JP7117087B2 - 癌の治療組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、癌の治療組成物に関し、特に、投与した癌から遠く離れた部位(例えば体の反対側に移植した癌)にある癌の縮小効果、および、癌腫瘍につながるリンパ系を介しての転移(リンパ節転移)を抑制する効果を有する癌の治療組成物に関する。
ステージが進んだ癌では癌細胞が原発巣から游走し、臓器組織に定着し、成長するいわゆる転移がみられる。癌種に限らず、転移は癌の予後を決める最も重要な要素の一つであり、これを未然に防止する、あるいは早期に発見し転移部位での増殖拡大を抑制する技術の開発は、患者の予後を高めるための喫緊の課題となっている。
例えば、頸部リンパ節への癌転移は、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)における最も重要な予後因子の1つである。しかし、治療前情報に基づいてリンパ節転移が無いとされる臨床的N0(cN0)症例における治療法の選択、すなわち選択的に頸部リンパ節を郭清するか、注意深く経過観察するかの選択は議論の余地の多い問題である。
頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)は世界で7番目に多いがんであり、毎年68万人を超える患者に影響を及ぼす(1)。HNSCCの標準治療選択肢は、化学療法の有無にかかわらず、手術および/または放射線療法である。しかしながら、がん治療の進歩にもかかわらず、HNSCC患者の5年生存率は過去数十年にわたり有意に改善していない。HNSCCは早期T期においてもリンパ系転移を伴うリンパ節転移(LNM)率が高く、LNMの制御はHNSCC治療における最も重要な予後因子の1つであることはよく知られている(2)。しかし、cN0症例では、現時点でも予防的頸部郭清術を選択すべきか、また経過観察とするかの判断は難しく、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、超音波検査、または陽電子放出断層撮影法(PET)を含む現在のイメージング技術は、潜在的頸部リンパ節転移を検出するのに十分な信頼性がない(3)。
センチネルリンパ節ナビゲーション手術(SNNS)は、SNNSが、頭頸部外科医にとって、不要な頸部郭清術を回避し、HNSCCのcN0症例における後発リンパ節における術後再発率を減少させるのに非常に有用であることが最近報告されている(4-7)。インドシアニングリーン(ICG)によるリアルタイムの近赤外イメージングを使用するSNNSが一般的だが、主な欠点は、リンパ管を通したICGの移動が急速であり、診断時間ウィンドウとともに下流リンパ節の検出に制限があることである。我々は最近、ICG-phytateコロイド混合物の新規技術により、診断時間ウィンドウを延長し、下流のリンパ節検出を防止し、真のセンチネルリンパ節(SLN)の検出精度を改善できることを報告した(8)。このような状況において、HNSCCの原発病変に対する低侵襲性臓器温存手術として、経口的顕微鏡下レーザー手術(TLM)(9)、経口的ロボット手術(TORS)(10)、または経口的内視鏡下咽喉頭部分切除術(TOVS)(11-15)等が世界的に普及してきている。これらの経口的腔外科的処置とSLNの微小転移を標的とする新規の低侵襲治療との組合せは、最小限の低侵襲性術式の選択を可能とし、それによって、術後の再発率を低減し、HNSCC患者の生存率を改善することになる。
[Internet] World Health Organization. International Agency for Research in Cancer. Globocan 2012: estimated cancer incidence, mortality and prevalence worldwide 2012. 2013. http://globocan.iarc.fr/Pages/fact_sheets_cancer.aspx. Tomifuji M, Imanishi Y, Araki K, Yamashita T, Yamamoto S, Kameyama K, et al. Tumor depth as a predictor of lymph node metastasis of supraglottic and hypopharyngeal cancers. Ann Surg Oncol. 2011; 18: 490-96. de Bree R, Castelijns JA, Hoekstra OS, Leemans CR. Advances in imaging in the work-up of head and neck cancer patients. Oral Oncol. 2009; 45: 930-35. Tomifuji M, Shiotani A, Fujii H, Araki K, Saito K, Inagaki K, et al. Sentinel node concept in clinically N0 laryngeal and hypopharyngeal cancer. Ann Surg Oncol. 2008; 15: 2568-75. Civantos FJ, Stoeckli SJ, Takes RP, Woolgar JA, de Bree R, Paleri V, et al. What is the role of sentinel lymph node biopsy in the management of oral cancer in 2010? Eur Arch Otorhinolaryngol 267:839-44. Stoecki SJ, Alkureishi LW, Ross GL. Sentinel node biopsy for early oral and oropharyngeal squamous cell carcinoma. Eur Arch Otorhinolaryngol. 2009; 266: 787-93. Paleri V, Rees G, Arullendran P, Shoaib T, Krishman S. Sentinel lymph node biopsy in squamous cell cancer of the oral cavity and oral pharynx: a diagnostic meta-analysis. Head Neck. 2005; 27: 739-47. Araki K, Mizokami D, Tomifuji M, Yamashita T, Ohnuki K, Umeda IO, et al. Novel indocyanine green-phytate colloid technique for sentinel node detection in head and neck: mouse study. Otolaryngol Head Neck Surg. 2014; 151: 279-85. Jackel MC, Martin A, Steiner W. Twenty-five years experience with laser surgery for head and neck tumors: report of an international symposium, Gottingen, Germany, 2005. Eur Arch Otorhinolaryngol. 2007; 264: 577-85.
本発明が解決しようとする課題は、高ステージになるに従って治癒が難しくなる癌を制御することである。ステージが進んだ癌では癌細胞が原発巣から游走し、臓器組織に定着し、成長するいわゆる転移がみられる。癌種に限らず、転移は癌の予後を決める最も重要な要素の一つであり、原発巣と異なり、転移巣の数の多さや大きさの点から外科的に完全に切除することは非常に困難である。従って、転移を制御できれば、予後の改善に大きく貢献することになる。
本発明が解決しようとする課題となる転移は、原発巣からリンパ節への多発転移と、原発巣から肺や骨、肝臓や腹腔など他臓器・器官へ転移する遠隔転移があり、前者は、外科的なリンパ節郭清術による治療が主体であり、後者は化学療法が主体となるが、どちらも制御しきれない場合が多く、重要な予後因子となっている。本発明となる癌抑制組成物は、原発巣内に投与すると、所属リンパ節のうち特に直接つながっているセンチネルリンパ節に移行し、リンパ節転移を制御する技術である。また同様に原発巣の抑制効果を狙い原発巣内に投与すると、抗腫瘍免疫誘導することにより、遠隔転移に対する抗腫瘍効果が得られる。原発巣に腫瘍溶解性センダイウイルスを投与することにより、腫瘍溶解を引き起こし、抗腫瘍免疫を誘導、遠隔転移巣に対する抗腫瘍効果を誘導し、遠隔転移巣を縮退させる技術である。
リンパ節転移は原発巣に直結するリンパ節(センチネルリンパ節、SLN)を通って多次的に起こるとされており、センチネルリンパ節転移を抑制することが二次以降のリンパ節転移を抑制することにつながる。多くの場合リンパ節転移がある場合は、原発巣とともに切除する(リンパ節郭清)ことが多い。本発明は、センチネルリンパ節(SLN)転移に対する抗腫瘍効果をもつバイオナイフ(登録商標)と呼ばれる組換えセンダイウイルスベクター(rSeV)である。我々の発明では、バイオナイフ(登録商標)が原発巣よりSLNに移行し、その遺伝子の発現により、がん細胞上にウイルス由来の融合蛋白質の蓄積が起こり、その蛋白質は癌細胞の特異的プロテアーゼにより活性化され隣接する癌細胞との細胞融合を誘発する。これによりSLN転移巣の抑制を示すことを明らかにした。この発明は、バイオナイフ(登録商標)によるHNSCC原発巣の遺伝子治療が同時にSLN標的療法となり、臨床的N0症例の予防的選択的頸部郭清に代わる低浸襲的に抑制できる可能性を示唆している。
頭頸部扁平上皮癌の予後はさらにリンパ節以外への遠隔転移によっても大きく左右される。遠隔転移の抑制あるいは、遠隔転移巣治療がなされれば予後改善が期待される。
腫瘍溶解性センダイウイルスベクターを原発巣に投与することにより、がん細胞の転移と同様に原発巣からセンチネルリンパ節に移動し、抗腫瘍効果が発揮される。
上記の目的を達成するために本発明に係るuPA発現ステージにおける転移癌の溶解に用いられる癌の治療組成物は、センダイウイルスのゲノムRNAを含む複合体からなり、前記複合体は、腫瘍内投与により、腫瘍からのリンパ節への転移および遠隔転移癌の成長の抑制、リンパ節転移巣の縮退を促進するため、前記ゲノムRNAは、M蛋白質をコードする核酸が変異または欠失しており、かつ、改変F蛋白質であって該蛋白質の開裂部位の配列が野生型F蛋白質を開裂しないプロテアーゼによって開裂される配列に置換された蛋白質をコードするゲノムRNAを含むとともに、センダイウイルスの野生型F蛋白質をさらに含み、前記複合体は、uPA発現ステージにおけるウロキナーゼ(uPA)によって活性化する構成である。
