以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
<第1の実施の形態>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る半田付け装置の一例を示す概略説明図である。第1の実施の形態に係る半田付け装置1は、図1に示すように、リフロー炉として機能するものを採用することができる。リフロー炉としての半田付け装置1は、異なる処理を実行するチャンバがライン上に複数個連結されて構成される(これを「インラインタイプ」と呼ぶことがある)製造システム、例えば半導体基板に各種の電子部品を実装するための製造システムの一部を構成するものであってよい。この半田付け装置1では、ワークW、例えば電子部品が実装される半導体基板に半田付けを行うことが可能である。ここでいう半田付けには、少なくとも、ワークWとしての半導体基板上に半球状の半田バンプを形成するために予め配設された原料半田を溶融させる、ワークWとしての半導体基板上に半田バンプを生成する、あるいはクリーム半田やプリフォーム半田を介して配設された電子部品を実装することが含まれ得る。なお、本実施の形態係るワークWとしては、上述したような基板等に加えて、当該基板等を収容し基板を製造システム内において搬送させるためのキャリアを含んでいてもよい。以下の説明においては、その理解を容易にするために、図1における幅方向をX方向、奥行方向をY方向、及び高さ(上下)方向をZ方向と仮に定め、適宜用いるものとする。
本実施の形態に係る半田付け装置1は、図1に示すように、少なくとも、チャンバ10と、チャンバ10の天板(天面の一例)10Tに設けられた透光性の窓11と、チャンバ10の底壁(底面側の一例)10B近傍に設けられた熱源としての複数本の赤外線(InfraRed、IR)ランプ12と、IRランプ12を動作させる熱源駆動部13と、1又は複数の放射型温度計20とを含むものである。
チャンバ10は、内部に半田付けを行うワークWを収容可能な箱型の筐体で構成することができる。このチャンバ10の底壁10B近傍には複数本の赤外線ランプ12が配列され、天板10Tには窓11が設けられていてよい。また、このチャンバ10のX方向における両端部に位置する側面には、製造システムのライン上を搬送されるワークWを搬入するための入口側ゲート14Aと、リフロー半田付けを行った後のワークWに対して次の処理を実行等するべくチャンバ10外へ搬出する出口側ゲート14Bとが設けられていてよい。これら入口側及び出口側ゲート14A、14Bには、例えばそれぞれがZ方向(図1に示す矢印M方向)にスライドすることで開閉可能な扉体を採用できる。
チャンバ10には、内部でリフロー半田付けを実行するために、半田の表面に形成される酸化膜を除去するための処理流体としての還元ガスを供給する還元ガス供給部(処理流体供給部の一例)15が設けられていてよい。還元ガスとしては水素ガスやカルボン酸ガス等を用いることができるが、本実施の形態においてはギ酸ガスを採用したものを例示する。これに関連して、本実施の形態に係る半田付け装置1で半田付けがなされるワークWにはフラックスを含まない半田が用いられてよい。加えて、このチャンバ10の適所には、図示しないチャンバ10内のガスを排出するための排出路や、チャンバ10内に不活性ガス等の他のガスを供給するためのガス供給路等が設けられていてよい。また、チャンバ10内のガスを排出する排出路に真空ポンプを取り付け、この真空ポンプを動作させることにより、リフロー半田付けにおける所定のタイミングで、チャンバ10内を真空状態とすることができる構造を採用すると、半田内のボイド(空隙)の抑制等の観点から好ましい。
窓11は、天板10Tの任意の位置、具体的にはチャンバ10内のワークWが配設される領域に対向する略中央位置に設けられたものであって、放射型温度計20が検出する放射エネルギーを透過する部材、例えば石英ガラスが嵌め込まれたものとすることができる。この窓11の大きさや位置は適宜調整が可能なものであるが、本実施の形態においては、天板10Tの中央部分に、ワークWの大きさよりも大きな窓11を設けたものを例示している。また、窓11に嵌め込まれる部材は石英ガラス以外の透光性材料からなるものであってもよい。
赤外線ランプ12は、ワークWを加熱する熱源の一例であって、チャンバ10の底面側に配設される。本実施の形態における赤外線ランプ12は、チャンバ10の底壁10Bから僅かに離れた位置、詳しくは、チャンバ10の底壁10Bと、この底壁10Bから所定距離離れた位置に支持された加熱プレート16(後述)との間の空間内における所定の高さ位置に、複数本(図1においては7本)配設されている。この複数本の赤外線ランプ12は、加熱プレート16に向けて赤外線を照射するようにその照射方向が設定されていてよく、また複数本の赤外線ランプ12のそれぞれは、X方向に沿って互いに所定の間隔を空けて実質的に平行に配列された、Y方向に沿って延在する長尺なランプ部材で構成することができる。なお、本実施の形態においては、熱源として複数本の赤外線ランプ12を採用しているが、ワークWを加熱可能なものであればこれに限定されず、例えばホットプレート等の熱源を用いることもできる。また、赤外線ランプ12の本数や形状も、上述したものに限定されず、適宜変更することが可能である。
