以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。
なお、以下において、人眼の網膜を被検査物として説明するが、被検査物はこれに限られず、例えば、人眼の前眼部等を被検査物としてもよい。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
(装置構成)
本実施形態に係る眼底撮影装置の一態様としての眼底画像撮影システム500について、図1を用いて説明する。本実施形態の眼底画像撮影システムは、OCT光学系、SLO光学系、前眼部観察光学系、固視灯光学系、及び制御部から構成されている。なお、本実施形態では、光学系の全体を主にミラーを用いた反射光学系で構成している。
なお、制御部は、汎用のコンピュータを用いて構成されてもよいし、眼底画像撮影システム500の専用のコンピュータとして構成されてもよい。なお、制御部625は、OCT光学系、SLO光学系、前眼観察光学系、及び固視灯光学系を備えた撮影部と別個に構成されてもよいし、一体的に構成されてもよい。
まず、眼底画像撮影システム500のOCT光学系について説明する。光源601は、光(低コヒーレンス光)を発生させるための光源である。光源601には、SLD(Super Luminescent Diode)を用いる。中心波長は830nm、帯域50nmである。光源の種類は、ここではSLDを選択したが、低コヒーレンス光が出射できればよく、ASE(Amplified Spontaneous Emission)等も用いることができる。また、波長は眼を測定することを鑑みると、近赤外光が適する。さらに波長は、得られる断層画像の横方向の分解能に影響するため、なるべく短波長であることが望ましく、ここでは830nmとする。観察対象の測定部位によっては、他の波長を選んでも良い。また、波長の帯域は広いほど深さ方向の分解能(縦分解能)がよくなる。一般的に中心波長が830nmの場合、50nmの帯域では6μmの縦分解能、100nmの帯域では3μmの縦分解能である。
光源601から出射された光はシングルモードファイバー630-1を通して、光分割手段である光カプラー631に導かれ、光カプラー631において強度比90:10で分割され、それぞれ参照光605、OCT測定光606となる。なお、分割の比率はこれに限らず、被検査物に合わせて適切なものを選択する。
次に、参照光605の光路について説明する。光カプラー631において分割された参照光605はシングルモードファイバー630-2を通して、レンズ635-1に導かれ、ビーム径2mmの平行光になるよう調整される。次に、参照光605は、分散補償ガラス615を透過し、ミラー614-2、614-3によって、参照ミラーであるミラー614-16に導かれる。ここでは参照ミラーとして平面ミラーを用いている。ミラー614-16で反射された光は、再び、ミラー614-3、ミラー614-2により順次反射され、分散補償ガラス615を透過して、光カプラー631に導かれる。
分散補償用ガラス615は被検眼607とレンズ635-4をOCT測定光606が往復したときの分散を、参照光605に対して補償するものである。
ミラー614-16は、電動ステージ617-1上に配置されており、本実施形態における光路長調整手段を構成する。電動ステージ617-1は、矢印で図示している方向に移動することができ、参照光605の光路長を、調整することができる。ここでは電動ステージ617-1の移動範囲を350mmとしている。電動ステージ617-1は制御部625によって制御される。
次に、OCT測定光606の光路について説明する。光カプラー631により分割されたOCT測定光606は、シングルモードファイバー630-4を介して、レンズ635-4に導かれ、ビーム径4mmの平行光になるよう調整される。
次に、OCT測定光606は、ダイクロイックミラー658-5およびビームスプリッター661-1を透過し、ミラー614-5、614-6によって反射され、本実施形態における収差補正手段であるデフォーマブルミラー659に入射する。ここで、デフォーマブルミラー659は本実施形態における収差測定手段である波面センサ655にて検知した収差に基づいて、OCT測定光606及びOCT戻り光608の収差を、ミラー形状を自在に変形させることで補正するミラーデバイスである。
ここでは波面補正デバイスとしてデフォーマブルミラーを用いたが、収差を補正できればよく、液晶を用いた空間光位相変調器等を用いることもできる。また、ここでは波面センサとしてシャックハルトマン型波面センサを用いている。デフォーマブルミラー659および波面センサ655は、制御部625により制御されている。
OCT測定光606は、ミラー614-7,614-8によって反射され、ダイクロイックミラー658-3に入射する。ここで、ダイクロイックミラー658-3,658-4は、光源601の波長の光を反射させ、光源602の波長の光を透過させる。ダイクロイックミラー658-3で反射されたOCT測定光606は、ミラー620に入射する。
