以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、図面において、同一であるか又は機能的に類似している要素を示すために図面間で同じ参照符号を用いる。
なお、以下において、人眼の網膜を被検査物として説明するが、被検査物はこれに限られず、例えば、人眼の前眼部等を被検査物としてもよい。
[第1の実施形態]
図1乃至6を参照しながら、被検眼の眼底等の画像の取得に用いられる、本発明の第1の実施形態による眼底撮影装置について、以下に詳細に説明する。本実施形態はOCTとSLOの共通光路上とSLOの専用光路上にそれぞれフォーカス機構を備えた眼底撮影装置において、OCTとSLOのフォーカスが連動するモードとOCTのフォーカスを調整するモードとをモード切替えボタンの指示により切り換えを実行し、選択されているモードを表示状態によって報知することで、現在のモードを検者にとって判りやすくする例である。
(装置構成)
本実施形態による眼底撮影装置の一態様としての眼底撮影装置100について、図1を用いて説明する。本実施形態の眼底撮影装置100には、OCT光学系、SLO光学系、前眼観察光学系、固視灯光学系、制御部190(制御手段)、表示部198(表示手段)、及び入力部199が設けられている。なお、本実施形態では、光学系の全体は、主にミラーを用いた反射光学系で構成されている。
また、制御部190は、汎用のコンピュータを用いて構成されてもよいし、眼底撮影装置100の専用のコンピュータとして構成されてもよい。同様に表示部198と入力部199はそれぞれ汎用のディスプレイとマウスやキーボードを用いて構成されてもよいし、装置専用のモニタと操作パネルやボタンとして構成されてもよい。なお、制御部190、表示部198、入力部199は、OCT光学系、SLO光学系、前眼観察光学系、及び固視灯光学系を備えた撮影部と別個に構成されてもよいし、一体的に構成されてもよい。
まず、眼底撮影装置100のOCT光学系について説明する。光源101は、光(低コヒーレント光)を発生させるための光源である。本実施形態では、光源101として、中心波長が830nm、帯域が50nmであるSLD(Super Luminescent Diode)を用いている。本実施形態ではSLDを選択したが、光源の種類としては、低コヒーレント光を出射できる光源であればよく、ASE(Amplified Spontaneous Emission)等も用いることができる。なお、光源101は制御部190に接続されており、制御部190によって制御される。
また、光源101から出射される光の波長は、眼を測定することを鑑みて近赤外光に対応する波長とすることができる。さらに光源101から出射される光の波長は、得られる断層画像の横方向の分解能に影響するため、なるべく短波長とすることができ、本実施形態では中心波長を830nmとする。なお、観察対象の測定部位によっては、他の波長を選んでもよい。また、波長の帯域は広いほど深さ方向の分解能が良くなる。一般的に中心波長が830nmの場合、50nmの帯域では6μmの分解能、100nmの帯域では3μmの分解能である。なお、光源101の中心波長や帯域はこれに限られず、所望の構成に応じて変更されてよい。
光源101から出射された光は、シングルモードファイバー142を通って、光分割手段である光カプラー141に導かれる。光源101から出射された光は、光カプラー141において強度比90:10で分割され、それぞれ参照光103及びOCT測定光104となる。なお、分割の比率はこれに限らず、被検査物に合わせて適切に選択されることができる。
次に、参照光103の光路について説明する。光カプラー141にて分割された参照光103はシングルモードファイバー143を通って、レンズ151に導かれ、平行光として出射される。次に、参照光103は、分散補償用ガラス159を透過し、ミラー111,112によって、参照ミラーであるミラー124に導かれる。本実施形態では、参照ミラーとして平面ミラーを用いている。ミラー124で反射された光は、再び、ミラー112及びミラー111に順次反射され、分散補償用ガラス159を透過して、光カプラー141に導かれる。
分散補償用ガラス159は、OCT測定光104が被検眼Eとレンズ154を往復したときの分散を、参照光103に対して補償することができる。
ミラー124は、電動ステージ125に搭載されており、光路長調整手段を構成する。電動ステージ125は、矢印で図示しているように参照光103の光軸方向に移動することができ、ミラー124の位置を移動させることで参照光103の光路長を調整することができる。電動ステージ125は制御部190によって制御される。
次に、OCT測定光104の光路について説明する。光カプラー141により分割されたOCT測定光104は、シングルモードファイバー145を介して、レンズ154に導かれ、平行光として出射される。
次に、OCT測定光104は、ダイクロイックミラー177及びビームスプリッター171を透過し、ミラー113,114によって反射され、収差補正手段であるデフォーマブルミラー182に入射する。ここで、デフォーマブルミラー182は、収差測定手段である波面センサ181にて検知した収差に基づいて、OCT測定光104とOCT戻り光105との収差を、ミラー形状を自在に変形させることで補正するミラーデバイスである。
本実施形態では、収差補正手段としてデフォーマブルミラーを用いたが、収差補正手段は収差を補正できればよく、液晶を用いた空間光位相変調器等を用いることもできる。また、本実施形態では、収差測定手段としてシャックハルトマン型の波面センサ181を用いている。しかしながら、収差測定手段はこれに限られず、収差を測定するための既知の任意のセンサ等を用いて構成されてよい。デフォーマブルミラー182及び波面センサ181は、制御手段である制御部190により制御される。
OCT測定光104は、デフォーマブルミラー182によって反射された後、ミラー115,116によって反射され、ダイクロイックミラー173に入射する。ここで、ダイクロイックミラー173,174は、光の波長に応じて、光源101からの光を反射し、光源102からの光を透過させる。
ダイクロイックミラー173で反射されたOCT測定光104は、Xスキャナ132(第2の走査手段)に入射する。OCT測定光104の中心はXスキャナ132の回転中心と一致するように調整されており、Xスキャナ132を回転させることで、OCT測定光104を用いて被検眼Eの網膜Er上を光軸に垂直な方向にスキャンすることができる。ここでは、Xスキャナ132としてガルバノミラーを用いる。Xスキャナ132は、他の任意の偏向ミラーによって構成されてもよい。なお、図示しないがXスキャナ132は制御部190に接続されており、制御部190によって制御される。
Xスキャナ132によって反射されたOCT測定光104は、ダイクロイックミラー174によって反射された後、ミラー117~120によって順次反射される。
