本発明の実施形態について、図を用いて説明する。なお、各図における構成要素名の表記は、機能名、信号名又は処理名を兼用できる略称を用いているが、該当機能を説明するときは、これら構成要素名の末尾に「部」を付している。また、全図にわたって、同一効果の機能、信号及び処理には同一符号を付して説明の重複を避ける。以下、図1~図19を用いて実施例1を説明した後、図20~図21を用いて実施例2を説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る漏水検知端末(本端末)の構成を示すブロック図である。図2は、図1の本端末を含んで構成された管状態検知システム(本システム)の構成を示すブロック図である。後述するように、図1の本端末は、図2のセンサ1と端末側処理部12と通信部9の範囲に対応している。なお、図1のブロック図では、図2の本システムのうち、特に端末側処理部12の構成を拡大して詳細に示している。
図1に示すように、本端末10は、センサ1、センサ信号処理部2、設置環境評価処理部3、制御部4、学習部7、及び通信部9を備えて構成されている。また、測定スケジュール5、動作パラメータ、及び評価スケジュール8は、それぞれの名称で特定される設定数値であると共に、それらの設定数値を記憶再生自在に格納しておく記憶領域(格納部)も意味する。
センサ1は配管に装着して、配管の振動を検出し、振動データに変換する。検出した振動データはセンサ信号処理部2で処理し、配管内を移動する流体の状態を反映する特徴量(すなわち、配管状態)を出力する。この特徴量は1つあるいは複数の数値の組からなり、時間と共に変化する量である。センサ信号処理部2は、測定スケジュール5で指定する時刻毎に動作して、そのときの特徴量を通信部9に送る。
通信部9は本端末に対応するセンター側装置20のシステムと通信を行い、配管内の流体の状態を示す特徴量をセンター側装置20に送信する。また、通信部9はセンター側装置20からの受信データを受信し、制御部4に伝える動作をする。制御部4は本端末の各部の動作を制御する構成要素である。すなわち、制御部4は、通信部9を経由して、外部のセンター側装置20のシステムとデータ通信を行い、配管状態検知システムの検知データを送信し、または、センター側装置20の要求を受信して、検知装置全体の動作を制御する。
センサ1が出力する振動データは、設置環境評価処理部3にも入力される。設置環境評価処理部3は、評価スケジュール8で指定する時刻毎に処理し、装置の設置環境を評価する評価データを算出して学習部7へ入力する。なお、測定スケジュール5と、評価スケジュール8と、は重複しない独立したスケジュールである。
学習部7は、設置環境評価処理部が出力する評価データを処理して、その量の大きさ、時間変化を学習する。評価データは、検知装置の設置環境を評価する特徴量であり、設置場所毎の特徴を示す量である。学習部7の処理結果に基づいて得られた、動作パラメータ6及び測定スケジュール5は、それぞれ専用の記憶領域にシステム制御用のデータとして記憶される。なお、上述したように、評価スケジュール8、測定スケジュール5、及び動作パラメータ6は、それぞれのデータ記憶領域(格納部)を意味する呼称としても兼用するように図示されている。
図2の本システムは、水道管の漏水異常を検出するために採用されて好適なシステムである。本システムが検知する水道管配管の劣化状態の典型的として漏水があり、その他の例として、給水装置からの異常音や振動がある。その具体的な原因は、水撃作用や給水用具部品の磨耗等が挙げられる。
図2の本システムは、本端末10及びセンター側装置20と、これら両者を情報接続する通信網11と、により構成されている。本端末10は、センサ1、端末側処理部12、及び通信部9と、これらの駆動用に各種バッテリー等を有する電池部13と、により構成されている。センター側装置20は、送受信部21、センター側信号処理部22、時刻同期部23、表示装置24、及び管路網データベース25により構成されている。
本端末10は、上水道サービス提供圏内の配水区の埋設管各所に分散して複数台配置するものである。センサ1により水道管の振動を検出し、振動データに変換する。振動データは端末側のセンサ信号処理部2により、ファスト・フーリエ変換処理(FFT:fast Fourier transform)等の周波数解析手法により特徴量データ(周波数データ)に変換する。この周波数データは、通信部9が通信網11を介してセンター側装置20へ転送される。電池部13は、本端末10の電力供給部であり、本端末10の各部に電力を供給する。次に、本端末10の利用形態を図3に例示する。
図3は本発明の実施例1に係る漏水検知端末(本端末)10を水道埋設管の仕切弁に付設した利用形態を示す断面図である。図3に示すように、地面29に配水管28が埋設されて埋設配水管網が形成され、この配水管28の適宜箇所にマンホール、及びそのマンホール内に仕切弁27が設置されている。この仕切弁27は、マンホール蓋26を開閉して操作できる。
本端末10は、マンホール蓋26を開閉して操作可能な仕切弁27の弁キャップ部分(仕切弁を開閉するための操作部)に取り付けられている。このように図3と同様の形態で、埋設配水管網の全域にわたって、多数の本端末10が配設されている。これらの本端末10が配水管28を伝播する振動を検出する。
このような設置状況の水道管は、公道直下の地中で深さ1m前後の位置に埋設されている。この水道管は、地表からあまり深くないため、地表を通過する自動車等の移動体から発生する振動が地中を伝播する。したがって、各本端末10は、それらを外乱として受け易い。そのため、何らかのノイズ対策を施さない限り、本端末10の漏水検知精度は著しく低劣である。このような条件下に設置される本端末10の動作手順について説明する。
図4は図1~図3に示した本端末10の動作手順(本方法)を示すフローチャートである。図4の処理フローは、図1の制御部4が、センサ信号処理部2、及び設置環境評価処理部3を制御して本方法を実行する手順を例示している。図4に示すように、本方法は、ステップS1より開始し、後述する各手順を経て、ステップS13の終了後はステップS2へ戻って、次の調整時を待機するところで一巡し、これらを繰り返している。
