JP7126705B2 - 通気層を有する密着型外断熱に用いられる火災対応型外壁構造 - Google Patents

通気層を有する密着型外断熱に用いられる火災対応型外壁構造 Download PDF

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Description

本発明は、鉄筋コンクリート造の外断熱建築物に関し、より具体的には、火災時において断熱材への延焼を防止することが可能な密着通気層型外断熱に用いられる火災対応型外壁構造に関する。
鉄筋コンクリート造の外断熱建築物は、コンクリート躯体の外側を断熱層で被覆するため、太陽の日射による熱ストレスを原因とするひび割れを抑制できること、コンクリート躯体が空気に接触しないため、コンクリートの中性化を抑制することができて、鉄筋棒鋼の腐蝕を防止することが可能であり、建物の耐久性が向上すること、さらに、建物内の温度環境を維持することができて、建物内の結露発生を抑制することが可能であるため、カビ、ダニの発生を抑制することができ、健康面でも優れていることなどの理由により、省エネルギーの高性能建物として評価されている。
こうした外断熱建築物に用いられる主な外断熱構造として、以下の4つの構造を挙げることができる(非特許文献1)。
(1)通気層型(図10(A))
外壁(躯体)に断熱層を張設し、その外側に空間(通気層)を空けて外装材を配置した構造である。室内の湿気(水蒸気)が断熱層を透過して通気層から排出される。通気層の上下に隙間があるため、断熱層としてプラスチック系断熱材を用いる場合には、防火について十分な検討が必要である。外装材として、PC版、金属パネル等が使用されるため、一般的には高コストである。
(2)密着型(図10(B))
外壁(躯体)に断熱層を張設し、断熱層に外装材を張設した構造であり、通気層は設けられない。透湿抵抗が小さいものを外装材として用いないと、内部結露が発生するおそれがある。また、外装材の温度変化が大きいため、伸縮、反り、目地切れなどが発生する場合がある。
(3)密閉空気層型(図10(C))
外壁(躯体)と断熱層との間、又は外装材と断熱層との間に、密閉された空気層を設けた構造である。適切な施工が行われた場合は、空気層が断熱層として機能するが、空気の出入りがあると無断熱状態となる。また、密着型同様、外装材によっては内部結露が発生するおそれがある。
(4)二重壁型(図10(d))
躯体に断熱層を張設し、その外側に空間を空けて肉厚のレンガ、コンクリートブロック、コンクリート板などの保護壁を配置した構造である。断熱層と保護壁との間の空間が通気層となる。保護壁として重量のある材料が用いられる場合は、重量を受けるための基礎の設置や、躯体の強度の増大を要する。
これらの工法の中で、外壁構造の内部結露を防止することができる構造として、特に(1)の通気層型の構造が優れると言われている。通気層型構造は、断熱層と外装材との間に通気層が設けられているため、室内からの水蒸気(湿気)が通気層を通って外部に排出されるとともに、外装材の日射熱による温度上昇の室内への影響を抑制することができる。本出願の出願人は、外断熱外壁構造として、通気層型及び断熱複合パネルを用いた密着型のそれぞれの利点を取り入れた、例えば特許文献1に記載される構造(密着通気層型)を提案している。
本出願の出願人は、密着通気層型構造において用いることができる笠木として、特許文献2に記載の笠木を提案している。この笠木においては、通気層から排出される空気が、笠木の傾斜片(特許文献2の図1において4Pと表示されている部分)の下部に溜まりやすい。溜まった空気は、火災時に温度が高くなると粘度が高まり、通気層からの空気の排出を阻害するおそれがある。その結果、通気層内の空気の温度が上昇し、断熱層の発火温度に達する可能性がある。
ところで、近年、英国における高層住宅棟の火災をきっかけとして、プラスチック系断熱材を用いる外断熱外壁構造の耐火性の検討が行われている。英国の高層住宅棟の火災は、断熱材と外装材との間に設けられた通気層に炎が侵入して断熱材が急速に延焼した可能性が高いといわれている。本出願の出願人も、自社で開発した空気層を有する複合パネル構造において、火災時における断熱材への延焼に関して実験を行っている。
実験の結果、火災時に断熱材に延焼する要因として、通気層における空気の流れの問題及び窓枠の構造の問題が挙げられることがわかった。
