JP2011121897A - 立体装飾を有する固形化粧料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固形化粧料の成型面に、立体装飾の形状の孔が開いた厚さ0.05〜0.5mmのシートを載置する工程Aと、固形化粧料の成型面とこれに載置したシートの孔とにより形成される穴に該化粧料粉体スラリーを充填する工程Bと、前記シート上の化粧料粉体スラリーを除去する工程Cとを行うことにより、固形化粧料の成型面を立体的に装飾する。
【選択図】図1
Description
一方、固形化粧料の成型面と色の異なる粉体を塗布することで、固形化粧料の成型面にロゴや模様を描いて装飾することも行われてきた。このような装飾の方法としては、化粧料粉体を揮発性溶剤に分散させてなる化粧料粉体スラリーを接着剤塗布機で塗布する方法や(特許文献2)、所望の絵模様等の輪郭を有する孔の穿設されたプレートを固形化粧料の表面に載置した後、そのプレートの孔の上部から粉体分散液(化粧料粉体スラリー)を噴射して付着させる方法があった(特許文献3)。
また、化粧料粉体スラリーを接着剤塗布機で塗布する方法やプレートの上部から粉体分散液を噴射する方法は、特に微細な模様についてシャープな輪郭を形成するのが困難であった。
本発明は、簡便に固形化粧料の成型面に立体装飾を施すことを可能にする。
これにより、シート上の化粧料粉体スラリーを簡便に除去することができる。
このようなローラーを用いることによって、立体的な装飾の表面に、更に立体的な装飾を施すことができる。
このような微細な装飾を施すためには、最大長さが好ましくは3.0mm以下の孔を有するシートを用いる。
また、前記化粧料粉体スラリーは、チタン類を化粧料粉体全量に対し、好ましくは70質量%以上含む。
前記チタン類の含有量を上記のような範囲とすることで、白系の光沢ある装飾を施すことができる。
化粧料粉体の含有量をこの範囲とすることにより、化粧料粉体スラリーが扱い易い粘度(ペースト状〜液状)となり、工程Bの前記穴への充填や工程Cの化粧料粉体スラリーの除去が行い易くなる。
(工程A:シートの載置)
本発明の工程Aでは、固形化粧料1の成型面1aに、立体装飾の形状の孔2aが開いたシートを載置する(図1、工程A)。固形化粧料の成型面とは、押し型による押圧等の成型により形成される面をいう。
固形化粧料は、乾式タイプでも湿式タイプでもよく、ファンデーション、チーク、アイ
シャドウなどが挙げられる。
シートの厚さは、0.05〜0.5mm、好ましくは0.05〜0.3mm、さらに好ましくは0.1〜0.2mmである。この厚さのシートを用いることで、立体的な装飾を形成することができ、しかも通常の振動や衝撃による該装飾の崩れが起こりにくい。シートの材質は特に制限されず、例えば紙やプラスチックなどが好ましく挙げられる。中でも、紙が好ましい。これは、紙自身に弾性があり成型面になじみ、すきまも出来にくく、にじみにくいためである。また、成型表面にシートによるキズも生じにくい。
工程Aの後に行う工程Bでは、固形化粧料の成型面とこれに載置したシートの孔とにより形成される穴3に化粧料粉体スラリー4を充填する(図1、工程B)。
充填は、前記穴が化粧料粉体スラリーで満たされる方法にて行えばよく、その方法は特に制限されない。例えば、ノズルやチューブを用いて化粧料粉体スラリーを穴に注入する方法が挙げられる。
化粧料粉体としては、化粧料の成分として通常用いられるものを特に制限なく用いることができる。ここで、装飾を施そうとする固形化粧料に含まれている粉体、特に、該固形化粧料に多く含まれている粉体を用いたり、固形化粧料と同じ組成の粉体組成物を用いれば、既存の商品のパッケージ等の成分表示の変更を伴わずに固形化粧料の成型面に自由に装飾を施すことができる。通常の固形化粧料に多く含まれている粉体としては、チタンやその酸化物、タルク、セリサイト、マイカ、ナイロンパウダー、並びにそれらの表面処理物などが挙げられる。
本明細書においては、チタン、酸化チタン、チタンや酸化チタンの表面処理物(表面処理チタン)、及びチタン、酸化チタン、表面処理チタンで被覆した粉体をまとめて「チタン類」という。
一つの形態としては、前記化粧料粉体スラリーにおける化粧料粉体全量に対するチタン類の含有量を、前記固形化粧料全量に対するチタン類の含有量より多くする形態が挙げられる。ここでいう「固形化粧料全量に対するチタン類の含有量」とは、成型面に前記装飾を施していない固形化粧料全量に対するチタン類の含有量である。
チタン類の含有量を上記範囲とすることで、固形化粧料の表面に比して白っぽく光沢のある装飾を施すことができ、固形化粧料に美麗な印象を与えることができる。
チタン類の含有量を上記範囲とすることで、鮮明で美麗な白系の装飾を施すことができ、固形化粧料に美麗な印象を与えることができる。また、チタン類を化粧料粉体全量に対し70質量%以上、好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、又は100質量%とすることにより、化粧料粉体の揮発性溶剤への分散性が良好となり、前記穴への化粧料粉体スラリーの充填を均一に行うことが容易になる。