ステップS2及びステップS3は、タイマ動作の処理である。ステップS4から入力する調整スケジュールにより、ステップS2(タイマ動作)は、指定時刻(調整時刻)まで待機して、動作を開始する。同様にして、ステップS5で入力する測定スケジュールにより、ステップS3(タイマ動作)は指定時刻(測定時刻)まで待機して、動作を開始する。ステップS2以降の処理フローは、調整時に実行される調整動作の処理(環境評価モード)であり、ステップS3以降の処理フローは、測定時刻に実行される測定動作の処理(測定モード)である。
ステップS8は、図1の設置環境処理部3の処理であり、調整の信号処理を行う。ステップS9は、設置環境処理部3の内部で算出した環境評価値のデータ履歴を一定期間保持するためのデータ格納の処理である。ステップS10は、環境評価値のデータ履歴から各設置点の特徴を学習するステップである。学習は一定のモデルを仮定し、所定数のモデルパラメータを決定する処理とする。ステップS10による学習結果、すなわちモデルパラメータは、学習部7の内部に保持する。
ステップS11は、学習量が十分に到達したか否かを判定する処理である。前回測定時に、学習量が十分と判断されて以降、新規に行った学習量が十分蓄積されているかを判断する。学習量が不十分の場合(S11でNO)、ステップS2へ戻って次の調整時刻を待つ。学習量が十分の場合(S11でYES)の場合は、ステップS12で学習結果に基づいた測定スケジュールの生成を行う。ここで生成された測定スケジュールにより、測定スケジュール5の更新を行う。
ステップS13は、学習結果に基づいた動作パラメータ生成のための演算処理である。ここで生成された動作パラメータにより、動作パラメータ6の更新を行う。ステップS13の終了後はステップS2に戻り、次の調整時刻を待つ。ステップS6は、図1のセンサ信号処理部2で定時測定を行う。ステップS7では、ステップS6の測定結果について、センター側装置20へデータ通信を行う。テータ通信の終了後はステップS3へ戻り、次の測定時刻まで待機する。
図5は、図1~図4に示した本端末10の測定スケジュールを構成するデータ構造の一例を示す表である。すなわち、図5は、センサ信号処理部2が用いる測定スケジュール5の格納データを例示している。図5に示すように、各データは、1行目に左列から順に、番号31、開始日時32、測定項目33の指定、及び繰り返しフラグ34である。この例では、予定する測定の1件毎について、日時及び測定条件の指定内容を所定の記憶領域5に格納している。
開始日時32は測定を開始する日時の情報を西暦年から始めて、分単位の精度でタイムゾーンも含めて指定する。測定項目33の指定は、測定の種類を識別するコードであり、複数種類の測定に対応する。この表では1種類の測定項目の指定「A」のみ記載している。繰り返しフラグ34は0あるいは1の2種類の値を持ち、0は対応する測定が実行済み、あるいは、実行不要であることを示している。制御部4の制御により、測定を行った際に、この表の値を1から0に変更する。
図5の表には、本端末10の記憶容量が十分あれば、本端末10の使用期間全部のスケジュールを格納する。本端末10の記憶容量が不足する場合は、一定期間のスケジュールを格納し、時間経過に伴い、古いスケジュールを新しいスケジュールで更新する処理を行う。
図6は、図1~図4に示した本端末10の測定スケジュールを構成するデータセットの一例を示す表である。すなわち、図6は、測定スケジュールあるいは評価スケジュールを目的や状況に対応してグループ化したデータセットである。はセット番号35、はデータ36、は備考37である。セット番号35はデータセットに割り振られた識別番号であり、データ36はデータセットの名称、備考37はデータセットの使用目的、対応する状況の情報を記載している。
測定スケジュール、評価スケジュールに対応したデータセットをそれぞれ用意し、制御部4がデータセットを読み出し、測定スケジュール5、評価スケジュール8へデータ転送する。測定スケジュール5、評価スケジュール8でデータ変更がある場合は、制御部4その変更をデータセットに反映させるデータ転送を行う。図6には、セット番号1から4までの4つの状況に対応したデータセットを記載した。
セット番号1はデータセット名称が「スケジュールデータセットA」であり、端末10の設置当初の測定スケジュールである。個々のデータセットに対応して、図5に示す測定スケジュールに対するデータ格納領域5を設け、データを保存し、書き換えも行う。
各データセットのスケジュールデータの格納方法の一例は、図6のデータ構造の中に埋め込む方法である。その場合には、データ36はデータセット名称に続けて、スケジュールデータを格納する。各データセットが可変長になることに対応したデータの区切りがわかるデータ格納形式を使えば良い。各データセットにおけるスケジュールデータの格納方法について、別の例はデータセット名称とスケジュールデータの格納位置の対応関係を記載した対応表を用意することである。
セット番号2の「スケジュールデータセットB」は、1日のスケジュールを記載したスケジュールデータである。そのデータ内容は1日(24時間)毎となっている。セット番号1のスケジュールでの測定が終了した後に、毎日同様の測定を実行する場合に使用する。
セット番号3の「スケジュールデータセットC」は、毎週実行するスケジュールデータである。このデータセットは、セット番号2の1日周期で実行するスケジュール以外に、曜日に対応して、追加の測定の実行に対応する。セット番号4の「スケジュールデータセットD」は、5年間等の端末10のライフタイム期間に対応したスケジュールデータである。このように、いろいろな状況に対応したスケジュールデータを保持し、制御部4がそれらスケジュールデータに基づいて、センサ信号処理部2及び設置環境評価処理部3を動作させる。
図7は図1~図4に示した本端末10の調整スケジュールを構成するデータ構造の一例を示す表である。すなわち、図7は、設置環境評価処理部3が用いる評価スケジュール8のデータを例示している。図7に示すように、各データは、1行目の左列から順に示すように、番号41、開始及び終了日時42、評価項目43、繰り返しフラグ44である。番号41により、個々の評価スケジュールの登録を識別する。開始及び終了日時42は評価スケジュールの実行期間を示しており、現在時刻がこの実行期間内である場合に、評価項目43の評価内容を実行することを示す。