ミラー119,120は、電動ステージ126に搭載されており、第1のフォーカス手段を構成する。電動ステージ126は、矢印で図示しているように、ミラー118,121に近づく又はこれらから離れる方向に移動することができる。電動ステージ126は制御部190により制御される。なお、ミラー119,120は、OCT光学系とSLO光学系の共通光路内に配置されている。そのため、電動ステージ126によりミラー119,120を移動させることで、被検眼Eの視度に対応してOCT測定光104及びSLO測定光106のフォーカス状態を調整することができる。
本実施形態では、電動ステージ126の移動範囲を160mmとしており、被検眼Eの-12D~+7Dの視度範囲に対応してOCT測定光104及びSLO測定光106のフォーカス位置を調整することができる。なお、電動ステージ126の移動範囲は所望の構成により任意に設定されてよい。
ここで、本実施形態において、OCT光学系とSLO光学系の共通光路に配置される第1のフォーカス手段は、ミラー119,120の反射光学系によるバダル光学系によって構成される。反射光学系を用いることにより、波面センサ181へ不要な迷光が入ることを防ぐことができ、精度のよい収差測定及び収差補正を行うことができる。
ミラー120によって反射されたOCT測定光104は、ミラー121,122によって反射され、Yスキャナ133(第1の走査手段)に入射する。OCT測定光104の中心はYスキャナ133の回転中心と一致するように調整されており、Yスキャナ133を回転させることで、OCT測定光104を用いて網膜Er上を光軸及びXスキャナ132のスキャン方向と垂直な方向にスキャンすることができる。ここでは、Yスキャナ133としてガルバノミラーを用いる。Yスキャナ133は、他の任意の偏向ミラーによって構成されてもよい。
なお、図示しないがYスキャナ133は制御部190に接続されており、制御部190によって制御される。Xスキャナ132及びYスキャナ133は、OCT測定光104を被検眼Eの眼底上で二次元方向に走査する、OCT走査手段を構成する。
Yスキャナ133によって反射されたOCT測定光104は、ミラー123に反射され、ダイクロイックミラー175,176を透過し、被検眼Eへ入射する。Xスキャナ132、Yスキャナ133、及びミラー117~123はOCT測定光104を用いて網膜Erをスキャンするための光学系として機能する。当該光学系により、OCT測定光104を用いて、瞳孔Epの付近を支点として網膜Erをスキャンすることができる。
OCT測定光104は被検眼Eに入射すると、網膜Erによって反射又は散乱され、OCT戻り光105として、OCT測定光104の光路を戻り、再び光カプラー141に導かれる。
参照光103とOCT戻り光105とは、光カプラー141にて合波され、干渉光となる。ここで、OCT測定光104及びOCT戻り光105の光路長と参照光103の光路長とがほぼ等しい状態となったときに、OCT戻り光105と参照光103は互いに干渉し、干渉光となる。制御部190は電動ステージ125を制御しミラー124を移動させることで、被検眼Eの被測定部によって変わるOCT測定光104及びOCT戻り光105の光路長に参照光103の光路長を合わせることができる。合波された光108(干渉光)は、シングルモードファイバー144から空間光として出射され、レンズ152を通って透過型グレーティング161に導かれる。そして、光108は、透過型グレーティング161によって波長毎に分光され、レンズ153で集光され、ラインカメラ191に入射する。
ラインカメラ191に入射した光108は、ラインカメラ191上の位置(波長)毎に光強度に応じた電圧信号(干渉信号)に変換される。具体的には、ラインカメラ191上には波長軸上のスペクトル領域の干渉縞が観察されることになる。得られた電圧信号群はデジタル値に変換される。制御部190は、デジタル値に変換された干渉信号にデータ処理を施すことで、被検眼Eの断層情報である断層画像を生成することができる。また、制御部190は、生成した断層画像(断層情報)を表示部198に表示する情報表示制御部を兼ねる。なお、断層画像を生成する際のデータ処理は、干渉信号から断層画像(断層情報)を生成するための既知の任意のデータ処理であってよい。
なお、シングルモードファイバー142及び143には、偏光調整用パドル183,184が設けられている。偏光調整用パドル183,184はシングルモードファイバー142,143を通る光の偏光を調整することができる。偏光調整用パドル183,184を用いることで、光源101からの光の偏光状態を調整したり、OCT戻り光105と参照光103の偏光状態が一致するように、参照光103の偏光を調整したりすることができる。なお、偏光調整用パドルを設ける位置はこれに限られず、シングルモードファイバー145等に設けられてもよい。
ところで、OCT戻り光105は、OCT測定光104の光路を戻る際に、ビームスプリッター171によって分割され、一部が波面センサ181に入射する。波面センサ181は、入射したOCT戻り光105の収差を測定する。本実施形態において、ビームスプリッター171は、OCT戻り光105の一部を反射し、後述するSLO戻り光107を透過させる。これにより、OCT戻り光105の収差を選択的に測定することができる。波面センサ181は制御部190に電気的に接続されている。制御部190は、波面センサ181からの出力をツェルニケ多項式に当てはめることで、波面センサ181によって測定された被検眼Eの有する収差を把握する。
制御部190は、ツェルニケ多項式のデフォーカスの成分について、電動ステージ126を用いてミラー119,120の位置を制御して、被検眼Eの視度を補正する。また、制御部190は、デフォーカス以外の成分については、デフォーマブルミラー182の表面形状を制御して補正する。これにより、制御部190は、高横分解能な断層画像を生成(取得)することができる。
ここで、瞳孔Ep、Xスキャナ132、Yスキャナ133、波面センサ181、及びデフォーマブルミラー182が光学的に共役になるように、ミラー113~123が配置される。これにより、波面センサ181は被検眼Eの有する収差を測定することができる。
次に、SLO光学系について説明する。光源102は、光源101とは異なる波長の光を発生させるための光源である。本実施形態では、光源102として波長780nmのSLDを用いる。SLO光学系の光源102の種類は、これに限られず、光源102としてLD(Laser Diode)等を用いることもできる。また、光源102の波長もこれに限られず、所望の構成に応じて変更されてよい。なお、光源102は制御部190に接続されており、制御部190によって制御される。
光源102から出射された光はレンズ155に導かれ、平行光として出射される。レンズ155を透過した光は、ビームスプリッター172に導かれ、透過光と反射光(SLO測定光106)の強度比が90:10で分割される。ビームスプリッター172によって反射されたSLO測定光106は、フォーカスレンズ157及びレンズ158を透過する。
フォーカスレンズ157は、電動ステージ127に搭載されており、第2のフォーカス手段を構成する。電動ステージ127は、矢印で図示しているようにSLO測定光106の光軸方向に移動することができ、SLO測定光106のフォーカス状態を調整することができる。電動ステージ127は制御部190によって制御される。
