以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
図1は、実施形態における汗検出装置の構成を示す図である。図1Aは、主に、電極部周り部分を示す回路図であり、図1Bは、主に、前記電極部周り部分を除く他の部分のブロック図である。図2は、一例として、ステアリングハンドルに電極部を配設した場合を説明するための図である。図2Aは、正面図であり、図2Bは、図2Aに示すI-I断面線における断面図である。図3は、検出回路に流れる電流経路を説明するための図である。図3Aは、発汗の無い場合における検出回路に流れる電流経路α1(α1-1、α1-2)を示し、図3Bは、相対的に少量の発汗があって前記少量の汗が抵抗可変部材に吸収された場合における検出回路に流れる電流経路α2を示し、図3Cは、相対的に大量の発汗があって前記大量の汗が抵抗可変部材に吸収された場合における検出回路に流れる電流経路α3を示す。図4は、共振周波数変化に対する共振抵抗変化を表す特性曲線を示す図である。図4において、破線は、抵抗可変部材に相対的に少量の汗が吸収されている場合(通常時、少量発汗時)における第1特性曲線β1を表し、実線は、抵抗可変部材に相対的に大量の汗が吸収されている場合(吸収時、大量発汗時)における第2特性曲線β2を表す。図4の横軸は、HMzで表す共振周波数frであり、その縦軸は、kΩで表す共振抵抗(最小インピーダンス)Zminである。図5は、抵抗可変部材に水道水を吸収させたタイミングの前後における共振抵抗変化を示す図である。図5の横軸は、経過時間であり、その縦軸は、Ωで表す共振抵抗値Zminである。
実施形態における汗検出装置SDは、例えば、図1および図2に示すように、第1および第2電極1、2と、誘導素子3と、抵抗可変部材4と、共振抵抗測定部5と、制御処理部6と、出力部7とを備える。
第1電極1は、導電性を有する材料で形成された比較的に薄い板状(層状、膜状)の部材であり、その一方主面1sfは、電気的に絶縁性を有する絶縁材料で比較的に薄く形成された第1絶縁層(第1絶縁被膜)1aで被覆されている。
第2電極2は、導電性を有する材料で形成された比較的に薄い板状(層状、膜状)の部材であり、その一方主面2sfは、電気的に絶縁性を有する絶縁材料で比較的に薄く形成された第2絶縁層(第1絶縁被膜)2aで被覆されている。
なお、第1絶縁層1aで被覆された第1電極1および第2絶縁層2aで被覆された第2電極2それぞれの各厚さは、約1mm以下であるが、図1および図2では、作図の都合上、強調して図示されている。また、第1電極1の前記一方「主面」1sfおよび第2電極2の前記一方「主面」2sfは、それぞれ、請求項における「主面」の一例に相当する。
抵抗可変部材4は、液体の吸収量に応じて抵抗値を変える部材である。抵抗可変部材4は、例えば、多孔質の樹脂部材(樹脂製の多孔体)であり、より具体的には、比較的良好な触感を与えることから、例えばスポンジ等である。多孔質の樹脂部材は、液体を吸収していない状態では、孔内には、空気等の気体が充填され、実質的に電気的に絶縁しているほど相対的に高抵抗値であり、一方、電解質を含む液体がその表面に付着すると、孔内の気体と前記液体とが置換することによって前記液体を吸収し、前記液体の吸収量の増加に従ってその抵抗値を減少させる。汗は、電解質を含む液体であるので、抵抗可変部材4は、その抵抗値を汗の吸収量に応じた値に変える。
これら第1および第2電極1、2は、第1および第2絶縁層1a、2aが外部に臨むように配置され、そして、抵抗可変部材4を介して並置される。第1電極1は、第1絶縁層1aで被覆された主面1sfを除く他の面、図1および図2に示す例では、紙面右側の側面(右側面)で抵抗可変部材4に接触している。より具体的には、抵抗可変部材4が通電可能な抵抗値である場合に、第1電極1は、前記右側面で、第1電極1と抵抗可変部材4との間で電気的に通電可能に接続される。第2電極2は、第2絶縁層2aで被覆された主面2sfを除く他の面、図1および図2に示す例では、紙面左側の側面(左側面)で抵抗可変部材4に接触している。より具体的には、抵抗可変部材4が通電可能な抵抗値である場合に、第2電極2は、前記左側面で、第2電極2と抵抗可変部材4との間で電気的に通電可能に接続される。