通気層の空気の流れに関して、本出願の出願人は、すでに特許文献1に開示される断熱パネルを開発している。このパネルは、内面に複数の区画通気層(条溝)を備えた成形セメント板と断熱層とを、区画通気層が断熱層に対向するとともに区画通気層の間の部分が断熱層と接する状態で層着させたものであり、成形セメント板と断熱材とを部分的に密着させることによって通気層を形成した、いわゆる密着通気層型の断熱パネルである。このパネルは、すでに火災時に断熱材への延焼が生じにくい構造を有している。すなわち、このパネルでは、このパネル以前のパネルの通気層と比較して小幅の区画通気層が複数条設けられているため、火災の初期燃焼時にはそれぞれの区画通気層の内部が酸素欠乏状態となり、断熱材に引火したとしても炎が拡散しにくい。また、区画通気層の間の部分が断熱層と接しているため空気と断熱層とが接する面積が少なく(すなわち、断熱層の露出面積が小さい)、火災時に炎が区画通気層に入り込んでも断熱層に触れる炎が少ない。さらに、区画通気層が狭いため区画通気層内の空気の流速が早く、空気による冷却効果により、火災時に断熱層自身の発火温度まで達しにくい。
一方、窓枠の構造に関して、従来は、窓枠周囲の断熱層を連続させて窓部における断熱性を維持するために、窓及び木製枠と複合パネル及びコンクリート壁との間に、外側から順に発泡ウレタンフォームとモルタルとを充填している(例えば、特許文献3)。この構造の窓枠は、断熱性の面では優れているが、屋外での火災時に外側の発泡ウレタンが燃焼した場合、その熱が断熱層に移り、断熱材が発火するおそれがある。
特許第4053561号公報 実用新案登録第3153492号公報 特許第3770494号公報
北海道外断熱建築協会編、「外断熱工法ハンドブック」、2003年、P.30~39
上記の課題に鑑み、本発明は、火災時において断熱材への延焼を防止する機能を有する密着通気層型の断熱複合パネルを備え、火災時における断熱材への延焼防止効果が従来の構造と比較してさらに高く、さらに従来の外断熱外壁構造と比較して外装仕上げの自由度が高い、密着通気層型の外断熱外壁構造を提供することを課題とする。
一態様において、本発明は、通気層を有する密着型外断熱に用いられる火災対応型の外壁構造を提供する。外壁構造は、コンクリート外壁と、コンクリート外壁に接する断熱複合パネルとを備える。断熱複合パネルは、断熱層と成形板とを有する。断熱層は、コンクリート外壁に接して配置される。成形板は、厚み方向途中までの深さを持つ複数の条溝を有し、該複数の条溝が設けられた側とは反対側の面が、断熱層に接する。成形板は、複数の条溝の厚み方向に配置された複数の薄肉部と、複数の条溝及び複数の薄肉部の間に配置された複数の厚肉部とを含むものとすることができる。成形板に接して外装下地材又は外装仕上材などの外装材を配置することが好ましい。外壁構造は、さらに、コンクリート外壁及び断熱層の上面に接し、成形板の複数の薄肉部と複数の条溝との境界部に位置するように配置される防水層を備える。外壁構造は、さらに、防水層の少なくとも一部の上面に接し、成形板の上面を覆うように配置される笠木を備える。
笠木は、防水層の少なくとも一部の上面に接する基部と、成形板の上方において成形板に接することなく基部から水平に延びる張出部と、張出部の縁部から下方に延びる立下り部とを有し、さらに、張出部と成形板との間に配置された、張出部を支持する複数の支持部材を有する。一実施形態においては、断熱層の防水層に近い部分が断熱層の他の部分より薄く形成されることによって、断熱層に切り欠き部が設けられ、この切り欠き部にはコンクリート材が充填されていることが好ましく、このように形成することによって、笠木の基部を、充填されたコンクリート材に固定することができる。
外壁構造はさらに窓部を備え、窓部は、窓枠と、窓枠の外側に設けられた見切枠と、窓枠の内側に設けられた木製枠とを有する。窓枠及び木製枠と、断熱層及びコンクリート外壁との間の空間は、窓枠側から順にモルタルと発泡ウレタンとを用いて充填されている。
一実施形態においては、断熱層の下面の成形板側には、下方に突出する突起が設けられていることが好ましい。この場合には、成形板の下端と突起の下端とは同じ高さに配置される。さらに、少なくとも窓枠の上方の断熱層の下面全体に、ファイヤーストップが設けられることが好ましい。
見切枠は、外部と複数の条溝とを連通する複数の空気孔を有することが好ましい。複数の空気孔は、複数の条溝の並び方向における複数の空気孔の単位長さ当たり面積が、並び方向における複数の条溝の単位長さあたりの断面積より小さくなるように設けられていることが好ましい。