ミラー620で反射されたOCT測定光606は、ダイクロイックミラー658-4を反射し、ミラー614-9~614-12によって順次反射される。
ミラー614-11,614-12は、電動ステージ617-2上に配置されており、本実施形態における第1のフォーカス手段を構成する。電動ステージ617-2は、矢印で図示している方向に移動することができ、OCT測定光606のフォーカス位置を調整することができる。これにより被検眼607の視度に対応することが可能になる。ここでは電動ステージ617-2の移動範囲を160mmとし、被検眼607の-12D~+7Dの視度範囲に対応している。電動ステージ617-2は、制御部625により制御することができる。また、第1のフォーカス手段はミラー614-11,614-12の反射光学系で構成されたバダル光学系である。反射光学系を用いることにより、波面センサへ不要な迷光が入ることを防ぐことができ、より精度の高い収差測定および収差補正ができる。
ミラー614-12により反射されたOCT測定光606は、ミラー614-13,614-14によって反射され、Yスキャナ621に入射する。OCT測定光606の中心はYスキャナ621の回転中心と一致するように調整され、網膜627上を光軸および後述のSLOのXスキャナ619のスキャン方向と垂直な方向にスキャンする。ここではYスキャナ621としてガルバノミラーを用いる。
Yスキャナ621により反射されたOCT測定光606は、ミラー614-15、614-16によって反射され、トラッキングミラー622に入射する。OCT測定光606の中心はトラッキングミラー622の回転中心と一致するように調整され、網膜627上を光軸およびYスキャナ620のスキャン方向と垂直な方向にスキャンする。ここではトラッキングミラー622としてガルバノミラーを用いる。
トラッキングミラー622により反射されたOCT測定光606は、ミラー614-17、614-18によって反射され、ダイクロイックミラー658-1,658-2を透過し、被検眼607へ入射する。Xスキャナ620、Yスキャナ621、および、ミラー614-9~614-15はOCT測定光606を用いて網膜627をスキャンするための光学系として機能する。当該光学系により、OCT測定光606を用いて、瞳孔626の付近を支点として、網膜627をスキャンする。
OCT測定光606は被検眼607に入射すると、眼底の網膜627によって反射や散乱され、OCT戻り光608として、再び光カプラー631に導かれる。
参照光605とOCT戻り光608とは、光カプラー631にて合波され、さらに90:10に分割される。そして、合波された光(干渉光)642は、シングルモードファイバー630-3から空間光として出射され、レンズ635-2を透過し、透過型グレーティング641によって波長毎に分光される。分光された光は、レンズ635-3で集光され、ラインカメラ639を照射する。ラインカメラ639にて光の強度が位置(波長)毎に電圧に変換される。具体的には、ラインカメラ639上には波長軸上のスペクトル領域の干渉縞が観察されることになる。得られた電圧信号群はデジタル値に変換されて、制御部625にてデータ処理が行われ眼底断層画像が形成される。形成された眼底断層画像は、制御部625により、モニター(不図示)上に表示される。
また、ビームスプリッター661-1にて分割されるOCT戻り光608の一部は、波面センサ655を照射し、OCT戻り光608の収差が測定される。本実施形態において、ビームスプリッター661-1は、OCT戻り光608の一部を反射し、後述するSLO戻り光610を透過させる。これにより、OCT戻り光608の収差を選択的に測定することができる。波面センサ655は制御部625に電気的に接続され、得られた収差は制御部625により、ツェルニケ多項式を用いて表現される。これは被検眼607の有する収差を示している。
さらに、ツェルニケ多項式のデフォーカスの成分については、電動ステージ617-2を用いてミラー614-11、614-12の位置を制御して、被検眼の視度を補正する。デフォーカス以外の成分については、デフォーマブルミラー659の表面形状を制御して補正し、より高横分解能な眼底断層画像を取得することができる。
ここで、瞳孔626、ミラー620、Yスキャナ621、トラッキングミラー622、波面センサ655、デフォーマブルミラー659とは光学的に共役になるよう、ミラー614-5~614-18が配置される。それにより、波面センサ655は被検眼607の有する収差を測定することできる。
また、偏光パドル653-1および偏光パドル635-2は、OCT測定光606および参照光605の偏光状態を調整することができる。各偏光状態は、ラインカメラ639上で観察される干渉縞の強度が最大になるように調整される。
次に、SLO光学系について説明する。光源602は、光源601とは異なる波長の光を発生させるための光源である。光源602には、波長780nmのSLDを用いる。光源の種類は、ここではSLDを選択したが、LD(Laser Diode)等も用いることができる。
