JP7127839B2 - 予測調整型サスペンション制御システム - Google Patents
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本発明は、患者の搬送走行中において、凹凸のある道路箇所を通過する場合においても、患者が横臥する架台に発生する振動や衝撃を低減することができる、予測調整型サスペンション制御システムを提供することを目的とする。
式(1)
ここに、t1とt2は、それぞれ道路凹凸箇所の通過開始時刻と通過終了時刻である.
図1において、1は福祉車両あるいは救急救命車両であり、2はサスペンション装置付きの架台であり、図には示さなかった患者を横臥させる。3は計測部であり、車両情報、架台上の患者の体重を測定する。4は通信部であり、計測部3で得た車両情報と患者の体重を7のネットワークサーバに送信する。5は制御部であり,6のサスペンション装置のバネ定数Kと粘性係数Cを調節する、8はネットワークサーバ7の通信部であり、車両情報と患者の体重の計測データを受信する。これらの計測データは、9の記録部に保存される。10は検出部であり、記録部9に保存されている車両情報から道路凹凸箇所を検出する。11は算出部であり、道路凹凸箇所ごとにサスペンション装置6のバネ定数Kと粘性係数Cの最適値を算出する。12は記憶部であり、道路凹凸箇所ごとに算出したバネ定数Kと粘性係数Cの最適値を保存する。13は予測部であり、通信部4から送信される車両情報から、通過が予想される道路凹凸箇所でのバネ定数Kと粘性係数Cの最適値、移動速度V、患者体重M(以下、道路凹凸箇所と当該凹凸箇所でのバネ定数Kと粘性係数Cの最適値、移動速度V、患者体重Mを纏めて、道路凹凸情報と略記することがある。)が記憶部12に存在するか判定し、存在していれば、バネ定数Kと粘性係数Cの最適値を、通信部8を経由して車両に送信する。車両1は、これらの最適値を通信部4で受信して制御部5に送出する。
ステップ1:車両情報、患者体重の計測
計測部3にある位置センサ、速度センサ、加速度センサ、圧力センサにより、自車両の位置(緯度と経度)、速度、3軸方向加速度、患者の体重を計測する。
ステップ2:通過予定箇所の道路情報有無の判定
ネットワークサーバの予測部13は、車両からリアルタイムで送られてくる位置に関する車両情報から、記憶部12に、車両通過予定箇所に対応する道路凹凸情報が保存されているか否かを判定する。
ステップ3:バネ定数Kと粘性係数Cの取得
記憶部12に道路凹凸情報が保存されていれば、現在の移動速度Vから凹凸箇所の予想通過速度VEを予測し、記憶部12から、予想通過速度VEと患者体重Mに対する最適なバネ定数K(VE、M)と粘性係数C(VE、M)を取得する。該当する道路凹凸情報が記憶部12にない場合は、バネ定数と粘性係数に既定値を割り当て、予測部13は、サーバ側通信部8を通じて車両に送信する。
ステップ4:バネ定数Kと粘性係数Cの設定
車両側では、ネットワークサーバから送信されたバネ定数Kと粘性係数Cを通信部4で受信し、制御部5に送出する。制御部5は、道路凹凸箇所を通過する前に、架台サスペンション装置6に対して、バネ定数と粘性係数を設定する。バネ定数Kの設定法としては、例えば、空気バネを利用する場合は、釣り合いの位置でのバネ長を変えることで行う。ただし,バネの伸び縮みに応じてバネ定数が変化するため、釣り合いの位置でのバネ定数の設定となる。粘性係数Cの設定法としては、例えば、オイルダンパであれば、オリフィスまたはバルブの開閉度を変えることで実現できる。MRダンパの場合は、減衰力を制御することで変えることができる。
図4は道路凹凸情報の更新処理手順を示したものである。
ステップ1:車両情報、患者体重の計測
計測部3にある位置センサ、速度センサ、加速度センサ、圧力センサにより、自車両の位置(緯度と経度)、速度、3軸方向加速度、患者の体重を計測する。
ステップ2:記録部への保存