本発明の外壁構造においては、断熱層が、コンクリート外壁と、成形板の薄肉部及び厚肉部とに完全に挟まれており、露出部がないため、火災時に通気層に炎が侵入した場合でも断熱層への延焼が発生しない。したがって、この外壁構造を用いることにより、耐火性能の高い外断熱建築物を実現することができる。また、本発明の外壁構造においては、外装材に接する区画通気層を有しており、湿度上昇の抑制及び内部結露の低減が可能であり、透湿抵抗の大きな外装材でも用いることができるため、外壁仕上げの多様性をもたらす。さらに、本発明の外壁構造においては、成形板の薄肉部まで防水層を施すことができるため、建物の漏水防止性能が向上する。
本発明の一実施形態による火災対応型外壁構造を示す断面斜視図である。 本発明の一実施形態による火災対応型外壁構造の一部を示す拡大縦断面図である。 本発明の一実施形態による火災対応型外壁構造に用いられる断熱複合パネルの斜視図である。 本発明の一実施形態による火災対応型外壁構造に用いられる断熱複合パネルを示し、(A)は断熱複合パネルに外装材が設けられた状態の横断面図、(B)は成形板の横断面図である。この実施形態では、隣接する成形板の間に目地が設けられている。 本発明の別の実施形態による火災対応型外壁構造に用いられる断熱複合パネルを示し、(A)は断熱複合パネルに外装材が設けられた状態の横断面図、(B)は成形板の横断面図である。この実施形態では、隣接する成形板の間に目地が設けられていない。 本発明による火災対応型外壁構造を用いることにより実現可能な仕上げの多様性を示す正面図であり、(A)は、左側から成形板、外装下地材及び仕上材の順で積層された構造、(B)は、成形板、外装下地材及び仕上材の順で積層され、仕上材に化粧用目地が配置された構造、(C)は、成形板に縦張りの外装仕上材が配置された構造、(D)は、成形板に横張りの外装仕上材が配置された構造である。 本発明の一実施形態による火災対応型外壁構造に用いられる笠木を示し、(A)は笠木の一部の斜視図、(B)は隣接する笠木本体の接続部に配置されるジョイント部材の斜視図、(C)は笠木の下の空間に配置される支持部材の斜視図である。 本発明の一実施形態による火災対応型外壁構造の窓部周辺を示す縦断面図である。 本発明の別の実施形態による火災対応型外壁構造における窓部周辺を示し、(A)は別の形態の縦断面図、(B)はさらに別の形態の縦断面図である。 従来の外断熱外壁構造の縦断面図であり、(A)は通気層型、(B)は密着型、(C)は密閉空気層型、(D)は二重壁型である。
(外壁構造の概要)
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による火災対応型外壁構造G(以下、構造Gという)を示す断面斜視図である。図2は、構造Gの一部を拡大して示す拡大縦断面図であり、窓部8は描かれていない。以下においては、外装材2の外面に沿って地面に平行な方向を幅方向、外装材2の外面に沿って幅方向と直交する方向を高さ方向、幅方向及び高さ方向と直交する方向を厚み方向という。
構造Gは、躯体3のコンクリート外壁30と、その外側に配置される断熱複合パネル1と、さらにその外側に配置される外装材2とを備える。断熱複合パネル1は、断熱層15と、断熱層15に対して厚み方向に接する成形板11とを有する。断熱複合パネル1は、コンクリート外壁30と断熱層15とが接するように配置される。
(断熱複合パネル及び外装材)
図3は、1つの断熱複合パネル1の斜視図である。また、図4(A)は、外装材2が設けられた断熱複合パネル1の一部の横断面図であり、図4(B)は成形板11の一部の横断面図である。断熱複合パネル1は、断熱層15の外側に成形板11が接する構造を有する。成形板11の外側には、外装材2(外装下地材21又は外装仕上材23)が接する。1つの断熱層15は、例えば厚さ75mm、幅500mm、高さ2700mmのサイズとすることができるが、これに限定されるものではない。断熱層として用いられる断熱材の材質は、限定されるものではないが、成形板11より透湿抵抗が大きなものであることが好ましく、典型的には、発泡プラスチック断熱材(JIS A9511)が用いられる。
成形板11は、高さ方向に延びる複数の条溝14を有する。複数の条溝14は、外装材2に対向する成形板11の面11cから厚み方向途中までの深さを有する。条溝14の間には厚肉部13が配置されており、条溝14の厚み方向に隣接して薄肉部12が配置される。すなわち、成形板11は、幅方向に、厚肉部13と、条溝14及び薄肉部12とが交互に並んだ構造を有する。成形板11は、複数の条溝14が設けられた面11cとは反対側の面11aが、断熱層15に接するように配置される。1つの成形板11は、例えば厚肉部13の厚さ26mm、幅490mm、高さ2700mmのサイズを有し、例えば深さ13mm、開口幅30mmの複数の条溝14を有する押出成形セメント板とすることができるが、サイズ及び材質は、これらに限定されるものではない。