光源602から出射された光はレンズ635-5に導かれ、ビーム径4mmの平行光になるよう調整される。レンズ635-5を透過した光は、ビームスプリッター661-2に導かれ、透過光と反射光(SLO測定光609)の強度比が90:10で分割される。ビームスプリッター661-2によって反射されたSLO測定光609は、フォーカスレンズ635-7、レンズ635-8を透過する。ここでフォーカスレンズ635-7は、電動ステージ617-3上に配置されており、本実施形態における第2のフォーカス手段を構成する。電動ステージ617-3は、矢印で図示している方向に移動することができ、SLO測定光609のフォーカス位置を調整することができる。これによりOCT測定光606のフォーカス位置と異なる位置にSLO測定光609のフォーカス位置を合わせることができる。ここでは電動ステージ617-3の移動範囲を10mmとし、-2D~+2Dの視度範囲に対応している。被検眼607の視度補正を主に第1のフォーカス手段で行うことで、第2のフォーカス手段の視度補正範囲は狭く抑えることができる。よって、電動ステージ617-3の移動範囲は、電動ステージ617-2に対して狭くすることができている。これにより、より小型のステージを用いることができ、光学系の小型化に有利になる。なお、図1ではフォーカスレンズ635-7を凸レンズ、レンズ658-8を凹レンズとして図示しているが、これに限らない。フォーカスレンズ635-7を凹レンズ、レンズ658-8を凸レンズとしてもよいし、両方凸レンズにして間に中間像を形成する構成としてもよい。
フォーカスレンズ635-7、レンズ635-8を透過した光は、ダイクロイックミラー658-5へ向かう。ダイクロイックミラー658-5は、光源601の波長の光を透過させ、光源602の波長の光を反射する。ダイクロイックミラー658-5によって反射されたSLO測定光609は、OCT測定光606の光路と一部を共有した共通光路を通って、ビームスプリッター661-1、ミラー614-5、614-6、デフォーマブルミラー659、ミラー614-7、614-8を介して、ダイクロイックミラー658-3に入射する。ここで、ダイクロイックミラー658-3、658-4は、光源601の波長の光を反射させ、光源602の波長の光を透過させる。よって、ミラー614-8によって反射されたSLO測定光609は、ダイクロイックミラー658-3を透過、Xスキャナ619に入射する。SLO測定光609の中心はXスキャナ619の回転中心と一致するように調整され、眼底の網膜627上を光軸に垂直な方向にスキャンする。
ここで、ダイクロイックミラー658-3によりOCT測定光606とSLO測定光609を分岐することで、OCT測定光606のミラー620とSLO測定光609のXスキャナ619を別に配置する構成としている。ここでは、Xスキャナ619には共振ミラーを用いている。
Xスキャナ619で反射されたSLO測定光609は、ダイクロイックミラー658-4を透過し、再びOCT測定光606との共通光路を通って被検眼607へ入射する。
SLO測定光609は被検眼607に入射すると、網膜627によって反射や散乱され、SLO戻り光610として、SLO測定光609の光路を戻って、ダイクロイックミラー658-5によって反射された後、ビームスプリッター661-2を透過する。この透過光(SLO戻り光610)と反射光の強度比は90:10である。ビームスプリッター661-2を透過したSLO戻り光610はレンズ635-6で集光されピンホール板660を通過する。ピンホール板660のピンホール位置は、眼底と共役な位置に調整されており、共役点以外からの不要な光を遮光する共焦点絞りとして作用する。
ピンホールを通過したSLO戻り光610は、受光素子640で受光される。ここでは受光素子640としてAPD(Avalanche Photo Diode)を用いる。受光素子640で受光した光は、光強度に応じた電圧信号に変換される。得られた電圧信号群はデジタル値に変換されて、制御部625にてデータ処理が行われ、眼底平面画像が取得される。受光素子640および制御部625は、本実施形態における画像取得手段を形成する。取得された眼底平面画像は、制御部625によりモニター上に表示される。
次に、固視灯光学系について説明する。固視灯光学系は、ダイクロイックミラー658-2および固視灯パネル657から構成される。
ダイクロイックミラー658-2は、固視灯パネル657の可視光を反射し、光源601および光源602の波長の光を透過させる。これにより、固視灯パネル657に表示されるパターンがダイクロイックミラー658-2を介して被検眼607の網膜に投影される。固視灯パネル657に所望のパターンを表示することで、被検眼607の固視方向を指定し、撮影する網膜の範囲を設定することができる。ここでは固視灯パネル657として有機ELパネルを用いる。なお、固視灯パネル657は制御部625に接続されており、制御部625によって制御される。