このような第1電極1、第1絶縁層1a、抵抗可変部材4、第2電極2および第2絶縁層2aによって電極部Dが構成される。このような構成の電極部Dは、生体の汗を検出する場合、第1絶縁層1a、抵抗可変部材4および第2絶縁層2aの各表面に亘って生体が接触される。この電極部Dは、汗検出装置SDが車両用である場合に、車両に搭乗する、運転者や同乗者等の搭乗者(生体の一例)における腕や手等が触れる車両部位、好ましくは、汗腺が比較的発達している観点から、前記搭乗者の手(例えば掌や手指等)が触れる車両部位、例えばステアリングハンドル(ステアリングホイール)やドアトリム(例えばドアトリムのグリップハンドルやドアトリムのアームレスト等)等に配置される。図2には、電極部DがステアリングハンドルSHに配設されている例が示されている。ステアリングハンドルSHは、例えば、図2Aに示すように、円柱状の部材が円環状を呈している。図2Aは、ステアリングハンドルSHが中立位置である状態を示し、ステアリングハンドルSHにおける搭乗者(ここでは運転者)が握り操作の対象となる前記円環状の部分における第1周方向の一部に、図2Bに示すように、前記円柱状の第2周方向に第1および第2電極1、2が抵抗可変部材4を介して並置されるように電極部Dが配設されている。電極部Dの表面(第1絶縁層1a、抵抗可変部材4および第2絶縁層2aの各表面)とステアリングハンドルHSの表面とが面一となるように、ステアリングハンドルHSの電極部Dを配置するための凹所が形成され、電極部Dは、前記凹所に例えば接着剤ADによって貼着されて配設されている。なお、電極部Dは、前記円環状の全周に亘って配置されても良い。また、図2に示す例では、前記円柱状の周方向に配置されるため、第1および第2電極1、2ならびに抵抗可変部材4は、それぞれ、湾曲した板状であるが、配置場所によっては、その少なくともいずれかまたは共に平板状であっても良い。
抵抗可変部材4を配置するための、第1および第2電極1、2によって形成される離間空間における間隔(互いに並置された第1電極1と第2電極2との間の空隙における間隔)は、第1および第2電極1、2間に生体、例えば手指が入り込まない一方、十分に汗を吸収できて抵抗値が変化できることから、好ましくは、3mm~5mmである。
誘導素子3は、電極部Dに対して共振回路を構成するための素子であり、例えば、所定のインダクタンスLを持つコイル等である。
共振抵抗測定部5は、これら上述の電極部Dと誘導素子3とを含む検出回路の共振抵抗を測定する装置である。より具体的には、共振抵抗測定部5は、交流電源51と、電流計52とを備える。交流電源51は、所定の周波数範囲、例えば500kHzないし4MHzの範囲で周波数を変更可能に構成され、制御処理部6に接続され、制御処理部6の制御に従って電極部Dに所定の電圧値で交流電力を供給する装置であり、例えば周波数可変で高周波電力を供給する高周波電源である。電流計52は、制御処理部6に接続され、電極部Dの電流値を測定する装置である。電流計52は、その測定した電流値を制御処理部6へ出力する。
なお、共振抵抗測定部5と制御処理部6との接続は、有線であっても無線であっても良い。無線接続の場合では、例えば、Bluetooth(登録商標)規格やIrDA(Infrared Data Asscoiation)規格等の近距離無線通信が用いられて良い。
誘導素子3は、電極部Dにおける第1および第2電極1、2のいずれに接続されても良いが、図1に示す例では、その一方端子が第1電極1に接続され、その他方端子が共振抵抗測定部5の交流電源51を介して接地される。共振抵抗測定部5の電流計52は、その一方端子が第2電極2に接続され、その他方端子が接地される。
出力部7は、制御処理部6に接続され、制御処理部6の制御に従って、制御処理部6によって後述のように判定された発汗の有無や発汗量等を出力する装置であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶表示装置)および有機ELディスプレイ等の表示部(表示装置)や、プリンタ等の印刷装置等である。
