JP7122931B2 - 再生強化繊維の製造方法および製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、再生強化繊維の製造方法および製造装置に関する。
繊維強化プラスチックの製造工程や繊維強化プラスチックの中間製品(プリプレグ等)の製造工程から発生する中間製品の廃材から強化繊維を回収する方法としては、例えば下記の方法が提案されている。
(1)樹脂で含侵された炭素繊維を含むプリプレグを切断し、切断したプリプレグを加熱処理して樹脂を熱分解する方法(特許文献1)。
(2)樹脂で含侵された炭素繊維を含むプリプレグを硬化させた後、硬化物を粉砕し、粉砕した硬化物を加熱処理して樹脂を熱分解する方法(特許文献1)。
特開平11-290822号公報
しかし、(1)の方法では、樹脂を熱分解する前にプリプレグを切断するため、切断後のプリプレグを取り扱いにくく、また切断後のプリプレグをトレイに充填する工程が増えるため、再生炭素繊維の生産性が低下する。また、切断したプリプレグをバッチ式で加熱処理するため、連続してプリプレグを加熱処理することができず、再生炭素繊維の生産性がよくない。また、切断されたプリプレグを熱分解してマトリックス樹脂が除去されると、炉内のわずかな気流等によって炭素繊維が飛散しやすくなり、炉内を汚染する。また、トレイに充填されたプリプレグ片の層においては、熱分解時に層の内部まで均一にマトリックス樹脂が除去されず、マトリックス樹脂の除去効率が悪い。
(2)の方法では、プリプレグを硬化させる工程、粉砕した硬化物をトレイに充填する工程が増えるため、再生炭素繊維の生産性がよくない。また、粉砕した硬化物をバッチ式で加熱処理するため、連続して硬化物を加熱処理することができず、再生炭素繊維の生産性がよくない。また、粉砕した硬化物を熱分解してマトリックス樹脂が除去されると、炉内のわずかな気流等によって炭素繊維が飛散しやすくなり、炉内を汚染する。また、トレイに充填された硬化物片の層においては、熱分解時に層の内部まで均一にマトリックス樹脂が除去されず、マトリックス樹脂の除去効率が悪い。
本発明は、繊維強化プラスチックの中間製品から再生強化繊維を生産性よく得ることができる再生強化繊維の製造方法および製造装置を提供する。
本発明は、下記の態様を有する。
<1>強化繊維およびマトリックス樹脂を含む、繊維強化プラスチックの中間製品から前記強化繊維を再生強化繊維として得る方法であり、連続した長尺の前記中間製品を、その長手方向が進行方向となるように移動させながら加熱することによって、前記マトリックス樹脂を熱分解して前記再生強化繊維を含む加熱処理物を得る、再生強化繊維の製造方法。
<2>前記中間製品を、一対のロールからなる送りロール、メッシュ状の無端ベルトを有するベルトコンベア、または一対のベルトコンベアからなるダブルベルトプレスで移動させる、前記<1>の再生強化繊維の製造方法。
<3>前記加熱処理物を、その長手方向が進行方向となるように移動させながら切断する、前記<1>または<2>の再生強化繊維の製造方法。
<4>前記加熱処理物を、スリッター、ギロチンカッター、カッターミル、ロービングカッター、フライングシャー、超音波カッター、レーザーカッター、およびウォータージェットカッターからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いて切断する、前記<3>の再生強化繊維の製造方法。
<5>前記強化繊維が、炭素繊維である、前記<1>~<4>のいずれかの再生強化繊維の製造方法。
<6>前記中間製品が、プリプレグ、シートモールディングコンパウンド、トウプレグ、または炭素繊維ケーブルである、前記<1>~<5>のいずれかの再生強化繊維の製造方法。
<7>強化繊維およびマトリックス樹脂を含む、繊維強化プラスチックの中間製品から前記強化繊維を再生強化繊維として得る装置であり、連続した長尺の前記中間製品を貯留する供給部と、前記供給部から引き出された前記中間製品を、その長手方向が進行方向となるように移動させる搬送部と、前記供給部から引き出されて移動する前記中間製品を加熱して前記マトリックス樹脂を熱分解することによって前記再生強化繊維を含む加熱処理物を得る加熱部とを備えた、再生強化繊維の製造装置。
<8>前記加熱部が、トンネル状の加熱炉を有する、前記<7>の再生強化繊維の製造装置。
<9>前記搬送部が、一対のロールからなる送りロール、メッシュ状の無端ベルトを有するベルトコンベア、または一対のベルトコンベアからなるダブルベルトプレスを有する、前記<7>または<8>の再生強化繊維の製造装置。