次に、前眼部観察光学系について説明する。前眼部観察光学系は、ダイクロイックミラー658-1、前眼観察カメラ656および前眼照明光源(不図示)から構成される。
ダイクロイックミラー658-1は、前眼照明光源の赤外光を反射させ、固視灯パネル657の可視光、光源601および光源602の波長の光を透過させる。前眼観察カメラ656の光軸は、OCT光学系およびSLO光学系の光軸と一致するように調整されており、被検眼607の前眼部をモニター上で観察して基準位置に合わせることで、XY位置のアライメントを行うことができる。また、前眼観察カメラ656のフォーカスは、OCT光学系およびSLO光学系のワーキングディスタンスと一致したときに、被検眼607の虹彩にフォーカスが合うように調整されている。よって、虹彩をモニター上で観察してフォーカスを合わせることで、Z位置のアライメントを行うことができる。ここでは前眼照明光源として波長が970nmのLEDを用いる。また、前眼観察カメラ656としてCCDカメラを用いる。なお、前眼観察カメラ656は制御部625に接続されており、制御部625によって制御される。
次に、本実施形態におけるOCT光学系とSLO光学系の撮影範囲の関係について、図2を用いて説明する。図2において、実線がOCT光学系の撮影範囲、破線の枠内がSLO光学系の撮影範囲であり、OCT光学系で1ライン撮影したときのSLO光学系の撮影範囲との関係を模式的に示している。
OCT光学系とSLO光学系は、Yスキャナ621を共通光路に配置しているため、Y方向(図2の上下方向)には同時にスキャンされる。一方、SLO測定光609はXスキャナ619でスキャンされるが、OCT測定光606はスキャンされず、常にSLO撮影範囲の中央をY方向のみにスキャンすることとなる。本実施形態ではOCT測定光606はスキャンされないが、ミラー620の代わりにガルバノスキャナを用いてSLO撮影範囲の中をOCT測定光もX方向に走査する構成としても良い。更には、ガルバノスキャナを任意の角度に設定することによりSLO撮影範囲の所望の位置に設定する構成としても良い。
また、Xスキャナ619の共振ミラーは、ガルバノミラーよりスキャン速度が速いため、1回のYスキャンの間に、SLO測定光609はX方向に複数回スキャンされる。
3Dボリューム画像を撮影する場合は、Xスキャナ619、Yスキャナ621のスキャンに加えて、Xスキャナ620でOCT測定光606をスキャンする。これにより、上述したY方向の1ラインの撮影をXスキャナ620のスキャン位置を変更して繰り返す。また、この間にSLO光学系では眼底平面画像(2次元画像)が取得される。
なお、OCT光学系とSLO光学系の撮影範囲の関係はこれに限らない。OCT測定光606のYスキャナとSLO測定光609のYスキャナを別のスキャナとし、Xスキャナを共通光路に配置する構成としてもよい。この場合、OCT測定光606とSLO測定光609はX方向(図2の左右方向)に同時にスキャンされる。また、OCT光学系とSLO光学系にそれぞれXスキャナとYスキャナを別に配置する構成としてもよい。この場合、OCT測定光606とSLO測定光609は、X方向もY方向もそれぞれ独立にスキャンすることができる。
次に、眼底平面画像を用いた位置合わせ(トラッキング)の方法について説明する。
OCT光学系で同じ位置の1ラインの断層画像を複数回撮影する場合、1回目の撮影時にSLO光学系で取得した眼底平面画像を基準画像として、位置ずれ検出の比較対象画像である2回目以降の眼底平面画像の位置ずれ量を算出する。位置ずれ量の算出は、パターンマッチング等の画像処理で行うことができる。そして、算出された位置ずれ量を補正するように、Xスキャナ622およびYスキャナ621を制御することで、眼底トラッキング、即ち、OCT測定光とSLO測定光の眼底上の照射位置の補正を行うことができる。取得された複数枚の同じ位置のライン断層画像は、重ね合わせによる断層画像のノイズ低減処理等に用いることができる。
この眼底トラッキング方法はOCT光学系で3Dボリューム画像を取得する場合も同様である。この場合、前述のように、OCT光学系でY方向の1ラインの断層画像をX方向の位置を変えながら繰り返し取得する。このとき、1回目(1ライン目)で取得した眼底平面画像(2次元画像)を基準画像として、位置ずれ検出の比較対象画像である2回目(2ライン目)以降の眼底平面画像の位置ずれ量を算出し、眼底トラッキングを行う。
なお、基準画像は1回目で取得した眼底平面画像の全域を用いてもよいし、一部を用いてもよい。眼底平面画像の一部を用いると、比較対象画像の取得間隔を短縮することができ、眼底トラッキングの制御レートを上げることができる。これは眼底のより速い動きによる位置ずれを補正するうえで有利にある。
(眼底画像撮影の撮影手順)
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施形態の眼底画像撮影システム500において、眼底の画像撮影を行う撮影手順を説明する。
