JP7126403B2 - 遺伝子改変クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物 - Google Patents
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Description
〔1〕 ブチリルCoAから酪酸が生成する経路に関与する酪酸生成酵素遺伝子とアセチルCoAから酢酸が生成する経路に関与する酢酸生成酵素遺伝子の機能をそれぞれ欠損したクロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物であって、
前記酪酸生成酵素遺伝子がptb1であり、該ptb1遺伝子が、コードするホスホトランスブチリラーゼにおいて148位、155位及び251位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含み、
前記酢酸生成酵素遺伝子がptaであり、破壊を伴う挿入及び/又は欠失を含まない
クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物。
〔2〕 ホスホトランスブチリラーゼのアミノ酸変化が、P148S、P148L、G155E、G155R、G155K及びV251Iからなる群より選ばれる、2種以上のアミノ酸における変化である、前記〔1〕記載の微生物。
〔3〕 ホスホトランスブチリラーゼのアミノ酸変化が、P148S又はP148Lと、G155E、G155R又はG155Kとの組合せを少なくとも含む、前記〔1〕又は〔2〕記載の微生物。
〔4〕 pta遺伝子が、コードするホスホトランスアセチラーゼにR311K及び/又はG312Kのアミノ酸変化を生じる遺伝子改変を含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の微生物。
〔5〕 さらに、アセトアセチルCoAからアセトンが生成する経路に関与するCoAトランスフェラーゼ遺伝子の機能を欠損し、該遺伝子が、コードするCoAトランスフェラーゼにアミノ酸変化を生じさせる遺伝子改変を含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の微生物。
〔6〕 CoAトランスフェラーゼ遺伝子がctfBであり、該ctfB遺伝子が、コードするCoAトランスフェラーゼのBサブユニットに、P25S、P25L、P85S、P85L、P121S、P121L、P170S及びP170Lからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸変化を生じさせる遺伝子改変を含む、前記〔5〕記載の微生物。
〔7〕 ブチリルCoAから酪酸が生成する経路に関与する酪酸生成酵素遺伝子、アセチルCoAから酢酸が生成する経路に関与する酢酸生成酵素遺伝子及びアセトアセチルCoAからアセトンが生成する経路に関与するCoAトランスフェラーゼ遺伝子のそれぞれの機能を欠損したクロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物であって、
前記酪酸生成酵素遺伝子がptb1であり、該ptb1遺伝子が、コードするホスホトランスブチリラーゼにおいて148位、155位及び251位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含み、
前記酢酸生成酵素遺伝子がptaであり、該pta遺伝子が、コードするホスホトランスアセチラーゼに311位及び/又は312位のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含み、かつ
前記CoAトランスフェラーゼ遺伝子がctfBであり、該ctfB遺伝子が、コードするCoAトランスフェラーゼのBサブユニットにおいて25位、85位、121位及び170位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含むことを特徴とする、クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物。
〔8〕 P148S又はP148Lと、G155E、G155R又はG155Kのアミノ酸変化を含むホスホトランスブチリラーゼをコードするptb1遺伝子と、R311K及び/又はG312Kのアミノ酸変化を含むホスホトランスアセチラーゼをコードするpta遺伝子と、P25S、P25L、P85S、P85L、P121S、P121L、P170S及びP170LSからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸変化を含むCoAトランスフェラーゼ遺伝子をコードするctfB遺伝子を含む、前記〔7〕に記載の微生物。
〔9〕 前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の微生物を、炭素源を含む培地中で培養する工程を含む、ブタノールの製造方法。