ステップ1で得た車両情報と患者の体重を記録部9に保存する。
ステップ3:道路凹凸箇所の検出
記録部9に保存されている車両の位置、移動速度、3軸方向加速度から、検出部10で、道路上の凹凸箇所の位置(緯度と経度)を検出し、その凹凸箇所通過時の上下加速度を2回積分することで、移動速度Vと患者の体重Mに対するフロア変位X(V、M)を推定する。
ステップ4:バネ定数Kと粘性係数Cの最適値の算出
算出部11で、検出された道路凹凸箇所に対して、推定されたフロア変位Xと患者の体重Mに対して、架台2の振動を抑えるバネ定数Kと粘性係数Cの最適値を、数値シミュレーションあるいは数理計画法等を利用して算出する。最適値としては、例えば、凹凸箇所通過中の架台上の上下加速度AXの絶対値積分である式(1)を最小とするように定める。
ステップ5:道路凹凸箇所、バネ定数Kと粘性係数Cの最適値の保存
ステップ3で検出した道路凹凸箇所の位置情報、およびステップ4で算出したその凹凸箇所に対するバネ定数Kと粘性係数Cの最適値を、それらを算出した際の車両移動速度V、患者体重Mと共に、記憶部12に保存する。車両移動速度V、患者体重M に対応するバネ定数Kと粘性係数Cの最適値がすでに保存されている場合は、既存値との平均として更新する.
実験で行った計測、データ処理、検証の手順は以下のとおりである。
1.車両位置、移動速度、3軸加速度ACCの計測
計測ソフトウェアを組み込んだスマート端末を普通自動車の車内に設置し、一般道路を走行して、緯度LAT、経度LNG、移動車速V、3軸加速度ACC記録した。記録後、3軸加速度ACCから道路凹凸箇所を抽出した。
2.車両フロア変位の推定
凹凸箇所と判定された道路箇所に記録された上下加速度Aを2回積分することで、この凹凸箇所通行時のフロア変位Xを推定した。図5に、移動速度V=40 km/hで通過したときの上下加速度Aから推定したフロア変位Xの一例を示す。
3.ばね標準値の最適値の推定
架台は図2で示したバネ・ダンパ系を4セット用いて支持されており、バネはシリンダ型の空気バネ、シリンダ内部の気体は理想気体であり熱の出入りはないと仮定し、図5の推定したフロア変位Xから、バネ定数Kを式(2)で模擬した。
--- 式(2)
ここで、Hは釣り合い状態でのバネの標準長、ΔXは架台変位X1とフロア変位Xとの距離X1-X、Moは患者体重Mと架台重量の合算値の1/4質量(Mo = MM/4)、gは重力加速度、Patmは標準気圧、S=0.01 m2はシリンダ断面積である。バネ定数KはΔXに応じて変化することから、バネ定数Kの調整は、釣り合いの位置におけるバネ標準長Hを最適化することで行い、HとCの最適値でサスペンションを予測制御する。
4.バネ標準長の最適値H(V、M)、および粘性係数の最適値C(V、M)の計算
M=110 kg、架台重量50 kg、Mo=40 kgと設定し,バネ標準長Hと粘性係数Cを変えながら、図5のフロア変位Xをモデルに代入して,バネ上の上下加速度AXを数値シミュレーションにより算出した。
得られたバネ上の上下加速度AXについて、式(1)を最小にするバネ上の上下加速度AXが得られるバネ標準長Hと粘性係数Cを、凹凸箇所通過時のV=40 km/hとM=110 kgに対する最適値とした。異なるVとMに対しても、同様に最適値を求め、H(V、M)およびC(V、M)として保存した。
図6はバネ標準長の最適値H(V,M)を示したものであり、図7は粘性係数の最適値C(V,M)を示
したものである。
なお、バネ標準長の規定値は,H=0.15 mとした。これに対応するバネ定数Kの既定値は、式(2)でMo=60 kgと設定して、釣り合いの位置(ΔX=0)における値として求めた。また、粘性係数Cの既定値に関しては、釣り合いの位置で、図2のモデルを線形時不変2次系と見なして、減衰率がζ=1となるようにC=2(MoK)^(1/2)と設定した。このMoとKは,上記の既定値である。