また、前記複合体は、複合体が導入された細胞内で該ゲノムRNAを複製する能力を有しており、宿主内(感染細胞内)環境においてウイルス粒子の産生が有意に低下または喪失しているとともに、前記プロテアーゼの存在に依存して、該複合体が導入された細胞と接触する細胞に、該RNAを導入する能力を有する構成である。
また、前記プロテアーゼは、癌で特異的に発現するプロテアーゼである構成である。
また、前記プロテアーゼは、細胞外マトリクス分解酵素である構成である。
また、前記プロテアーゼは、マトリックスメタロプロテアーゼまたはプラスミノーゲンアクチベーターである構成である。
また、前記治療組成物は、腫瘍内投与により、腫瘍からのセンチネルリンパ節への転移を抑制する構成である。
更に、前記治療組成物は、腫瘍内へ投与することによって、抗腫瘍免疫を惹起させる構成でもある。
センチネルリンパ節に移動し、がん細胞特異的に転移巣を死滅させる。
原発巣を溶解させ、癌関連抗原を放出させることにより、抗腫瘍免疫を惹起し遠隔転移巣を退縮させる。
本発明は、プロテアーゼ依存性トロピズムが改変され、特定のプロテアーゼ存在下でのみ周囲の細胞に浸潤するとともに、腫瘍内投与により、腫瘍からのリンパ節への転移および遠隔転移癌の成長の抑制、リンパ節転移巣の縮退を促進することを可能とした細胞融合型ベクターを提供する。
センダイウイルスを含むパラミクソウイルス科ウイルスは、そのエンベロープに2つの蛋白を有している。F(fusion)蛋白質はウイルスとその宿主である細胞とを膜融合をさせ、ヌクレオカプシドを細胞質へ放出させる。HN(hemagglutinin-neuraminidase)蛋白質は赤血球凝集能とのノイラミナーゼ活性をもち、宿主レセプターへ結合する役割を果たす。F蛋白質およびHN蛋白質はスパイク蛋白質とも呼ばれ、ウイルスのエンベロープ表面に露出している。またM(matrix)蛋白質はエンベロープを裏打ちし、ウイルス粒子に強固さを付与している。このベクターの特徴は広範な細胞と動物組織に高効率で遺伝子導入可能で、かつ既存のベクターと比較し、高い発現量を実現していることである。
F蛋白質(F0)はそのままでは細胞融合活性を示さず、宿主由来のプロテアーゼにより開裂してF1とF2に分解されることによってはじめてその融合活性を示すようになる。従って、野生型のF蛋白質を持つウイルスの増殖は、この蛋白質を開裂できるtrypsin様のプロテアーゼを発現する気道粘膜上皮などの組織に制限されてしまう。パラミクソウイルスではFの改変による感染のトロピズムもしくは融合能の改変についての様々な研究がなされている。SeVでは、α-キモトリプシンでのみ開裂するFを持つ変異体がトリプシン感受性を失い、そのトロピズムがFの開裂配列特異的に変わることが示されている(Tashiro,M.etal.(1992)J.Gen.Virol.73(Pt 6),1575-1579)。Newcastle disease virus、Measles virusでは、Fの開裂配列を改変し、そのシンシチウム形成能がトリプシン依存的に変わることを示している(Li,Z.et al.(1998)J.Virol.72,3789-3795;Maisner,A.et al.(2000)J.Gen.Virol.81,441-449)。
このように、Fの開裂配列を改変することにより、あるプロテアーゼを発現する特定の組織等にベクターを感染および増殖させることが可能となると考えられる。しかし、パラミクソウイルスベクターが持つ問題点の1つに、標的細胞へのベクター導入後に起こる細胞からのウイルスの2次放出がある。複製型ウイルスを感染させた細胞ではビリオンが形成され娘ウイルスが放出されるため、標的組織以外にもウイルス粒子が拡散する。上述のように野生型F蛋白質を持つウイルス粒子はトリプシン様酵素の非存在下では感染性を示さないものの、ウイルス粒子自身は細胞から放出される。生体内投与においては、血中に拡散したウイルスが全身に到達することも懸念される。さらに、複製能を持たないF遺伝子欠損SeV(Li,H.O.et al.(2000)J.Virol.74,6564-6569;WO00/70055;WO00/70070)を導入した細胞等からもウイルス様粒子(VLP:virus like particle)の放出が観察されている。このような2次放出粒子は、標的とする組織以外への感染や免疫反応を誘発することが懸念される。
本発明者らは、ウイルスエンベロープ遺伝子の中で、M遺伝子を欠損するパラミクソウイルスは、粒子形成が起こらないが感染細胞とそれに接した細胞が融合することによってシンシチウムを形成し、細胞融合型の感染をすることを見出している(WO00/09700)。これらのM欠損型ウイルスは、導入細胞において複製され、トリプシン存在下で隣接する細胞に伝達される。しかしながら、この現象はFが開裂して活性化する条件においてのみ起こる現象であり、野生型F蛋白質を持つウイルスではtrypsin様のプロテアーゼがない状態ではウイルスの伝達は起きない。本発明者らは、このM欠損型ウイルスにおいてF蛋白質のトロピズムを改変すれば、2次放出粒子を産生せず、特定の組織でのみ感染を広げられる新規なベクターを開発できるのではないかと考えた。
M欠損型ウイルスは粒子形成に必要なM遺伝子を欠損しているため、通常ウイルス粒子は放出しないか極度に抑制されている。複製能を持つ組み換えウイルスの産生に用いる通常の再構成法(Kato,A.et al.、1996,Genes Cells 1:569-579)を用いた場合、M欠損型ウイルスのRNPを調製することはできるが感染性ウイルス粒子は製造できない(WO00/09700)。実際の癌治療薬としてM欠失型ベクターを利用するためには、M欠失型ウイルスを感染性ウイルス粒子として調製できれば極めて有用である。そこで本発明者らは、M欠失型ウイルスをウイルス粒子として調製するための新たな製造方法の開発を行った。
本発明者らはまず、VLP放出が抑制されたベクターを構築するための一つの解決法として、ウイルス遺伝子の温度感受性変異の利用を考えた。低温で生育するが高温では増殖できない幾つかの変異型ウイルスが報告されている。本発明者らは、特に高温でのビリオン形成が抑制されるような変異蛋白質、特にM蛋白に変異を有するものを利用すれば、低温で(例えば32℃)ウイルス生産を行い、遺伝子治療等の実応用時はそれよりは高温(例えば37℃)で行うことにより、VLP形成を抑制できる可能性があると考えた。この目的のために、本発明者らはM蛋白質およびHN蛋白質で報告されている、それぞれ3つ、計6つの温度感受性変異を持つ変異MおよびHN蛋白質をコードするF遺伝子欠損型の組み換えセンダイウイルスベクターを構築した。このウイルスのVLP放出を調べたところ、野生型ウイルスに比べ約1/10またはそれ以下であることが判明した。さらに、VLP放出が抑制されたセンダイウイルスベクターを導入した細胞におけるM蛋白質の局在を、抗M抗体を利用した免疫染色により解析した結果、野生型ウイルスを導入した細胞では見られる細胞表面のM蛋白質の凝集が、VLP放出抑制型ウイルスの場合は有意に減少しており、特に高温(38℃)においてM蛋白の濃縮像が極端に減少していた。温度感受性変異M遺伝子を含むこのSeVを感染させた細胞におけるM蛋白質およびHN蛋白質の細胞内局在を共焦点レーザー顕微鏡により詳しく調べたところ、低温(32℃)においても細胞表面でのM蛋白の局在は有意に低下しており、微小管(microtubule)の形態に近い形で観察された。さらに、高温(37℃)ではM蛋白は微小管の中心体付近(すなわちゴルジ体付近)に局在して存在していた。
微小管脱重合剤を添加すると、温度感受性M遺伝子を持つSeVのみならず、野生型M遺伝子を持つSeVにおいても、M蛋白質の局在構造が破壊されたことから、M蛋白質は実際に微小管に沿って局在して機能している可能性が高いと判断された。以上の知見から、温度感受性変異導入ウイルスで二次放出粒子が減少しているのは、粒子形成の中心的な役割を担っていると考えられているM蛋白の細胞内局在の不全であると断定された。従って、M蛋白質の正常な細胞内局在を妨げることにより、VLPの形成を効果的に抑制することができると考えられる。また、M蛋白質の機能には微小管との相互作用が重要であり、例えばM蛋白質がゴルジ体から微小管に沿って細胞内移動することを阻害するような遺伝子変異や薬剤を開発することにより、M蛋白の細胞内局在の不具合を生じさせ、結果的に二次放出粒子の減少を達成することが可能と判断される。すなわち本発明者らは、M蛋白質の局在に欠陥を生じさせるような変異を有するウイルスベクターを調製することによって、粒子形成能が低下または消失した組み換えウイルスベクターを得ることができることを見出した。
また本発明者らは、M遺伝子をウイルスから欠失させることによって、ウイルスを導入した細胞におけるM蛋白質の細胞表面の凝集が完全に欠如したウイルスの構築を試みた。この目的のために、本発明者らはM遺伝子欠失型ウイルスの生産に利用可能な野生型M蛋白質を誘導的に発現させることができるヘルパー細胞を構築した。この細胞を利用することにより、野生型M蛋白質を含むエンベロープに、F改変型のM遺伝子欠損ウイルスのRNPが包まれたウイルス粒子を回収することに初めて成功した。本発明の方法により1×108PFU/ml以上の濃度でウイルス粒子を製造することが可能となり、臨床を含む実用に耐える組み換えウイルスを初めて提供することが可能となった。また本発明のウイルス製造系は、他のウイルスの混入を否定できる安全性の高い高タイターの遺伝子治療用ベクターの生産を可能にする。M発現細胞を利用してM蛋白質をトランスに供給する、本発明のM欠失型SeV生産システムにおいて初めて、実用に適したF改変型M欠失型のパラミクソウイルスが提供された。
本発明者らは、上記のように構築した感染性ウイルス粒子を用いて、実際の抗腫瘍効果をin vivoにおいて検証した。癌細胞を移植したマウスに対して、この癌で活性が亢進するマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)で活性化されるM欠失型ウイルスを投与したところ、細胞融合型の感染を通して癌組織内にウイルスが広がることが確認された。野生型ウイルスを投与した癌では、数日後でもウイルスは注入部位に限定されていたのに対し、本発明のベクターでは癌組織に対して強い浸透力を示し、癌全体にベクターの広がりが認められた。ウイルス未投与または野生型ウイルスを投与した対照に比べ、癌の増殖に対する抑制効果は明白であった。これまでにもレトロウイルスにおいてMMP発現細胞を標的とするベクターが作製されているが、本発明とは認識配列のデザインが全く異なっている。また、これらの報告は癌組織への特異的な感染、則ちターゲッティングのみを目的としたものであり、癌組織で特異的に(細胞間で)感染が広がり治療効果を発揮するベクターである。
さらに本発明者らは、ウイルス粒子産生時にプロテアーゼの添加を制御することにより、ウイルス表面のF蛋白質が開裂されていないウイルス粒子(F非開裂型ウイルス)を調製することに成功した。このウイルスは、そのままでは感染性を持たないが、ウイルス表面のF蛋白質を開裂するプロテアーゼで処理するか、あるいは該プロテアーゼ存在条件下で細胞に添加することにより、特異的に感染能を示すことができた。このような潜在感染型ウイルスベクターにより、特定のプロテアーゼを産生する癌細胞に特異的にベクターを感染させることが可能となった。