<10>移動する前記加熱処理物を切断する切断部をさらに備えた、前記<7>~<9>のいずれかの再生強化繊維の製造装置。
<11>前記切断部が、スリッター、ギロチンカッター、カッターミル、ロービングカッター、フライングシャー、超音波カッター、レーザーカッター、およびウォータージェットカッターからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する、前記<10>の再生強化繊維の製造装置。
本発明の再生強化繊維の製造方法によれば、繊維強化プラスチックの中間製品から再生強化繊維を生産性よく得ることができる。
本発明の再生強化繊維の製造装置によれば、繊維強化プラスチックの中間製品から再生強化繊維を生産性よく得ることができる。
本発明の再生強化繊維の製造装置の一例を示す概略構成図である。 本発明の再生強化繊維の製造装置の他の例を示す概略構成図である。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「繊維強化プラスチックの中間製品」とは、成形等によって繊維強化プラスチックに加工できる材料をいう。
「非酸化性雰囲気」とは、酸素ガスを含まない雰囲気、または酸素ガスを実質的に含まない雰囲気をいう。「酸素ガスを実質的に含まない」とは、中間製品を加熱する際に雰囲気中に不可避的に酸素ガスが混入したとしても、酸素ガスの量が、酸素ガスによる強化繊維の劣化がほとんど見られない範囲の量であることをいう。
「酸化性雰囲気」とは、酸素ガスを含む雰囲気であり、非酸化性雰囲気以外の雰囲気をいう。
「過熱水蒸気」とは、沸点以上の温度に加熱された水蒸気をいう。
加熱処理物の「樹脂残渣含有率」は、式(1)から求めた値である。
(B-A×X)/(B)×100 式(1)
A:加熱処理前の繊維強化プラスチックの中間製品の質量
B:加熱処理物の質量
X:加熱処理前の繊維強化プラスチックの中間製品の強化繊維含有率
本明細書および特許請求の範囲において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
図1~図2における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
<繊維強化プラスチックの中間製品>
本発明における繊維強化プラスチックの中間製品は、強化繊維およびマトリックス樹脂を含む。
中間製品は、強化繊維およびマトリックス樹脂以外の他の材料(無機フィラー等)等を含んでいてもよい。
中間製品としては、UD(一方向)やクロス(織物)のプリプレグ、トウプレグ、シートモールディングコンパウンド、炭素繊維ケーブル等が挙げられる。中間製品としては、連続した長尺物を得やすく、連続して加熱処理しやすい点から、プリプレグ、シートモールディングコンパウンド、トウプレグ、または炭素繊維ケーブルが好ましい。
(強化繊維)
強化繊維は、熱分解されない、または熱分解されにくく、加熱処理されても繊維としての形状を保持できるものであればよい。
強化繊維としては、炭素繊維(黒鉛繊維を含む。)、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、タングステンカーバイド繊維、金属繊維等が挙げられ、繊維強化プラスチックの機械特性の点から、炭素繊維が好ましい。
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル繊維を原料に用いたPAN系炭素繊維、石炭ピッチまたは石油ピッチを原料に用いたピッチ系炭素繊維等が挙げられ、再生炭素繊維の機械特性が良好である点から、PAN系炭素繊維が好ましい。
強化繊維は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
強化繊維の形態は、繊維束、織物等の強化繊維基材であってもよく、強化繊維基材を構成していない強化繊維(ミルド強化繊維等)であってもよい。強化繊維の形態としては、中間製品から再生強化繊維として回収しやすい点から、強化繊維基材が好ましい。
中間製品に含まれる強化繊維基材の層数は、中間製品の用途、特性等に応じて適宜設定され、特に限定されない。
強化繊維基材は、シート状であってもよく、チップ状であってもよい。
シート状の強化繊維基材の形態としては、複数の強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(トウ)、強化繊維の繊維束を経糸および緯糸に用いた織物、強化繊維の不織布等が挙げられる。