制御部190は、電動ステージ127を制御してフォーカスレンズ157を移動させることで、OCT測定光104のフォーカス位置と異なる位置にSLO測定光106のフォーカス位置を合わせることができる。ここでは、電動ステージ127の移動範囲を10mmとし、当該移動範囲は-2D~+2Dの視度範囲に対応している。なお、電動ステージ127の移動範囲はこれに限られず、電動ステージ126の移動範囲よりも狭い任意の移動範囲に設定されてよい。
本実施形態では、第1のフォーカス手段を用いてOCT測定光104及びSLO測定光106のフォーカス調整を行い被検眼Eの視度補正を行うため、第2のフォーカス手段のフォーカス調整範囲は狭く抑えることができる。そのため、電動ステージ127の移動範囲は、電動ステージ126の移動範囲に対して狭くすることができる。従って、より小型のステージを用いてOCT光学系及びSLO光学系の焦点位置を異なる位置に合わせることができるため、光学系を小型化することができる。
なお、図1ではフォーカスレンズ157を凸レンズ、レンズ158を凹レンズとして図示しているが、フォーカスレンズ157及びレンズ158の構成はこれに限らない。フォーカスレンズ157を凹レンズ、レンズ158を凸レンズとしてもよいし、両方を凸レンズにして、これらの間に中間像を形成する構成としてもよい。
フォーカスレンズ157及びレンズ158を透過した光は、ダイクロイックミラー177へ向かう。ダイクロイックミラー177は、光の波長に応じて、光源101からの光を透過させ、光源102からの光を反射する。ダイクロイックミラー177で反射されたSLO測定光106は、OCT測定光104との共通光路を通って、ダイクロイックミラー173に入射する。ここで、SLO測定光106とOCT測定光104の共通光路には、ダイクロイックミラー177、ビームスプリッター171、ミラー113,114、デフォーマブルミラー182、ミラー115,116、及びダイクロイックミラー173が含まれる。
ダイクロイックミラー173,174は、光の波長に応じて、光源101からの光を反射させ、光源102からの光を透過させる。このため、ミラー116で反射されたSLO測定光106は、ダイクロイックミラー173を透過し、Xスキャナ131(第3の走査手段)に入射する。SLO測定光106の中心はXスキャナ131の回転中心と一致するように調整されており、Xスキャナ131を回転させることで、SLO測定光106を用いて網膜Er上を光軸に垂直な方向にスキャンすることができる。なお、図示しないがXスキャナ131は制御部190に接続されており、制御部190によって制御される。Xスキャナ131及びYスキャナ133はSLO測定光106を被検眼Eの眼底上で二次元方向に走査するSLO走査手段を構成する。
本実施形態では、ダイクロイックミラー173によりOCT測定光104の光路とSLO測定光106の光路を分岐させ、OCT測定光104のXスキャナ132とSLO測定光106のXスキャナ131を別に配置する構成としている。OCT測定光104のスキャン速度は、ラインカメラ191の読み出し速度により制限される。これに対し、OCT測定光104のXスキャナ132とSLO測定光106のXスキャナ131を別にすることで、SLO測定光106のスキャン速度を上げることができる。これにより、SLO光学系を用いた眼底正面画像の取得のフレームレートを上げることができる。本実施形態では、Xスキャナ131として共振ミラーを用いているが、所望の構成に応じて任意の偏向ミラーを用いてもよい。
Xスキャナ131で反射されたSLO測定光106は、ダイクロイックミラー174を透過し、再びOCT測定光104との共通光路を通って被検眼Eへ入射する。ここで、SLO測定光106とOCT測定光104との共通光路には、ダイクロイックミラー174、ミラー117~122、Yスキャナ133、ミラー123、及びダイクロイックミラー175,176が含まれる。ここで、SLO測定光106とOCT測定光104との共通光路についてまとめると、当該共通光路には、ダイクロイックミラー177~ダイクロイックミラー173の光路、及びダイクロイックミラー174~ダイクロイックミラー176の光路が含まれる。
SLO測定光106は、被検眼Eに入射すると網膜Erによって反射又は散乱され、SLO戻り光107として、SLO測定光106の光路を戻り、ダイクロイックミラー177で反射された後、ビームスプリッター172を透過する。ビームスプリッター172を透過したSLO戻り光107は、レンズ156で集光されピンホール板178を通過する。ピンホール板178のピンホール位置は眼底と共役な位置に調整されており、ピンホール板178は共役点以外からの不要な光を遮光する共焦点絞りとして作用する。
ピンホール板178を通過したSLO戻り光107は、受光素子192で受光される。本実施形態では、受光素子192としてAPD(Avalanche Photo Diode)を用いるが、所望の構成に応じて他の任意の受光素子が用いられてもよい。受光素子192は受光した光を光強度に応じて電圧信号に変換する。得られた電圧信号群はデジタル値に変換される。制御部190はデジタル値に変換された受光素子192の出力信号にデータ処理を施し、眼底正面画像を生成することができる。また、制御部190は、生成した眼底正面画像を表示部198に表示する。なお、眼底正面画像を生成する際のデータ処理は、受光素子192からの出力信号から眼底正面画像を生成するための既知の任意のデータ処理であってよい。
次に、固視灯光学系について説明する。固視灯光学系は、ダイクロイックミラー175及び固視灯パネル194から構成される。
ダイクロイックミラー175は、光の波長に応じて、固視灯パネル194の可視光を反射し、光源101及び光源102からの光を透過させる。これにより、固視灯パネル194に表示されるパターンがダイクロイックミラー175を介して被検眼Eの網膜Erに投影される。固視灯パネル194に所望のパターンを表示することで、被検眼Eの固視方向を指定し、撮影する網膜Erの範囲を設定することができる。本実施形態では、固視灯パネル194として有機ELパネルを用いるが、他のディスプレイが用いられてもよい。なお、固視灯パネル194は制御部190に接続されており、制御部190によって制御される。
次に、前眼観察光学系について説明する。前眼観察光学系は、ダイクロイックミラー176、前眼観察カメラ193及び不図示の前眼照明光源から構成される。
ダイクロイックミラー176は、光の波長に応じて、前眼照明光源の赤外光を反射させ、固視灯パネル194の可視光、並びに光源101及び光源102からの光を透過させる。前眼観察カメラ193の光軸は、OCT光学系及びSLO光学系の光軸と一致するように調整されている。このため、前眼観察カメラ193からの出力に基づく被検眼Eの前眼部の画像を表示部上で観察して基準位置に合わせることで、被検眼Eに対するOCT光学系及びSLO光学系のX方向及びY方向の位置合わせ(アライメント)を行うことができる。なお、前眼観察カメラ193は制御部190に接続されており、制御部190によって制御される。