繰返しフラグ44は繰返しの頻度を指定するデータである。繰返しフラグ44は3つの要素から構成する。最初の符号は0あるいは1であり、登録内容の有効あるいは無効を示す。次の符号は繰返しの期間を示し、H,D,Wはそれぞれ1時間、1日、1週間に対応する。それに続く数字は、その期間の分割数を示している。H/1は1時間毎に1回であり、D/4は1日に4回、W/1は1週間に1回を示している。
制御部4は図7に示す評価スケジュール8のデータを読み込み、指定された時刻に設置環境評価処理部3を動作させる。評価スケジュールの読出し又は変更の命令は、センター側装置20から通信部9を経由して制御部4に届けられる。これに対応して制御部4は、読み出し命令であれば、届いた評価スケジュール8のデータ内容を読み出してセンサ信号処理部2へデータ配信する。あるいは、変更命令であれば、制御部4が受信したデータにより評価スケジュール8のデータを更新する。
図8は図1~図4に示した本端末10に想定される外乱によるPSD平均値信号の時間的変化のを示すグラフであり、図8(a)は外乱無し、図8(b)はバルブ開閉等、図8(c)は流量変化等、についてそれぞれ示している。すなわち、図8は、外乱の時間的変化の例をセンサ信号のPSD平均値信号による模式的表示を例示している。このPSD平均値信号は、短時間のPSDスペクトルを周波数で積分し、単位周波数あたりに換算した値であり、音響強度に相当する。
図8(a)は、外乱が発生していない場合のPSD信号の変化を示している。図8(b)は、水道管に接続するバルブの開け閉めによるウォーターハンマー現象と呼ばれる外乱、あるいは、人の足音による外乱の例を示している。さらに、図8(c)は、流量の大きな変化、あるいは移動体による外乱がある場合のPSD平均値信号の変化を示している。これら外乱による信号の変化は、監視対象である漏水による目的信号と比較すると桁外れに大きい。このような外乱を除去しないままに信号処理すると、目的信号の信頼性は著しく低劣となる。したがって、外乱を取り除くことが必要である。
図2に戻って本端末10の説明を続ける。上述の設置場所に分散設置されている本端末10は、実際の運用において、電池部13からの電力供給により、5年程度の定期観測を継続できることが要求されている。つまり、本端末10は、5年程度の長期間にわたって、電池のみで動作しなければならない。そのため、通信部(通信部9と通信網11)には、低消費電力の方式で、数キロメートル程度に及ぶ配水区内を伝達できる方式を採用することが必要とされる。そのような到達距離を有する通信網として、低電力無線通信網(LPWA; Low Power, Wide Area)がある。そのLPWAによる通信サービスの1つとして、LoRaWAN規格が、今後の有力サービスの候補に挙げらている。
本端末10は、長期間の継続使用を可能にするため、節電運用することにより、電池部13の消耗を抑制する。すなわち、本端末10は、節電運用として、休止モードと1つ以上の通常動作モードの複数の動作モードを持ち、それらの動作モードを切替えて動作する。この制御は端末側信号処理部12により実行される。
通常動作モードは、漏水を検知あるいは設置環境を評価するための動作モードであり、相対的に電力を多く消費するモードである。その逆に、休止モードは、デジタル処理のクロック周波数を下げる等して、ほとんど電力を消費しない動作モードである。動作スケジュールにより指定された時刻以外のほとんどの時間帯は、休止モードとすることで、長期間の継続使用を可能とする。
センター側装置20は、複数台の本端末10と通信網11を介して通信しながら、配水区の配管状態を監視する。送受信部21は、本端末10の設定パラメータ等のデータを送信データとして送信すると共に、本端末10が送信した振動データを受信する。本端末10の送信データには時刻情報が含まれているが、時刻同期の精度を高めるための処理部が時刻同期部23である。
センター側信号処理部22の処理結果は、管路網データベース25より読み出した水道管の管路図に重畳して、表示装置24を用いて表示する。表示装置24は、カラー画像表示装置であり、配管上に漏水が検知された場合は、対応する配管上の位置に、赤色等の際立つ色や点滅、パターン等により漏水発生の表示を行う。次に、端末側処理部12に含まれるセンサ信号処理部2の構成例について、図9を用いて説明する。
図9は、図1に示したセンサ信号処理部2の構成を示すブロック図である。図9に示すように、センサ信号処理部2は、データ入力部51、スペクトル解析部(PSD)52、学習部53、対数尤度算出部54、設定パラメータ入力部55、閾値比較部56、及び漏判定出力部57より構成されている。
センサ1が取得した振動データは、データ入力部51より入力され、PSD52で周波数解析が行われる。パワースペクトル解析(Power Spectrum Density; PSD)は、周波数解析の1つの手法であり、周波数毎の信号強度分布を解析するものである。さらに、PSD52では、時間平滑化処理を行い、一定の周波数バンドごとの複数の数値が特徴量として出力される。PSD52の出力したパワースペクトルは、学習部53に入力する。
学習部53は、モデルベースの学習、又は機械学習において、上述のパワースペクトルを実行する。GMMモデル(Gaussian Mixture Model)等の学習モデルにより、正常時のパワースペクトルデータを学習させる。漏水時の学習が実施可能であれば、その異常時のモデルパラメータも学習して用いても良い。その学習結果はモデルパラメータ(特徴量)としてデータ化して、学習部53の内部に保持する。
上述のモデルパラメータは必要に応じて、センター側装置20へデータ送信し、センター側装置20の管路網データベースの情報に追加して管理しても良い。設置場所毎に、最初から学習を行うことに困難がある場合は、予め実験的な施設で取得した学習結果(モデルパラメータ)を、学習部53に初期設定することも考えられる。
