JP7128988B2 - 湿式固形化粧料の製造方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1に記載された多色湿式化粧料の製造方法は、化粧皿(容器)内を仕切り板にて仕切り、この仕切り板にて仕切られた各空間に対して複数色のスラリー状の化粧料をそれぞれ充填し、容器内に充填された化粧料にプレス処理を施して打型することによって湿式固形化粧料を製造している。
ここで、第1化粧料のスラリー硬度は、異色化粧料のスラリー硬度と異なるように設定されているので、異色化粧料は、使用に際して第1化粧料とは異なる取れやすさになる。
具体的には、異色化粧料のスラリー硬度を第1化粧料のスラリー硬度よりも高く設定した場合には、異色化粧料は、使用に際して第1化粧料よりも若干取れにくくなるので、第1化粧料および異色化粧料を混ぜて使用する場合において、異色化粧料の色合いは薄く表現される。このことから例えば、第1化粧料が異色化粧料に比べて面積的に広く占有する様に充填されている場合であっても、使用者は、広く充填されている第1化粧料の方が取れやすくなっているため湿式固形化粧料を違和感なく使用することができる。また、異色化粧料がワンポイント的な模様となり、第1化粧料に比べて色調差が大きい場合であっても、異色化粧料の方が薄く表現されるため、やはり湿式固形化粧料を違和感なく使用することができる。
具体的には、第1化粧料のスラリー硬度(X1)を0.5N未満に設定した場合には、第1化粧料は、柔らかすぎるので、打型ステップにて容器内に充填された化粧料にプレス処理を施して打型することによって、十分に打型できなくなる。また、第1化粧料のスラリー硬度(X1)を1.5Nより高く設定した場合には、第1化粧料は、硬すぎるので、打型ステップにて容器内に充填された化粧料にプレス処理を施して打型することによって、異色化粧料は、容器の底面に到達しなくなる。そして、異色化粧料のスラリー硬度(Y1)をY1≧2.2X11.5となるように設定しない場合には、異色化粧料は、第1化粧料に対して柔らかすぎるので、打型ステップにて容器内に充填された化粧料にプレス処理を施して打型することによって、容器の底面に到達しなくなる。したがって、第1化粧料のスラリー硬度(X1)は、0.5N≦X1≦1.5Nに設定され、異色化粧料のスラリー硬度(Y1)は、Y1≧2.2X11.5となるように設定されていることが好ましい。
以下、本発明の第1の製造方法を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の製造方法に係る湿式固形化粧料の外観を示す図である。具体的には、図1の上図は、湿式固形化粧料1を上面側から見た図であり、下図は、湿式固形化粧料1を紙面横方向に切断した断面(A-A)を示す図である。
なお、本製造方法では、湿式固形化粧料1は、2色の化粧料C11,C12を用いて表面に色模様を形成しているが、3色以上の複数色の化粧料を用いて表面に色模様を形成してもよい。
また、異色化粧料C12のスラリー硬度は、第1化粧料C11のスラリー硬度よりも高く設定されている。換言すれば、異色化粧料C12のスラリー硬度は、第1化粧料C11のスラリー硬度と異なるように設定されている。
化粧料C11,C12のスラリー硬度を粘度計(COMPAC-100II、サン科学社製)にて測定する場合には、作業者は、図2(A)に示すように、所定の試験用容器10(50mLビーカー)に50mLの第1化粧料C11または異色化粧料C12を充填する。そして、作業者は、図2(B)に示すように、この試験用容器10に充填された第1化粧料C11または異色化粧料C12に円盤11を軸方向に沿って挿入することによって(図中矢印参照)、化粧料C11,C12のスラリー硬度(針入硬度)を測定することができる。
なお、図2は、第1化粧料C11のスラリー硬度を粘度計にて測定している状態を示す図である。