まず、検者が被検眼の前眼部を観察しながら装置のXYZアライメントを行う。検者がモニター上に表示された前眼照明光源ボタン(不図示)を押すと、ステップS101において、前眼照明光源を点灯する。前眼照明光源を点灯するとモニター上に被検眼607の前眼部が表示される。前述したように、前眼観察カメラ656はXYZ位置が調整されているため、モニター上に表示された前眼部のXY位置およびピント(Z位置)が合うように装置のXYZ位置を調整する。アライメントが完了したことを確認した検者が、モニター上に表示された前眼照明光源ボタンを再度押すと、前眼照明光源を消灯する。
前眼照明光源を消灯したら、ステップS102において、モニター上に表示されたSLO光源ボタン(不図示)を検者が押すことに応じて、SLO光学系の光源602を点灯する。SLO光学系の光源602が点灯したら、制御部625は受光素子640の出力に基づいて眼底平面画像を生成し、モニター上に表示させる。制御部625は、モニター上に表示された眼底平面画像に基づく検者の入力に応じてラフフォーカス調整を行う。モニター上に表示されたフォーカス調整バー(不図示)を検者が動かすことに応じて、制御部625は電動ステージ617-2を移動させる。
電動ステージ617-2およびミラー614-11,614-12は、OCT測定光606とSLO測定光609との共通光路に配置されており、SLO測定光609のフォーカス調整を行うことにより、OCT測定光606も同時にラフフォーカス調整が行われる。ここでは眼底平面画像の輝度が最大になるようにフォーカス位置の調整を行う。このとき、電動ステージ617-3は予め設定された初期状態の位置になるよう制御部625により制御されている。ここでは初期状態として、OCT測定光606とSLO測定光609のフォーカス位置が略一致するように設定されている。
ラフフォーカス調整が完了したら、ステップS103において、モニター上に表示されたOCT光源ボタン(不図示)を検者が押すことで、制御部625はOCT装置の光源601を点灯する。光源601を点灯することにより得られるモニター上に表示された波面センサ655のハルトマン像の位置に基づく検者の入力に応じて、制御部625はXYファインアライメントを行う。
ここで波面センサ655は、波面センサ655の中心位置がOCT光学系およびSLO光学系の光軸と合うように調整されている。そのため、検者はハルトマン像が波面センサ655の中心に合うように、被検眼の位置を調整することで、OCT光学系及びSLO光学系のX方向及びY方向の位置合わせを行うことができる。
XYファインアライメントが完了したら、ステップS104において、検者がモニター上に表示された波面補正ボタン(不図示)を押すことに応じて、制御部524はデフォーマブルミラー659による波面補正を開始する。ここで制御部625は、波面センサ655で測定された収差に基づいてデフォーマブルミラー659の形状を変形させ、デフォーカス成分以外の被検眼の収差を補正する。なお、デフォーマブルミラー659は、OCT測定光606とSLO測定光609との共通光路に配置されている。これにより、OCT測定光606について被検眼の収差が補正されるとともに、SLO測定光609についても被検眼の収差が補正される。
波面補正が開始されたら、ステップS105において、制御部625はSLO光学系で取得された眼底平面画像を見ながらファインフォーカス調整を行う。ステップS102と同様に、検者がモニター上に表示されたフォーカス調整バー(不図示)を動かすことに応じて、制御部625は電動ステージ617-2を移動させてフォーカス位置を調整する。ここでは眼底平面画像のフォーカス位置が眼底の特徴点が多い層に合うように調整する。本実施形態では、特徴点の多い層として視細胞層にフォーカスが合うように調整している。なお、SLO光学系のフォーカスを合わせる位置は、視細胞層に限らない。所望のトラッキング精度が達成できる場合は、血管等、他の特徴点を有する位置であってもよい。
SLO光学系のフォーカス調整が終わったら、ステップS106において、検者がモニター上に表示された参照光路長調整バー(不図示)を動かすことに応じて、制御部625は参照光605の光路長を調整する。ここでは眼底断層画像中の網膜層の表示位置が断層画像表示領域内の所望の位置に合うように調整する。
眼底断層画像が所望の表示位置に調整されたら、ステップS107において、OCTファインフォーカス調整を行う。モニター上に表示されたファインフォーカス調整バー(不図示)を検者が動かすことに応じて、制御部625は電動ステージ617-2を移動させてフォーカス位置が調整される。高横分解能の補償光学OCT光学系では、眼底における測定光のNAが大きく焦点深度が浅いため、網膜の深さ方向の全域に渡って同時にフォーカスを合わせることが困難になる。よって、まず、撮影したい深さ方向の範囲の端の層にOCT測定光606のフォーカスが合うようにOCTファインフォーカス調整を行う。