また、前眼観察カメラ193のフォーカスは、OCT光学系及びSLO光学系のワーキングディスタンス(Z方向の作動距離)と一致したときに、被検眼Eの虹彩にピントが合うように調整されている。そのため、前眼部の画像における虹彩を表示部上で観察してピントを合わせることで、OCT光学系及びSLO光学系のZ方向の位置合わせを行うことができる。本実施形態では前眼照明光源として波長が970nmのLEDを用い、前眼観察カメラ193としてCCDカメラを用いる。しかしながら、前眼照明光源及び前眼観察カメラはこれに限られず、他の光源や撮影素子等を用いることもできる。また、前眼照明光源の波長もこれに限られず、所望の構成に応じて変更されてよい。
(撮影範囲の関係)
次に、図2を参照して、本実施形態におけるOCT光学系とSLO光学系の撮影範囲の関係について説明する。図2において、実線がOCT光学系の撮影範囲220、破線の枠内がSLO光学系の撮影範囲210を示しており、OCT光学系で1ライン撮影したときのOCT光学系の撮影範囲220とSLO光学系の撮影範囲210との関係を模式的に示している。
OCT光学系とSLO光学系は、Yスキャナ133を共通光路に配置しているため、Y方向(図2の紙面上下方向)には同時にスキャンされる。一方、Xスキャナとしては、Xスキャナ132とXスキャナ131の別々のスキャナを用いているため、OCT光学系とSLO光学系のX方向(図2の紙面左右方向)の撮影範囲はそれぞれ独立に設定されることができる。例えば、図2では、SLO光学系の撮影範囲210の略中央にOCT光学系の撮影範囲220を設定しているが、X方向の撮影範囲の関係はこれに限らない。OCT光学系の撮影範囲220はSLO光学系の撮影範囲210に関わらず、任意に設定してよい。
また、Xスキャナ131の共振ミラーは、ガルバノミラーよりスキャン速度が速いため、1回のY方向のスキャンの間に、SLO測定光106はX方向に複数回スキャンされる。そのため、例えば、長さLのOCT光学系の撮影範囲(1ライン)をm点のサンプリング(Aスキャン)で撮影し、L×LのSLO撮影範囲をm回のXスキャンで撮影することができる。これにより、OCT光学系で長さLの1ラインの断層画像を撮影する間に、SLO光学系でL×Lの眼底正面画像(二次元画像)を取得することができる。なお、L及びmの数値は、所望の構成に応じて任意に設定されてよい。
また、3Dボリューム画像を撮影する場合は、Yスキャナ133のスキャンに加えて、Xスキャナ132でOCT測定光104をスキャンし、上述したY方向の1ラインの撮影をXスキャナ132のスキャン位置を変更して繰り返す。例えば、X方向にLの範囲でmライン撮影することで、L×Lの3Dボリューム画像を取得することができる。また、この間にSLO光学系を用いてm枚のL×Lの眼底正面画像(二次元画像)を取得することができる。
(トラッキングの手順)
次に、SLO光学系を用いて取得した眼底正面画像(二次元画像)に基づく位置ずれ補正(トラッキング)の方法について説明する。
本実施形態のトラッキング処理では、制御部190は、OCT光学系を用いて同じ位置のライン断層画像を複数回撮影する際の1回目の撮影時に、SLO光学系を用いて取得した被検眼Eの眼底情報(第1の眼底情報)に基づく眼底正面画像を参照画像とする。次に、制御部190は、OCT光学系を用いた2回目以降の撮影時にSLO光学系を用いて取得した眼底情報(第2の眼底情報)に基づく眼底正面画像を位置ずれ検出のための対象画像とする。制御部190は、参照画像に対する対象画像の位置ずれ量を算出する。位置ずれ量の算出は、パターンマッチング等の画像処理で行うことができる。
制御部190は、算出された位置ずれ量を補正するように、Xスキャナ132及びYスキャナ133を制御する。これにより、制御部190は、固視微動等による眼底の移動に基づく断層画像の撮影位置のずれを補正する眼底トラッキングを行うことができる。なお、取得された複数枚の同じ位置のライン断層画像は、重ね合わせによる断層画像のノイズ低減処理等に用いることができる。
この眼底トラッキングは、OCT光学系を用いて3Dボリューム画像を取得する場合も同様に適用することができる。この場合には、前述のように、OCT光学系を用いてX方向の位置を変えながらY方向の1ラインの断層画像を繰り返し取得する。このとき、制御部190は、1回目(1ライン目)の撮影時に取得した被検眼Eの眼底情報に基づく眼底正面画像を参照画像とする。また、制御部190は、2回目(2ライン目)以降の撮影時に取得した眼底情報に基づく眼底正面画像を対象画像とする。制御部190は、参照画像と対象画像の位置ずれ量を算出し、眼底トラッキングを行う。これにより、3Dボリューム画像を取得する場合にも、被検眼Eの網膜Erに対する断層画像の撮影位置のずれを補正することができる。
なお、参照画像として、OCT光学系を用いた1回目の撮影時に、SLO光学系を用いて取得した眼底正面画像の全域を用いてもよいし、眼底正面画像の部分画像を用いてもよい。同様に、対象画像についても、SLO光学系を用いて取得した眼底正面画像の全域を用いてもよいし、眼底正面画像の部分画像を用いてもよい。なお、対象画像として眼底正面画像の部分画像を用いる場合には、対象画像の取得間隔を短縮することができ、眼底トラッキングの制御レートを上げることができる。これにより、眼底のより速い動きによる位置ずれを補正しやすくなる。
また、ここで、参照画像の画像サイズを対象画像の画像サイズより大きく設定してもよい。この場合、対象画像の画像サイズを小さく抑えて制御レートを維持しつつ、参照画像と対象画像の位置ずれ量が大きくても両画像の重なり領域を大きく確保しやすくなり、眼底の大きな動きによる位置ずれを補正しやすくなる。なお、眼底の動きが遅く、眼底トラッキングの制御レートに余裕がある場合は、対象画像の画像サイズを参照画像の画像サイズより大きく設定してもよい。この場合でも、眼底の大きな動きによる位置ずれの補正がしやすくなる。言い換えると、参照画像及び対象画像の一方の画像サイズを他方の画像サイズより大きく設定することで、眼底の大きな動きによる位置ずれを補正しやすくなる。
(眼底の撮影手順)
次に、図3及び図4を参照して、眼底撮影装置100における眼底の撮影手順を説明する。図3は、本実施形態に係る眼底の撮影手順のフローチャートであり、図4は表示部198に表示される制御ソフトの画面である。
まず、ステップS301において、検者が前眼照明光源ボタン411を押すと、制御部190は不図示の前眼照明光源を点灯する。前眼照明光源を点灯すると制御部190は、前眼観察カメラ193の出力に基づいて被検眼Eの前眼部の画像を生成し、表示部198に表示される制御ソフト画面の前眼部画像表示部401に表示させる。
ステップS302において、制御部190は、表示部401に表示された前眼部の画像に基づいて、OCT光学系及びSLO光学系が設けられた撮影部を被検眼Eに対してX、Y、及びZ方向の位置合わせ(前眼XYZアライメント)を行う。具体的には、検者が前眼部の画像を観察し、検者の入力に応じて制御部190が撮影部の不図示の駆動機構を制御して、被検眼Eに対して撮影部のアライメントを行う。前述したように、前眼観察カメラ193は、OCT光学系及びSLO光学系に対してX、Y、及びZ方向の位置が調整されている。そのため、検者は表示部401上に表示された前眼部の画像のXY位置及びピント(Z位置)が合うように撮影部のX、Y、及びZ方向の位置を調整することで、OCT光学系及びSLO光学系のX、Y、及びZ方向の位置合わせを行うことができる。なお、撮影部の位置合わせは不図示の撮影部の駆動機構を検者が操作して行ってもよい。