〔10〕 さらに、前記培養液からブタノールを回収する工程を含む、前記〔9〕記載の方法。
〔11〕 ブチリルCoAから酪酸が生成する経路に関与する酪酸生成酵素遺伝子の機能を欠損したクロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物であって、前記酪酸生成酵素遺伝子がptb1であり、該ptb1遺伝子が、コードするホスホトランスブチリラーゼにおいて148位、155位及び251位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含むことを特徴とする、クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物。
〔12〕 ブチリルCoAから酪酸が生成する経路に関与する酪酸生成酵素遺伝子の機能を欠損したクロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物であって、
前記酪酸生成酵素遺伝子がptb1であり、該ptb1遺伝子が、コードするホスホトランスブチリラーゼにおいて148位、155位及び251位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含み、
前記微生物のその他の遺伝子が破壊を伴う挿入及び/又は欠失を含まない
クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物。
〔13〕 ブチリルCoAから酪酸が生成する経路に関与する酪酸生成酵素遺伝子とアセチルCoAから酢酸が生成する経路に関与する酢酸生成酵素遺伝子の機能をそれぞれ欠損したクロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物であって、
前記酪酸生成酵素遺伝子がptb1であり、該ptb1遺伝子が、コードするホスホトランスブチリラーゼにおいて148位、155位及び251位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含み、
前記酢酸生成酵素遺伝子がptaであり、
前記ptb1遺伝子以外の遺伝子が破壊を伴う挿入及び/又は欠失を含まない
クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物。
〔14〕 アセトアセチルCoAからアセトンが生成する経路に関与するCoAトランスフェラーゼ遺伝子の機能を欠損したクロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物であって、
前記CoAトランスフェラーゼ遺伝子がctfBであり、該ctfB遺伝子が、コードするCoAトランスフェラーゼのBサブユニットにおいて25位、85位、121位及び170位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含む微生物。
前記酪酸生成酵素遺伝子がptb1であり、該ptb1遺伝子が、コードするホスホトランスブチリラーゼにおいて148位、155位及び251位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含み、
前記酢酸生成酵素遺伝子がptaであり、破壊を伴う挿入及び/又は欠失を含まない
クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物を挙げることができる。
ブチリルCoAから酪酸が生成する経路に関与する酪酸生成酵素遺伝子、アセチルCoAから酢酸が生成する経路に関与する酢酸生成酵素遺伝子及びアセトアセチルCoAからアセトンが生成する経路に関与するCoAトランスフェラーゼ遺伝子のそれぞれの機能を欠損したクロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物であって、
前記酪酸生成酵素遺伝子がptb1であり、該ptb1遺伝子が、コードするホスホトランスブチリラーゼにおいて148位、155位及び251位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含み、
前記酢酸生成酵素遺伝子がptaであり、該pta遺伝子が、コードするホスホトランスアセチラーゼに311位及び/又は312位のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含み、かつ
前記CoAトランスフェラーゼ遺伝子がctfBであり、該ctfB遺伝子が、コードするCoAトランスフェラーゼのBサブユニットにおいて25位、85位、121位及び170位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含むことを特徴とする、クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物
