JP7124468B2 - Sofcシステム、soecシステム、及びr-socシステム - Google Patents

Sofcシステム、soecシステム、及びr-socシステム Download PDF

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Description

本発明は、SOFCシステム、SOECシステム、及びR-SOCシステムに関し、さらに詳しくは、Niサーメット電極の酸化状態を監視し、適時に還元状態へ再生することが可能なSOFCシステム、SOECシステム、及びR-SOCシステムに関する。
固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、電解質として酸化物イオン伝導体を用いた燃料電池である。SOFCのアノードに、H2、CO、CH4などの燃料ガスを供給し、カソードにO2を供給すると、電極反応が進行し、電力を取り出すことができる。電極反応により生成したCO2やH2Oは、SOFC外に排出される。
一方、固体酸化物形電解セル(SOEC)は、SOFCと構造は同じであるが、SOFCとは逆の反応を起こさせるものである。すなわち、SOECのカソードにCO2及びH2Oを供給し、電極間に電流を流すと、COやH2を生成させることができる。
SOECを用いると、CO2とH2Oから合成ガス(CO+H2)を製造することができる。また、得られた合成ガスを用いて、メタンなどの炭化水素を製造することができる。すなわち、SOECを用いると、電気エネルギーを化学エネルギーとして貯蔵することができる。一方、電力が必要とされるときには、貯蔵された炭化水素をSOFCに供給することによって、発電することができる。そのため、SOECを用いた電力貯蔵システムに関し、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
(a)直射日光を熱エネルギーに変換し、
(b)熱エネルギーを用いて合成ガス生成セルの温度を500℃~1000℃に加熱し、CO2とH2Oから合成ガスを生成させ、
(c)合成ガス生成セルで得られた合成ガス流を触媒反応器に供給し、炭化水素燃料を生成する、
方法が開示されている。
SOFCのアノード(又は、SOECのカソード)には、従来、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などの固体酸化物電解質とNiとの複合体(以下、単に「Niサーメット」ともいう)が用いられている。
SOFCのアノードに燃料ガス(H2、CO)を供給して電気化学反応を生じさせると、燃料ガスの流れの方向に沿って、H2やCOの濃度は減少し、生成物(H2O、CO2)の濃度は増加する。そのため、アノード流路内の酸素分圧は、アノード流路の出口側に行くほど増加する傾向がある。一方、電流密度は、燃料ガス濃度の高いアノード流路の入口側で高くなり、酸素濃度分布とは逆方向の分布関係にある。
SOFCのアノードに用いられるNiサーメットは、高電流密度かつ高酸素分圧環境下で酸化が進行する。特に、電解質近傍の3相界面(ガス相/固体酸化物電解質(YSZ)相/Ni相)において、電極触媒性能が低下しやすい。
同様に、SOEC作動では、H2O、CO2濃度の高いカソード流路の入口側において、より高い酸素分圧が形成される。そのため、H2O+CO2共電解では、特にカソード流路の入口側においてNi酸化が進行する。
しかしながら、アノード触媒として用いたNiサーメットの酸化状態を把握するための手段、及び酸化したNiサーメットを還元状態へ再生するための手段を備えたSOFCシステムが提案された例は、従来にはない。
また、カソード触媒として用いたNiサーメットの酸化状態を把握するための手段、及び酸化したNiサーメットを還元状態へ再生するための手段を備えたSOECシステムが提案された例は、従来にはない。
さらに、SOFC作動とSOEC作動を切り替え可能なリバーシブルSOC(R-SOC)を備えており、かつ、電極触媒として用いたNiサーメットの酸化状態を把握するための手段、及び酸化したNiサーメットを還元状態へ再生するための手段を備えたR-SOCシステムが提案された例は、従来にはない。
特表2016-511296号公報
本発明が解決しようとする課題は、アノード触媒として用いたNiサーメットの酸化状態を把握するための手段、あるいは、これに加えて酸化したNiサーメットを還元状態へ再生するための手段を備えたSOFCシステムを提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、カソード触媒として用いたNiサーメットの酸化状態を把握するための手段、あるいは、これに加えて酸化したNiサーメットを還元状態へ再生するための手段を備えたSOECシステムを提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、電極触媒として用いたNiサーメットの酸化状態を把握するための手段、あるいは、これに加えて酸化したNiサーメットを還元状態へ再生するための手段を備えたR-SOCシステムを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るSOFCシステムは、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記SOFCシステムは、
アノードに燃料ガスを供給し、カソードに酸化剤ガスを供給することにより電力を得る固体酸化物形燃料電池(SOFC)と、
前記アノードの酸化/還元状態を検出するための状態検出装置と、
前記SOFCシステムの動作を制御する制御装置と
を備えている。
(2)前記アノードは、Niサーメットからなる。
(3)前記SOFCのアノード側エンドプレートには観察窓が設けられ、
前記状態検出装置は、前記観察窓を介して前記アノードの酸化/還元状態を検出し、前記酸化/還元状態を表す出力値を出力するものからなる。
(4)前記制御装置は、前記出力値を用いて、前記アノードが酸化状態にあるか否かを判定する判定手段を備えている。
本発明に係るSOECシステムは、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記SOECシステムは、
カソードに原料ガス(H2O及び/又はCO2)を供給し、電極間に電力を供給することにより可燃性ガス(H2及び/又はCO)を得るSOECと、
前記カソードの酸化/還元状態を検出するための状態検出装置と、
前記SOECシステムの動作を制御する制御装置と
を備えている。
(2)前記カソードは、Niサーメットからなる。
(3)前記SOECのカソード側エンドプレートには観察窓が設けられ、
前記状態検出装置は、前記観察窓を介して前記カソードの酸化/還元状態を検出し、前記酸化/還元状態を表す出力値を出力するものからなる。
(4)前記制御装置は、前記出力値を用いて、前記カソードが酸化状態にあるか否かを判定する判定手段を備えている。
さらに、本発明に係るR-SOCシステムは、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記R-SOCシステムは、
燃料ガスから電力を生成するSOFCモードと、原料ガス(H2O及び/又はCO2)から可燃性ガス(H2及び/又はCO)を生成させるSOECモードとを切替可能なリバーシブルSOC(R-SOC)と、
前記燃料ガス又は前記原料ガスが供給される第1電極の酸化/還元状態を検出するための状態検出装置と、
前記R-SOCシステムの動作を制御する制御装置と
を備えている。
(2)前記第1電極は、Niサーメットからなる。
(3)前記R-SOCの第1電極側エンドプレートには観察窓が設けられ、
前記状態検出装置は、前記観察窓を介して前記第1電極の酸化/還元状態を検出し、前記酸化/還元状態を表す出力値を出力するものからなる。
(4)前記制御装置は、前記出力値を用いて、前記第1電極が酸化状態にあるか否かを判定する判定手段を備えている。
Niサーメットをアノード触媒に用いたSOFCにおいて、アノード流路内の酸素分圧が高くなった時には、Niサーメット中のNiの酸化が進行し、NiOとなる。アノード触媒であるNiの酸化が進行すると、酸素イオンとの反応性が低下し、発電性能が低下する。この点は、Niサーメットをカソード触媒に用いたSOECも同様であり、カソード触媒の酸化は、電解性能を低下させる原因となる。
これに対し、電極触媒として用いられるNiサーメットは、還元状態にある時は灰色を呈し、酸化状態にある時は緑色を呈する。そのため、SOFC作動中又はSOEC作動中にNiサーメットの色の変化を計測すると、Niサーメットの酸化の程度を知ることができる。また、Niサーメットの酸化がある程度進んだところで、適時にNiサーメットの還元処理を行うと、システムの稼働効率を低下させることなく、発電効率又は電解効率の低下を抑制することができる。
SOFCの模式図である。 アノード流路内でのNiの酸化過程の模式図である。 図3(A)は、温度検出装置を備えたSOFCの観察窓付近の拡大図である。図3(B)は、図3(A)のB-B’線断面図である。 色度を用いてアノードの酸化状態を判定するためのプログラムのフローチャートである。
本発明の第1の実施の形態に係るSOFCシステムの模式図である。 RGB表色系(図6(A))又はL*a*b*表色系(図6(B))を用いた色度の時間変化である。 放射率とアノード表面の温度Tmとの関係を示す図である。 図8(A)は、アノードに対して酸化加速試験(温度:700℃、大気中)を行った時の放射率の時間変化である。図8(B)は、Ni価数と放射率との関係である。 本発明の第2の実施の形態に係るSOFCシステムの模式図である。
図9に示すSOFCシステムで用いられる再生プログラム(1)のフローチャートである。 本発明の第3の実施の形態に係るSOFCシステムの模式図である。 図11に示すSOFCシステムで用いられる再生プログラム(2)のフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態に係るSOECシステムの模式図である。 本発明の第2の実施の形態に係るSOECシステムの模式図である。
本発明の第1の実施の形態に係るR-SOCシステムの模式図である。 本発明の第2の実施の形態に係るR-SOCシステムの模式図である。 序列の高い酸化状態にあるR-SOCスタックを優先的に休止させ、還元処理を行うための再生プログラム(3)のフローチャートである。 複数個のR-SOCスタックに対して、酸化状態の序列を付与する方法の模式図である。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. SOFCシステム]
本発明に係るSOFCシステムは、以下の構成を備えている。
(1)前記SOFCシステムは、