このように本発明は、癌などの特定の組織で発現するプロテアーゼ存在下でのみ感染を広げるベクターを提供する。本発明のベクターはウイルス様粒子を有意に産生せず、細胞融合により隣接する周囲の細胞にベクターを伝達する。特に癌で活性が亢進するプロテアーゼで感染性を獲得する本発明のベクターは、腫瘍増殖に対する強い抑制作用を持っており、このベクターを用いた癌の遺伝子治療は極めて有効と考えられる。
すなわち本発明は、プロテアーゼ依存性トロピズムが改変された細胞融合型ベクターに関し、より具体的には
〔1〕uPA発現ステージにおける転移癌の溶解に用いられる癌の治療組成物が、センダイウイルスのゲノムRNAを含む複合体からなり、前記複合体は、腫瘍内投与により、腫瘍からのリンパ節への転移および遠隔転移癌の成長の抑制、リンパ節転移巣の縮退を促進するため、前記ゲノムRNAは、M蛋白質をコードする核酸が変異または欠失しており、かつ、改変F蛋白質であって該蛋白質の開裂部位の配列が野生型F蛋白質を開裂しないプロテアーゼによって開裂される配列に置換された蛋白質をコードするゲノムRNAを含むとともに、センダイウイルスの野生型F蛋白質をさらに含み、前記複合体は、uPA発現ステージにおけるウロキナーゼ(uPA)によって活性化する癌の治療組成物、
〔2〕前記複合体は、複合体が導入された細胞内で該ゲノムRNAを複製する能力を有しており、宿主内(感染細胞内)環境においてウイルス粒子の産生が有意に低下または喪失しているとともに、前記プロテアーゼの存在に依存して、該複合体が導入された細胞と接触する細胞に、該RNAを導入する能力を有する癌の治療組成物、
〔3〕前記プロテアーゼは、癌で特異的に発現するプロテアーゼである癌の治療組成物、
〔4〕前記プロテアーゼは、細胞外マトリクス分解酵素である癌の治療組成物、
〔5〕前記プロテアーゼは、マトリックスメタロプロテアーゼまたはプラスミノーゲンアクチベーターである癌の治療組成物、
〔6〕前記治療組成物は、腫瘍内投与により、腫瘍からのセンチネルリンパ節への転移を抑制する癌の治療用組成物、
〔7〕前記治療組成物は、腫瘍内へ投与することによって、抗腫瘍免疫を惹起させる癌の治療組成物、に関する。
本発明においてセンダイウイルスとは、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)に属するウイルスまたはその誘導体を指すパラミクソウイルスに包含されるウイルスである。パラミクソウイルスは、非分節型ネガティブ鎖RNAをゲノムに持つウイルスのグループの1つで、パラミクソウイルス亜科(Paramyxovirinae)(パラミクソウイルス属(レスピロウイルス属とも言う)、ルブラウイルス属、およびモービリウイルス属を含む)およびニューモウイルス亜科(Pneumovirinae)(ニューモウイルス属およびメタニューモウイルス属を含む)を含む。
本発明におけるセンダイウイルスは、天然株、野生株、変異株、ラボ継代株、および人為的に構築された株などに由来してもよい。
また、本発明において、組み換え蛋白質および組み換えウイルスとは、それぞれ組み換えポリヌクレオチドを介して生成した蛋白質およびウイルスを言う。組み換えポリヌクレオチドとは、自然の状態と同じようには結合していないポリヌクレオチドを言う。具体的には、組み換えポリヌクレオチドは、人の手によってポリヌクレオチド鎖がつなぎ替えられたり、あるいは合成されたポリヌクレオチドなどが含まれる。組み換えポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド合成、ヌクレアーゼ処理、リガーゼ処理等を組み合わせて、公知の遺伝子組み換え方法により生成させることができる。組み換え蛋白質は、蛋白質をコードする組み換えポリヌクレオチドを発現させることにより生産することができる。組み換えウイルスは、遺伝子操作により構築されたウイルスゲノムをコードするポリヌクレオチドを発現させ、ウイルスを再構築することによって生成することができる。
本発明において遺伝子とは遺伝物質を指し、RNAおよびDNA等の核酸が含まれる。本発明において蛋白質をコードする核酸は、該蛋白質の遺伝子と呼ぶ。また遺伝子は蛋白質をコードしていなくてもよく、例えば遺伝子はリボザイムまたはアンチセンスRNAなどの機能的RNAをコードするものであってもよい。遺伝子は天然由来または人為的に設計された配列であり得る。また、本発明において「DNA」とは、一本鎖DNAおよび二本鎖DNAを含む。また蛋白質をコードするとは、ポリヌクレオチドが該蛋白質を適当な条件下で発現できるように、該蛋白質のアミノ酸配列をコードするORFをセンスまたはアンチセンスに含むことを言う。
本発明は、プロテアーゼ依存性トロピズムが改変された複製能を有する細胞融合型ベクターを提供する。
本発明のベクターは、具体的には以下の複合体を言う。
uPA発現ステージにおける転移癌の溶解に用いられる癌の治療組成物であって、センダイウイルスのゲノムRNAを含む複合体からなり、前記ゲノムRNAは、M蛋白質をコードする核酸が変異または欠失しており、かつ、改変F蛋白質であって該蛋白質の開裂部位の配列が野生型F蛋白質を開裂しないプロテアーゼによって開裂される配列に置換された蛋白質をコードするゲノムRNAを含むとともに、センダイウイルスの野生型F蛋白質をさらに含み、前記複合体は、uPA発現ステージにおけるウロキナーゼ(uPA)によって活性化する。この複合体は、腫瘍内投与により、腫瘍からのリンパ節への転移および遠隔転移癌の成長の抑制、リンパ節転移巣の縮退を促進する。
この複合体は、ゲノムRNAを複製しそれを隣接細胞に導入する働きを有することから、本発明においてベクターとも呼ぶ。ベクターとは、核酸を細胞に導入する担体を言う。上記複合体は、具体的には該パラミクソウイルスのゲノムRNAとこれに結合するウイルス蛋白質を含む複合体である。本発明の複合体は、例えばパラミクソウイルスのゲノムRNAとウイルス蛋白質からなる複合体、すなわちリボヌクレオプロテイン(RNP)であってよい。RNPは、例えば所望のトランスフェクション試薬と組み合わせて細胞に導入することができる。このようなRNPは、具体的にはパラミクソウイルスのゲノムRNA、N蛋白質、P蛋白質、およびL蛋白質を含む複合体である。RNPは細胞内に導入されると、ウイルス蛋白質の働きによりゲノムRNAからウイルス蛋白質をコードするシストロンが転写されると共に、ゲノム自身が複製され娘RNPが形成される。ゲノムRNAの複製は、該RNAのコピー数の増加をRT-PCRまたはノーザンハイブリダイゼーション等により検出することにより確認することができる。
また上記複合体は、より好ましくはパラミクソウイルスのウイルス粒子である。ウイルス粒子とは、ウイルス蛋白質の働きにより細胞から放出される、核酸を含む微小粒子を言う。ウイルス粒子の形状はウイルスの種類により球状、棍棒状など様々であってよいが、細胞より十分に小さく、その大きさは通常10nm~800nm程度である。パラミクソウイルスのウイルス粒子は、ゲノムRNAとウイルス蛋白質を含む上記RNPが細胞膜由来の脂質膜(エンベロープという)に含まれた構造をしている。ウイルス粒子は、感染性を示すものでも示さないものでもよい。例えば、そのままでは感染性を示さないが、特定の処理により感染性を獲得するような潜在的に感染性を有するウイルス粒子であってもよい。
またパラミクソウイルスのゲノムRNAとは、パラミクソウイルスのウイルス蛋白質と共にRNPを形成し、該蛋白質によりゲノム中の遺伝子が発現し、該核酸が複製して娘RNPが形成される機能を持つRNAを言う。パラミクソウイルスは一本鎖ネガティブ鎖RNAをゲノムに持つウイルスであるので、このようなRNAは搭載遺伝子をアンチセンスとしてコードしている。一般にパラミクソウイルスのゲノムは、3’リーダー領域と5’トレイラー領域の間に、ウイルス遺伝子がアンチセンスとして並んだ構成をしている。各遺伝子のORFの間には、転写終結配列(E配列)-介在配列(I配列)-転写開始配列(S配列)が存在し、これにより各遺伝子のORFをコードするRNAが別々のシストロンとして転写される。
本発明のベクターに含まれるゲノムRNAは、該RNAにコードされる遺伝子群の発現およびRNA自身の自律的な複製に必要なウイルス蛋白質であるN(ヌクレオキャプシド)、P(ホスホ)、およびL(ラージ)をアンチセンスにコードしている。また該RNAは、隣接細胞への該RNAの伝播に必要な細胞膜融合を起こす蛋白質であるF(フュージョン)蛋白質をアンチセンスにコードしている。好ましくは、ゲノムRNAはさらにHN(ヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ)(またはH)蛋白質をアンチセンスにコードしている。但し、ある種の細胞では感染にHN蛋白質は必要なく、F蛋白質のみで感染が成立する。また、細胞に結合し得るHN以外の蛋白質をF蛋白質と組み合わせてベクターを感染させることができる。従って、HN遺伝子をコードしないゲノムRNAを用いても、本発明のベクターを構築することは可能である。
例えばパラミクソウイルス亜科に属する各ウイルスにおける各遺伝子は、一般に次のように表記される。一般に、N遺伝子は“NP”と表記されることもある。
レスピロウイルス属 NP P/C/V M F HN - L
ルブラウイルス属 NP P/V M F HN (SH) L
モービリウイルス属 NP P/C/V M F H - L
例えばパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のレスピロウイルス(Respirovirus)に分類されるセンダイウイルスの各遺伝子の塩基配列のデータベースのアクセッション番号は、NP遺伝子についてはM29343、M30202,M30203,M30204,M51331,M55565,M69046,X17218、P遺伝子についてはM30202,M30203,M30204,M55565,M69046,X00583,X17007,X17008、M遺伝子についてはD11446,k02742,M30202,M30203,M30204,M69046,U31956,X00584,X53056、F遺伝子についてはD00152,D11446,D17334,D17335,M30202,M30203,M30204,M69046,X00152,X02131、HN遺伝子についてはD26475,M12397,M30202,M30203,M30204,M69046,X00586,X02808,X56131、L遺伝子についてはD00053,M30202,M30203,M30204,M69040,X00587,X58886を参照のこと。またその他のウイルスがコードするウイルス遺伝子を例示すれば、N遺伝子については、CDV,AF014953;DMV,X75961;HPIV-1,D01070;HPIV-2,M55320;HPIV-3,D10025;Mapuera,X85128;Mumps,D86172;MV,k01711;NDV,AF064091;PDPR,X74443;PDV,X75717;RPV,X68311;SeV,X00087;SV5,M81442;およびTupaia,AF079780、P遺伝子については、CDV,X51869;DMV,Z47758;HPIV-1,M74081;HPIV-3,X04721;HPIV-4a,M55975;HPIV-4b,M55976;Mumps,D86173;MV,M89920;NDV,M20302;PDV,X75960;RPV,X68311;SeV,M30202;SV5,AF052755;およびTupaia,AF079780、C遺伝子についてはCDV,AF014953;DMV,Z47758;HPIV-1.M74081;HPIV-3,D00047;MV,AB016162;RPV,X68311;SeV,AB005796;およびTupaia,AF079780、M遺伝子についてはCDV,M12669;DMV Z30087;HPIV-1,S38067;HPIV-2,M62734;HPIV-3,D00130;HPIV-4a,D10241;HPIV-4b,D10242;Mumps,D86171;MV,AB012948;NDV,AF089819;PDPR,Z47977;PDV,X75717;RPV,M34018;SeV,U31956;およびSV5,M32248、F遺伝子についてはCDV,M21849;DMV,AJ224704;HPN-1.M22347;HPIV-2,M60182;HPIV-3.X05303,HPIV-4a,D49821;HPIV-4b,D49822;Mumps,D86169;MV,AB003178;NDV,AF048763;PDPR,Z37017;PDV,AJ224706;RPV,M21514;SeV,D17334;およびSV5,AB021962、HN(HまたはG)遺伝子についてはCDV,AF112189;DMV,AJ224705;HPIV-1,U709498;HPIV-2.D000865;HPIV-3,AB012132;HPIV-4A,M3403;HPIV-4B,AB006954;Mumps,X99040;MV,k01711;NDV,AF204872;PDPR,Z81358;PDV,Z36979;RPV,AF132934;SeV,U06433;およびSV-5,S76876が例示できる。但し、各ウイルスは複数の株が知られており、株の違いにより上記に例示した以外の配列からなる遺伝子も存在する。
これらのウイルス蛋白質のORFは、ゲノムRNAにおいて上記のE-I-S配列を介してアンチセンスに配置される。ゲノムRNAにおいて最も3’に近いORFは、3’リーダー領域と該ORFとの間にS配列のみが必要であり、EおよびI配列は必要ない。またゲノムRNAにおいて最も5’に近いORFは、5’トレイラー領域と該ORFとの間にE配列のみが必要であり、IおよびS配列は必要ない。また2つのORFは、例えばIRES等の配列を用いて同一シストロンとして転写させることも可能である。このような場合は、これら2つのORFの間にはE-I-S配列は必要ない。野生型のパラミクソウイルスの場合、典型的なRNAゲノムは、3’リーダー領域に続き、N、P、M、F、HN、およびL蛋白質をアンチセンスにコードする6つのORFが順に並んでおり、それに続いて5’トレイラー領域を他端に有する。本発明のゲノムRNAにおいては、ウイルス遺伝子の配置はこれに限定されるものではないが、好ましくは、野生型ウイルスと同様に、3’リーダー領域に続き、N、P、(M、)F、HN、およびL蛋白質をコードするORFが順に並び、それに続いて5’トレイラー領域が配置されることが好ましい。ある種のパラミクソウイルスにおいては、ウイルス遺伝子は6つではないが、そのような場合でも上記と同様に各ウイルス遺伝子を野生型と同様の配置とするか、あるいは適宜変更することができる。
M蛋白質のORFについては後述するが、本発明のベクターの1つの態様においては、このORFは存在しないか、あるいは変異M蛋白質をコードしている。また本発明のベクターの1つの態様においては、ゲノムにコードされるF蛋白質の開裂部位は、野生型F蛋白質を開裂しないプロテアーゼによって開裂される配列に改変されている。本発明のゲノムRNAは、1つまたはそれ以上の外来遺伝子をコードすることができる。外来遺伝子としては、標的とする細胞において発現させたい所望の遺伝子を用いることができる。外来遺伝子の導入位置は、例えばゲノムの蛋白質非コード領域の所望の部位に挿入することができ、例えば3’リーダー領域と3’に最も近いウイルス蛋白質ORFとの間、各ウイルス蛋白質ORFの間、および/または5’に最も近いウイルス蛋白質ORFと5’トレイラー領域の間に挿入することができる。M遺伝子を欠失するゲノムでは、その欠失領域に挿入することができる。パラミクソウイルスに外来遺伝子を導入する場合は、ゲノムへの挿入断片のポリヌクレオチドの鎖長が6の倍数となるように挿入することが望ましい。挿入した外来遺伝子とウイルスORFとの間には、E-I-S配列が構成されるようにする。あるいは、IRESを介して外来遺伝子を挿入してもよい。
また本発明のベクターは、例えばウイルス蛋白質による免疫原性を低下させるために、またはRNAの転写効率や複製効率を高めるために、ベクターに含まれる任意のウイルス遺伝子が野生型遺伝子から改変されていてよい。具体的には、例えばパラミクソウイルスベクターにおいては、複製因子であるN、P、およびL遺伝子の中の少なくとも一つを改変し、転写または複製の機能を高めることが考えられる。また、構造体蛋白質の1つであるHN蛋白質は、赤血球凝集素であるヘマグルチニン(hemagglutinin)活性とノイラミニダーゼ(neuraminidase)活性との両者の活性を有するが、例えば前者の活性を弱めることができれば、血液中でのウイルスの安定性を向上させることが可能であろうし、例えば後者の活性を改変することにより、感染能を調節することも可能である。また、F蛋白質も、開裂部位以外のドメインも改変することにより、膜融合能および/または粒子形成能を調節することもできる。また、例えば、細胞表面の抗原分子となりうるF蛋白質やHN蛋白質の抗原提示エピトープ等を解析し、これを利用してこれらの蛋白質に関する抗原提示能を弱めたウイルスベクターを作製することもできる。
また好ましい態様において、本発明の複合体は実質的に均一な複合体である。実質的に均一な複合体とは、該複合体が、本発明の複合体ではないパラミクソウイルスのRNPまたはウイルス粒子から分離されていることを言う。すなわち実質的に均一な本発明の複合体は、粒子形成能を有する他のパラミクソウイルスRNPも該ウイルスのウイルス粒子も含んでいない。ここで粒子形成能とは、ウイルスベクターを感染させた細胞において、感染性ウイルス粒子および/または非感染性ウイルス粒子(これをウイルス様粒子という)を放出(これを2次放出という)するベクターの能力を言う。また、F蛋白質の開裂部位が改変された本発明の複合体においては、野生型F蛋白質またはこれと同等の融合活性を有するF蛋白質をコードする遺伝子をゲノムに含むウイルスRNPも該ゲノムを含むウイルス粒子も含んでいない。
本発明の一態様においては、上記ゲノムRNAにコードされるF蛋白質は、該蛋白質の開裂部位の配列が、他のプロテアーゼによって開裂される配列に置換されている。パラミクソウイルスのF蛋白質(F0)は、そのままでは細胞膜融合活性を示さないが、F0断片の細胞外ドメイン(またはウイルス粒子外ドメイン)が開裂することによってその融合活性を示すようになる。開裂により生じた2つのF蛋白質断片はN末側がF2、およびC末側がF1と呼ばれ両者はジスルフィド結合により結合している。F蛋白質を開裂するとは、このように膜上のF蛋白質を膜の外側のドメインにおいて切断し、細胞融合能を獲得させるような断片を生じさせることを言う。開裂部位の配列とは、プロテアーゼによる開裂のために必要なアミノ酸配列またはその中の本質的な残基を言う。パラミクソウイルスのF蛋白質の開裂部位は知られており、それらは細胞内のfurin等のトリプシン様プロテアーゼにより切断される。
furinは、ほとんどの細胞のゴルジ体に普遍的に存在する。furinの認識モチーフは、Arg-X-Lys/Arg-Arg(RXK/RR)(“/”で区切られた2つのアミノ酸はどちらかであることを表す)である。病原性の高い、Human PIV3(RTKR)、SV5(RRRR)、Mumps virus(RHKR)、NDV(virulent strain)強毒株(RQR/KR)、Measles virus(RHKR)、RS virus(RKRR)などは開裂部位にこれらのモチーフの配列を持っている。強毒株のFは、すべての細胞に存在するプロテアーゼに感受性をもち、どの臓器でもFの開裂を伴って多段階増殖するため、感染が致命的になってしまう。一方、病原性の低い、Sendai virus(PQSR)、HumanPIV1(PQSR)、NDV(avirulent strain)弱毒株(k/RQG/SR)ではこのモチーフに当てはまらず、セリンプロテアーゼ認識配列であるArgのみ持っている。
また開裂部位は、当該パラミクソウイルスが増殖可能な細胞、組織、または個体等で増殖させたウイルスのF蛋白質、あるいは該細胞または個体等でF蛋白質を発現させ回収したF蛋白質の開裂部位を同定することにより確認することができる。また、細胞表面に発現するF蛋白質を、この蛋白質の開裂部位を開裂するトリプシン等のプロテアーゼで処理することにより、人為的にF蛋白質を開裂させ同定することもできる。本発明の一態様においてF蛋白質は、F蛋白質開裂部位のアミノ酸配列が改変され、他のプロテアーゼにより開裂されるような配列となっている。このためには、F蛋白質の生来の開裂配列を、1またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または挿入により改変し、他のプロテアーゼにより開裂されるような配列に再構築する。アミノ酸配列の改変は、公知の部位特異的変異導入法により行うことができる。なお、改変F蛋白質は、野生型F蛋白質を開裂するプロテアーゼ(トリプシン等)により開裂される性質が維持されていてもよい。このような改変F蛋白質をコードするベクターは、プロテアーゼ依存性トロピズムが野生型F蛋白質に比べて拡大される。
他のプロテアーゼにより開裂される配列としては、所望のプロテアーゼにより開裂される配列であってよく、例えばベクター導入の標的としたい所望の組織または細胞で発現されるプロテアーゼにより開裂される配列を用いることができる(WO01/20989)。このように標的組織で活性があるプロテアーゼで開裂される配列を持つF蛋白質遺伝子を用いてベクターを設計することにより、このプロテアーゼ活性が存在する環境下で特異的に周囲の細胞にベクターを増幅し伝達するという優れた性質を実現させることができる。例えば、ある組織で特異的に発現または活性化されるプロテアーゼの切断配列を利用すれば、該組織内でのみ特異的に浸潤するベクターを構築することができる。また、ある状態、例えばある疾患で特異的に発現または活性化するプロテアーゼの切断配列を利用すれば、その状態でのみ(例えば特定の疾患領域内でのみ)特異的に浸潤するベクターを構築することができる。プロテアーゼは細胞内または細胞外に存在するものであってよく、例えば細胞外に分泌されるプロテアーゼや、膜表面に発現する膜型プロテアーゼなどが好適である。また、F蛋白質が細胞内において翻訳され、細胞表面に分泌されるまでの輸送経路上に存在する所望のプロテアーゼであってよい。