2 架台
3 計測部
4 通信部
5 制御部
6 サスペンション装置
7 ネットワークサーバ
8 通信部
9 記録部
10 検出部
11 演算部
12 記憶部
13 予測部
Claims (7)
- 福祉車両や救命救急車両の患者搬送走行中において、自車両の位置、移動速度、3軸方向加速度、患者の体重を測定する計測部と、これらの計測データをネットワークサーバに送信する車両側通信部と、これらの計測データを受け取るサーバ側通信部と、受け取ったこれらの計測データを保存する記録部と、受け取ったこれらの計測データから道路凹凸箇所を検出する検出部と,検出された凹凸箇所について架台の振動を抑制するためのサスペンション装置のバネ定数と粘性係数の最適値を求める算出部と、検出された道路凹凸箇所とそれに対応するバネ定数と粘性係数の最適値を保存する記憶部と、車両からリアルタイムで受信する前記自車両の位置、移動速度、3軸方向加速度から通過が予想される道路凹凸箇所を予測する予測部と、サーバから受け取った前記バネ定数と粘性係数の最適値を用いて架台のサスペンション装置のバネ定数と粘性係数を調節する制御部を車両側に備え、当該道路箇所を通過する際には制御部で架台のサスペンション装置のバネ定数と粘性係数を予め最適値に調整して、架台の振動を抑制することを特徴とする予測調整型サスペンション制御システム。
- 前記計測部は、GPS(Global Positioning System)等を利用して車両の緯度LAT、経度LNGを取得し、GPSまたは速度センサを利用して車両移動速度Vを計測し、加速度センサを用いて車両の3軸方向加速度ACCを計測し、圧力センサやひずみゲージを用いて患者の体重Mを計測することを特徴とする請求項1に記載の予測調整型サスペンション制御システム。
- 前記検出部は、前記計測部で測定した車両情報から、前記記録部に保存されている道路凹凸箇所を検出し、3軸方向加速度のうち上下方向加速度Aを2回積分して移動速度Vと患者体重Mごとに凹凸箇所通過時の車両のフロア変位X(V,M)を推定し、測定が同じ通過速度Vと患者体重Mで複数回行われた場合は、測定データごとに推定したフロア変位の平均値をX(V,M)とすることを特徴とする請求項1に記載の予測調整型サスペンション制御システム。
- 前記記憶部は、道路凹凸箇所ごとに、通過速度V、患者体重Mに対して、式(1)を最小にするバネ定数をK(V、M)、粘性係数をC(V、M)として、凹凸箇所の緯度LAT、経度LNG、K(V、M)、C(V、M)をセットにして、これらを保存することを特徴とする請求項1に記載の予測調整型サスペンション制御システム。
- 前記予測部は、リンク(道路)とノード(交差点)で構成されるネットワークとして表現された道路網について、車両からリアルタイムで送られてくる緯度LAT、経度LNG、移動速度V、3軸加速度ACC、患者体重Mのうち、緯度LAT、経度LNG、移動速度Vから走行中のリンクを特定し,そのリンクの進行方向に記憶部に登録された道路凹凸箇所が存在すれば、それを通過予定の凹凸箇所とし、更に,走行リンクの先に接続するリンク上に登録されている凹凸箇所を予想通過箇所の候補に挙げておき、通過予定の凹凸箇所が存在した場合、移動速度Vから予想通過速度VEを予測し、その凹凸箇所、および予想通過速度VEと患者体重Mに対するバネ定数の最適値K(VE、M)と粘性係数の最適値C(VE、M)を記憶部から取得して、通信部に送出することを特徴とする請求項1に記載の予測調整型サスペンション制御システム。
- 前記制御部は、車両側通信部を通じてネットワークサーバから送られてきたバネ定数の最適値K(VE、M)と粘性係数の最適値C(VE、M)を、道路凹凸箇所通過前にサスペンション装置に設定することを特徴とする請求項1に記載の予測調整型サスペンション制御システム。
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