JP7117931B2 - 透過性浄化壁の再生方法および地下水の浄化方法 - Google Patents
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Description
そのため、透過性浄化壁を設置してから長期間が経過して金属還元剤の反応性が低下した場合には、新たに透過性浄化壁を設置したり、透過性浄化壁内の金属還元剤を交換すること等により浄化性能の回復を図る必要があった。
(1)金属還元剤を反応材とする透過性浄化壁の地下水浄化機能を原位置にて再生させる透過性浄化壁の再生方法であって、糖類を含む栄養剤含有液を前記透過性浄化壁に供給することを特徴とする透過性浄化壁の再生方法、
(2)前記糖類が単糖類である上記(1)に記載の透過性浄化壁の再生方法、
(3)固形分換算したときに、前記栄養剤含有液中の糖類の含有割合が0.1 ~5質量%である上記(1)または(2)に記載の透過性浄化壁の再生方法、
(4)前記金属還元剤が鉄である上記(1)~(3)のいずれかに記載の透過性浄化壁の再生方法、
(5)前記透過性浄化壁に形成された供給孔または前記透過性浄化壁の設置個所における地下水流れの上流側に形成された供給孔から前記栄養剤含有液を供給することを特徴とする、上記(1)~(4)のいずれかに記載の透過性浄化壁の再生方法、
(6)地下水を浄化する方法であって、
金属還元剤を反応材とする地下水浄化機能を有する透過性浄化壁に対し、
糖類を含む栄養剤含有液を供給する
ことを特徴とする地下水の浄化方法、および
(7)前記地下水がクロロエチレンを含む(6)に記載の地下水の浄化方法、
を提供するものである。
また、糖類を含む栄養剤含有液を透過性浄化壁に供給することにより、土壌中の揮発性有機化合物(VOC)分解菌(例えば、 Dehalococcoides等)も活性化され、土壌中のクロロエチレンを始めとする揮発性有機塩素化合物を分解しつつ上記と同様に還元性の代謝物を環境中に放出し、透過性浄化壁の機能を補完、強化し得ると考えられる。
さらに、上記糖類を含む栄養剤含有液のpHは、通常、中性(pH=7)付近にあることから、栄養剤含有液を供給するにあたって特段のpH調整を必要としない。
このため、 本発明によれば、pH調整を必要とすることなく、透過性浄化壁の機能を簡易かつ安価に回復、強化し得る透過性浄化壁の再生方法を提供することができる。また、本発明によれば、pH調整を必要とすることなく、透過性浄化壁の機能を簡易かつ安価に回復、強化しつつ地下水を浄化する方法を提供することができる。
上記還元性を有する金属として、例えば、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、亜鉛、ガリウムや、マグネシウム-マンガン合金、亜鉛-アルミニウム合金、アルミニウム-スズ合金等の金属合金等から選ばれる一種以上を挙げることができ、これ等の金属のうち、安価であるとともに還元性が比較的高いことから鉄が好ましい。
なお、本出願書類において、金属還元剤の平均粒子径は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径(D50)を意味する。
透過性浄化壁は、地中に列状に配置された複数本の浄化杭を縦列配置した集合体により壁状に形成されていてもよいし、地表から地中に向かって掘削溝を形成し、この掘削溝に反応材を充填することにより壁状に形成されていてもよい。
上記浄化杭は、所望の透水性を確保することが可能であれば、金属還元剤(反応材)のみが充填されていてもよいし、また、砕石以外の材料と金属還元剤との混合体が充填されていてもよい。
隣り合う浄化杭同士を互いに隙間をあけて間欠的に配置する場合、例えば、浄化杭を複数列、縦列に配置しつつ、前列の浄化杭同士の隙間に、後列の浄化杭が位置するように配置し、複数の浄化杭全体として汚染水と密に接触し得るように配置することが好ましい。
上記還元性の代謝物としては、例えば、ギ酸、シュウ酸、ピルビン酸、リンゴ酸、乳酸、プロピオン酸、酢酸、クエン酸、水素、メタン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記有機酸またはその誘導体としては、安息香酸塩、乳酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、酪酸塩、クエン酸塩等から選ばれる一種以上が好ましい。
透過性浄化壁に栄養剤含有液を供給する場合、ポンプを用いて供給してもよいし、自然浸透により供給してもよい。