複数の条溝14の横断面形状は、限定されるものではないが、図4に示されるように、両端の条溝14Gと中央の肉厚部13の両側の条溝14Gとが、底辺GBと、傾斜側辺GSと、開口GFとを備えた略台形状であることが好ましい。傾斜側辺GSは、左右とも、底辺GBに対して等角度(典型的には60度)で内向するように構成されることが好ましい。複数の条溝14の一部をこうした形状の条溝14Gとすることによって、本出願の出願人の開発による十字ジョイント(特許文献1に開示されている)を条溝14Gに嵌入させて、通気機能を保証する形態で、高さ方向に隣接する2つの複合断熱パネル1を接続することができる。
また、複合断熱パネル1の成形板11と断熱層15とは、限定されるものではないが、図3に示されるように、成形板11の上辺及び一方の側辺が断熱層15の対応する辺に対して内側に入り込み、成形板11の他方の側辺が断熱層15の対応する辺に対して外側に突出し、成形板11の下辺が断熱層15の下辺と一致するように積層されていることが好ましい。建物を覆う外断熱外壁構造Gは、図4(A)に示される断熱複合パネル1を、高さ方向及び幅方向に必要な個数だけ並べることによって、形成することができるが、複合断熱パネル1の成形板11と断熱層15との位置関係を上述のように構成することによって、隣接する断熱複合パネル1の接合が容易になる。
本実施形態においては、図4(A)に示されるように、幅方向に隣接する成形板11の間に縦目地441が設けられ、図1及び図2に示されるように、高さ方向に隣接する成形板11及び外装材2の間に横目地41が設けられる。縦目地411は、成形板11の一方の辺が断熱層15の対応する辺から入り込む距離と、成形板11の他方の辺が断熱層15の対応する辺から突出する距離とを異ならせることによって、設けることができる。横目地41には、図2に示されるように、高さ方向に隣接する成形板11の各々の条溝14を連通させる通気バッカー45が配置されることが好ましい。成形板11の下から上まで連通する条溝14は、図2に示されるように、空気流70が通る区画通気層7となる。横目地41には、シーリング材43が充填される。
図5は、別の実施形態による断熱複合パネル1’を示す。図5(A)は、外装材2が設けられた断熱複合パネル1’の一部の横断面図であり、図5(B)は成形板11’の一部の横断面図である。断熱複合パネル1’は、図4に示される断熱複合パネル1と比べて、成形板11’及び断熱層15’の幅が小さく形成されている。成形板11’の幅は、両端の肉厚部13’の幅を短くすることによって、全体の長さが縮小されている。断熱複合パネル1’における成形板11’と断熱層15’との位置関係は、断熱複合パネル1と同様とすることができる。なお、図5では、成形板11’の一方の辺が断熱層15’の対応する辺から入り込む距離と、成形板11’の他方の辺が断熱層15’の対応する辺から突出する距離とを同じにすることによって、縦目地がない構造となっている。外装材2として、日射による伸縮やソリ等が生じない材質のものを用いる場合には、図5のような縦目地のない構造を採用することもできる。
構造Gにおいては、成形板11の面11cに接して配置された外装材2などによって塞がれた複数の条溝14が、区画通気層7として機能する。すなわち、区画通気層7は、外装材2などに接して配置されることになる。したがって、構造Gにおいては、断熱層15が、コンクリート外壁30と、成形板11の薄肉部12及び厚肉部13とに完全に挟まれており、区画通気層7に対して露出する部分がないため、火災時に区画通気層7に炎が侵入した場合でも断熱層15への延焼を防止することができる。また、構造Gにおいては、区画通気層7が外装材2などに接して配置されているため、温度上昇の抑制及び内部結露の低減が可能であり、透湿抵抗の大きな外装材でも用いることができる。
