JP7131241B2 - インクジェット記録方法、インクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録装置の吐出ヘッドのノズルから微小なインク滴を吐出させて、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録方法が知られている。近年では、普通紙などインクの吸収性に優れた記録媒体に対する画像の記録だけでなく、例えば、アート紙、コート紙など、インクの吸収性の小さい低吸収性記録媒体や、プラスチックフィルムなどインクをほとんど吸収しない非吸収性記録媒体に対する画像の記録にも用いられるようになってきている。そして、このような低吸収性記録媒体や非吸収性記録媒体に対する画像の記録にも、水をベースとした水系のインクジェットインクが用いられるようになってきている。
白色色材を含有した水系インクジェットインクは従来、低吸収性記録媒体や非吸収性記録媒体のうち、記録面が透明、または非白色である記録媒体に対して、白色画像を形成する目的で使用されてきた。例えば、特許文献1に記載されているように、非吸収性記録媒体に、白色色材を含有した水系インクジェットインクを用いて、白色系画像を記録する第1記録工程と、白色系画像を乾燥し、乾燥率を40%~80%とする乾燥工程と、白色以外の色材を含む着色インクを用いて、インクジェット法によって、乾燥率が40%~80%の白色系画像に着色画像を記録する第2記録工程と、を含むインクジェット記録方法が開示されている。
また、特許文献2に記載されているように、空孔率が40%以上、80%以下であり、数平均粒子径が50nm以上、200nm以下であり、かつ粒子径が1μm以上の粒子の割合が1000ppm以下である白色中空粒子を含むインクジェットインクを用いて、白色度の高い印刷物が得られることが知られている。
特開2013-95078号公報 特開2014-122310号公報
水を主な溶媒とする水系のインクジェットインクは、揮発性有機化合物の含有割合が水系以外のインクジェットインクと比べ低いため、低環境負荷という観点で優れており、屋内装飾用途として用いられる記録物に対する印刷適正が高い。このような記録物の場合、光沢感のある意匠性の高い記録物の需要がある。
上記特許文献1のインクジェット記録方法や上記特許文献2のインクジェットインクを用いる記録方法では、白色色材を含有した水系のインクジェットインクを用いて、白色で、かつ凹凸がある記録面を有する記録媒体に対して、白色画像を形成することで、光沢感のある記録物を作成する方法は明らかになっていなかった。
また、光沢感を表現する方法としては、一般に、色材を含まず、樹脂を含有した水系クリアインクを用いて、インクジェット法を使用して記録媒体に対して記録する方法が知られている。この方法はインク付着部の平滑性を生かして光沢感を出すものである。しかし、屋内装飾用途として用いられる記録媒体、例えば、壁紙や布などの場合、記録面に繊維感やテクスチャを有するものも多く存在するため、上記水系クリアインクを用いても、光沢感のある記録物を得ることが難しいという課題があった。
本願のインクジェット記録方法は、L*値が75以上で、光沢度が30以下の白色記録面を有する記録媒体に、インクジェット法により、白色色材を含む水系白色インクを付着させるインク付着工程と、水系白色インクを付着させた記録媒体を乾燥させる乾燥工程と、を備え、乾燥後の水系白色インクの付着部の白色記録面に対する光沢度比を2倍以上とすることを特徴とする。
上記のインクジェット記録方法において、インク付着工程における記録媒体の単位面積あたりの水系白色インクの付着量が、8mg/inch2以上であることが好ましい。
上記のインクジェット記録方法において、水系白色インクにおける白色色材の含有量は、5質量%以上、14質量%以下であることが好ましい。
上記のインクジェット記録方法において、白色色材の平均粒子径は、200nm以上、380nm以下であることが好ましい。
上記のインクジェット記録方法において、水系白色インクは、樹脂を含み、水系白色インクにおける樹脂の含有量は、5質量%以上、11質量%以下であることが好ましい。
上記のインクジェット記録方法において、記録媒体の白色記録面の光沢度は、10以下であることが好ましい。
上記のインクジェット記録方法において、記録媒体の白色記録面における中心線平均粗さRaは、2μm以上であることが好ましい。
上記のインクジェット記録方法において、記録媒体が、低吸収性記録媒体または非吸収性記録媒体であることが好ましい。
上記のインクジェット記録方法において、インク付着工程は、記録媒体に、さらに水系クリアインクを付着させる工程を含むことが好ましい。
上記のインクジェット記録方法において、インク付着時の記録媒体の表面温度が28℃以上50℃以下であることが好ましい。
上記のインクジェット記録方法において、乾燥工程は、60℃以上、120℃以下の記録媒体の表面温度で、記録媒体を乾燥させることが好ましい。
本願のインクジェット記録装置は、上記に記載のいずれかのインクジェット記録方法で記録を行うことを特徴とする。
インクジェット記録装置の構成を示す模式断面図。 インクジェット記録装置のキャリッジ周辺の構成の一例を示す斜視図。 インクジェットヘッドにおけるノズル群の配列の一例を模式的に示す概略平面図。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
本実施形態に係るインクジェット記録方法の一態様は、白色度を規定するL*値が75以上で、光沢度が30以下の白色記録面を有する記録媒体に、インクジェット法により、白色色材を含む水系白色インクを付着させるインク付着工程と、水系白色インクを付着させた記録媒体を乾燥させる乾燥工程と、を備え、乾燥後の水系白色インクの付着部の、白色記録面に対する光沢度比を2倍以上とすることを特徴とする。
以下、本実施形態に係るインクジェット記録方法の一例について、インクジェット記録装置、インクジェットヘッド、水系白色インク、水系クリアインク、処理液、記録媒体、インクジェット記録方法の順に説明する。
<インクジェット記録装置>
本実施形態に係るインクジェット記録方法が実施されるインクジェット記録装置の一例をについて図面を参照しながら説明する。
図1は、インクジェット記録装置の構成を示す模式断面図である。図2は、インクジェット記録装置のキャリッジ周辺の構成の一例を示す斜視図である。図1および図2に示すように、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2と、IRヒーター3と、プラテンヒーター4と、加熱ヒーター5と、冷却ファン6と、プレヒーター7と、通気ファン8と、キャリッジ9と、プラテン11と、キャリッジ移動機構13と、搬送手段としてのモーター14と、制御部CONTを備える。インクジェット記録装置1は、図2に示す制御部CONTにより、インクジェット記録装置1における全体の動作が制御される。
インクジェットヘッド2は、インクをノズル(図3参照)から吐出して付着させることにより記録媒体10に記録を行う手段である。本実施形態においてインクジェットヘッド2のノズルから吐出されるインクとは、水系白色インク、水系クリアインク(以下、「クリアインク」ともいう)を総称したものである。このようなインクの詳細については後述する。また、インクジェットヘッド2のノズルからインクの成分を凝集させる処理液を吐出させてもよい。インクジェットヘッド2は、ライン方式のインクジェットヘッド(以下、「ラインヘッド」ともいう)、またはシリアル方式のインクジェットヘッド(以下、「シリアルヘッド」ともいう)のいずれであってもよい。ラインヘッドの場合、ヘッドを固定して、記録媒体10を副走査方向(図2のT1―T2方向)に沿って移動させ、この移動に連動してラインヘッドのノズルからインク滴を吐出させることにより、記録媒体上に画像を記録することができる。また、シリアルヘッドの場合、シリアルヘッドを主走査方向(図2のS1―S2方向)に沿って移動させ、この移動に連動してシリアルヘッドのノズルからインク滴を吐出させることにより、記録媒体10上に画像を記録することができる。これを主走査、または単に走査、またはパスと呼ぶ。図に示す本実施形態では、インクジェットヘッド2としてシリアルヘッドを使用する。インクジェットヘッド2は図2に示すキャリッジ9に搭載される。インクジェットヘッド2は、キャリッジ9を記録媒体10の主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構13の動作により、記録媒体10に対して相対的に主走査方向に複数回走査される。
ここで、主走査方向(以下、「MS」ともいう)は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9の移動する方向である。図1においては、矢印Xで示す記録媒体10の搬送方向である副走査方向(以下、「SS」ともいう)に交差する方向である。図2においては、記録媒体10の幅方向、つまり、S1-S2の方向が主走査方向であり、T1―T2の方向が副走査方向である。なお、1回の走査で主走査方向、つまり、インクジェット記録装置1の左右方向の何れか一方の方向に走査が行われる。そして、インクジェットヘッド2の主走査と、記録媒体10の搬送である副走査を交互に繰り返し行うことで、記録媒体10に対して記録する。なお、副走査方向への記録媒体10の搬送を副走査ともいう。
インクジェットヘッド2におけるインクの吐出方式は従来公知の方式を使用することができる。例えば、ピエゾ素子の機械的な変形によるインク収容部の容積変化を利用して、インクを吐出する方式や、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて、インク中に気泡を発生させ吐出させる方式などを使用することができる。本実施形態では、ピエゾ素子の機械的変形によりインクを吐出する方式を使用する。インクジェットヘッド2およびキャリッジ9の周辺の構成の詳細は、後述する。
インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2からのインクや処理液の吐出時に記録媒体10を加熱するための、つまり、一次加熱用のIRヒーター3およびプラテンヒーター4を備える。本実施形態において、インク付着工程での記録媒体10を加熱する際には、IRヒーター3またはプラテンヒーター4の少なくとも1つを用いればよい。
IRヒーター3を用いると、インクジェットヘッド2側から記録媒体10を加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2も同時に加熱されやすいが、プラテンヒーター4などの記録媒体10の裏面から加熱される場合と比べて、記録媒体10の厚みの影響を受けずに昇温することができる。また、記録媒体10を加熱する際にプラテンヒーター4を用いると、インクジェットヘッド2側と反対側から記録媒体10を加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2が比較的加熱されにくくなる。なお、IRヒーター3またはプラテンヒーター4を用いて加熱したときの、記録媒体10の表面温度を、一次加熱温度ともいう。
IRヒーター3またはプラテンヒーター4による、記録媒体10の表面温度の上限は50℃以下であることが好ましく、45℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることがさらに好ましく、38℃以下であることが特に好ましい。また、記録媒体10の表面温度の下限は25℃以上であることが好ましく、28℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましく、32℃以上であることが特により好ましい。これにより、IRヒーター3およびプラテンヒーター4から受ける輻射熱が少ない又は受けなくなることから、インクジェットヘッド2内のインクの乾燥および組成変動を抑制でき、インクジェットヘッド2の内壁に対するインクや樹脂の溶着が抑制される。また、インクを早期に固定することができ、画質を向上させることができる。
加熱ヒーター5は、記録媒体10に付着されたインクを乾燥および固化させる、つまり、二次加熱用のヒーターである。加熱ヒーター5が、画像が記録された記録媒体10を加熱することにより、インク中に含まれる水分などがより速やかに蒸発飛散して、インク中に含まれる樹脂によってインク膜が形成される。このようにして、記録媒体10上においてインク膜が強固に定着または接着して造膜性が優れたものとなり、高画質で耐擦性が高い画像が短時間で得られる。加熱ヒーター5による記録媒体10の表面温度の上限は120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることがさらに好ましい。また、記録媒体10の表面温度の下限は60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。温度が前記範囲にあることにより、高画質な画像が短時間で得られる。なお、加熱ヒーター5を用いて加熱したときの、記録媒体10の表面温度を、二次加熱温度ともいう。
