以下、本開示に係るハイブリッド車両100の実施の形態を図1~図3に沿って説明する。本実施の形態では、駆動連結とは、互いの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、それら回転要素が一体的に回転するように連結された状態、あるいはそれら回転要素がクラッチ等を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いる。
図1に示すように、ハイブリッド車両100は、左右の前輪(車輪)11の駆動系として、駆動源の一例であるエンジン(E/G)2と、エンジン2の出力軸2aに接続されたハイブリッド駆動装置(車両用駆動装置)3とを備え、左右の後輪12の駆動系としてリヤモータ20を備えている。これにより、前輪11は所謂1モータパラレル式のハイブリッド走行が可能であり、後輪12はEV走行が可能であり、前輪11及び後輪12を同時に駆動することで四輪駆動も可能になるように構成されている。尚、本実施の形態においては、ハイブリッド車両100は後輪12を駆動可能なリヤモータ(M/G)20を有する場合について説明しているが、これには限られず、リヤモータ20を有していなくてもよい。
まず、前輪11の駆動系について説明する。ハイブリッド駆動装置3の出力軸5bは、不図示のディファレンシャル装置に駆動連結され、ディファレンシャル装置から左右の車軸11aを介して左右の前輪11に駆動力が伝達される。即ち、前輪11及び後輪12の一方である前輪11は、変速機構5の出力軸5bに駆動連結されている。エンジン2は、後述するECU7からの指令に基づき、エンジン回転速度NeやエンジントルクTeを自在に制御される。また、エンジン2の出力軸2aの外周側には、その出力軸2aの回転速度、つまりエンジン回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ41が設けられている。
ハイブリッド駆動装置3は、大まかに、エンジン接続用のクラッチSSCと、モータ・ジェネレータ(M/G、駆動源、第1の回転電機)4と、変速機構(A/T)5と、これらを制御するECU(制御部)7とを備えて構成されている。クラッチSSCは、エンジン2の出力軸2aとモータ・ジェネレータ(以下、単に「モータ」という)4のロータ軸(回転軸)4aとの間に介在し、それらを摩擦係合可能となっている。即ち、クラッチSSCは、エンジン2の出力軸2aとモータ4のロータ軸4aとの間に介在され、それらの動力伝達を接断可能に設けられている。クラッチSSCは、ECU7からの指令に基づき、油圧制御装置(V/B)6から供給されるクラッチ油圧PSSCに応じて、係合状態が自在に制御され、そのトルク容量も自在に制御される。尚、クラッチSSCは、油圧の供給により潤滑がなされる供給対象部としての潤滑油路(潤滑部)14(図2参照)を有している。
モータ4は、クラッチSSCと変速機構5の入力軸5aとの間、即ち、エンジン2の出力軸2aと変速機構5の入力軸5aとの間の動力伝達経路に設けられている。モータ4は、図示を省略したステータ及びロータを備え、そのロータが接続されたロータ軸4aがクラッチSSCの出力側に駆動連結されている。モータ4は、ECU7からの指令に基づき、モータ回転速度NmやモータトルクTm(モータ4から出力されるトルク)を自在に制御される。また、モータ4のロータ軸4aの外周側には、そのロータ軸4aの回転速度、つまりモータ回転速度Nmを検出するモータ回転速度センサ42が設けられている。ロータ軸4aは、変速機構5の入力軸5aに直接的に駆動連結されている。
モータ4は、インバータ22を介してバッテリ23に接続されている。これにより、バッテリ23から出力された電力がインバータ22を介してモータ4に給電されることで、モータ4が駆動される。また、エンジン2による走行時や惰性走行時に、モータ4を空回転させることで、電力を発生させてバッテリ23に充電することが可能である。
変速機構5は、エンジン2と前輪11との間の動力伝達経路に介在され、ハイブリッド車両100を走行するための駆動源であるエンジン2により駆動される入力軸(入力部材)5aと、前輪11に駆動連結された出力軸(出力部材)5bとを有し、入力軸5aと出力軸5bとの間の変速比を変更可能である。変速機構5は、例えばプラネタリギヤ及び変速用プラネタリギヤユニット等の可動部(変速制御部)5c(図2参照)を有する有段式変速機からなり、油圧制御装置6から供給される油圧に基づき複数の摩擦係合要素(クラッチやブレーキ)の摩擦係合状態を変更することで、伝達経路を変更して変速比の変更を行うように構成されている。また、変速機構5は、潤滑油路(A/T LUBE)5L(図2参照)を有している。油圧制御装置6から潤滑油路5Lに供給された潤滑油は、変速機構5のプラネタリギヤ及び変速用プラネタリギヤユニット等の可動部5c(図2参照)の潤滑及び冷却を行う。