チップ状の強化繊維基材の形態としては、繊維束を切断したチョップド強化繊維、チップ状の織物等が挙げられる。
中間製品に含まれる強化繊維基材の形態は、1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。中間製品に含まれる複数の強化繊維基材は、例えば、シート状強化繊維基材とチップ状強化繊維基材との組み合わせ等からなる。
繊維束を構成する強化繊維の本数は、繊維強化プラスチックの用途、特性等に応じて適宜設定され、特に限定されない。
強化繊維の長さおよび繊維径は、繊維強化プラスチックの用途、特性等に応じて適宜設定され、特に限定されない。
中間製品に含まれる強化繊維の割合は、繊維強化プラスチックの用途、特性等に応じて適宜設定され、特に限定されない。
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂は、未硬化のものであってもよく、硬化物であってもよい。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド(ナイロン等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート(PMMA)等)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、フェノキシ樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂、熱可塑エラストマー、これらの共重合体、変性体、ブレンド樹脂等が挙げられる。さらに、エラストマーやゴム成分を添加した樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
マトリックス樹脂は、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、硬化剤、硬化助剤、内部離型剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤等が挙げられる。
中間製品に含まれるマトリックス樹脂の割合は、繊維強化プラスチックの用途、特性等に応じて適宜設定され、特に限定されない。
<再生強化繊維の製造装置>
本発明の再生強化繊維の製造装置は、連続した長尺の中間製品を、その長手方向が進行方向となるように移動させる搬送部と、移動する中間製品を加熱してマトリックス樹脂を熱分解することによって再生強化繊維を含む加熱処理物を得る加熱部とを備える。
本発明の再生強化繊維の製造装置は、必要に応じて、移動する加熱処理物を切断する切断部をさらに備えていてもよい。
本発明の再生強化繊維の製造装置は、必要に応じて、連続した長尺の中間製品を貯留する供給部をさらに備えていてもよい。
搬送部としては、送りロール(ニップロール、ユニットロール)、ベルトコンベア、ローラーコンベア、ダブルベルトプレス等を有するものが挙げられる。送りロールとしては、例えば、隣接した一対のゴムロールを有し、少なくとも一方のロールが回転駆動するものが挙げられる。ベルトコンベアとしては、例えば、離間した一対のロールと、これらロール間に架け渡されたメッシュ状の無端ベルトとを有し、少なくとも一方のロールが回転駆動するものが挙げられる。メッシュ状の無端ベルトとしては、例えば、金属メッシュからなる無端ベルトが挙げられる。ローラーコンベアとしては、例えば、所定間隔で平行に配列された複数のロールを有し、各ロールが回転駆動するものが挙げられる。ダブルベルトプレスとしては、例えば、上下に配置した一対のベルトコンベアの間に材料をプレスするものが挙げられる。搬送部としては、送りロール、ベルトコンベア、またはダブルベルトプレスが好ましい。
加熱部としては、連続した長尺の中間製品を加熱処理して、中間製品のマトリックス樹脂を熱分解できるものであれば、いずれも使用できる。加熱部としては、連続した長尺の中間製品を連続して加熱処理しやすい点から、トンネル状の加熱炉を有するものが好ましい。
加熱炉は、中間製品の加熱を行う加熱処理部と、加熱処理部の下流側に並設された加熱処理物を冷却する冷却部とを有してもよい。加熱炉は、加熱処理部の上流側および冷却部の下流側のそれぞれに並設されたガスシール室をさらに有してもよい。加熱炉は、加熱処理部やガスシール室から排出される排気ガスを燃焼処理するバーナーをさらに有してもよい。加熱処理部には、窒素ガスの供給源、空気の供給源、過熱水蒸気発生装置等が接続される。冷却部には、冷却管が配設され、冷却管には熱交換器が接続される。ガスシール室には、窒素ガスの供給源等が接続される。