インクジェット記録装置1は、冷却ファン6を有していてもよい。記録媒体10に記録されたインクを乾燥後、冷却ファン6により記録媒体10上のインクを冷却することにより、記録媒体10上に密着性よくインク塗膜を形成することができる。
また、インクジェット記録装置1は、記録媒体10に対してインクが付着される前に、記録媒体10を予め加熱するプレヒーター7を備えていてもよい。さらに、インクジェット記録装置1は、記録媒体10に付着したインクや処理液がより効率的に乾燥するように通気ファン8を備えていてもよい。
キャリッジ9の下方には、記録媒体10が搬送されるプラテン11と、キャリッジ9を記録媒体10に対して相対的に移動させるキャリッジ移動機構13と、記録媒体10を副走査方向に搬送するローラーと、ローラーを駆動する搬送手段としてのモーター14とを備える。キャリッジ移動機構13とモーター14の動作は、制御部CONTにより制御される。
<インクジェットヘッド>
本実施形態において、インクジェットヘッド2は、キャリッジ9の移動によって移動しながら、記録媒体10上にインクや処理液を吐出して付着させる。このように、本実施形態では、インクジェットヘッド2を記録媒体10に対して相対的に主走査方向に複数回走査して記録する。
本実施形態において、インクジェットヘッド2にインクや処理液を供給するカートリッジ12は、独立した複数のカートリッジからなる。カートリッジ12は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9に対して着脱可能に装着される。複数のカートリッジ12のそれぞれには異なる種類のインクが充填されており、カートリッジ12から各ノズルにインクや処理液が供給される。なお、本実施形態においては、カートリッジ12はキャリッジ9に装着される例を示しているが、これに限定されず、キャリッジ9以外の場所に設けられ、供給管(図示せず)によって各ノズルに供給される形態でもよい。
図3は、インクジェットヘッドにおけるノズル面のノズル群の配列の一例を模式的に示す概略平面図である。図3に示すように、インクジェットヘッド2は、インクや処理液を吐出する複数のノズルを含むノズル面2aを有する。図3に示す例では、インクジェットヘッド2のノズル面2aは、水系白色インクやクリアインクが吐出されるノズルが副走査方向(図3のSS方向)に複数配列される複数のインクノズル群15a,15b,15c,15dと、処理液が吐出される処理液ノズル群16を有する。図3では、複数のインクノズル群15a,15b,15c,15dと処理液ノズル群16は、副走査方向に対して半ピッチずつずれた2列のノズル列からそれぞれ構成されるが、これに限定されるものではない。複数のインクノズル群15a,15b,15c,15dのうち一部のみを使用しても問題はなく、また複数のインクノズル群15a,15b,15c,15dのうち一部から水系白色インクやクリアインク以外のインク(例えば、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクなどの着色インク)が吐出される構成であってもよい。処理液ノズル群16は、複数個あってもよい。図3に示す例では処理液ノズル群16は1個である。なお、複数のインクノズル群15a,15b,15c,15dと、処理液ノズル群16は主走査方向(図3のMS方向)に間隔を置いて並列して配置されている。
さらに、本実施形態において、図3に示すノズル群の配列の一例では、処理液ノズル群16が図の主走査方向における左端にある例を示したが、主走査方向の左端と反対の右端に処理液ノズル群16が配置される配列としてもよい。また、図3の主走査方向における左端と右端とに、それぞれ処理液ノズル群16が配置される配列としてもよい。また、図3のインクノズル群15a,15b,15c,15dの間に、処理液ノズル群16が配置される配列としてもよい。
<水系白色インク>
次に、本実施形態に係るインクジェット記録方法で用いられるインクについて説明する。
本実施形態で用いられるインクは、水を主成分とした水系のインクジェットインクであることを特徴とする。
水系のインクジェットインク(以下、「水系インク」ともいう)中の水の含有量は40質量%以上が好ましく、45質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。水系インクは、用いられる色材の種類が異なるなどにより色相角が異なること以外は、その基本組成は独立して同様のものを例示することができる。
また、本実施形態において、インクは有機溶剤を含んでも含まなくてもよく、インク中の有機溶剤の含有量は、そのインク100質量%に対して30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。また、必要に応じて、色材、樹脂、ワックス、消泡剤、界面活性剤を含むことができる。
また、本実施形態において、使用される水系のインクジェットインクは、水系白色インク(以下、「白色インク」ともいう)および水系クリアインク(以下、「クリアインク」ともいう)である。ただし、インクジェットヘッド2のノズル面2aに存在する、副走査方向に複数配列される複数のインクノズル群15a,15b,15c,15dの中には、白色以外の着色インクが吐出されるノズル群が含まれていてもよい。
白色インクとしては、インクが、白色のインクであることを伺わせる名称で呼称、販売されるものが挙げられる。また、後述する記録媒体10の白色記録面に、白色インクを、記録媒体10の地が全てインクで覆われているように付着させ、付着部を、後述する白色記録面と同様の方法で測色した時に、L*が75以上となるようなインクである。さらには、該測色値のa*、b*が、-4.5≦a*≦2、-10≦b*≦3を満たすことが好ましく、-2≦a*≦1.5、-7≦b*≦2.5を満たすことがより好ましい。
以下、本実施形態で用いられる水系白色インクに含まれる成分および含まれ得る成分について説明する。
(水)
本実施形態において、白色インクは水を含有する。水は、白色インクの主となる媒体であり、乾燥によって蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いると、白色インクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるので好適である。
水の含有量は、白色インクの全質量に対して、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。水の含有量の上限は、これに限るものでは無いが例えば99質量%以下が好ましい。
(白色色材)
本実施形態において使用する白色インクは白色色材を含んでいる。白色色材としては、染料と顔料のいずれも用いることができる。顔料は、光やガスなどに対して退色しにくい性質を有していることから、好ましく用いられる。顔料を用いて記録媒体上に形成された画像は、画質に優れるだけでなく、耐水性、耐ガス性、耐光性などに優れ、保存性が良好となる。この性質は、特にインク低吸収性または非吸収性の記録媒体上に画像が形成される場合に顕著である。
本実施形態において使用可能な顔料としては、特に制限されないが、無機顔料や有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、例えば、無機金属化合物が挙げられる。無機金属化合物としては、例えば、C.I.ピグメントホワイト6、C.I.ピグメントホワイト18、C.I.ピグメントホワイト21、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、および酸化ジルコニウムを使用することができる。特に金属酸化物が挙げられ好ましい。有機顔料としては、例えば、白色の中空樹脂微粒子および高分子粒子を使用することができる。
上記の白色顔料のうち、酸化チタンが特に好ましい。酸化チタンは屈折率が高く、入射光に対して反射する光量が多くなるため、光沢感のある記録物を得ることができる。
白色インクに含まれ得る白色色材の含有量の下限値は、白色インクの全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。一方、白色インクに含まれ得る白色色材の含有量の上限値は、白色インクの全質量に対して、14質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましい。白色色材の含有量が上記範囲にあることにより、白色インクの保存安定性や沈降回復性、吐出安定性が良好であり、また光沢感のある画像が得られる。
白色色材が顔料である場合には、顔料分散液の状態で用いることができる。顔料分散液は、顔料および溶剤の他、必要に応じて分散剤を含んでもよい。溶剤としては、水およびジエチレングリコールなどの親水性溶剤が挙げられる。また、分散剤としては、スチレン-アクリル酸共重合体が挙げられる。特に制限されないが、分散剤の酸価はその分散性の観点から、20mgKOH/g以上が好ましい。
(有機溶剤)
本実施形態において、白色インクは有機溶剤を含有することが好ましい。白色インクが有機溶剤を含有することにより、記録の際にインクジェット法によるノズルの耐目詰まり性が良好になる。
白色インクに用いる有機溶剤としては、水溶性有機溶剤であることが好ましい。水溶性有機溶剤を使用することにより、白色インクの乾燥性が良好となり、画質と耐擦性に優れた画像を得ることができる。
水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、アルカンジオール類、ポリオール類、含窒素溶剤、エステル類、グリコールエーテル類、環状エステル類などが挙げられる。
アルカンジオール類としては、例えば、1,2-アルカンジオール類である、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオールなど、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。アルカンジオール類は、記録媒体に対するインクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用や、記録媒体に対する浸透溶剤としての作用に優れている。これらの中でも、特に、1,2-アルカンジオール類は浸透溶剤としての作用に優れており、好ましい。アルカンジオール類としては、好ましくは炭素数5以上のアルカンのジオールが挙げられる。アルカンの炭素数は5~9であることが好ましく、直鎖型でも分枝型でもよい。
ポリオール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどが挙げられる。1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。ポリオール類は、保湿剤としての作用に優れている。ポリオール類としては、好ましくは2個以上の水酸基を有する炭素数4以下のアルカン、2個以上の水酸基を有する炭素数4以下のアルカンであって水酸基同士が分子間縮合したものが挙げられ、縮合数は2~4が好ましい。ここで、ポリオール類とは、分子中に水酸基を2個以上有する化合物であり、本実施形態において、水酸基数は2又は3であることが好ましい。
含窒素溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、5-メチル-2-ピロリドンなどのピロリドン類が挙げられる。これらは、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。含窒素溶剤は、樹脂の良好な溶解剤として作用し、耐擦性に優れた記録物を得たり、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりを防止したりすることができる。
含窒素溶剤としては、アルコキシアルキルアミド類も挙げることができ、例えば、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミドなどを例示することができる。
含窒素溶剤としてアミド系溶剤も挙げられる。アミド系溶剤としては、環状アミド系溶剤、非環状アミド系溶剤が挙げられ好ましい。環状アミド系溶剤としては上記のピロリドン類などが挙げられる。非環状アミド系溶剤としては上記のアルコキシアルキルアミド類が挙げられる。
含窒素溶剤の白色インクに対する含有量は、好ましくは3質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上25質量%以下であり、好ましくは10質量%以上20質量%以下である。白色インクが含窒素溶剤を含むことにより、耐擦性、画質などがより優れる点で好ましい。
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテートなどのグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネートなどのグリコールジエステル類が挙げられる。
グリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又はジエーテルであればよく、アルキルエーテルが好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、および、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテルなどのアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。これらは、インクの記録媒体に対する濡れ性などを制御することができる。
また、上記のアルキレングリコールは、モノエーテルよりもジエーテルの方が、インク中の樹脂を溶解又は膨潤させやすい傾向があり、形成される画像の耐擦性を向上させる点でより好ましい。
環状エステル類としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、β-ヘキサノラクトン、γ-ヘキサノラクトン、δ-ヘキサノラクトン、β-ヘプタノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、δ-ヘプタノラクトン、ε-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-オクタノラクトン、δ-ノナラクトン、ε-ノナラクトン、ε-デカノラクトンなどの環状エステル類(ラクトン類)、並びに、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1~4のアルキル基によって置換された化合物を挙げることができる。
有機溶剤の含有量は、白色インクの全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、有機溶剤の含有量は、白色インクの全質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲である場合、白色インクの耐目詰まり性や耐擦性がより優れ、好ましい。
有機溶剤の標準沸点は、180℃以上が好ましく、200℃以上であることがより好ましく、210℃以上であることがさらに好ましい。また、有機溶剤の標準沸点は、300℃以下であることが好ましく、270℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることがさらに好ましい。有機溶剤の標準沸点が前記範囲である場合、白色インクの耐目詰まり性や耐擦性がより優れ、好ましい。
(樹脂)
本実施形態において、白色インクは樹脂を含有することが好ましい。樹脂は、白色インクを固化させ、さらにインク固化物を記録媒体上に強固に定着させる作用を有する。本実施形態において、樹脂は、白色インク中に溶解された状態または白色インク中に分散された状態のいずれの状態であってもよい。溶解状態の樹脂としては、白色インクの顔料を分散させる場合に使用する、上記の樹脂分散剤を用いることができる。また、分散状態の樹脂としては、白色インクの液媒体に難溶あるいは不溶である樹脂を、微粒子状にして分散させて、すなわちエマルジョン状態、あるいはサスペンジョン状態にして、含ませることができる。
本実施形態において用いられる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、パラフィン樹脂、フッ素樹脂、および水溶性樹脂、並びにこれらの樹脂を構成する単量体を組み合わせた共重合体が挙げられる。共重合体としては、特に限定されないが、例えば、スチレンブタジエン樹脂、スチレンアクリル樹脂が挙げられる。また、樹脂としては、これら樹脂を含むポリマーラテックスを用いることができる。例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂の微粒子を含むポリマーラテックスが挙げられる。なお、樹脂は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂は少なくともアクリル系モノマーを単量体として用いて重合して得た単重合体または共重合体である樹脂である。アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。アクリル樹脂が共重合体の場合、他のモノマーとしてビニル系モノマーを用いたアクリル-ビニル樹脂などが挙げられ、中でもビニル系モノマーとしてスチレンを用いたスチレンアクリル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などが入手しやすく、所望の特性を有する樹脂として得やすい点で好ましい。
樹脂の含有量の合計の下限値は、固形分換算で白色インクの全質量に対して、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは6質量%以上である。また、樹脂の含有量の上限は、白色インクの全質量に対して、好ましくは11質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、記録時の耐目詰まり性を確保すると共に、白色インクに対して低吸収性または非吸収性の記録媒体上においても、耐擦性に優れた画像を形成することができる。
(界面活性剤)
本実施形態において、白色インクは界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤が挙げられ、これらの少なくとも1種を含有することが好ましく、これらの中でもシリコーン系界面活性剤を含有することがより好ましい。白色インクがシリコーン系界面活性剤を含有することにより、白色インクの動的表面張力を下がることで、耐目詰まり性を向上させることができ、また、吐出安定性を確保することができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104,104E,104H,104A,104BC,104DPM,104PA,104PG-50,104S,420,440,465,485,SE,SE-F,504,61,DF37,CT111,CT121,CT131,CT136,TG,GA,DF110D(以上全て商品名、エアープロダクツジャパン株式会社製)が挙げられる。また、オルフィンB,Y,P,A,STG,SPC,E1004,E1010,PD-001,PD-002W,PD-003,PD-004,EXP.4001,EXP.4036,EXP.4051,AF-103,AF-104,AK-02,SK-14,AE-3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)が挙げられる。また、アセチレノールE00,E00P,E40,E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(以上全て商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上全て商品名、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、S-144、S-145(以上全て商品名、旭硝子株式会社製)、FC-170C、FC-430、フロラード-FC4430(以上全て商品名、住友スリーエム株式会社製)、FSO、FSO-100、FSN、FSN-100、FS-300(以上全て商品名、デュポン社製)、FT-250、251(以上全て商品名、株式会社ネオス製)が挙げられる。
界面活性剤を含有する場合には、その含有量は、白色インクの全質量に対して0.1質量%以上1.5質量%以下とすることができ、0.5質量%以上1質量%以下であることが好ましい。
(ワックス)
本実施形態において、白色インクはワックスを含有してもよい。ワックスとしては、白色インク中で溶解するもの、又は、エマルションなど微粒子の形態で分散するものが挙げられる。このようなワックスを用いることにより、耐擦性により優れた記録物が得られる傾向にある。特に、記録媒体上の白色インクを含むインク塗膜の表面、すなわち、空気とインク塗膜の界面に偏在することによる耐擦性の向上に寄与する傾向がある。このようなワックスとしては、特に制限されないが、例えば、高級脂肪酸と高級1価アルコールまたは2価アルコールとのエステルワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス若しくはオレフィンワックス又はこれらの混合物が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンまたはその誘導体から製造したワックスおよびそのコポリマー、具体的には、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリブチレン系ワックスなどが挙げられる。ポリオレフィンワックスとしては、市販されているものを利用することができ、具体的には、ノプコートPEM17(商品名、サンノプコ株式会社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製)、AQUACER515、AQUACER593(以上全て商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)などを用いることができる。
ワックスの含有量は、白色インクの全質量に対して、好ましくは0.1~5質量%であり、好ましくは0.2~4質量%であり、好ましくは0.3~3質量%である。ワックスの含有量が0.1質量%以上であることにより、上記のとおり、耐擦性がより向上する傾向にある。また、ワックスの含有量が5質量%以下であることにより、インクの粘度が低下し吐出安定性に優れ、耐目詰まり性に優れる傾向にある。また、インクの保存安定性も良好である。
(消泡剤)
本実施形態において、白色インクは消泡剤を含有してもよい。消泡剤としては、特に制限されないが、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、およびアセチレングリコール系消泡剤が挙げられる。消泡剤の市販品としては、BYK-011、BYK-012、BYK-017、BYK-018、BYK-019、BYK-020、BYK-021、BYK-022、BYK-023、BYK-024、BYK-025、BYK-028、BYK-038、BYK-044、BYK-080A、BYK-094、BYK-1610、BYK-1615、BYK-1650、BYK-1730、BYK-1770(以上全て商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)が挙げられる。また、サーフィノールDF37,DF110D,DF58,DF75,DF220,MD-20、エンバイロジェムAD01(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)が挙げられる。消泡剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
消泡剤の含有量は、白色インクの全質量に対して、好ましくは0.03質量%以上0.7質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.08質量%以上0.3質量%以下である。
(その他の含有成分)
本実施形態において、白色インクには、その保存安定性およびインクジェットヘッド2の吐出安定性を良好に維持するため、また、目詰まり改善のため、又は白色インクの劣化を防止するため、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、有機溶剤ではない保湿剤、および分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤などの、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
(白色インクの調製方法)
本実施形態において、白色インクは前述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過などをして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラーなどの撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過などを必要に応じて行なうことができる。
(白色インクの物性)
本実施形態において、白色インク中の白色色材の平均粒子径は200nm以上であることが好ましく、220nm以上であることがより好ましい。この範囲にあることで、白色度が高くなり、白色色材として使用することができる。また、白色インク中の白色色材の平均粒子径は380nm以下であることが好ましく、350nm以下であることがより好ましい。平均粒子径が上記の範囲にあることで、白色インクにおける白色色材の沈降回復性が優れ、インクジェットヘッド2からの吐出安定性が高くなる。