本発明において特に好ましいプロテアーゼ開裂配列は、癌で活性が亢進するプロテアーゼの切断配列である。このような配列を利用してベクターを構築することにより、癌特異的に感染を広げるベクターを構築することが可能となり、癌治療用の遺伝子送達ベクターとして極めて有用となる。癌で活性が亢進するプロテアーゼとは、ある癌組織または癌細胞において、その癌に対応する正常組織または正常細胞と比べ活性が亢進しているプロテアーゼを言う。ここで活性の亢進は、プロテアーゼの発現レベルの亢進および/または活性自体の亢進であってよい。プロテアーゼの発現レベルは、該プロテアーゼの遺伝子断片をプローブにしたノーザンハイブリダイゼーション、該プロテアーゼ遺伝子を特異的に増幅するプライマーを用いたRT-PCR、あるいは該プロテアーゼに対する抗体を用いたウェスタンブロット、ELISA、免疫沈降などにより測定することができる。またプロテアーゼの活性は、該プロテアーゼの基質を用いた分解アッセイにより知ることができる。生体内プロテアーゼは、種々の阻害因子により活性が調節されているものが数多く知られている。プロテアーゼの活性レベルは、これらの阻害因子の発現レベルを測定することによっても測定することができる。
例えば細胞外マトリックス(extracellular matrix;ECM)分解酵素の活性は、特に転移性の癌において活性が亢進している。動物においては、細胞間の隙間に、コラーゲンやプロテオグリカンなどの蛋白からなるマトリックスが形成されている。細胞外マトリックスの成分としては、具体的には、コラーゲン・フィブロネクチン・ラミニン・テネイシン・エラスチン・プロテオグリカンなどが知られている。これらのECMは、細胞の接着、進展、または移動等の機能を調節したり、可溶性因子を結合してその分布や活性を調節する機能等を有している。癌転移にはECM分解酵素によるECMの浸潤が深く関わっており、実際ECM分解酵素の阻害剤による転移または基底膜浸潤の阻害が多数報告されている。ECM分解酵素による切断の認識配列を開裂部位に持つ改変F蛋白質をコードするベクターを設計することにより、癌特異的に感染および浸潤するベクターを構築することができる。
ECM分解酵素は、活性中心にある触媒残基の種類によってアスパラギン酸プロテアーゼ、システインプロテアーゼ、セリンプロテアーゼおよびメタロプロテアーゼに分類される。
中でも生体内でのECM分解には中性プロテアーゼのセリンプロテアーゼとメタロプロテアーゼが中心的な役割を果たしている。セリンプロテアーゼは、微生物、動物、植物等に広く分布し、高等動物においては、食物の消化、血液の凝固、線溶、免疫補体反応、細胞増殖、発生、分化、老化、癌転移などきわめて多くの生体反応に関与している。また、セリンプロテアーゼの活性は、一般に血漿や組織内に存在するセリンプロテアーゼインヒビター(serpin)によって調節されており、この量的あるいは質的異常は炎症などの原因となる。
ECM分解性セリンプロテアーゼとしては、カテプシンG、エラスターゼ、プラスミン、プラスミノーゲンアクチベーター、腫瘍トリプシン、キモトリプシン様中性プロテイナーゼ、トロンビンなどが挙げられる。プラスミンは、生体内で不活性な状態で存在するプラスミノーゲンが限定分解されて生じる。この限定分解をプラスミノーゲンアクチベーター(plasminogen activator;PA)とそのインヒビターであるプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(plasminogen activator inhibitor;PAI)が制御している。PAには、血液凝固に関係する組織型PA(tPA)と、ECM分解に関係するウロキナーゼ型PA(uPA)とがある。これらの2つのPAは、PAIと結合するとその作用が阻害される。uPAは細胞表面のuPAレセプター(uPAR)と結合した状態で作用することができる。プラスミンはフィブロネクチン、テネイシン、ラミニンなどを分解するが、コラーゲンは直接分解することができない。しかし、コラーゲン分解酵素の前駆体の一部を切断して活性化することにより、間接的にコラーゲンを分解する。これらが癌細胞においてしばしば活性が亢進しており、転移能ともよく相関している。
uPA,tPAの切断配列についての研究も多くなされている(Rijken,D.C.et al.(1982)J.Biol.Chem.257,2920-2925;Wallen,P.et al.(1982)Biochim.Biophys.Acta 719,318-328;Tate,k.M.et al.(1987)Biochemistry 26,338-343)。一般に用いられているsubstrate配列はVGR(Dooijewaard,G.,and KLUFT,C.(1983)Adv.Exp.Med.Biol.156,115-120)と、Substrate S-2288(Ile-Pro-Arg)(Matsuo,O.et al.(1983)Jpn.J.Physiol.33,1031-1037)である。Butenasは54種類の蛍光基質を用いて、tPAに対する特異性の高い配列を提示し(Butenas,S.et al.(1997)Biochemistry 36,2123-2131)、FPR,VPRが高いtPAに対する分解活性を示した。従って、これらの配列は特に好適に用いられる。
通常、組織内のMMP活性は、潜在型酵素の産生、その潜在型酵素の活性化、および活性型酵素のインヒビターによる阻害の過程で調節されており、発生排卵、受精、子宮内膜への着床、および創傷治癒などの様々な生理現象に関与している。MMP活性の調節の障害は、癌細胞の浸潤・転移、関節炎、歯肉炎、動脈硬化、腫瘍、線維症などの様々な病態に寄与する。例えば、癌の転移には基底膜成分を分解するゼラチナーゼ(MMP-2、-9)が重要であることが知られている。MMP-2は、MT1-MMPによるpro-MMP-2の切断により活性化される。またMMP-9の活性化には、uPAによりまずプラスミノーゲンからプラスミンがつくられ、proMMP-3を活性化し、active MMP-3がproMMP-9を活性化する経路が存在し、この経路は癌の転移に関与している。本発明のベクターを癌標的ベクターとして開発するためには、F蛋白質の開裂部位にこれらの癌転移に関与するプロテアーゼで切断される配列を導入することが特に有用である。このようなプロテアーゼとしては、例えばMMP-2、MMP-9、uPA、MMP-3、およびMT1-MMPが挙げられ、特にMMP-2、MMP-9、およびuPAが挙げられる。
プロテアーゼ切断配列をF蛋白質に組み込む場合は、F蛋白質の開裂部位に目的のプロテアーゼ切断配列を挿入し、もともとあるTrypsin様プロテアーゼによる切断部位をデジェネレートさせることが好ましい。このためにはもともとのTrypsin様プロテアーゼによる切断部位周辺のアミノ酸配列を、目的のプロテアーゼ切断配列(認識配列)に置換すればよい。改変F蛋白質は、細胞で発現したときに目的のプロテアーゼで切断され、かつF蛋白質の細胞膜融合作用を維持されている蛋白質である。F蛋白質が開裂して生じるF1断片のN末端付近のアミノ酸は、細胞膜融合に重要な機能を有していると考えられる。従って、切断が阻害されない限り、切断後のF1断片のN末端が、野生型F蛋白質のF1断片のN末端と同一となるように切断配列を設計することが好ましい。また効率的な切断反応を起こすために切断部位にリンカーを挿入する場合には、切断後のF1断片のN末端に、野生型F1と比べ最小限のアミノ酸が付加されるように設計することが望ましい。例えば、切断後のN末端には、野生型F1に比べ5アミノ酸以内、好ましくは4アミノ酸以内、より好ましくは3アミノ酸以内(例えば1、2、または3アミノ酸)が付加されるようにする。例えば本発明において、改変F蛋白質のF1断片のN末端にMet-Thr-Ser(配列番号:1)を付加しても、MMPによる切断反応および切断後の細胞膜融合反応が障害されないことが判明した。従って、切断後のF1のN末端にMet-Thr-Serまたはその保存的置換配列、あるいはそれらの部分配列からなるアミノ酸が付加されるように開裂配列を設計することは好ましい。保存的置換とは、アミノ酸の側鎖の化学的性質が類似したアミノ酸間での置換を言う。具体的には、Metに関してはIleまたはValへの置換、Thrに関してはSerまたはAlaへの置換、Serに関してはAla、Asn、またはThrへの置換が挙げられる。各位置のアミノ酸の置換は独立に行ってよい。
特定のプロテアーゼ存在下で融合能を発揮する改変F蛋白質を効率良く同定するために、プラスミドベクターを用いたアッセイ系を利用することができる。すなわち、改変F蛋白質を発現するプラスミドベクターを細胞にトランスフェクションし、プロテアーゼ存在下で培養してシンシチウム形成を検出する。シンシチウムを形成させるプラスミドにコードされる改変F蛋白質は、プロテアーゼにより開裂し融合能を示すと判断される。例えばMMPにより開裂するF蛋白質をアッセイするには、MMPを発現するHT1080細胞を用いることができる。あるいは、培養系にMMPを添加してもよい。本発明において開発されたこのアッセイ系を用いれば、融合能を持った改変F蛋白質を容易に取得することが可能である。
改変F蛋白質をコードするベクターは、該改変F蛋白質を開裂するプロテアーゼの存在に依存して、該ベクターが導入された細胞と接触する細胞に、ベクターに含まれるゲノムRNAを導入することができる。開裂したF蛋白質の働きにより、接触する細胞同士が細胞融合を起こし、融合した細胞にRNPが拡散する。すなわち、本発明のベクターは、ウイルス粒子は形成しないが、このように接触する細胞にベクターが浸潤するために、限局した領域にベクターを伝達することができる。プロテアーゼは、細胞内または細胞外に発現するものであってもよく、あるいは外来的に添加されたものであってもよい。
本発明により提供される改変F蛋白質は、特定のプロテアーゼに依存的に細胞融合能を示す能力を有する。この蛋白質を利用して、そのプロテアーゼ存在下でのみ細胞融合を生じさせる或いは特異的に感染するウイルスベクター、あるいはリポソームなどの薬剤・遺伝子送達ベクターを作り出すことができる。本発明により提供される改変F蛋白質およびこれをコードする核酸は、本発明のベクター以外にも、プロテアーゼに依存する種々のベクターの開発に利用することができる。