を挙げることができる。前記形質転換体としては、P148S又はP148Lと、G155E、G155R又はG155Kのアミノ酸変化を含むホスホトランスブチリラーゼをコードするptb1遺伝子と、R311K及び/又はG312Kのアミノ酸変化を含むホスホトランスアセチラーゼをコードするpta遺伝子と、P25S、P25L、P85S、P85L、P121S、P121L、P170S及びP170Lからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸変化を含むCoAトランスフェラーゼ遺伝子をコードするctfB遺伝子を含むものが好ましい。
アセトアセチルCoAからアセトンが生成する経路に関与するCoAトランスフェラーゼ遺伝子の機能を欠損したクロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物であって、
前記CoAトランスフェラーゼ遺伝子がctfBであり、該ctfB遺伝子が、コードするCoAトランスフェラーゼのBサブユニットにおいて25位、85位、121位及び170位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含む微生物
を挙げることができる。該形質転換体は、副生物のアセトン生成を抑制することができ、本発明の一態様として提供することができる。なお、ここでの遺伝子改変は前述と同じである。
Perutka et al., J. Mol. Biol. 13;336(2):421-39(2004)を参照にして、標的とする遺伝子の塩基配列を入力することにより、その遺伝子へのグループIIイントロンの挿入箇所とターゲッティング配列の改変方法が出力されるようなエクセルマクロのプログラミングを行った。次に、実際に遺伝子破壊を実施するptb1遺伝子、pta遺伝子の塩基配列をそれぞれ、これに入力し、ターゲッティング配列の改変箇所を出力させた。
(1)改変ベクタープラスミドの構築-pKNT19への改変CRISPRの挿入
大腸菌とクロストリジウム属微生物で複製可能なプラスミドpKNT19の制限酵素BamHIとKpnIで切断される間に下記の遺伝子配列を挿入して改変ベクタープラスミドを構築した。具体的には、双方向プロモーター領域を含むStreptococcus pyogens Cas9遺伝子に、D10A及びH840Aのアミノ酸変異を挿入し(dCas9)、リンカー配列を介してPmCDA1との融合タンパク質として発現するコンストラクトを構築し、さらにC.サッカロパーブチルアセトニカムのpta遺伝子、ptb1遺伝子又はctfB遺伝子内の各標的ヌクレオチド配列に相補的な配列をコードしたキメラgRNAを同時に載せた各プラスミド(全長ヌクレオチド配列:配列番号73、配列中のヌクレオチド番号5560~5579の部分に各ターゲッティング配列が挿入される)を作製した(図2)。
実施例1-(1)で作成した改変ベクタープラスミドのうち、11757をC.サッカロパーブチルアセトニカムATCC27021株に挿入した。なお、菌を扱う操作はすべて嫌気条件下で行った。
プラスミドの挿入は、参考例1と同様にして行った。TYA培地による30℃で2時間程度の回復培養後、回復培養液を、エリスロマイシン10ppmを含有するMASS固体培地に塗布し、30℃で数日間培養を行って出現したコロニーからの選抜を行い、プラスミドが挿入されエリスロマイシン耐性となった株を取得した。次に、得られた株にプラスミドが保持されていることを確認することとした。各4コロニーずつ、エリスロマイシン10ppmを含有するTYA培地に植菌し、生育した形質転換体コロニー由来の培養液を鋳型に、プラスミド特有の領域を下記組成、条件におけるPCRで増幅し、電気泳動による増幅物の解析からプラスミド保持の有無を確認した。
<PCR組成(1サンプル分)>
2×KODFX buffer 25μL
2mM dNTPS 10μL
20μM F primer 0.75μL (NS-150410-i01)
20μM R primer 0.75μL (NS-150410-i02)
D.W. 11.5μL
KODFX 1μL
NS-150410-i01の配列:5’-CCGATAGCTAAGCCTATTGAG-3’(配列番号53)
NS-150410-i02の配列:5’-TCATCCTGTGGAGCTTAGTAG-3’(配列番号54)
<PCR条件>
94℃ 2min
98℃ 10sec → 50℃ 30sec → 68℃ 2min × 30cycles
10℃ hold
全てのサンプルにおいて、プラスミド特有の領域の増幅物が得られた。従ってブタノール発酵菌内で改変ベクタープラスミドが保持されていることが明らかとなった。
改変ベクタープラスミドを用い、ブタノール発酵菌のpta遺伝子のDNA配列変換を行った。改変ベクタープラスミドは改変ツールに制御機構を有しないため、単純に世代を重ねるのみで機能する。