なお、ここでは第1のフォーカス手段であるミラー614-11、614-12が配置された電動ステージ617-2を移動させてOCTファインフォーカス調整を行っている。このとき、SLO専用光路に配置された第2のフォーカス手段であるフォーカスレンズ635-7が配置された電動ステージ617-3は、第1のフォーカス手段による調整を打ち消す方向に動作させるように、制御部625により制御される。これにより、SLO測定光609のフォーカス位置をステップS105で調整した位置から変えることなく、OCT測定光606のフォーカス位置を調整することができる。また、ミラー614-16が配置された電動ステージ617-1は、第1のフォーカス手段によるフォーカス調整で変化する光路長と略同じだけ光路長を変化させるように、制御部625により制御される。これにより、眼底断層画像の深さ方向の表示位置を変えることなく、OCT測定光606のフォーカス位置を調整することができる。
また、フォーカスレンズ635-7は、SLO測定光609とSLO戻り光610との共通光路に配置されている。これにより、SLO測定光609のフォーカス位置を網膜627の所望の位置に合わせると同時に、その位置からのSLO戻り光610のフォーカス位置をピンホール板660のピンホール位置に合わせることができる。SLO光学系のフォーカス調整は、SLO測定光609の専用光路に配置されたレンズ635-5およびSLO戻り光609の専用光路に配置されたレンズ635-6をそれぞれ光軸方向に移動させることでも行うことができる。しかし、その場合、レンズ635-5およびレンズ635-6の位置をそれぞれ制御する必要があり、装置構成および制御が複雑になる。よって、フォーカスレンズ635-7で行うほうが、装置構成および制御を簡単にするうえで有利である。
次に、ステップS108において、検者がモニターに表示されたトラッキングボタン(不図示)を押すことに応じて、制御部625はトラッキングを開始する。本実施形態における眼球運動検出手段として機能する制御部625は、SLO光学系で取得した眼底平面画像の特徴点から位置ずれ量を算出する。そして、算出したずれ量に基づいてXスキャナ622およびYスキャナ621を制御することによりトラッキング、即ち、OCT測定光とSLO測定光の眼底上での照射位置の補正を行う。また、検者がトラッキング指示を開始するのではなく、録画の開始に伴ってトラッキングを開始する構成でもよい。
上述したように、トラッキング開始時に取得したSLO画像を基準画像として設定し、以降に取得されるSLO画像を比較対象画像として位置検出を行い、検出された位置を打ち消すようにトラッキングミラーを制御して撮影位置の調整を行う。
ステップS109において、検者がモニター上に表示された撮影ボタン(不図示)を押すことに応じて、制御部625は眼底断層画像および眼底平面画像の取得を行う。OCT測定光606と参照光605との干渉光は、ラインカメラ639で受光され、電圧信号に変換される。さらに、得られた電圧信号群はデジタル値に変換されて、制御部625にてデータの保存および処理が行われる。SLO測定光609は、受光素子640で受光され、電圧信号に変換される。さらに、得られた電圧信号群はデジタル値に変換されて、制御部625にてデータの保存(録画)および処理が行われる。
1フレーム録画(データの保存)を行うと、ステップS110においてトラッキング処理を行う。取得するフレームが比較対象画像となり、基準画像と比較して位置検出を行う。検出された位置ずれを打ち消すようにトラッキングミラーを制御して撮影位置の調整を行う。
次に、ステップS111においてトラッキングの基準画像の更新を行う。基準画像の更新フローに関して、図4および図5を用いて説明する。
図4は画像の輝度を基に基準画像の更新を行うものである。ステップS201において現在設定されている基準画像の特徴量として輝度平均を算出する。同様にステップS202において比較対象画像の特徴量として輝度平均を算出する。基準画像の輝度平均は都度計算するのではなく、事前に算出した値を読み込む構成でもよい。特徴量としての平均輝度は画像全体でもよいし、ROIを設定し設定されたROI部分のみの平均輝度でもよい。
ステップS203において輝度の比較を行って輝度差を算出し、あらかじめ指定された閾値との比較をステップS204において行う。輝度差が閾値よりも小さい場合には、何もせずに終了する。輝度差が閾値よりも大きい場合には、基準画像を撮影した撮影状態と現在の撮影状態が大きく変化しているため、算出した位置情報が正しくなくなる可能性が高くなる。よって、ステップS205において現在の比較対象画像を新たな基準画像として登録(設定)しなおす。同時にステップS206において現在の位置(新たな基準画像の基準位置)に基づいて原点位置を設定する。以降の位置検出による位置算出結果は、この新しい原点との相対位置となるため、撮影開始時の位置とのズレ量は、この新しい原点位置と、以降の位置検出結果との合計となる。