前眼XYZアライメントが完了したら、ステップS303において、検者が前眼照明光源ボタン411を再度押すことに応じて、制御部190が前眼照明光源を消灯する。
前眼照明光源を消灯したら、ステップS304において、検者が制御ソフト画面の光源ボタン412を押すことに応じて、制御部190がOCT光学系の光源101及びSLO光学系の光源102を点灯する。なお、OCT光学系の光源101を点灯するタイミングは、これに限らない。例えば、後述するステップS306のラフフォーカス調整の後に光源101を点灯してもよい。
SLO光学系の光源102が点灯したら、ステップ305において、検者が行う固視標位置の設定に応じて固視灯パネル194に表示する固視標の位置を設定し、撮影する網膜Erの範囲を設定する。具体的には検者は制御ソフト画面の固視灯位置調整部402のグリッドに対し、入力部199を用いて所望の位置を指定することで、指定された位置に対応した固視灯パネル194の領域に十字の固視標を点灯する。
次に制御部190は受光素子192の出力に基づいて眼底正面画像を生成し、制御ソフト画面の眼底表示部405に表示させる。ステップS306において、制御部190は、405に表示される眼底正面画像に基づく検者の入力に応じて、SLO光学系及びOCT光学系の大よそのフォーカス調整(ラフフォーカス調整)を行う。
具体的には、検者が表示部405の眼底正面画像を観察し、制御ソフト画面のフォーカス調整入力部415のフォーカス調整バー416を動かすことに応じて、制御部190が電動ステージ126を移動させる。電動ステージ126及びミラー119,120は、OCT測定光104とSLO測定光106との共通光路に配置されており、SLO測定光106のフォーカス調整を行うことにより、OCT測定光104も同時にラフフォーカス調整が行われる。ここでは、眼底正面画像の輝度が最大になるようにフォーカス調整を行う。
なお、この際、制御部190は、SLO光学系に設けられた電動ステージ127を予め設定された初期状態の位置に配置しておく。ここでは、電動ステージ127の初期状態の位置として、OCT測定光104とSLO測定光106のフォーカス位置が略一致するような電動ステージ127の位置が設定されている。
ラフフォーカス調整を行ったら、ステップS307において、制御部190は、制御ソフト画面に表示される波面センサ181の表示部403に表示されたハルトマン像の位置に基づく検者の入力に応じて、被検眼Eに対する撮影部のXYファインアライメントを行う。XYファインアライメントでは、検者が表示部403のハルトマン像の位置を観察し、制御部190が検者の入力に応じて被検眼Eに対し撮影部のX方向及びY方向の細密な位置合わせを行う。
ここで波面センサ181は、波面センサ181の中心位置がOCT光学系及びSLO光学系の光軸と合うように調整されている。そのため、検者はハルトマン像が波面センサ181の中心に合うように、被検眼Eに対して撮影部の位置を調整することで、OCT光学系及びSLO光学系のX方向及びY方向の位置合わせを行うことができる。なお、表示部403には、波面センサ181の中心位置に対応する指標等及びハルトマン像が表示されてよい。
XYファインアライメントを行ったら、ステップS308において、検者が制御ソフト画面の波面補正ボタン412を押すことに応じて、制御部190がデフォーマブルミラー182による波面補正を開始する。ここで制御部190は、波面センサ181で測定された収差に基づいてデフォーマブルミラー182の形状を変形させ、デフォーカス成分以外の被検眼Eの収差を補正する。ここで、デフォーマブルミラーを用いた収差補正の手法に関しては、既存の手法により行ってよいため、説明を省略する。
デフォーマブルミラー182は、OCT測定光104とSLO測定光106との共通光路に配置されている。このため、OCT測定光104についてデフォーマブルミラー182の形状を変形させて被検眼Eの収差を補正することにより、SLO測定光106についても被検眼Eの収差を補正することができる。
波面補正が開始されたら、ステップS309において、制御部190は参照光103の光路長を調整する。具体的には、検者が制御ソフト画面の参照光路長調整部413の参照光路長調整バー414を動かすことに応じて、制御部190が電動ステージ125を制御して参照光103の光路長を調整する。ここでは、制御部190は、OCT光学系を用いて取得された断層画像を制御ソフト画面の断層画像表示部404に表示し、検者による入力に応じて、断層画像における所望の層の像が断層画像表示領域内の所望の位置に合うように、参照光103の光路長を調整する。
参照光103の光路長が調整されたら、ステップS310において、制御部190はSLO光学系及びOCT光学系のフォーカス調整を行う。具体的には、検者が眼底正面画像および断層画像に基づいてフォーカス調整バー416を動かすことに応じて制御部190が電動ステージ126を制御してSLO光学系とOCT光学系の細密なフォーカス調整を行う。高横分解能の補償光学SLOの光学系では、眼底における測定光のNAが大きく焦点深度が浅いため、網膜Erの深さ方向について合焦位置付近の領域のみが画像化される。ステップS310では特に眼底正面画像について、検者が意図する網膜Erの深さ位置の画像が取得されるよう、フォーカス調整を行う。例えば、網膜表層の神経線維層を撮影したい場合、眼底正面画像に神経線維が描出されるよう、制御部190が電動ステージ126を制御してフォーカスを調整する。
眼底正面画像のフォーカスが調整されたら、ステップS311において、検者が制御ソフト画面の撮影ボタン418を押すことに応じて、制御部190は眼底トラッキングを実行しながら、同時に眼底断層画像及び眼底正面画像の取得を行う。具体的には、眼球運動検出手段として機能する制御部190が、上述のように、SLO光学系を用いて取得した眼底正面画像の特徴点から位置ずれ量を算出し、算出したずれ量に基づいてXスキャナ132及びYスキャナ133を制御することにより眼底トラッキングを行う。これと同時にOCT測定光104と参照光103との干渉光(光108)は、ラインカメラ191で受光され、電圧信号に変換される。さらに、得られた電圧信号群はデジタル値に変換されて、制御部190にてデータの保存及び処理が行われる。制御部190は干渉光に基づくデータを処理することで眼底断層画像を生成する。また、SLO戻り光107は、受光素子192で受光され、電圧信号に変換される。さらに、得られた電圧信号群はデジタル値に変換されて、制御部190にてデータの保存及び処理が行われる。制御部190はSLO戻り光107に基づくデータを処理することで眼底正面画像を生成する。眼底トラッキングと画像取得の同時実行により眼底撮影装置100は、画像の重ね合わせによるノイズ処理に用いる複数画像や、動画、断層画像の3Dボリューム等を、位置ずれを小さく抑えて取得できる。所定の数の平面画像と断層画像の取得が完了すると、制御部190は眼底トラッキングを終了する。なお、ステップ311での撮影は主に眼底正面画像取得を目的とした撮影である。同時に取得される断層画像はOCT測定光104とSLO測定光106のフォーカス位置が略一致しているから、眼底正面画像に映る網膜Erの深さ位置に対応した層にフォーカスが合った断層画像となる。