アノードに燃料ガスを供給し、カソードに酸化剤ガスを供給することにより電力を得る固体酸化物形燃料電池(SOFC)と、
前記アノードの酸化/還元状態を検出するための状態検出装置と、
前記SOFCシステムの動作を制御する制御装置と
を備えている。
(2)前記アノードは、Niサーメットからなる。
(3)前記SOFCのアノード側エンドプレートには観察窓が設けられ、
前記状態検出装置は、前記観察窓を介して前記アノードの酸化/還元状態を検出し、前記酸化/還元状態を表す出力値を出力するものからなる。
(4)前記制御装置は、前記出力値を用いて、前記アノードが酸化状態にあるか否かを判定する判定手段を備えている。
[1.1. SOFC]
本発明において、固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、アノードにNiサーメットを用いたものからなる。SOFCのその他の点については、特に限定されない。
図1に、SOFCの模式図(左上図:正面図、右上図:側面断面図、下図:分解斜視図)を示す。図1において、SOFC10は、いわゆる平板型SOFCスタックであって、単セル20、20…と、インターコネクタ30、30…と、アノード側エンドプレート40と、カソード側エンドプレート50とを備えている。
[1.1.1. 単セル]
単セル20、20…は、固体酸化物電解質(以下、単に「電解質」ともいう)22と、電解質22の一方の面に接合されたアノード24と、電解質22の他方の面に接合されたカソード26とを備えている。上述したように、アノード24は、YSZなどの固体酸化物電解質とNiとの複合体(Niサーメット)からなる。
本発明において、電解質22及びカソード26の材料は、特に限定されない。電解質22の材料としては、例えば、YSZ、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、ランタンガレート(LaGaO3)などがある。また、カソード26の材料としては、例えば、ランタンマンガナイト(LaMnO3)、ランタンクロマイト(LaCrO3)、ランタンストロンチウムコバルタイト((La,Sr)CoO3-δ)などがある。
[1.1.2. インターコネクタ]
インターコネクタ30、30…は、単セル20-単セル20間に設置される。インターコネクタ30、30…のアノード24側の面には、アノード流路(図示せず)が形成されている。また、インターコネクタ30、30…のカソード26側の面には、カソード流路(図示せず)が形成されている。
アノード流路及びカソード流路の形状は、特に限定されない。例えば、アノード流路をy軸方向に形成し、カソード流路をx軸方向に形成しても良い。また、インターコネクタ30、30…の材料も、特に限定されない。インターコネクタ30、30…の材料としては、例えば、LaCrO3系材料、フェライト系ステンレス鋼などがある。
[1.1.3. アノード側エンドプレート]
アノード側エンドプレート40は、SOFC10の端部に位置する単セル20のアノード24側に設置される。アノード側エンドプレート40は、
(a)アノード24側に配置された、電流を取り出すためのアノード集電板42と、
(b)アノード集電板42の外側に配置された、短絡を防止するための絶縁板44と、
(c)絶縁板44の外側に配置された、金属板46と
の積層体からなる。
アノード集電板42の材料は、導電性材料である限りにおいて、特に限定されない。絶縁板44の材料は、絶縁性材料である限りにおいて、特に限定されない。さらに、金属板46の材料も特に限定されない。
アノード集電板42には、アノード24に燃料ガスを供給するためのアノード流路(図示せず)が形成されている。また、アノード集電板42の上端には、端子となる電極板42bが設けられている。
また、金属板46には、観察窓46aが設けられ、観察窓46a内には、透光性材料48が嵌め込まれている。透光性材料48は、SOFCの作動温度において赤外線を透過させることが可能な材料であれば良い。透光性材料48としては、例えば、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア(Al23)などがある。
観察窓46aは、状態検出装置60を用いてアノード24の酸化/還元状態を検出するためのものである。そのため、アノード集電板42及び絶縁板44には、観察窓46aに対応する位置に、それぞれ、貫通穴42a及び貫通穴44aが形成されている。状態検出装置60の詳細については、後述する。
[1.1.4. カソード側エンドプレート]
カソード側エンドプレート50は、SOFC10の端部に位置する単セル20のカソード26側に設置される。カソード側エンドプレート50は、
(a)カソード26側に配置された、電流を取り出すためのカソード集電板52と、
(b)カソード集電板52の外側に配置された、短絡を防止するための絶縁板54と、
(c)絶縁板54の外側に配置された、金属板56と
の積層体からなる。
カソード集電板52の材料は、導電性材料である限りにおいて、特に限定されない。絶縁板54の材料は、絶縁性材料である限りにおいて、特に限定されない。さらに、金属板56の材料も特に限定されない。
カソード集電板52には、カソード26に酸化剤ガス(空気)を供給するためのカソード流路(図示せず)が形成されている。また、カソード集電板52の上端には、端子となる電極板52bが設けられている。
[1.2. 状態検出装置]
「状態検出装置」とは、アノード24の酸化/還元状態を検出するための装置をいう。状態検出装置60は、アノード側エンドプレート40に設けられた観察窓46aを介してアノード24の酸化/還元状態を検出し、酸化/還元状態を表す出力値を出力することが可能なものであれば良い。
このような状態検出装置60としては、例えば、
(a)アノード24の色度を検出する色度検出装置、
(b)アノード24の放射率を検出する放射率検出装置
などがある。
[1.2.1. 色度検出装置]
アノード24が還元状態にある場合、アノード24は灰色を呈する。一方、アノード24が酸化状態にある場合、アノード24は緑色を呈する。また、アノード24の酸化が進行するほど、緑色が強くなる。そのため、アノード24の色度を検出すれば、アノード24が酸化状態にあるか否か、及び、アノード24の酸化の程度を知ることができる。
本発明において、色度検出装置の構造は、色度を検出可能なものである限りにおいて、特に限定されない。
また、色空間の表示方法としては、例えば、
(a)原色をR(赤、700nm)、G(緑、546.1nm)、B(青、435.8nm)とするRGB表色系、
(b)明度指数を表すL*と、知覚色度を表すa*(赤-緑の軸)、b*(黄-青の軸)で色空間を表示するL*a*b*表色系、
などがある。
本発明においては、いずれを用いても良い。
図2に、アノード流路内でのNiの酸化過程の模式図を示す。アノード流路にH2、COなどの燃料ガスを流し、カソード流路(図示せず)に空気を流すと、カソードにおいてO2-が生成し、電解質22を通ってアノード24に達する。アノード24では、式(1)及び(2)に示すように、O2-とH2又はCOとが反応し、それぞれ、H2O又はCO2が生成する。
2+O2- → H2O+2e- ・・・(1)
CO+O2- → CO2+2e- ・・・(2)
アノード流路の入口側においては、還元性ガス(H2、CO)の濃度が相対的に高い。そのため、アノード流路の入口側に位置するアノード中のNiは、還元状態(灰色)になっている割合が高い。一方、アノード流路の出口側においては、酸化性ガス(H2O、CO2)の濃度が相対的に高い。そのため、アノード流路の出口側に位置するアノード中のNiは、酸化状態(緑色)、すなわち、NiOになっている割合が高い。
そのため、SOFCにおいては、アノード流路の出口側において、アノード24の状態観察を行うのが好ましい。なお、後述するSOECにおいては、図2とは逆の反応が起きている。そのため、SOECにおいては、カソード流路の入口側において、カソードの状態観察を行うのが好ましい。
[1.2.2. 放射率検出装置]
物体から放出される赤外線の量(放射率)は、物体の材質や表面状態などに依存する。また、放射率は、色度と異なり、温度にも依存する。そのため、アノード24の放射率、及び放射率測定時のアノード24の温度を検出すれば、アノード24が酸化状態にあるか否か、及び、アノード24の酸化の程度を知ることができる。
本発明において、放射率検出装置の構造は、放射率を検出可能なものである限りにおいて、特に限定されない。
[1.3. 温度検出装置]
SOFCシステムは、アノード24の温度を検出するための温度検出装置をさらに備えていても良い。アノード24の色度を検出する場合、色度は温度によって変化しないので、温度の検出は必ずしも必要ではない。また、アノード24の放射率を検出する場合において、SOFCが常に一定の温度に保たれている時には、温度による影響を無視することができるので、温度の検出は必ずしも必要ではない。一方、アノード24の放射率を検出する場合において、SOFCの温度が時々刻々と変化する時には、放射率と同時に温度を検出し、温度を用いて放射率を補正するのが好ましい。
本発明において、温度検出の方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の方法を用いることができる。図3(A)に、温度検出装置を備えたSOFCの観察窓付近の拡大図を示す。図3(B)に、図3(A)のB-B’線断面図を示す。
図3(A)は、アノード側エンドプレート40の観察窓46aからアノード24の表面を見た状態を模式的に示している。2つのアノード流路リブの間に、アノード24の表面が露出している。また、観察窓46aから露出しているアノード24の表面の上部には、2つのシース熱電対62、64が設けられている。
図3において、温度検出装置は、2つのシース熱電対62、64からなる。シース熱電対62、64の先端には、それぞれ、アノード24との短絡を防止するための絶縁体62a、64aが設けられている。図3(C)に示すように、絶縁体64aの高さは「b」であり、絶縁体62aの高さは「a+b」になっている。
熱電対を直接、アノード24に接触させると、短絡する。そのため、熱電対を用いて温度を計測する際には、熱電対を絶縁体で被覆する必要がある。しかし、熱電対とアノード24との間に絶縁体があると、温度計測精度が低下する。
これに対し、絶縁体62a、64aの長さが異なる2つのシース熱電対62、64を用いると、アノード24の最表面の温度を推定することができる。
すなわち、シース熱電対62、64を流れる熱流束をq[W/m2]、シース熱電対62、64で検出された温度を、それぞれ、Ta[K]及びTb[K]とする。さらに、アノード24の最表面の温度をTm[K]、絶縁体62a、64aの熱伝導度をλとする。この場合、これらの関係は、次の式(3)で表される。また、式(3)を変形すると、次の式(4)が得られる。