対数尤度算出部54は逐次入力されるパワースペクトルと学習した正常時モデルのパワースペクトルとの間で、パワースペクトル間の複合的な対数尤度を算出する。この対数尤度により、スペクトル間の類似度(あるいは距離)を評価し、後述の閾値と比較して、正常時か異常時を判断する。
閾値比較部56は、対数尤度算出部54の算出結果と、設定パラメータ入力部55から入力する閾値とを逐次比較し、漏水が発生しているか否かの推定結果を示す判定信号、すなわち、漏水判定結果を出力する。その信号(比較結果)は漏判定出力部57より出力する。次に、設置環境評価処理部3の構成例を図10に示す。
図10は、図1に示した設置環境評価処理部3の構成を示すブロック図である。図10に示すように、設置環境評価処理部3は、データ入力部61、PSD62、特徴量算出部63,64,65、及び出力部66より構成されている。センサ1が取得した振動データは、データ入力部61より入力され、PSD62で周波数解析される。
PSD62は、設置環境評価に対応した動作パラメータ(周波数範囲、区間長)を用いる。動作パラメータは、一例として、周波数分解能を粗くする代わりに、時間分解能を細かくする等と設定される。PSD62が出力するスペクトルデータは、特徴量算出部63,64,65に入力され、それぞれの特徴量データが出力部66,67,68から出力される。
図10の例では、特徴量算出部は3個で構成したが、設置環境を評価する特徴量であれば、個数を追加しても良い。ここで算出する特徴量の例として、以下のような特徴量を採用することができる。特徴量算出部63は、パワースペクトルの周波数平均値を時間平滑化した量を特徴量として出力する。特徴量算出部64は、パワースペクトルの積分値の時間的変動幅を特徴量として出力する。特徴量算出部65は、パワースペクトルの積分値の時間的増加勾配を特徴量として出力する。次に、学習部7の構成例を図11に示す。
図11は、図1に示した学習部7の構成を示すブロック図である。図11に示すように、学習部7は、入力部71、日内活動量算出部72、週内活動量算出部73、月内活動量算出部74、モデルパラメータ算出部75、スケジュール生成部76、動作パラメータ算出部77、出力部78,79、学習結果格納部38、及び入出力部39により構成されている。この学習部7は、図1に示したように、設置環境評価処理部3が算出した評価量を入力部71から入力し、出力部78,79からスケジュール、及び動作パラメータを出力する。
日内活動量算出部72は入力の評価量から学習部7が使用する学習モデルの特徴量である「日内活動量」を算出し、一定期間のデータを保持する。日内活動量の例として、1日に設定された期間における入力の評価値に対する平均値や分散値のほか、評価値に対する最大値と最小値の差分量が列挙される。
週内活動量算出部73は「週内活動量」を算出し、一定期間のデータを保持する。週内活動量の一例は、一週間の期間についての入力の評価値の平均値、及び、分散値、最大値と最小値の差分量である。月内活動量算出部74は「月内活動量」を算出し、一定期間のデータを保持する。月内活動量の一例は、一ケ月の期間についての入力の評価値の平均値、及び、分散値、最大値と最小値の差分量である。
図11において、学習結果格納部38は、上述のモデルパラメータを格納し、入出力部39から出力する。入出力部39は通信部9を経由して、センター側装置20にデータ転送する。この学習結果は、センター側装置20からの要求に応じて、センター側装置20に転送される。また、学習結果をセンター側装置20から書き換えるように要求することも可能である。すなわち、通信部9を経由して、入出力部39から学習結果として書き換えるべきモデルパラメータをデータ転送する。
その場合には、モデルパラメータ算出部75は学習結果格納部38から格納データを読み出し、内部に保持したモデルパラメータの修正を実行する。このように、センター側装置20からの学習結果の書き換えを行う上述のケースとしては、モデルパラメータ算出部75に既存のモデルパラメータを強制的に適用する場合が考えられる。そのようにすることで、早期に学習結果を収束・安定させる効果が期待できる。次に、学習部7の別の構成例を示す図12に示す。
図12は、図1に示した学習部7の変形例を示すブロック図である。なお、図12の学習部7aにおいて、図11に示した学習部7と共通する構成要素については、同じ符号を付している。すなわち、図12の学習部7aにおける、日内活動量算出部72、週内活動量算出部73、月内活動量算出部74は、図11の学習部7と共通であり、入力の評価量から日内活動量、週内活動量、月内活動量のそれぞれを算出する。図12の学習部7aは、入力部81、モデルパラメータ算出部82、学習結果格納部83,84,85、切替部86、出力部87,88、及び入出力部89により構成されている。この学習部7aは、設置環境評価処理部3が算出した評価量を入力部81から入力する。
日内活動量算出部72は、図13(a)を用いて後述する日内活動量のデータを一定期間保持し、次段の処理部からの要求に応じて出力する。週内活動量算出部73、月内活動量算出部74についても、対応する活動量のデータについて、同様に、一定期間保持し、次段の処理部からの要求に応じて出力する。モデルパラメータ算出部82は、上述の日内活動量データ、週内活動量データ、月内活動量データを入力として、基準とするモデルに当てはめるモデルパラメータを算出する。同様に、日内活動量データ、週内活動量データ、月内活動量データのそれぞれについて、モデルパラメータを算出する。
モデルパラメータ選定の基準のひとつは、入力される各活動量の一定期間の入力について、モデルパラメータから予測される活動量の値の差の合計を求め、それを最小とするパラメータである。スケジュール生成部76、及び、動作パラメータ算出部77は、モデルパラメータを入力として、スケジュールデータ、動作パラメータを生成する。
学習結果格納部83,84,85は異なる学習結果を格納し、モデルパラメータ算出部82が切替部86を制御して、3つの学習結果格納部から1つを選択して、格納されている学習結果を読み出し、モデルパラメータの算出に利用する。この学習部の構成例では、学習結果格納部83,84,85にそれぞれ異なる学習結果を予め格納しておき、そのうちのどれかを選択して、学習結果のデータの収束を早めることができる。時間をかけて、最初から学習処理を積み重ねなくても、いくつかの学習結果の候補の中からその地点の端末10に適すると予想されるものを選択して与えることで、学習の過程を早めることができる。