変速機構5は、複数の摩擦係合要素のうちの一部として、第1クラッチC1や不図示の第2クラッチやブレーキ等を有している。第1クラッチC1は、入力軸5aと出力軸5bとの間の動力伝達の接続及び切断を自在に構成され、解放状態とスリップ係合状態と完全係合状態との各状態に切り換えて摩擦係合可能である。即ち、変速機構5は、入力軸5aと出力軸5bとの動力伝達を接断可能な第1クラッチ(係合要素)C1を有する。第1クラッチC1は、ECU7からの指令に基づき、油圧制御装置6から供給される第1クラッチ油圧PC1に応じて、係合状態が自在に制御され、そのトルク容量も自在に制御される。
また、変速機構5の入力軸5aの外周側には、その入力軸5aの回転速度、つまり入力回転速度(本実施の形態ではモータ回転速度Nmと同じ)を検出する入力回転速度センサ43が設けられている。さらに、変速機構5の出力軸5bの外周側には、その出力軸5bの回転速度、つまり出力回転速度Noutを検出する出力回転速度センサ44が設けられている。出力軸5bは、上述したようにディファレンシャル装置等を介して前輪11に駆動連結されているので、出力回転速度センサ44は車速Vを検出するものとしても用いることが可能である。
なお、本実施の形態にあって第1クラッチC1は、例えば不図示のワンウェイクラッチと共に係合状態になることで前進1速段を達成するものとし、つまり第1クラッチC1の1つだけが係合することで変速機構5の前進1速段が達成されるものとして説明する。但し、これには限られず、例えば他の摩擦係合要素と共に同時係合して前進1速段ないし前進3速段のような発進可能な変速段を達成するものであってもよい。
また、本実施の形態にあっては、変速機構5を有段変速機として説明するが、例えばベルト式、トロイダル式、コーンリング式などの無段変速機であってもよく、その場合、第1クラッチC1は、無段変速機に内蔵された動力伝達を接続及び切断可能なクラッチであると考えることができる。
また、上述のクラッチSSCと第1クラッチC1とは、2つ以上の摩擦係合部材を押圧する油圧の大きさで伝達可能なトルク容量の大きさが可変する摩擦係合可能な要素であり、通常は、それら摩擦係合部材を押圧するピストンと、そのピストンを押圧する油圧シリンダと、油圧シリンダに対して逆方向に作用するリターンスプリングとを備えて構成されている。但し、このような構成には限られず、対向シリンダによる差圧でピストンが駆動するような構造でもよいし、油圧アクチュエータにより移動するアーム等で摩擦係合部材を押圧するような構造でもよい。尚、本実施の形態では、クラッチSSCや第1クラッチC1などは油圧制御される摩擦係合要素である場合について説明しているが、これには限られず、例えば電磁クラッチなどを適用してもよい。
これらクラッチSSCや第1クラッチC1の状態は、上述のように油圧の大きさで制御され、摩擦係合部材同士が離れた「解放状態」、スリップしつつ伝達するトルク容量を生じる「スリップ係合状態」、油圧を可能な限り大きくして摩擦係合部材同士を締結した「完全係合状態」に分けられる。尚、「スリップ係合状態」は、解放状態からピストンがストロークして摩擦係合部材に接触するストロークエンドとなってから、摩擦係合部材同士の回転速度が同期するまでの間と定義でき、「解放状態」は、ピストンがストロークエンド未満となって摩擦係合部材から離れた状態と定義できる。
また、ハイブリッド駆動装置3は、油圧制御装置6において用いるライン圧(元圧)PLなど油圧を発生するために、ハイブリッド車両100を走行するための駆動源により駆動される機械式オイルポンプ30と、電気により駆動され、吐出量を電気信号により制御可能な電動オイルポンプ31(図2参照)と、冷却器(Cooler)13(図2参照)とを備えている。機械式オイルポンプ30は、そのドライブギヤが連動軸8に連動するように駆動連結されており、連動軸8とエンジン2の出力軸2aとの間にはエンジン2の回転速度が連動軸8の回転速度以下で空転する第1ワンウェイクラッチF1が介在されている。また、連動軸8とクラッチドラム4b(つまりモータ4のロータ)との間には、モータ4の回転速度が連動軸8の回転速度以下で空転する第2ワンウェイクラッチF2が介在されている。これにより、機械式オイルポンプ30は、エンジン2とモータ4とが回転している際、その回転速度が高い方に連動して回転駆動される。