また本発明は、細胞質ドメインの欠失により細胞融合能が高められた改変F蛋白質を含むパラミクソウイルスベクターを提供する。この改変F蛋白質は、細胞質ドメインに0個~28個、より好ましくは1~27個、より好ましくは4~27個のアミノ酸を有するように、細胞質ドメインの一部のアミノ酸を欠失させたF蛋白質である。細胞質ドメインとは、膜蛋白質の細胞質側のドメインであり、F蛋白質においては膜貫通(TM)領域のC末側領域である(図42参照)。例えば、細胞質ドメインとして6~20個、より好ましくは10~16個、より好ましくは13~15個のアミノ酸を有するF蛋白質は、野生型F蛋白質に比べ有意に高い細胞融合能を示す。従って、約14アミノ酸の細胞質ドメインを有するように改変されたF蛋白質を含むパラミクソウイルスベクターを調製すれば、野生型F蛋白質を用いるよりも高い細胞融合能を持つベクターを得ることができる。好ましくは、この欠失F蛋白質は、野生型F蛋白質のC末端の10アミノ酸またはそれ以上、より好ましくは15アミノ酸またはそれ以上、より好ましくは20アミノ酸またはそれ以上、より好ましくは25アミノ酸またはそれ以上、より好ましくは28アミノ酸またはそれ以上を欠失している。最も好ましい態様では、細胞質ドメイン欠失型のF蛋白質は野生型F蛋白質のC末端の約28アミノ酸を欠失している。これらの細胞質ドメイン欠失型のF蛋白質をコードする遺伝子をゲノムに含むパラミクソウイルスベクターは、通常のベクターに比べ細胞融合能が高いことから、周囲の細胞へより強く浸潤することができる。このF蛋白質の開裂部位を本明細書に記載したように改変すれば、特定のプロテアーゼの存在下でのみ、高い浸潤力を発揮するベクターを得ることができる。
さらに本発明は、パラミクソウイルスが持つ2種のスパイク蛋白質の融合蛋白質に関する。パラミクソウイルスには細胞融合を機能すると考えられる蛋白質(これをF蛋白質と呼ばれる)と、細胞への接着に機能すると考えられる蛋白質(HNまたはHなどと呼ばれる)を有している。本明細書において、前者をF蛋白質、後者をHN蛋白質と総称する。この2つの蛋白質を融合蛋白質として発現させると、別々に発現させる場合に比べ非常に強い融合能を発揮することができる。この融合蛋白質は、互いの細胞質ドメインの部分で両者の蛋白質が結合されている。具体的には、融合蛋白質のN末端側にF蛋白質を、C末端側にHN(またはH)蛋白質を含んでいる。両者の蛋白質を融合させる場合、全長蛋白質同士を融合させてもよいが、F蛋白質の細胞質ドメインの一部または全部を欠失させた蛋白質をHN(またはH)蛋白質に融合させてもよい。この場合、F蛋白質のTM領域の下流からHN(またはH)蛋白質までの長さを5残基以上、より好ましくは10残基以上、より好ましくは14残基以上、より好ましくは20残基以上とする。例えば、F蛋白質の細胞質ドメインを欠失させた蛋白質をHN(またはH)蛋白質に融合させる場合、F蛋白質部分のC末に適当な長さのリンカーペプチドを付加して長さを調節することは好ましい。具体的には、14残基のF蛋白質の細胞質ドメインを持つ細胞質ドメイン欠失型のF蛋白質に、任意のリンカーペプチドを介してHNまたはH)蛋白質に融合させた蛋白質を好適に用いることができる。リンカーペプチドの長さは、例えば約50残基とすることができる。
本発明の一態様において提供されるベクターに含まれるRNAゲノムにおいては、M(マトリックス)蛋白質をコードする遺伝子(M遺伝子)が変異または欠損している。本発明において、F蛋白質の開裂部位を他のプロテアーゼで切断される配列に改変し、さらにM遺伝子を変異または欠失させて粒子形成能を抑制することによって、ウイルス粒子を放出せず、特定のプロテアーゼを発現する細胞集団内でのみベクターを浸潤させる全く新しい性質を持ったベクターが開発された。M遺伝子の変異は、宿主内環境における粒子形成活性を消失または有意に低下させる変異である。このような変異は、このM蛋白質を発現する細胞において、該蛋白質の細胞表面の凝集が低下することにより同定することができる。
本発明により、2次放出粒子、即ちVLP放出の抑制を目的とした改変を行う場合、M蛋白を欠失させることが最も効果的であることが実証された。このことは、ビリオン形成におけるM蛋白の役割に関するセンダイウイルス(SeV)や他のマイナス鎖RNAウイルスにおける報告によっても支持される。例えば、vesicular stomatitis virus(VSV)ではM蛋白の強発現のみでウイルス様粒子(VLP:virus like particle)の発芽が観察されており(Justice,P.A.et al.,J.Virol.69;3156-3160(1995))、またParainfluenza virusの場合もM蛋白のみの強発現でVLPが生じることが報告されている(Coronel,E.C.et al.,J.Virol.73;7035-7038(1999))。このようなM蛋白単独でのVLP形成に関しては、全てのマイナス鎖RNAウイルスで観察されているわけではないが、M蛋白がビリオン形成のcoreになっていることは、マイナス鎖RNAウイルスで共通していると認識することができる(Garoff,H.et al.,Microbiol.Mol.Biol.Rev.62;1171-1190(1998))。
野生型M蛋白質に比べ、細胞表面における凝集が有意に低下する変異M蛋白質は、粒子形成能が有意に低下していると判断される。ウイルスの粒子形成能の低下は、例えば統計学的に有意(例えば有意水準5%またはそれ以下の%値)に低下している。統計学的な検定は、例えばスチューデントのt検定またはマンホイットニーU検定などにより行うことができる。変異M遺伝子を持つウイルスベクターは、宿主内環境における粒子形成能が好ましくは1/5以下、より好ましくは1/10以下、より好ましくは1/30以下、より好ましくは1/50以下、より好ましくは1/100以下、より好ましくは1/300以下、より好ましくは1/500以下に低下している。本発明のベクターは、最も好ましくは宿主内環境におけるウイルス粒子の産生能が実質的に喪失している。実質的に喪失するとは、宿主内環境におけるウイルス粒子の産生が検出されないことを言う。このような場合、ウイルス粒子は103/ml以下、好ましくは102/ml以下、より好ましくは101/ml以下である。
宿主内環境とは、対象とするベクターが由来するパラミクソウイルスの野生型が自然界において通常増殖する宿主内の環境またはそれと同等のウイルス増殖をもたらす環境を言う。宿主内環境は例えば該ウイルスの至適増殖条件であってよい。哺乳動物を宿主とするパラミクソウイルスであれば、哺乳動物生体内あるいはそれと同等の環境を言う。その温度は、哺乳動物体内に相当する約37~38℃(例えば37℃)である。インビトロであれば、通常の細胞培養条件、具体的には血清含有または非含有培地中(pH6.5~7.5)、37℃、5%CO2、湿環境下の培養環境が挙げられる。
M遺伝子の温度感受性変異としては特に限定されるものではないが、例えばセンダイウイルスのM蛋白質のG69、T116、およびA183からなる群より選択される少なくとも1つ、好ましくは任意に選択される2つ、さらに好ましくは3つすべてのアミノ酸部位、あるいは他の(-)鎖RNAウイルスM蛋白質のそれらと相同な部位に変異を含むものを好適に用いることができる。ここでG69とはM蛋白質の69番目のアミノ酸Gly、T116とはM蛋白質の116番目のアミノ酸Thr、A183とはM蛋白質の183番目のアミノ酸Alaを指す。
アミノ酸変異は、所望の他のアミノ酸への置換であってよいが、好ましくは、側鎖の化学的性質の異なるアミノ酸への置換である。例えばアミノ酸は、塩基性アミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性アミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性アミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐アミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族アミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)などのグループに分類することができるが、あるアミノ酸について、そのアミノ酸が属するグループのアミノ酸以外のアミノ酸に置換することなどが挙げられる。具体的には、塩基性アミノ酸であれは、酸性または中性アミノ酸への置換、極性アミノ酸であれは非極性アミノ酸への置換、20種の天然のアミノ酸の平均分子量より大きい分子量を持つアミノ酸であれば、その平均分子量より小さいアミノ酸への置換、逆にその平均分子量より小さいアミノ酸であれば、それより大きいアミノ酸への置換などが挙げられるが、それに限定されない。例えばセンダイウイルスM蛋白質におけるG69E、T116A、およびA183Sからなる群より選択される変異あるいはそれらと相同な位置に変異を含む他のパラミクソウイルスのM蛋白質を用いることができる。ここでG69Eとは、M蛋白質の69番目のアミノ酸GlyがGluに置換された変異、T116Aとは、M蛋白質の116番目のアミノ酸ThrがAlaに置換された変異、A183Sとは、M蛋白質の183番目のアミノ酸AlaがSerに置換された変異を言う。すなわち、センダイウイルスM蛋白質のG69、T116、およびA183あるいは他のウイルスM蛋白質の相同部位を、それぞれGlu(E)、Ala(A)、およびSer(S)へ置換することができる。これらの変異は組み合わせて有していることが好ましく、特に上記3変異の全てを保持していることがより好ましい。M遺伝子への変異の導入は、公知の変異導入方法に従って実施することができる。例えば実施例に記載のように目的の変異を入れたオリゴヌクレオチドを用いて導入することが可能である。
本発明のベクターは、さらに好ましい態様においてはM遺伝子を欠損している。M遺伝子の欠損とは、M遺伝子の機能が失われていることを言い、機能欠失型の変異を有するM遺伝子を持つ場合およびM遺伝子を欠失する場合を含む。M遺伝子の機能欠失型変異は、例えばM遺伝子の蛋白質コード配列を欠失させたり、他の配列を挿入することにより作製することができる。例えば、M蛋白質コード配列の途中に停止コドンを設計することができる(WO00/09700)。本発明のベクターは、最も好ましくはM蛋白質のコード配列を完全に欠失している。M蛋白質のORFを欠失したベクターは、条件的変異M蛋白質をコードするベクターとは違い、任意の条件においてウイルス粒子を形成する能力を失っている。
リバース側合成DNA配列は5’側から任意の2以上のヌクレオチド(好ましくはGCGおよびGCCなどのNotI認識部位由来の配列が含まれない4塩基、更に好ましくはACTT)を選択し、その3'側にNotI認識部位gcggccgcを付加し、さらにその3’側に長さを調節するための挿入断片のオリゴDNAを付加する。このオリゴDNAの長さは、E-I-S配列を含む最終的なPCR増幅産物のNotI断片の鎖長が6の倍数になるように塩基数を設計する(いわゆる「6のルール(rule of six)」;Kolakofski,D.et al.,J.Virol.72:891-899,1998;Calain,P.and Roux,L.,J.Virol.67:4822-4830,1993;Calain,P.and Roux,L.,J.Virol.67:4822-4830,1993)。このプライマーにE-I-S配列を付加する場合には、挿入断片ののオリゴDNA3'側にセンダイウイルスのS配列の相補鎖配列、好ましくは5’-CTTTCACCCT-3'(配列番号:8)、I配列の相補鎖配列、好ましくは5’-AAG-3'、E配列の相補鎖配列、好ましくは5’-TTTTTCTTACTACGG-3'(配列番号:9)、さらにその3’側に所望のcDNA配列の終始コドンから逆に数えて約25塩基相当の相補鎖の最後の塩基がGまたはCになるように長さを選択して配列を付加し、リバース側合成DNAの3’の末端とする。