制御処理部6は、汗検出装置SDの各部5、7を当該機能に応じてそれぞれ制御し、例えば発汗量(例えば発汗量0(発汗無し)と発汗量有り等の発汗の有無や、相対的に小量の発汗量と相対的に大量の発汗量等の発汗量の大小)等の、生体の汗を検出するための回路である。制御処理部6は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、記憶素子およびその周辺回路等を備えたマイクロコンピュータを備えて構成される。前記記憶素子は、例えば、不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や、書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)や、揮発性の記憶素子であって前記CPUのいわゆるワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を備え、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する。前記各種の所定のプログラムには、例えば、汗検出装置SDの各部5、7を当該機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値に基づいて汗の検出に関する所定の判定処理を行う汗判定プログラム等の制御処理プログラムが含まれる。前記各種の所定のデータには、例えば後述の各閾値Thn等の、各プログラムを実行する上で必要なデータ等が含まれる。そして、制御処理部6は、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部61および汗判定部62を前記CPUに機能的に備える。
制御部61は、汗検出装置SDの各部5、7を当該機能に応じてそれぞれ制御し、汗検出装置SD全体の制御を司るものである。
汗判定部62は、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値に基づいて汗の検出に関する所定の判定処理を行うものである。本実施形態では、汗判定部62は、前記共振抵抗測定部で測定された共振抵抗値に基づいて発汗量を判定する。
より具体的には、汗判定部62は、次のように発汗の有無や発汗量を判定している。抵抗可変部材4は、上述のように、液体の吸収量に応じて抵抗値を可変する。より詳しくは、抵抗可変部材4は、液体の吸収が無い場合では、実質的に電気的に絶縁しているほど相対的に高抵抗値であり、液体の吸収量の増加に従ってその抵抗値を減少させる。抵抗可変部材4が多孔質の樹脂部材である場合では、液体の吸収が無い場合では、孔内には、空気等の気体が充填され、抵抗可変部材4は、実質的に電気的に絶縁しているほど相対的に高抵抗値(所定の第1抵抗値)であり、電解質を含む液体がその表面に付着すると、孔内の気体と前記液体とが置換することによって前記液体を吸収し、前記液体の吸収量の増加に従ってその抵抗値を減少させ、全孔内が前記液体で充填されると、通電可能なほど相対的に低抵抗値(前記第1抵抗値より低い所定の第2抵抗値)となる。逆に、通電可能な前記第2抵抗値の抵抗可変部材4は、吸収していた液体が乾燥により抜けて行くと、その抵抗値を増加させ、完全乾燥で、実質的に電気的に絶縁しているほどの前記第1抵抗値となる。
このため、第1および第2絶縁層1a、2aを介して第1および第2電極1、2に亘って生体LB、例えば手指LBが電極部Dに接触すると、発汗が無い場合では、抵抗可変部材4が実質的に電気的に絶縁しているほど相対的に高抵抗値であるので、図3Aに示すように、交流電源51から給電される電流は、交流電源51、誘導素子3、第1電極1、第1絶縁層1a、手指LB、第2絶縁層2a、第2電極2および電流計52の第1A経路α1-1および交流電源51、誘導素子3、第1電極1、第1絶縁層1aおよび生体LBの第1B経路α1-2(例えば生体LBを介してアースされる経路)で流れる。図3Aにおいて、Cs_TXは、第1絶縁層1aを介した第1電極1と手指LBとの間における静電容量であり、Cs_RXは、第2絶縁層2aを介した第2電極2と手指LBとの間における静電容量であり、Rsは、手指LBの抵抗値であり、Cbは、生体LBの静電容量であり、Rbは、生体LBの抵抗値である。
一方、生体LBが発汗し、その汗が抵抗可変部材4に付着して吸収されると、抵抗可変部材4の抵抗値が発汗の無い場合に較べて低下し、相対的に少量の発汗の場合、すなわち、抵抗可変部材4が所定の第1発汗量を吸収した場合では、図3Bに示すように、交流電源51から給電される電流は、交流電源51、誘導素子3、第1電極1、第1絶縁層1a、手指LB、第2絶縁層2a、第2電極2および電流計52の第2A経路α2-1および交流電源51、第1電極1、抵抗可変部材4、第2電極2および電流計52の第2B経路α2-2で流れる。図3Bにおいて、Cmは、抵抗可変部材4の静電容量であり、Rmは、抵抗可変部材4の抵抗値である。