切断部としては、スリッター、ギロチンカッター、カッターミル、ロービングカッター、フライングシャー、超音波カッター、レーザーカッター、ウォータージェットカッター等を有するものが挙げられる。切断部としては、繊維長の整った再生炭素繊維束が得られる点から、スリッター、ギロチンカッター、カッターミル、ロービングカッター、フライングシャー、超音波カッター、レーザーカッター、またはウォータージェットカッターを有するものが好ましい。
供給部としては、連続した長尺の中間製品が巻き回された巻出ロール、連続した長尺の中間製品が折りたたまれて収納されたケース、トウ状の連続した長尺の中間製品が巻きまわされたボビン、ケーブル状の連続した長尺の中間製品が巻きまわされたリール等を有するものが挙げられる。
図1は、本発明の再生強化繊維の製造装置の一例を示す概略構成図である。
再生強化繊維の製造装置1は、連続した長尺の中間製品100が巻き回された巻出ロール10と;巻出ロール10から中間製品100を引き出して、中間製品100を、その長手方向が進行方向となるように移動させる送りロール12と;巻出ロール10と送りロール12との間に設けられ、巻出ロール10から送りロール12に向かって移動する中間製品100を加熱して加熱処理物102を得る加熱炉14と;加熱炉14を通過し、送りロール12から送り出されてきた加熱処理物102を長手方向に切断するスリッター16と;スリッター16によって切断された加熱処理物102を短く裁断するギロチンカッター18とを備える。
図2は、本発明の再生強化繊維の製造装置の他の例を示す概略構成図である。
再生強化繊維の製造装置2は、連続した長尺の中間製品100が巻き回された巻出ロール10と;加熱炉14から両端が突き出すように加熱炉14内に設けられ、巻出ロール10から中間製品100を引き出して、中間製品100を、その長手方向が進行方向となるように移動させるベルトコンベア20と;ベルトコンベア20上を移動する中間製品100を加熱して加熱処理物102を得る加熱炉14と;加熱炉14を通過し、ベルトコンベア20の終端から送り出されてきた加熱処理物102を長手方向に切断するスリッター16と;スリッター16によって切断された加熱処理物102を短く裁断するギロチンカッター18とを備える。
なお、本発明の再生強化繊維の製造装置は、連続した長尺の中間製品を、その長手方向が進行方向となるように移動させる搬送部と、移動する中間製品を加熱してマトリックス樹脂を熱分解することによって再生強化繊維を含む加熱処理物を得る加熱部とを備えたものであればよく、図示例の再生強化繊維の製造装置に限定されるものではない。
(作用機序)
以上説明した本発明の再生強化繊維の製造装置にあっては、連続した長尺の前記中間製品を貯留する供給部と、供給部から引き出された中間製品を、その長手方向が進行方向となるように移動させる搬送部と、供給部から引き出されて移動する中間製品を加熱して再生強化繊維を含む加熱処理物を得る加熱部とを備えているため、再生強化繊維を含む加熱処理物を連続して生産できる。また、中間製品を事前に切断することがないため、中間製品を取り扱いやすい。そのため、切断したプリプレグをバッチ式で加熱処理する従来の装置に比べて、中間製品から再生強化繊維を生産性よく得ることができる。
<再生強化繊維の製造方法>
本発明の再生強化繊維の製造方法は、繊維強化プラスチックの中間製品から強化繊維を回収して再生強化繊維として再生させる方法である。
本発明の再生強化繊維の製造方法は、具体的には下記の工程を有する。
工程(a):連続した長尺の中間製品を、その長手方向が進行方向となるように移動させながら加熱することによって、マトリックス樹脂を熱分解して再生強化繊維を含む加熱処理物を得る工程。
工程(b):必要に応じて、加熱処理物を、その長手方向が進行方向となるように移動させながら切断することによって、再生強化繊維を含む加熱処理物片を回収する工程。
工程(c):必要に応じて、加熱処理物片を酸化性雰囲気下でさらに加熱して樹脂残渣を低減する工程。
工程(d): 必要に応じて、加熱処理物片を加工する工程。
以下、図1を参照しながら、本発明の再生強化繊維の製造方法の一例について詳細に説明する。
(工程(a))