電動オイルポンプ31は、機械式オイルポンプ30よりも容量が小さく構成されており、機械式オイルポンプ30とは独立して、エンジン2及びモータ4と異なる不図示の電動モータで電動駆動し得るように構成され、ECU7からの電気指令に基づき、駆動及び停止制御される。この電動オイルポンプ31は、本来、ハイブリッド車両100の停車中におけるアイドルストップ時などにあって、油圧制御装置6に油圧を供給し、変速機構5における摩擦係合要素を係合させて伝達経路を形成するための油圧や、変速機構5及びモータ4などを潤滑するための油圧を発生するものである。
油圧制御装置6は、図2に示すように、例えばバルブボディにより構成されており、ECU7からの制御信号に基づいて、機械式オイルポンプ(MO/P)30や電動オイルポンプ(EO/P)31からの油圧をライン圧PLに調圧するレギュレータバルブ32と、電動オイルポンプ31からの油圧の供給先を切り換えるための潤滑切換バルブ34と、潤滑切換バルブ34を切り換える信号圧PSRLを供給可能な信号ソレノイドバルブSRLと、を備えている。また、油圧制御装置6は、変速機構5の潤滑油路5Lに潤滑油を供給可能であり、潤滑油の供給量を切り換えるための流量切換バルブ35と、流量切換バルブ35を切り換える信号圧PSRを供給可能な信号ソレノイドバルブSRと、を備えている。更に、油圧制御装置6は、ECU7からの制御信号に基づいて、第1クラッチC1、クラッチSSC、後述するモータ切離しクラッチCM、その他の各係合要素に油圧を給排するためのリニアソレノイドバルブを有しており、それぞれの係合要素に油圧を給排可能である。
レギュレータバルブ32は、スプリング32sで付勢されている不図示のスプールを有し、スプールの一端にフィードバックポート32a、ライン圧ポート32b、背圧ポート32cを有する。スプリング32sが配置されている油室には、スロットル開度に基づき制御されるリニアソレノイドバルブからの制御圧PSLTが供給されている。フィードバックポート32a及びライン圧ポート32bには、機械式オイルポンプ30からのオイルが逆止弁33を介して油路a1を介して供給されており、スプールが、フィードバックポート32aのフィードバック圧及び油室の制御圧PSLTにより移動して、ライン圧ポート32bと背圧ポート32cとの連通割合を調整して、ライン圧ポート32bが、スロットル開度に応じたライン圧PLに調圧される。即ち、レギュレータバルブ32は、機械式オイルポンプ30及び電動オイルポンプ31の少なくとも一方から出力される油圧を、変速機構5を制御するためのライン圧PLに調圧可能である。背圧ポート32cからの潤滑油圧P1は、油路b1に連通している。逆止弁33は、機械式オイルポンプ30からレギュレータバルブ32への油圧PMOPの流通を許可し、反対側への油圧の流通を規制する。
潤滑切換バルブ34は、不図示のスプール及びスプリング34sを備えるスプールバルブであり、信号ソレノイドバルブSRLから供給される信号圧PSRLとスプリング34sの付勢力との関係によりスプールが移動することで、出力される油圧の切換えを行う。潤滑切換バルブ34は、信号圧PSRLによりスプールを切り換える方向に押圧力を与えるための作動油室34aと、電動オイルポンプ31からの油圧PEOPが入力される入力ポート34bと、油路a1に逆止弁38を介して接続された第1出力ポート34cと、冷却器13に接続された第2出力ポート34d等を有している。これにより、潤滑切換バルブ34は、電動オイルポンプ31をレギュレータバルブ32に連通する第1の状態と、電動オイルポンプ31を後述する潤滑油路14に連通すると共にレギュレータバルブ32とは遮断する第2の状態と、に信号圧PSRLにより切換可能である。また、逆止弁38は、電動オイルポンプ31からレギュレータバルブ32への油圧PEOPの流通を許可し、反対側への油圧の流通を規制する。
冷却器13は、クラッチSSCの潤滑油路(SSC LUBE、供給対象部)14に接続されている。このため、電動オイルポンプ31からの油圧PEOPは、潤滑切換バルブ34を介して冷却器13で冷却され、潤滑油路14に供給されてクラッチSSCの潤滑及び冷却が行われる。即ち、潤滑油路14は、電動オイルポンプ31から出力される油圧に基づく油圧を供給可能になっている。