PCRは、Taqポリメラーゼまたはその他のDNAポリメラーゼを用いる通常の方法を用いることができる。増幅した目的断片はNotIで消化した後、プラスミドベクターpBluescriptのNotI部位に挿入する。得られたPCR産物の塩基配列をシークエンサーで確認し、正しい配列のプラスミドを選択する。このプラスミドから挿入断片をNotIで切り出し、ゲノムcDNAを含むプラスミドのNotI部位にクローニングする。またプラスミドベクターを介さずにNotI部位に直接挿入し、組み換えセンダイウイルスcDNAを得ることも可能である。
例えば、組み換えセンダイウイルスゲノムcDNAであれば、文献記載の方法に準じて構築することができる(Yu,D.et al.,Genes Cells 2:457-466,1997;Hasan,M.K.et al.,J.Gen.Virol.78:2813-2820,1997)。例えば、NotI制限部位を有する18bpのスペーサー配列(5’-(G)-CGGCCGCAGATCTTCACG-3’)(配列番号:10)を、クローニングされたセンダイウイルスゲノムcDNA(pSeV(+))のリーダー配列とN蛋白質のORFとの間に挿入し、デルタ肝炎ウイルスのアンチゲノム鎖(antigenomic strand)由来の自己開裂リポザイム部位を含むプラスミドpSeV18+b(+)を得る(Hasan,M.K.et al.,1997,J.General Virology 78:2813-2820)。
さらに、例えばM遺伝子を欠損させたり、あるいは温度感受性変異を導入する場合、ゲノムRNAをコードするcDNAを制限酵素で消化して、M遺伝子を含むフラグメントを回収し、適当なプラスミドにクローニングする。M遺伝子の変異またはM遺伝子欠損部位の構築はこのプラスミド上で行う。変異導入には、例えばQuikChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene,La Jolla,CA)などを利用してKitに記載の方法に従って実施することができる。M遺伝子の欠損または欠失のためには、例えばPCR-ライゲーション方法の組み合わせで行い、M遺伝子のORF全部または一部を欠失させ、適宜適当なスペーサー配列で連結することができる。M遺伝子の変異体または欠失体が得られたら、これを含むフラグメントを回収し、もとの全長ゲノムcDNAのM遺伝子と置換することにより、M遺伝子に変異を持つウイルスゲノムcDNAを調製することができる。同様の方法で、例えばFおよび/またはHN遺伝子等に変異を導入することができる。
ゲノムRNAをコードするDNAを、上記のウイルス蛋白質存在下で細胞内で転写させることにより、本発明のベクターを再構成することができる。本発明は、本発明のベクターの製造のための、本発明のベクターのウイルスゲノムRNAをコードするDNAを提供する。また本発明は、本発明のベクターの製造に適用するための、該ベクターのゲノムRNAをコードするDNAの使用に関する。マイナス鎖RNAウイルスのゲノムcDNAからのウイルスの再構成は公知の方法を利用して行うことができるWO97/16539;WO97/16538;Durbin,A.P.et al.,1997,Virology 235:323-332;Whelan,S.P.et al.,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:8388-8392;Schnell.M.J.et al.,1994,EMBO J.13:4195-4203;Radecke,F.et al.,1995,EMBO J.14:5773-5784;Lawson,N.D.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:4477-4481;Garcin,D.et al.,1995,EMBO J.14:6087-6094;Kato,A.et al.,1996,Genes Cells 1:569-579;Baron,M.D.and Barrett,T.,1997,J.Virol.71:1265-1271;Bridgen,A.and Elliott,R.M.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:15400-15404)。これらの方法により、パラインフルエンザ、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、リンダーペストウイルス、センダイウイルスなどを含むマイナス鎖RNAウイルスまたはウイルス成分となるRNPをDNAから再構成させることができる。これらの方法に準じて、本発明のベクターを再構成させることができる。
具体的な手順は、(a)上記パラミクソウイルスゲノムRNA(ネガティブ鎖RNA)またはその相補鎖(ポジティブ鎖)をコードするcDNAを、N、P、およびL蛋白質を発現する細胞で転写させる工程、(b)該細胞またはその培養上清から該ゲノムRNAを含む複合体を回収する工程、により製造することができる。転写されたゲノムRNAはN、L、およびP蛋白質の存在下で複製されRNP複合体を形成する。工程(a)を、該ゲノムがコードする改変F蛋白質を開裂するプロテアーゼの存在下で実施することにより、形成されたRNPが該細胞に接触する細胞へ伝達され、感染が広がりベクターが増幅する。この方法により、機能的なM蛋白質が存在しなくても、RNPの形態で本発明のベクターを製造することができる。
特に本発明のベクターは癌の治療であって、特に腫瘍からのリンパ節への転移および遠隔転移癌の成長の抑制、リンパ節転移巣の縮退を促進することに対して有用である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。また、本明細書中に引用された文献は、すべて本明細書の一部として組み込まれる。
<ヒト高度転移性舌扁平上皮癌細胞のインビトロにおけるバイオナイフ(BioKnife)に対する細胞障害性の確認>ヒト高頻度転移性舌扁平上皮癌細胞、HSC-3-M3細胞に対するBioKnifeのインビトロ細胞傷害効果を評価するために、WST-8アッセイを実施した。図1に、インビトロでHSC-3-M3に対するBioKnifeの細胞傷害効果についての結果を示した。 HSC-3-M3をBioKnife(MOI 0、0.1、0.25、0.5、1.0、2.5、5.0、10)でインキュベートし、処理後96時間で細胞数を測定した。 BioKnifeは用量依存的に細胞死を誘導したが、BioKnifeの対照ウイルスとして用いたrSeV /ΔM-GFPは、BioKnifeよりも細胞毒性効果が有意に少なかった。我々は以前に、HSC-3-M3細胞系がuPAアッセイを用いてインビトロで高いuPA活性を有することを以前に報告している(19)。
(ア) 5~8週齢の胸腺欠損BALB/c nu/nuマウスを20~25グラムの体重で用いて動物実験を行った。すべての動物処置は、メデトミジン(1.0mg/kg、腹腔内)および塩酸ケタミン(75mg/kg、腹腔内)の腹腔内(ip)注射またはイソフルランによる吸入麻酔による全身麻酔下で実施した。
<SLNへの転移確認>
ベクター投与前に、無胸腺nu/nuマウスを用いセンチネルリンパ節微小転移モデルの成立を確認した。ヒト高頻度転移性舌扁平上皮癌細胞HSC-3-M3をヒト高度転移性舌扁平上皮癌細胞HSC-3-M3を同所性、即ち、舌左側部縁部に1e5個の細胞を接種し、その2週間後に、HSC-3-M3がSLNに転移する頻度を評価した。SLN微小転移巣を確認するために、マウス(n=5)を屠殺し、SLNを解剖し、組織を10%ホルマリンで固定し、パラフィンブロックに包埋した。切片(厚さ5μm)をミクロトームを用いてスライスし、ヘマトキシリン - エオシン(HE)で染色した。転移率は、陽性転移個体(少なくとも1つの転移陽性リンパ節を有する動物)を有する動物の数を数えることによって評価した。その結果、HSC-3-M3接種2週間後、SLN転移モデルマウスの60%がSLN転移を検出した(データ未表示)。今回の結果は、HSC-3-M3接種の3週間後のマウスの90%がMatsuiらによって頸部リンパ節への転移が認められたという結果と一致した(20)。
<転移巣へのSeVベクターの移動>
:SLN微小転移巣への移動実験では、マウスを対照(n=5)およびrSeV/ΔM-GFP(n=5)の2つのグループに振り分けた。癌細胞接種後14日目に、ベクター投与群にはrSeV/ΔM-GFPを1e6CIU/20μl、対照群には、20μLのPBSを腫瘍原発巣内に投与を行った。 21日目に、動物を屠殺し、舌およびSLNを解剖し、以下に記載するように免疫組織化学的染色および定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって評価した。
免疫組織化学的染色:rSeVがSLNに移行し、その中のレポーター遺伝子のGFPを発現することを確認するために、GFP搭載rSeV腫瘍内注射の7日後に舌およびSLNを摘出し、凍結切片を作製した。抗GFP抗体のIHC染色を行ったところ、rSeVのSLNへの移動がGFPシグナルの蛍光イメージングによって明確に目に見えることを示した。対照群の舌とSLNは、rSeV /ΔM-GFP群に比べてGFPシグナルがほとんどないことが示された(図2A)。一方、図2Bは、SLNの周辺領域が、rSeV /ΔM-GFP群のSLNにおける中央領域よりも強いGFP発現を示す傾向があることを明示した。 ImageJによるGFP発現の定量的画像解析は、rSeV /ΔM-GFP群の蛍光強度が舌およびSLNの両方において対照群のそれより有意に高いことも明らかにした(p <0.05、図3A)。
SeVおよびGFPの定量的RT-PCR:定量的RT-PCRによるSLNにおけるrSeVおよびGFPの導入遺伝子の発現を確認するために、PBS注射コントロールおよびrSeV /ΔM-GFP注射動物(各群でn = 5)の摘出した舌およびSLNを下記のように調製した。組織試料を小片(<25mg)に断片化し、RNAlater(登録商標)溶液(Applied Biosystems、Tokyo、Japan)に浸漬した後、 RNeasy Mini Kit(Qiagen、Valencia、CA)を用いてRNAを単離した。用いたプライマーはSeVは、SeVフォワード5'-AGAGAACAAGACTAAGGCTACC-3 'とSeVリバース5'-ACCTTGACAATCCTGATGTGG-3'を用い、GFPは、GFPフォワード5'-CGTCCAGGAGCGCACCATCTTC-3 'およびリバース5'-GGTCTTTGCTCAGGGCGGACT-3'を用いた。関連する分子のmRNAレベルは、Thermal Cycler DiceリアルタイムシステムII(Takara Bio、Shiga、Japan)においてOne Step SYBR PrimeScript RT-PCRキット(Takara Bio、Shiga、Japan)を用いて定量的RT-PCRによって測定した。結果、GFP標識rSeV投与7日後に摘出した舌およびSLNのRT-PCRでは、rSeV /ΔM-GFP群では、対照群の舌およびSLNと比較してGFPおよびSeVの相対的mRNA発現が有意に増加しており(p <0.05、図3Bおよび3C)、SLNへのSeVベクターの移動が確認できた(図3B)。癌における転移性センチネルリンパ節への移動リンパ管は、癌転移の主要経路であるが、逆に、治療薬、タンパク質、ウイルス、細胞などの治療薬の投与経路にも使用することができる。今回のベクターの移動も同経路と予想される。