図6は、断熱複合パネル1の外側に配置される種々の仕上げを示す。成形板11の面11cには、外装材2が配置される。外装材2は、外装下地材21及び仕上材22、又は外装仕上材23とすることができる。図6(A)は、左側から、成形板11、外装下地材21、仕上材22がこの順で積層されることを示しており、成形板11の外面11cに接して外装材下地21を配置し、外装下地材21に接して仕上材22を配置する形態である。外装下地材21として、限定されるものではないが、典型的には、繊維強化セメント板やフライアッシュフェノール樹脂板などを用いることができる。隣接する外装下地材21の当接部分を樹脂モルタル等で処理し、外装下地材21の上に、例えばタイル、モルタル、石材、塗装等の仕上材22を施すことによって、大壁面を形成することができる。外装下地材21は、コンクリート外壁30に断熱複合パネル1を取り付けた後に、成形板11に張設することが好ましい。図6(B)は、図6(A)と同様の構成であるが、仕上材22に、適当な間隔で目地を設けてデザイン性を向上させた形態である。
図6(C)及び図6(D)は、成形板11の外面11cに、例えば窯業系のサイディング材や金属パネル等の外装仕上材23を張設した形態を示す。図6(C)は、外装仕上材23を縦方向に配置した場合であり、図6(D)は、外装仕上材23を横方向に配置した場合である。また、図示しないが、成形板11の外面11c及び条溝14の内面に、直接、塗料等の仕上材22を塗布してもよい。
躯体3の基礎31に対応する部分においては、図2に示されるように、構造Gは、他の断熱層15と同じ厚みの下部断熱層311と、下部断熱層311に接して配置された外装仕上材23とを有するものとすることができる。下部断熱層311を断熱層15と同じ厚みにすることによって、躯体を均一に被覆することができるとともに、腰水切などの器具を用いることなく空気流70を区画通気層7に流入させることができる。外装仕上材23の厚みは、限定されるものではないが、成形板11の薄肉部12の厚みと概ね同程度であることが好ましい。両者の厚みを同程度とすることによって、区画通気層7の断面積が、区画通気層7の上端と下端とで均一になり、火災時の通気層からの排気がスムーズになる。すなわち、通気層の換気量は、通気層の最も狭い部分の断面積、通気層の高さ、空気の流動係数、重力加速度、外気温度、室温で決まり、他の条件が同じであれば通気層の最も狭い部分の断面積で決まることから、区画通気層7の上端から下端まで均一の断面積を確保することによって、火災時における区画通気層7の排気は滞ることがない。
(防水層)
構造Gは、図2に示されるように、コンクリート外壁30の上面、断熱層15の上面及び成形板11の一部の上面に接するように配置される防水層40をさらに備える。本発明にかかる構造Gにおいては、上述のように、成形板11は、条溝14がある面11cとは反対側の面11aが断熱層15に接するため、防水層40の先端を、成形板11の薄肉部12と条溝14との境界11b又はその近くに位置するように、配置することができる。このように防水層40を配置することによって、成形板11と断熱層15との接合面が防水層40で覆われるため、その接合面に雨水などが浸入することを防止する効果がある。
(笠木)
構造Gは、防水層40の少なくとも一部に接し、断熱複合パネル1の上面の上方を覆うように配置される笠木5を備える。笠木5は、図1に示されるように、幅方向に連続して配置される複数の笠木本体50によって構成される。図7は、笠木5の斜視図であり、図7(A)は笠木5の一部の斜視図、図5(B)は隣接する笠木本体50の接続部に配置されるジョイント部材55の斜視図、図7(C)は笠木5の下の空間に配置される支持部材6の斜視図を示す。
各々の笠木本体50は、図2、図7に示されるように、防水層40の少なくとも一部の上面に接して配置される基部5aと、基部5aに連続し、断熱複合パネル1の成形板11及び外装材2の上方において、これらに接することなく水平に延びる張出部5bと、張出部5bの縁部から下方に延びる立下り部5cとを有する。基部5a及び張出部5bを合わせて、水平板51ともいう。立下り部5cの下端縁には、外方に向かって斜めに形成された斜辺5dが設けられることが好ましい。笠木本体50の各々は、例えば、幅方向の長さ2000mm、厚み方向の長さ140mm、立下り部5cの高さ55mmとすることができる。笠木本体50の各々は、例えば鋼、アルミニウム、ステンレスなどを用いて作製することができ、耐火性の観点から考えれば鋼製が好ましく、耐腐食性も考慮すればアルミニウム製又はステンレス製であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
