JP2011121897A - 立体装飾を有する固形化粧料の製造方法 - Google Patents

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Shigeaki Nagasaka
茂明 長坂
Hiroshi Sato
拓 佐藤
Mitsuhiro Mizogaki
充洋 溝垣
Takashi Handa
貴志 半田
Hisaya Sugiyama
久也 杉山
Kazuhisa Yasuma
一寿 安間
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【課題】立体装飾を有する固形化粧料を簡便に製造する新規な手段を提供する。
【解決手段】固形化粧料の成型面に、立体装飾の形状の孔が開いた厚さ0.05〜0.5mmのシートを載置する工程Aと、固形化粧料の成型面とこれに載置したシートの孔とにより形成される穴に該化粧料粉体スラリーを充填する工程Bと、前記シート上の化粧料粉体スラリーを除去する工程Cとを行うことにより、固形化粧料の成型面を立体的に装飾する。
【選択図】図1

Description

本発明は、立体装飾を有するファンデーションやアイシャドウなどの固形化粧料の製造方法に関する。
従来、ファンデーションやアイシャドウなどの固形化粧料の見た目の楽しさや高級感を演出するために、その成型面にロゴや模様を立体的に形成して装飾することが行われてきた。このような装飾の方法としては、模様の形状の凹凸を有する押し型で固形化粧料を成型する方法が一般的であった(特許文献1)。
一方、固形化粧料の成型面と色の異なる粉体を塗布することで、固形化粧料の成型面にロゴや模様を描いて装飾することも行われてきた。このような装飾の方法としては、化粧料粉体を揮発性溶剤に分散させてなる化粧料粉体スラリーを接着剤塗布機で塗布する方法や(特許文献2)、所望の絵模様等の輪郭を有する孔の穿設されたプレートを固形化粧料の表面に載置した後、そのプレートの孔の上部から粉体分散液(化粧料粉体スラリー)を噴射して付着させる方法があった(特許文献3)。
特開2009−155275号公報 特開平5−201832号公報 特開平1−146812号公報
このうち、凹凸を有する押し型で固形化粧料を成型する方法は、模様の種類に応じた数の押し型が必要であり、簡便に成型面の設計変更ができないという問題があった。
また、化粧料粉体スラリーを接着剤塗布機で塗布する方法やプレートの上部から粉体分散液を噴射する方法は、特に微細な模様についてシャープな輪郭を形成するのが困難であった。
他に、固形化粧料の表面に装飾を付す方法としては、インクジェットプリンターを用いた印刷や静電気を利用した印刷があるが、何れも大掛かりな設備を必要とし、簡便とはいい難い。
このような背景において、本発明は、立体装飾を有する固形化粧料を簡便に製造する新規な手段を提供することを課題とする。さらに、本発明は、美麗な立体装飾を有する固形化粧料、輪郭がシャープな立体装飾を有する固形化粧料を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明は、化粧料粉体を揮発性溶剤に分散させた化粧料粉体スラリーを固形化粧料の成型面に塗着して、固形化粧料の成型面に立体装飾を施すことを含む、立体装飾を有する固形化粧料の製造方法であって、固形化粧料の成型面に、立体装飾の形状の孔が開いた厚さ0.05〜0.5mmのシートを載置する工程Aと、固形化粧料の成型面とこれに載置したシートの孔とにより形成される穴に該化粧料粉体スラリーを充填する工程Bと、前記シート上の化粧料粉体スラリーを除去する工程Cとを含む、立体装飾を有する固形化粧料の製造方法である。
本発明は、簡便に固形化粧料の成型面に立体装飾を施すことを可能にする。
本発明において、工程Cは、好ましくはへら、又はローラーにより行う。
これにより、シート上の化粧料粉体スラリーを簡便に除去することができる。
工程Cをローラーにより行う場合には、その表面に凹凸が形成されているローラーを用いる形態が挙げられる。
このようなローラーを用いることによって、立体的な装飾の表面に、更に立体的な装飾を施すことができる。
本発明の方法は、特に3.0mm以下程度の微細な装飾を施すのに有用である。従来のプレートの上部から化粧料粉体スラリーを噴射する方法では、微細な穴にスラリーを飛ばすことが困難であったためである。