白色色材の平均粒子径は、以下のように測定することができる。白色色材を水中に分散させた分散液を1000倍に希釈し、例えば、動的光散乱式(DLS)粒子径分布測定装置Nanotrac Wave II-EX150(商品名、マイクロトラック・ベル社製)を使用することで、体積基準の粒子径分布が得られる。その粒子径分布におけるメジアン径(D50)を白色色材の平均粒子径とする。
また、本実施形態において、白色インクはインクジェット記録用としての画像品質と信頼性とのバランスの観点から、25℃における表面張力が18mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましく、22mN/m以上33mN/m以下であることがさらに好ましい。なお、表面張力は、例えば、自動表面張力計CBVP-Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、ウィルヘルミー(Wilhelmy)法で測定することができる。具体的には、25℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときに、白金プレートをインク中に引き込もうとする力を測定することで、表面張力を測定することができる。
また、同様の観点から、本実施形態において、白色インクの25℃における粘度は、3mPa・s(秒)以上10mPa・s(秒)以下であることが好ましく、3mPa・s(秒)以上8mPa・s(秒)以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、25℃環境下で粘弾性試験機MCR300(商品名、アントンパール社製)を使用して、せん断速度200s-1のときの粘度(mPa・s)の値を確認することにより測定することができる。
<クリアインク>
以下、本実施形態で用いられる水系のクリアインクに含まれる成分および含まれ得る成分について説明する。クリアインクとは、記録媒体に着色するために用いるインクではなく、その他の目的で用いるインクである。その他の目的は、記録物の耐擦性の向上や、記録媒体の光沢度の調整などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。そのため、クリアインクは、色材に関すること以外については、水系白色インクと同様の組成を例示することができる。なお、クリアインクは、後述の処理液とは異なり、白色インクおよびクリアインクの成分を凝集させる凝集剤は含まないインクである。
本実施形態で用いる記録媒体は、記録面に凹凸があるものも含まれており、記録面の平滑性が高い記録媒体と比べて耐擦性が劣る傾向がある。この点、クリアインク付着工程を備えることにより、得られる記録物の耐擦性が向上する傾向にある。クリアインクの記録媒体への付着方法としては、白色インクと同様、インクジェット方式を用いてインクジェットヘッド2から吐出する方法が挙げられる。上記の方法は、インクジェット記録装置1を小型にすることができる点で優れている。
(水)
本実施形態において、クリアインクは水を含有する。水は、クリアインクの主となる媒体であり、乾燥によって蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いると、クリアインクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるので好適である。
水の含有量は、クリアインクの全質量に対して、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。水の含有量の上限は、限るものでは無いが例えば99質量%以下が好ましい。
(色材)
本実施形態において、クリアインクの色材の含有量は、クリアインクの全質量に対して、0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましく、含有量の下限は0質量%であることが特に好ましい。色材の具体例については、上記の水系白色インクで例示した白色色材と同じものを使用できる。
(有機溶剤)
本実施形態において、クリアインクは有機溶剤を含有することが好ましい。クリアインクが有機溶剤を含有することにより、記録の際にインクジェット法によるノズルの耐目詰まり性が良好になる。
クリアインクに用いる有機溶剤としては、水溶性有機溶剤であることが好ましい。水溶性有機溶剤を使用することにより、クリアインクの乾燥性が良好となり、画質と耐擦性に優れた画像を得ることができる。水溶性有機溶剤としては、上記の水系白色インクで例示した有機溶剤と同様のものを使用できる。
有機溶剤の含有量は、クリアインクの全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、有機溶剤の含有量は、クリアインクの全質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲である場合、クリアインクの耐目詰まり性や耐擦性がより優れ、好ましい。
有機溶剤の標準沸点は、180℃以上が好ましく、200℃以上であることがより好ましく、210℃以上であることがさらに好ましい。また、有機溶剤の標準沸点は、300℃以下であることが好ましく、270℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることがさらに好ましい。有機溶剤の標準沸点が前記範囲である場合、インクの耐目詰まり性や耐擦性がより優れ、好ましい。
(樹脂)
本実施形態において、クリアインクは樹脂を含有することが好ましい。樹脂は、クリアインクを固化させ、さらにインク固化物を記録媒体上に強固に定着させる作用を有する。本実施形態において、樹脂は、クリアインク中に溶解された状態またはクリアインク中に分散された状態のいずれの状態であってもよい。溶解状態の樹脂としては、クリアインクの顔料を分散させる場合に使用する、上記の樹脂分散剤を用いることができる。また、分散状態の樹脂としては、クリアインクの液媒体に難溶あるいは不溶である樹脂を、微粒子状にして分散させて、すなわちエマルジョン状態、あるいはサスペンジョン状態にして、含ませることができる。
本実施形態において用いられる樹脂としては、上記の水系白色インクで例示した樹脂と同様のものを使用できる。樹脂の含有量の合計の下限値は、固形分換算でクリアインクの全質量に対して、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは6質量%以上である。また、樹脂の含有量の上限は、クリアインクの全質量に対して、好ましくは11質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、記録時の耐目詰まり性を確保すると共に、クリアインクに対して低吸収性または非吸収性の記録媒体上においても、耐擦性に優れた画像を形成することができる。
(界面活性剤)
本実施形態において、クリアインクは界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤が挙げられ、これらの少なくとも1種を含有することが好ましく、これらの中でもシリコーン系界面活性剤を含有することがより好ましい。クリアインクがシリコーン系界面活性剤を含有することにより、クリアインクの動的表面張力を下がることで、耐目詰まり性を向上させることができ、また、吐出安定性を確保することができる。
本実施形態において用いられる界面活性剤としては、上記の水系白色インクで例示した界面活性剤と同様のものを使用できる。界面活性剤を含有する場合には、その含有量は、クリアインクの全質量に対して0.1質量%以上1.5質量%以下とすることができ、0.5質量%以上1質量%以下であることが好ましい。
(ワックス)
本実施形態において、クリアインクはワックスを含有してもよい。ワックスとしては、クリアインク中で溶解するもの、又は、エマルションなど微粒子の形態で分散するものが挙げられる。このようなワックスを用いることにより、耐擦性により優れた記録物が得られる傾向にある。特に、記録媒体上のクリアインクを含むインク塗膜の表面、すなわち、空気とインク塗膜の界面に偏在することによる耐擦性の向上に寄与する傾向がある。このようなワックスとしては、特に制限されないが、例えば、高級脂肪酸と高級1価アルコールまたは2価アルコールとのエステルワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス若しくはオレフィンワックス又はこれらの混合物が挙げられる。
本実施形態において用いられるワックスとしては、上記の水系白色インクで例示したワックスと同様のものを使用できる。ワックスの含有量は、クリアインクの全質量に対して、好ましくは0.1~5質量%であり、好ましくは0.2~4質量%であり、好ましくは0.3~3質量%である。ワックスの含有量が0.1質量%以上であることにより、上記のとおり、耐擦性がより向上する傾向にある。また、ワックスの含有量が5質量%以下であることにより、クリアインクの粘度が低下し吐出安定性に優れ、耐目詰まり性に優れる傾向にある。また、クリアインクの保存安定性も良好である。
(消泡剤)
本実施形態において、クリアインクは消泡剤を含有してもよい。消泡剤としては、上記の水系白色インクで例示した消泡剤と同様のものを使用できる。消泡剤の含有量は、クリアインクの全質量に対して、好ましくは0.03質量%以上0.7質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.08質量%以上0.3質量%以下である。
(その他の含有成分)
本実施形態において、クリアインクには、その保存安定性およびインクジェットヘッド2の吐出安定性を良好に維持するため、また、目詰まり改善のため、又はクリアインクの劣化を防止するため、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、有機溶剤ではない保湿剤、および分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤などの、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
(クリアインクの調製方法)
本実施形態において、クリアインクは、上記の水系白色インクと同様の方法で調製することができる。
(クリアインクの物性)
本実施形態において、クリアインクはインクジェット記録用としての画像品質と信頼性とのバランスの観点から、25℃における表面張力が18mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましく、22mN/m以上33mN/m以下であることがさらに好ましい。なお、表面張力は、例えば、自動表面張力計CBVP-Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、ウィルヘルミー(Wilhelmy)法で測定することができる。具体的には、25℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときに、白金プレートをインク中に引き込もうとする力を測定することで、表面張力を測定することができる。
また、同様の観点から、本実施形態において、クリアインクの25℃における粘度は、3mPa・s(秒)以上10mPa・s(秒)以下であることが好ましく、3mPa・s(秒)以上8mPa・s(秒)以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、25℃環境下で粘弾性試験機MCR300(商品名、アントンパール社製)を使用して、せん断速度200s-1のときの粘度(mPa・s)の値を確認することにより測定することができる。
<処理液>
次に、本実施形態で用いられる処理液について説明する。
なお、本実施形態において、処理液とは白色インクやクリアインクの成分を凝集させる組成物であり、好ましくは、白色インクやクリアインクの成分を凝集させる凝集剤を含む組成物である。本実施形態において、処理液を必ずしも使用する必要はないが、処理液を使用することで高画質な画像の記録ができる。処理液の記録媒体への付着方法については、特に限定するものはないが、例えば、水系白色インクやクリアインクと同様に、インクジェット方式を用いて記録媒体へ処理液を付着させる方法や、バーコーターなどを用いて、記録媒体へ処理液を塗布する方法が挙げられる。特に、インクジェット法を用いてインクジェットヘッド2から処理液を吐出する方法は、インクジェット記録装置1を小型にすることができる。処理液と反応する白色インクやクリアインクの成分としては、色材や樹脂などが挙げられる。処理液は、上記の色材の含有量が0.2質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、下限は0質量%である。処理液は、白色インクやクリアインクが記録媒体10へ付着する前または同時に記録媒体10へ付着させて用いる補助液である。