巻出ロール10から中間製品100を巻き出し、トンネル状の加熱炉14内に通した後、一対のロールからなる送りロール12の間に通す。
送りロール12を回転駆動させることによって、連続した長尺の中間製品100を、巻出ロール10から引き出し、中間製品100の長手方向が進行方向となるように巻出ロール10から送りロール12に向かって加熱炉14内を移動させる。
中間製品100を加熱炉14内で移動させながら加熱することによって、中間製品100に含まれるマトリックス樹脂を熱分解(ガス化、炭化等)して再生強化繊維を含む加熱処理物102を得る。
中間製品の長さは、再生強化繊維の生産性がさらに高くなる点から、炉長プラス2m以上が好ましく、炉長プラス5m以上がより好ましく、炉長プラス10m以上がさらに好ましい。中間製品の長さは、長ければ長いほどよく、上限は特に限定されない。
加熱炉内は酸化性雰囲気、非酸化性雰囲気のいずれかとされる。強化繊維表面の酸化による劣化を抑制できる点から、非酸化性雰囲気が好ましい。非酸化性雰囲気としては、酸素ガスを含まない雰囲気、または酸素ガスを実質的に含まない雰囲気であればいずれも採用できる。酸素ガスを含まない、または酸素ガスを実質的に含まない不活性ガスを適宜、加熱炉内に導入してもよい。不活性ガスとしては、マトリックス樹脂を十分に熱分解でき、経済性、安全性の点から、窒素ガス雰囲気または過熱水蒸気雰囲気が好ましい。
中間製品を加熱するときの温度は、300~1000℃の範囲で適宜設定すればよい。加熱温度は、300~700℃が好ましく、400~700℃がより好ましく、500~700℃がさらに好ましい。加熱温度が前記範囲の下限値以上であれば、マトリックス樹脂を十分に熱分解できる。加熱温度が前記範囲の上限値以下であれば、エネルギーコストを抑えられ、設備仕様も安価にできる。加熱温度は、加熱炉内の雰囲気における温度である。
中間製品を加熱する時間(中間製品の加熱炉内の滞在時間)は、加熱温度に応じて10~180分の範囲で適宜設定すればよい。加熱時間は、10~180分が好ましく、10~120分がより好ましく、10~60分がさらに好ましい。加熱時間が前記範囲の下限値以上であれば、マトリックス樹脂を十分に熱分解できる。加熱時間が前記範囲の上限値以下であれば、スループットを高めることでき、生産性がさらに向上する。
加熱処理物の樹脂残渣含有率は、加熱処理物の100質量%のうち、0.01~30.0質量%が好ましく、3~25質量%がより好ましく、5~20質量%がさらに好ましい。加熱処理物の樹脂残渣含有率が前記範囲の下限値以上であれば、加熱処理物が強化繊維束としての形態を十分に保持でき、加熱処理物の取扱性がよくなる。そのため、加熱処理物を切断しやすくなり、再生強化繊維の生産性がさらに高くなる。また、加熱処理物を切断して得られた再生強化繊維が強化繊維束としての形態を十分に保持できる。加熱処理物の樹脂残渣含有率が前記範囲の上限値以下であれば、加熱処理物が硬すぎることがない。そのため、加熱処理物を切断しやすくなり、再生強化繊維の生産性がさらに高くなる。また、不純物である樹脂残渣が少なくなり、再生強化繊維としての品質が高くなる。
(工程(b))
加熱炉14を通過し、送りロール12から送り出されてきた加熱処理物102を、スリッター16によって長手方向に切断した後、スリッター16によって切断された加熱処理物102をギロチンカッター18によって短く裁断することによって、再生強化繊維を含む加熱処理物片104として回収する。
加熱処理物を切断して得られた加熱処理物片には樹脂残渣が少し含まれているため、複数の強化繊維間が樹脂残渣によって固着した状態にある。そのため、加熱処理物片は、強化繊維束、織物、不織布等としての形態を保持できる。よって、加熱処理物片は、それぞれの形態に応じた用途に再利用できる。例えば、チップ状の強化繊維束は、チョップド再生強化繊維束として再利用できる。
(工程(c))
加熱処理物片には、樹脂残渣が含まれる。樹脂残渣が低減された再生強化繊維を得るために、加熱処理物片を酸化性雰囲気下でさらに加熱して樹脂残渣を酸化し、低減してもよい。酸化性雰囲気としては、酸素ガスを含む雰囲気であれば、いずれも採用できる。酸素ガスの濃度としては、0.1~21体積%が好ましい。
酸化性雰囲気下で加熱された加熱処理物片は、樹脂残渣の除去が不十分な場合は強化繊維束となり、樹脂残渣の除去が十分な場合は、綿状強化繊維となる。