上記(2)で作成した11757保持株である11757/ATCC27021株を、エリスロマイシン10ppmを含有するTYA培地に植菌し培養した後、エリスロマイシン10ppmを含有するTYA固体培地に希釈塗布し、シングルコロニーとした。このシングルコロニーを8コロニー取り、これを鋳型にゲノム上のpta遺伝子全長の増幅を行った。PCRは、下記に示すPCR組成49μLずつを分注後、鋳型としてシングルコロニーの懸濁液を1μL加え、下記条件にて行った。
<PCR組成(1サンプル分)>
2×KODFX buffer 25μL
2mM dNTPS 10μL
20μM F primer 0.75μL (NS-150414-i02)
20μM R primer 0.75μL (NS-150304-i04)
D.W. 11.5μL
KODFX 1μL
NS-150414-i02の配列:5’-GCCCTTTATGAAAGGGATTATATTCAG-3’(配列番号55)
NS-150304-i04の配列:5’-GCTTGTACAGCAGTTAATGCAAC-3’(配列番号56)
<PCR条件>
94℃ 2min
98℃ 10sec → 50℃ 30sec → 68℃ 2min × 30cycles
10℃ hold
<シーケンス反応組成(1サンプル分)>
Terminator Ready Reaction Mix 1μL
5×Sequencing buffer 3.5μL
3.2pmol primer 1μL
Template DNA(PCR産物) 0.35μL
D.W. 14.15μL
Template DNAとprimerは下記の組み合わせとした。
11757保持株
F側NS-150525-i01 / R側NS-150304-i04
NS-150525-i01の配列:5’-GGTGTTACAGGAAATGTTGCAG-3’(配列番号57)
<PCR条件>
96℃ 1min
96℃ 10sec → 50℃ 5sec → 60℃ 4min × 25cycles
10℃ hold
11757/ATCC27021由来コロニーの配列解析結果のうち、pta遺伝子のDNA配列の916~935番目の結果を表8に示した。
上記(3)で得られた11757/ATCC27021#1株からプラスミドを除去した。
11757/ATCC27021#1株を、抗生物質を含まないTYA培地で培養した後、TYA固形培地に希釈塗布し、生育したシングルコロニーを鋳型に上記(2)に示した方法でプラスミド保持の有無を確認し、プラスミド特有の領域の増幅物が無いコロニーを選抜した。PCRは、上記(2)に示すPCR組成49μLずつを分注後、シングルコロニーの懸濁液を1μL加え、上記(2)と同じ条件にて行った。
得られたPCR産物を電気泳動し、プラスミド特有の領域の増幅物が無いコロニーを11757脱落株ATCC27021Δpta#1株(pta改変ブタノール発酵菌;R311K株)とした。
上記で得られたATCC27021Δpta#1株を培養しその性能の評価を行った。培養は、TYA培地に植菌し、試験管内で30℃で96時間程度行った。培養は開放条件で実施した。
上記(1)で作製した改変ベクタープラスミドのうち、ptb1遺伝子への変異挿入を行うプラスミド11753、11754、442、460、655、745を、上記(4)において得られたC.サッカロパーブチルアセトニカムATCC27021Δpta#1株に挿入した。11753は上記(2)で使用したプラスミド11757と同様に、標的遺伝子ptb1の活性中心R280をKに変異させたり、A281TやV275Tの改変を行う改変ベクターであり、11754はアミノ酸を指定するコドンを終止コドンに変異させる改変ベクターである。また442はP148L、P148Sの改変を、460はG155R、G155E、G155K、V154Iの改変を、655はA219Tの改変を、745はV251I、A249Tの改変を行うベクターである。
ptb1改変ベクタープラスミドのブタノール発酵菌への挿入とプラスミド保持の確認は、上記(2)に示した方法で行った。宿主はC.サッカロパーブチルアセトニカムATCC27021Δpta#1株とした。
得られた株を鋳型にしたプラスミド保持確認PCRの結果、いずれの宿主においてもプラスミド特有の領域の増幅物が得られ、形質転換体と確認された。
改変ベクタープラスミドを用い、pta改変ブタノール発酵菌のptb1遺伝子のDNA配列変換を行った。
上記(6)で作成した11753保持株である11753/ATCC27021Δpta#1株、11754保持株である11754/ATCC27021Δpta#1株、442保持株である442/ATCC27021Δpta#1、460保持株である460/ATCC27021Δpta#1、655保持株である655/ATCC27021Δpta#1、745保持株である745/ATCC27021Δpta#1をそれぞれ、エリスロマイシン10ppmを含有するTYA培地に植菌し培養した後、エリスロマイシン10ppmを含有するTYA固体培地に希釈塗布し、シングルコロニーとした。このシングルコロニーを取り、これを鋳型にゲノム上のptb1遺伝子全長の増幅を行った。PCR組成、条件は上記(3)に従い、プライマーのみptb1用のNS-150819-i01及びNS-150819-i02を用いた。