上述の学習結果の選択は、運用開始の初期設定で行うことも可能であり、あるいは、センター側装置20からの命令により、どれかの学習結果を選択することも可能である。センター側装置20からの命令による場合は、入出力部89より、センター側装置20からの命令及び上述の選択の情報が入力され、その内容に基づき、モデルパラメータ算出部82が学習結果の読み出しを行う。
学習結果格納部83,84,85の格納データの内容は初期設定で書き込んでおき、必要に応じて、センター側装置20からの命令に基づいて、内容を書換える動作を行う。その場合は、入出力部89より、センター側装置20からの命令、上述の選択の情報、及び、書き換えるデータ内容が入力され、その内容に基づき、モデルパラメータ算出部82が学習結果の書き込みを行う。
毎日の測定スケジュールについて、最も簡便な設定方法の一例は、日内活動量が最小となる時刻を設定することである。図13(a)の例では、3時付近がスケジュールの候補となる。モデルパラメータから最小の時刻を推定することにより、評価段階ではサンプルを取得していない時刻を指定することが可能である(データを補完することにより推定する)。毎週の測定スケジュール、毎月の測定スケジュールについても、同様の設定方法が適用可能である。
スケジュール生成部76で生成したスケジュールに関するデータは、出力部87から出力し、図1に示す測定スケジュール(データ)5となり、センサ信号処理部2に入力される。なお、図1の測定スケジュール(格納部)5はスケジュールデータのバッファ部である。動作パラメータ算出部77は、上述のモデルパラメータを入力として、動作パラメータを生成し、出力部88から出力され、上述のセンサ信号処理部2に入力される。センサ信号処理部2は、入力される動作パラメータにより、信号処理の動作パラメータを変更して動作する。なお、図1の動作パラメータ(格納部)6は動作パラメータのバッファ部である。
動作パラメータは、スケジュールの時刻に応じて、複数の組み合わせを算出し、それらを測定スケジュール(格納部)5に保持する。外乱の少ない時刻のみならず、外乱の多い時刻でも、スケジュール上、測定を実施する時刻に対応するパラメータについては、対応するデータが保持される。
図13は活動量のモデル化を説明するためのグラフであり、図13(a)は日内活動量、図13(b)は週内活動量、図13(c)は月内活動量、をそれぞれ示している。これらの活動量については、上述したとおりであり、図13の各グラフは、1つのデータ種別(例えば、平均値)についての模式的な変化を示している。次に、図1に示したセンサ信号処理部2の処理内容の他の一例について、図14を用いて説明する。
図14は、図1に示したセンサ信号処理部2において、測定時の外乱が大きい場合、図1の制御部が測定データを部分的に破棄する処理を示すフローチャートである。図14の処理フローは、制御部4が各部を制御して実行させる処理内容であり、まず、ステップS21で処理を開始する。次に、ステップS22では、センサ信号処理部2が、測定の信号処理を実行する。
次に、ステップS23では、設置環境評価処理部3が評価値を出力する。なお、設置環境評価処理部3とセンサ信号処理部2ではデータ出力のサンプリングレート、及び時間間隔が異なっている。設置環境評価処理部3は、相対的に時間分解能を高く設定するために、そのデータ出力の時間間隔を短く設定されている。この時間間隔は、フレームと呼ぶことにすると、センサ信号処理部2の1フレームは設置環境評価処理部3の複数フレームに対応する。それぞれのフレーム毎に、それぞれの処理部はデータ出力をしている。
このとき、設置環境評価処理部3のデータ出力(評価値)で判断して、外乱の影響を多く受けているタイミングは、上述のセンサ信号処理部2の処理内容の一例で示した閾値による処理と同様に実施することができる。
次に、フレーム分割ステップS24では、設置環境評価処理部3のデータ出力のフレームとセンサ信号処理部2のデータ出力のフレームの対応付けを行う。センサ信号処理部2のデータ出力の1フレームに、設置環境評価処理部3のデータ出力の複数フレームが対応付けられ、データの組み合わせが生成される。
次に、判定ステップS25は、上述のセンサ信号処理部2のデータ出力と設置環境評価処理部3のデータ出力の組み合わせについて、設置環境評価処理部3のデータ出力の評価値を閾値判定し、外乱の影響を判定する。1つの組み合わせデータについて、複数の評価値の内の1つでも閾値を超える場合は、その組み合わせデータは外乱の影響が大きいデータであると判定し、条件「S25でNO」とする。1つの組み合わせデータの複数の評価値がすべて閾値を超えない場合は、条件「S25でYES」とする。
条件「S25でYES」である組み合わせデータについては、外乱の影響無しとして、ステップS26へ進む。ステップS26では、対応するセンサ信号処理の出力データの1フレームを通信部9内のデータバッファーに格納する。次に、ステップS28では、通信部9が格納されたデータをフレーム毎にデータ転送する。
条件「S25でNO」である組み合わせデータについては、外乱の影響が大きいとして、ステップS27へ進む。ステップS27で、対応するセンサ信号処理の出力データの1フレームを破棄する。このとき、通信部9は、データバッファーのデータ量を計量することにより、データが1フレーム分破棄されていることを検出可能であり、破棄したデータの代替として、フレームデータが破棄したことを示すデータを送信するようにしても良い。
次に、ステップS29は1回の測定スケジュールについて、処理が完了したかを判定する終了判定処理である。測定が継続中であれば、条件「S29でNO」とし、測定が終了した場合は、条件「S29でYES」とする。条件「S29でNO」の場合は、ステップS22、ステップS23に処理フローを遷移する。条件「S29でYES」の場合は、ステップS30に進み、一連の処理を終了する。次に、本端末10の設置不良に係る処理フローを図15に例示する。