この場合、例えば、図1に例示するように、透過性浄化壁bの上部に形成された注入井f1から栄養剤含有液sを供給したり、透過性浄化壁bの設置個所における地下水流れ(図の左から右方向)の上流側に形成された注入井f2から栄養剤含有液を供給する態様を挙げることができる。
注入井は、図1に例示する注入井f1のように、注入井を構成する筒状本体末端部の孔を栄養剤含有液の供給孔とするものであってもよいし、図1に例示する注入井f2のように、注入井を構成する筒状本体の側面(長手方向表面)に設けた貫通孔pを栄養剤含有液の供給孔とするものであってもよい。
本発明に係る地下水の浄化方法は、地下水を浄化する方法であって、金属還元剤を反応材とする地下水浄化機能を有する透過性浄化壁に対し、糖類を含む栄養剤含有液を供給することを特徴とするものである。
本発明に係る地下水の浄化方法においては、糖類を含む栄養剤含有液を透過性浄化壁に供給することにより、土壌中の揮発性有機化合物(VOC)分解菌(例えば、Dehalococcoides等)も活性化され、金属還元剤での分解が困難な土壌中のクロロエチレンを分解し得るばかりか、上記と同様に還元性の代謝物を環境中に放出し、透過性浄化壁の機能を強化しつつ地下水の浄化能力を向上し得ると考えられる。
(1)栄養剤含有液の調整
栄養剤含有液として、固形分濃度が2.5質量%で、pH6.5~8.5である、グルコースを主成分として含む水溶液を調製した。
上記栄養剤含有液は、グルコースを1.7質量%の濃度で含むものである。
内部に鉄粉を27質量%含む矩形状の透過性浄化壁(長さ6m×幅3.2m×深さ5m)に対し、透過性浄化壁の地上部から内部に向けて延びる注入井を配置し、注入井の末端部に設けた供給孔1から透過性浄化壁内部に上記(1)で調製した栄養剤含有液を1kg/m3の供給量になるように(透過性浄化壁1m3あたりの供給量が1kgとなるように)供給した。
なお、供給孔1は透過性浄化壁の水平断面(長さ6m×幅3.2m)の中心より上流寄りの位置になるように配置した。
上記栄養剤含有液の添加日(栄養剤含有液の添加直前)を0日目としたときに、1日目(1日後)、7日目(7日後)、15日目(15日後)、22日目(22日後)および35日目(35日後)に、透過性浄化壁の栄養剤含有液添加箇所付近から流出する地下水をサンプリングして、溶解性鉄イオン濃度、二価鉄イオン濃度、三価鉄イオン濃度およびpHを以下の方法で測定した。
結果を表1~表4に示す。
1日目および7日目における二価鉄イオンの測定値については測定上限を大きく超えたことから測定することができなかった。
地下水を採水器を用いてポリ容器に採水し、直ちにろ紙(5C)を用いてろ過した。ろ液20mLにpH調整剤として硝酸(濃硝酸および水を1:1の体積比で含有)を1mL加え、ICP発光分光分析法(JIS K 0102-57.4)を用いて溶解性鉄濃度を測定した。
地下水を採水器を用いてポリ容器に採水し、直ちにろ紙(5C)を用いてろ過した。ろ液20mLに呈色試薬として濃度1g/Lの1,10―フェナントロリン溶液2.5mL、緩衝溶液として濃度500g/Lの酢酸アンモニウム溶液5mLを加え、フェナントロリン吸光光度法(JIS K 0102-57.1)を用いて二価鉄イオン濃度を測定した。
上記溶解性鉄イオン濃度の測定結果から二価鉄イオン濃度の測定結果を引いたものを三価鉄イオン濃度とした。
地下水を採水器を用いてポリ容器に採水し、東亜ディーケーケー(株)製のポータブル水質計(WM-32EP)を用いて、直ちにpHを測定した。
実施例1で評価した矩形状の透過性浄化壁において、実施例1における栄養剤含有液の供給箇所(供給孔1の設置箇所)から十分に離間した位置であって、実施例1における栄養剤供給の影響を受けないと考えられる位置において、透過性浄化壁から流出する地下水を実施例1と同じタイミングでサンプリングして、実施例1と同様の方法で、溶解性鉄イオン濃度、二価鉄イオン濃度、三価鉄イオン濃度およびpHを測定した。
結果を表1~表4に示す。
なお、比較例1における三価鉄イオン濃度は、単に「溶解性鉄イオン濃度-二価鉄イオン濃度」式により算出することができなったため、溶解性鉄イオン濃度および二価鉄イオン濃度を対比して、0日目、1日目、7日目、15日目および35日目における三価鉄濃度は0.2mg/L以上になることはないことから「<0.2」(0.2mg/L未満)とし、22日目における三価鉄イオン濃度は0.5を超えることはないことから「≦0.5」(0.5mg/L以下)とした。
(1)Fe+RCl+H+ → Fe2++RH+Cl-
(2)2Fe2++RCl+H+ → 2Fe3++RH+Cl-
(3)Fe+2H2O → Fe2++2OH-+H2
H2+RCl → H++RH+Cl-
