JP7123332B2 - 脱泡滅菌水の製造方法 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 (その1)化学工学会第49回秋季大会の講演予稿集(平成29年9月6日http://www3.scej.org/meeting/49f/で公開)(講演番号PC115)
特許法第30条第2項適用 (その2)化学工学会第49回秋季大会の講演予稿集(平成29年9月6日http://www3.scej.org/meeting/49f/で公開)(講演番号PA227)
特許法第30条第2項適用 (その3)第38回超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム(平成29年10月25日から27日開催)
特許法第30条第2項適用 (その4)2017年度第26回ソノケミストリー討論会(平成29年10月20日から21日開催)(A05)
特許法第30条第2項適用 (その5)2017年度第26回ソノケミストリー討論会(平成29年10月20日から21日開催)(P05)
特許法第30条第2項適用 (その6)2017年度第26回ソノケミストリー討論会(平成29年10月20日から21日開催)(P17)
特許法第30条第2項適用 (その7)信州コロイド&界面科学研究会第3回研究討論会(平成29年10月27日から28日開催)(ポスター発表)
特許法第30条第2項適用 (その8)信州コロイド&界面科学研究会第3回研究討論会(平成29年10月27日から28日開催)(講演)
特許法第30条第2項適用 (その9)2017 International Congress on Ultrasonics Honolulu(平成29年12月18日から20日開催)
本発明は、泡滅菌水の製造方法に関するものである。
直径1μm~100μm程度の微細な気泡であるマイクロバブルが従来知られているが、それよりもさらに細かい直径1μm以下の気泡に対して近年注目が集まっている。このようなものはウルトラファインバブル(UFB)あるいはナノバブルと呼ばれており、例えば、医療、農業、水産業、環境浄化などといった様々な分野で利用が拡大しつつある。
そこで、マイクロバブルを含んだ溶液に対して超音波発振器を用いて超音波を照射することにより、UFBを生成させる装置(ナノバブル生成装置)が従来提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2017-47419号公報
ところで、直径が100nm程度の非常に微細なUFBは、浮力が無視できるほど小さくなることから、液中で安定して存在するようになり、寿命が非常に長くなる。このため、液中にて発生したUFBがなかなか消泡しないことが知られている。ここで、UFB水の用途(例えば脱泡された滅菌水の製造など)によっては、できるだけ早く消泡したい場合がある。しかしながら、従来そのための有効な方法や装置が提案されていなかった。ゆえに、現状では自然に消泡するのを待たざるを得なかった。
なお、UFB水を短時間で消泡するのに例えば消泡剤を使用するという方法や、中空糸膜を使用するという方法などもあるが、医療分野等において有用とされるコンタミネーションのない脱泡滅菌水を得たいような場合には、これらの方法は適切であるとはいえない。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、微細気泡を含む滅菌水を出発材料として、所望とする脱泡滅菌水を比較的簡単にかつ確実に製造することができる方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究を行ったところ、水等の被処理液に対して超音波を照射すると超微細気泡が生成するのみでなく、超音波条件の設定如何によっては液中の超微細気泡を減少させることができることを新たに知見した。そして、本発明者らは上記の知見に基づいてさらに鋭意研究を進めることにより、最終的に下記の発明を完成させるに至ったのである。以下、上記の課題を解決するための発明、及び参考発明を列挙する。
即ち、第1の参考発明は、直径1μm以下の超微細気泡を含む被処理液に対し、200kHz以上の超音波を照射することにより、前記被処理液中の前記超微細気泡を消滅させてその数密度を減少させることを特徴とする超音波脱泡方法をその要旨とする。