NS-150819-i01:5’-GCAAGAAATGAGCAAAAACTTTGACG-3’(配列番号67)
NS-150819-i02:5’-GCTGCAACTAATGCTGCTAAAGC-3’ (配列番号68)
NS-150324-i01:5’- CTCTGACTGTGCAGTTAACC-3’(配列番号69)
11753保持11753/ATCC27021Δpta#1株由来コロニーの配列解析の結果、841G>Aの変異のある株を得られた。841G>Aの変異によりPTB1タンパク質としては281番目のアミノ酸アラニン(GCAでコードされる)がスレオニン(ACAでコードされる)となった。また、11754保持11754/ATCC27021Δpta#1株由来コロニーの配列解析の結果、64G>A及び/又は67G>Aの変異のある株を得られた。64G>A及び/又は67G>Aの変異によりPTB1タンパク質としてV22M及び/又はA23Tとなった株が得られた。V22Iの変異がある株は今回の解析では無かった。442保持442/ATCC27021Δpta#1株由来コロニーの配列解析の結果、442C>T及び/又は443C>Tの変異のある株を得られた。442C>T及び/又は443C>Tの変異によりPTB1タンパク質としてP148L及び/又はP148Sとなった株が得られた。460保持460/ATCC27021Δpta#1株由来コロニーの配列解析の結果、460G>A、463G>A及び/又は464G>Aの変異挿入のある株を得られた。460G>A、463G>A及び/又は464G>Aの変異によりPTB1タンパク質としてV154I、G155R又はG155E、G155Kとなった株が得られた。655保持655/ATCC27021Δpta#1株由来コロニーの配列解析の結果、655G>Aの変異のある株を得られた。655G>Aの変異によりPTB1タンパク質としてA219Tとなった株が得られた。745保持745/ATCC27021Δpta#1株由来コロニーの配列解析の結果、745G>A及び/又は751G>Aの変異のある株を得られた。745G>A及び/又は751G>Aの変異によりPTB1タンパク質としてA249T及び/又はV251Iとなった株が得られた。
上記(7)で得られた株からプラスミドを除去した。
上記(7)で得られた株を、抗生物質を含まないTYA培地で培養した後、TYA固形培地に希釈塗布し、生育したシングルコロニーを鋳型に上記(2)に示した方法でプラスミド保持の有無を確認し、プラスミド特有の領域の増幅物が無いコロニーを選抜した。PCRは、上記(2)に示すPCR組成49μLずつを分注後、シングルコロニーの懸濁液を1μL加え、上記(2)に条件にて行った。
得られたPCR産物を電気泳動し、プラスミド特有の領域の増幅物が無いコロニーをptb1プラスミド脱落株ATCC27021Δpta#1Δptb1株とした。
上記(8)で得られた株から、ATCC27021Δpta#1Δptb1株(pta-ptb1改変ブタノール発酵菌;R311K-A281T株、R311K-V275T株、R311K-V22M株、R311K-P148S株、R311K-G155R株、R311K-G155E株、R311K-G155K株、R311K-G155K/V154I株、R311K-A219T株、R311K-V251I株)選択して培養しその性能評価を行った。これらの株は、ptaを改変した宿主ATCC27021Δpta#1をもとに作製されており、これらの株を培養してグルコースからのブタノール収率を確認すれば、ptb1遺伝子改変のPTBタンパク質への影響が確認できる。培養は、上記(5)と同様にして行った。
上記で得られた株をTYA培地に植菌し、ねじ口試験管内で30℃にて前培養を24時間行った。比較としてATCC27021野生株(単に、野生株という)も同時に前培養した。取得した前培養液を、TYS-CaCO3培地5mLに50μL分植菌し、同じくねじ口試験管内で30℃にて培養を行った。TYS-CaCO3培地の組成を表10に示す。培養は、96時間程度行った。培養はねじ口の蓋を緩めた開放条件で実施した。
(1)ptb1改変ベクタープラスミドのpta-ptb1改変ブタノール発酵菌への挿入
〔方法〕
ptb1改変ベクタープラスミド(プラスミド460)のブタノール発酵菌への挿入とプラスミド保持の確認は、上記実施例1-(6)に示した方法で行った。宿主はC.サッカロパーブチルアセトニカム ATCC27021Δpta#1Δptb1株(pta-ptb1改変ブタノール発酵菌;R311K-P148S株)とした。