以下、湿式固形化粧料1の製造方法(第1の製造方法)について順に説明する。なお、この湿式固形化粧料1の製造方法は、全ての工程を製造装置にて実施してもよく、各工程に作業者の手作業を介在させて実施してもよい。
湿式固形化粧料1を製造するには、まず、図3(A)に示すように、保持体3に設けられたスペース31内に化粧皿2がセットされる。この保持体3は、一連の作業工程において化粧皿2を保持するために用いられる硬質な部材である。
なお、スペース31の高さは化粧皿2の高さよりも高い。また、スペース31の形状および大きさは、化粧皿2のそれと対応している。ここで、スペース31内に化粧皿2をセットした状態において、保持体3の上面32は、化粧皿2の上端21よりも高い位置に存在している。これによって、後の工程において化粧皿2内に化粧料C11,C12を充填したときに、化粧料C11,C12を化粧皿2の外に溢れさせないようにすることができる。
具体的には、充填装置4は、充填ノズル41を移動させながら(図3(B)左右方向矢印参照)化粧皿2の底面の全部に第1化粧料C11を充填する(図3(C)参照)。
充填装置4は、図4(A)に示すように、異色化粧料C12を吐出することによって、充填ノズル42を介して化粧皿2内に異色化粧料C12を充填する(異色化粧料充填ステップ)。
具体的には、充填装置4は、充填ノズル42を化粧皿2の模様形成部位に位置決めし、化粧皿2の一部に第1化粧料C11とは異なる色の異色化粧料C12を所定の模様(図1参照)の形状となるように充填する(図4(B)参照)。
なお、充填装置4は、化粧皿2の一部に第1化粧料C11とは異なる色の異色化粧料C12を充填した後、化粧皿2に振動を加えること等によって、化粧皿2の底まで異色化粧料C12を落とすようにしてもよい。
異色化粧料充填ステップにて湿式固形化粧料1の模様を形成した後、図5(A)に示すように、プレス装置(図示略)に設けられたプレスヘッド5のプレス位置に化粧皿2および保持体3が配置される。このプレスヘッド5は、化粧料C11,C12中に含まれる揮発性溶媒を吸引して除去するために上下方向に沿って貫通するようにして形成された複数の微小な吸引孔51を有している。また、プレスヘッド5のプレス面(下面)の形状および大きさは、保持体3のスペース31の開口のそれと対応している。なお、化粧皿2と、プレスヘッド5との間には、吸収性の高い紙や不織布等の吸収シート6が介在して配置されている。
なお、化粧料C11,C12中に含まれる揮発性溶媒は、吸収シート6のみに吸収させるようにしてもよい。
そして、湿式固形化粧料1は、揮発性溶媒に適合した乾燥条件に基づいて、乾燥させた後、スペース31にセットされた化粧皿2を保持体3から取り外すことによって、製造することができる。
化粧皿2の底面に異色化粧料C12が到達する条件を数式化するために、累乗近似にて化粧料C11,C12のスラリー硬度の関係の近似式を求めると、図6に示すように、Y=1.9981X1.5669(近似式1)となる。
したがって、本製造方法では、第1化粧料のスラリー硬度(Y1)は、Y≧2.2X1.5となるように設定されているので、打型ステップにて化粧皿2内に充填された化粧料C11,C12にプレス処理を施して打型することによって、異色化粧料C12は、化粧皿2の底面に確実に到達する。
(1)湿式固形化粧料1の製造方法(第1の製造方法)は、化粧皿2の底面の全部に第1化粧料C11を充填した後、化粧皿2の一部に第1化粧料C11とは異なる色の異色化粧料C12を充填するので、化粧皿2内を仕切り板にて仕切ることなく、湿式固形化粧料1の模様を形成することができる。したがって、湿式固形化粧料1の製造方法は、模様のデザインの変化に柔軟に対応することができ、温かみのある模様を形成することができる。