このような微細な装飾を施すためには、最大長さが好ましくは3.0mm以下の孔を有するシートを用いる。
前記化粧料粉体スラリーにおいて、化粧料粉体全量に対するチタン類の含有量は、好ましくは前記固形化粧料全量に対するチタン類の含有量より多い。
また、前記化粧料粉体スラリーは、チタン類を化粧料粉体全量に対し、好ましくは70質量%以上含む。
前記チタン類の含有量を上記のような範囲とすることで、白系の光沢ある装飾を施すことができる。
前記化粧料粉体スラリーは、好ましくは、化粧料粉体を30〜70質量%含む。
化粧料粉体の含有量をこの範囲とすることにより、化粧料粉体スラリーが扱い易い粘度(ペースト状〜液状)となり、工程Bの前記穴への充填や工程Cの化粧料粉体スラリーの除去が行い易くなる。
前記化粧料粉体スラリーに含まれる揮発性溶剤は、好ましくは鎖状ジメチルポリシロキサンである。この揮発性溶剤は、幅広い含有量にて化粧料粉体スラリーに扱い易い粘度を与える。また、緩慢な条件で揮発する、安全性が高いなどの利点がある。
本発明によれば、立体装飾を有する固形化粧料を簡便に製造することが可能となる。特に好ましい形態では、輪郭がシャープな装飾、更には白系の光沢を有する装飾を有する固形化粧料を簡便に製造することが可能となる。
本発明の工程A、工程B及び工程Cを示す図(縦断面図)である。 工程Cを行った後シートを剥離する場合(a)、工程Cを行わないでシートを剥離する場合(b)の穴に充填された化粧料粉体スラリーの状態を示す図(縦断面図)である。 へらを用いて工程Bと工程Cを同時に行う形態を示す図(縦断面図)である。
以下、本発明の各工程について好ましい形態を挙げながら説明する。
(工程A:シートの載置)
本発明の工程Aでは、固形化粧料1の成型面1aに、立体装飾の形状の孔2aが開いたシートを載置する(図1、工程A)。固形化粧料の成型面とは、押し型による押圧等の成型により形成される面をいう。
固形化粧料は、乾式タイプでも湿式タイプでもよく、ファンデーション、チーク、アイ
シャドウなどが挙げられる。
シートの厚さは、0.05〜0.5mm、好ましくは0.05〜0.3mm、さらに好ましくは0.1〜0.2mmである。この厚さのシートを用いることで、立体的な装飾を形成することができ、しかも通常の振動や衝撃による該装飾の崩れが起こりにくい。シートの材質は特に制限されず、例えば紙やプラスチックなどが好ましく挙げられる。中でも、紙が好ましい。これは、紙自身に弾性があり成型面になじみ、すきまも出来にくく、にじみにくいためである。また、成型表面にシートによるキズも生じにくい。
シートの孔は、固形化粧料の成型面に施そうとする立体装飾の形状に形成されている。孔の形状は特に制限されない。すなわち、孔は、円形のもののみならず、線形、多角形などのものを含み、またシートの端に形成された切り欠きをも含む。孔の大きさも特に制限されないが、微細な装飾を施すためには、最大長さが好ましくは3.0mm以下、更に好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下の孔を有するシートを用いる。
(工程B:化粧料粉体スラリーの充填)
工程Aの後に行う工程Bでは、固形化粧料の成型面とこれに載置したシートの孔とにより形成される穴3に化粧料粉体スラリー4を充填する(図1、工程B)。
充填は、前記穴が化粧料粉体スラリーで満たされる方法にて行えばよく、その方法は特に制限されない。例えば、ノズルやチューブを用いて化粧料粉体スラリーを穴に注入する方法が挙げられる。
化粧料粉体スラリーは、化粧料粉体を揮発性溶剤に分散させたものである。
化粧料粉体としては、化粧料の成分として通常用いられるものを特に制限なく用いることができる。ここで、装飾を施そうとする固形化粧料に含まれている粉体、特に、該固形化粧料に多く含まれている粉体を用いたり、固形化粧料と同じ組成の粉体組成物を用いれば、既存の商品のパッケージ等の成分表示の変更を伴わずに固形化粧料の成型面に自由に装飾を施すことができる。通常の固形化粧料に多く含まれている粉体としては、チタンやその酸化物、タルク、セリサイト、マイカ、ナイロンパウダー、並びにそれらの表面処理物などが挙げられる。
本発明の一つの形態では、チタン類及びタルクから選ばれる粉体を化粧料粉体全量に対し、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%以上(例えば、100質量%)含む。