q=(Tb-Ta)・λ/a=(Tm-Tb)・λ/b ・・・(3)
m=(Tb-Ta)・(b/a)+Tb ・・・(4)
[1.4. 改質器]
SOFCシステムは、改質器をさらに備えていても良い。改質器は、炭化水素及び水蒸気を含む改質用原料ガスを改質流路に供給することによって改質ガスを生成させるためのものである。生成した改質ガスは、燃料ガスとしてSOFCのアノード流路に供給される。一般に、間接型の改質器は、
(a)SOFCの外部に設置されるタイプ(間接外部改質型)と、
(b)SOFCの内部に設置され、SOFCからの排熱を用いて改質反応を行わせるタイプ(間接内部改質型)
に大別される。本発明において、改質器は、いずれのタイプであっても良い。
[1.5. 制御装置]
制御装置は、SOFCシステム(すなわち、SOFC及び状態検出装置、並びに、温度検出装置及び改質器)の動作を制御するためのものである。本実施の形態において、制御装置は、これらの一般的な動作を制御するための手段に加えて、以下のような手段をさらに備えている。
[1.5.1. 判定手段]
[A. 概要]
制御装置は、状態検出装置からの出力値を用いて、アノードが酸化状態にあるか否かを判定する判定手段を備えている。判定は、具体的には、予めアノードが酸化したか否かを判断するための出力値(セル電圧、色度、放射率)のしきい値を定めておき、出力値がしきい値を超えか否かを判断することにより行う。
[B. 酸化状態判定用プログラム]
図4に、色度を用いてアノードの酸化状態を判定するためのプログラムのフローチャートを示す。まず、ステップ1(以下、単に「S1」という)において、SOFCによる発電を開始する。次に、S2において、酸化の有無を判定するためのしきい値、すなわち、
(a)発電起電力のしきい値Vslsh、並びに、
(b)明度指数のしきい値L*slsh、及び、知覚色度のしきい値a*slsh、b*slsh
をそれぞれ設定する。
これらのしきい値は、目的に応じて最適な値を選択することができる。例えば、Vslshは、初期起電力Vinitの0.99倍と定めることができる。
また、例えば、L*slsh、a*slsh、及び、b*slshは、それぞれ、1%の起電力低下が生じた時のアノード表面の色度に相当するL成分、a成分、及び、b成分と定めることができる。L*slsh、a*slsh、及び、b*slshは、それぞれ、SOFCの作動環境を模擬した試験を行うことにより、事前に決定することができる。
次に、S3において、発電起電力Vtを測定する。
次に、S4において、Vt<Vslshであるか否かが判断される。Vt<Vslshでない場合(S4:NO)、アノードの酸化が生じていない可能性が高い。このような場合には、S3に戻り、上述したS3~S4の各ステップを繰り返す。一方、Vt<Vslshである場合(S4:YES)、アノードの酸化が生じた可能性が高い。このような場合には、S5に進み、L*、a*、及びb*を測定する。
次に、S6に進む。S6では、L*>L*slsh、a*>a*slsh、かつ、b*<b*slshであるか否かが判断される。これらの3つの条件を同時に満たすことは、予め定められたしきい値とを超える色度の変化(例えば、1%の起電力低下に相当する色度の変化)が生じたことを表す。
これらの3つの条件を満たさない時(S6:NO)は、発電起電力Vtの低下がアノードの酸化以外の原因で生じた可能性が高い。このような場合には、S3に戻り、上述したS3~S6の各ステップを繰り返す。
一方、これらの3つの条件を満たした時(S6:YES)は、発電起電力Vtの低下がアノードの酸化により生じた可能性が高い。このような場合には、S7に進み、発電を停止させる。その後、S8に進み、還元処理によるスタック再生を行っても良い。再生手段の詳細については、後述する。
[C. 測定例]
図5に、本発明の第1の実施の形態に係るSOFCシステムの模式図を示す。図5において、SOFCシステム1aは、観察窓46aを備えたSOFCスタック10と、状態検出装置60とを備えている。状態検出装置60は、観察窓46aの近傍に設置されている。図5において、アノードガスは紙面の左から右に向かって流れ、カソードガスは紙面の下から上に向かって流れる。そのため、観察窓46a及び状態検出装置60は、それぞれ、アノード流路の出口側に設置されている。
図6に、図5に示すSOFCシステムを用いて測定された色度の時間変化を示す。図6(A)は、RGB表色系を用いた色度の時間変化である。また、図6(B)は、L*a*b*表色系を用いた色度の時間変化である。RGB表色系とL*a*b*表色系とは、相互に変換可能である。図6より、発電開始から約800時間経過したところで、出力値がしきい値を超えていること(すなわち、アノードの酸化が進行したこと)がわかる。
[1.5.2. 補正手段]
[A. 概要]
上述したように、SOFCシステムは、アノードの温度を検出する温度検出装置をさらに備えていてもよい。この場合、前記制御装置は、検出された前記温度を用いて、前記出力値を補正する補正手段をさらに備えているのが好ましい。
上述したように、状態検出装置からの出力値(酸化/還元状態)が温度に依存しない場合、出力値をそのまま用いてアノードの酸化の有無を判定することができる。一方、出力値が温度に依存する場合、出力値をそのまま用いると、誤判定するおそれがある。このような場合には、アノードの酸化/還元状態を検出すると同時に、アノードの温度を検出し、温度を用いて出力値を補正するのが好ましい。
補正方法は、特に限定されるものではなく、状態検出装置の種類、及び温度検出装置の種類に応じて最適な方法を選択するのが好ましい。
[B. 測定例]
図7に、放射率とアノード表面の温度Tmとの関係を示す。図7に示すように、放射率は、アノード表面の温度Tmに応じて大きく変化する。そのため、正確な放射率を知るためには、アノード表面の正確な温度Tmを知る必要がある。温度を計測する方法には、種々の方法があるが、熱電対は、材料表面の色が変化しても正確に温度を計測できるという利点がある。しかし、熱電対は導電体であるため、アノードに直接、接触させることはできない。一方、熱電対をアノード表面から離間させると、温度の計測精度が低下する。
これに対し、上述したように絶縁体の長さが異なる2つのシース熱電対を用いて温度を計測すると、アノード表面の温度Tmを正確に推定することができる。また、正確な温度が分かると、正確な放射率を知ることができる。
上述したように、シース熱電対62、64への伝熱量を同じと仮定し、シース熱電対62、64で検出された温度を、それぞれ、Ta[K]及びTb[K]とし、シース熱電対62、64の絶縁体の高さを、それぞれ、「a+b」、及び、「b」とすると、アノード24の最表面の温度Tm[K]は、次の式(4)で表される。
m=(Tb-Ta)・(b/a)+Tb ・・・(4)
図8(A)に、アノードに対して酸化加速試験(温度:700℃、大気中)を行った時の放射率の時間変化を示す。図8(B)に、Ni価数と放射率との関係を示す。
放射率とNi価数(アノードの酸化状態)との関係を予め測定しておき、両者の関係を関数化しておく。図8(B)に示す例では、放射率が0.885以下である時には、Niの価数が0.3(しきい値)を超えること(すなわち、アノードが酸化状態にあること)を示している。Niが還元状態にあるアノードに対して酸化加速試験を行った場合、図8(A)に示す例では、約500分で放射率が0.885以下になることが分かる。
このように、図8(B)のような関係を予め取得しておくと、しきい値を変更した場合であっても、アノードの酸化の有無を正確に判定することができる
[1.5.3. 再生手段]
[A. 概要]
前記制御装置は、前記アノードが酸化状態にあると判断された時には、前記SOFCの休止期間中に前記アノードの還元処理を行う再生手段をさらに備えていても良い。アノードの再生方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の方法を用いることができる。再生手段としては、具体的には、
(a)還元ガス供給手段、
(b)リバーシブル作動手段
などがある。
[A.1. 還元ガス供給手段]
「還元ガス供給手段」とは、SOFCが休止している期間中に、前記アノードに還元ガスを供給する手段をいう。
「SOFCが休止している」とは、
(a)SOFCシステムの全体が休止していること、又は、
(b)SOFCシステムが複数個のSOFCを含む場合において、一部のSOFCが稼働しており、残りのSOFCが休止していること、
をいう。
還元ガス供給手段を用いてアノードの再生を行う場合、還元ガスの種類は、特に限定されない。還元ガスとしては、例えば、
(a)外部の還元ガス源から供給されるH2、COなどの還元ガス、
(b)SOFCシステムが改質器を備えている場合において、改質器から供給される改質ガス、
(c)SOFCシステムが複数のSOFCを備えている場合において、稼働しているSOFCから排出されるアノードオフガス
などがある。
[A.2. リバーシブル作動手段]
「リバーシブル作動手段」とは、休止しているSOFCをSOEC作動させる手段をいう。上述したように、SOFCを用いて発電を行った場合、アノード流路の入口側にあるNiは還元状態となり、アノード流路の出口側にあるNiは酸化状態となる。この場合、SOFC作動を停止させた後、燃料ガス(H2、CO、CH4)と同一方向に原料ガス(H2O、CO2)を流しながらSOEC作動させると、電解反応によりカソード流路(SOFC作動時はアノード流路)の出口側における還元性ガス(H2、CO)の濃度が増加する。その結果、カソード流路の出口側にあるNiを還元状態に戻すことができる。
[A.3. 選択還元手段]
制御装置は、選択還元手段をさらに備えていても良い。
ここで、「選択還元手段」とは、SOFCシステムが複数個のSOFCを備えている場合において、SOFCシステムが稼働している時に、休止状態にあるSOFCに対してのみ、アノードの還元処理を行う手段をいう。
この場合、還元処理を行うSOFCの選択方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。例えば、アノードの酸化状態によらず、順番に休止・還元処理を行っても良く、あるいは、アノードの酸化が進んだSOFCから順に休止・還元処理を行ってもよい。
SOFCシステムが複数個のSOFCを備えている場合、システム全体を停止させた後、SOFCの全部又は一部に対して還元処理を行うこともできる。しかし、この方法は、電力需要がある間は、還元処理を行うことができないという問題がある。
これに対し、電力需要は、通常、一定ではなく、時間変動がある。そのため、選択還元手段を備えている場合において、電力需要が減少した時には、一部のSOFCのみを休止させ、休止状態にあるSOFCに対してのみアノードの還元処理を行うことができる。