笠木本体50は、さらに、笠木本体50を固定する固定具56が配置される部分に突起部54を有することが好ましい。突起部54を設けて、この下の空間にシーリング材(図示せず)を充填することによって、固定具56を挿入した部分からの雨水の浸入を防止することができる。図2に示されるように、笠木5の直下の断熱層15は、上端の一部に切欠16が設けられ、切欠16にコンクリート外壁30と同じコンクリート材30aが充填されており、固定具56が、このコンクリート材30aの部分に固定されることが好ましい。
隣接する笠木本体50の間には、図7(B)に示されるジョイント部材55が、2つの笠木本体50の端部間にわたって配置されることが好ましい。隣接する笠木本体50の接続部分の下方にジョイント部材55を配置することによって、隣接する笠木本体50の接続部からの雨水の浸入を防止し、仮に浸入した場合でもジョイント部材55で受けて屋上床部に排出することができる。ジョイント部材55は、笠木本体50と同形状であることが好ましく、例えば、幅方向の長さ50mmとすることができる。
笠木5の張出部5bの下には、成形板11の上端との間に空間を設けるとともに張出部5を支持することができる支持部材6が配置される。支持部材6は、2つの笠木本体50が隣接する接続部分と、笠木本体50の幅方向中央部分とに配置されることが好ましいが、これらの場所に限定されるものではない。支持部材6は、図7(C)に示されるように、水平片61と、水平片61の両側から下方に延びる2つの立下り片62とを有し、水平片61の上面が張出部5b又はジョイント部材55の下面に接する。一方の立下り辺62は、成形板11の複数の薄肉部12と複数の条溝14との境界11b又はその近くに位置する防水層40の先端部に接するように配置される(図2を参照)。他方の立下り辺62の外面は、成形板11の外面(すなわち、成形板11の面11c)と概ね同じ面上に位置する(図2を参照)。支持部材6は、例えば、水平片61の幅方向の長さ70mm、厚み方向の長さ14mm、立下り片の高さ10mmとすることができる。支持部材6は、例えば鋼、アルミニウム、ステンレスなどを用いて作製することができ、耐火性の観点から考えれば鋼製が好ましく、耐腐食性も考慮すればアルミニウム製又はステンレス製であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
支持部材6は、固定具挿入孔64に挿入された例えばねじなどの固定具(図示せず)によって、成形板11の厚肉部13に固定される。支持部材60は、固定具で固定するのではなく、成形板11の厚肉部13に挿入される固定具57を用いて、笠木本体50とともに固定してもよい。支持部材60は、水平片61の上面をジョイント板55又は笠木本体50の下面に、例えば両面テープなどを用いて接着することによって仮固定してもよい。また、支持部材6を上下逆にして用い、水平片61の下面を成形板11の厚肉部13の上面に、例えば両面テープなどを用いて接着してもよい。
(通気量について)
上述のように、笠木5は、断熱複合パネル1の上方において、成形板11の複数の条溝14との間に空間を保持した状態で取り付けられている。また、防水層40の先端は、成形板11の複数の薄肉部12と複数の条溝14との境界11b又はその近くに位置する。そのため、複数の条溝14からなる区画通気層7の内部を上昇する空気70は、区画通気層7の上端から排出された後、笠木5と成形板11との間の空間を滞りなく通り、笠木5の立下り部5cと外装材2の外面との間を下降し、屋外に排出される。したがって、本発明に係る外壁構造においては、区画通気層7から排出された空気は、笠木5の下部に溜まることなく屋外に排出されるため、特許文献2に開示された笠木を用いた場合とは異なり、通気層からの空気の排出が溜まった空気によって阻害されるということがない。
また、本発明に係る構造においては、成形板11の上端と笠木5との間の空気70の流れが、区画通気層7の空気70の流れを阻害しないように構成されている。すなわち、本発明において、笠木5と成形板11との間の空間の広さは、複数の条溝14の並び方向(すなわち、幅方向)における当該空間の単位長さ当たりの縦断面積が、複数の条溝14の並び方向における複数の条溝14の単位長さあたりの横断面積より大きくなるように設定されている。一実施形態においては、笠木5と成形板11との間の空間の単位長さ当たりの縦断面積を約100cm/mとすることができ、区画通気層7の単位長さあたりの横断面積を約70cm/mとすることができる。したがって、区画通気層7の下端から入り内部を上昇する空気70は、滞ることなくスムーズに流れ、そのため流速が速く、区画通気層7の内部の空気に直接接している断熱層15は、区画通気層7内の空気に冷却されて発火温度にまで至らない。