このように発汗の有無によって抵抗可変部材4が絶縁状態から通電可能状態に変化し、上述のように電流経路が第1経路α1(α1-1、α1-2)から第2経路α2(α2-1、α2-2)に変化するので、共振抵抗値を閾値で判定することで発汗の有無が判定可能となる。より具体的には、汗判定部62は、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値と、予め設定された所定の第1閾値Th1とを比較し、この比較の結果、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値が前記所定の第1閾値Th1以上である場合に、発汗無しと判定し、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値が前記所定の第1閾値Th1未満である場合に、発汗有りと判定する。共振抵抗値は、交流電源51の周波数を変更(走査、スイープ)しながら電流計52で電流値を測定し、電流計52が極値を検出した時点での電流値で、交流電源51の電圧値を除算した値で与えられる(共振抵抗値=(交流電源51の電圧値)/(極値での電流計52の測定電流値))。
抵抗可変部材4に代え、第1および第2絶縁層1a、2aと同一材料で第1絶縁層1aと第2絶縁層2aと互いに連結した場合、手指LBで発汗すると、この発汗によって手指LBの抵抗値Rsが低下し、共振周波数frが殆ど変化しない状態で共振抵抗値が低下するように変化するが、その変化は、小さいため、検出が難しい。また、手指LBの僅かな動きによっても共振抵抗値が変動してしまうため、共振抵抗値の変化が発汗に起因するか、手指LBの動きに起因するかを判別することも難しい。これに対し、本実施形態では、抵抗可変部材4を用いるので、発汗による手指LBの抵抗値Rsの変化に較べて、共振抵抗値を明確に変化させることができ、発汗の有無がより精度良く検出可能となる。
そして、生体LBが例えば相対的に大量に発汗するなど、抵抗可変部材4が前記第1発汗量より多い所定の第2発汗量(例えば抵抗可変部材4の上限量)を吸収した場合では、抵抗可変部材4の抵抗値Rmが低い抵抗値になり、図3Cに示すように、交流電源51から給電される電流は、主に、交流電源51、誘導素子3、第1電極1、抵抗可変部材4、第2電極2および電流計52の第3経路α3で流れる。
図3Bに示す相対的に少量の吸収の場合(通常時、少量吸収時)と、図3Cに示す相対的に大量の吸収の場合(付着時、大量吸収時)とにおいて、電極部Dでは、静電容量Cs_TXのコンデンサ、抵抗値Rsの抵抗および静電容量Cs_RXのコンデンサから成る直列回路に、静電容量Cmのコンデンサおよび抵抗値Rmの抵抗から成る並列回路が、並列に接続された回路が形成されるが、図3Cに示す大量吸収時では、上述のように、抵抗可変部材4での通電が優位となり、図3Bに示す少量吸収時に較べて図3Cに示す大量吸収時では、その合成静電容量Ccは、増加し、その合成抵抗値Rcは、減少する。その共振抵抗値(周波数走査での最小のインピーダンス値)Zminは、次式1で与えられる。
式1;Zmin=Rc・L/(L+Cc・Rc2)
一例として、図3Bに示す少量吸収時における合成静電容量Ccおよび合成抵抗値Rcをそれぞれ10.5pFおよび14kΩとし(Cc=10.5pF、Rc=14kΩ)、図3Cに示す大量吸収時における合成静電容量Ccおよび合成抵抗値Rcをそれぞれ22pFおよび2.4kΩとし(Cc=22pF、Rc=2.4kΩ)、上述の式1を用いてシミュレーションすると、図4に示す結果が得られる。図4において、破線で示す、共振周波数変化に対する共振抵抗変化を表す第1特性曲線β1が図3Bに示す少量吸収時におけるシミュレーション結果であり、実線で示す、共振周波数変化に対する共振抵抗変化を表す第2特性曲線β2が図3Cに示す大量吸収時におけるシミュレーション結果である。図4から分かるように、第1および第2特性曲線β1、β2は、それぞれ、共振周波数frの増加に従って共振抵抗値Zminも増加する。そして、第1および第2特性曲線β1、β2は、共振周波数frが同一である場合に、第2特性曲線β2の共振抵抗値Zminが第1特性曲線β1の共振抵抗値Zminより大きい関係である。