[A.4. 序列化手段、優先還元手段]
制御装置は、序列化手段、及び優先還元手段をさらに備えていても良い。
ここで、「序列化手段」とは、複数個のSOFCに対して、酸化状態の序列を付与する手段をいう。色度や放射率は、酸化の程度を数値化できるので、複数個のSOFCに対して、酸化状態の序列を容易に付与することができる。
「優先還元手段」とは、SOFCシステムが序列化手段を備えている場合において、SOFCシステムが稼働している時に、序列の高い酸化状態にあるSOFCを優先的に休止させ、還元処理を行う手段をいう。優先還元手段を備えている場合には、システムの稼働効率を低下させることなく、アノードを再生することができる。
[B. 再生方法(1):外部にある還元ガス供給源を用いた再生]
[B.1. SOFCシステム(1)]
図9に、本発明の第2の実施の形態に係るSOFCシステムの模式図を示す。図9において、SOFCシステム1bは、複数個のSOFCスタック(SOC1~SOC5)と、状態検出装置60と、制御装置(図示せず)とを備えている。制御装置には、後述するアノードの還元処理を行うための再生プログラム(1)が格納されている。
SOFCシステム1bは、改質器(図示せず)を備えた合計5個のSOFCスタック(SOC1~SOC5)を備えている。各SOFCスタック(SOC1~SOC5)は、ガスの流れに対して並列に接続されている。各SOFCスタック(SOC1~SOC5)のアノード流路の入口は、それぞれ、開閉バルブV11~V51を介して、燃料ガス(CH4+H2O)供給源又は原料ガス(H2O+CO2)供給源に接続されている。
各SOFCスタック(SOC1~SOC5)は、SOFC作動させる時には燃料ガス供給源に接続され、SOEC作動(又は、リバーシブル作動)させる時には原料ガス供給源に接続されるようになっている。
これとは別に、各SOFCスタック(SOC1~SOC5)のアノード流路の入口は、それぞれ、開閉バルブV12~V52を介して、還元ガス供給源に接続されている。本実施の形態において、還元ガス供給源の種類は、特に限定されない。
さらに、各SOFCスタック(SOC1~SOC5)のアノード流路の出口は、外界に接続されている。アノードオフガスの処理方法は、特に限定されない。通常、アノードオフガスには可燃成分が残っているため、燃焼器で燃焼処理されたり、あるいは、アノードに戻される。
各SOFCスタック(SOC1~SOC5)のアノード流路には、それぞれ、状態検出装置60が設けられている。
また、各SOFCスタック(SOC1~SOC5)のアノード及びカソードは、それぞれ、負荷70に接続されている。負荷70には、SOFCスタック(SOC1~SOC5)の全部又は一部で発電された電力が供給されるようになっている。
なお、各SOFCスタック(SOC1~SOC5)のアノード及びカソードは、それぞれ、電源72に接続されていても良い。この場合、電源72は、SOFCスタック(SOC1~SOC5)をリバーシブル作動させるために用いても良く、あるいは、SOFCシステム1bをSOECシステムとして作動させるために用いても良い。
このような構成を備えたSOFCシステム1bにおいて、開閉バルブV11~V51の全部又は一部を開とし、アノード流路に燃料ガスを供給すると、SOFCスタック(SOC1~SOC5)において発電が行われる。生成した電力は、負荷70に供給される。
状態検出装置60でアノードの酸化/還元状態を監視しながら発電を継続すると、やがてSOFCスタック(SOC1~SOC5)のアノードが酸化状態となる。あるSOFCスタックのアノードが酸化状態となった時は、SOFC作動を休止させる。次いで、開閉バルブV12~V52の全部又は一部を開とし、アノードが酸化状態にある休止中のSOFCスタック(SOC1~SOC5)に還元ガスを供給する。これにより、アノードが還元状態に再生される。
なお、SOFCシステム1bをSOECシステムとして用いる場合には、燃料ガス(CH4+H2O)に代えて、原料ガス(H2O+CO2)をカソード流路に供給し、電源72からSOECスタック(SOC1~SOC5)に電力を供給し、電解を行う。この場合も、状態検出装置60でカソードの酸化状態を監視しながら電解を行う。
また、あるSOECスタックのカソードが酸化状態となった時は、SOEC作動を休止させる。次いで、開閉バルブV12~V52の全部又は一部を開とし、カソードが酸化状態にあるSOECスタック(SOC1~SOC5)に還元ガスを供給する。これにより、カソードが還元状態に再生される。
[B.2. 再生プログラム(1)]
図10に、アノードの還元処理を行うためのプログラムであって、図9に示すSOFCシステム1bで用いられる再生プログラム(1)のフローチャートを示す。なお、図10に示す再生プログラム(1)は、SOECシステムにおいても使用することができる。
まず、S11において、要求発電(又は、電解)電力Wを読み込む。次に、S12において、状態検出装置60を用いて、各SOFCスタックの酸化状態Roxy,i(i=1~n、nはSOFCスタックの数)を検出する。
次に、S13において、各SOFCスタックの酸化状態Roxy,iに対して、酸化状態が小さい順(還元状態が大きい順)に順位j(j=1~n)を割り当て、順位jの情報が付加された酸化状態Roxy,i,jをメモリに記憶させる(序列化手段)。
次に、S14において、作動スタック係数k(1≦k≦n)を設定する。「作動スタック係数k」とは、要求発電電力Wを賄うために必要なSOFCスタックの数をいう。m番目のSOFCスタックの最大発電電力Wmは既知であるので、要求発電電力Wが分かれば、作動スタック係数kを容易に算出することができる。
次に、S15において、順位jが1~kであるSOFCスタック(すなわち、アノードが還元状態にあるSOFCスタック)を作動させ、発電(又は、電解)を行う。
次に、S16に進む。S16では、順位jが1~kであるSOFCスタックが稼働している時に、順位jがk+1~nであるSOFCスタック(すなわち、アノードが酸化状態にあるSOFCスタック)を休止させ、還元処理を行う(選択還元手段、優先還元手段)。還元処理の方法は、特に限定されないが、図9に示すSOFCシステム1bにおいては、外部の還元ガス供給源から還元ガスが供給される。
次に、S17に進む。S17では、システムを停止させるか否かが判断される。発電を継続する場合(S17:NO)には、S11に戻り、上述したS11~S17の各ステップを繰り返す。一方、システムを停止させる場合(S17:YES)には、制御を終了させる。
[C. 再生方法(2):アノードオフガスを用いた再生]
[C.1. SOFCシステム(2)]
図11に、本発明の第3の実施の形態に係るSOFCシステムの模式図を示す。図11において、SOFCシステム1cは、複数個のSOFCスタック(SOC1~SOC5)と、状態検出装置60と、制御装置(図示せず)とを備えている。制御装置には、後述するアノードの還元処理を行うための再生プログラム(2)が格納されている。
SOFCシステム1cは、改質器(図示せず)を備えた合計5個のSOFCスタック(SOC1~SOC5)を備えている。各SOFCスタック(SOC1~SOC5)は、ガスの流れに対して並列に接続されている。各SOFCスタック(SOC1~SOC5)のアノード流路の入口は、それぞれ、開閉バルブV11~V51を介して、燃料ガス(CH4+H2O)供給源に接続されている。
これとは別に、各SOFCスタック(SOC1~SOC5)のアノード流路の入口には、それぞれ、開閉バルブV12~V52が接続されている。
各SOFCスタック(SOC1~SOC5)のアノード流路の出口には、それぞれ、三方弁V13~V53が接続されている。各三方弁V13~V53の一方の出口は外界に接続され、他方の出口は、それぞれ、開閉弁V12~V52の入口に接続されている。
すなわち、本実施の形態において、休止中のSOFCスタック(SOC1~SOC5)のアノードを再生するための還元ガスとして、稼働中のSOCスタック(SOC1~SOC5)のアノードオフガス(改質ガス)が用いられる。この点が、第2の実施の形態とは異なる。
SOFCシステム1cに関するその他の点については、第2の実施の形態に係るSOFCシステム1bと同様であるので、説明を省略する。
[C.2. 再生プログラム(2)]
図12に、アノードの還元処理を行うためのプログラムであって、図11に示すSOFCシステム1cで用いられる再生プログラム(2)のフローチャートを示す。なお、図12に示す再生プログラム(2)は、SOECシステムにおいても使用することができる。
まず、S21において、要求発電(又は、電解)電力Wを読み込む。次に、S22において、状態検出装置60を用いて、各SOFCスタックの酸化状態Roxy,i(i=1~n、nはSOFCスタックの数)を検出する。
次に、S23において、各SOFCスタックの酸化状態Roxy,iに対して、酸化状態が小さい順(還元状態が大きい順)に順位j(j=1~n)を割り当て、順位jの情報が付加された酸化状態Roxy,i,jをメモリに記憶させる(序列化手段)。
次に、S24において、作動スタック係数k(1≦k≦n)を設定する。作動スタック係数の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
次に、S25において、順位jが1~kであるSOFCスタック(すなわち、アノードが還元状態にあるSOFCスタック)を作動させ、発電(又は、電解)を行う。
次に、S26に進む。S26では、順位jが1~kであるSOFCスタックが稼働している時に、順位jがk+1~nであるSOFCスタック(すなわち、アノードが酸化状態にあるSOFCスタック)を休止させ、還元処理を行う(選択還元手段、優先還元手段)。図11に示すSOFCシステム1cにおいては、還元ガスとして、アノードオフガス(改質ガス)が用いられる。
すなわち、三方弁V13~V53、及び開閉弁V12~V52を開閉することにより、稼働状態にあるSOFCのアノード流路の出口と休止状態にあるSOFCのアノード流路の入口を連結する。また、休止状態にあるSOFCのアノード流路の出口は、外界に接続する。これにより、稼働状態にあるSOFCのアノードオフガスを用いて、休止状態にあるSOFCのアノードの還元処理を行うことができる。
次に、S27に進む。S27では、システムを停止させるか否かが判断される。発電を継続する場合(S27:NO)には、S21に戻り、上述したS21~S27の各ステップを繰り返す。一方、システムを停止させる場合(S27:YES)には、制御を終了させる。
[2. SOECシステム]
本発明に係るSOECシステムは、以下の構成を備えている。
(1)前記SOECシステムは、
カソードに原料ガス(H2O及び/又はCO2)を供給し、電極間に電力を供給することにより可燃性ガス(H2及び/又はCO)を得るSOECと、