処理液は、凝集剤を含むこと以外は、上記の白色インクやクリアインクの色材以外の成分の含有や、それらの含有量、特性などを、上記の白色インクやクリアインクとは独立して調整することができる。本実施形態では、処理液を用いることで高画質な画像の記録ができる。反面、処理液を用いることで、得られる画像の耐擦性や耐目詰まり性が低下する場合がある。
(凝集剤)
本実施形態で用いられる処理液は、白色インクやクリアインクの成分を凝集させる凝集剤を含有することが好ましい。処理液が凝集剤を含むことにより、後述するインク付着工程において、凝集剤と白色インクやクリアインクに含まれる色材や樹脂等が速やかに反応する。そうすると、白色インクやクリアインク中の色材や樹脂の分散状態が破壊されて凝集し、この凝集物が色材の記録媒体10への浸透を阻害するため、記録画像の画質の向上の点で優れたものとなると考えられる。
凝集剤としては、例えば、多価金属塩、カチオン性樹脂、有機酸などが挙げられる。これらの凝集剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの凝集剤の中でも、白色インクやクリアインクに含まれる成分との反応性に優れるという点から、多価金属塩、有機酸、カチオン性樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の凝集剤を用いることが好ましい。
多価金属塩としては、二価以上の多価金属イオンとこれら多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶な化合物である。多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+などの二価金属イオン;Al3+、Fe3+、Cr3+などの三価金属イオンが挙げられる。陰イオンとしては、Cl-、I-、Br-、SO4 2-、ClO3-、NO3-、およびHCOO-、CH3COO-などが挙げられる。これらの多価金属塩の中でも、処理液の安定性や凝集剤としての反応性の観点から、カルシウム塩およびマグネシウム塩が好ましい。
有機酸としては、例えば、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩などが好適に挙げられる。有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機酸の塩で多価金属塩でもあるものは多価金属塩に含めるものとする。
カチオン性樹脂としては、例えば、カチオン性のウレタン樹脂、カチオン性のオレフィン樹脂、カチオン性のアミン系樹脂などが挙げられる。カチオン性のアミン系樹脂はアミノ基を有する樹脂であればよく、アリルアミン樹脂、ポリアミン樹脂、4級アンモニウム塩ポリマー、ポリアミド樹脂などが挙げられる。ポリアミン樹脂として樹脂の主骨格中にアミノ基を有するものが挙げられる。アリルアミン樹脂としては樹脂の主骨格中にアリル基に由来する構造を有するものが挙げられる。4級アンモニウム塩ポリマーは構造中に4級アンモニウム塩を有する樹脂が挙げられる。ポリアミド樹脂としては樹脂の主骨格中にアミド基を有し、樹脂の側鎖にアミノ基を有するものが挙げられる。カチオン性樹脂の中でも、カチオン性のアミン系樹脂は反応性が優れるだけでなく、入手しやすいため好ましい。
処理液における凝集剤の含有量は、処理液の全質量に対し、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、凝集剤の含有量は、処理液の全質量に対し、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
(水)
本実施形態で用いられる処理液は、水を主溶媒とする水系の組成物であることが好ましい。この水は、処理液を記録媒体に付着させた後、乾燥により蒸発飛散する成分である。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水などの純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いると、処理液を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止できるので好適である。処理液に含まれる水の含有量は、処理液の全質量に対して、例えば、40質量%以上とすることができ、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。水の含有量の上限は、限るものでは無いが例えば99質量%以下が好ましい。
(有機溶剤)
本実施形態で用いられる処理液は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤を含有することにより、記録媒体に対する処理液の濡れ性を向上させることができる。有機溶剤としては、上記の白色インクで例示した有機溶剤と同様のものを使用できる。有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、処理液の全質量に対して、例えば、10質量%以上80質量%以下とすることができ、好ましくは15質量%以上70質量%以下である。
有機溶剤の標準沸点は、上記の白色インクに含有してもよい有機溶剤の標準沸点の好ましい範囲の温度に、白色インクに含有してもよい有機溶剤の標準沸点とは独立して含有することができる。あるいは、有機溶剤の標準沸点は、180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、有機溶剤の標準沸点は、300℃以下であることが好ましく、270℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることがさらに好ましい。
(界面活性剤)
本実施形態で用いられる処理液には、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を添加することにより、処理液の表面張力を低下させ、記録媒体10との濡れ性を向上させることができる。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。これらの界面活性剤の具体例については、上記の白色インクで例示した界面活性剤と同様のものを使用できる。界面活性剤の含有量は、特に限定されるものではないが、処理液の全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下とすることができる。
(その他の成分)
本実施形態で用いられる処理液には、必要に応じて、上記のようなpH調整剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤などを添加してもよい。
(処理液の調製方法)
本実施形態で用いられる処理液は、上記の各成分を適当な方法で分散・混合することよって製造することができる。上記の各成分を十分に攪拌した後、目詰まりの原因となる粗大粒子および異物を除去するためにろ過を行って、目的の処理液を得ることができる。
(処理液の物性)
本実施形態で用いられる処理液は、インクジェットヘッド2で吐出させる場合には、25℃における表面張力が18mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましく、22mN/m以上33mN/m以下であることがさらに好ましい。なお、表面張力は、例えば、自動表面張力計CBVP-Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、ウィルヘルミー(Wilhelmy)法で測定することができる。具体的には、25℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときに、白金プレートをインク中に引き込もうとする力を測定することで、表面張力を測定することができる。
また、同様の観点から、本実施形態で用いられる処理液の25℃における粘度は、3mPa・s(秒)以上10mPa・s(秒)以下であることが好ましく、3mPa・s(秒)以上8mPa・s(秒)以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、25℃環境下で粘弾性試験機MCR300(商品名、アントンパール社製)を使用して、せん断速度200s-1のときの粘度(mPa・s)の値を確認することにより測定することができる。
<記録媒体>
本実施形態では、インク吸収性、インク低吸収性またはインク非吸収性の記録媒体に対する記録において、耐擦性と画質に優れた画像を得ることができる。特に色材が記録面上に残りやすい、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体に対して好適に用いることができ、耐擦性と画質に優れた画像を記録することができる。
インク吸収性の記録媒体としては、例えば、インク吸収性が高い、綿、絹、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロンなどの布地や、普通紙、インクジェット専用紙、中程度の吸収性の上質紙や再生紙などの普通紙、コピー用紙、インク吸収能を有するインク受容層を設けたインクジェット専用紙などが挙げられる。
インク低吸収性の記録媒体としては、表面にインクを受容するための塗工層が設けられた記録媒体が挙げられ、例えば、基材が紙であるものとしては、アート紙、コート紙、マット紙などの印刷本紙が挙げられ、基材がプラスチックフィルムである場合には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの表面に、親水性ポリマーが塗工されたもの、シリカ、チタンなどの粒子がバインダーとともに塗工されたものが挙げられる。
インク非吸収性の記録媒体として、例えば、インクジェット記録用に表面処理をしていない、すなわち、インク吸収層を形成していないプラスチックフィルム、紙、布などの基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているものなどが挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
ここで、本明細書において「インク低吸収性または非吸収性の記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が12mL/m2以下である記録媒体」を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙-液体吸収性試験方法-ブリストー法」に述べられている。
(白色記録面)
本実施形態で用いられる記録媒体10は白色記録面を有することが好ましい。記録媒体10の白色記録面は、記録を受ける面であって、具体的には、CIELABに準拠した分光光度計、例えば、Spectrolino(商品名、グレタグマクベス社製)を用いて測定した、記録媒体記録面のL*値が75以上である。白色記録面のL*値は、80以上であることがより好ましく、85以上であることがより好ましい。このような白色記録面を有する記録媒体10を使用することで、水系白色インクを付着させた際に、単なる白色画像の形成ではなく、光沢感のある意匠性を付与することができる。
また、本実施形態で用いられる記録媒体10の白色記録面は、上記の分光光度計で測色した場合に、a*、b*が、-4.5≦a*≦2、-10≦b*≦3を満たすことが好ましく、-2≦a*≦1.5、-7≦b*≦2.5を満たすことがより好ましい。
(白色記録面の光沢度)
本実施形態で用いられる記録媒体10は、JIS Z 8741、ISO 2813に規定される光沢度が30以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。ここで、「JIS Z 8741、ISO 2813に規定される光沢度」とは、例えば、光沢度計GM-268(商品名、コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定した、白色記録面(インク非付着部)の60°光沢の値が10より大きく70以下の場合は、その値を光沢度とする。また、60°光沢の値が10以下の場合は、85°光沢の値を光沢度とする。また、60°光沢の値が70より大きい場合は、20°光沢の値を光沢度とする。
本実施形態では、白色記録面の光沢度が30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。白色記録面の光沢度が30以下の場合、上記の水系白色インク、または水系クリアインクを付着させることで、光沢感を付与することができる。また、白色記録面の光沢度が10以下の場合、上記の水系クリアインクのみでは、乾燥後の水系クリアインクの付着部の白色記録面に対する光沢度比を2倍以上とすることができず、水系白色インクを用いることで、光沢感を付与することができる。白色記録面の光沢度の下限は、例えば0以上であることが好ましい。
(白色記録面の中心線平均粗さ)