得られた株を鋳型にしたプラスミド保持確認PCRの結果、宿主においてプラスミド特有の領域の増幅物が得られ、形質転換体と確認された。
改変ベクタープラスミドを用い、pta-ptb1改変ブタノール発酵菌のptb1遺伝子のDNA配列変換を行った。
上記で作成した460保持株である460/R311K-P148S株を、エリスロマイシン10ppmを含有するTYA培地に植菌し培養した後、エリスロマイシン10ppmを含有するTYA固体培地に希釈塗布し、シングルコロニーとした。このシングルコロニーを取り、これを鋳型に、実施例1-(7)と同様にして、ゲノム上のptb1遺伝子全長の増幅を行い、シーケンス反応を行った。
460/R311K-P148S株由来コロニーの配列解析の結果、155G>Rの変異がさらにある株を得た。
上記(2)で得られた株からプラスミドを除去した。
上記(2)で得られた株を、抗生物質を含まないTYA培地で培養した後、MASS固形培地に希釈塗布し、生育したシングルコロニーを鋳型に上記実施例1-(2)に示した方法でプラスミド保持の有無を確認し、プラスミド特有の領域の増幅物が無いコロニーを選抜した。PCRは、上記実施例1-(2)に示すPCR組成49μLずつを分注後、シングルコロニーの懸濁液を1μL加え、上記実施例1-(2)条件にて行った。
得られたPCR産物を電気泳動し、プラスミド特有の領域の増幅物が無いコロニーをptb1プラスミド脱落株ATCC27021Δpta#1Δptb1株(pta-ptb1/ptb1改変ブタノール発酵菌;R311K-G155R/P148S株)とした。
上記で得られた株をTYA培地に植菌し、実施例1-(9)と同様にして培養を行った。比較としてATCC27021野生株(野生株)、pta遺伝子とptb1遺伝子を破壊した株(参考例1参照;以下GIIiΔptaΔptb1という)も同時に培養した。
(1)ctfB改変ベクタープラスミドのpta-ptb1/ptb1改変ブタノール発酵菌への挿入
実施例1-(1)で作製した改変ベクタープラスミドのうち、ctfB遺伝子への変異挿入を行うプラスミド85、121を、実施例2-(3)において得られたC.サッカロパーブチルアセトニカムのR311K-G155R/P148S株に形質転換した。
ctfB改変ベクタープラスミドのブタノール発酵菌への挿入とプラスミド保持の確認は、実施例1-(2)に示した方法で行った。宿主はC.サッカロパーブチルアセトニカムATCC27021のΔpta#1Δptb1/ptb1株(pta-ptb1/ptb1改変ブタノール発酵菌;R311K-G155R/P148S株)とした。
得られた株を鋳型にしたプラスミド保持確認PCRの結果、宿主においてプラスミド特有の領域の増幅物が得られ、形質転換体と確認された。
改変ベクタープラスミドを用い、pta-ptb1/ptb1改変ブタノール発酵菌のctfB遺伝子のDNA配列変換を行った。
上記(1)で作成したプラスミド85、121の保持株であるATCC27021のpta-ptb1/ptb1をそれぞれ、エリスロマイシン10ppmを含有するTYA培地に植菌し培養した後、エリスロマイシン10ppmを含有するTYA固体培地に希釈塗布し、シングルコロニーとした。このシングルコロニーを取り、これを鋳型にゲノム上のctfB遺伝子全長の増幅を行った。PCR組成、条件は実施例1-(3)に従い、プライマーのみctfB用の下記に示すものを用いた。
NS-ctfB-F11:5’- GGCCAACTCGTAAACCTTGGAATAG-3’(配列番号70)
NS-ctfB-R1:5’- GAATGATTCAGATATCCATAATTTTTAAGTTATCTGGAATAATTAAATCTg-3’ (配列番号71)
NS-ctfB-F1:5’- GGCCAACTCGTAAACCTTGGAATAG-3’(配列番号72)
コロニーの配列解析の結果から、85P>S、121P>L、121P>Sの変異のある株が得られた。
上記(2)で得られた株からプラスミドを除去した。
上記(2)で得られた株を、抗生物質を含まないTYA培地で培養した後、TYA固形培地に希釈塗布し、生育したシングルコロニーを鋳型に上記実施例1-(2)に示した方法でプラスミド保持の有無を確認し、プラスミド特有の領域の増幅物が無いコロニーを選抜した。PCRは、上記実施例1-(2)に示すPCR組成49μLずつを分注後、シングルコロニーの懸濁液を1μL加え、上記実施例1-(2)条件にて行った。
得られたPCR産物を電気泳動し、プラスミド特有の領域の増幅物が無いコロニーをctfBプラスミド脱落株ATCC27021Δpta#1Δptb1/ptb1ΔctfB株とした。
上記で得られた株を、実施例1-(10)と同様にして培養し、液体クロマトグラフィーを用いて定量分析を実施した。結果を表13に示す。
Claims (11)