本明細書においては、チタン、酸化チタン、チタンや酸化チタンの表面処理物(表面処理チタン)、及びチタン、酸化チタン、表面処理チタンで被覆した粉体をまとめて「チタン類」という。
本発明の形態では、中でも、チタン類をスラリーを構成する化粧料粉体の成分として用いることが好ましい。中でも、チタン、酸化チタン、又はこれで被覆した粉体が好ましい。
一つの形態としては、前記化粧料粉体スラリーにおける化粧料粉体全量に対するチタン類の含有量を、前記固形化粧料全量に対するチタン類の含有量より多くする形態が挙げられる。ここでいう「固形化粧料全量に対するチタン類の含有量」とは、成型面に前記装飾を施していない固形化粧料全量に対するチタン類の含有量である。
チタン類の含有量を上記範囲とすることで、固形化粧料の表面に比して白っぽく光沢のある装飾を施すことができ、固形化粧料に美麗な印象を与えることができる。
また、前記化粧料粉体スラリーは、チタン類を化粧料粉体全量に対し、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む。また、化粧料粉体の全てがチタン類からなる(100質量%)ことも好ましい。
チタン類の含有量を上記範囲とすることで、鮮明で美麗な白系の装飾を施すことができ、固形化粧料に美麗な印象を与えることができる。また、チタン類を化粧料粉体全量に対し70質量%以上、好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、又は100質量%とすることにより、化粧料粉体の揮発性溶剤への分散性が良好となり、前記穴への化粧料粉体スラリーの充填を均一に行うことが容易になる。
また、チタン類を化粧料粉体全量に対し70質量%以上含む化粧料粉体スラリーを用いる場合には、固形化粧料の成型面の面積に対する装飾表面の合計面積が好ましくは20%を超えない範囲、更に好ましくは10%を超えない範囲、より好ましくは5%を超えない範囲とすることが好ましい。このような範囲とすることで、固形化粧料を実際使用した場合に、固形化粧料全体の粉体量に対する装飾部分のチタン量の割合が小さくなるため、実用上問題となりうる塗りむらは発生しない。
チタン類の粒度分布は、特に限定されないが、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法による平均粒子径が好ましくは100〜500nm程度、さらに好ましくは200〜300nm程度である。
このようなチタン類を用いることで、特に湿式タイプの固形化粧料へののりがよくなる。
揮発性溶剤としては、化粧料成分として通常用いられるものを特に制限なく用いることができる。例えば、軽質流動イソパラフィン等の炭化水素、鎖状シリコーン、環状シリコーン、低級アルコール、フロン類が挙げられる。鎖状シリコーンとしては、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン等の鎖状ジメチルポリシロキサンが、環状シリコーンとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状ジメチルポリシロキサンが、低級アルコールとしてはエタノールが好ましく挙げられる。
本発明の製造方法に用いる揮発性溶剤としては、緩慢な条件で十分に揮発することから、エタノール及び鎖状ジメチルポリシロキサンが好ましい。また、エタノール及び鎖状ジメチルポリシロキサンは、チタン類を分散するのにも適しているため、上記のようにチタン類を化粧料粉体全量に対し70質量%以上、好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、又は100質量%含む形態において好適である。
さらに25℃における動粘度が0.65〜5mm2/sの鎖状ジメチルポリシロキサン、特に使用上の安全性の高い(使用時のヒリヒリ感等の刺激がより少ない)シリコーン、例えば、オクタメチルトリシロキサン(信越化学工業株式会社:シリコーンKF−96L−1cs)が好ましい。
また、このような鎖状ジメチルポリシロキサンは、チタン類を分散するのに特に適しており、チタン類を分散させた場合、30〜70質量%程度の幅広い含有量(粉体含有量が30〜70質量%)において、柔らかいペースト状のスラリーを形成するという利点がある。