前記カソードの酸化/還元状態を検出するための状態検出装置と、
前記SOECシステムの動作を制御する制御装置と
を備えている。
(2)前記カソードは、Niサーメットからなる。
(3)前記SOECのカソード側エンドプレートには観察窓が設けられ、
前記状態検出装置は、前記観察窓を介して前記カソードの酸化/還元状態を検出し、前記酸化/還元状態を表す出力値を出力するものからなる。
(4)前記制御装置は、前記出力値を用いて、前記カソードが酸化状態にあるか否かを判定する判定手段を備えている。
[2.1. SOEC]
SOECは、カソードに原料ガス(H2O及び/又はCO2)を供給し、電極間に電力を供給することにより可燃性ガス(H2及び/又はCO)を得るためのものである。SOECのカソードは、Niサーメットからなる。SOECのカソード側エンドプレートには観察窓が設けられている。
SOECは、用途が異なる以外はSOFCと同様の構成を備えている。SOFCの詳細については上述した通りであるので、説明を省略する。
[2.2. 状態検出装置]
状態検出装置は、カソードの酸化/還元状態を検出するためのものである。状態検出装置は、観察窓を介してカソードの酸化/還元状態を検出し、酸化/還元状態を表す出力値を出力することが可能なものであれば良い。状態検出装置としては、例えば、
(a)カソードの色度を検出する色度検出装置、
(b)カソードの放射率を検出する放射率検出装置
などがある。
状態検出装置の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[2.3. 温度検出装置]
SOECシステムは、カソードの温度を検出する温度検出装置をさらに備えていても良い。温度検出装置の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[2.4. 制御装置]
制御装置は、SOECシステム(すなわち、SOEC及び状態検出装置、並びに、温度検出装置)の動作を制御するためのものである。本実施の形態において、制御装置は、これらの一般的な動作を制御するための手段に加えて、以下のような手段をさらに備えている。
[2.4.1. 判定手段]
制御装置は、状態検出装置からの出力値を用いて、カソードが酸化状態にあるか否かを判定する判定手段を備えている。判定手段の詳細については、SOFCシステムと同様であるので、説明を省略する。
[2.4.2. 補正手段]
上述したように、SOECシステムは、カソードの温度を検出する温度検出装置をさらに備えていてもよい。この場合、前記制御装置は、検出された前記温度を用いて、前記出力値を補正する補正手段をさらに備えているのが好ましい。補正手段の詳細については、SOFCシステムと同様であるので、説明を省略する。
[2.4.3. 再生手段]
[A. 概要]
前記制御装置は、前記カソードが酸化状態にあると判断された時には、前記SOECの休止期間中に前記カソードの還元処理を行う再生手段をさらに備えていても良い。カソードの再生方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の方法を用いることができる。再生手段としては、具体的には、
(a)還元ガス供給手段、
(b)リバーシブル作動手段
などがある。
[A.1. 還元ガス供給手段]
「還元ガス供給手段」とは、SOECが休止している期間中に、前記カソードに還元ガスを供給する手段をいう。還元ガスとしては、例えば、
(a)外部の還元ガス源から供給されるH2、COなどの還元ガス、
(b)SOECシステムが複数のSOECを備えている場合において、稼働しているSOECから排出されるカソードオフガス
などがある。
還元ガス供給手段に関するその他の点については、上述したSOFCシステムと同様であるので、説明を省略する。
[A.2. リバーシブル作動手段]
「リバーシブル作動手段」とは、休止しているSOECをSOFC作動させる手段をいう。上述したように、SOECを用いて電解を行った場合、カソード流路の入口側にあるNiは酸化状態となり、カソード流路の出口側にあるNiは還元状態となる。この場合、SOEC作動を停止させた後、原料ガス(H2O、CO2)と同一方向に燃料ガス(H2、CO、CH4)を流しながらSOFC作動させると、発電反応によりアノード流路(SOEC作動時はカソード流路)の入口側における還元性ガス(H2、CO)の濃度が増加する。その結果、カソード流路の入口側にあるNiを還元状態に戻すことができる。
[A.3. 選択還元手段]
制御装置は、選択還元手段をさらに備えていても良い。
ここで、「選択還元手段」とは、SOECシステムが複数個のSOECを備えている場合において、SOECシステムが稼働している時に、休止状態にあるSOECに対してのみ、カソードの還元処理を行う手段をいう。選択還元手段の詳細については、上述したSOFCシステムと同様であるので、説明を省略する。
[A.4. 序列化手段、優先還元手段]
制御装置は、序列化手段、及び優先還元手段をさらに備えていても良い。
ここで、「序列化手段」とは、複数個のSOECに対して、酸化状態の序列を付与する手段をいう。
「優先還元手段」とは、SOECシステムが序列化手段を備えている場合において、SOECシステムが稼働している時に、序列の高い酸化状態にあるSOECを優先的に休止させ、還元処理を行う手段をいう。
序列化手段及び優先還元手段の詳細については、上述したSOFCシステムと同様であるので、説明を省略する。
[2.5. システムの具体例]
[2.5.1. SOECシステム(1)]
図13に、本発明の第1の実施の形態に係るSOECシステムの模式図を示す。図13において、SOECシステム2aは、観察窓46aを備えたSOECスタック10’と、状態検出装置60とを備えている。状態検出装置60は、観察窓46aの近傍に設置されている。図13において、カソードガスは紙面の左から右に向かって流れ、アノードガスは紙面の下から上に向かって流れる。そのため、観察窓46a及び状態検出装置60は、それぞれ、カソード流路の入口側に設置されている。
カソード流路に原料ガス(H2O及び/又はCO2)を供給しながら、電極間に電力を供給すると、電気分解により可燃性ガス(H2及び/又はCO)が発生する。この時、状態検出装置60を用いてカソードの色度、放射率などを測定すると、カソードの酸化状態を知ることができる。
[2.5.2. SOECシステム(2)]
図14に、本発明の第2の実施の形態に係るSOECシステムの模式図を示す。図14において、SOECシステム2bは、複数個のSOECスタック(SOC1~SOC5)と、状態検出装置60と、制御装置(図示せず)とを備えている。
SOECシステム2bは、合計5個のSOECスタック(SOC1~SOC5)を備えている。各SOECスタック(SOC1~SOC5)は、ガスの流れに対して並列に接続されている。各SOECスタック(SOC1~SOC5)のカソード流路の入口は、それぞれ、開閉バルブV11~V51を介して、原料ガス(H2O+CO2)供給源に接続されている。
これとは別に、各SOECスタック(SOC1~SOC5)のカソード流路の入口には、それぞれ、開閉バルブV12~V52が接続されている。
また、各SOECスタック(SOC1~SOC5)のカソード流路の出口には、それぞれ、三方弁V13~V53が接続されている。各三方弁V13~V53の一方の出口は、外界に接続されている。外界に排出されるカソードオフガスの処理方法は、特に限定されない。例えば、カソードオフガスは、高濃度のH2及びCOを含んでいるので、これを用いて炭化水素を製造することができる。
また、各三方弁V13~V53の他方の出口は、それぞれ、開閉弁V12~V52の入口に接続されている。すなわち、本実施の形態において、カソードを再生するための還元ガスとして、カソードオフガス(H2、CO、合成ガス)が用いられる。すなわち、稼働状態にあるSOECから排出されるカソードオフガスを休止状態にあるSOECのカソード流路に供給し、カソードの還元処理を行う。この点が、第1の実施の形態とは異なる。SOECシステム2bに関するその他の点については、上述したSOFCシステム1cと同様であるので、説明を省略する。
[3. R-SOCシステム]
本発明に係るR-SOCシステムは、以下の構成を備えている。
(1)前記R-SOCシステムは、
燃料ガスから電力を生成するSOFCモードと、原料ガス(H2O及び/又はCO2)から可燃性ガス(H2及び/又はCO)を生成させるSOECモードとを切替可能なリバーシブルSOC(R-SOC)と、
前記燃料ガス又は前記原料ガスが供給される第1電極の酸化/還元状態を検出するための状態検出装置と、
前記R-SOCシステムの動作を制御する制御装置と
を備えている。
(2)前記第1電極は、Niサーメットからなる。
(3)前記R-SOCの第1電極側エンドプレートには観察窓が設けられ、
前記状態検出装置は、前記観察窓を介して前記第1電極の酸化/還元状態を検出し、前記酸化/還元状態を表す出力値を出力するものからなる。
(4)前記制御装置は、前記出力値を用いて、前記第1電極が酸化状態にあるか否かを判定する判定手段を備えている。
[3.1. R-SOC]
リバーシブルSOC(R-SOC)は、燃料ガスから電力を生成するSOFCモードと、原料ガス(H2O及び/又はCO2)から可燃性ガス(H2及び/又はCO)を生成させるSOECモードとを切替可能なものからなる。R-SOCの第1電極(SOFC作動時はアノード、SOEC作動時はカソード)は、Niサーメットからなる。また、R-SOCの第1電極側エンドプレートには、観察窓が設けられている。
R-SOCは、用途が異なる以外はSOFCと同様の構成を備えている。SOFCの詳細については上述した通りであるので、説明を省略する。
[3.2. 状態検出装置]
状態検出装置は、前記燃料ガス又は前記原料ガスが供給される第1電極の酸化/還元状態を検出するためのものである。状態検出装置は、観察窓を介して第1電極の酸化/還元状態を検出し、酸化/還元状態を表す出力値を出力することが可能なものであれば良い。状態検出装置としては、例えば、
(a)カソードの色度を検出する色度検出装置、
(b)カソードの放射率を検出する放射率検出装置
などがある。
状態検出装置の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[3.3. 温度検出装置]
R-SOCシステムは、第1電極の温度を検出する温度検出装置をさらに備えていても良い。温度検出装置の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[3.4. 改質器]
R-SOCシステムは、改質器をさらに備えていても良い。改質器は、炭化水素及び水蒸気を含む改質用原料ガスを改質流路に供給することによって改質ガスを生成させるためのものである。生成した改質ガスは、SOFC作動時に、燃料ガスとしてR-SOCの第1電極側のガス流路(以下、「第1ガス流路」ともいう)に供給される。