このように共振周波数変化に対する共振抵抗変化を表す特性曲線βは、抵抗可変部材4に相対的に少量の汗が吸収されたか相対的に大量の汗が吸収されたか(すなわち、抵抗可変部材4の抵抗値変化)に応じて変化する。このため、共振抵抗値に基づいて特性曲線を判定することで発汗量が判定可能となる。より具体的には、電極部Dと誘導素子3とを含む検出回路は、上述のように、共振周波数変化に対する共振抵抗変化を表す特性曲線βを、抵抗可変部材4の抵抗値に応じて互いに異なるように第1および第2特性曲線β1、β2として2個を含み、汗判定部62は、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値に基づいて、前記検出回路が動作している特性曲線を判定することによって、発汗量を判定する。より詳しくは、汗判定部62は、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値が所定の第2閾値Th2未満である場合に、前記検出回路が第1特性曲線β1で動作していると判定して第1発汗量の発汗(相対的に少量の発汗)と判定し、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値が第2閾値Th2以上である場合に、前記検出回路が第2特性曲線β2で動作していると判定して前記第1発汗量より多い第2発汗量の発汗(相対的に大量の発汗)と判定する。
上述では、生体LBが少量で発汗する場合および大量に発汗する場合とで活動すれば、発汗量が判定できる。一方、少量の発汗が継続した結果、抵抗可変部材4が汗で充填され、抵抗可変部材4が大量に汗を吸収する場合も生じ得る。上述のように、共振抵抗値と第2閾値Th2との比較だけでは、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値が第2閾値Th2以上である場合に、少量の発汗が継続し、前記検出回路が第1特性曲線β1から第2特性曲線β2への遷移中で動作している場合を含んでしまう。上述では、汗判定部62は、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値が第2閾値Th2以上である場合に、前記検出回路が第2特性曲線β2でまたは第1特性曲線β1から第2特性曲線β2への遷移中で動作していると判定して前記第2発汗量の発汗(相対的に大量の発汗)と判定している。このため、より精度良く大量の発汗を判定するために、第1および第2特性曲線間の遷移時間あるいは所定の時間での共振抵抗値の時間変化率が用いられる。図5には、一実験例の結果が示されている。この実験では、所定の共振周波数で交流電源51から前記検出回路に給電した場合における共振抵抗値(最小のインピーダンス)の時間経過が観測され、実験開始後の約30秒のタイミングで大量発汗の汗に代え充分な水道水(水道水は通常電解質を含む)を抵抗可変部材4に付着させた。図5から分かるように、充分な水道水が抵抗可変部材4に付着されると、比較的、短時間で前記検出回路が第2特性曲線β2で動作するようになる。したがって、第1および第2特性曲線間の遷移時間を閾値で判定することで大量発汗か否かが判定できる。あるいは、所定の時間での共振抵抗値の時間変化率(傾き)を閾値で判定することで大量発汗か否かが判定できる。より具体的には、汗判定部62は、さらに、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値に基づいて、第1および第2特性曲線β1、β2間の遷移時間または所定の時間での共振抵抗値の時間変化率を判定することによって、発汗量を判定する。より詳しくは、汗判定部62は、さらに、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値に基づいて、共振抵抗値が所定の第1サブ閾値Ths1から前記第1サブ閾値より大きい所定の第2サブ閾値Ths2に到達するまでの時間を求め、前記求めた時間が所定の第3閾値Th3以下である場合に、前記第2発汗量の発汗(相対的に大量の発汗)と判定し、前記求めた時間が第3閾値Th3を超えている場合に、前記第2発汗量の発汗ではないと判定する。あるいは、汗判定部62は、さらに、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値に基づいて、所定の時間での共振抵抗値の時間変化率を求め、前記求めた共振抵抗値の時間変化率が所定の第4閾値Th4以上である場合に、前記第2発汗量の発汗(相対的に大量の発汗)と判定し、前記求めた共振抵抗値の時間変化率が第4閾値Th4未満である場合に、前記第2発汗量の発汗ではないと判定する。
