JP7125751B2 - 化合物およびその合成方法ならびに重合体およびその合成方法 - Google Patents
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以下、実施例および比較例を示して本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に限定されることはない。
(1)2-ベンゾフェノキシ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホランの合成
29.70g(0.15mol)の4-ヒドロキシベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製のものをエタノールで再結晶したもの)(以下「HBP」と略する。)を300mLのメチルエチルケトン(和光純薬工業株式会社製)(以下「MEK」と略する。)に溶解させた後、そのHBPのMEK溶液に21mL(0.15mol)のトリエチルアミン(和光純薬工業株式会社製のものを常圧蒸留したもの)(以下「TEA」と略する。)を加えた。次に、そのTEAを含むHBPのMEK溶液を氷浴中で撹拌しながら、その溶液に21.32g(0.15mol)の2-クロロ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホラン(日油株式会社製)を1滴/秒のペースで滴下し、滴下完了後にその溶液を氷浴中で2時間撹拌した。なお、このときの化学反応は、以下の化学反応式(F3)に示される通りである。
先に得られたBPP10.48g(34.4mmol)を100mLのアセトニトリル(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)(以下「AN」と略する。)に溶解させた後、そのBPPのAN溶液に5.42g(34.4mmol)ジメチルアミノエチルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製のものを減圧蒸留したもの)(以下「DMAEM」と略する。)を加えた。次にそのDMAEMを含むBPPのAN溶液を60℃に保ちながら18時間撹拌した。なお、このときの化学反応は、以下の化学反応式(F4)に示される通りである。
18時間の攪拌完了後にその溶液を冷蔵庫に入れて一晩放置した。一晩放置後の溶液を観察したところ、溶液内に結晶が析出していた。そして、この結晶析出液を減圧濾過して結晶を回収し、この結晶をガラスフィルター上でANを用いて3回洗浄した後、その洗浄後の結晶をデシケータで3時間減圧乾燥した。その後、核磁気共鳴装置(NMR:JMTC-400/JNM-AL-400(400MHz),溶媒:CDCl3)および質量分析計(Thermo fisher scientific社のExactive,モード:positive ion mode,イオン化器:ESI,試料濃度:1μM,希釈溶媒:メタノール)を用いてその結晶物の同定を行ったところ、その結晶がベンゾフェノキシコリンホスフェートモノマー(以下「CPBP」と略する。)であると同定された。なお、図2にその1H-NMRスペクトルを示し、図3にそのマススペクトルを示した。
(1)CPBPの溶解性評価
上述の通りにして得られたCPBP0.2gを1.0gの水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、クロロホルムおよびヘキサンそれぞれに入れ、目視でベンゾフェノキシコリンホスフェートモノマーの様子を確認した。その結果、このCPBPは、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランおよびクロロホルムに完全に溶解したが、アセトンおよびヘキサンにはほとんど溶解しなかった(表1参照)。
先ず、上述の通りにして得られたCPBPが0.5重量%となるようにCPBPをイソプロパノール(以下「IPA」と略する。)に溶かした。次に、この0.5重量%CPBP・IPA溶液をポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略する。)基板にスピンコートした。なお、スピンコートは、300rpm、30秒で実施された。次いで、平衡光束光源装置(ウシオ電機株式会社製UI-502Q、紫外線透過・可視吸収フィルター(HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製U360)使用)を用いてこのコーティング基板に1時間、波長356nmの紫外線を照射した。続いて、その紫外線照射した後のコーティング基板をIPA含浸布で拭いた後に、そのコーティング基板に窒素ガスを吹き付けて同コーティング基板を乾燥させた。そして、この乾燥後のコーティング基板の表面を、X線光電子分光装置(株式会社島津製作所製XPS ESCA-3400)を用いてXPS解析したところ、図4および図5に示されるように窒素原子の1S軌道の結合エネルギーピークと、リン原子の2p軌道の結合エネルギーピークとが観察された。したがって、CPBPは、紫外線照射によりPET基板に共有結合していると思われる。