図15は、図1~図4に示した本端末10の設置不良について、図1の設置環境評価処理部3の評価結果から判断する処理を示すフローチャートである。この処理によれば、本端末10の設置不良を検出できる。しかも、この処理において、本端末10のシステム動作は正常であるが、センサの設置状態について、設置当初か、運用途中か、何れの時点で不良が発生したかについて、設置環境評価処理部3の評価結果から判断できる。
図15に示すように、初めにステップS41から処理を開始する。次に、ステップS42では、設置環境評価処理部3の出力データの統計量を算出する。ここで用いる統計量は、複数の評価値に関する、平均値、最小値、最大値、中央値、分散値、自己相関関数の標本値、評価値間の共分散、相互相関関数の標本値が用いられる。すなわち、それぞれの統計量に期待値の範囲、あるいは、有効な値の範囲を設定し、その範囲からの逸脱を監視する方法を用いる。
次に、ステップS43では、上述の統計量の期待値と実際の統計量の比較、すなわち、差分を計算する。次に、ステップS44で上述の差分の値の大きさを評価し、設置不良の有無を判定する。ここで、設置不良と判定する場合は、条件「S44でYES」である。設置不良でないと判定する場合は、条件「S44でNO」である。次に、ステップS44の条件分岐が「S44でYES」の場合は、ステップS45で通信部9からセンター側装置20に警告の信号を送信し、ステップS46で一連の処理を完了する。さらに、さらに、本端末10の他の処理フローを図16に例示する。
図16は、図1の制御部がトリガー状態を検査する処理を示すフローチャートである。図16の処理フローは外部トリガーの入力を検知して、測定を実行する処理に対応している。図1の制御部4への入力として、不図示の外部トリガーが入力されることを想定している。
まず、ステップS51で処理を開始し、次のステップS52でセンサ信号処理部2を測定モード待機状態に遷移させる。次に、ステップS53は制御部でトリガー状態を検査する処理を実行する。ステップS54でトリガー入力の有無を判断し、入力があると判定する場合は条件「S54のYES」とし、入力ない場合は条件「S54のNO」とする。条件「S54のYES」の場合は、ステップS55に遷移し、センサ信号処理部2で測定を実行する。この測定処理の完了後は、ステップS56で一連の処理を終了する。さらに、本端末10の他の処理フローを図17に例示する。
図17は、図1の設置環境評価処理部3で取得した評価結果から得た測定スケジュールをアップロードする処理を示すフローチャートである。図17の処理手順により、センター側装置20は、アップロードされたスケジュールデータを集計し、本端末10の測定スケジュールを保存して管理する。
図17の処理フローでは、初めにステップS61から処理を開始し、次のステップS62でセンサ信号処理部を測定モード待機状態に遷移させる。次に、ステップS63で測定スケジュールの検査を実行する。ここでの検査は、以前の測定スケジュールに対する変更分の確認である。測定スケジュールが初期設定のもの、あるいは、既にセンター側装置20に通知済みであれば、変更なしとする。
ステップS64では、測定スケジュールとの変更分についての判定処理を行い、変更があれば、条件「YES」とする。上述の判定処理で変更がないと判定すれば、条件「S64でNO」とする。ステップS65は、条件「S64でYES」のときに、測定スケジュールを送信する処理を行う。測定スケジュール(格納部)5に格納したスケジュールデータは、制御部4の制御により、通信部9よりセンター側装置20にデータ転送される。条件「S64でNO」のときには、測定スケジュールに変更はないので、スケジュールデータのデータ送信は行わない。
ステップS65でデータ送信が完了した後、あるいは、スケジュールデータのデータ送信を行わない場合、ステップS66に遷移して、一連の処理を完了する。さらに、本端末10の他の処理フローを図18に例示する。
図18は、図1の設置環境評価処理部で取得した評価結果を学習結果として図2のセンター側装置20にアップロードする処理を示すフローチャートである。図18に示すように、センター側装置20は、アップロードされた学習結果のデータを集計し、本端末10の学習結果を保存して管理する。ここに保存された学習結果のいくつかは、同一の設置場所、あるいは、別の設置場所の本端末10の学習データのプリセットデータとして利用される。この処理フローでは、ステップS71から処理を開始し、ステップS72で設置環境評価処理部3を環境調整モードの待機状態に遷移させる。
次に、ステップS73で学習結果の検査を実行する。ここでの検査は、以前の学習結果に対する変更分の確認である。学習結果がプリセットデータである場合、あるいは、既にセンター側装置20にデータ送信済みであれば、変更なしとする。次に、ステップS74では、学習結果の変更分についての判定処理を行い、変更があれば、条件「S74でYES」とする。上述の判定処理で変更がないと判定すれば、条件「S74でNO」とする。
ステップS75は、条件「S74でYES」のときに、学習結果に関するデータを送信する処理を行う。学習部7に格納した学習結果のデータは、制御部4の制御により、通信部9よりセンター側装置20にデータ転送される。条件「S74でNO」のときには、学習結果に変更はないので、学習結果のデータ送信は行わない。ステップS75でデータ送信が完了した後、あるいは、学習結果のデータ送信を行わない場合、ステップS76に遷移して、一連の処理を完了する。さらに、本端末10の他の処理フローを図19に例示する。
図19は、図17の処理により、センター側装置20で保存及び管理されている測定スケジュールについて、図1~図4に示した本端末10にダウンロード後リセットする処理を示すフローチャートである。端末10相互間の測定スケジュールを調整する場合は、センター側装置20は各端末10に測定スケジュールをダウンロードすることにより変更を指示する。この処理フローでは、初めにステップS81から処理を開始し、次のステップS82でセンサ信号処理部2を測定モード待機状態に遷移させる。