また、チタン類を化粧料粉体全量に対し70質量%以上含む化粧料粉体スラリーを用いる場合には、固形化粧料の成型面の面積に対する装飾表面の合計面積が好ましくは20%を超えない範囲、更に好ましくは10%を超えない範囲、より好ましくは5%を超えない範囲とすることが好ましい。このような範囲とすることで、固形化粧料を実際使用した場合に、固形化粧料全体の粉体量に対する装飾部分のチタン量の割合が小さくなるため、実用上問題となりうる塗りむらは発生しない。
チタン類の粒度分布は、特に限定されないが、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法による平均粒子径が好ましくは100〜500nm程度、さらに好ましくは200〜300nm程度である。
このようなチタン類を用いることで、特に湿式タイプの固形化粧料へののりがよくなる。
本発明の製造方法に用いる揮発性溶剤としては、緩慢な条件で十分に揮発することから、エタノール及び鎖状ジメチルポリシロキサンが好ましい。また、エタノール及び鎖状ジメチルポリシロキサンは、チタン類を分散するのにも適しているため、上記のようにチタン類を化粧料粉体全量に対し70質量%以上、好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、又は100質量%含む形態において好適である。
さらに25℃における動粘度が0.65〜5mm2/sの鎖状ジメチルポリシロキサン、特に使用上の安全性の高い(使用時のヒリヒリ感等の刺激がより少ない)シリコーン、例えば、オクタメチルトリシロキサン(信越化学工業株式会社:シリコーンKF−96L−1cs)が好ましい。
また、このような鎖状ジメチルポリシロキサンは、チタン類を分散するのに特に適しており、チタン類を分散させた場合、30〜70質量%程度の幅広い含有量(粉体含有量が30〜70質量%)において、柔らかいペースト状のスラリーを形成するという利点がある。
このような範囲の粘度とするためには、前記化粧料粉体スラリーにおける化粧料粉体の含有率を30〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%とする。
化粧料粉体の含有量をこの範囲とすることにより、化粧料粉体スラリーが扱い易い粘度となり、工程Bの前記穴への充填や工程Cの化粧料スラリーの除去が行い易くなる。特に、微細な装飾を施す場合に、化粧料粉体スラリーにおける化粧料粉体の含有量を35〜50質量%程度とすることにより、微細な穴に十分にスラリーが充填され、シャープな輪郭の装飾を容易に形成できる。
特に、後述するように、へらやローラーを用いて工程Bと工程Cを同時に行う場合には、このようなスラリーを用いることで、スラリーの除去とスラリーの穴への充填を効率良く行うことができる。
装飾を施す固形化粧料が乾式の場合には、これが湿式の場合に比べて、相対的に高い粘度のスラリーを用いることが、輪郭がシャープな装飾を形成する点で有利である。
工程Cでは、工程Bにより前記シート上に付着ないし堆積した化粧料粉体スラリーを除去する(図1、工程C)。
工程Cは、孔の縁と前記シートの境目にまたがる粉体を概ね除去するという意味であり、必ずしもシート上の化粧料粉体スラリーを完全に除去しなくてもよい。
この工程Cを行うことにより、前記シートを剥離する際に、立体的な装飾の輪郭が崩れることを防ぐことができる(図2(a))。一方、この工程Cを行わない場合には、前記シートを剥離する際に、シートの孔付近に付着ないし堆積した化粧料粉体スラリー4aと共に穴中の化粧料粉体スラリーの一部が剥がれる可能性が高くなる(図2(b))。
また、へら、又はローラーを用いて、前記工程Bと工程Cを同時に行うこともできる。すなわち、へら、又はローラーでシート上の化粧料粉体スラリーを除去しながら、前記穴へ化粧料粉体スラリーを充填することができる。このような形態とすることで、生産効率が向上する(図3)。
市販の乾式タイプのファンデーションの原料粉体組成物(主な成分:チタン、タルク、シリコーン処理微粒子酸化チタン被覆セリサイト) 60質量%、シリコーンKF−96L−1cs(信越化学工業(株)製、以下、単に「KF96」ともいう) 40質量%を混合し、化粧料粉体スラリー1を調製した。
また、酸化チタン 50質量%、シリコーンKF96L−1cs 50質量%を混合し、化粧料粉体スラリー2を調製した。
これらの2種類の化粧料粉体スラリーは何れも柔らかいペースト状(デジタルカードメーター硬度計100g・16φで、5〜8g)であった。
続いて、へらを用いて、シート表面をこすることにより、化粧料粉体スラリーを前記穴へ圧力をかけながら充填すると共に(工程B)、シート上に堆積していた該スラリーを概ね除去した(工程C)。
結果を表1に示す。
固形化粧料2及び3については、白の光沢がある装飾が施されたため、細かい部分の輪郭がはっきりとし、シャープで美麗な立体感があった。
また、何れの固形化粧料も、白残り及び崩れはなかった。
一般的なファンデーションに多く含まれる種々の原料粉体とKF96を種々の配合比率で混合し、各種化粧料粉体スラリーを調製した(表2)。原料粉体の配合料は何れも2gとした。