4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン(MCCユニテック株式会社製)(以下「MBP」と略する。)0.2gを1.0gの水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、クロロホルムおよびヘキサンそれぞれに入れ、目視でMBPの様子を確認した。その結果、このMBPは、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフランおよびクロロホルムに完全に溶解したが、水、イソプロパノール、ブタノール、およびヘキサンにはほとんど溶解せず、メタノールおよびエタノールには一部が溶解した様子であった(表1参照)。
先ず、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下「MPC」と称する。)(以下の化学式(C4)参照)が0.5重量%となるようにMPCをIPAに溶かした。次に、この0.5重量%MPC・IPA溶液をPET基板にスピンコートした。なお、スピンコートは、300rpm、30秒で実施された。次いで、平衡光束光源装置(ウシオ電機株式会社製UI-502Q、紫外線透過・可視吸収フィルター(HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製U360)使用)を用いてこのコーティング基板に1時間、紫外線を照射した。続いて、その紫外線照射した後のコーティング基板をIPA含浸布で拭いた後に、そのコーティング基板に窒素ガスを吹き付けて同コーティング基板を乾燥させた。そして、この乾燥後のコーティング基板の表面を、X線光電子分光装置(株式会社島津製作所製XPS ESCA-3400)を用いてXPS解析したところ、図6および図7に示されるように窒素原子の1S軌道の結合エネルギーピークと、リン原子の2p軌道の結合エネルギーピークとは観察されなかった。したがって、MPCは、IPA含浸布で拭きとられて基板上に存在していなかったと思われる。
(1)MPC/CPBP:70/30(モル比)とするポリ(MPC-co-CPBP)の合成
先ず、1.55g(5.24mmol)のMPCと1.04g(2.25mmol)のCPBPを試験管に加えた後にその試験管にさらに6.16mgのアゾビスイソブチロニトリルを加えた。次に、その試験管に15mLのエタノールを加え、エタノールに上述の化合物を溶解させた。次いで、そのエタノール溶液に対して30分間アルゴンバブリング処理を行った後に、その試験管を60℃のオイルバスに入れて、そのエタノール溶液を17時間撹拌した。17時間の撹拌完了後に得られた高粘性のエタノール溶液をジエチルエーテルで再沈殿処理した後に、その沈殿物をデシケータで2時間減圧乾燥した。その後、核磁気共鳴装置(NMR:JMTC-400/JNM-AL-400(400MHz),溶媒:CDCl3)を用いてその沈殿物の同定を行ったところ、その沈殿物がポリ(MPC-co-CPBP)(モル比:70/30)であると同定された。なお、図8にその1H-NMRスペクトルを示した。
MPCの添加量を1.99g(6.73mmol)に代え、CPBPの添加量を0.345g(0.747mmol)に代えた以外は、上述と同様にして沈殿物を得た。その後、核磁気共鳴装置(NMR:JMTC-400/JNM-AL-400(400MHz),溶媒:CDCl3)を用いてその沈殿物の同定を行ったところ、その沈殿物がポリ(MPC-co-CPBP)(モル比:90/10)であると同定された。なお、図8にその1H-NMRスペクトルを示した。
(1)ポリ(MPC-co-CPBP)の光反応性評価
先ず、上述の通りにして得られた各ポリ(MPC-co-CPBP)が0.5重量%となるように各ポリ(MPC-co-CPBP)をエタノールに溶かした。次に、この0.5重量%ポリ(MPC-co-CPBP)エタノール溶液をポリエーテルエーテルケトン(以下「PEEK」と略する。)基板およびPET基板それぞれにスピンコートした。なお、スピンコートは、4000rpm、25秒で実施された。次いで、平衡光束光源装置(ウシオ電機株式会社製UI-502Q、紫外線透過・可視吸収フィルター(HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製U360)使用)を用いてこのコーティング基板に1時間、波長356nmの紫外線を照射した。続いて、その紫外線照射した後のコーティング基板をIPA含浸布で拭いた後に、そのコーティング基板に窒素ガスを吹き付けて同コーティング基板を乾燥させた(上述の流れは図9参照。)。そして、これらの乾燥後のコーティング基板の表面ならびにPEEK基板およびPET基板を、X線光電子分光装置(株式会社島津製作所X線光電子分光装置(株式会社島津製作所製XPS ESCA-3400)を用いて製XPS ESCA-3400)を用いてXPS解析したところ、図10~図15に示される結果が得られた。なお、ここで、図10はPEEK基板のXPSスペクトル(P/C=N.D.)