従って、第1の参考発明によると、超微細気泡の生成に好適な周波数域(例えば100kHz以下)の超音波よりも高い超音波、具体的には200kHz以上の超音波を被処理液に照射することにより、液中に含まれている超微細気泡を消滅させることができる。よって、超微細気泡の数密度が減少し、効率よく脱泡することができる。
ここで、例えば、被処理液に対して400kHz以上の超音波を20W以上のパワーで10分以上照射することが好ましい(第2の参考発明)。本願発明者の実施した試験によると、高密度の超微細気泡を含む液に超音波照射した場合、超音波パワーが強いほど、また周波数が高いほど超微細気泡の数密度の減少が顕著になることがわかっている。従って、上記のような高周波数・高パワーの超音波を所定時間以上照射するといった照射条件を設定することにより、液中に含まれている超微細気泡を確実に消滅させることができる。よって、超微細気泡の数密度が大幅に減少し、いっそう効率よく脱泡することができる。具体的には、比較的短時間のうちに超微細気泡の数密度を初期値の1/10程度まで減少させることができる。
第3の参考発明は、上記の場合において、前記被処理液に対し、非加熱条件下で超音波を照射することをその要旨とする。
従って、第3の参考発明によると、加熱及び冷却のプロセスを省略することができるので、処理の効率化を図ることができる。
第4の参考発明は、前記超微細気泡を含む被処理液を第1の参考発明の方法によって脱泡する装置であって、前記被処理液を入れる処理槽と、前記処理槽に設けられ、200kHz以上の超音波を発生する超音波振動子とを備えた超音波脱泡装置をその要旨とする。
従って、第4の参考発明によると、比較的簡単な構成であるにもかかわらず、超微細気泡の消泡に好適な周波数域の超音波を処理槽内の被処理液に照射することができ、もって液中に含まれている超微細気泡を消滅させることができる。
請求項1に記載の発明は、冷却水を循環供給可能な内部空間及び底部を有する本体部を含んで構成された密閉型処理槽と、前記本体部の前記底部の下面に固定された超音波振動子と、を備えた超音波脱泡装置における前記密閉型処理槽内に、直径1μm以下の超微細気泡を含む滅菌水を導入する滅菌水導入ステップを行った後、前記密閉型処理槽内の前記滅菌水に対する200kHz以上5MHz以下の超音波の照射により前記滅菌水中の前記超微細気泡を消滅させてその数密度を半減させる脱泡ステップを行うことによって、相対的に低密度で前記超微細気泡を含む滅菌水を生成する方法であって、前記滅菌水導入ステップでは、密度が3×10個/mL以上かつ直径の最大頻度値(モード径)が110nm~140nmの超微細気泡を含む含高密度気泡滅菌水を導入し、前記脱泡ステップでは、前記内部空間に前記冷却水を循環供給して前記処理槽の温度を10℃~30℃の常温に保った状態で前記超音波振動子を30分以下の時間駆動することにより、前記含高密度気泡滅菌水に対し、200kHz以上の超音波を20W以上のパワーで15分以上照射、400kHz以上の超音波を20W以上のパワーで5分以上照射、1MHz以上の超音波を5W以上のパワーで15分以上照射、1MHz以上の超音波を10W以上のパワーで7分以上照射、1MHz以上の超音波を15W以上のパワーで4分以上照射、または1MHz以上の超音波を20W以上のパワーで2分以上照射することを特徴とする脱泡滅菌水の製造方法をその要旨とする。
従って、請求項に記載の発明によると、滅菌水導入ステップの次のステップにて、超微細気泡の生成に好適な周波数域の超音波よりも高い超音波、具体的には200kHz以上の超音波を滅菌水に照射することにより、滅菌水中に含まれている超微細気泡を消滅させることができる。よって、超微細気泡の数密度が減少し、相対的に低密度で前記超微細気泡を含む脱泡滅菌水等を比較的簡単にかつ確実に生成することができる。
以上詳述したように、請求項に記載の発明によると、超微細気泡を含む滅菌水を出発材料として、所望とする脱泡滅菌水を比較的簡単にかつ確実に製造することができる方法を提供することができる。