続いて、へらを用いて、シート表面をこすることにより、化粧料粉体スラリーを前記穴へ圧力をかけながら充填すると共に(工程B)、シート上に堆積していた該スラリーを概ね除去した(工程C)。
○:作業性がよい(へらを一定の圧力をかけながら一定のスピードで平行移動するのみで、穴にスラリーを充填しシート上のスラリーを除去できる。)
△:実用レベルに達しているが作業性がよくない(へらの動かし方やスピードをコントロールすることで穴にスラリーを充填しシート上のスラリーを除去できる。)
×:実用レベルに達していない(へらの動かし方やスピードをコントロールするのみでは穴にスラリーを充填しシート上のスラリーを除去することができない。)
◎:色が美しく模様は明確である
○:色が美しく模様はほぼ明確である
△:色はまあまあ美しいが模様がやや不明確である
×:色はまあまあ美しいが模様が不明確である
なお、作業性が×、△の評価であったものについては、装飾の外観についての評価は行っていない。
○:成型面に密着していて、手で触っても剥離しない。
△:成型面に密着しているように見えるが、手で触ると一部剥離する。
×:成型面に密着していない部分があり、手で触ると大部分が剥離する。
結果を表2に示す。
化粧料粉体スラリーにおける揮発性溶剤と化粧料粉体の含有比率は、粘度がペースト状〜液状になる範囲、好ましくはやや硬いペースト〜柔らかいペーストになる範囲で、用いる粉体に応じて適宜調整できる。化粧料粉体スラリーにおける化粧料粉体の含有量としては、好ましくは35〜50質量%程度である。
装飾を施す固形化粧料が乾式の場合には、これが湿式の場合に比べて、相対的に高い粘度のスラリーを用いることが、輪郭がシャープな装飾を形成する点で有利である。
液状のスラリーを用いた場合は、柔らかいペーストのスラリーに比べて、作業性は良好である一方で外観のきれいさ、優れた付着性は実現しにくい傾向にある。
酸化チタンと、KF96などの鎖状ジメチルポリシロキサンとを組み合わせたスラリーを用いることで、乾式タイプ及び湿式タイプの何れの固形化粧料の表面にも、外観がきれいで、剥がれにくい装飾を施すことができる。
特に、平均粒子径が200〜300nm程度のチタン類を用いると、他の粉体を用いた場合やこれより小さい粒子径のチタン類を用いた場合に比して、固形化粧料の成型面へののりが良く、剥離の問題もない。
中でも、平均粒子径が200〜300nm程度のチタン類とKF96などの鎖状ジメチルポリシロキサンとを組み合わせて作製したペースト(粘度5〜9g(デジタルカードメーター100g・16φ(テクノエンジニアリング製)で測定))を用いれば、外観、付着性に極めて優れた装飾を極めて効率よく施すことができる。
1a 成型面
2 シート
2a 孔
3 穴
4、4a 化粧料粉体スラリー
5 へら
Claims (9)
- 化粧料粉体を揮発性溶剤に分散させた化粧料粉体スラリーを固形化粧料の成型面に塗着して、固形化粧料の成型面に立体装飾を施すことを含む、立体装飾を有する固形化粧料の製造方法であって、
固形化粧料の成型面に、立体装飾の形状の孔が開いた厚さ0.05〜0.5mmのシートを載置する工程Aと、
固形化粧料の成型面とこれに載置したシートの孔とにより形成される穴に該化粧料粉体スラリーを充填する工程Bと、
前記シート上の化粧料粉体スラリーを除去する工程Cとを含む、立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。 - 工程Cをへらにより行うことを特徴とする、請求項1に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
- 工程Cをローラーにより行うことを特徴とする、請求項1に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
- 前記ローラーの表面に凹凸が形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
- 前記シートは、最大長さが3.0mm以下の孔を有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
- 前記化粧料粉体スラリーにおいて、化粧料粉体全量に対するチタン類の含有量が、前記固形化粧料全量に対するチタン類の含有量より多いことを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
- 前記化粧料粉体スラリーが、チタン類を化粧料粉体全量に対し70質量%以上含むことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
- 前記化粧料粉体スラリーが、化粧料粉体を30〜70質量%含むことを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
- 揮発性溶剤が、鎖状ジメチルポリシロキサンである、請求項1〜8の何れか一項に記載の立体装飾を有する固形化粧料の製造方法。
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