図5は画像間の相関を基に基準画像の更新を行うものである。ステップS301において基準画像と比較対象画像の相関係数を算出する。相関係数の計算は画像全体でもよいし、ROI部分だけでもよい。ステップS302において相関係数が設定された閾値と比較を行い、閾値よりも高い場合には基準画像の更新は行わずに終了する。閾値よりも低い場合には、ステップS303において現在の比較対象画像を新たな基準画像として登録(設定)しなおす。同時にステップS304において現在の位置(新たな基準画像の基準位置)に基づいて原点位置を設定する。以降の位置検出による位置算出結果は、この新しい原点との相対位置となるため、撮影開始時の位置とのズレ量は、この新しい原点位置と、以降の位置検出結果との合計となる。
本実施形態では基準画像と比較対象画像の特徴量としての輝度差や相関係数で更新間隔を変更したが、画像のコントラスト、トラッキングの平均位置ずれ量など他のパラメータを用いて判断しても良い。
所望の枚数の録画を完了したかをステップS112において判断し、完了した場合には録画を終了する。
このように基準画像を撮影状況に応じて更新することで、トラッキング精度が高くなり、長時間撮影になりがちなOCT撮影においても正確にトラッキングし続けることが可能となる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
(装置構成)
本実施形態に係る眼底撮影装置の一態様としての眼底画像取得システムについて説明する。画像取得システムの基本構成は、第1の実施形態に係る眼底画像取得システム500と同様である。
本実施形態では、3次元データを取得するOCTボリュームスキャンの際の処理を説明する。
(眼底画像撮影の手順)
図1で説明した眼底画像取得システム500を用いてOCTボリュームスキャンをする場合の撮影状態を、図6を用いて説明する。OCTボリュームスキャンを行う際には、OCT光学系の1ライン走査毎にOCT測定光の副走査を移動していき、所望の範囲のOCTデータを取得する。第1の実施形態の様なシステムではOCT光学系の撮影範囲とSLO光学系の撮影範囲は同じであり、OCT測定光の副走査方向を移動させるためにはXスキャナ622を用いて駆動するが、その際にはSLO光学系の撮影範囲も同じように移動する。図6のハッチングで示した範囲のボリュームを撮影する場合、Frame0にてXスキャナ622でボリューム撮影の最初の位置にOCT撮影範囲を移動させる。同時にSLO撮影範囲もOCTボリューム撮影範囲の端に移動される。OCT測定光による1ラインの撮影が完了すると、Frame1撮影のために、Xスキャナ622によって次のライン位置に移動される。順次移動していき、Frame nまで、n個のOCTラインデータが取得され、それらを統合することで3次元データが構成される。
この場合にも、所望の範囲の撮影を行うためには、眼の動きをキャンセルするためにトラッキングをする必要がある。しかしながら、録画(保存)開始時のFrame0で取得した基準画像と、ボリューム撮影が進んだ場合の比較対象画像の撮影位置が大きく異なるため、位置検出が困難となる。例えば、Frame 0とFrame nとでは、重なっている部分がほとんどなく、両画像を用いた位置検出はほぼ不可能である。
そこで本実施形態では、あるフレーム間隔で基準画像を更新する。基準画像を更新する処理について図7を用いて説明する。録画開始時にOCTボリューム撮影範囲の端まで撮影位置を移動し、フレーム0の撮影を行う。SLO光学系のフレーム0はSLO基準画像0として設定され、次のフレームからは比較対象画像がこのSLO基準画像0と比較されて位置検出が行われる。フレームの進行に伴い、ボリューム撮影のためのスキャンが進むために撮影範囲はずれていき、SLO基準画像0と比較対象画像との重複範囲は小さくなり位置算出の精度低下の可能性が高まる。そこで、例えばフレーム20番目の撮影時に、SLO画像のフレーム20をSLO基準画像20として設定し、それ以降はこのSLO基準画像20と比較対象画像とを比較して位置検出を行い、SLO基準画像20の位置情報と併せて撮影位置を算出する。このようにすることで、常に位置算出精度が高い撮影状態が保て、ボリューム撮影時にも正確なトラッキングが可能となる。
また、この基準画像の更新間隔に関しては、撮影状況が良好である場合には、間隔が長くて比較する画像間の距離が離れていても位置算出精度が高いが、撮影状況が悪いと間隔を短くして比較する画像間の距離を大きくしない方が良い。この間隔であるが、全ボリューム範囲を3回程度に分けた間隔を設定する処理や、1フレーム毎に更新するように処理を行うこともできる。本実施形態では、撮影状況に応じて基準画像の更新間隔を変更する。
次に、図8を用いて本実施形態の眼底画像取得システムにおいて、眼底の断層画像取得を行う撮影手順を説明する。
まず、ステップS401~S407で、第1の実施形態と同様に、アライメントやフォーカス調整、波面補正、参照光路長調整、OCTファインフォーカス調整を行う。