本実施形態では、記録媒体10の白色記録面における中心線平均粗さRaが、2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。中心線平均粗さRaの上限は、限るものでは無いが、例えば、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
ここで、中心線平均粗さRaは、例えば、レーザー顕微鏡VK-9700(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて測定することができる。この際、カットオフ値λc,λsはJIS B 0633/0651、ISO 4288/3274に基づいて決定した。具体的には、Raが2以下の場合、λcは0.8、λsは2.5を用いた。Raが2より大きく10以下の場合、λcは2.5、λsは8を用いた。Raが10より大きい場合は、λcは8、λsは25を用いた。
白色記録面の中心線平均粗さRaが、2μm以上である場合、上記の水系白色インク、または水系クリアインクを付着させることで、光沢感を付与することができる。また、白色記録面の中心線平均粗さRaが、5μm以上である場合、上記の水系クリアインクのみでは、乾燥後の水系クリアインクの付着部の白色記録面に対する光沢度比を2倍以上とすることができず、水系白色インクを用いることで、光沢感を付与することができる。
本実施形態で用いられる記録媒体10として、樹脂を主成分とするコート層を記録面とするものが好ましい。上記の樹脂の例としては、例えば、ポリ塩化ビニルやアクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。記録面の主成分が樹脂であることで、有機溶剤を含んだ水系のインクジェットインクに対する定着性が良好となり、耐擦性が高い、高画質な記録面が得られる。また、インクの吸収性が低下することで、色材が記録面上に残りやすく、光沢感のある記録面が得られる。コート層における樹脂の含有量は、コート層の全体に対して例えば50質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
また、本実施形態で用いられる記録媒体10として、上記の記録面を有するものである場合、上記の記録面と、支持体などの他の素材からなる部材をさらに有していてもよい。例えば、支持体に上記のコート層を設けたものが挙げられる。支持体として、例えば、繊維を平織、綾織、朱子織などの織り方で織った布帛が挙げられる。繊維としては合成繊維などが挙げられ、合成繊維としては、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等が挙げられる。合成繊維からなる布帛を支持体として、支持体の両側にポリ塩化ビニルからなる樹脂層を設けたターポリンもこのような記録媒体の一例として挙げられる。このような布帛を支持体とした記録媒体は、例えば、バナー、のぼり、タペストリーなどの、サイン用途に用いられる。支持体として、他には、紙が挙げられる。このような記録媒体の例として、コート紙、アート紙や壁紙が挙げられる。特に壁紙は、記録面にエンボス加工を施して意匠性を持たせたものが多く存在するため、記録面の中心線平均粗さが比較的大きく、本実施形態に適している。
また、本実施形態で用いられる記録媒体10は、記録面に樹脂コート層を持たないものでもよい。そのような記録面の例として、例えば、記録面が不織布からなるもの、が挙げられる。不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたシート状のものをいう。繊維を熱、機械的または化学的な作用によって接着または絡み合わせる事で布にしたものである。繊維としては天然繊維、合成繊維などが挙げられる。天然繊維としては、木材パルプ繊維、非木材パルプ繊維などがあげられ、綿、麻、羊毛、絹等も挙げられる。合成繊維としては、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等が挙げられる。このような記録面を持つ記録媒体の例としては、例えば、支持体が紙である、壁紙が挙げられる。
<インクジェット記録方法>
インクジェットヘッドはラインヘッド、シリアルヘッドいずれを用いてもよい。本実施形態におけるインクジェット記録方法は、上記のインクジェットヘッド2を備えたインクジェット記録装置1を用いたシリアル式の記録方法であり、インクジェットヘッド2が記録媒体10の主走査方向に相対的に移動しつつインクを吐出し記録媒体10へ付着させる主走査と、記録媒体10の搬送である副走査を、交互に繰り返し行うことで記録を行う(図2参照)。
シリアル式の記録方法の場合において、記録媒体10の記録位置に対して、記録に用いる特定のインクのノズル群が対向して通過する主走査の回数を該インクの主走査数という。主走査数はノズル群毎に決められる。例えば、図3の1つのノズル群にインクを充填し、このノズル群を記録に用いる場合に、1回の副走査の距離が該ノズル群の副走査方向の長さの2分の1の距離だった場合、該インクの主走査数は2である。主走査数は1回の副走査の距離を短くすることで多くすることができ、該距離を長くすることで少なくすることができる。主走査数が多い方が、付着させるインクの合計の付着量を多くすることができることや、インクを複数回の主走査で分けて付着させることができる点で好ましい。一方、主走査数が少ない場合、記録速度が速い点で好ましい。なお、主走査数をパス数ともいう。
本実施形態において、1回の主走査の最大距離は、50cm以上であることが好ましい。なお、「1回の主走査の最大距離」とは、1回の主走査において、記録媒体10の主走査方向の端から端まで仮に記録した場合に、インクジェットヘッド2の一点が記録媒体10と対向している距離をいう。該距離は好ましくは50~500cmであり、より好ましくは50~400cmであり、さらに好ましくは55~300cmであり、よりさらに好ましくは60~200cmである。また特に好ましくは70~190cmであり、より特に好ましくは100~180cmであり、さらに特に好ましくは130~170cmである。該距離が50cm以上であることにより表示用などに有用な記録物とすることができる。該距離の上限は特に制限されないが、インクジェット記録装置1の構成の観点から500cm以下が好ましい。なお、記録を行う際には、記録すべき画像に応じて上記の1回の主走査の最大距離より短い距離である走査が行われてもよい。
記録媒体10は、記録媒体10の主走査の幅が、上記の最大距離範囲であるものを用いることがより好ましい。この場合、1回の主走査の最大距離を上記のものにすることができる点で好ましい。
本実施形態において、インクジェット記録方法は、上記の主走査によるインク付着工程と上記の主走査後の乾燥工程を有する。場合によっては、インク付着工程と同時、またはインク付着工程より前に処理液付着工程を有してもよい。
(処理液付着工程)
処理液付着工程は、白色インクやクリアインクと反応する上記の処理液を記録媒体10へ付着させる工程である。処理液を記録媒体10へ付着させることにより、得られた印刷画像の画質を向上させることができる。処理液の付着方法は、特に限定されるものではないが、本実施形態においては、インクジェット記録装置1の小型化の観点から、インクジェット法を用いてインクジェットヘッド2から処理液を吐出させることが好ましい。
本実施形態において、処理液付着工程は、白色インクやクリアインクの付着より前であるか、もしくは同時である。図3に示すノズル群の配列の場合、通常、処理液付着工程は、後述するインク付着工程と同時に行われる。しかし、例えば、処理液は処理液ノズル群の副走査方向における上流側のノズルのみを使用し、白色インクまたはクリアインクはインクノズル群の副走査方向における下流側のノズルのみを使用することで、処理液を白色インクやクリアインクより前に付着させることができる。また、処理液は処理液ノズル群の全ノズルを使用し、白色インクまたはクリアインクはインクノズル群の副走査方向における下流側のノズルのみを使用することで、処理液を白色インクまたはクリアインクより前かつ同時に付着させることも可能である。
本実施形態において、記録媒体10の白色インクやクリアインクと処理液とを付着させる記録領域において、インク付着量に対する処理液付着量が5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、9質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、12質量%以上35質量%以下であることがさらに好ましい。インク付着量に対する処理液付着量が上記範囲にあることにより、より良好な画質を得ることができ、得られた画像の耐擦性低下を防止することができる。
白色インクやクリアインクと処理液の付着量が増加するほど、乾燥不良により耐擦性が悪化する傾向がある。そのため、白色インクやクリアインクの付着量が最大である領域が、上記のインク付着量に対する処理液付着量であることがより好ましい。
処理液付着工程の前に図1に示すプレヒーター7により、または処理液付着工程の際に、図1に示すIRヒーター3またはプラテンヒーター4により記録媒体10が加熱されていることが好ましい。加熱された記録媒体10上に処理液を付着させることにより、記録媒体10上に吐出された処理液が記録媒体10上で塗れ広がりやすくなり、処理液を均一塗布することができる。このため、後述のインク付着工程で付着されたインクと処理液が十分に反応し、優れた画質が得られるようになる。また、処理液は記録媒体10上で均一に塗布されるため、塗布量を減らすことができ、得られた画像の耐擦性低下を防止することができる。
ここで、処理液を付着させる際の記録媒体10の表面温度は、後述するインクを付着させる際の記録媒体10の表面温度の好ましい範囲の温度とは独立して設定することができる。例えば、処理液を付着させる際の記録媒体10の表面温度は、50℃以下であることが好ましく、45℃以下であることがより好ましく、38℃以下であることがさらに好ましい。また、処理液を付着させる際の記録媒体10の表面温度の下限値は、25℃以上であることが好ましく、28℃以上であることがより好ましい。処理液を付着させる際の記録媒体10の表面温度が前記範囲にある場合には、処理液を記録媒体10に均一に塗布することができ、耐擦性や画質を向上させることができる。また、インクジェットヘッド2への熱による影響を抑えることができる。
(インク付着工程)
インク付着工程は、上記の白色インクをインクジェットヘッド2から吐出して記録媒体10に付着させる工程であり、この工程により、記録媒体10の表面に画像が形成される。
記録媒体10への単位面積当たりの白色インクの付着量は、好ましくは8mg/inch2以上であり、より好ましくは12mg/inch2以上であり、さらに好ましくは14mg/inch2以上である。記録媒体の単位面積当たりの白色インクの付着量の上限は、特に限定されないが、例えば、40mg/inch2以下が好ましく、30mg/inch2以下がより好ましく、28mg/inch2以下がさらに好ましく、より好ましくは24mg/inch2以下であり、特に好ましくは20mg/inch2以下である。付着量が上記範囲内にある場合、光沢感があり、かつ耐擦性に優れた記録物が得られる傾向がある。
本実施形態において、インク付着工程は、記録媒体10にさらにクリアインクを付着させる工程を含んでもよい。クリアインクのインク付着工程は、白色インクの付着より後であるか、もしくは白色インクの付着と同時であることが好ましい。図3に示すノズル群の配列の場合、通常、クリアインクのインク付着工程は、白色インクのインク付着工程と同時に行われる。しかし、例えば、白色インクはインクノズル群の副走査方向における上流側のノズルのみを使用し、クリアインクはインクノズル群の副走査方向における下流側のノズルのみを使用することで、クリアインクを白色インクより後に付着させることができる。また、白色インクはインクノズル群の全ノズルを使用し、クリアインクはインクノズル群の副走査方向における下流側のノズルのみを使用することで、クリアインクを白色インクより後かつ同時に付着させることも可能である。白色インクに加えてクリアインクも付着させることで、耐擦性に優れた記録物を得ることができる。
上記の白色インクおよびクリアインクを付着させる場合、記録媒体10への単位面積当たりの白色インクの付着量は、好ましくは8mg/inch2以上であり、より好ましくは12mg/inch2以上であり、さらに好ましくは14mg/inch2以上である。記録媒体10の単位面積当たりの白色インクの付着量の上限は、特に限定されないが、例えば、40mg/inch2以下が好ましく、30mg/inch2以下がより好ましく、28mg/inch2以下がさらに好ましく、より好ましくは24mg/inch2以下であり、特に好ましくは20mg/inch2以下である。また、記録媒体10へ重ねて付着させる、単位面積当たりの白色インクとクリアインクの付着量の合計の下限は、特に限定されないが、好ましくは8mg/inch2以上であり、より好ましくは12mg/inch2以上であり、さらに好ましくは14mg/inch2以上である。記録媒体10へ重ねて付着させる、単位面積当たりの白色インクとクリアインクの付着量の合計の上限は、特に限定されないが、例えば、40mg/inch2以下が好ましく、30mg/inch2以下がより好ましく、28mg/inch2以下がさらに好ましく、より好ましくは24mg/inch2以下であり、特に好ましくは20mg/inch2以下である。付着量が上記範囲内にある場合、光沢感があり、かつ耐擦性に優れた記録物が得られる傾向がある。