(窓部)
次に、構造Gが備える窓部8について説明する。図8は、構造Gの窓部8及びその周辺部を示す縦断面図である。図8においては、中間部分(窓の開口部分)の一部が省略して示されている。窓部8は、窓枠80と、窓枠80の外側に設けられた見切枠81a、81bと、窓枠80の内側に設けられた木製枠82とを有するものとすることができる。窓枠80及び見切枠81a、81bは、耐火性の高いものであることが好ましく、典型的にはアルミニウムで作製される。窓枠80及び木製枠82と、断熱層15及びコンクリート外壁30との間の空間には、見切枠81の側から順に、モルタル801と発泡ウレタン802とが充填されている。この構造は、特許文献3の構造とは逆に、燃焼しづらいモルタル801が外側に配置され、燃焼しやすい発泡ウレタン802が内側に配置されているため、屋外での火災時に断熱層15に延焼する可能性を低減させることができる。
なお、窓枠80は、支持棒鋼803を介してコンクリート外壁30と連結されているが、見切枠81の側にモルタル801が充填されているため、支持棒鋼803がモルタル801に埋設されており、したがって、支持棒鋼803の腐食を防止し、窓の耐久性を向上させることができる。
窓部8を形成する際には、モルタル801の充填を確実に行うために、捨枠821(図9参照)を用いることが好ましい。通常、モルタル801及び発泡ウレタン802の充填は、窓枠80に木製枠82を取付けた後に行われる。しかし、特許文献3のように見切枠81の側から発泡ウレタン及びモルタルの順に充填される場合とは異なり、奥行きが長い木製枠82を取付けた後にモルタル801を充填する場合、モルタル801の充填が不十分でムラが発生する可能性がある。そこで、窓枠80に奥行きの短い捨枠821を取付け(図9参照)、モルタル801を充填し、モルタル801が固化した後に捨枠821を取り外して、木製枠82を取付けることが好ましい。
別の実施形態においては、図9(A)に示されるように、断熱層15の下面の成形板11側に、下方に突出する突起152が設けられるとともに、成形板11の下端が突起152の下端と同じ高さに位置するように形成されることが好ましい。このように構成されることによって、シーリング材431の充填量を均一にして、断熱層15と見切枠81aとの接着不良を阻止し、防水性を高めることができる。
さらに別の実施形態においては、図9(B)に示されるように、少なくとも窓枠80の上方の断熱層15の下面全体に接するように、L字型ファイヤーストップ153が設けられることが好ましい。L字型ファイヤーストップ153は、融点温度が高い材料で作製されることが好ましく、例えば鋼製であることが好ましいが、これに限定されるものではない。L字型ファイヤーストップ153が設けられることによって、火災時に、見切枠81aに設けられた空気孔811a1から火炎が入った場合でも、断熱層15の延焼又は溶融の可能性を低減させることができる。L字型ファイヤーストップ153とシーリング材431との間には、バッカー442を配置することが好ましい。成形板
窓部8の見切枠81は、図8に示されるように、複数の空気孔811を有する。具体的には、上部の見切枠81aは、複数の条溝14と連通する複数の空気孔811a1を上部に有し、外部と連通する複数の空気孔811a2を下部に有する。外部の空気は、複数の空気孔811a2から複数の空気孔811a1を通って複数の条溝14に入り、空気流70として上昇する。複数の空気孔811a1の総面積は、複数の空気孔811a2の総面積と同じであるか、又はそれより小さいことが好ましい。このように構成することによって、空気孔811a1を通って区画通気層7の内部に流れ込む空気量が、空気孔811a2によって阻害されないようにすることができる。
下部の見切枠81bは、複数の条溝14と連通する複数の空気孔811b1と、外部と連通する複数の空気孔811b2とを、いずれも下部に有する。複数の条溝14の内部を上昇してきた空気流70は、複数の空気孔811b1から複数の空気孔811b2を通って外部に排出される。複数の空気孔811b1の総面積は、複数の空気孔811b2の総面積と同じであるか、又はそれより小さいことが好ましい。このように構成することによって、空気孔811b1を通って区画通気層7から排出される空気量が、空気孔811b2によって阻害されないようにすることができる。