信号ソレノイドバルブ(ソレノイドバルブ)SRLは、例えば、ノーマルクローズのソレノイドバルブであり、モジュレータ圧Pmodが供給される入力ポートSRLaと、潤滑切換バルブ34の作動油室34aに接続された出力ポートSRLbとを備えており、モジュレータ圧Pmodに基づいて制御圧である信号圧PSRLを生成して作動油室34aに給排するように、ECU7により制御される。即ち、信号ソレノイドバルブSRLは、信号圧PSRLを調圧して供給可能である。
信号ソレノイドバルブSRLがオフ状態で出力ポートSRLbから信号圧PSRLが出力されていないときは、潤滑切換バルブ34では入力ポート34bと第1出力ポート34cとが連通され、油圧PEOPは潤滑切換バルブ34を介して油路a1に供給される。また、信号ソレノイドバルブSRLがオン状態で出力ポートSRLbから信号圧PSRLが出力されているときは、潤滑切換バルブ34では入力ポート34bと第2出力ポート34dとが連通され、油圧PEOPは潤滑切換バルブ34を介して冷却器13及び潤滑油路14に供給される。
流量切換バルブ35は、不図示のスプール及びスプリング35sを備えるスプールバルブであり、信号ソレノイドバルブSRから供給される信号圧PSRとスプリング35sの付勢力との関係によりスプールが移動することで、出力される油圧の切換えを行う。流量切換バルブ35は、信号圧PSRによりスプールを切り換える方向に押圧力を与えるための作動油室35aと、油路b1から潤滑油圧P1が入力される入力ポート35bと、潤滑油路5Lに油路b2を介して接続された出力ポート35cと、遮断ポート35d等を有している。また、油路b2には、油圧スイッチ(PSW)36が設けられている。
信号ソレノイドバルブSRは、例えば、ノーマルクローズのソレノイドバルブであり、モジュレータ圧Pmodが供給される入力ポートSRaと、流量切換バルブ35の作動油室35aに接続された出力ポートSRbとを備えており、モジュレータ圧Pmodに基づいて信号圧PSRを生成して作動油室35aに給排するように、ECU7により制御される。尚、本実施の形態では、油圧スイッチ36は油路b2に設けられた場合について説明しているが、これには限られない。例えば、油路b2ではなく、信号ソレノイドバルブSRの出力ポートSRbと流量切換バルブ35の作動油室35aとの間の油路に、油圧センサとして設けるようにしてもよい。
信号ソレノイドバルブSRがオフ状態で出力ポートSRbから信号圧PSRが出力されていないときは、流量切換バルブ35では入力ポート35bと出力ポート35cとが連通され、油路b1からの潤滑油圧P1が流量切換バルブ35を介して潤滑油路5Lに供給される。また、信号ソレノイドバルブSRがオン状態で出力ポートSRbから信号圧PSRが出力されているときは、流量切換バルブ35では入力ポート35bと遮断ポート35dとが連通され、油路b1からの潤滑油圧P1は流量切換バルブ35を介しては潤滑油路5Lに供給されない。
一方、油路b1は、オリフィス37及び油路b3を介して潤滑油路5Lに接続されている。このため、油路b1からの潤滑油圧P1は、オリフィス37で流量を絞られながらも油路b3を介して常に潤滑油路5Lに供給されている。従って、信号ソレノイドバルブSRがオフ状態であるときは、潤滑油路5Lには油路b2及び油路b3から大流量の潤滑油が供給され、信号ソレノイドバルブSRがオン状態であるときは、潤滑油路5Lには油路b3のみから小流量の潤滑油が供給される。
次に、後輪12の駆動系について説明する。図1に示すように、リヤモータ(回転電機、第2の回転電機)20は、インバータ24を介してバッテリ23に接続されており、ECU7からの駆動指令に基づきインバータ24から電力制御されることにより駆動及び回生自在に構成されている。即ち、前輪11及び後輪12の他方である後輪12は、リヤモータ20に駆動連結されている。リヤモータ20は、モータ切離しクラッチCMを介してギヤボックス21に駆動連結されている。ギヤボックス21には、不図示の所定減速比の減速ギヤ機構及びディファレンシャル装置が内蔵されており、モータ切離しクラッチCMの係合時には、リヤモータ20の回転を、ギヤボックス21の減速ギヤ機構で減速しつつ、かつ、ディファレンシャル装置で左右の車軸12aの差回転を吸収しつつ、左右の後輪12に伝達する。