前記化粧料粉体スラリーの粘度は、ペースト状〜液状であることが好ましい。具体的には、デジタルカードメーター硬度計(マックスEM500型)100g・16φ(テクノエンジニアリング製)で測定した場合に、15〜0.5g程度(硬いペースト〜液状)、更に好ましくは11〜0.5g程度(やや硬いペースト〜液状)、より好ましくは11〜5g程度(やや硬いペースト〜柔らかいペースト)となる粘度であることが好ましい。
このような範囲の粘度とするためには、前記化粧料粉体スラリーにおける化粧料粉体の含有率を30〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%とする。
化粧料粉体の含有量をこの範囲とすることにより、化粧料粉体スラリーが扱い易い粘度となり、工程Bの前記穴への充填や工程Cの化粧料スラリーの除去が行い易くなる。特に、微細な装飾を施す場合に、化粧料粉体スラリーにおける化粧料粉体の含有量を35〜50質量%程度とすることにより、微細な穴に十分にスラリーが充填され、シャープな輪郭の装飾を容易に形成できる。
特に、後述するように、へらやローラーを用いて工程Bと工程Cを同時に行う場合には、このようなスラリーを用いることで、スラリーの除去とスラリーの穴への充填を効率良く行うことができる。
装飾を施す固形化粧料が乾式の場合には、これが湿式の場合に比べて、相対的に高い粘度のスラリーを用いることが、輪郭がシャープな装飾を形成する点で有利である。
(工程C:化粧料粉体スラリーの除去)
工程Cでは、工程Bにより前記シート上に付着ないし堆積した化粧料粉体スラリーを除去する(図1、工程C)。
工程Cは、孔の縁と前記シートの境目にまたがる粉体を概ね除去するという意味であり、必ずしもシート上の化粧料粉体スラリーを完全に除去しなくてもよい。
この工程Cを行うことにより、前記シートを剥離する際に、立体的な装飾の輪郭が崩れることを防ぐことができる(図2(a))。一方、この工程Cを行わない場合には、前記シートを剥離する際に、シートの孔付近に付着ないし堆積した化粧料粉体スラリー4aと共に穴中の化粧料粉体スラリーの一部が剥がれる可能性が高くなる(図2(b))。
工程Cは、好ましくはへら、又はローラーにより行う。これによりシート上の化粧料粉体スラリーを簡便に除去することができる。へらを用いる場合には、図1の工程Cに示すように、シート表面を移動させることにより(同図においてはX方向にへらを移動)、シート上の化粧料粉体スラリーを掃いて除去することができる。ローラーを用いる場合には、シート表面を移動させることにより化粧料粉体スラリーを掃くか、又はローラーに付着させて除去することができる。
また、へらやローラーを用いることによって、シート上の化粧料粉体スラリーを除去しながら前記穴に充填された化粧料粉体スラリーに圧力をかけることも可能であり、このような方法によれば、穴の化粧料粉体スラリーの充填密度を上げることができ、最終的に装飾が崩れにくくなるため好ましい。
また、へら、又はローラーを用いて、前記工程Bと工程Cを同時に行うこともできる。すなわち、へら、又はローラーでシート上の化粧料粉体スラリーを除去しながら、前記穴へ化粧料粉体スラリーを充填することができる。このような形態とすることで、生産効率が向上する(図3)。
さらに、ローラーを用いて工程Cを行う場合において、表面に凹凸が形成されているローラーを用いて、シート上の化粧料粉体スラリーを除去しながら前記穴に充填された化粧料粉体スラリーに圧力をかければ、立体的な装飾の表面にさらに立体的な装飾を施すことができる。この場合、ローラーの表面のうち、ローラーがシート上を転がった場合に、穴に充填された化粧料粉体スラリーの表面に接触する表面部分にのみ凹凸が形成されているローラーを用いることにより、粉体の除去と装飾を効率よく行うことができる。
<実施例1>
市販の乾式タイプのファンデーションの原料粉体組成物(主な成分:チタン、タルク、シリコーン処理微粒子酸化チタン被覆セリサイト) 60質量%、シリコーンKF−96L−1cs(信越化学工業(株)製、以下、単に「KF96」ともいう) 40質量%を混合し、化粧料粉体スラリー1を調製した。
また、酸化チタン 50質量%、シリコーンKF96L−1cs 50質量%を混合し、化粧料粉体スラリー2を調製した。
これらの2種類の化粧料粉体スラリーは何れも柔らかいペースト状(デジタルカードメーター硬度計100g・16φで、5〜8g)であった。