熱源駆動部13は、複数本の赤外線ランプ12のそれぞれに接続され、各赤外線ランプ12に所定の電力を供給することで、各赤外線ランプ12を動作させるものであってよい。この熱源駆動部13から供給される電力値は、半田付け装置1における半田付け処理の各工程に合わせて制御され得る。
放射型温度計20は、チャンバ10の外側の、窓11を介してチャンバ10内の測定対象に対向する位置に1乃至複数個、例えばn個設けられていてよい。このn個の放射型温度計20においては、対向する測定対象から放射される放射エネルギーを測定することができる。本実施の形態においては、放射型温度計20をX方向及びY方向に沿って所定間隔を空けて複数個(すなわちn≧2)設けたものを例示するが、放射型温度計20が設けられる数は1個のみであってもよい。なお、以下の説明において、n個の放射型温度計のそれぞれを区別する必要がある場合には各放射型温度計の符号に枝番を付して示し(具体的には、20-1、20-2、20-3、・・・20-n)、n個の放射型温度計に共通する説明を行う場合には上述の枝番は省略して記載するものとする。
図2は、図1に示す半田付け装置の放射型温度計の一例を示す概略断面図である。放射型温度計20は、図1及び図2に示すように、ワークWや加熱プレート16といった、チャンバ10内の測定対象上に設定された特定の測定領域TAから放射される放射エネルギーREに基づいて、測定対象の温度を測定するものであってよい。この放射型温度計20は、主に検出素子21と、集光レンズ22と、絞り23と、鏡筒24とを含んでいてよい。
検出素子21は、測定領域TAから放射される放射エネルギーRE、詳しくは赤外線放射エネルギーを検出するものであってよい。この検出素子としては、半導体素子、詳しくはSi(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)、InGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)あるいはInSb(インジウム・アンチモン)素子等を用いたフォトダイオードを採用することができる。また、このフォトダイオードには、PN接合型のもの又はPIN構造のものを採用することができる。検出素子21は、その受光面が鏡筒24内に位置しており、且つその電極は、放射型温度計20内の図示しない制御基板に接続できるよう、鏡筒24の一端面から外部に延在していてよい。なお、検出素子21としては上述のフォトダイオードには必ずしも限定されず、例えばサーモパイル等の他の赤外線センサを用いることも可能である。
この検出素子21としては、特にInGaAsフォトダイオードが用いられると好ましい。これは、本実施の形態に係る半田付け装置1においてギ酸を還元ガスとして用いていること、及び窓11に嵌め込まれる材料に石英ガラスが採用されていることに関連するものである。詳しくは、ギ酸は特定の波長域の放射エネルギーを吸収する性質を有するため、放射型温度計20がギ酸に吸収される波長の放射エネルギーに基づいて温度測定を行うものであると、実際の温度よりも低い検出結果となる。また、石英ガラスは一般的に0.3~2.6μmの波長を透過するため、この範囲内の放射エネルギーに基づいて温度測定が可能な放射型温度計20とする必要がある。この点、例えばInGaAsフォトダイオードは受光波長域が一般的に0.5~2.6μm(PIN型の場合)であるため、InGaAsフォトダイオードを検出素子21に用いれば、石英ガラスを透過する放射エネルギーに基づいて温度測定が可能であり、且つギ酸による放射エネルギーの吸収を考慮する必要がほとんどなく、良好な温度測定を実現することができる。
集光レンズ22は、測定領域TAからの放射エネルギー(具体的には赤外光)REを集束(集光)し、検出素子21の受光面に入射させるためのものであってよい。この集光レンズ22は、測定領域TAと検出素子21との間に配設できる。
絞り23は、測定領域TA以外の領域からの放射エネルギー(以下、これを「外乱」ともいう)が、放射型温度計20に侵入することを防止するために設けられたものであってよい。この絞り23は、その略中央部に測定領域TAからの放射エネルギーREを通過させるための開口が設けられ、比較的高い放射率(具体的には、例えば検出素子21の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内)を有する板状あるいは膜状の部材とすることができる。この絞り23は、図2に示すように、鏡筒24の検出素子21が取り付けられていない側の端部を部分的に覆うように設けることができる。
