JP7131764B2 - セルロース系樹脂改質剤およびセルロース系樹脂改質方法 - Google Patents
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Description
さらに、特許文献4には、脂肪族ポリエステルを含んでなる熱可塑性ポリマー組成物を、セロハン等のセルロースにコーティングや圧着等することで基材セロハンに圧着することで得られる分解性複合材料が開示されている。
さらに、特許文献5には、セロハン等の再生セルロースフィルムに親水性高分子化合物からなるアンカー剤を介して生分解性樹脂を積層又は塗布してなる積層又は被覆された再生セルロースフィルムが開示されている。
係る状況下、本発明は、セロハン等のセルロース系樹脂の改質剤として使用することができる共重合体を提供することを目的とする。
<1> セルロース系樹脂改質用の共重合体の製造方法であって、
前記セルロース系樹脂改質用の共重合体が、第1のモノマー(A)と、第2のモノマー(B)との共重合体であって、
前記モノマー(A)が、その側鎖に疎水基を有するモノマーであり、
前記モノマー(B)が、その側鎖にOH基と化学結合する側鎖を有するモノマーである共重合体の製造方法。
<2> 前記モノマー(A)が、その側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーである前記<1>記載の共重合体の製造方法。
<3> 前記モノマー(B)が、アクリレート、メタアクリレート、3-ブテン-1-アミン、グリシジルアクリレートからなる群より選ばれるいずれかのモノマーであることを特徴とする前記<1>または<2>に記載の共重合体の製造方法。
<4> 前記セルロース系樹脂改質用の共重合体が、第二のモノマー(B)のブロック重合部にカルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、およびエポキシ基からなる群より選ばれるいずれかの基を有する共重合体である前記<1>または<2>に記載の共重合体の製造方法。
<5> 前記<1>~<4>のいずれかに記載の共重合体の製造方法により製造された共重合体を含有するセルロース系樹脂改質剤を用いるセルロース系樹脂改質方法。
<6> 前記<1>~<4>のいずれかに記載の共重合体の製造方法により製造された共重合体を含有するセルロース系樹脂改質剤を、セルロース系樹脂成形体に塗工し、乾燥することでセルロース系樹脂表面に、共重合体層を設けることを特徴とするセルロース系樹脂改質方法。
<7> 第1のモノマー(A)由来の構造単位と、第2のモノマー(B)由来の構造単位とを有する共重合体であって、
前記モノマー(A)が、その側鎖に疎水基を有するモノマーであり、
前記モノマー(B)が、その側鎖にOH基とエステル結合する側鎖を有するモノマーである共重合体。
<8> 前記<7>記載の共重合体を含有するセルロース系樹脂改質剤。
本発明に係る共重合体の製造方法に用いる第1のモノマー(A)として、前記モノマー(A)には、その側鎖に疎水基を有するモノマーを用いる。また、本発明の共重合体の製造方法により得られる共重合体において、この第1のモノマー(A)由来の構造単位を有する共重合体となり、その共重合体においてモノマー(A)の重合体において、その側鎖に疎水基を有する構造となる。
本発明に係る共重合体の製造方法に用いる第二のモノマー(B)として、前記モノマー(B)には、その側鎖にOH基と化学結合する側鎖を有するモノマーであることを特徴とする共重合体の製造方法に関する。また、本発明の共重合体の製造方法により得られる共重合体において、この第二のモノマー(B)由来の構造単位を有する共重合体となり、その共重合体においてモノマー(B)の重合体において、その側鎖にOH基とエステル結合等の化学結合する側鎖を有する構造となる。
[接触角]
水接触角測定装置(協和界面科学社製“Dropmaster100”)を用いて、表面の接触角を測定した。
真空乾燥機(100℃、真空度5×10-4Torr)で24時間真空乾燥した後のシートの初期重量(W0)と、常温常湿(23℃、65%RH)の雰囲気下で所定時間経過後の重量(Wtx)とを求め、重量の経時変化から、吸水率を評価した。
吸水率=(所定時間経過後の重量(Wtx)-初期重量(W0))/初期重量(W0)
JIS-Z0208(1976)「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠して、透湿度を測定した。
Perkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光分析装置「Spectrum two(登録商標)」を用いて、測定した。
[原料]
[モノマー(A)]
・モノマー(A-1-1):STA