ECU7は、図3に示すように、例えば、CPU71と、処理プログラムを記憶するROM72と、データを一時的に記憶するRAM73と、入出力回路(I/F)74とを備えており、油圧制御装置6への制御信号や、インバータ22,24への制御信号等、各種の電気指令を出力する。ECU7には、エンジン2の出力軸2aの回転速度を検出するエンジン回転速度センサ41と、モータ4のロータ軸4aの回転速度を検出するモータ回転速度センサ42と、変速機構5の入力軸5aの回転速度を検出する入力回転速度センサ43と、変速機構5の出力軸5bの回転速度を検出する出力回転速度センサ44等が、接続されている。ECU7は、不図示のエンジン制御部を介してエンジン2に指令し、エンジン回転速度NeやエンジントルクTeを自在に制御する。また、ECU7は、インバータ22を介してモータ4を電力制御し、回転速度制御によるモータ回転速度Nmの制御やトルク制御によるモータトルクTmの制御を自在にし、インバータ24を介してリヤモータ20を電力制御し、回転速度制御によるモータ回転速度の制御やトルク制御によるモータトルクの制御を自在にする。ECU7は、油圧制御装置6に接続され、油圧制御装置6に対して変速機構5の可動部5cや潤滑油路5L,14に供給する油の流量を増加するように電気指令を出力可能である。
以上のように構成されたハイブリッド車両100は、図1に示すように、エンジン2及び/又はモータ4の駆動力を用いた走行では、ハイブリッド駆動装置3から出力された動力が前輪11に伝達されると共に、モータ切離しクラッチCMが解放されて、リヤモータ20が後輪12から切り離された状態にされる。そして、変速機構5において、シフトレンジ、車速、アクセル開度に応じてECU7により最適な変速段が判断されることで油圧制御装置6が電子制御され、その変速判断に基づき形成される変速段を形成する。また、ハイブリッド駆動装置3から出力された動力が前輪11に伝達されるときに、モータ切離しクラッチCMを係合してリヤモータ20を駆動することで、四輪駆動を実現することができる。
次に、本実施形態のハイブリッド車両100が、例えばEV走行する場合の各部の動作について説明する。この場合、クラッチSSCを解放状態にしてエンジン2の駆動を停止して、モータ4により駆動するものとする。また、モータ切離しクラッチCMは解放された状態としている。
このときは、機械式オイルポンプ30を駆動させるのはモータ4のみであり、ライン圧PLの生成を補助するために電動オイルポンプ31からの油圧PEOPが油路a1に供給されるように、潤滑切換バルブ34は電動オイルポンプ31をレギュレータバルブ32に連通する第1の状態になっている。尚、潤滑切換バルブ34は第1の状態であることから、クラッチSSCの潤滑油路14には潤滑油が供給されていないが、クラッチSSCは解放状態であるので、過熱は発生しない。また、このときは変速をしない定常走行であり、変速機構5の可動部の発熱は小さいため、油圧制御装置6から変速機構5の潤滑油路5Lへの潤滑油の供給量は小流量としている。
ここで、信号ソレノイドバルブSRがオン状態にスティックしたり、あるいは信号ソレノイドバルブSRへのバッテリからの通電がオン状態のまま変わらなくなってしまったりするなどの信号ソレノイドバルブSRから信号圧PSRが出力され続けるオンフェールが発生した場合、即ち異常状態を発生した場合について説明する。この場合、潤滑油路5Lへの潤滑油の供給量が小流量のままになってしまうので、変速を行うために変速機構5の可動部5cの発熱が大きくなるときに可動部5cが過熱してしまう虞がある。そこで、ECU7は、レギュレータバルブ32を制御することでライン圧PLをその状況での最大になるように調圧する。これにより、潤滑油路5Lへの潤滑油の供給量を確保するようにできる。尚、ここでの異常状態とは、レギュレータバルブ32を制御することでライン圧PLをその状況での最大になるように調圧するようになるフェールセーフや機械的に正常でない状態を意味している。具体的には、上述した信号ソレノイドバルブSRからの信号圧PSRのオンフェールや、何かのフェールにより変速機能を確保する必要が生じた場合などである。
一方、このようなレギュレータバルブ32を制御することでライン圧PLをその状況での最大になるように調圧する異常事態が発生すると、潤滑切換バルブ34は第1の状態であることから、電動オイルポンプ31からの作動油の油路が詰まって吐出が阻害され、電動オイルポンプ31に大きな負荷が掛かってしまう。そこで、本実施の形態では、ECU7は、潤滑切換バルブ34を、電動オイルポンプ31を潤滑油路14に連通すると共にレギュレータバルブ32とは遮断する第2の状態に切り換える。即ち、ECU7は、潤滑切換バルブ34が第1の状態である場合で、かつ、異常状態が発生したことに対応してレギュレータバルブ32を制御することによりライン圧PLが最大になるように調圧した場合に、潤滑切換バルブ34を第2の状態に切り換える。これにより、電動オイルポンプ31からの作動油の油路が詰まることが防止され、電動オイルポンプ31が過負荷状態であることを解消することができる。