加熱処理物片を加熱するときの温度は、300~700℃が好ましく、400~600℃がより好ましく、450~550℃がさらに好ましい。加熱温度が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂残渣を十分に除去できる。加熱温度が前記範囲の上限値以下であれば、再生強化繊維が劣化しにくく、再生強化繊維の機械特性等が低下しにくい。
加熱処理物片を加熱する時間は、加熱温度に応じて10~180分の範囲で適宜設定すればよい。加熱時間は、10~180分が好ましく、10~120分がより好ましく、10~60分がより好ましい。加熱時間が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂残渣を十分に除去できる。加熱温度が前記範囲の上限値以下であれば、スループットを高めることができる。
(工程(d))
加熱処理物片を、公知の粉砕機を用いて細かく粉砕して、ミルド再生強化繊維を得てもよい。
(作用機序)
以上説明した本発明の再生強化繊維の製造方法にあっては、連続した長尺の中間製品を、その長手方向が進行方向となるように移動させながら加熱することによって、マトリックス樹脂を熱分解して再生強化繊維を含む加熱処理物を得ているため、再生強化繊維を含む加熱処理物を連続して生産できる。また、中間製品を事前に切断することがないため、中間製品を取り扱いやすい。そのため、切断したプリプレグをバッチ式で加熱処理する従来の方法に比べて、中間製品から再生強化繊維を生産性よく得ることができる。
<再生強化繊維の利用方法>
再生強化繊維は、繊維強化プラスチックの中間製品の強化繊維として再利用できる。
中間製品を製造する具体的な方法としては、下記の方法(α)が挙げられる。
方法(α):再生強化繊維および熱可塑性樹脂を混練して混練物を得て、混練物をペレットに加工する方法。
方法(α)に用いることができる再生強化繊維の形態は、長繊維束、短繊維束、強化繊維織物、チップ状強化繊維束、綿状強化繊維、ミルド強化繊維等が挙げられる。
方法(α)に用いることができる熱可塑性樹脂としては、ポリアミド(ナイロン等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート(PMMA)等)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、フェノキシ樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂、熱可塑エラストマー、これらの共重合体、変性体、ブレンド樹脂等が挙げられる。さらに、エラストマーやゴム成分を添加した樹脂であってもよい。
方法(α)においては、例えば、再生強化繊維および熱可塑性樹脂を押出機で混練し、混練物をダイからストランドとして押し出し、ストランドを冷却した後、ペレタイザで切断することによって、ペレットを得る。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<測定>
(加熱処理物片の樹脂残渣含有率)
加熱処理物片の樹脂残渣含有率は、加熱処理前の繊維強化プラスチックの中間製品に含まれる強化繊維質量を強化繊維含有率から算出し、式(1)から求めた。
<中間製品>
中間製品として、プリプレグ(長さ:20m、幅:30cm、厚さ:0.12mm、強化繊維の種類:PAN系炭素繊維、炭素繊維基材の種類:0°配向繊維束単層、マトリックス樹脂の種類:未硬化のエポキシ樹脂)を巻き回した巻出ロールを2本用意した。
<実施例1>
図2に示す再生強化繊維の製造装置2を用意した。
ベルトコンベア20の金属メッシュからなる無端ベルトの上に連続した長尺のプリプレグを2本並べ、毎時12mで加熱炉14(長さ:4m)内を移動させた。加熱炉14内の窒素ガス雰囲気を維持しつつ、プリプレグを600℃で加熱し、加熱処理物を得た。加熱処理物をスリッター16にて切断し、ギロチンカッター18にて裁断して再生炭素繊維を含む加熱処理物片を得た。加熱処理物片の樹脂残渣含有率は、10質量%であった。再生炭素繊維を含む加熱処理物片を連続して得ることができた。
<比較例1>
あらかじめスリッターおよびギロチンカッターで切断したプリプレグをトレイに充填し、600℃で120分間加熱し、加熱処理物を得た。加熱処理物片の樹脂残渣含有率は、16質量%であり、実施例1の加熱処理物片に比べてマトリックス樹脂の除去性が悪かった。
本発明の再生強化繊維の製造方法は、繊維強化プラスチックの中間製品から強化繊維を再生強化繊維として回収する方法として有用である。