ステアリルアクリレートを用いた。このモノマーは、炭素数18のアルカン鎖を側鎖に有するモノマーである。
[モノマー(B)]
・モノマー(B-1-1):AA
アクリル酸(AA)を用いた。このモノマーは、側鎖にカルボキシル基を有するモノマーである。
[重合開始剤] Bloc Builder MA No.33
[溶媒] 酢酸ブチル
セロハンを用いた成形体に、撥水性を付与することができるセロハン改質用の共重合体(1)の設計を試みた。まず、セロハンのOH基とエステル結合の化学結合する基として、カルボキシル基を有する、アクリル酸(モノマー(B-1-1))を選択した。次に、撥水性を付与する改質目的にあわせて、アルカン鎖を有するアクリレートである前記モノマー(A-1-1)を選択した。そして、ここで選択されたモノマーを用いて、セロハン改質用の共重合体(1)の製造を行った。
STA6.6g、酢酸ブチル6.6g、重合開始剤(Bloc Builder MA No.33)0.386gを混合した溶液を、重合温度約105℃、リアクターの撹拌速度75rpm、窒素雰囲気下でリビングラジカル重合することにより、第1のモノマー(A)であるSTA(モノマー(A-1-1))のブロック重合体を製造した。さらに、これにより得られたSTAのブロック重合体の溶液に、第2のモノマー(B)であるモノマー(B-1-1)を3.415g、酢酸ブチルを3.42g投入してモノマー(A-1-1)のブロック重合体に、モノマー(B-1-1)ブロック重合体が結合したブロック共重合体である共重合体(1)を得た。この共重合体(1)の構造式を以下に化学式(I)として示す。なお、得られた共重合体(1)の分子量(Mw:重量平均分子量)を、GPCにより測定し、ポリスチレン換算にて求めた。モノマー(A-1-1)由来の構造は推算値として約4,519(g/mol)、モノマー(B-1-1)由来の構造が約3,371(g/mol)の共重合体であった。
・共重合体(1)の塗工用溶液
前述の方法で入手された共重合体(1)を、酢酸ブチル溶液に溶解させて共重合体(1)溶液を調製した。
(1)ディッピング
共重合体溶液に、およそ1秒間、成形品の改質対象となる部分を浸漬させた。
(2)コーティング
共重合体溶液を、塗工厚みが約50μmのアプリケーターを用いて成形品の表面に塗工した。
(1)自然乾燥
前記塗工工程により、共重合体溶液を塗工した後、常温で静置し自然乾燥した。
(2)真空乾燥(加熱乾燥)
前記塗工工程により、セロハン改質用共重合体を塗工した後、真空乾燥機(100℃)にて、5×10-4Torrとなるように減圧下で乾燥した。
なお、この真空乾燥により、セロハンのOH基と、共重合体(1)のCOOH基を反応させ、その反応により生じる水等を除去しながら乾燥させることができ、よりエステル結合が促進されると考えられる。
セロハンシート(厚さ0.8mm)の表面に、共重合体(1)の濃度が0.5重量%または1.0重量%の共重合体溶液(1)を塗工し、乾燥することで、改質されたセロハンシートを製造した。製造したシートの具体的な塗工工程、乾燥工程を表1、2に示す。
また、実施例1~8のシートについて、接触角を測定した結果を、表1、2に合わせて示す。なお、比較例1は、塗工、乾燥を行わないままのセロハンシートを評価した結果である。
実施例7、8のシートおよび、比較例1のシートについて、吸水率の経時変化を測定した。結果を、図1に示す。本発明により改質されたセロハンシート(実施例7、8)は、従来のセロハンシート(比較例1)よりも吸水率が低いことが確認された。
実施例7、8のシートならびに、比較例1のシート、および共重合体(1)単独のIRスペクトルを測定した結果を、図2に示す。図中に1750(cm-1)付近のピークは、-OCO-伸縮由来のピークであり、3300(cm-1)付近のピークは、-OH伸縮由来のピークである。セロハンでは-OH伸縮由来のピークが強いピークであったが、実施例7、8ではこれらのピークが弱くなっている。一方、実施例7、8では、セロハンには見られなかった、-OCO-伸縮由来のピークが生じていることから、エステル結合が生じていると考えられる。このことから、共重合体(1)における、モノマー(B-1-1)(アクリル酸)由来のCOOH基は、セロハンシートのOH基(セルロースの糖の環構造に直接結合するOH基や、CH2OHのOH基)と脱水縮合してエステル結合していることが想定される。
実施例7、8のシートについて、透湿度の評価を行った。
・実施例7のシート:2142g/m2・24H
・実施例8のシート:1764g/m2・24H
市販されている防湿セロハン(フタムラ化学社製「G-3」(#300))の透湿度は、およそ45g/m2・24Hであり、本発明の実施例に係るシートの透湿度は非常に高く、セロハンシートに近い透湿度を維持していると考えられる。なお、未処理のセロハンシートは透湿度が極めて高いことから、測定に用いる乾燥剤が潮解して数値化が困難である。