市販の乾式タイプのファンデーション(サンプル数2)及び湿式タイプのファンデーション(サンプル数1)の成型面に、最大長さが約2〜3mmの花びら形状の孔が複数開いた紙製のシート(厚さ約0.17mm)を載置した(工程A)。
化粧料粉体スラリー1を乾式タイプのファンデーションに、化粧料粉体スラリー2を乾式タイプ及び湿式タイプのファンデーションに、それぞれ前記シートの孔とファンデーションの成型面とにより形成された穴をほぼ覆うようにして載せた(工程B)。
続いて、へらを用いて、シート表面をこすることにより、化粧料粉体スラリーを前記穴へ圧力をかけながら充填すると共に(工程B)、シート上に堆積していた該スラリーを概ね除去した(工程C)。
続いて、ファンデーションの成型面からシートを剥がして常温にて静置し、化粧料粉体スラリー中の揮発性溶剤を揮発させ、成型面に立体的装飾が施された固形化粧料1〜3を作製した。
作製した固形化粧料について、外観、使用時のパフへの白残り(パフでファンデーションを拭った場合に白っぽさが問題となるか)、崩れの各項目について評価を行った。なお、崩れは、作製した固形化粧料を室温で1週間放置した後、成型品中皿を10cmの高さからコンクリートへ落下させて、成型品中皿に衝撃を与えた後、装飾を観察することにより評価した。
結果を表1に示す。
Figure 2011121897
固形化粧料1については、固形化粧料の成型面と同じ色の装飾が施されたため、細かい部分の輪郭はややぼけて見えたが、自然で柔らかい立体感があった。
固形化粧料2及び3については、白の光沢がある装飾が施されたため、細かい部分の輪郭がはっきりとし、シャープで美麗な立体感があった。
また、何れの固形化粧料も、白残り及び崩れはなかった。
<実施例2>
一般的なファンデーションに多く含まれる種々の原料粉体とKF96を種々の配合比率で混合し、各種化粧料粉体スラリーを調製した(表2)。原料粉体の配合料は何れも2gとした。
市販の乾式タイプのファンデーション及び湿式タイプのファンデーションの成型面に、最大長さが約2〜3mmの花びら形状の孔が複数開いた紙製のシート(厚さ約0.17mm)を載置した(工程A)。
表2に示す各種化粧料粉体スラリーを、乾式タイプ及び湿式タイプのファンデーションに、それぞれ前記シートの孔とファンデーションの成型面とにより形成された穴をほぼ覆うようにして載せた(工程B)。
続いて、へらを用いて、シート表面をこすることにより、化粧料粉体スラリーを前記穴へ圧力をかけながら充填すると共に(工程B)、シート上に堆積していた該スラリーを概ね除去した(工程C)。
続いて、ファンデーションの成型面からシートを剥がして常温にて静置し、化粧料粉体スラリー中の揮発性溶剤を揮発させ、成型面に立体的装飾が施された固形化粧料を作製した。
作製した固形化粧料について、スラリーの充填、こすりつけ、及び除去のしやすさ(作業性)、外観、成型面への付着性についての評価を行った。なお、外観は模様のきれいさ(色の美しさと模様の明確さを総合的に判断)について評価した。成型面の付着性については、形成された装飾の成型面への接着を目視した後、手で触ることにより評価した。
作業性については、以下の基準で評価した。
○:作業性がよい(へらを一定の圧力をかけながら一定のスピードで平行移動するのみで、穴にスラリーを充填しシート上のスラリーを除去できる。)
△:実用レベルに達しているが作業性がよくない(へらの動かし方やスピードをコントロールすることで穴にスラリーを充填しシート上のスラリーを除去できる。)
×:実用レベルに達していない(へらの動かし方やスピードをコントロールするのみでは穴にスラリーを充填しシート上のスラリーを除去することができない。)
また、外観については、以下の基準で評価した。
◎:色が美しく模様は明確である
○:色が美しく模様はほぼ明確である
△:色はまあまあ美しいが模様がやや不明確である
×:色はまあまあ美しいが模様が不明確である
なお、作業性が×、△の評価であったものについては、装飾の外観についての評価は行っていない。
また、成型面の付着性については以下の基準で評価した。
○:成型面に密着していて、手で触っても剥離しない。
△:成型面に密着しているように見えるが、手で触ると一部剥離する。
×:成型面に密着していない部分があり、手で触ると大部分が剥離する。
結果を表2に示す。