本発明を具体化した一実施形態の超音波脱泡装置を示す概略構成図。 本実施形態において、超音波照射時間を変えた場合のUFBの気泡径分布を示すグラフ。 本実施形態において、超音波パワーを変えた場合のUFB数密度の時間変化を示すグラフ。 本実施形態において、周波数を変えた場合のUFB数密度の時間変化を示すグラフ。 本実施形態において、UFB減少率の周波数依存を示すグラフ。 本実施形態において、UFBの平均気泡径の時間変化を示すグラフ。 本実施形態において、UFBのモード径の時間変化を示すグラフ。
以下、本発明の超音波脱泡方法及び装置、脱泡滅菌水の製造方法を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1には、本実施形態の超音波脱泡装置11の概略構成図が示されている。この超音波脱泡装置11は、直径1μm以下の超微細な気泡であるUFBを含むUFB水W1(被処理液)に対し、超音波を照射するための装置であり、処理槽12、超音波振動子13、駆動装置を備えている。
処理槽12は上部が開口した有底の容器であって、その内部にUFB水W1が溜められるようになっている。本実施形態では、本体部12aの下部にフランジ部12bを有する二重円筒状の処理槽12が用いられている。フランジ部12bの下端側には、本体部12aよりも大径かつ円筒状の支持体16が取り付けられている。本体部12aにおける2箇所には、処理槽12の内部空間に冷却水を取り入れるための取入口14と、内部空間から冷却水を排出するための排出口15とがそれぞれ設けられている。なお、冷却水は図示しない恒温槽に溜められており、図示しないポンプの駆動によって常時処理槽12に対して循環供給される。その結果、処理槽12内の温度が常温(例えば10℃~30℃)に保たれるようになっている。
超音波振動子13は、処理槽12内のUFB水W1に超音波を照射するための手段であって、支持体16の内側に収容配置された状態で処理槽12の底部に固定されている。本実施形態における超音波振動子13としては、例えば、直径45mmの200kHz用振動子や、直径50mmの300kHz用振動子、488kHz用振動子、1MHz用振動子、2MHz用振動子や、直径20mmの5MHz振動子などが使用可能である(いずれも本多電子社製)。なお、これらの振動子のうち低周波用についてはボルト締めランジュバン型振動子の使用が好適であり、高周波用についてはセラミック素子単体からなる振動子の使用が好適である。
この超音波脱泡装置11における駆動装置は、超音波発振器21、パワーアンプ22及び制御手段としてのPC(パーソナル・コンピュータ)23によって構成されている。超音波発振器21は、パワーアンプ22を介して超音波振動子13に電気的に接続されている。超音波発振器21は、所定周波数(本実施形態では200kHz以上)の連続正弦波の発振信号を出力する。この発振信号は、パワーアンプ22で信号増幅された後、超音波振動子13に供給され、超音波振動子13を駆動する。図示しないが、パワーアンプ22と超音波振動子13との間にインピーダンス・マッチング回路が設けられていてもよい。そして、超音波振動子13は、超音波発振器21の発振周波数に応じた周波数(あるいはインピーダンス・マッチングされた周波数)の超音波を発生する。この結果、処理槽12内のUFB水W1に対し、処理槽12の底部側から上方に向けて超音波が照射される。なお、PC23は超音波発振器21に電気的に接続されており、超音波振動子13から発生される超音波の出力を調整して駆動するべく、超音波発振器21の発振信号の信号レベルを制御するようになっている。なお、PC23にはオシロスコープ24が電気的に接続されている。オシロスコープ24は、パワーアンプ22から出力された信号の電圧及び電流を読み取り、電圧波形及び電流波形として画面上に表示するようになっている。
次に、上記のように構成された超音波脱泡装置11を用いて高密度UFB水W1を脱泡する処理について説明する。
まず、作業者は、超音波脱泡装置11の処理槽12内にUFB水W1を溜めておくとともに、あらかじめ冷却水を循環させて槽内の温度を一定に保つようにしておく。ここで、図示しない開始スイッチをオンすると、駆動装置としてのPC23がそのスイッチ操作に基づき超音波発振器21を駆動させる。このとき、超音波発振器21は、例えば200kHz以上の発振信号をパワーアンプ22を介して出力し、超音波振動子13から所定の超音波を発生させる。超音波振動子13から発生された超音波は、処理槽12内のUFB水W1を伝搬して槽内全体に音場を形成する。このようにして上記周波数の超音波を照射することにより、UFB水W1中のUFBが消滅し、UFB水W1が効率よく脱泡されるようになっている。