改質器に関するその他の点については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[3.5. 制御装置]
制御装置は、R-SOCシステム(すなわち、R-SOC及び状態検出装置、並びに、温度検出装置及び改質器)の動作を制御するためのものである。本実施の形態において、制御装置は、これらの一般的な動作を制御するための手段に加えて、以下のような手段をさらに備えている。
[3.5.1. 判定手段]
制御装置は、状態検出装置からの出力を用いて、第1電極が酸化状態にあるか否かを判定する判定手段を備えている。判定手段の詳細については、SOFCシステムと同様であるので、説明を省略する。
[3.5.2. 補正手段]
上述したように、R-SOCシステムは、第1電極の温度を検出する温度検出装置をさらに備えていてもよい。この場合、前記制御装置は、検出された前記温度を用いて、前記出力値を補正する補正手段をさらに備えているのが好ましい。補正手段の詳細については、SOFCシステムと同様であるので、説明を省略する。
[3.5.3. 再生手段]
[A. 概要]
前記制御装置は、前記第1電極が酸化状態にあると判断された時には、前記R-SOCの休止期間中に前記第1電極の還元処理を行う再生手段をさらに備えていても良い。第1電極の再生方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の方法を用いることができる。再生手段としては、具体的には、
(a)還元ガス供給手段、
(b)リバーシブル作動手段
などがある。
[A.1. 還元ガス供給手段]
「還元ガス供給手段」とは、R-SOCが休止している期間中に、前記第1電極に還元ガスを供給する手段をいう。還元ガスとしては、例えば、
(a)外部の還元ガス源から供給されるH2、COなどの還元ガス、
(b)R-SOCシステムが改質器を備えている場合において、改質器から供給される改質ガス、
(c)R-SOCシステムが複数のR-SOCを備えている場合において、稼働しているR-SOCの第1電極から排出されるオフガス
などがある。
還元ガス供給手段に関するその他の点については、上述したSOFCシステム及びSOECシステムと同様であるので、説明を省略する。
[A.2. リバーシブル作動手段]
「リバーシブル作動手段」とは、前記R-SOCをSOFC作動からSOEC作動に、又は、SOEC作動からSOFC作動に切り替える手段をいう。
上述したように、SOFCモードで発電を行った場合、第1ガス流路の入口側にあるNiは還元状態となり、第1ガス流路の出口側にあるNiは酸化状態となる。一方、SOECモードで電解を行った場合、第1ガス流路の入口側にあるNiは酸化状態となり、第1ガス流路の出口側にあるNiは還元状態となる。そのため、適時に作動モードを切り替えると、酸化状態にあるNiを還元状態に戻すことができる。
[A.3. 選択還元手段]
制御装置は、選択還元手段をさらに備えていても良い。
ここで、「選択還元手段」とは、R-SOCシステムが複数個のR-SOCを備えている場合において、R-SOCシステムが稼働している時に、休止状態にあるR-SOCに対してのみ、第1電極の還元処理を行う手段をいう。選択還元手段の詳細については、上述したSOFCシステムと同様であるので、説明を省略する。
[A.4. 序列化手段、優先還元手段]
制御装置は、序列化手段、及び優先還元手段をさらに備えていても良い。
ここで、「序列化手段」とは、複数個のR-SOCに対して、酸化状態の序列を付与する手段をいう。
「優先還元手段」とは、R-SOCシステムが序列化手段を備えている場合において、R-SOCシステムが稼働している時に、序列の高い酸化状態にあるR-SOCを優先的に休止させ、還元処理を行う手段をいう。
序列化手段及び優先還元手段の詳細については、上述したSOFCシステムと同様であるので、説明を省略する。
[3.6. システムの具体例]
[3.6.1. R-SOCシステム(1)]
図15に、本発明の第1の実施の形態に係るR-SOCシステムの模式図を示す。図15において、R-SOCシステム3aは、観察窓46a、46aを備えたR-SOCスタック10”と、状態検出装置60、60とを備えている。R-SOCスタック10”は、第1ガス流路(図示せず)の入口側及び出口側に、それぞれ、観察窓46a、46aが設けられている。また、状態検出装置60、60は、それぞれ、観察窓46a、46aの近傍に設置されている。
図15において、SOFC作動時には、アノードガスは紙面の左から右に向かって流れ、カソードガスは紙面の下から上に向かって流れる。一方、SOEC作動時には、カソードガスは紙面の左から右に向かって流れ、アノードガスは紙面の下から上に向かって流れる。そのため、第1ガス流路の入口側及び出口側に、それぞれ、観察窓46a及び状態検出装置60を設置すると、R-SOCスタック10”の作動モードによらず、還元処理をすべきか否かを的確に判定することができる。
R-SOCスタック10”の第1ガス流路に燃料ガスを供給し、第2ガス流路(第2電極側のガス流路)に酸化剤ガスを供給すると、電極反応が進行し、電力が発生する。この時、状態検出装置60を用いて第1電極の色度、放射率などを測定すると、SOFC作動時における第1電極の酸化状態を知ることができる。
同様に、第1ガス流路に原料ガス(H2O及び/又はCO2)を供給しながら、電極間に電力を供給すると、電気分解により可燃性ガス(H2及び/又はCO)が発生する。この時、状態検出装置60を用いて第1電極の色度、放射率などを測定すると、SOEC作動時における第1電極の酸化状態を知ることができる。
[3.6.2. SOECシステム(2)]
図16に、本発明の第2の実施の形態に係るR-SOCシステムの模式図を示す。図16において、R-SOCシステム3bは、複数個のR-SOCスタック(SOC1~SOC5)と、状態検出装置60と、制御装置(図示せず)とを備えている。
R-SOCシステム3bは、改質器(図示せず)を備えた合計5個のR-SOCスタック(SOC1~SOC5)を備えている。各R-SOCスタック(SOC1~SOC5)は、ガスの流れに対して並列に接続されている。各R-SOCスタック(SOC1~SOC5)の第1ガス流路の入口は、それぞれ、開閉バルブV11~V51を介して、燃料ガス供給源(CH4+H2O)又は原料ガス(H2O+CO2)供給源に接続されている。
各R-SOCスタック(SOC1~SOC5)の第1ガス流路の出口は、外界に接続されている。第1ガス流路から排出されるオフガスの処理方法は、特に限定されない。
本実施の形態において、第1電極の還元処理は、リバーシブル作動により行われる。そのため、R-SOCシステム3bでは、第1電極に還元ガスを供給するための手段(還元処理用配管、バルブ等)を備えていない。この点が上述したSOFCシステム及びSOECシステムとは異なる。
R-SOCシステム3bに関するその他の点については、上述したSOFCシステム及びSOECシステムと同様であるので、説明を省略する。
[3.6.3. 再生プログラム(3)]
図17に、序列の高い酸化状態にあるR-SOCスタックを優先的に休止させ、還元処理を行うためのプログラムであって、図16に示すR-SOCシステム3bで用いられる再生プログラム(3)のフローチャートを示す。
まず、S31において、要求発電(又は、電解)電力Wを読み込む。次に、S32において、状態検出装置60を用いて、各R-SOCスタックの酸化状態Roxy,i,p(i=1~n、nはR-SOCスタックの数、p=1(出口側)、又は2(入口側))を検出する。
次に、S33において、各R-SOCスタックの酸化状態Roxy,i,pに対して、酸化状態が小さい順(還元状態が大きい順)に順位j(j=1~n)を割り当て、順位jの情報が付加された酸化状態Roxy,i,j,pをメモリに記憶させる(序列化手段)。
次に、S34において、作動スタック係数k(1≦k≦n)を設定する。作動スタック係数の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
次に、S35において、順位jが1~kであるR-SOCスタック(すなわち、第1電極が還元状態にあるR-SOCスタック)を作動させ、発電(又は、電解)を行う。この場合、SOFCモードである時には、第1ガス流路の出口側(p=1)の酸化状態Roxy,i,j,pに基づいて序列を決定する。一方、SOECモードである時には、第1ガス流路の入口側(p=2)の酸化状態Roxy,i,j,pに基づいて序列を決定する。
次に、S36に進む。S36では、システムを停止させるか否かが判断される。稼働を継続する場合(S36:NO)には、S31に戻り、上述したS31~S36の各ステップを繰り返す。一方、システムを停止させる場合(S36:YES)には、制御を終了させる。
図18に、複数個のR-SOCスタックに対して、酸化状態の序列を付与する方法の模式図を示す。図18は、第1ガス流路の入口側(p=2)及び出口側(p=1)について、それぞれ、酸化状態Roxy,i,j,pを模式的に示している。
図18の左図(フルスタック50MW(10MW×5台)中、30MW(3台)でSOFC作動)において、第1ガス流路の出口側(p=1)の酸化状態Roxy,i,j,pは、スタック4(SOC4)が最も大きく、次いで、スタック5(SOC5)、スタック1(SOC1)の順になっている。各スタックの酸化状態Roxy,i,j,pがこのような序列にある場合において、R-SOCシステムをリバーシブル作動(SOEC作動)させる時には、スタック4、5、1を選択する。これにより、酸化状態の大きいスタックの第1電極を還元状態に戻すことができる。
一方、図18の右図(フルスタック50MW(10MW×5台)中、40MW(4台)でSOEC作動)において、第1ガス流路の入口側(p=2)の酸化状態Roxy,i,j,pは、スタック1(SOC1)が最も大きく、次いで、スタック2(SOC2)、スタック3(SOC3)、スタック4(SOC4)の順になっている。各スタックの酸化状態Roxy,i,j,pがこのような序列にある場合において、R-SOCシステムをリバーシブル作動(SOFC作動)させる時には、スタック1、2、3、4を選択する。これにより、酸化状態の大きいスタックの第1電極を還元状態に戻すことができる。
[4. 作用]
[4.1. 観察窓を介したアノードの酸化状態の検出]
SOFC発電におけるアノード流路では、電極反応により燃料であるH2及びCOは酸化されて、それぞれ、H2O及びCO2となる。このため、アノード流路の出口側では、高濃度のH2O及びCO2により酸素分圧が増大する。また、高燃料利用率の作動条件では、H2O及びCO2がより高濃度となる。さらに、スタックの休止・再起動時では、改質器及びスタックの温度は低く、改質効率が低下する。そのため、高濃度のH2Oがアノード流路に流入し、酸素分圧が上昇する可能性がある。