鏡筒24は、一方の端部が閉塞され他方の端部が開放された略円筒状の部材で構成することができる。この鏡筒24の閉塞された側の端部の略中央部には、検出素子21を取り付けることができる。この鏡筒24内には、一方の端部から順に、検出素子21、集光レンズ22及び絞り23が所定間隔を空けて配設される。
本実施の形態に係る半田付け装置1は、上述した構成に加えて、さらに加熱プレート16と、遮光板17と、制御部30とを含んでいてよい。このうち、加熱プレート16は、チャンバ10の側壁に設けられた支持片10Sに支持された板状の部材で構成することができる。この加熱プレート16には熱伝導率の高い材料を採用することができる。そして、この加熱プレート16は、その下部に設けられた複数本の赤外線ランプ12から放射される放射エネルギーを受けて加熱され、加熱プレート16上に載置されるワークWを加熱することができるものであってよい。
また、この加熱プレート16の温度を測定して半田付け処理の際の制御に利用するために、加熱プレート16の適所に接触して加熱プレート16の温度を測定する制御用熱電対18がさらに設けられていてもよい。この制御用熱電対18は、特定の放射型温度計20(例えば放射型温度計20-1)の測定領域TAに隣接する位置に接触するように設けられていると好ましい。この制御用熱電対18で検出された加熱プレート16の温度は、制御部30に送られて赤外線ランプ12の出力等のPID(Proportional-Integral-Differential)制御に用いられ得る。なお、本実施の形態においては加熱プレート16の温度を測定するために制御用熱電対18を利用しているが、この熱電対に代えて、他の接触式温度計を採用することもできる。
遮光板17は、赤外線ランプ12から照射される放射エネルギーが、加熱プレート16の周囲の空間を介して天板10T側に照射されるのを遮るための部材であってよい。遮光板17は、具体的には比較的高い放射率(具体的には検出素子21の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0)を有する材料からなる額縁状の板体で構成することができる。この遮光板17は、支持片10Sと加熱プレート16との間に配設されることで、この部分から天板10T側に漏れ得る放射エネルギーの通過を遮ることができる。
図3は、図1に示す制御部の一部を例示的に示した機能ブロック図である。制御部30は、半田付け装置1による一連の処理を実行するための装置であってよい。したがって、この制御部30は、(図1に点線で示されているように)半田付け装置1内の各構成要素(例えば熱源駆動部13や、制御用熱電対18、還元ガス供給部15の制御バルブ等)に有線又は無線で電気的に接続されているとよい。また、この制御部30内には、図3に示すように、複数個の放射型温度計20がその放射エネルギーを検出する複数の測定領域TAの温度を計測するための温度計測部31を含むことができる。なお、制御部30は、例えばシーケンサ(Programmable Logic Controller、PLC)を含むコンピュータによって構成することができる。当該コンピュータとは、少なくとも揮発性あるいは不揮発性のメモリ(例えばRAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disc Drive))と、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサとを含むものとすることができる。
温度計測部31は、複数の放射型温度計20の出力結果から、測定対象の温度を計測するものである。この温度計測部31における計測に際しては、予め準備された温度換算式が用いられる。温度計測部31は、少なくとも出力結果取得部32と、温度換算部33と、データ格納部34とを含んでいてよい。
出力結果取得部32は、複数個の放射型温度計20の出力結果を取得するものであってよい。放射型温度計20の出力結果は、各放射型温度計20の測定領域TAからの放射エネルギーREを示す電圧値であってよい。これに関連して、各放射型温度計20は、検出素子21の検出結果を増幅する増幅器25と、この増幅器25が増幅した検出結果をAD変換するAD変換器26とを有していてよい。増幅器25及びAD変換器26は、検出素子21と同様に、放射型温度計20内の図示しない制御基板に実装することができる。つまり、この制御基板は、検出素子21からの信号を所定のデータに変換するデータ変換部を構成しているものといえる。
温度換算部33は、出力結果取得部32が取得した出力結果によって特定される放射エネルギーを、測定領域TAの温度に換算するための計算手段であってよい。温度換算部33では、放射エネルギーをデータ格納部34内に格納されている温度換算式を用いることで、測定領域TAの温度を算出することができる。この温度換算部33は、例えばリニアライザで構成することができる。