以下、上記の実施形態をより具体化した実施例を紹介する。
[実施例1]:高密度UFB水W1に対する超音波照射実験
本実施例では、以下の方法により超音波照射実験を行った。
1.実験方法
まず、加圧溶解法(ultrafineGaLF,IDEC)によって、密度が約3×10個/mL以上かつ直径の最大頻度値(モード径)が110nm~140nmのUFBを含む高密度UFB水W1を作製した。この高密度UFB水W1を図1に示した超音波脱泡装置11の処理槽12内に100mL入れた状態で、超音波の照射を行った。このとき、超音波の周波数を22kHz~1MHzの範囲で変更するとともに、超音波のパワーを5W~20Wの範囲で変更して、UFBの数密度と気泡径との経時変化の調査を行った。なお、UFB水W1中のUFBの数密度については、ナノ粒子ブラウン運動追跡装置(NanoSight,Malvern)を用いて測定した。超音波のパワーについては、カロリメトリ法で求めた。その結果を図2~図7のグラフに示す。
2.実験結果及び考察
図2のグラフは、超音波照射時間を変えた場合(0分、5分、10分、30分)のUFBの気泡径分布を示している。超音波照射前の高密度UFB水W1に含まれるUFBの数密度は、約3×10個/mL、モード径は約120nmであった。そこで、周波数480kHz、パワー20Wで超音波を照射したところ、5分照射後のUFBの数密度は、約1×10個/mLに減少し、初期値の1/3以下の値となった。また、UFBのモード径は約90nmになった。なお、UFBの数密度は、時間の経過とともにさらに減少する傾向がみられた。従って、以上の結果より、高密度UFB水W1に超音波を照射した場合、照射時間が長くなるほど多くのUFBが消滅することがわかった。また、超音波の照射により、UFBのモード径が小さくなる傾向があることがわかった。
図3のグラフは、超音波の周波数を一定にして超音波パワーを変えた場合(5W、10W、15W、20W)のUFB数密度の時間変化を示している。UFBの数密度が約3.0×10個/mLである高密度UFB水W1に対し、1MHzの超音波を30分間照射したところ、超音波のパワーが強くなるほど多くのUFBが消滅し、UFBの数密度の値が小さくなることがわかった。また、照射時間の増加とともにUFBの数密度の値が指数関数的に減少することもわかった。
具体的にいうと、例えば20Wのパワーで超音波を照射した場合、約2分経過後にUFBの数密度を半減させる(即ち、約1.5×10個/mL程度にする)ことができ、7~8分経過後にUFBの数密度を約1/10に減じることができ、最終的にはUFBの数密度をほぼゼロにすることができた。15Wのパワーで超音波を照射した場合、3~4分経過後にUFBの数密度を半減させることができ、12~13分経過後にUFBの数密度を約1/10に減じることができ、最終的にはUFBの数密度をほぼゼロにすることができた。10Wのパワーで超音波を照射した場合、6~7分経過後にUFBの数密度を半減させることができ、約25分経過後にUFBの数密度を約1/10に減じることができた。5Wのパワーで超音波を照射した場合、約15分経過後にUFBの数密度を半減させることができ、最終的にはUFBの数密度を約1/3に減じることができた。なお、照射時間を30分よりも長くすれば、15W以上のときと同様にUFBの数密度をゼロに減じることが可能であると考えられた。
図4のグラフは、超音波のパワーを一定にして周波数(22kHz、43kHz、129kHz、488kHz、1MHz)を変えた場合のUFB数密度の時間変化を示している。UFBの数密度が約3.0×10個/mLである高密度UFB水W1に対し、20Wのパワーの超音波を30分間照射したところ、周波数が高くなるほど多くのUFBが消滅し、UFBの数密度の値が小さくなることがわかった。