トラッキングの終了処理が終わるとステップ310に戻り、検者が深さ位置を変えて再び眼底正面画像を取得したい場合にはステップS310のSLO光学系及びOCT光学系のフォーカス調整及びステップS311の撮影が繰り返し実行される。
ここで、ステップS312とステップS310の関係について注釈する。S312とS310は眼底撮影装置100の処理としては全く同じである。但し、検者が目的とするフォーカスの調整状態が異なるためステップ番号は分けて記載している。従ってステップS311からステップS310に戻る矢印と、ステップS312に進む矢印は同じ状態遷移を表しており、遷移はS311でトラッキングの終了処理が完了した段階で発生する。ステップS310は先に記したように、眼底正面画像を検者が意図する深さ位置に合わせることが目的であるのに対し、ステップS312は次に記すように、眼底正面画像をトラッキングに適した位置に調整することが目的である。
ステップS312では、SLO光学系を用いて取得された眼底正面画像が眼底トラキングに適した画像になるようフォーカス調整が行われる。具体的には、検者がフォーカス調整バー416を動かすことに応じて、制御部190が電動ステージ126を制御する。ここでは、表示部上に表示された眼底正面画像の視細胞のコントラストが高くなるように、フォーカス調整が行われる。なお、SLO光学系のフォーカスを合わせる位置は、視細胞に限らない。SLO光学系のフォーカスを合わせる位置は、所望のトラッキング精度が達成できる為の特徴をもった眼底正面画像が取得できれば良く、血管等、他の特徴点を有する位置であってもよい。
眼底正面画像の視細胞のコントラストが高くなるようフォーカスが調整されたら、制御部190はステップS313においてフォーカス調整のモードを切替える。具体的には、検者がモードを選択する手段である制御ソフト画面のモード切替えボタン417を押下することによりモードが切り替わる。押下前はフォーカス調整バー416を動かすことによりSLO光学系とOCT光学系の両方のフォーカスが調整される第1のモードであるのに対し、押下後はOCT光学系のみが調整される第2のモードとなる。また、表示制御手段でもある制御部190は押下によってモード切替えボタン417を図5の450に示す表示に切替え、ボタン色とテキストで現在のモードを検者に報知する。
ここで、それぞれのモードについて詳細を説明する。第1のモードではフォーカス調整バー416の操作に伴い、制御部190が共通光路上に設けられた第1のフォーカス手段である電動ステージ126を制御し、SLO光学系とOCT光学系の両方のフォーカスを調整する。この第1のモードはOCTのフォーカスを調整する第1のフォーカス調整手段とSLOのフォーカスを調整する第2のフォーカス調整手段が連動するモードある。第2のモードではフォーカス調整バー416の操作に伴い、制御部190が共通光路上に設けられた第1のフォーカス手段である電動ステージ126を制御する。同時に、共通光路から分岐したSLO光学系の専用光路に配置された第2のフォーカス手段である電動ステージ127も制御する。この時、電動ステージ126による調整を打ち消す方向に電動ステージ127を制御することで、SLO光学系のフォーカス状態を変えることなく、OCT光学系のフォーカスだけを調整することができる。この第2のモードはOCTのフォーカスを調整する第1のフォーカス調整手段のみを制御するモードある。
なお、本実施形態では表示部198に表示されるモード設定部である切替えボタン417が色とテキストの変化によってモードの報知手段も兼ねるが、構成はこれに限らない。例えば図6に示すように、ボタン417が押下されると眼底正面画像表示部405を囲う枠451を表示しても良い。他にも制御ソフトの背景色やデザインの変化、フォーカス調整入力部415の変化などに加え、装置100に付帯するランプや音声機能、検者が認識可能な装置100の挙動変化など、表示部198への表示に限られない他の任意の報知手段で実現可能である。また、モード切替えボタン417も同様にトグルスイッチやチェックボックス等のソフトスイッチでも良いし、装置100に実装されたハードウェアのスイッチやボタン、レバーやタッチパッド、音声認識等の任意の切替え手段が適用可能である。
OCTのフォーカスのみが調整される第2のモードにすると、次にステップS314において、OCT光学系のフォーカス調整を行う。具体的には、検者が断層画像に基づいてフォーカス調整バー416を動かすことに応じて、制御部190が電動ステージ126と127を制御してOCT光学系だけのフォーカス調整を行う。補償光学OCTについても焦点深度の浅さから、網膜Erの深さ方向においてフォーカスが合う範囲は限定的となる。そのため、ステップS314では、特に撮影したい網膜Erの層にOCT測定光104のフォーカスが合うようにフォーカス調整が行われる。例えば、網膜表層の血管を撮影したい場合、断層画像を確認しながらその部分の輝度が最大になるように、制御部190が電動ステージ126と127を制御してOCT測定光104のフォーカスを調整する。ステップS314では第2のモードであるから電動ステージ127は電動ステージ126の調整を打ち消す方向に制御され、SLO光学系のフォーカスはステップS312で調整された位置から変化しない。
OCT光学系のフォーカス調整が済んで検者が制御ソフト画面の撮影ボタン418を押下すると、ステップS315に進み、制御部190は眼底トラッキングを実行しながら、同時に眼底断層画像及び眼底正面画像の取得を行う。ここでの処理はステップS311と同じだが、眼底正面画像はステップS312により眼底トラキングに適した網膜Erの深さ位置にフォーカスされた状態を保ちつつ、正面画像とは異なるフォーカス位置で断層画像が取得できる。つまり、補償光学SLOの光学系を用いて取得した眼底正面画像を用いて精度のよい眼底トラッキングを行いながら、補償光学OCTの光学系を用いて、網膜Erの所望の層にフォーカスを合わせて高解像度でSN比のよい眼底断層画像を撮影できる。所定の数の平面画像と断層画像の取得が完了すると、制御部190は眼底トラッキングを終了し、ステップS314に戻る。
ここで、検者が網膜Erの別の層にフォーカスを変えて再び断層画像を取得したい場合にはステップS314のOCT光学系のフォーカス調整及びステップS315の撮影が繰り返される。
次に、以下のいずれかのケースでは検者が制御ソフト画面のモード切替えボタン450を押下することにより、ステップS316に進み、フォーカス調整のモードの切替えが実行される。
ケース1:ステップS314とS315を繰返して撮影を進めるにつれ、被検眼や被験者の状態により眼底正面画像がステップS312で調整した眼底トラキングに適した深さ位置から外れたり、コントラストが低下したりした場合
ケース2:ステップS314とS315を繰返して撮影を進めるにつれ、被検眼や被験者の状態により断層画像のコントラスト低下やフォーカス位置の把握が困難となり、一度SLO光学系とOCT光学系を同じフォーカス位置に戻したい場合
ケース3:眼底上の撮影位置を変え、これに伴い眼底正面画像のフォーカスを再調整したい場合