1 再生強化繊維の製造装置、2 再生強化繊維の製造装置、10 巻出ロール、12 送りロール、14 加熱炉、16 スリッター、18 ギロチンカッター、20 ベルトコンベア、100 中間製品、102 加熱処理物、104 加熱処理物片。

Claims (13)

  1. 強化繊維およびマトリックス樹脂を含む、繊維強化プラスチックの中間製品から前記強化繊維を再生強化繊維として得る方法であり、
    連続した長尺の前記中間製品を貯留する供給部から中間製品を引き出し、その長手方向が進行方向となるように移動させながら加熱することによって、前記マトリックス樹脂を熱分解して前記再生強化繊維を含む加熱処理物を得る方法であって、
    前記供給部が、連続した長尺の中間製品が巻き回された巻出ロール、連続した長尺の中間製品が折りたたまれて収納されたケース、トウ状の連続した長尺の中間製品が巻きまわされたボビン、ケーブル状の連続した長尺の中間製品が巻きまわされたリールからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する、再生強化繊維の製造方法。
  2. 前記中間製品を、一対のロールからなる送りロール、メッシュ状の無端ベルトを有するベルトコンベア、または一対のベルトコンベアからなるダブルベルトプレスで移動させる、請求項1に記載の再生強化繊維の製造方法。
  3. 前記加熱処理物を、その長手方向が進行方向となるように移動させながら切断する、請求項1または2に記載の再生強化繊維の製造方法。
  4. 前記加熱処理物を、スリッター、ギロチンカッター、カッターミル、ロービングカッター、フライングシャー、超音波カッター、レーザーカッター、およびウォータージェットカッターからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いて切断する、請求項3に記載の再生強化繊維の製造方法。
  5. 前記強化繊維が、炭素繊維である、請求項1~4のいずれか一項に記載の再生強化繊維の製造方法。
  6. 前記中間製品が、プリプレグ、シートモールディングコンパウンド、トウプレグ、または炭素繊維ケーブルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の再生強化繊維の製造方法。
  7. 酸化性雰囲気下で加熱を行わない、請求項1~6のいずれか一項に記載の再生強化繊維の製造方法。
  8. 強化繊維およびマトリックス樹脂を含む、繊維強化プラスチックの中間製品から前記強化繊維を再生強化繊維として得る装置であり、
    連続した長尺の前記中間製品を貯留する供給部と、
    前記供給部から引き出された前記中間製品を、その長手方向が進行方向となるように移動させる搬送部と、
    前記供給部から引き出されて移動する前記中間製品を加熱して、前記マトリックス樹脂を熱分解することによって前記再生強化繊維を含む加熱処理物を得る加熱部と
    を備え
    前記供給部が、連続した長尺の中間製品が巻き回された巻出ロール、連続した長尺の中間製品が折りたたまれて収納されたケース、トウ状の連続した長尺の中間製品が巻きまわされたボビン、ケーブル状の連続した長尺の中間製品が巻きまわされたリールからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する、再生強化繊維の製造装置。
  9. 前記加熱部が、トンネル状の加熱炉を有する、請求項に記載の再生強化繊維の製造装置。
  10. 前記搬送部が、一対のロールからなる送りロール、メッシュ状の無端ベルトを有するベルトコンベア、または一対のベルトコンベアからなるダブルベルトプレスを有する、請求項8または9に記載の再生強化繊維の製造装置。
  11. 移動する前記加熱処理物を切断する切断部をさらに備えた、請求項8~10のいずれか一項に記載の再生強化繊維の製造装置。
  12. 前記切断部が、スリッター、ギロチンカッター、カッターミル、ロービングカッター、フライングシャー、超音波カッター、レーザーカッター、およびウォータージェットカッターからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する、請求項11に記載の再生強化繊維の製造装置。
  13. 酸化性雰囲気下で加熱を行う部材を有しない、請求項8~12のいずれか一項に記載の再生強化繊維の製造装置。
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