複数の空気孔811a1は、複数の条溝14の並び方向(すなわち、幅方向)における複数の空気孔811a1の単位長さ当たり面積が、当該並び方向における複数の条溝14の単位長さあたりの横断面積より小さくなるように設けられていることが好ましい。このように構成されることによって、火災時に空気孔811a1から入る空気量が、複数の条溝14の内部における燃焼に必要な空気量より少ないため、断熱層15の燃焼を発生しにくくすることができる。
1 断熱複合パネル
11 成形板
12 薄肉部
13 厚肉部
14、14G 条溝
15 断熱層
152 断熱層の突起
153 ファイヤーストップ
16 切り欠き部
2、24 外装材
21 外装下地材
22 仕上材
23 外装仕上材
3 躯体
30 コンクリート外壁
30a コンクリート材
31 基礎
311 下部断熱層
40 防水層
5 笠木
5a 基部
5b 張出部
5c 立下り部
5d 斜片
50 笠木本体
51 水平板
54 突起部
55 ジョイント部材
56 固定具
6 支持部材
61 水平片
62 立下り片
64 固定具挿入孔
7 区画通気層
70 上昇空気流
8 窓部
80 窓枠
801 モルタル
802 発泡ウレタン
803 支持棒鋼
81a、81b 見切枠
811a、811b 空気孔
82 木製枠
821 捨材

Claims (8)

  1. 通気層を有する密着型外断熱に用いられる外壁構造であって、
    コンクリート外壁と、前記コンクリート外壁に接する断熱層と、前記断熱層に接する成形板と、前記成形板に接する外装材と、前記コンクリート外壁、前記断熱層及び前記成形板の上面に接する防水層と、窓部とを備え、
    前記成形板は、厚み方向途中までの深さを持つ複数の条溝を有し、該複数の条溝が設けられた側とは反対側の面が、前記断熱層に接しており、
    前記窓部は、窓枠と、該窓枠の内側に設けられた木製枠とを有し、
    前記窓枠及び前記木製枠と、前記断熱層及び前記コンクリート外壁との間の空間は、前記成形板の側から順にモルタルと発泡ウレタンとを用いて充填されている、
    外壁構造。
  2. 前記成形板は、前記複数の条溝の厚み方向に配置された複数の薄肉部と、前記複数の条溝及び前記複数の薄肉部の間に配置された複数の厚肉部とを含む、請求項1に記載の外壁構造。
  3. 前記防水層は、その先端が前記成形板の前記複数の薄肉部と前記複数の条溝との境界又はその近くに位置するように配置される、請求項2に記載の外壁構造。
  4. 前記防水層の少なくとも一部の上面に接し、前記成形板の上面を覆う笠木をさらに備えており、
    前記笠木が、
    前記防水層の前記少なくとも一部の上面に接する基部と、
    前記成形板の上方において、前記成形板に接することなく前記基部から延びる張出部と、
    前記張出部の縁部から下方に延びる立下り部と、
    前記張出部と前記成形板との間に配置された、張出部を支持する複数の支持部材と
    を有する、
    請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の外壁構造。
  5. 前記断熱層の前記防水層に近い部分が前記断熱層の他の部分より薄く形成されることによって、前記断熱層に切り欠き部が設けられており、
    前記切り欠き部にはコンクリート材が充填され、
    前記笠木は、前記基部が、充填された前記コンクリート材に固定されている
    請求項4に記載の外壁構造。
  6. 前記断熱層の下面の前記成形板側に、下方に突出する突起が設けられており、前記成形板の下端と前記突起の下端とは同じ高さに位置する、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の外壁構造。
  7. 少なくとも前記窓枠の上方の前記断熱層の下面全体に接するようにファイヤーストップが設けられた、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の外壁構造。
  8. 前記窓部は、外部と前記複数の条溝とを連通する複数の空気孔を有する見切枠を前記窓枠の外側に備え
    前記複数の空気孔は、前記複数の条溝の並び方向における前記複数の空気孔の単位長さ当たり面積が、前記並び方向における前記複数の条溝の単位長さあたりの断面積より小さくなるように設けられている、
    請求項から請求項までのいずれか1項に記載の外壁構造。
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