(ただし、Rは炭化水素基である。)
表1~表3より、実施例1においては、栄養剤含有液を供給することにより、透過性浄化壁を構成する鉄粉(Fe)の表面に付着していた腐食被膜(酸化鉄被膜)が除去されて、全鉄イオンの濃度である溶解性鉄イオン濃度(表1)、二価鉄イオン濃度(表2)、三価鉄イオン濃度(表3)が上昇し、上記腐食被膜が除去された結果、透過性浄化壁を構成する鉄粉(Fe)に揮発性有機塩素化合物が接触して上記(1)式、(2)式および(3)式に示す還元反応が進行し易くなり、揮発性有機塩素化合物(RCl)の分解が容易に進行することが分かる。
(1)栄養剤含有液の調整
栄養剤含有液として、土壌汚染現場から採取した地下水250mlにグルコース6.25gを添加し分散させた、濃度2.5質量%のグルコース含有液を調製した。
(2)栄養剤含有液の供給
内容量250mlの樹脂製容器内に珪砂17.5gと腐食鉄(酸化鉄)粉末7.5gとを添加、混合して透過性浄化壁模擬材を作製した後、係る容器内に上記(1)で調製したグルコース含有液を全量添加した。
上記グルコース含有液を添加して1週間(7日間)静置した後、容器中の水分を採取して、実施例1と同様の方法で、溶解性鉄イオン濃度、二価鉄イオン濃度、三価鉄イオン濃度およびpHを測定した。
結果を表5に示す。
実施例2の(1)栄養剤含有液の調整において、グルコース6.25gをフルクトース6.25gに変更した以外は、実施例2と同様にして、栄養剤含有液を調製し、透過性浄化壁模擬材に添加した後、容器中の水分を採取して、溶解性鉄イオン濃度、二価鉄イオン濃度、三価鉄イオン濃度およびpHを測定した。
結果を表5に示す。
実施例2の(1)栄養剤含有液の調整において、グルコース6.25gをスクロース6.25gに変更した以外は、実施例2と同様にして、栄養剤含有液を調製し、透過性浄化壁模擬材に添加した後、容器中の水分を採取して、溶解性鉄イオン濃度、二価鉄イオン濃度、三価鉄イオン濃度およびpHを測定した。
結果を表5に示す。
実施例2の(1)栄養剤含有液の調整において、グルコース6.25gをデンプン6.25gに変更した以外は、実施例2と同様にして、栄養剤含有液を調製し、透過性浄化壁模擬材に添加した後、容器中の水分を採取して、溶解性鉄イオン濃度、二価鉄イオン濃度、三価鉄イオン濃度およびpHを測定した。
結果を表5に示す。
実施例2の(1)栄養剤含有液の調整において、グルコース6.25gを加えずに、地下水250mlをそのまま透過性浄化壁模擬材に添加した以外は、実施例2と同様にして、地下水を添加して1週間(7日間)静置した後、容器中の水分を採取して、溶解性鉄イオン濃度、二価鉄イオン濃度、三価鉄イオン濃度およびpHを測定した。
結果を表5に示す。
また、表5より、実施例2~実施例5においては、栄養剤含有液を供給することにより、栄養剤が微生物によって代謝されて酢酸、プロピオン酸、乳酸等の有機酸やその他の還元性を有する物質に変換され、水素イオン濃度が上昇する結果、pHを中性付近に低減できることが分かる。
d:難透水層
e:地表面
f1、f2:注入井
g:透水性の低い材料
p:供給孔
s:栄養剤含有液
Wp:揮発性有機化合物を含む地下水
Wc:浄化水
Claims (7)
- 金属還元剤を反応材とする透過性浄化壁の地下水浄化機能を原位置にて再生させる透過性浄化壁の再生方法であって、 糖類を含む栄養剤含有液を前記透過性浄化壁に供給することを特徴とする透過性浄化壁の再生方法。
- 前記糖類が単糖類である請求項1に記載の透過性浄化壁の再生方法。
- 固形分換算したときに、前記栄養剤含有液中の糖類の含有割合が0.1~5質量%である請求項1または請求項2に記載の透過性浄化壁の再生方法。
- 前記金属還元剤が鉄である請求項1~請求項3のいずれかに記載の透過性浄化壁の再生方法。
- 前記透過性浄化壁に形成された供給孔または前記透過性浄化壁の設置個所における地下水流れの上流側に形成された供給孔から前記栄養剤含有液を供給することを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれかに記載の透過性浄化壁の再生方法。
- 金属還元剤を反応材とする透過性浄化壁の地下水浄化機能を原位置にて再生させつつ地下水を浄化する方法であって、
金属還元剤を反応材とする地下水浄化機能を有する透過性浄化壁に対し、
糖類を含む栄養剤含有液を供給する
ことを特徴とする地下水の浄化方法。 - 前記地下水がクロロエチレンを含む請求項6に記載の地下水の浄化方法。
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