であり、図11はPEEK基板上に塗工したポリ(MPC-co-CPBP)(モル比:90/10)のXPSスペクトル(P/C=0.047)であり、図12はPEEK基板上に塗工したポリ(MPC-co-CPBP)(モル比:70/30)のXPSスペクトル(P/C=0.053)であり、図13はPET基板のXPSスペクトル(P/C=N.D.)であり、図14はPET基板上に塗工したポリ(MPC-co-CPBP)(モル比:90/10)のXPSスペクトル(P/C=0.063)であり、図15はPET基板上に塗工したポリ(MPC-co-CPBP)(モル比:70/30)のXPSスペクトル(P/C=0.044)である。これらの図から明らかなように、PEEK基板上に塗工したポリ(MPC-co-CPBP)(モル比:90/10)、PEEK基板上に塗工したポリ(MPC-co-CPBP)(モル比:70/30)、PET基板上に塗工したポリ(MPC-co-CPBP)(モル比:90/10)、PET基板上に塗工したポリ(MPC-co-CPBP)(モル比:70/30)のいずれにも、PEEK基板およびPET基板に存在しないリン原子の2p軌道の結合エネルギーピークが観察された。したがって、いずれのポリ(MPC-co-CPBP)も、紫外線照射によりPEEK基板およびPET基板それぞれに共有結合していると思われる。
PET基板および上述の通りにして得られたコーティング基板それぞれに対して0.45g/dLのフルオレセインイソチオシアネート修飾ウシ血清由来アルブミン(FITC-BSA)(Sigma-Aldrich社製)のリン酸緩衝食塩水(PBS(-))溶液を30分間接触させた後に、それを超純水で洗浄して各基板の表面を蛍光顕微鏡(オリンパス株式会社製IX71)で観察したところ、図16の上段に示される結果が得られた。図16の上段の左側の画像(PET基板)は全面に亘って明緑色を呈しており、全面に亘って蛍光アルブミンの付着が認められたが、上段の真ん中の画像(ポリ(MPC-co-CPBP) 90/10)および上段の右側の画像(ポリ(MPC-co-CPBP) 70/30)は全面に亘って暗緑色を呈しており、全面に亘って蛍光アルブミンの付着が認めらなかった。
先ず、PET基板および上述の通りにして得られたコーティング基板それぞれを、24wellプレートに入れ、それらの基板を一晩デシケータで減圧乾燥した。次に、各基板をシリコンリングで固定して70%エタノールに3時間浸漬した。次いで、各基板をリン酸緩衝食塩水(PBS(-))で2回洗浄した後、基板が入ったwellに、1.0×10-5cells/mLのL929懸濁液500μLを加え、これをインキュベータで24時間静置した。各wellからL929懸濁液を吸い出し、各基板をリン酸緩衝食塩水(PBS(-))で2回洗浄した後、各基板が入ったwellに対して、リン酸緩衝食塩水(PBS(-))で1000倍に希釈した1μLカルセイン-AM溶液を500μL加えた。これをインキュベータで30分静置した後、各基板の表面を蛍光顕微鏡(オリンパス株式会社製IX71)で観察したところ、図16の下段に示される結果が得られた。図16の下段の左側の画像(PET基板)には全面に亘って多数の繊維芽細胞が認められたが、下段の真ん中の画像(ポリ(MPC-co-CPBP) 90/10)および下段の右側の画像(ポリ(MPC-co-CPBP) 70/30)には、下段の左側の画像の繊維芽細胞の数よりも少ない数の繊維芽細胞が認められた。なお、下段の真ん中の画像(ポリ(MPC-co-CPBP) 90/10)における繊維芽細胞の数は、下段の右側の画像(ポリ(MPC-co-CPBP) 70/30)における繊維芽細胞の数よりも少なくなかった。すなわち、ポリ(MPC-co-CPBP) 90/10は、ポリ(MPC-co-CPBP) 70/30よりも繊維芽細胞の付着を抑制することが明らかとなった。
Claims (7)
- 以下の一般式(R1)に示される構造を有する化合物と、以下の一般式(R2)に示される構造を有する化合物とを反応させて、以下の一般式(R3)に示される構造を有する化合物を合成する中間体合成工程と、
前記一般式(R3)に示される構造を有する化合物と、以下の一般式(R4)に示される構造を有する化合物とを反応させて、請求項1に記載の一般式(C1)に示される化合物を合成する化合物合成工程と
を備える、化合物の合成方法。
(上記一般式(R1)中、R4はエチレン基、n-プロピレン基またはイソプロピレン基である。)
(上記一般式(R2)中、X1~9は、それぞれ、水素、ハロゲン原子およびメチル基のいずれかであり、mは0から3のいずれかである。)
(上記一般式(R3)中、R4はエチレン基、n-プロピレン基またはイソプロピレン基であり、X1~9は、それぞれ、水素、ハロゲン原子およびメチル基のいずれかであり、mは0から3のいずれかである。)
(上記一般式(R4)中、R1は水素またはメチル基であり、R2はメチル基またはエチル基であり、R3はメチル基またはエチル基であり、nは1から3のいずれかである。) - 請求項1に記載の化合物のビニル重合体。
- 請求項1に記載の化合物のビニル共重合体。
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