<ヌードマウス舌がんモデルにおけるセンチネルリンパ節転移巣に対するバイオナイフの感染の証明>
ヒト高度転移性舌扁平上皮癌細胞HSC-3-M3を同所性癌にバイオナイフを3回投与しその7日後、舌およびSLNを摘出し、組織学的検査およびRT-PCRを実施した。抗SeV抗体のIHCにより、rSeV /ΔMおよびBioKnifeの腫瘍細胞への移動が、光学顕微鏡像によりはっきりと可視化された(図4Aの茶色の領域)。rSeV /ΔM-GFP群またはBioKnife投与群において、ベクター投与7日後に切除した舌およびセンチネルリンパ節は、対照群の舌、SLNと比較して、RT-PCRにおいて、GFPの相対的mRNA発現が有意に増加していた(p <0.05 、図4B)。これらの結果は、rSeV /ΔM-GFPおよびBioKnifeが、腫瘍内注射後にリンパ管を通ってSLNに移動し、癌細胞に選択的に感染することができることを示している。
<ヌードマウス舌がんモデルにおけるセンチネルリンパ節転移巣に対する抗腫瘍効果>
前項のヒト高度転移性舌扁平上皮癌細胞HSC-3-M3を用いた同所性癌モデルにバイオナイフまたはrSeV /ΔM-GFPを3回投与し、その最終ベクター投与の7日後に摘出した舌およびSLNを HE染色し、顕微鏡で観察した。 rSeV /ΔM-GFPおよびBioKnife投与群では、転移陽性(動物あたり少なくとも1つの陽性リンパ節転移)および転移陽性リンパ節の数は対照群よりも有意に低かった。対照群で83.3%、rSeV /ΔM群で83.3%であったのに対し、BioKnife群では30.0%であった;図5A、対照群では42.9%、rSeV /ΔM群では27.8% BioKnife群では11.6%であった[p <0.01];図5B)。舌腫瘍の大きさは、BioKnife群と対照群またはrSeV /ΔM群で有意に異なっていた(図5C)。しかし、我々は、腫瘍接種2週間後にSLNの60%に転移が発見されたことを確認した(データは示さず)。これは、BioKnifeがSLN中の腫瘍細胞を根絶したことが明らかであることを示している。 BioKnifeは、HNSCCの動物モデルにおけるリンパ節転移に対する有意な抗腫瘍効果を示した。
<マウス由来扁平上皮癌細胞担がんマウスにおける遠隔転移抑制>
マウス口腔底扁平上皮癌細胞株、SCCVIIを1e5個20μlのPBSに懸濁し、癌細胞と同系統のマウス(C3H/HeN)の口腔底に投与する。腫瘍接種後、24、48、72、96時間後にバイオナイフを接種箇所に注射する。最初の腫瘍接種の4日後に同一の細胞を1e5個20μlのPBSに懸濁し、擬似遠隔転移巣として左胴部皮下に接種する。その後腫瘍径により腫瘍体積を計算する。(図6A)
遠隔転移巣の退縮。原発巣に4回のバイオナイフを投与することにより、腫瘍の溶解が促進される。対象として投与した、PBSやM欠失SeVベクターの効果と比較して原発巣の成長抑制は腫瘍の成長速度が速いため有意差を示さなかったものの(図6B)、腫瘍溶解による抗腫瘍免疫の誘導により擬似遠隔転移巣の成長を有意に抑制した(図6C)。
本発明により、N0期あるいは所属リンパ節転移のあるN1期の原発巣に対し、治療用組成物を用いれば、SLNへの転移を防ぎあるいは既に転移した転移巣を制御できる。これにより更なる多次リンパ節転移を防ぎ、予後の改善につながる。また、ネオアジュバント的なバイオナイフ投与によりリンパ節転移を抑制した後に、原発巣の外科的切除を行うことになればリンパ節郭清が不要となり、患者、術者への負担軽減につながる。
本発明によりM期の原発巣に対す治療用組成物を用いた場合、骨転移、肺転移等の遠隔転移巣に対しても腫瘍抑制効果が波及することが期待される。
高度転移性のヒト舌扁平上皮癌細胞株HSC-3-M3に対するBioKnifeの細胞傷害性 HSC-3-M3細胞にGFP(rSeV /ΔM-GFP)または、BioKnife-GFPを感染させ、細胞生存をWST-8アッセイを用いて評価した。 MOI=0におけるrSeV /ΔM-GFPの細胞傷害効果は0%とみなし、細胞傷害効果のパーセントを計算した。平均値の平均±標準誤差(SEM)、 統計的有意性は、p <0.05。 ヒト高度転移性舌扁平上皮癌細胞における転移性センチネルリンパ節へのrSeV /ΔM-GFPの移動(A)抗GFP抗体の免疫組織化学染色(IHC)は、SLNへのSeV移動が、GFPシグナルの蛍光イメージングによって明確に目に見えることを示した。 対照群の舌およびSLNは、rSeV /ΔM-GFP群のものに比べてGFP発現がほとんどない。 白いバーは20μmを表す。(B)抗GFP抗体の共焦点蛍光顕微鏡画像。SLNの末梢領域は、rSeV /ΔM-GFP群のSLNにおける中央領域よりも強いGFP発現を示す傾向がある。 白いバー=200μm。 転移性センチネルリンパ節へのrSeV /ΔM-GFP移動の定量的測定(A)ImageJによる定量的GFP発現は、rSeV /ΔM-GFP群の蛍光強度が、舌およびSLNの両方において対照群のそれより有意に高いことを明らかにした(p <0.01、p <0.05)。定量的RT-PCRによる舌及び転移リンパ節におけるベクターの検出(B、C) rSeV /ΔM-GFP投与7日後の解剖された舌およびセンチネルリンパ節に対するRT-PCRは、舌およびSLNの対照群と比較して、rSeV /ΔM-GFP群で相対的なmRNA発現が有意に増加したことを示した (p <0.05)。rSeV /ΔM-GFP投与7日後の解剖された舌およびセンチネルリンパ節に対するRT-PCRは、舌およびSLNの対照群と比較して、SeVの相対mRNA発現がrSeV /ΔM-GFP群において有意に増加したことを示した (p <0.05)。 rSeV /ΔM-GFPの組織病理学的検査および定量的RT-PCRおよび転移性センチネルリンパ節へのBioKnife移動(A)同所性舌癌異種移植モデルにおいて、抗SeV抗体のIHCは、腫瘍細胞へのrSeV /ΔM-GFPおよびBioKnifeの移動が、光学顕微鏡画像(茶色の領域)によって明瞭に見えることを示した。 (B)ベクター投与の7日後に解剖された舌およびセンチネルリンパ節上のRT-PCRは、rSeV /ΔM-GFP群またはBioKnife群において、舌およびSLNの両方の対照群と比較してGFPの相対的mRNA発現が有意に増加したことを示した p <0.05)。 転移性センチネルリンパ節におけるBioKnifeの抗腫瘍効果 HE染色したSLNを顕微鏡で観察したところ、rSeV /ΔM-GFP群およびBioKnife群では、各群の陽性転移(動物1頭あたり少なくとも1つの陽性リンパ節転移)の動物数は、対照群では83.3%、rSeV /ΔM-GFP群では83.3%であったのに対して、BioKnife群では30.0%であった(p <0.05)。(B)HE染色したSLNを顕微鏡で観察したところ、各群の転移陽性リンパ節は対照群(コントロール群42.9%対rSeV /ΔM-GFP群27.8%対11.6%)よりもrSeV /ΔM-GFPおよびBioKnife群で有意に低かった(p <0.01)。 (C)舌腫瘍の大きさは対照、SeV /ΔM群とBioKnife群で有意に異なっていた。しかし、我々は、腫瘍接種2週間後にSLNの60%に転移が発見されたことを確認した(データは示さず)。これは、BioKnifeがSLNの腫瘍細胞を根絶したことが明らかであることを示している。 マウス由来扁平上皮癌擬似転移マウスモデルにおける擬似遠隔転移巣に対するBioKnifeの抗腫瘍効果。(A)プロトコールを示す。(B)および(C)原発巣に4回のバイオナイフを投与することにより、対照として投与したPBSやM欠失SeVベクターの効果と比較して、原発巣の成長抑制は腫瘍の成長速度が速いため有意差を示さなかったものの、腫瘍溶解による抗腫瘍免疫の誘導により擬似遠隔転移巣の成長を有意に抑制した。

Claims (6)

  1. 遠隔転移巣の成長抑制に用いられる癌の治療組成物であって、センダイウイルスのゲノムRNAを含む複合体からなり、原発巣の腫瘍内へ投与することによって、抗腫瘍免疫を惹起させ、遠隔転移巣の成長制するための癌の治療組成物において、
    前記ゲノムRNAは、M蛋白質をコードする核酸が変異または欠失しており、かつ、改変F蛋白質であって該蛋白質の開裂部位の配列が野生型F蛋白質を開裂しないプロテアーゼによって開裂される配列に置換された蛋白質をコードするゲノムRNAを含むとともに、センダイウイルスの野生型F蛋白質をさらに含み、
    前記プロテアーゼは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)またはプラスミノーゲンアクチベーター、特にウロキナーゼ(uPA)であるとともに、
    前記複合体は、パラミクソウイルスのウイルス粒子であって、複合体が導入された細胞内で該ゲノムRNAを複製する能力を有しており、宿主内(感染細胞内)環境においてウイルス粒子の産生が有意に低下または喪失しているとともに、前記プロテアーゼの存在に依存して、該複合体が導入された細胞と接触する細胞に、該RNAを導入する能力を有するものであり、原発巣の腫瘍内投与により、腫瘍からのリンパ節への転移および遠隔転移の成長の抑制、リンパ節転移巣の縮退を促進することを特徴とする癌の治療組成物。
  2. 前記プロテアーゼは、癌で特異的に発現するプロテアーゼであることを特徴とする請求項1記載の癌の治療組成物。
  3. 前記プロテアーゼは、細胞外マトリクス分解酵素であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の癌の治療組成物。
  4. 前記治療組成物は、原発巣の腫瘍内投与により、腫瘍からのセンチネルリンパ節への転移を抑制する請求項1乃至請求項3の何れかに記載の癌の治療組成物。
  5. 前記治療組成物は、原発巣の腫瘍内投与により、センチネルリンパ節へ転移した腫瘍即ち、リンパ節転移巣の成長を抑制し、リンパ節転移巣の治療にも効果的である請求項1乃至請求項3の何れかに記載の癌の治療組成物。
  6. 前記転移癌が、ウロキナーゼ(uPA)発現ステージにある請求項1乃至請求項5の何れかに記載の癌の治療組成物。
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