次に、ステップS83では、通信部9が受信したデータについて、センター側装置20からの要求内容を検査する。ステップS84では、受信データがセンター側装置20からの要求で、かつ、測定スケジュールのダウンロード要求、あるいは、測定スケジュールのリセットである場合は、条件「S84でYES」とし、ステップS85に進む。ステップS85では、センター側装置20からの処理要求を実行する。S83の要求内容が、測定スケジュールのダウンロード要求であった場合は、ステップS85では、制御部4が通信部9を制御して、測定スケジュールデータの受信ならびに、測定スケジュール5へのスケジュールデータの書き込みを実行する。
S83の要求内容が測定スケジュールのリセットであった場合、ステップS85では、制御部4が、測定スケジュール5へのスケジュールデータのリセット処理を実行させる。このリセットにより、スケジュールデータは初期データあるいはプリセット値に書き換えられる。
実施例1によれば、本端末10の設置位置に応じて、自動的に設置環境をセンシングすることにより、本端末10の測定スケジュール及び動作パラメータの最適な値を用いて運用することができる。その効果として、外乱の多い設置環境から静かな設置環境までの広範な状況に自動的に対応することができる。このとき、設置環境に応じて、本端末10の個別設定を手動で変更する必要はない。また、設置環境に応じて、外乱の少ない測定スケジュールを設定したならば、長期の継続使用も可能となる。さらに、不適切な設置環境を検出して、通知する機能により、本端末10の配置を修正することができる。
以上のように、本システムは、広範囲な配管にセンサ端末を多数設置して遠隔監視する各設置端末が、環境評価部で取得した情報に基づいて、動作スケジュール及び動作パラメータを設定することにより、様々な設置環境に自動的に適応し、外乱の多い環境でも効率的に観測できる。したがって、本システムを構成する複数の本端末10は、観測に要する電力の消耗を必要最小限に低減できる。その結果、本端末10は、長期間の継続使用ができる。つまり、本システムは、ユーザにとって使い勝手が良好である。
図20は、本発明の実施例2に係る管状態検知システム(これも「本システム」という)に用いる端末(これは「本端末19」という)の構成を示すブロック図である。なお、実施例1と同じ構成要素には同じ符号を付している。実施例2に固有の構成要素は、センサ信号処理部91、及び移動体判定部92である。
センサの出力データは、センサ信号処理部2及び設置環境評価処理部3で実施例1と同様の処理を行う。設置環境評価処理部3の処理結果を学習部7で処理して、センサ信号処理部91の測定スケジュール及び動作パラメータを算出する処理の流れである。
実施例1で追加する移動体判定部92は、設置環境評価処理部3の出力するデータをリアルタイムに処理する。これによって、外乱評価量を算出する。この外乱評価量は、自動車等の移動体からの振動伝播の影響が、センサ信号に含まれているか否かを判断する評価指標である。より詳しくは、以下のとおりである。
まず、移動体判定部92は、評価指標を出力してセンサ信号処理部91へ送る。センサ信号処理部91は、これによって、処理内容に変更を加える。センサ信号処理部91における処理の変更内容一例に、移動体の通過時間帯に基づいて、測定を遅延させる処理が挙げられる。この処理の詳細について、図21を用いて説明する。
図21は、図20のセンサ信号処理部の処理を説明するためのグラフであり、図21(a)は図20の移動体判定部が出力する外乱評価量、図21(b)は遅延信号、図21(c)は測定スケジュール信号、をそれぞれ示している。図21(a)に示すように、移動体判定部92の出力する外乱評価量は、移動体の通過、すなわち、その接近と離反により、外乱評価量は山形の変化することが想定される。
この外乱評価量に対して一定の閾値Y1を設定し、その閾値Y1と外乱評価量を比較して、閾値Y1以上の時間帯X2~X4が存在する。この時間帯X2~X4に前後するように、タイミングX1で立ち上がり、タイミングX5で立ち下がるタイミング信号を生成して、図21(b)X1~X5に示すような矩形波信号(遅延信号)を得る。これらタイミングX1~X5は、閾値Y1の設定次第で、前後方向に調整可能である。
一方で、測定スケジュール基づいて、図21(c)のような測定スケジュールの開始タイミングを示す測定スケジュール信号を生成する。この測定スケジュール信号を図21(b)の遅延信号を用いて遅延させ、図21(d)にタイミングX5で示すような測定開始制御信号を得ることができる。このようにして得られた測定開始制御信号を用いて、センサ信号処理部91の測定処理を行い、その処理結果を用いて、通信部9よりデータ転送を行えば、移動体による外乱が混入するタイミングを除外した検出結果を得ることができる。
第2の実施例によれば、実施例1と同様に、本端末19の設置位置に応じて、自動的に設置環境をセンシングして、本端末19の測定スケジュール及び動作パラメータの最適な値を用いて運用することができ、かつ、リアルタイムに外乱を検知して、それを除外することができる。これにより、長期の継続使用が可能になるほか、外乱による信号品質の低下を防止することができる。
以下、特許請求の範囲に沿って本発明の要点を説明する。
[1]本システム(図2)は、監視対象の配管28(図3)に取り付けて監視信号を送信する複数のセンサ端末10と、監視信号を受信して監視に用いるセンター側装置20と、を通信可能に接続して構成された管状態検知システムである。本システムに用いられるセンサ端末10は、センサ1と、センサ信号処理部2と、設置環境評価処理部3と、学習部7と、通信部9と、を備えて構成されている。
センサ1は、配管28の劣化状態に起因する異変に関する情報を含んだ検出データを出力する。センサ信号処理部2は、検出データを処理して劣化状態を分析した結果を目的信号として出力する。設置環境評価処理部3は、検出データを処理して、配管に加わる外乱を評価する特徴量を出力する。学習部7は、特徴量に基づいて評価された端末設置環境を学習する。通信部9は、センサ信号処理部2の出力した目的信号及び制御情報をセンター側装置20に対して交信可能である。また、学習部7は、端末設置環境に応じた学習結果に基づいて、センサ信号処理部2の測定スケジュール5及び動作パラメータ6をセンサ端末10毎に個別対応して、最適設定する。