(3)異色化粧料C12のスラリー硬度は、第1化粧料C11のスラリー硬度よりも高く、打型ステップにて化粧皿2内に充填された化粧料C11,C12にプレス処理を施して打型することによって、異色化粧料C12は、化粧皿2の底面に到達するので、湿式固形化粧料1は、湿式固形化粧料1の表面から裏面にわたって模様を形成することができる。
例えば、本製造方法では、異色化粧料C12のスラリー硬度は、第1化粧料C11のスラリー硬度よりも高く設定されていたが、異色化粧料C12のスラリー硬度は、第1化粧料C11のスラリー硬度よりも高く設定されていなくてもよい。具体的には、異色化粧料C12のスラリー硬度は、第1化粧料C11のスラリー硬度と同じであってもよく、第1化粧料C11のスラリー硬度よりも低くてもよい。
本製造方法と同様に異色化粧料充填ステップにて湿式固形化粧料1の模様を形成した後、図7(A)に示すように、プレス装置(図示略)に設けられたプレスヘッド5のプレス位置に化粧皿2および保持体3が配置される。
次に、プレス装置は、図7(C)に示すように、プレスヘッド5を上昇させることによって(図中上向矢印)、プレス処理を終了する。
本製造方法と同様に異色化粧料充填ステップにて湿式固形化粧料1の模様を形成した後、図8(A)に示すように、プレス装置(図示略)に設けられたプレスヘッド5のプレス位置に化粧皿2および保持体3が配置される。
次に、プレス装置は、図8(C)に示すように、プレスヘッド5を上昇させることによって(図中上向矢印)、プレス処理を終了する。
以下、本発明の第2の製造方法を図面に基づいて説明する。
図9は、本発明の第2の製造方法に係る湿式固形化粧料の外観を示す図である。具体的には、図9の上図は、湿式固形化粧料1Aを上面側から見た図であり、下図は、湿式固形化粧料1Aを紙面横方向に切断した断面(B-B)を示す図である。
なお、本製造方法では、湿式固形化粧料1Aは、2色の化粧料C21,C22を用いて表面に色模様を形成しているが、3色以上の複数色の化粧料を用いて表面に色模様を形成してもよい。
また、第1化粧料C22のスラリー硬度は、異色化粧料C21のスラリー硬度よりも高く設定されている。換言すれば、第1化粧料C22のスラリー硬度は、異色化粧料C21のスラリー硬度と異なるように設定されている。
なお、異色化粧料C21の処方例は、前述した第1の製造方法における第1化粧料C11と同様であり、第1化粧料C22の処方例は、前述した第1の製造方法における異色化粧料C12と同様である。
以下、湿式固形化粧料1Aの製造方法(第2の製造方法)について順に説明する。
湿式固形化粧料1Aを製造するには、まず、図10(A)に示すように、保持体3に設けられたスペース31内に化粧皿2がセットされる。
次に、充填装置4は、図10(B)に示すように、第1化粧料C22を吐出することによって、充填ノズル42を介して化粧皿2内に第1化粧料C22を充填する(第1化粧料充填ステップ)。
具体的には、充填装置4は、充填ノズル42を化粧皿2の模様形成部位に位置決めし、化粧皿2の底面の一部に第1化粧料C22を所定の模様(図9参照)の形状となるように充填する(図10(C)参照)。
充填装置4は、図11(A)に示すように、異色化粧料C21を吐出することによって、充填ノズル41を介して化粧皿2内に異色化粧料C21を充填する(異色化粧料充填ステップ)。
具体的には、充填装置4は、充填ノズル41を移動させながら(図11(A)左右方向矢印参照)第1化粧料C22とは異なる色の異色化粧料C21を充填することによって、化粧皿2の底面の全部に化粧料C21,C22を充填する(図11(B)参照)。なお、異色化粧料C21は、図11(A)に示すように、第1化粧料C22にかかるようにして充填してもよく、これとは逆に第1化粧料C22にかからないようにして充填してもよい。要するに、異色化粧料充填ステップは、異色化粧料C21を充填することによって、化粧皿2の底面の全部に化粧料C21,C22を充填することができればよい。