また、白色インクおよびクリアインクを付着させる場合の、記録媒体10への単位面積当たりのクリアインクの付着量は、好ましくは0.5mg/inch2以上であり、より好ましくは1mg/inch2以上であり、さらに好ましくは5mg/inch2以上である。記録媒体10の単位面積当たりのクリアインクの付着量の上限は、特に限定されないが、例えば、20mg/inch2以下が好ましく、15mg/inch2以下がより好ましく、12mg/inch2以下がさらに好ましい。
インク付着工程は、インク付着工程の前またはインク付着工程と同時に、IRヒーター3やプラテンヒーター4により記録媒体10を加熱する加熱工程(以下、「一次加熱工程」ともいう)を備えるものであってもよく、一次加熱工程により加熱された記録媒体10へ行うことが好ましい。一次加熱工程により、記録媒体10上でインクを迅速に乾燥させることができ、ブリードが抑制され、画質に優れた画像を形成することができる。
一次加熱工程による記録媒体10にインクが付着する時の記録媒体10の表面温度の上限は50℃以下であることが好ましく、45℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることがさらに好ましい。インクが付着する時の記録媒体の表面温度が前記範囲にあることにより、インクジェットヘッド2への熱による影響を抑制し、インクジェットヘッド2やノズルの目詰まりを防止することができる。また、インクジェット記録の際の記録媒体10の表面温度の下限は、常温より高い温度であることが好ましく、28℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、32℃以上であることがさらに好ましい。インクが付着する時の記録媒体の表面温度が上記の範囲であることにより、記録媒体10上のインクを迅速に乾燥させて早期に固定することができ、ブリードが抑制され、画質に優れた画像を形成することができる。
インク付着工程における1回の主走査の最大時間は、好ましくは0.8秒以上であることが好ましく、0.8秒以上5秒以下であることがより好ましく、1.0秒以上4秒以下であることがさらに好ましく、1.2秒以上2.5秒以下であることが特に好ましく、1.5秒以上2.0秒以下であることがさらに特に好ましい。1回の主走査の最大時間が上記範囲内であることにより、記録媒体10の幅が上記の範囲である記録媒体10へ記録するために適したものとなる。
なお、「1回の主走査の最大時間」とは、1回の主走査において、記録媒体10の主走査方向の端から端まで仮に記録した場合に、インクジェットヘッド2の一点が記録媒体10と対向している時間をいう。なお、記録を行う際には、記録すべき画像に応じて上記の1回の主走査の最大時間より短い時間の主走査が行われてもよい。また、インク付着工程における平均走査速度は、60~100cm/秒であることが好ましい。
インク付着工程は、記録媒体10の記録可能な領域の一部の領域へ白色インクを付着させ、記録媒体10の記録面に白色インクの付着部と非付着部とが存在する記録物としてもよい。一方、記録媒体10の記録面の全体へ白色インクを付着させてもよい。前者の場合、記録媒体10の非付着部と付着部とにおいて光沢感が違う意匠性を有する記録物とすることができ、好ましい。後者の場合も、記録媒体10の記録面の光沢感とは異なる光沢感を有する記録物とすることができ、好ましい。
(乾燥工程)
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記インク付着工程の後に、付着したインクを乾燥する工程を備える。乾燥は、常温で行ってもよいし、インクが付着した記録媒体10を加熱して行ってもよい。加熱は、以下、「二次加熱工程」ともいい、例えば、図1に示す加熱ヒーター5によりインクが付着した記録媒体10を加熱する乾燥工程としてもよい。
加熱する手段としては、例えば、IRヒーターのような記録媒体10に熱を発する放射線を放射する放射式、記録媒体10に接触する部材から熱を記録媒体10へ伝導する伝送式、記録媒体10に温風を送る送風式などにより行うことができる。これにより、記録媒体10上のインクに含まれる樹脂などが溶融してインク膜が形成され、記録媒体10上においてインク膜が強固に定着して造膜性に優れたものとなり、耐擦性に優れた高画質な画像を短時間で得ることができ、好ましい。
乾燥による記録媒体10の表面温度の上限は120℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがより好ましい。また、記録媒体10の表面温度の下限は60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがより好ましい。温度が前記範囲にあることにより、耐目詰まり性を確保すると共に、耐擦性に優れた高画質な画像を短時間で得ることができる。
なお、乾燥工程の後に、図1に示す冷却ファン6により、記録媒体10上のインクを冷却する工程を有していてもよい。
(その他の工程)
本実施形態に係る記録方法は、インクを吐出して記録するための圧力発生手段以外の手段により、つまり、インクジェットヘッド2が備える記録のためにインクを吐出するための機構ではない他の機構により、インクや処理液を排出させるクリーニング工程を備えていてもよい。
インクジェットヘッド2が備える記録のためにインクを吐出するための機構としては、圧力室(図示せず)に備えられてインクに圧力を付与するピエゾ素子やヒーター素子が挙げられる。このクリーニング工程は、インクジェットヘッド2に外部から圧力を付与してノズルから、インクや処理液を排出させる工程としてもよい。この工程を備えることで、インクジェットヘッド2の内壁に樹脂が溶着する懸念がある場合にも、これを抑制し、吐出安定性を一層優れたものとすることができる。
なお、上記のクリーニング工程における他の機構としては、負圧の付与や、インクジェットヘッド2の上流から正圧を付与する機構が挙げられる。これらは、インクジェットヘッド2自身の機能によるインク排出、つまりフラッシングではない。つまり、記録に際して、インクジェットヘッド2からインクを吐出させる機能を用いての排出ではない。
以下、本発明の実施形態を実施例および比較例によってさらに具体的に説明する。
<白色顔料分散液の調製>
白色色材として、白色顔料である酸化チタンを使用した。酸化チタン(商品名:CR―58、石原産業株式会社製)25g、表中には記載していない分散剤(商品名:ディスパロンAQ―380、楠本化成株式会社製)8.5g、水66.5gを混合し、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填率:60体積%、8m/sにて5分間分散し、固形分濃度が25質量%である酸化チタン分散液を得た。
この酸化チタン分散液を1000倍に希釈し、動的光散乱式(DLS)粒子径分布測定装置Nanotrac Wave II-EX150(商品名、マイクロトラック・ベル社製)を使用することで、体積基準の粒子径分布が得られた。その粒子径分布におけるメジアン径(D50)は280nmだった。
<処理液およびインクの調製>
表1、表2に記載の配合割合になるように各成分を混合攪拌し、孔径5μmのメンブレンフィルターで濾過して処理液AおよびインクA~Eを得た。表1、表2中の数値は全て質量%を示し、水はインクの全質量が100質量%となるように添加した。また、表2に記載の白色色材および樹脂については、固形分換算した値を示す。
Figure 0007131241000001
Figure 0007131241000002
表1および表2において記載した物質の詳細は、以下の通りである。
・凝集剤:酢酸カルシウム一水和物(多価金属塩、富士フィルム和光純薬株式会社製)
・消泡剤:サーフィノールDF110D(商品名、アセチレンジオール系界面活性剤、日信化学工業株式会社製)
・界面活性剤:BYK348(商品名、シリコーン系界面活性剤、ビックケミー・ジャパン株式会社製)
・白色色材:酸化チタン(商品名:CR―58、白色顔料、石原産業株式会社製)
・樹脂:ジョンクリル62J(商品名、スチレンアクリル樹脂、BASFジャパン株式会社製)
・ワックス:AQUACER539(商品名、水系用変性パラフィンワックスエマルション、ビックケミー・ジャパン株式会社製)
<記録媒体>
記録媒体は、下記のM1からM5の5種を用意した。
・M1:PRSO400F(商品名、塩化ビニル樹脂壁紙、リンテックサインシステム株式会社製)
・M2:H7806-0401(商品名、アクリル樹脂クロス、ハイテックス社製)
・M3:3686 Trisolv Prime Art Paper(商品名、コート紙、シール社製)
・M4:DV662(商品名、非塩化ビニル樹脂壁紙、ネーシェン社製)
・M5:Orajet 3169G(商品名、塩化ビニル系フィルム、オラフォル社製)
Figure 0007131241000003
表3において記載した記録媒体の物性の測定方法は、以下の通りである。
(L*値)
記録媒体の白色記録面(インク非付着部)に対して、分光光度計Spectrolino(商品名、グレタグマクベス社製)を用いて測定した。位置を変えて3回測定を行い、その平均値を記録面のL*値とした。
(光沢度)
記録媒体の白色記録面(インク非付着部)に対して、光沢度計GM-268(商品名、コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定した。位置を変えて3回測定を行い、その平均値を記録面の光沢度とした。60°光沢の値が10より大きく70以下の場合は、その値を光沢度とした。また、60°光沢の値が10以下の場合は、85°光沢の値を光沢度とした。60°光沢の値が70より大きい場合は、20°光沢の値を光沢度とした。
(中心線平均粗さRa)
記録媒体の白色記録面(インク非付着部)に対して、レーザー顕微鏡VK-9700(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて測定した。測定範囲は1.4mm×1.4mmとし、位置を変えて3回測定を行い、その平均値を記録面のRaとした。この際、カットオフ値λc,λsは次の通り設定した。Raが2以下の場合、λcは0.8、λsは2.5を用いた。Raが2より大きく10以下の場合、λcは2.5、λsは8を用いた。Raが10より大きい場合は、λcは8、λsは25を用いた。
<記録方法>
表1および表2に記載のインクと処理液とを用いて、表中に記載の記録媒体に対して所定の領域内にインクと処理液とを吐出してベタパターンを記録した。インクジェット記録装置として、インクジェットプリンターSC-S80650(商品名、セイコーエプソン株式会社製)に二次加熱用のヒーターを取り付けた改造機を用意した。図3のインクノズル群15aに白色インク(インクA、またはインクC~Eのいずれか)、インクノズル群15bにクリアインク(インクB)、処理液ノズル群16に処理液を充填した。
各例では、表4に記載の条件で記録した。インクの記録解像度を1440×1440dpi、インクのドット重量を20ng/dotとした。処理液の付着量は、インクの付着量に対する質量%で表示しており、付着量が表中の値になるようにドットのドット密度を調整した。実施例11に関しては、インクA(白色インク)のインク付着量が15mg/inch2で、インクB(クリアインク)のインク付着量が10mg/inch2となるように調整した。
インクの付着は、主走査回数8回で行った。ただし、実施例11に関しては次の通り記録した。インクAはインクノズル群15aのうち上流半分のノズルのみを使用し、インクBはインクノズル群15bのうち下流半分のノズルのみを使用し、各々主走査回数8回で記録した。また、実施例14、実施例15に関しては次の通り記録した。処理液Aは処理液ノズル群16のうち上流1/3のノズルのみを使用し、インクAはインクノズル群15aのうち下流2/3のノズルのみを使用し、処理液Aを主走査回数4回、インクAを主走査回数8回で記録した。
各ノズル群は、半ピッチずれた2つのノズル列から構成され、各ノズル列のノズル密度は360npi(nozzle/inch)である。したがって、2つのノズル列を含む各ノズル群のノズル密度は720npiである。記録媒体の表面温度は、記録媒体に熱電対を設置し、一次加熱温度が35℃となるように調整した。また、二次加熱温度は90℃とした。
Figure 0007131241000004
<評価方法>
(光沢感(目視))
上記のインクジェットプリンターにインクと処理液を充填してベタパターンを印刷し、印刷物を目視観察した。