このときは、ハイブリッド車両100はエンジン2の駆動を停止させてEV走行しており、機械式オイルポンプ30を駆動させるのはモータ4のみであるが、電動オイルポンプ31からの油圧PEOPは全て潤滑油路14に供給されてしまっており、油路a1には供給されていない。この状態では、ハイブリッド車両100が高速走行していれば機械式オイルポンプ30からの作動油の供給量を十分に確保することができるが、例えば、エンジン2の駆動が停止したまま、低速走行になると、機械式オイルポンプ30の回転速度が小さくなってしまい、機械式オイルポンプ30からの作動油の供給量を十分に確保することが困難になる可能性がある。この場合、ライン圧PLの不足により、変速機構5の可動部5cを制御できなくなる虞がある。
そこで、本実施の形態では、このような場合に、エンジン2を駆動して機械式オイルポンプ30を駆動する。これにより、低速走行であっても、機械式オイルポンプ30の回転速度をエンジン2の駆動により十分に大きくして、機械式オイルポンプ30からの作動油の供給量を十分に確保することができ、変速機構5の可動部5cを確実に動作させることができる。即ち、ECU7は、クラッチSSCを解放状態にしてエンジン2を停止してモータ4の駆動力により走行中であると共に潤滑切換バルブ34が第1の状態である場合で、かつ、異常状態が発生したことに対応してレギュレータバルブ32を制御することによりライン圧PLが最大になるように調圧した場合に、潤滑切換バルブ34を第2の状態に切り換えて、エンジン2を駆動して機械式オイルポンプ30から油圧PMOPを出力可能である。
尚、本実施の形態では、モータ切離しクラッチCMを係合することで、リヤモータ20を駆動源として後輪12を駆動させることができる。このとき、前輪11をモータ4及びエンジン2の少なくとも一方の駆動力で回転させることで、四輪駆動を実現することができる。また、変速機構5の第1クラッチC1を解放状態にし、変速機構5をニュートラル状態にして入力軸5aと出力軸5bとの駆動連結を切り離し、リヤモータ20を駆動源として後輪12を利用して後輪走行するようにしてもよい。このとき、エンジン2を駆動することでモータ4によって発電し、発生した電力をバッテリ23に充電したり、リヤモータ20を駆動するために利用することができる。即ち、このハイブリッド車両100では、第1クラッチC1を解放状態にして、エンジン2を駆動してモータ4により発生した電力を利用して、リヤモータ20を駆動して走行可能である。これにより、エンジン2とモータ4とリヤモータ20を利用して、シリーズ方式のハイブリッド車両100として退避走行することができる。
以上説明したように、本実施の形態のハイブリッド駆動装置3によれば、ECU7は、潤滑切換バルブ34が第1の状態である場合で、かつ、異常状態が発生したことに対応してレギュレータバルブ32を制御することによりライン圧PLが最大になるように調圧した場合に、潤滑切換バルブ34を第2の状態に切り換えるようにしている。このため、電動オイルポンプ31からの油圧PEOPが機械式オイルポンプ30からの油圧PMOPを補助してライン圧PLを生成している時に異常状態の発生によりレギュレータバルブ32によりライン圧PLが最大になるように調圧された場合でも、電動オイルポンプ31を保護することができる。これにより、電動オイルポンプ31に大きな負荷が掛かった状態が長時間続いてしまうことを回避し、電動オイルポンプ31の寿命を短くしてしまうことを防止できる。
また、本実施の形態のハイブリッド駆動装置3によれば、ECU7は、クラッチSSCを解放状態にしてエンジン2を停止してモータ4の駆動力により走行中であると共に潤滑切換バルブ34が第1の状態である場合で、かつ、異常状態が発生したことに対応してレギュレータバルブ32を制御することによりライン圧PLが最大になるように調圧した場合に、潤滑切換バルブ34を第2の状態に切り換えて、エンジン2を駆動して機械式オイルポンプ30から油圧PMOPを出力可能である。これにより、ハイブリッド車両100が低速走行であっても、機械式オイルポンプ30の回転速度をエンジン2の駆動により十分に大きくして、機械式オイルポンプ30からの作動油の供給量を十分に確保することができる。このため、ライン圧PLの不足により変速機構5の可動部5cを制御できなくなることを回避して、変速機構5の可動部5cを確実に動作させることができる。