ステップS408において、検者がモニター上に表示されたOCTボリューム撮影ボタン(不図示)を押すことに応じて、制御部625は眼底断層画像および眼底平面画像の取得(録画)を開始する。OCT測定光606と参照光605との干渉光は、ラインカメラ639で受光され、電圧信号に変換される。さらに、得られた電圧信号群はデジタル値に変換されて、制御部625にてデータの保存および処理が行われる。SLO測定光609は、受光素子640で受光され、電圧信号に変換される。さらに、得られた電圧信号群はデジタル値に変換されて、制御部625にてデータの保存および処理が行われる。
ステップS409で初期の基準画像の更新間隔を設定する。例えば20ライン毎とする。
ステップS410において、撮影範囲をボリューム撮影の端の位置までトラッキングミラー622を用いて移動させ、ステップS411においてトラッキングを開始する。
ステップS412において取得した画像を録画(保存)し、ステップS413においてトラッキングを行う。初回録画(トラッキング開始時の保存)の場合には、取得した画像を基準画像0として設定する。基準画像0はボリューム録画の原点であるので、基準画像0自体の位置も(0,0)となる。次回からのトラッキング処理においては、取得したフレームが比較対象画像となり、指定されている基準画像と比較して位置検出を行う。その際、比較対象画像nと基準画像rnとの位置ずれ量(Xn、Yn)および、その時点での基準画像rnの位置(Xrn,Yrn)の合計(Xn+Xrn、Yn+Yrn)がボリューム撮影原点からの位置である。さらにボリューム撮影の場合には、フレーム毎に撮影位置がシフト量dだけシフトしていくので、フレームn番目の本来あるべき位置は例えばX方向にndである。よって、トラッキングで補正すべき位置ズレ量は、(Xn+Xrn-nd、Yn+Yrn)となり、この値を補正するようにトラッキングミラー621、622を駆動する。
次にステップS414において、次のボリューム撮影位置に撮影範囲を移動させる。この処理はトラッキングと別に行っても良いし、タイミングによっては、ステップS413におけるトラッキング処理と同時に行っても良い。
そして、ステップS415において、トラッキングの基準画像更新処理を行う。本実施形態の基準画像の更新フローに関して、図9を用いて説明する。本実施形態ではあらかじめ指定されている基準画像の更新間隔を撮影状態に応じて変更する処理が行われる。
ステップS501において、基準画像と比較対象画像の相関係数を算出する。相関係数の計算は画像全体でもよいし、ROI部分だけでもよい。ステップS502において、相関係数が設定された閾値と比較を行い、閾値よりも高い場合には基準画像の更新間隔を変更せずにステップS504に進む。閾値よりも低い場合には、ステップS503において、基準画像の更新間隔を短く設定しなおす。例えば通常は20フレームの更新間隔のところ、10フレームとする。また、図9には不図示であるが、相関係数が閾値よりも大きい場合には、更新間隔を長くする処理も可能である。ステップS504において、現在の基準画像のフレームと比較対象画像のフレームの間隔と、基準画像の更新間隔を比較し、現在のフレーム間隔が大きい場合には、ステップS505において、比較対象画像を基準画像として設定する。同時にステップS506において、現在の位置を基準画像の原点位置として設定する。以降の位置検出による位置算出結果は、この新しい原点との相対位置と、基準画像の位置と、ボリュームスキャン位置を基に計算することは上述のとおりである。
本実施形態では基準画像と比較対象画像の相関係数で更新間隔を変更したが、画像の平均輝度やコントラスト、トラッキングの平均位置ずれ量など他のパラメータを用いて判断しても良い。
所望のボリューム範囲の録画を完了したかをステップS416において判断し、完了した場合には録画を終了する。
このように基準画像を撮影状況に応じて更新することで、トラッキング精度が高くなり、OCTボリューム撮影においても正確にトラッキングし続けることが可能となる。
[その他の実施形態]
上述した実施形態では、被検査物が眼の場合について述べているが、眼以外の皮膚や臓器等の被検査物に本発明を適用することも可能である。この場合、本発明は眼科撮影装置以外の、例えば内視鏡等の医療機器としての態様を有する。従って、本発明は眼科撮影装置に例示される画像処理装置として把握され、被検眼は被検査物の一態様として把握されることが好ましい。
また、本発明は、以下のように装置を構成することによっても達成できる。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(コンピュータプログラム)を記録した記録媒体(又は記憶媒体)をシステム或いは装置に供給することとしてもよい。また、該記録媒体の態様だけでなく、コンピュータの読み取り可能な記録媒体としてもよい。そして、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、該記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。また、該実施形態は、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。