低い酸素分圧下では、アノード触媒であるNiは還元状態にある。電解質を介してカソードから移動してきた酸素イオンと、アノードガス中のH2、COとがNi触媒上で反応し、電子と生成ガス(H2O、CO2)を生成することで、発電が行われる。
ここで、アノード流路内の酸素分圧が高い場合、Niは高い温度(700~800℃)、高い酸素分圧雰囲気下において酸化し、NiOとなる。アノード中のNiの酸化が進行すると、酸素イオンとの反応性が低下するため、発電はアノード触媒の反応律速となる。そのため、アノード分極抵抗が増大し、発電性能が低下する。
これに対し、セルスタックを構成する積層体の両端セルの内、アノード流路を最外とするセルを検出セルとし、流路出口側のアノード集電板、及び絶縁板に観察用の穴を設け、隣接する金属板には観察窓(石英等の高温で赤外線を透過可能な窓)を設置する。また、アノード流路から外部へのガスリークがないように、金属板と観察窓との界面にシール材(セラミックス接着剤等)を塗布する。これにより、外部からアノード中のNiの状態を観察・測定することができる。すなわち、監視カメラ(RGB信号、又はL*、a*、b*)などの状態観察装置を用いて、スタック外部から、観察窓を介してNiの状態を観察・測定することができる。
Ni触媒は、酸化/還元状態により表面の色が緑/灰色と異なる。還元状態であるNiは、灰色であるが、酸化反応によりグラデーションを持ちながら徐々に緑色のNiOへと変化していく。ここで、事前にSOFC作動温度におけるNiの酸化/還元状態の変化を監視カメラにより計測し、アノード触媒の酸化/還元状態と色度との相関関係を把握しておく。これにより、実際に作動しているスタックを、観察窓を介して監視カメラにより認識することにより、酸化/還元状態を検出することができる。
あるいは、発電出力が低下したスタックを放射温度計により放射率を測定することで、Ni触媒の酸化状態を検出することができる。また、アノードの状態が分かると、性能低下の要因がNi酸化による電極触媒劣化であるか否かが分かる。さらに、Ni触媒の酸化によりスタックの起電力が低下しことが判明した場合には、次の式(5)、又は式(6)に示すように、還元処理によりNi触媒を再生することができる。
NiO+H2 → Ni+H2O ・・・(5)
NiO+CO → Ni+CO2 ・・・(6)
[4.2. 放射率測定によるNiの酸化/還元状態の検出]
Ni触媒は、酸化/還元状態により表面の色が緑/灰色と異なる。還元状態であるNiは灰色であるが、酸化によりグラデーションを持ちながら徐々に緑色へと変化してゆく。これは、赤外線カメラを用いた放射温度測定により、放射率の変化として認識することができる。放射温度計では計測対象の材料表面の放射率を設定し、温度を色の変化で認識・計測する。そのため、ガス雰囲気によりベースライン(材料表面の色)が変化する場合、材料表面の放射率が変化するので、温度計測が困難となる。
そこで、測定対象の表面に熱電対等の温度計測手段を設置し、赤外線画像と温度を同時に測定する。これにより、ガス雰囲気によるNi触媒の色の変化を放射率の変化として検出することが可能となる。
ここで、Ni触媒の表面温度の検出手段(熱電対等)を備えたSOFCシステムを用いて、事前にSOFC作動温度におけるNiの酸化/還元状態の色の変化を放射温度計により放射率として計測しておく。これにより、アノード触媒の酸化/還元状態を実際に作動しているスタックの観察窓を介して、放射率として検出することができる。
温度検出手段は、2つの熱電対ペアとし、各熱電対の先端とアノードの間には絶縁材(セラミックス材料等)を挿入する。また、2つの熱電対の先端間の距離をa、アノードに近い熱電対の先端からアノードまでの距離をbとする。これにより、電極触媒からの漏電を防止できるだけでなく、2点間の熱流束を測定することにより、正確なアノード表面温度を測定することが可能となる。
さらに、発電出力が低下したスタックの放射率を放射温度計により測定することで、Ni触媒の酸化状態を検出することができる。また、これによって、性能低下要因がNi酸化による電極触媒劣化であるか否かを知ることができる。
[4.3. 酸化状態が進行しているSOFCスタックの優先還元]
大規模発電(分散電源、セントラル電源)では、電力需要に応じ、幅広い出力レンジ(50kW~50MW)が求められる。しかし、大規模出力のスタックを製造すること、及び、単一の大規模スタックを用いて幅広い出力レンジに対応することは、いずれも困難である。このような場合には、複数スタックの可変切換え制御により、要求電力に追従作動させるのが好ましい。
また、SOFC発電では、長期間作動における安定作動、及び性能劣化の抑制が求められる(具体的には、起電力の低下率が初期起電力の1%/1000hr以内)。SOFCの長時間作動では、
(a)(La,Sr)系カソード触媒から電解質(YSZ)へのLa、Srの拡散、及び、La、Srとの反応による電解質の劣化、
(b)ステンレス鋼製の配管、マニホールドなどの構成部材からのクロミアの蒸発、及びCrによるカソード触媒の被毒に起因する性能劣化、
(c)アノード触媒(Niサーメット)内のNi酸化による性能劣化、
(d)その他の不純物(Si等)による性能劣化
が発生する。
他の劣化要因と異なり、Niの酸化/還元は可逆反応であるため、アノード中の酸化したNiは、還元反応により酸化前のNiの状態に戻すことができる。
すなわち、アノード流路の出口側では、電極反応による反応生成物(H2O、CO2)の濃度が増大するため、酸素分圧が高くなる。その結果、アノード流路の出口側では、酸化反応により、NiはNiOへと変化する。特に、アノードと電解質の界面近傍では電気化学反応が活発であるため、界面近傍でNi酸化が起こると、触媒反応速度が大きく低下するだけでなく、触媒活性点として失活する。その結果、電気化学反応は、アノード触媒が反応律速段階となる。
一方、アノードがNiOを含む場合において、高温(700~800℃)にてアノード流路に還元ガス(H2、COを含むガス)を流すと、還元反応によりNiOがNiに戻る。その結果、ほぼ元のアノード触媒性能を再現できる。
そこで、セル起電力の低下(初期起電力に対し1%以上の低下率)、及びスタック最外セルのアノード(出口側)の放射率低下を検出した場合、発電動作を他のスタックに切り換える。また、性能低下したスタックは、優先的に休止期間中にNi触媒の再生(還元ガスなどによるNiOの還元処理)を行う。還元処理中のスタックは継続して放射率が検出され、初期の放射率となるまで還元処理が行われる。このような複数スタックの作動切り換え、及び休止期間中における還元処理を行うことにより、長期間における高い発電性能を維持することが可能となる。
[4.4. アノードオフガスを用いたSOFCのアノードの還元処理]
還元処理では、より短時間で初期の発電性能に復元するために、高いSOFCスタック温度と、高い還元ガス(CO、H2等)濃度のガス雰囲気が求められる。また、性能が低下したスタックの還元処理は、スタックの休止期間中に行われる。
休止スタックの還元処理の際には、高い温度レベルが要求されるため、放熱要因となる低温カソードガスの流入を停止させる。この状態で、休止スタックのアノードに、発電中のスタックから排出されるアノードオフガスを流す。これにより、アノードオフガス(650~700℃)からの持ち込み顕熱により休止スタックの温度を維持することができる。また、休止スタックに高濃度の還元ガス(72dry%H2、10dry%CO)を供給することで、NiO還元における高い反応速度を確保し、短時間で元のNi触媒に復元することができる。
還元処理中のアノード触媒の酸化/還元状態は、放射率により知ることができる。放射率が元のNi触媒の放射率に復元した場合、休止スタックへのアノードオフガス供給を停止させる。複数スタックがあるシステムでは、各スタックの放射率がそれぞれ検出・記録されており、要求発電出力により休止スタックの還元処理を行う。特に、性能低下が顕著なスタックを優先的に還元処理し、還元処理が完了したら、次の性能低下スタックに還元処理を切り換える。複数個のスタックを備えたシステムにおいて、性能が低下したスタックの休止及び還元処理を行うことにより、SOFC発電性能低下要因の一つであるアノード触媒の酸化による性能低下を大幅に抑制し、長期的に安定した発電性能を提供することができる。
[5.5. 合成ガスを用いたSOECのカソードの還元処理]
SOEC作動では、電解原料(H2O、CO2)をカソード触媒(Niサーメット)へ供給し、電力を供給することで電解反応により合成ガス(CO、H2)を生成する。特に、カソードの入口側では、電解原料(H2O、CO2)の供給により高い酸素分圧となるため、カソード触媒は酸化反応によりNiOとなる。そのため、カソード触媒/電解質界面近傍におけるカソード触媒の反応速度が低下するだけでなく、触媒活性が失活する。その結果、カソード分極抵抗が増大し、電解性能が低下する。
「再生可能エネルギーを用いて合成ガスを液体/気体炭化水素燃料に変換する燃料貯蔵システム」、あるいは、「分散電源又はセントラル電源における電力供給/需要のミスマッチを解消するための電力変換・貯蔵システム」においては、大きな負荷変動を伴う。特に、大規模システム(50MWクラス)では、日/季節周期で要求電解電力が大きな振幅(50kW~50MW)を伴い変動するため、複数スタックによる切り換え作動による高い過渡応答性が求められる。
カソード流路の入口側は、高酸素分圧となるため、Ni酸化が進行しやすい。そこで、各SOECスタックの最外セルにあるカソード流路の入口側に、カソード触媒の状態が観察可能な窓を設置し、放射温度計により外部からカソードの放射率を検出する。これにより、電解反応によるカソード触媒の酸化状態を把握することができる。
各スタックでは、それぞれ電解電圧とカソード流路の入口における電極触媒の放射率が検出される。セル電圧の上昇(例えば、初期値からの性能低下率が0.5%以上)、及び放射率の変化が検出された時は、そのスタックを休止させると同時に、初期性能が確保されているスタックに切り換える。休止期間中のスタックは、酸化状態がより進んでいるスタックから優先的に還元処理が行われる。
カソード触媒の還元処理は、高温(700~800℃)にて還元ガス(高濃度のH2、COを含むガス)により行われる。ここで、電解作動中のスタックからのカソードオフガス(60%H2、20%CO)が、休止期間中のスタックに供給される。カソードオフガス(700~800℃)の持ち込みガス顕熱により、高温度・高濃度のH2+CO還元ガスで再生処理が行われる。そのため、速い速度でNi還元反応が進行し、短時間での復元が可能となる。
[4.6. リバーシブル作動による還元処理]
