シース層が、アルギン酸ナトリウムゲルを含む、請求項1に記載の多層3次元細胞培養足場システム。
- (1)それぞれ独立した1以上のマイクロ流路を介して、チキソトロピー性を有するゲルから形成されるコア層の材料を含む液に細胞を懸濁した懸濁液と、該コア層の外周部に形成されるシース層の材料を含む溶液と、該シース層の外周部にゲル化剤溶液とを同時に貯留液中に吐出することにより、コア層を囲むゲル化したシース層を積層する工程と、
(2)細胞を培養する工程と、
を含み、前記コア層がセルロースナノファイバーを含む、3次元細胞培養方法。 - 1以上のマイクロ流路から、それぞれ独立したマイクロ流路を介して、チキソトロピー性を有するゲルから形成されるコア層の材料を含む液に細胞を懸濁した懸濁液と、該コア層の外周部に形成されるシース層の材料を含む溶液と、該シース層の外周部にゲル化剤溶液とを同時に貯留液中に吐出することにより、コア層を囲むゲル化したシース層を積層する工程を含み、前記コア層がセルロースナノファイバーを含む、多層3次元細胞培養足場システムの製造方法。
- さらに、コア層と、該コア層を囲むゲル化したシース層とを有する多層3次元細胞培養足場システムを伸長しながら回収する工程を含む、請求項4に記載の多層3次元細胞培養足場システムの製造方法。
- (1)それぞれ独立した1以上のマイクロ流路を介して、チキソトロピー性を有するゲルから形成されるコア層の材料を含む液に細胞を懸濁した懸濁液と、該コア層の外周部に形成されるシース層の材料を含む溶液と、該シース層の外周部にゲル化剤溶液とを同時に貯留液中に吐出し、コア層を囲むゲル化したシース層を積層して、多層3次元細胞培養足場システムを製造するマイクロ流体デバイスと、
(2)細胞を培養するインキュベーターと、
を含み、前記コア層がセルロースナノファイバーを含む、3次元細胞培養システム。
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