Figure 2011121897
以上の結果より、以下の知見が得られた。
化粧料粉体スラリーにおける揮発性溶剤と化粧料粉体の含有比率は、粘度がペースト状〜液状になる範囲、好ましくはやや硬いペースト〜柔らかいペーストになる範囲で、用いる粉体に応じて適宜調整できる。化粧料粉体スラリーにおける化粧料粉体の含有量としては、好ましくは35〜50質量%程度である。
装飾を施す固形化粧料が乾式の場合には、これが湿式の場合に比べて、相対的に高い粘度のスラリーを用いることが、輪郭がシャープな装飾を形成する点で有利である。
液状のスラリーを用いた場合は、柔らかいペーストのスラリーに比べて、作業性は良好である一方で外観のきれいさ、優れた付着性は実現しにくい傾向にある。
酸化チタンと、KF96などの鎖状ジメチルポリシロキサンとを組み合わせたスラリーを用いることで、乾式タイプ及び湿式タイプの何れの固形化粧料の表面にも、外観がきれいで、剥がれにくい装飾を施すことができる。
特に、平均粒子径が200〜300nm程度のチタン類を用いると、他の粉体を用いた場合やこれより小さい粒子径のチタン類を用いた場合に比して、固形化粧料の成型面へののりが良く、剥離の問題もない。
中でも、平均粒子径が200〜300nm程度のチタン類とKF96などの鎖状ジメチルポリシロキサンとを組み合わせて作製したペースト(粘度5〜9g(デジタルカードメーター100g・16φ(テクノエンジニアリング製)で測定))を用いれば、外観、付着性に極めて優れた装飾を極めて効率よく施すことができる。
立体装飾を有するファンデーション、チーク、アイシャドーなどを簡便に製造することができるため、商品のバリエーションを簡便に増やすことができ、低コストで商品価値を高めることができる。
1 固形化粧料
1a 成型面
2 シート
2a 孔
3 穴
4、4a 化粧料粉体スラリー
5 へら

Claims (9)

  1. 化粧料粉体を揮発性溶剤に分散させた化粧料粉体スラリーを固形化粧料の成型面に塗着して、固形化粧料の成型面に立体装飾を施すことを含む、立体装飾を有する固形化粧料の製造方法であって、
    固形化粧料の成型面に、立体装飾の形状の孔が開いた厚さ0.05〜0.5mmのシートを載置する工程Aと、
    固形化粧料の成型面とこれに載置したシートの孔とにより形成される穴に該化粧料粉体スラリーを充填する工程Bと、
    前記シート上の化粧料粉体スラリーを除去する工程Cとを含む、立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
  2. 工程Cをへらにより行うことを特徴とする、請求項1に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
  3. 工程Cをローラーにより行うことを特徴とする、請求項1に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
  4. 前記ローラーの表面に凹凸が形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
  5. 前記シートは、最大長さが3.0mm以下の孔を有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
  6. 前記化粧料粉体スラリーにおいて、化粧料粉体全量に対するチタン類の含有量が、前記固形化粧料全量に対するチタン類の含有量より多いことを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
  7. 前記化粧料粉体スラリーが、チタン類を化粧料粉体全量に対し70質量%以上含むことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
  8. 前記化粧料粉体スラリーが、化粧料粉体を30〜70質量%含むことを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
  9. 揮発性溶剤が、鎖状ジメチルポリシロキサンである、請求項1〜8の何れか一項に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
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