本システムによれば、学習部7が、端末設置環境毎に異なる学習結果に基づいて、センサ信号処理部2の測定スケジュール5及び動作パラメータ6をセンサ端末10毎に個別対応して最適設定する。その結果、各センサ端末10の設置環境に応じた無駄の無い最適な動作を自動的に設定可能にできる。
[2]本システム(図2)は、次のように構成することが好ましい。センサ端末10は、電池部9を備えて電池駆動される。配管28は地中に埋設された埋設管28である。センサ1は少なくとも振動又は音を検出して電気信号に変換して検出データを出力する。センサ信号処理部2は、検出データを処理して、埋設管28の劣化程度を示す目的信号を生成する。設置環境評価処理部3は、検出データを処理して、埋設管に対して振動又は音となって加わる外乱を評価する特徴量を生成する。通信部9はセンター側装置20に対して無線通信可能である。学習部7は、測定スケジュール5及び動作パラメータ6を必要最小限の動作に設定して節電させる。
電池部9を備えて電池駆動されるセンサ端末10は、配管28は地中に埋設された埋設管28に配設される。センサ1は埋設された埋設管28から、少なくとも振動又は音を検出して目的信号を生成する。設置環境評価処理部3は、埋設管28が埋設された場所の環境毎に異なる外乱信号を用いて特徴量を生成する。学習部7は、端末設置環境に応じて生成された特徴量により学習する。その学習結果に基づいて、外乱ノイズの混入を避けるように、センサ信号処理部2の測定スケジュール5及び動作パラメータ6をセンサ端末10毎に個別対応して最適設定する。したがって、品質低下した測定データを破棄したり、破棄した代わりに別なタイミングで再測定したりするまでもなく、効率良く計測した計測データの信頼性を維持できる。その結果、バッテリーで動作するセンサ端末10の電力消費を抑制できるので、長期間の継続使用ができる。さらに、通信部9がセンター側装置20に対して無線通信するので、使い勝手が良好である。
[3]本システムにおいて、配管は水道配管28(図3)であり、劣化状態は漏水(図8)である。これによれば、広範囲に多地点の水道埋設管に安価なセンサ端末を常時配置し、遠隔監視により漏水の発生を検出し、高精度な漏洩点位置の推定が行える。
[4]本システムにおいて、センサ信号処理部2は、外乱信号が発生している測定期間のデータを除外して目的信号を出力する(図8、図21)。これによれば、高レベルの外乱ノイズが混入した測定期間のデータを除外して目的信号が得られる。したがって、計測データの信頼性を効率良く維持できる。
[5]本システムにおいて、センサ信号処理部2は、外乱信号を評価した結果に基づいて生成される遅延信号(図21(b)X1~X5)によって、測定スケジュール信号X3及び測定開始制御信号によるデータ取り込みのタイミングを遅延(図21(d)X5)させ、外乱の発生している時間帯X1~X5には測定期間を遅延する(図21)。これによれば、外乱の発生している時間帯X1~X5を避けて目的信号が得られる。したがって、計測データの信頼性を効率良く維持できる。
[6]本端末10は、上記[1]~[5]の何れか管状態検知システムに用いられる。この本端末10は、単品でも技術的特徴が明確である。
[7]本方法は、監視対象の配管28に取り付けた複数のセンサ端末10から送信された監視信号をセンター側装置20で受信して監視に用いる管状態検知方法である。センサ端末10(図1、図2)は、センサ1と、センサ信号処理部2と、設置環境評価処理部3と、学習部7と、通信部9と、を備えて構成され、制御情報に基づいて動作する。
本方法は、次の手順を有する(図4)。センサ1が、配管28の劣化状態に起因する異変を検出した検出データを出力するステップと、センサ信号処理部2が、検出データを処理して劣化状態を分析した結果を目的信号として出力するステップと、設置環境評価処理部3が、検出データから外乱信号を抽出して入力し、センサ1が設置された端末設置環境の評価に用いる特徴量を出力するステップと、学習部7が、特徴量に基づいて評価された端末設置環境を学習するステップS10と、学習部7が、学習した端末設置環境に応じてセンサ信号処理部2の測定スケジュール5及び動作パラメータ6を生成し、センサ端末10毎に個別の設定するするステップS12,S13と、通信部9が、センサ信号処理部2の出力した目的信号のほかに制御情報をセンター側装置20に対して交信するステップS7と、である。これによれば、上記[1]と同等の作用効果が得られる。
[8]本方法は、次の手順で実行されることが好ましい。すなわち、センサ端末10を設置した時から一定期間(タイマ動作S3)は、予め設定された測定スケジュール(S5)で運用し、設置環境評価処理部3を動作(タイマS2)させ、学習部7により、対応する学習結果が得られた(学習量判定S11)後に、測定スケジュール5を実行、すなわち定時処理(S6)する、という手順である。これにより、速やかに運用開始の後、適確な学習結果を用いて最適な運用が可能となる。
[9]本方法は、複数の学習結果83,84,85(図12)を予めセンサ端末10に保持しておき、センサ端末10を設置した時の初期動作の際に、その1つを読み込んで、学習部7が学習(S10)を開始する、という手順を有して実行されることが好ましい。
[10]本方法において、センサ信号処理部2は外部からのトリガー信号を受付けて(図16のS53)、測定を開始(S55)しても良い。
[11]本方法において、設置環境評価処理部3はセンサ端末10の設置状態の不良を検知(図15のS44)し、センター側装置20に通知しても良い。
[12]本方法において、測定スケジュール5毎に対応する動作パラメータ6を保持し、測定スケジュール5毎に対応する動作パラメータ6を変更して、センサ信号処理部2による測定を実行しても良い(図4のS12,S13)。
[13]本方法において、測定スケジュール5をセンター側装置20にアップロード(図18のS75)しても良い。
[14]本方法において、学習部7の学習内容として、端末設置環境の評価データをセンター側装置20にアップロード(図18のS75)しても良い。
[15]本方法において、測定スケジュール5は、センター側装置20からダウンロードするか、又は、センター側装置20からの指示によりリセット(図19のS83~S85)しても良い。上記[8]~[15]によれば、使い勝手の良好な管状態検知が実現できる。