また、本実施の形態のハイブリッド駆動装置3によれば、供給対象部はクラッチSSCの潤滑油路14としている。そして、潤滑切換バルブ34が第1の状態であるときは潤滑油路14に油圧が供給されず、第2の状態であるときは潤滑油路14に油圧が供給される。また、クラッチSSCは、潤滑切換バルブ34が第1の状態であるときは解放状態であり、第2の状態であるときは通常は係合状態である。このため、クラッチSSCが解放状態であるときは潤滑油路14に油圧が供給されず、クラッチSSCが係合状態であるときは潤滑油路14に油圧が供給されるようになり、燃費を悪くすることなく、クラッチSSCの潤滑を実現することができる。
また、本実施の形態のハイブリッド車両100によれば、前輪11を駆動可能なハイブリッド駆動装置3とは別の動力伝達系を有するリヤモータ20により後輪12を駆動可能にしている。このため、四輪駆動による走行は勿論、第1クラッチC1を解放状態にして、エンジン2を駆動してモータ4により発生した電力を利用して、リヤモータ20を駆動して後輪駆動による走行を実現することができる。これにより、エンジン2とモータ4とリヤモータ20を利用して、シリーズ方式のハイブリッド車両100として退避走行することができる。
尚、上述した本実施の形態においては、ハイブリッド駆動装置3は1モータパラレル式のハイブリッド車両100に搭載された車両用駆動装置としているが、これには限られない。車両用駆動装置としては、少なくとも、機械式オイルポンプ30と、電動オイルポンプ31と、変速機構5と、油圧制御装置6とを備え、電動オイルポンプ31をレギュレータバルブ32に連通する第1の状態と、電動オイルポンプ31を潤滑油路14に連通すると共にレギュレータバルブ32とは遮断する第2の状態と、に制御圧により切換可能な潤滑切換バルブ34を有するものであれば、適用することができる。
例えば、車両用駆動装置はモータ4及びクラッチSSCを有さずにエンジン2の出力軸2aが変速機構5の入力軸5aに直接的に駆動連結されるものとしてもよい。この場合、エンジン2及びリヤモータ20の少なくとも一方の駆動により、走行することができる。そして、エンジン2を停止してリヤモータ20の駆動力により走行中であると共に潤滑切換バルブ34が第1の状態である場合で、かつ、異常状態が発生したことに対応してレギュレータバルブ32を制御することによりライン圧PLが最大になるように調圧した場合に、潤滑切換バルブ34を第2の状態に切り換えて、第1クラッチC1を解放状態にして、エンジン2を駆動して機械式オイルポンプ30から油圧を出力可能であるようにしてもよい。
尚、本実施の形態は、以下の構成を少なくとも備える。本実施の形態の車両用駆動装置(3)の油圧制御装置(6)は、車両(100)を走行するための駆動源(2,4)により駆動される入力部材(5a)と、車輪(11)に駆動連結された出力部材(5b)と、を有し、前記入力部材(5a)と前記出力部材(5b)との間の変速比を油圧の給排により変更可能な変速機構(5)と、前記駆動源(2,4)により駆動される機械式オイルポンプ(30)と、電気により駆動される電動オイルポンプ(31)と、前記電動オイルポンプ(31)から出力される油圧(PEOP)に基づく油圧を供給可能な供給対象部(14)と、を備える車両用駆動装置(3)の油圧制御装置(6)において、前記機械式オイルポンプ(30)及び前記電動オイルポンプ(31)の少なくとも一方から出力される油圧を、前記変速機構(5)を制御するための元圧(PL)に調圧可能なレギュレータバルブ(32)と、制御圧(PSRL)を調圧して供給可能なソレノイドバルブ(SRL)と、前記電動オイルポンプ(31)を前記レギュレータバルブ(32)に連通する第1の状態と、前記電動オイルポンプ(31)を前記供給対象部(14)に連通すると共に前記レギュレータバルブ(32)とは遮断する第2の状態と、に前記制御圧(PSRL)により切換可能な切換えバルブ(34)と、を備え、前記切換えバルブ(34)が前記第1の状態である場合で、かつ、異常状態が発生したことに対応して前記レギュレータバルブ(32)を制御することにより前記元圧(PL)が最大になるように調圧した場合に、前記切換えバルブ(34)を前記第2の状態に切り換える。
この構成によれば、電動オイルポンプ(31)からの油圧(PEOP)が機械式オイルポンプ(30)からの油圧(PMOP)を補助してライン圧(PL)を生成している時に異常状態の発生によりレギュレータバルブ(32)によりライン圧(PL)が最大になるように調圧された場合でも、電動オイルポンプ(31)を保護することができる。これにより、電動オイルポンプ(31)に大きな負荷が掛かった状態が長時間続いてしまうことを回避し、電動オイルポンプ(31)の寿命を短くしてしまうことを防止できる。