具体的にいうと、例えば1MHzの周波数で超音波を照射した場合、約2分経過後にUFBの数密度を半減させる(即ち、約1.5×10個/mL程度にする)ことができ、7~8分経過後にUFBの数密度を約1/10に減じることができ、最終的にはUFBの数密度をほぼゼロにすることができた。488kHzの周波数で超音波を照射した場合、3~4分経過後にUFBの数密度を半減させることができ、12~13分経過後にUFBの数密度を約1/10に減じることができ、最終的にはUFBの数密度をほぼゼロにすることができた。ちなみに、周波数が200kHz程度の超音波振動子13や、300kHz程度の超音波振動子13を用いたときの具体的なデータはここでは割愛するが、いずれも10分以内にUFBの数密度を半減させることが可能であった。
これに対し、200kHzよりも比較的低い周波数(22kHz、43kHz、129kHz)を用いた場合には、UFBの数密度は一応減少するものの、10分以内に半減させることができなかった。そして、このような違いが生じるのは、周波数の違いによるキャビテーションバブルの成長速度の差によるものであり、高周波ほど成長速度が速いためであると考えられた。また、200kHzよりも比較的低い周波数の超音波を照射すると、UFBの消滅ばかりでなく生成も同時に起こりやすくなるからであるとも考えられた。
図5のグラフは、UFB減少率の周波数依存を示している。これによると、超音波の周波数が高くなるほど、UFB減少率の減少率が指数関数的に高くなっており、明らかに周波数依存性があることがわかった。
図6のグラフは、超音波のパワーを一定にして30分間照射を行ったときの周波数(22kHz、43kHz、129kHz、488kHz、1MHz)ごとのUFBの平均気泡径の時間変化を示している。また、図7のグラフは、超音波のパワーを一定にして30分間照射を行ったときの周波数(22kHz、43kHz、129kHz、488kHz、1MHz)ごとのUFBのモード径の時間変化を示している。
1MHz照射の場合、平均気泡径の値は照射開始直後から増加し、モード径の値は照射開始後にいったん減少してから増加に転じることがわかった。488kHz照射の場合、平均気泡径の値もモード径の値も、照射開始後にいったん減少してから増加に転じることがわかった。129kHz照射及び43kHzの場合、平均気泡径の値は照射開始後にいったん減少してから増加に転じることがわかった。また、モード径の値は照射開始後から一定の期間減少を続けるものの、曲線の形状から判断して、30分間経過後にはおそらく増加に転じるものと予想された。22kHz照射の場合、平均気泡径の値もモード径の値も、照射開始後から30分経過するまでの間、絶えず減少することがわかった。ただし、このような低周波超音波の照射時においても、ある程度長い時間(例えば1~2時間)が経過した後には、おそらく増加に転じるものと予想された。
[実施例2]:脱泡滅菌水の製造
本実施例では、以下の手順により脱泡滅菌水を作製した。まずここでは、あらかじめ滅菌された超純水を用いるとともに、加圧溶解法により密度が約3×10個/mL以上かつモード径が110nm~140nmのUFBを含む高密度UFB水W1(便宜上「含高密度気泡滅菌水」とする。)を作製した。この含高密度気泡滅菌水を図1に示した超音波脱泡装置11の処理槽12内に所定量(例えば100mL)導入し、槽内を常温(25℃)に保つようにした。なお、本実施例では処理槽12として密閉容器を用いた。次いで、このような密閉容器内の含高密度気泡滅菌水に対して200kHz以上の超音波、具体的には周波数488kHzかつ20Wのパワーの超音波を10分間照射した。その結果、含高密度気泡滅菌水中のUFBが比較的短時間で速やかに消滅し、UFBの数密度を約1/7以下に減少させることができた。
従って、この方法によれば、上記の含高密度気泡滅菌水よりも相対的に低密度でUFBを含む滅菌水(脱泡滅菌水)を効率良く確実に生成することができることがわかった。なお、このようにして製造された脱泡滅菌水は、コンタミネーションのないクリーンなものであるため、例えば医療目的(例えば超音波診断における造影剤の用途など)で用いる際に好適なものであると結論付けられた。
[結論]