評価基準は以下の通りである。評価C以上を問題がないと判断した。
A:非印刷部と比べて顕著に光沢感がある。
B:非印刷部と比べて光沢感がある。
C:非印刷部と比べて角度によっては光沢感がある。
D:非印刷部と同程度の光沢感である。
E:非印刷部よりもマット感がある。
(光沢度)
上記のインクジェットプリンターにインクと処理液を充填してベタパターンを印字し、その記録面(インクの付着部)に対して、光沢度計GM-268(商品名、コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定した。位置を変えて3回測定を行い、その平均値を記録面の光沢度とした。60°光沢の値が10より大きく70以下の場合は、その値を光沢度とした。また、60°光沢の値が10以下の場合は、85°光沢の値を光沢度とした。60°光沢の値が70より大きい場合は、20°光沢の値を光沢度とした。
(耐擦性)
上記のインクジェットプリンターにインクと処理液を充填してベタパターンを印字した。ベタパターン印字部を30×150mmの矩形に切断し、平織布を使用して学振式耐擦試験機(荷重500g)で30回擦った際のインクの剥がれ度合を目視評価した。
評価基準は以下の通りである。
A:剥がれなし。
B:評価面積に対し1割以内の剥がれあり。
C:評価面積に対し1割以内5割未満の剥がれあり。
D:評価面積に対し5割以上の剥がれあり。
<評価結果>
評価試験の結果を、表4に示す。いずれの実施例においても、水系白色インクの付着部の白色記録面に対する光沢度比が2倍以上となり、光沢感のある記録物が得られた。これに対し、比較例では何れも、水系白色インクの付着部の白色記録面に対する光沢度比が2倍未満であり、光沢感のある記録物が得られなかった。以下、詳細を記す。
白色記録面の光沢度が10以下である記録媒体(M1、M2)に対して白色インクを付着させた、実施例1~実施例7では、何れも光沢感のある記録物が得られた。白色インクの付着量を増加させることで、光沢度が上昇する傾向があったが、一方で、付着量の増加で乾燥性が悪化し、耐擦性が低下する傾向があった。また、比較例1、比較例2のように、白色インクの付着量が少ない場合、光沢感のある記録物は得られなかった。また、参考例1~参考例4のように、白色インクの代わりにクリアインクのみを付着させた場合、これらの記録媒体では、光沢感のある記録物は得られなかった。
白色記録面の光沢度が10より大きく30以下である記録媒体(M3、M4)に対して白色インクを付着させた、実施例8~実施例10でも、同様に光沢感のある記録物が得られた。白色インクの付着量を増加させることで、光沢度が上昇する傾向があったが、一方で、付着量の増加で乾燥性が悪化し、耐擦性が低下する傾向があった。また、比較例3のように、白色インクの付着量が少ない場合、光沢感のある記録物は得られなかった。また、参考例5、参考例6のように、白色インクの代わりにクリアインクのみを付着させた場合、これらの記録媒体では、白色インクと同様、光沢感のある記録物が得られた。また、参考例7のように、これらの記録媒体では、白色インクの付着部の白色記録面に対する光沢度比が2倍未満の場合でも、光沢感のある記録物が得られた。
白色インクに重ねてクリアインクを付着させた、実施例11では、インクの合計付着量が同じである白色インクのみを付着させた、実施例4と比べて、光沢感はやや劣るものの、耐擦性に優れた記録物が得られた。
白色色材としての白色顔料の含有量を少なくした白色インクを用いた実施例12では、実施例1と比較して光沢度が低下した。また、比較例4のように、白色顔料の含有量が5質量%よりも少ない場合、光沢感のある記録物は得られなかった。
樹脂の含有量を多くした白色インクを用いた実施例13では、耐擦性に優れた記録物が得られた。
白色インクに加えて処理液を付着させた、実施例14、実施例15では、記録物の光沢度がやや低下し、耐擦性がやや悪化する傾向があった。ただし、処理液を使用することで、ブリードを抑制することが可能であるため、意匠性の高い精細な画像を得ることが可能である。また、白色インクの付着量を多くすることで、光沢感のある記録物が得られ、クリアインクと併用することで耐擦性に優れた記録物を得ることが可能である。
白色記録面の光沢度が高い記録媒体(M5)に対して白色インクやクリアインクを付着させた、比較例5、比較例6では、インクの付着部の光沢度は、白色記録面の光沢度よりも低下し、光沢感のある記録物が得られなかった。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
以下に、実施形態から導き出される内容を記載する。
本願のインクジェット記録方法は、L*値が75以上で、光沢度が30以下の白色記録面を有する記録媒体に、インクジェット法により、白色色材を含む水系白色インクを付着させるインク付着工程と、水系白色インクを付着させた記録媒体を乾燥させる乾燥工程と、を備え、乾燥後の水系白色インクの付着部の白色記録面に対する光沢度比を2倍以上とすることを特徴とする。
本願の方法によれば、光沢度が30以下の白色記録面を有する記録媒体を用いることで、水系白色インクの付着により光沢感のある記録面を得ることができる。特に、酸化チタンを白色色材に用いた水系白色インクでは、酸化チタンの屈折率が高いため、入射光に対して反射する光量が多くなり、光沢度が30以下の、低光沢な白色記録面に対して面質が変化し、光沢感のある記録物を得ることができる。また、乾燥工程を備えることで、壁紙、コート紙などの低吸収性や非吸収性記録媒体に対してもブリードがなく良好な画像を得ることができる。乾燥後の水系白色インクの付着部の光沢度を白色記録面すなわち非付着部に対して2倍以上とすることで、光沢感のある記録物が得られる。
上記のインクジェット記録方法において、インク付着工程における記録媒体の単位面積あたりの水系白色インクの付着量が、8mg/inch2以上であることが好ましい。
この方法によれば、水系白色インクの付着量を8mg/inch2以上とすることで、より光沢感のある記録物が得られる。
上記のインクジェット記録方法において、水系白色インクにおける白色色材の含有量は、5質量%以上、14質量%以下であることが好ましい。
この方法によれば、水系白色インクにおける白色色材の含有量を5質量%以上とすることで、より光沢感のある記録物が得られる。また、14質量%以下とすることで、インクジェット法における水系白色インクの吐出安定性をより確保できる。
上記のインクジェット記録方法において、白色色材の平均粒子径は、200nm以上、380nm以下であることが好ましい。
この方法によれば、水系白色インクに含まれる白色色材の平均粒子径を200nm以上とすることで、より光沢感のある記録物が得られる。また、白色色材の平均粒子径を380nm以下とすることで、インクジェット法における水系白色インクの吐出安定性や沈降回復性をより確保できる。
上記のインクジェット記録方法において、水系白色インクは、樹脂を含み、水系白色インクにおける樹脂の含有量は、5質量%以上、11質量%以下であることが好ましい。
この方法によれば、樹脂の含有量を5質量%以上とすることで、より耐擦性に優れた記録物を得ることができる。また、樹脂の含有量を11質量%以下とすることで、インクジェット法における水系白色インクの吐出安定性をより確保できる。
上記のインクジェット記録方法において、記録媒体の白色記録面の光沢度は、10以下であることが好ましい。
この方法によれば、光沢度が10以下の白色記録面を用いることで、水系白色インクの付着によって、より光沢感のある記録面を得ることができる。
上記のインクジェット記録方法において、記録媒体の白色記録面における中心線平均粗さRaは、2μm以上であることが好ましい。
この方法によれば、中心線平均粗さRaが2μm以上の白色記録面を有する記録媒体を用いることで、水系白色インクの付着によってより光沢感のある記録面を得ることができる。
上記のインクジェット記録方法において、記録媒体が、低吸収性記録媒体または非吸収性記録媒体であることが好ましい。
この方法によれば、低吸収性または非吸収性記録媒体を用いることで、色材を効果的に記録面表面に残留させることができ、より光沢感のある記録面を得ることができる。
上記のインクジェット記録方法において、インク付着工程は、記録媒体に、さらに水系クリアインクを付着させる工程を含むことが好ましい。
この方法によれば、さらに水系クリアインクを記録媒体に付着させることで、より耐擦性に優れた記録物を得ることができる。
上記のインクジェット記録方法において、インク付着時の記録媒体の表面温度が28℃以上50℃以下であることが好ましい。
この方法によれば、記録媒体の表面温度を28℃以上とすることでブリードのない良好な画像が得られる。また、50℃以下にすることでインクジェット法におけるノズルの耐目詰まり性をより確保できる。
上記のインクジェット記録方法において、乾燥工程は、60℃以上、120℃以下の記録媒体の表面温度で、記録媒体を乾燥させることが好ましい。
この方法によれば、60℃以上で記録媒体を乾燥させることで、低吸収性または非吸収性記録媒体でもより良好な耐擦性が得られる。また、120℃以下で記録媒体を乾燥させることで、記録媒体の熱による変形などの不具合をより防ぐことができる。
本願のインクジェット記録装置は、上記に記載のいずれかのインクジェット記録方法で記録を行うことを特徴とする。
本願のインクジェット記録装置によれば、白色記録面に凹凸がある記録媒体に対して、水系白色インクを付着させることにより、光沢感のある記録物を作成することができる。
1…インクジェット記録装置、2…インクジェットヘッド、2a…ノズル面、3…IRヒーター、4…プラテンヒーター、5…加熱ヒーター、6…冷却ファン、7…プレヒーター、8…通気ファン、9…キャリッジ、10…記録媒体、11…プラテン、12…カートリッジ、13…キャリッジ移動機構、14…搬送手段としてのモーター、15a,15b,15c,15d…インクノズル群、16…処理液ノズル群、CONT…制御部。

Claims (12)

  1. *値が75以上で、光沢度が30以下の白色記録面を有する記録媒体に、インクジェット法により、白色色材を含む水系白色インクを付着させるインク付着工程と、
    前記水系白色インクを付着させた前記記録媒体を乾燥させる乾燥工程と、を備え、
    乾燥後の前記水系白色インクの付着部の前記白色記録面に対する光沢度比を2倍以上とし、
    前記記録媒体は、合成繊維からなる布帛の記録面に樹脂のコート層を設けたもの、又は記録面が不織布からなるものである、インクジェット記録方法。
  2. 前記インク付着工程における前記記録媒体の単位面積あたりの前記水系白色インクの付着量が、8mg/inch2以上である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記水系白色インクにおける前記白色色材の含有量は、5質量%以上、14質量%以下である、請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記白色色材の平均粒子径は、200nm以上、380nm以下である、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記水系白色インクは、樹脂を含み、
    前記水系白色インクにおける前記樹脂の含有量は、5質量%以上、11質量%以下である、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記記録媒体の前記白色記録面の光沢度は、10以下である、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記記録媒体の前記白色記録面における中心線平均粗さRaは、2μm以上である、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記記録媒体が、低吸収性記録媒体または非吸収性記録媒体である、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記インク付着工程は、前記記録媒体に、さらに水系クリアインクを付着させる工程を含む、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  10. インク付着時の前記記録媒体の表面温度が28℃以上50℃以下である、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  11. 前記乾燥工程は、60℃以上、120℃以下の前記記録媒体の表面温度で、前記記録媒体を乾燥させる、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  12. 請求項1乃至11のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法で記録を行う、インクジェット記録装置。
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