また、本実施の形態の車両用駆動装置(3)の油圧制御装置(6)は、エンジン(2)の出力軸(2a)と前記変速機構(5)の入力部材(5a)との間の動力伝達経路に設けられ、前記変速機構(5)の前記入力部材(5a)に駆動連結された回転軸(4a)を有する前記駆動源(4)としての第1の回転電機(4)と、前記エンジン(2)の前記出力軸(2a)と前記第1の回転電機(4)の前記回転軸(4a)との間に介在され、前記エンジン(2)の前記出力軸(2a)と前記第1の回転電機(4)の前記回転軸(4a)との動力伝達を接断可能なクラッチ(SSC)と、を備え、前記クラッチ(SSC)を解放状態にして前記エンジン(2)を停止して前記第1の回転電機(4)の駆動力により走行中であると共に前記切換えバルブ(34)が前記第1の状態である場合で、かつ、異常状態が発生したことに対応して前記レギュレータバルブ(32)を制御することにより前記元圧(PL)が最大になるように調圧した場合に、前記切換えバルブ(34)を前記第2の状態に切り換えて、前記エンジン(2)を駆動して前記機械式オイルポンプ(30)から油圧(PMOP)を出力可能である。
この構成によれば、車両(100)が低速走行であっても、機械式オイルポンプ(30)の回転速度をエンジン(2)の駆動により十分に大きくして、機械式オイルポンプ(30)からの作動油の供給量を十分に確保することができる。このため、元圧(PL)の不足により変速機構(5)を制御できなくなることを回避して、変速機構(5)を確実に動作させることができる。
また、本実施の形態の車両用駆動装置(3)の油圧制御装置(6)は、前記クラッチ(SSC)は、油圧の供給により潤滑がなされる前記供給対象部(14)としての潤滑部(14)を有する。
ここで、切換えバルブ(34)が第1の状態であるときは供給対象部(14)に油圧が供給されず、第2の状態であるときは供給対象部(14)に油圧が供給される。また、クラッチ(SSC)は、切換えバルブ(34)が第1の状態であるときは解放状態であり、第2の状態であるときは通常は係合状態である。このため、この構成によれば、クラッチ(SSC)が解放状態であるときは供給対象部(14)に油圧が供給されず、クラッチ(SSC)が係合状態であるときは供給対象部(14)に油圧が供給されるようになり、燃費を悪くすることなく、クラッチ(SSC)の潤滑を実現することができる。
また、本実施の形態のハイブリッド車両(100)は、前記の車両用駆動装置(3)と、第2の回転電機(20)と、前輪(11)と、後輪(12)と、を備え、前記前輪(11)及び前記後輪(12)の一方は、前記出力部材(5b)に駆動連結され、前記前輪(11)及び前記後輪(12)の他方は、前記第2の回転電機(20)に駆動連結される。
この構成によれば、前輪(11)を駆動可能な車両用駆動装置(3)とは別の動力伝達系を有する第2の回転電機(20)により後輪(12)を駆動可能にしている。このため、四輪駆動による走行は勿論、エンジン(2)を駆動して第1の回転電機(4)により発生した電力を利用して、第2の回転電機(20)を駆動して二輪駆動による走行を実現することができる。これにより、エンジン(2)と第1の回転電機(4)と第2の回転電機(20)を利用して、シリーズ方式の車両(100)として退避走行することができる。
また、本実施の形態のハイブリッド車両(100)は、前記の車両用駆動装置(3)と、回転電機(20)と、前輪(11)と、後輪(12)と、を備え、前記前輪(11)及び前記後輪(12)の一方は、前記出力部材(5b)に駆動連結され、前記前輪(11)及び前記後輪(12)の他方は、前記回転電機(20)に駆動連結され、前記変速機構(5)は、前記入力部材(5a)と前記出力部材(5b)との動力伝達を接断可能な係合要素(C1)を有し、前記駆動源(2,4)としてのエンジン(2)を停止して前記回転電機(20)の駆動力により走行中であると共に前記切換えバルブ(34)が前記第1の状態である場合で、かつ、異常状態が発生したことに対応して前記レギュレータバルブ(32)を制御することにより前記元圧(PL)が最大になるように調圧した場合に、前記切換えバルブ(34)を前記第2の状態に切り換えて、前記係合要素(C1)を解放状態にして、前記エンジン(2)を駆動して前記機械式オイルポンプ(30)から油圧を出力可能である。
この構成によれば、車両用駆動装置が、例えば、回転電機(4)やエンジン(2)と回転電機(4)とを接断可能なクラッチ(SSC)を有さずに、エンジン(2)の出力軸(2a)が変速機構(5)の入力部材(5a)に直接的に駆動連結されるものであっても、適用することができる。