従って、以上詳述したように、本実施形態によれば次のような効果を得ることができる。即ち、高周波数・高パワーの超音波を所定時間以上照射するといった照射条件を設定した上記の超音波脱泡方法によれば、UFB水W1中におけるUFBを短時間で効率よく脱泡することができる。また、上記の超音波脱泡装置11によれば、比較的簡単な構成であるにもかかわらず、UFB水W1中におけるUFBを短時間で効率よく脱泡することができる。さらに、上記の脱泡滅菌水の製造方法によれば、超微細気泡を含む滅菌水を出発材料として、所望とする低い濃度でUFBを含む脱泡滅菌水や、あるいはUFBを殆ど含まない脱泡滅菌水を比較的簡単にかつ確実に得ることができる。なお、上記実施形態では、UFB水W1に対する脱泡処理を行うに際して常温下で、つまり非加熱条件下で超音波照射を行っているため、加熱及び冷却のプロセスを省略することができ、処理の効率化を図ることができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において任意に変更可能であることは言うまでもない。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)直径1μm以下の超微細気泡を含む被処理液に対し、400kHz以上の超音波を20W以上のパワーで5分以上照射することにより、前記被処理液中の前記超微細気泡を消滅させてその数密度を半減させることを特徴とする超音波脱泡方法。
(2)直径1μm以下の超微細気泡を含む被処理液に対し、200kHz以上の超音波を20W以上のパワーで15分以上照射することにより、前記被処理液中の前記超微細気泡を消滅させてその数密度を半減させることを特徴とする超音波脱泡方法。
(3)直径1μm以下の超微細気泡を含む被処理液に対し、1MHz以上の超音波を5W以上のパワーで15分以上照射することにより、前記被処理液中の前記超微細気泡を消滅させてその数密度を半減させることを特徴とする超音波脱泡方法。
(4)直径1μm以下の超微細気泡を含む被処理液に対し、1MHz以上の超音波を10W以上のパワーで7分以上照射することにより、前記被処理液中の前記超微細気泡を消滅させてその数密度を半減させることを特徴とする超音波脱泡方法。
(5)直径1μm以下の超微細気泡を含む被処理液に対し、1MHz以上の超音波を15W以上のパワーで4分以上照射することにより、前記被処理液中の前記超微細気泡を消滅させてその数密度を半減させることを特徴とする超音波脱泡方法。
(6)直径1μm以下の超微細気泡を含む被処理液に対し、1MHz以上の超音波を20W以上のパワーで2分以上照射することにより、前記被処理液中の前記超微細気泡を消滅させてその数密度を半減させることを特徴とする超音波脱泡方法。
11…超音波脱泡装置
12…処理槽
13…超音波振動子
W1…被処理液としてのUFB水

Claims (1)

  1. 冷却水を循環供給可能な内部空間及び底部を有する本体部を含んで構成された密閉型処理槽と、前記本体部の前記底部の下面に固定された超音波振動子と、を備えた超音波脱泡装置における前記密閉型処理槽内に、直径1μm以下の超微細気泡を含む滅菌水を導入する滅菌水導入ステップを行った後、
    前記密閉型処理槽内の前記滅菌水に対する200kHz以上5MHz以下の超音波の照射により前記滅菌水中の前記超微細気泡を消滅させてその数密度を半減させる脱泡ステップを行うことによって、相対的に低密度で前記超微細気泡を含む滅菌水を生成する方法であって、
    前記滅菌水導入ステップでは、密度が3×10個/mL以上かつ直径の最大頻度値(モード径)が110nm~140nmの超微細気泡を含む含高密度気泡滅菌水を導入し、
    前記脱泡ステップでは、
    前記内部空間に前記冷却水を循環供給して前記処理槽の温度を10℃~30℃の常温に保った状態で前記超音波振動子を30分以下の時間駆動することにより、前記含高密度気泡滅菌水に対し、
    200kHz以上の超音波を20W以上のパワーで15分以上照射、
    400kHz以上の超音波を20W以上のパワーで5分以上照射、
    1MHz以上の超音波を5W以上のパワーで15分以上照射、
    1MHz以上の超音波を10W以上のパワーで7分以上照射、
    1MHz以上の超音波を15W以上のパワーで4分以上照射、または
    1MHz以上の超音波を20W以上のパワーで2分以上照射する
    ことを特徴とする脱泡滅菌水の製造方法。
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