これら上述の前記所定の第1ないし第4閾値Th1~Th4、前記所定の第1および第2サブ閾値Ths1、Ths2、ならびに、前記所定の時間は、複数のサンプルから予め適宜に設定される。あるいは、これら前記所定の第1ないし第4閾値Th1~Th4、前記所定の第1および第2サブ閾値Ths1、Ths2、ならびに、前記所定の時間は、第1絶縁層1aで被覆された第1電極1、第2絶縁層2aで被覆された第2電極2、および、抵抗可変部材4における各材料および各形状、ならびに、誘導素子3のインダクタンスL等を考慮することによって得られた設計値(シミュレーション値を含む)で設定されても良い。
なお、このような第1および第2特性曲線間の遷移時間または所定の時間での共振抵抗値の時間変化率を用いる場合では、第1閾値Th1と第2閾値Th2とは、同値であっても良い(Th1=Th2)。このような場合では、共振抵抗値が第1閾値Th1(第2閾値Th2)以上である場合、汗判定部62は、発汗が無いと判定し、共振抵抗値が第1閾値Th1(第2閾値Th2)未満である場合であって所定の時間での共振抵抗値の時間変化率が第4閾値Th4未満である場合(または前記時間が第3閾値Th3を超えている場合)、汗判定部62は、少量の発汗が有ると判定し、共振抵抗値が第1閾値Th1(第2閾値Th2)未満である場合であって所定の時間での共振抵抗値の時間変化率が第4閾値Th4以上である場合(または前記時間が第3閾値Th3以下である場合)、汗判定部62は、大量の発汗が有ると判定する。言い換えれば、汗判定部62は、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値が減少傾向を示して第1閾値Th1(第2閾値Th2)を下回った後に(図5において、ポイントT0からポイントT1へ)、増加傾向を示して第4閾値Th4以上の時間変化率で増加した場合に(図5において、ポイントT1からポイントT2へ、さらにポイントT3へ)、大量の発汗が有ると判定する。
次に、本実施形態の動作について説明する。図6は、実施形態における汗検出装置の動作を示すフローチャートである。ここでは、第1および第2サブ閾値Ths1、Ths2を必要としないので、共振抵抗値の時間変化率を用いる場合について説明するが、第1および第2特性曲線間の遷移時間を用いる場合についても同様に説明できる。また、車両には、車室内の温度を測定する温度計が備えられ、前記温度計は、制御処理部6に接続され、制御処理部6の制御に従って車室内の温度を測定し、その測定結果を制御処理部6へ出力している。
このような汗検出装置SDは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部6には、制御部61および汗判定部62が機能的に構成される。そして、汗検出装置SDは、予め設定された所定のサンプリング間隔おきに、次のように動作することで、生体LBの汗を検出している。
図6において、制御処理部6は、前記温度計で測定された車室内の温度変化△Tが予め設定された温度閾値T0未満であるか否かを判定する(S1)。発汗量で、精神状態に起因する発汗か、身体状態に起因する発汗かを判別することができると言われているが、生体LBの周囲温度(環境温度)によっても発汗するため、この処理S1は、生体LBの周囲温度に起因する発汗であるか否かを判定する処理である。この判定の結果、車室内の温度変化△Tが温度閾値T0以上である場合(No)では、制御処理部6は、今回のサンプリングタイミングでの処理を終了し、一方、前記判定の結果、車室内の温度変化△Tが温度閾値T0未満である場合(Yes)では、制御処理部6は、次に、処理S2を実行する。
この処理S2では、制御処理部6は、共振抵抗測定部5を用いて共振抵抗値を測定する(S2)。より具体的には、制御処理部6は、交流電源51の周波数を変更しながら電流計52で電流値を測定することによって、電流計52が極値を検出した時点での電流値を求め、この求めた電流値で、交流電源51の電圧値を除算することによって、その除算結果を共振抵抗値として求める。