- ブチリルCoAから酪酸が生成する経路に関与する酪酸生成酵素遺伝子とアセチルCoAから酢酸が生成する経路に関与する酢酸生成酵素遺伝子の機能をそれぞれ欠損したクロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物であって、
前記酪酸生成酵素遺伝子がptb1であり、該ptb1遺伝子が、コードするホスホトランスブチリラーゼにおいて148位、155位及び251位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含み、
前記ホスホトランスブチリラーゼのアミノ酸変化が、P148S又はP148Lと、G155E、G155R又はG155Kとの組合せを少なくとも含み、
前記酢酸生成酵素遺伝子がptaであり、破壊を伴う挿入及び/又は欠失を含まない
クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物。 - ホスホトランスブチリラーゼのアミノ酸変化が、P148S、P148L、G155E、G155R、G155K及びV251Iからなる群より選ばれる、2種以上のアミノ酸における変化である、請求項1記載の微生物。
- ホスホトランスブチリラーゼのアミノ酸変化が、P148Sと、G155Rとの組合せを少なくとも含む、請求項1又は2記載の微生物。
- pta遺伝子が、コードするホスホトランスアセチラーゼにR311K及び/又はG312Kのアミノ酸変化を生じる遺伝子改変を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の微生物。
- さらに、アセトアセチルCoAからアセトンが生成する経路に関与するCoAトランスフェラーゼ遺伝子の機能を欠損し、該遺伝子が、コードするCoAトランスフェラーゼにアミノ酸変化を生じさせる遺伝子改変を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の微生物。
- CoAトランスフェラーゼ遺伝子がctfBであり、該ctfB遺伝子が、コードするCoAトランスフェラーゼのBサブユニットに、P25S、P25L、P85S、P85L、P121S、P121L、P170S及びP170Lからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸変化を生じさせる遺伝子改変を含む、請求項5記載の微生物。
- ブチリルCoAから酪酸が生成する経路に関与する酪酸生成酵素遺伝子、アセチルCoAから酢酸が生成する経路に関与する酢酸生成酵素遺伝子及びアセトアセチルCoAからアセトンが生成する経路に関与するCoAトランスフェラーゼ遺伝子のそれぞれの機能を欠損したクロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物であって、
前記酪酸生成酵素遺伝子がptb1であり、該ptb1遺伝子が、コードするホスホトランスブチリラーゼにおいて148位、155位及び251位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含み、
前記ホスホトランスブチリラーゼのアミノ酸変化が、P148S又はP148Lと、G155E、G155R又はG155Kとの組合せを少なくとも含み、
前記酢酸生成酵素遺伝子がptaであり、該pta遺伝子が、コードするホスホトランスアセチラーゼに311位及び/又は312位のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含み、かつ
前記CoAトランスフェラーゼ遺伝子がctfBであり、該ctfB遺伝子が、コードするCoAトランスフェラーゼのBサブユニットにおいて25位、85位、121位及び170位からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸に変化を生じさせる遺伝子改変を含むことを特徴とする、クロストリジウム・サッカロパーブチルアセトニカム種微生物。 - P148S又はP148Lと、G155E、G155R又はG155Kのアミノ酸変化を含むホスホトランスブチリラーゼをコードするptb1遺伝子と、R311K及び/又はG312Kのアミノ酸変化を含むホスホトランスアセチラーゼをコードするpta遺伝子と、P25S、P25L、P85S、P85L、P121S、P121L、P170S及びP170LSからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸変化を含むCoAトランスフェラーゼ遺伝子をコードするctfB遺伝子を含む、請求項7に記載の微生物。
- 請求項1~8のいずれか1項に記載の微生物を、ブタノール生産用の培地で培養し、ブタノール発酵を行う、ブタノールの製造方法。
- 炭素源を含む培地中で培養する、請求項9記載の方法。
- さらに、培養中又は培養終了後の培養液からブタノールを回収する、請求項9又は10記載の方法。
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