セルロースの不織布(フタムラ化学社製「TCF(登録商標)」 #504)に、共重合体(1)の濃度が0.5重量%または1.0重量%の共重合体溶液(1)を塗工し、乾燥することで、改質された不織布を製造した。製造した不織布の具体的な塗工工程、乾燥工程を表3に示す。
更に、これらの不織布は、乾燥後に、アセトンや水をかけ流すことで洗浄処理(洗浄工程)した。なお、水で洗浄すると、その水は弾かれるように流れたが、アセトンは浸透するように流れた。洗浄工程を行った不織布は、洗浄後、自然乾燥した後、接触角等の評価を行った。
また、実施例9~12の不織布について、接触角の経時変化を測定した結果を、図3、4に示す。なお、比較例2は未処理のセルロースの不織布に関するものである。
上記実施例等の評価結果から、共重合体(1)により真空乾燥も行って改質されたセルロース系樹脂の成形品における作用機序の想定例を、図5および6に示す。図5は、本発明によりセロハンを改質するときの想定機構を示す概要図である。また、図6は、本発明によりセルロース系樹脂を改質するときのセルロース由来構造と本発明に係る共重合体との化学結合の想定構造を示す概要図である。上記実施例(例えば、実施例5~8、10、12等)から、特に真空乾燥したセロハン成形品や、セルロース成形品では安定性が極めて高いものとなっていた。これは、図5のように、本発明に係る共重合体(1)は、そのモノマー(B)由来のブロック重合部が、セロハン成形品の表面に化学結合して、モノマー(A)由来のブロック重合部により撥水性等が付与されていると考えられる。また、このとき、図6に示すように、AA由来のカルボキシル基と、セルロース由来のOH基とがエステル結合していると考えられる。
Claims (8)
- セルロース系樹脂改質用の共重合体が、第1のモノマー(A)のブロック重合部と、第2のモノマー(B)のブロック重合部とを有する共重合体であって、
前記モノマー(A)が、その側鎖に疎水基を有し、その側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、αオレフィン、及び置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーであり、
前記モノマー(B)が、その側鎖にOH基と化学結合する側鎖を有し、アクリル酸、メタクリル酸、及び3-ブテン-1-アミンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーである共重合体の製造方法により製造された共重合体を含有するセルロース系樹脂改質剤を用いるセルロース系樹脂改質方法。 - 前記モノマー(A)の、前記アルカン鎖が、炭素数24以下である請求項1記載のセルロース系樹脂改質方法。
- 前記第1のモノマー(A)由来の構造に対応する分子量(g/mol)と、前記第2のモノマー(B)由来の構造に対応する分子量(g/mol)とは、それぞれ500以上である請求項1または2に記載のセルロース系樹脂改質方法。
- 前記セルロース系樹脂改質剤の溶媒として、酢酸ブチル、ベンゼン、トルエン、及びテトラヒドロフランからなる群から選択されるいずれかを含む請求項1~3のいずれかに記載のセルロース系樹脂改質方法。
- 前記共重合体の濃度は、0.5~20重量%である請求項4に記載のセルロース系樹脂改質方法。
- 前記セルロース系樹脂改質剤を、セルロース系樹脂成形体に塗工し、乾燥することでセルロース系樹脂表面に、共重合体層を設けることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のセルロース系樹脂改質方法。
- 第1のモノマー(A)由来のブロック重合部と、第2のモノマー(B)由来のブロック重合部とを有する共重合体であって、
前記モノマー(A)が、その側鎖に疎水基を有し、その側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、αオレフィン、及び置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーであり、
前記モノマー(B)が、その側鎖にOH基と化学結合する側鎖を有し、アクリル酸、メタクリル酸、及び3-ブテン-1-アミンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーである共重合体を含有するセルロース系樹脂改質剤。 - 前記モノマー(A)が、ステアリルアクリレートであり、前記モノマー(B)が、アクリル酸である請求項7記載のセルロース系樹脂改質剤。
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