SOFC及びSOECでは、ほぼ同じ作動温度(700~800℃)において、発電反応又は電解反応が進行する。また、SOFC作動では、アノード流路の出口側において高いH2O、CO2濃度が形成される。一方、SOEC作動では、カソード流路の入口側において高いH2O、CO2濃度が形成される。このような酸素分圧分布により、アノード流路の出口側又はカソード流路の入口側において電極触媒の酸化が進行し、電極性能の劣化により発電性能又は電解性能が低下する。
これに対し、リバーシブル作動においては、ガス雰囲気分布と酸化Niの還元分布が一致する。そのため、SOFCスタック/SOECスタックの性能低下及びNi酸化が検出された時には、連続的にリバーシブル作動(SOEC作動/SOFC作動)に切り換えることにより、酸化したNi触媒(出口側/入口側)を還元雰囲気(高濃度のH2+COガス)に曝露することができる。
複数個のスタックを備えたシステムにおいて、各スタックのNi酸化状態を検出し、酸化状態が進行しているスタックから優先的にリバーシブル作動させると、還元処理プロセスを簡略化することができる。
また、スタック最外セルのセル電圧を検出し、かつ、第1ガス流路の入口側及び出口側の双方にNi触媒の放射率を検出するための観察窓を設けることで、SOFC作動及びSOEC作動のいずれのモードにある場合でも、Ni触媒の酸化による性能低下を把握することができる。
さらに、各スタックのセル電圧及び放射率を検出し、酸化により性能が低下したスタックを優先的にリバーシブル作動させることで、還元処理のための追加的な設備・制御回路を設置することなく、発電/電解性能を長期的に確保することができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明に係るSOFCシステム、SOECシステム、及びR-SOCシステムは、再生可能エネルギー(太陽光、風力等)の余剰電力貯蔵・利用システム、分散形電源などに用いることができる。
1a~1c SOFCシステム
2a、2b SOECシステム
3a、3b R-SOCシステム
10 固体酸化物形燃料電池(SOFC)
10’ 固体酸化物形電解セル(SOEC)
10” リバーシブルSOC(R-SOC)
46a 観察窓
60 状態検出装置

Claims (24)

  1. 以下の構成を備えたSOFCシステム。
    (1)前記SOFCシステムは、
    アノードに燃料ガスを供給し、カソードに酸化剤ガスを供給することにより電力を得る固体酸化物形燃料電池(SOFC)と、
    前記アノードの酸化/還元状態を検出するための状態検出装置と、
    前記SOFCシステムの動作を制御する制御装置と
    を備えている。
    (2)前記アノードは、Niサーメットからなる。
    (3)前記SOFCのアノード側エンドプレートには観察窓が設けられ、
    前記状態検出装置は、前記観察窓を介して前記アノードの酸化/還元状態を検出し、前記酸化/還元状態を表す出力値を出力するものからなる。
    (4)前記制御装置は、前記出力値を用いて、前記アノードが酸化状態にあるか否かを判定する判定手段を備えている。
  2. 前記状態検出装置は、
    (a)前記アノードの色度を検出する色度検出装置、又は、
    (b)前記アノードの放射率を検出する放射率検出装置
    である請求項1に記載のSOFCシステム。
  3. 前記アノードの温度を検出する温度検出装置をさらに備え、
    前記制御装置は、前記温度を用いて、前記出力値を補正する補正手段をさらに備えている請求項1又は2に記載のSOFCシステム。
  4. 前記制御装置は、前記アノードが酸化状態にあると判断された時には、前記SOFCが休止している期間中に、前記アノードの還元処理を行う再生手段をさらに備えている請求項1から3までのいずれか1項に記載のSOFCシステム。
  5. 複数個の前記SOFCを備え、
    前記再生手段は、前記SOFCシステムが稼働している時に、休止状態にある前記SOFCに対してのみ、前記アノードの還元処理を行う選択還元手段を含む請求項4に記載のSOFCシステム。
  6. 前記制御装置は、複数個の前記SOFCに対して、酸化状態の序列を付与する序列化手段をさらに備え、
    前記再生手段は、前記SOFCシステムが稼働している時に、序列の高い酸化状態にある前記SOFCを優先的に休止させ、還元処理を行う優先還元手段を含む請求項5に記載のSOFCシステム。
  7. 前記再生手段は、
    (a)前記SOFCが休止している期間中に、前記アノードに還元ガスを供給する還元ガス供給手段、又は、
    (b)休止している前記SOFCをSOEC作動させるリバーシブル作動手段
    を含む請求項4から6までのいずれか1項に記載のSOFCシステム。
  8. 前記還元ガス供給手段は、稼働している前記SOFCから排出されるアノードオフガスを前記還元ガスに用いて、休止状態にある前記SOFCの還元処理を行うものからなる請求項7に記載のSOFCシステム。
  9. 以下の構成を備えたSOECシステム。
    (1)前記SOECシステムは、
    カソードに原料ガス(H2O及び/又はCO2)を供給し、電極間に電力を供給することにより可燃性ガス(H2及び/又はCO)を得るSOECと、
    前記カソードの酸化/還元状態を検出するための状態検出装置と、
    前記SOECシステムの動作を制御する制御装置と
    を備えている。
    (2)前記カソードは、Niサーメットからなる。
    (3)前記SOECのカソード側エンドプレートには観察窓が設けられ、
    前記状態検出装置は、前記観察窓を介して前記カソードの酸化/還元状態を検出し、前記酸化/還元状態を表す出力値を出力するものからなる。
    (4)前記制御装置は、前記出力値を用いて、前記カソードが酸化状態にあるか否かを判定する判定手段を備えている。
  10. 前記状態検出装置は、
    (a)前記カソードの色度を検出する色度検出装置、又は、
    (b)前記カソードの放射率を検出する放射率検出装置
    である請求項9に記載のSOECシステム。
  11. 前記カソードの温度を検出する温度検出装置をさらに備え、
    前記制御装置は、前記温度を用いて、前記出力値を補正する補正手段をさらに備えている請求項9又は10に記載のSOECシステム。
  12. 前記制御装置は、前記カソードが酸化状態にあると判断された時には、前記SOECが休止している期間中に、前記カソードの還元処理を行う再生手段をさらに備えている請求項9から11までのいずれか1項に記載のSOECシステム。
  13. 複数個の前記SOECを備え、
    前記再生手段は、前記SOECシステムが稼働している時に、休止状態にある前記SOECに対してのみ、前記カソードの還元処理を行う選択還元手段を含む請求項12に記載のSOECシステム。
  14. 前記制御装置は、複数個の前記SOECに対して、酸化状態の序列を付与する序列化手段をさらに備え、
    前記再生手段は、前記SOECシステムが稼働している時に、序列の高い酸化状態にある前記SOECを優先的に休止させ、還元処理を行う優先還元手段を含む請求項13に記載のSOECシステム。
  15. 前記再生手段は、
    (a)前記SOECが休止している期間中に、前記カソードに還元ガスを供給する還元ガス供給手段、又は、
    (b)休止している前記SOECをSOFC作動させるリバーシブル作動手段
    を含む請求項12から14までのいずれか1項に記載のSOECシステム。
  16. 前記還元ガス供給手段は、稼働している前記SOECから排出されるカソードオフガスを前記還元ガスに用いて、休止状態にある前記SOECの還元処理を行うものからなる請求項15に記載のSOECシステム。
  17. 以下の構成を備えたR-SOCシステム。
    (1)前記R-SOCシステムは、
    燃料ガスから電力を生成するSOFCモードと、原料ガス(H2O及び/又はCO2)から可燃性ガス(H2及び/又はCO)を生成させるSOECモードとを切替可能なリバーシブルSOC(R-SOC)と、
    前記燃料ガス又は前記原料ガスが供給される第1電極の酸化/還元状態を検出するための状態検出装置と、
    前記R-SOCシステムの動作を制御する制御装置と
    を備えている。
    (2)前記第1電極は、Niサーメットからなる。
    (3)前記R-SOCの第1電極側エンドプレートには観察窓が設けられ、
    前記状態検出装置は、前記観察窓を介して前記第1電極の酸化/還元状態を検出し、前記酸化/還元状態を表す出力値を出力するものからなる。
    (4)前記制御装置は、前記出力値を用いて、前記第1電極が酸化状態にあるか否かを判定する判定手段を備えている。
  18. 前記状態検出装置は、
    (a)前記第1電極の色度を検出する色度検出装置、又は、
    (b)前記第1電極の放射率を検出する放射率検出装置
    である請求項17に記載のR-SOCシステム。
  19. 前記第1電極の温度を検出する温度検出装置をさらに備え、
    前記制御装置は、前記温度を用いて、前記出力値を補正する補正手段をさらに備えている請求項17又は18に記載のR-SOCシステム。
  20. 前記制御装置は、前記第1電極が酸化状態にあると判断された時には、前記R-SOCが休止している期間中に、前記第1電極の還元処理を行う再生手段をさらに備えている請求項17から19までのいずれか1項に記載のR-SOCシステム。
  21. 複数個の前記R-SOCを備え、
    前記再生手段は、前記R-SOCシステムが稼働している時に、休止状態にある前記R-SOCに対してのみ、前記第1電極の還元処理を行う選択還元手段を含む請求項20に記載のR-SOCシステム。
  22. 前記制御装置は、複数個の前記R-SOCに対して、酸化状態の序列を付与する序列化手段をさらに備え、
    前記再生手段は、前記R-SOCシステムが稼働している時に、序列の高い酸化状態にある前記R-SOCを優先的に休止させ、還元処理を行う優先還元手段を含む請求項21に記載のR-SOCシステム。
  23. 前記再生手段は、
    (a)前記R-SOCが休止している期間中に、前記第1電極に還元ガスを供給する還元ガス供給手段、又は、
    (b)前記R-SOCをSOFC作動からSOEC作動に、又は、SOEC作動からSOFC作動に切り替えるリバーシブル作動手段
    を含む請求項20から22までのいずれか1項に記載のR-SOCシステム。
  24. 前記還元ガス供給手段は、稼働している前記R-SOCの第1電極側から排出されるオフガスを前記還元ガスに用いて、休止状態にある前記R-SOCの還元処理を行うものからなる請求項23に記載のR-SOCシステム。
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