異色化粧料充填ステップにて異色化粧料C21を充填した後、図12(A)に示すように、プレス装置(図示略)に設けられたプレスヘッド5のプレス位置に化粧皿2および保持体3を配置する。このプレスヘッド5は、化粧料C21,C22中に含まれる揮発性溶媒を吸引して除去するために上下方向に沿って貫通するようにして形成された複数の微小な吸引孔51を有している。また、プレスヘッド5のプレス面(下面)の形状および大きさは、保持体3のスペース31の開口のそれと対応している。なお、化粧皿2と、プレスヘッド5との間には、吸収性の高い紙や不織布等の吸収シート6が介在して配置されている。
なお、化粧料C21,C22中に含まれる揮発性溶媒は、吸収シート6のみに吸収させるようにしてもよい。
そして、湿式固形化粧料1Aは、揮発性溶媒に適合した乾燥条件に基づいて、乾燥させた後、スペース31にセットされた化粧皿2を保持体3から取り外すことによって、製造することができる。
(5)湿式固形化粧料1Aの製造方法(第2の製造方法)は、化粧皿2の底面の一部に第1化粧料C22を充填した後、化粧皿2に第1化粧料C22とは異なる色の異色化粧料C21を充填することによって、化粧皿2の底面の全部に化粧料C21,C22を充填するので、化粧皿2内を仕切り板にて仕切ることなく、湿式固形化粧料1Aの模様を形成することができる。したがって、湿式固形化粧料1Aの製造方法は、模様のデザインの変化に柔軟に対応することができ、温かみのある模様を形成することができる。
例えば、本製造方法では、第1化粧料C22は、湿式固形化粧料1Aの表面に露出していたが、異色化粧料C21および第1化粧料C22の分量やスラリー硬度を調整することによって、異色化粧料C21の内部に隠れるようにしてもよい。これによれば、湿式固形化粧料1Aの使用を進める事によって、徐々に第1化粧料C22が外部に露出していくことになるので、使用者は、湿式固形化粧料1Aを楽しみながら使用していくことができる。
2 化粧皿
3 保持体
4 充填装置
5 プレスヘッド
6 吸収シート
21 上端
31 スペース
32 上面
41,42 充填ノズル
51 吸引孔
C11 化粧料(第1の製造方法に係る第1化粧料)
C12 化粧料(第1の製造方法に係る異色化粧料)
C21 化粧料(第2の製造方法に係る異色化粧料)
C22 化粧料(第2の製造方法に係る第1化粧料)
Claims (3)
- 複数色のスラリー状の化粧料を容器内に充填し、前記容器内に充填された化粧料にプレス処理を施して打型することによって湿式固形化粧料を製造する湿式固形化粧料の製造方法であって、
まず、前記容器の底面の全部に第1化粧料を充填する第1化粧料充填ステップと、
次に、前記容器の一部に前記第1化粧料とは異なる色の少なくとも1種の異色化粧料を充填する異色化粧料充填ステップと、
その後、前記容器内に充填された化粧料にプレス処理を施して打型する打型ステップとを備え、
前記第1化粧料と比較して前記容器内における面積の割合の小さい前記異色化粧料のスラリー硬度は、前記第1化粧料のスラリー硬度よりも高くなるように設定され、
前記異色化粧料は、使用に際して前記第1化粧料よりも取れにくくなることを特徴とする湿式固形化粧料の製造方法。 - 請求項1に記載された湿式固形化粧料の製造方法において、
前記異色化粧料のスラリー硬度は、前記第1化粧料のスラリー硬度よりも高く、前記打型ステップにて前記容器内に充填された化粧料にプレス処理を施して打型することによって、前記異色化粧料は、前記容器の底面に到達することを特徴とする湿式固形化粧料の製造方法。 - 請求項2に記載された湿式固形化粧料の製造方法において、
前記第1化粧料のスラリー硬度(X1)は、0.5N≦X1≦1.5Nに設定され、前記異色化粧料のスラリー硬度(Y1)は、Y1≧2.2X1 1.5 となるように設定されていることを特徴とする湿式固形化粧料の製造方法。
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