ステップS316では、検者が制御ソフト画面のモード切替えボタン450を押下することにより、SLO光学系とOCT光学系の両方のフォーカスが調整される第1のモードへの切替えが実行される。また、押下によってモード切替えボタンは450の表示から417の表示に戻り、モード1であることを検者に報知する。またステップS316において制御部190は電動ステージ127を制御して、OCT光学系とSLO光学系のフォーカス位置が略一致するような電動ステップ127の初期状態の位置に戻す。これにより前述のケース1、2、3において、それぞれステップS312、S310、S305に戻って再度フォーカス調整を行う際に、前回これらを実施した時と同じく、SLO光学系とOCT光学系のフォーカス位置が略一致した状態でフォーカス調整が可能になる。なお、本実施例ではステージ127だけを初期状態へ帰還することでステップS314において設定されたOCT光学系のフォーカス位置に略一致するようにSLO光学系のフォーカス位置が変更される構成とした。しかしながら、ステージ127の初期状態への帰還と同時にステージ126も位置調整してステップS312で設定されたSLO光学系のフォーカス位置に略一するようにSLO光学系のフォーカス位置を変更しても良い。また、ステージ127の初期状態を設定で可変としても良いし、フォーカスの帰還方式を、帰還しない設定も含めて複数用意して、選択可能としても良い。
また、本実施形態では、SLO測定光のフォーカスを固定するモードについて説明したが、OCT光学系の光路側にフォーカス機構を設けて、OCT測定光のフォーカスを固定する構成としてもよい。それにより、SLO光学系により異なるフォーカス位置の複数の眼底正面画像を取得できる。
以上のように、本実施形態では、補償光学を有するSLOとOCTの複合装置において、SLOとOCTの両フォーカスが連動するモードとOCTのフォーカスとSLOのフォーカスが連動しないモードとを切替えながら撮影する際に、現在のモード、即ち、フォーカス調整の対象画像が検者にとって判りやすくなる。
[第2の実施形態]
図7乃至14を参照しながら、本発明の第2の実施形態による眼底撮影装置700について説明する。本実施形態はOCTとSLOの各々の専用光路にフォーカス手段を備えた眼底撮影装置において、OCTとSLOのフォーカスが連動するモードとOCTのフォーカスを調整するモードとをフォーカス調整部の表示によって報知することで、現在のモードを検者にとって判りやすくする例である。第1の実施形態とはフォーカス手段の構成とモード報知のための表示内容において異なる。
(装置構成)
以下、図7を参照して、本実施形態による眼底撮影装置700について、第1の実施形態による眼底撮影装置100との相違点を中心に説明する。図7は本実施形態による眼底撮影装置700の概略的な構成を示す。なお、第1の実施形態による眼底撮影装置100と同様の構成については、同一の参照符号を用いて説明を省略する。
眼底撮影装置700の基本構成は、第1の実施形態に係る眼底撮影装置100と同様である。ただし、眼底撮影装置700は、OCT光学系とSLO光学系の共通光路にフォーカス手段を配置せず、OCT光学系の専用光路に第1のフォーカス手段を配置する点で、眼底撮影装置100と異なる。眼底撮影装置700では、OCT光学系とSLO光学系との共通光路から分岐されたOCT光学系の専用光路に、第1のフォーカス手段としてフォーカスレンズ757が配置される。これに伴い、SLO光学系の視度調整範囲を確保できるよう、電動ステージ127は、移動範囲が-12D~+7Dに対応するよう拡充されている。
本実施形態では、OCT測定光104の光路におけるレンズ154とダイクロイックミラー177との間において、フォーカスレンズ757及びレンズ758が設けられている。フォーカスレンズ757は電動ステージ727に搭載されている。電動ステージ727は制御部190の制御により、矢印で図示しているようにOCT測定光104の光軸方向に移動することができる。
なお、図7ではフォーカスレンズ757を凸レンズ、レンズ758を凹レンズとして図示しているが、フォーカスレンズ757及びレンズ758の構成はこれに限らない。フォーカスレンズ757を凹レンズ、レンズ758を凸レンズとしてもよいし、両方を凸レンズにして、これらの間に中間像を形成する構成としてもよい。
(眼底の撮影手順)
次に、図8及び図9を参照して、本実施形態の眼底撮影装置700における眼底の撮影手順を説明する。図8は、本実施形態に係る眼底の撮影手順のフローチャートであり、図9は表示部198に表示される制御ソフトの画面である。ここでも第1の実施形態と同様のステップや構成については、同一の参照符号を用いて説明を省略する。
撮影が開始され、ステップS301~S305において、アライメントや固視灯位置の調整が行われて制御部190が受光素子192の出力に基づいて眼底正面画像を生成し、制御ソフト画面の眼底表示部405に表示させると、処理はステップS806に移行する。
ステップS806において、制御部190は、表示部405に表示される眼底正面画像に基づく検者の入力に応じて、SLO光学系及びOCT光学系の大よそのフォーカス調整(ラフフォーカス調整)を行う。具体的には、検者が表示部405の眼底正面画像を観察し、制御ソフト画面のフォーカス調整入力部915のフォーカス調整バー916を動かすことに応じて、制御部190が電動ステージ126と電動ステージ727を移動させる。ここで制御部190は電動ステージ126の駆動によるSLO光学系のフォーカス調整量と、電動ステージ727の駆動によるOCT光学系のフォーカス調整量と略一致させながら両者を駆動する連動駆動を実行する。これにより、SLO測定光106のフォーカス調整を行うことで、OCT測定光104も同時にラフフォーカス調整が行われる。ここでは、眼底正面画像の輝度が最大になるようにフォーカス調整を行う。
なお、この際、制御部190は、2つの電動ステージ127と727の相対位置を予め設定された初期状態の位置関係に配置しておく。ここでは初期状態の位置関係として、OCT測定光104とSLO測定光106のフォーカス位置が略一致するような両ステージの位置関係が設定されている。
ラフフォーカス調整を行ったら、ステップS307~S309において、ハルトマン像403の位置に基づくXYファインアライメントから参照光103の光路長の調整を終える。
参照光路長調整が済むと、ステップS810において、制御部190はSLO光学系及びOCT光学系のフォーカス調整を行う。具体的には、検者が眼底正面画像および断層画像に基づいてフォーカス調整バー916を動かす。それに応じて制御部190が電動ステージ127及び727をステップS806と同様に連動させた制御をしてSLO光学系とOCT光学系の細密なフォーカス調整を行う。検者が意図する網膜Erの深さ位置の眼底正面画像が取得されるよう、フォーカス調整が行われる。
眼底正面画像のフォーカスが調整されたら、ステップS311において、検者が制御ソフト画面の撮影ボタン418を押すことに応じて、制御部190は眼底トラッキングを実行しながら、同時に眼底断層画像及び眼底正面画像の取得を行う。所定数の画像取得が終了すると、制御部190は眼底トラッキングを終了し、ステップS810に戻る。