続いて、制御処理部6は、汗判定部62によって、この求めた共振抵抗値が第1閾値Th1以上であるか否かを判定する(S3)。この判定の結果、前記共振抵抗値が第1閾値Th1以上である場合(Yes)では、汗判定部62は、発汗していないと判定し、今回のサンプリングタイミングでの処理を終了する。なお、汗判定部62は、発汗が無いことを出力部7に出力した後に、今回のサンプリングタイミングでの処理を終了しても良い。一方、前記判定の結果、前記共振抵抗値が第1閾値Th1未満である場合(No)では、汗判定部62は、次に、処理S4を実行する。この実施形態では、一例として、第1閾値Th1(=第2閾値Th2)は、約255Ω~275Ωであり、例えば260Ωに設定される。
この処理S4では、汗判定部62は、所定の時間での共振抵抗値の時間変化率を求め、この求めた共振抵抗値の時間変化率が第4閾値Th4以上であるか否かを判定する。この判定の結果、共振抵抗値の時間変化率が第4閾値Th4未満である場合(No)では、汗判定部62は、相対的に少量の発汗と判定し、次に、この少量の発汗が有ることを出力部7に出力し(S5)、今回のサンプリングタイミングでの処理を終了する。一方、前記判定の結果、共振抵抗値の時間変化率が第4閾値Th4以上である場合(Yes)では、汗判定部62は、相対的に大量の発汗と判定し、次に、この大量の発汗が有ることを出力部7に出力し(S6)、今回のサンプリングタイミングでの処理を終了する。この実施形態では、一例として、第4閾値Th4は、約30Ω/秒~60Ω/秒であり、例えば30Ω/秒に設定される。なお、図示を省略するが、別の実験では、小量発汗時における共振抵抗値の最小値が194.53Ωであり、大量発汗時の共振抵抗値の最小値が336.86Ωであり、その小量発汗時から大量発汗時までの遷移時間が2.5秒という結果が得られており、これによれば共振抵抗値の時間変化率が56.932Ωであり、約60Ωである。
以上説明したように、本実施形態における汗検出装置SDは、上述のような汗の吸収により抵抗値を変化させる抵抗可変部材4を第1および第2電極1、2間に備えるので、第1および第2電極1、2に亘って接触している手指の動きにあまり影響されない、発汗の有無に応じた抵抗可変部材4の抵抗値変化で、前記検出回路の共振抵抗値は、変化する。このため、上記汗検出装置SDは、前記検出回路の共振抵抗値を測定することで、発汗の有無をより精度良く検出できる。
上記汗検出装置SDは、上述のような吸収した発汗量により抵抗値を変化させる抵抗可変部材4を第1および第2電極1、2間に備えるので、発汗量に応じて前記検出回路の特性曲線β(図4に示す例では第1および第2特性曲線β1、β2)は、変化する。このため、上記汗検出装置SDは、共振抵抗測定部5で測定された共振抵抗値に基づいて、前記検出回路が動作している特性曲線を判定することによって、例えば相対的に少量の発汗(第1発汗量の発汗)であるか相対的に大量の発汗(第2発汗量の発汗)であるかで、発汗量を判定できる。
ところで、発汗量で、精神状態に起因する発汗か、身体状態に起因する発汗かを判別することができると言われているが、前記特許文献1に開示された皮膚抵抗測定装置では、発汗量を検出することが難しく、発汗の原因を検知することが難しい。また、皮膚抵抗値と発汗量との相関関係を調べることによって、皮膚抵抗値を発汗量に変換することも検討したが、抵抗可変部材4を備えずに第1絶縁層1aと第2絶縁層2aとを連結した第1および第2電極1、2の構成において、互いに連結された第1および第2絶縁層1a、2aを介して第1および第2電極1、2に亘って接触している手指LBの僅かな動きによって共振抵抗値が変動してしまい、皮膚抵抗値と発汗量との相関関係を調べることが難しく、皮膚抵抗値を発汗量に変換することが難しかった。しかしながら、本実施形態における汗検出装置SDは、上述のように、抵抗可変部材4を備える構成としたので、発汗量を判定できる。
上記汗検出装置SDは、生体LBを第1および第2電極1、2間に亘って接触させれば良いので、非侵襲で発汗の有無や発汗量を検出できる。
上記汗検出装置SDは、さらに、第1および第2特性曲線β1、β2間の遷移時間または所定の時間での共振抵抗値の時間変化率も考慮するので、前記発汗量をより精度良く判定できる。
上記汗検出装置SDは、車両に搭載される場合では、搭乗者の汗を検出できる。このような場合において、第1および第2電極1、2が搭乗者の手の触れる車両部位に配置されることで、上記汗検出装置SDは、搭乗者に意識させることなく自然に、搭乗者の汗を検出できる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。