検者が深さ位置を変えて再び眼底正面画像を取得したい場合には、検者の操作に応じてステップS310のSLO光学系及びOCT光学系のフォーカス調整及びステップS311の撮影が繰り返し実行される。
ここでも第1の実施形態と同様にステップS810とS812は同じ処理であり、眼底正面画像を検者が意図する深さ位置に合わせるか、トラッキングに適した位置に調整するかの目的が異なるだけである。意図した深さの眼底正面画像の取得を全て終えると、検者の操作によってステップS812の工程が実行されることになる。
ステップS812では、制御部190はSLO光学系を用いて取得された眼底正面画像が眼底トラキングに適した画像になるようフォーカス調整を行う。具体的には、検者がフォーカス調整バー916を動かすことに応じて、制御部190が電動ステージ127及び727をステップS806と同様に連動して制御する。必要なトラッキング精度を達成するために視細胞のコントラストが高い眼底正面画像になるように、フォーカス調整を行う。
眼底正面画像の視細胞のコントラストが高くなるようフォーカスが調整されたら、制御部190はステップS813においてフォーカス調整のモードを切替える。具体的には、検者が制御ソフト画面のモード切替えボタン419を押下することによりモードが切り替わる。押下前はフォーカス調整バー916を動かすことによりSLO光学系とOCT光学系の両方のフォーカスが連動して調整される第1のモードであるのに対し、押下後はOCT光学系のフォーカスみが調整される第2のモードとなる。また、表示制御手段でもある制御部190は押下によってフォーカス調整入力部を図10の917に示す表示に切替え、フォーカス調整バー916から918の形態変化でいずれのフォーカス調整が有効なモードであるか報知する。第2のモードは、制御部190がフォーカス調整バー918の操作によって電動ステージ727のみを駆動することで、OCT光学系のフォーカスだけが調整される。
なお、本実施形態では表示部198に表示されるフォーカス調整入力部915がその形態の変化によってモードの報知手段も兼ねるが、構成はこれに限らない。図11に示すように枠461でフォーカス調整入力部の有効範囲を明示するような報知状態や、図12に示すような他方のフォーカス調整バーをグレーアウトしてその無効を明示するような報知状態、図13に示すようなフォーカス調整入力部の表示位置でOCTとSLOのいずれに対して有効であるか明示するような報知状態、図14に示すような画像表示部の枠の色でモードを明示するような報知状態など、任意の報知状態が適用できる。
OCT光学系のみが調整される第2のモードになると、次のステップS814に移り、OCT光学系のフォーカス調整が行われる。具体的には、検者が断層画像に基づいてフォーカス調整バー918を動かすことに応じて、制御部190が電動ステージ127を制御してOCT光学系だけのフォーカス調整を行う。撮影したい網膜Erの層にOCT測定光104のフォーカスが合うようにフォーカス調整が行われる。
OCT光学系のフォーカス調整が済んで検者が制御ソフト画面の撮影ボタン418を押下すると、ステップS315に進み、制御部190は眼底トラッキングを実行しながら、同時に眼底断層画像及び眼底正面画像の取得を行う。所定の数の平面画像と断層画像の取得が完了すると、制御部190は眼底トラッキングを終了し、ステップS814に戻る。ここで、検者が網膜Erの別の層にフォーカスを変えて再び断層画像を取得したい場合にはステップS814のOCT光学系のフォーカス調整及びステップS315の撮影が繰り返される。
次に、第1の実施形態に記載したいずれかのケースでは検者が制御ソフト画面のモード切替えボタン419を押下することにより、ステップS816に進み、フォーカス調整のモードの切替えが実行される。具体的には、制御部190はフォーカス調整のモードをSLO光学系とOCT光学系の両方のフォーカスが調整される第1のモードに切替える。また、フォーカス調整入力部は917の表示から915の表示に戻し、モード1であることを検者に報知する。さらに制御部190は電動ステージ727を制御して、SLO光学系のフォーカス位置に対してOCT光学系のフォーカス位置を略一致させることで、2つの電動ステージ127と727の相対位置を初期状態の位置関係に戻す。
以上のような報知機能によって、本実施形態では、補償光学を有するSLOとOCTの複合装置において、SLOとOCTの両フォーカスが連動するモードとOCTのフォーカスのみが操作できるモードとを切替えながら撮影する際に、現在のモードが検者にとって判りやすくなる。
[変形例1]
第1の実施形態では、OCT光学系とSLO光学系の共通光路に配置された電動ステージ126に搭載されたミラー119,120を第1のフォーカス手段とし、これらを移動させることによりラフフォーカス調整及びファインフォーカス調整を行った。しかしながら、これらフォーカス調整に用いる第1のフォーカス手段はこれに限らない。例えば、第1のフォーカス手段としてOCT光学系とSLO光学系の共通光路に配置されたデフォーマブルミラー182を用いることもできる。
特にファインフォーカス調整は、デフォーマブルミラー182を変形させることにより行ってもよい。この場合、制御部190は、波面センサ181の測定値に基づいたデフォーマブルミラー182の目標形状に、デフォーカス成分のオフセットを与えて制御する。これにより、被検眼Eの収差を補正しつつ、OCT光学系とSLO光学系のフォーカス位置を変更することができる。なお、ラフフォーカス調整においても、フォーカスの調整量が少なくて済む場合には、同様にデフォーマブルミラー182を用いることができる。
また、第1のフォーカス手段として、フォーカスレンズや電気光学素子、ピエゾ素子、液晶光学素子、可変形状ミラー等、他の任意のフォーカス手段を用いてもよい。
なお、上記実施形態及び変形例では、検者の入力に応じて制御部190が各種アライメントや、光路長調整、フォーカス調整を行った。しかしながら、上述の各種アライメントや、光路長調整、フォーカス調整において用いられた前眼部の画像、眼底正面画像、ハルトマン像、及び断層画像等に基づいて、制御部190が自動的にこれらのアライメントや調整を行ってもよい。この場合には、例えば、制御部190が上述のアライメントや調整と同様に、眼底正面画像の輝度や撮影すべき層等に基づいて、これらのアライメントや調整を行うことができる。
また、上記実施形態及び変形例では、OCT光学系として、SLDを光源として用いたスペクトラルドメインOCT(SD-OCT)光学系について述べたが、本発明によるOCT光学系の構成はこれに限られない。例えば、出射光の波長を掃引することができる波長掃引光源を用いた波長掃引型OCT(SS-OCT)光学系等の他の任意の種類のOCT光学系にも本発明を適用することができる。
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
以上、実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の各実施形態及び変形例は、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。また、各実施形態及び変形例で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。