データ格納部34は、温度計測に必要な種々のデータを格納可能な記憶媒体で構成することができる。このデータ格納部34内には、少なくとも1つの温度換算式が格納されているとよい。また、このデータ格納部34内には、必要に応じて、測定対象物、例えば加熱プレート16等の放射率の値や、半田付け装置1に設置された放射型温度計20の数や配置等が格納されていてよい。
このデータ格納部34内に格納された温度換算式は、事前に取得した各放射型温度計20に関する特性データに基づいて作成される。そこで、以下には温度換算式を作成する一手法について説明を行う。
図4は、図1に示す半田付け装置において温度計測に用いられる温度換算式を作成する際の構造の一例を示した概略説明図である。本実施の形態に係る半田付け装置1において温度換算式を作成する際には、図4に示すように、各放射型温度計20の測定領域TAに隣接する位置に、接触式温度計としての熱電対40が一時的に取り付けられる。この熱電対40は、測定領域TAの数、すなわち放射型温度計20の数と同数取り付けられるため、放射型温度計20が1つのみの場合には取り付けられる熱電対40も1つでよい。なお、図4においては、チャンバ10内にワークWが収容されていない状態で熱電対40を取り付けた場合を例示しているが、ワークWが加熱プレート16上に配設された状態で温度換算式が作成されてもよい。その場合には、加熱プレート16上に配設されたワークW上に形成される測定領域TAの近傍に熱電対40が取り付けられることになり、ワークWが変更される毎に熱電対40の着脱作業を行えばよい。なお、この熱電対40は温度換算式の作成のために取り付けられたものであって、温度換算式が作成された後には、半田付け装置1から取り外されるものであってよい。
ここで、熱電対40は、一般に、配線の引回しが難しいことやスペースを占有するといった構造面での課題はあるものの、接触している対象物の温度は放射型温度計のような非接触式の温度計に比べて高精度に計測できる。したがって、測定領域TAに隣接する位置に熱電対40が取り付けられるのは、熱電対40による測定領域TAの温度測定を放射型温度計20による測定領域TAの温度測定と並行して実行することで、放射型温度計20に対する外乱の影響を把握するためである。言い換えれば、本実施の形態においては、放射型温度計20が外乱の影響がなければ測定できたであろう温度として熱電対40の測定結果を利用することで、温度換算式を作成している。
温度換算式を作成する際には、複数の熱電対40が取り付けられた状態で、半田付け装置1による半田付け処理を実行すればよい。なお、以下に説明する本実施の形態に係る半田付け装置1の温度計測部31で用いられる温度換算式としては、熱源駆動部13が赤外線ランプ12を動作させている状態である一連の半田付け処理における、各放射型温度計20が検出した放射エネルギーと熱電対40が検出した温度とから特定される特性データ(第2の特性データの一例)に基づいて作成された温度換算式(第2の温度換算式の一例)を作成する場合について説示する。
図5は、図1に示す半田付け装置で実行される半田付け処理の一連のステップにおける温度測定結果の経時変化を示したグラフである。この図5には、一の放射型温度計20が検出した放射エネルギーに基づいて特定される温度測定結果Taの経時変化と、対応する熱電対40による温度測定結果Tbの経時変化とが示されており、且つ両測定結果Ta及びTb間の温度差(Ta-Tb)の経時変化も併せて示されている。本実施の形態に係る半田付け装置1で実行される半田付け処理中の温度制御は、図5に示すように、概ね5つのステップで構成されているということができる。具体的には、室温から還元ガス供給部15より供給されるギ酸の還元温度近傍、あるいは還元温度以上となるまで、比較的短時間で昇温させるステップ1と、ステップ1の完了後にワークWの均熱性を確保するべく温度状態を保持するステップ2と、ワークWの酸化膜が還元除去されるまでステップ2の終了時の温度状態を保持するステップ3と、半田の融点温度あるいはこの融点温度以上の温度に到達するまで昇温するステップ4と、半田の融点温度あるいはこの融点温度以上の温度状態を保持するステップ5とで構成されているということができる。なお、ステップ5が完了すると、ワークWを冷却するステップが実行されるが、本実施の形態に係る半田付け装置1においては、ワークWの冷却はチャンバ10と出口側ゲート14Bを介して接続された他の装置において行われるものとする。
上述したステップ1~5のうち、放射型温度計20が検出した放射エネルギーに基づいて特定される温度測定結果Taと、対応する熱電対40による温度測定結果Tbとの温度差は、図5から分かるように、特に昇温を行っているステップ1及び4において大きくなっている。また、その温度差は、ほとんどの期間において、放射型温度計20が検出した放射エネルギーに基づいて特定される温度測定結果Taの方が、対応する熱電対40による温度測定結果Tbよりも高くなっている。
ところで、本実施の形態に係る放射型温度計20の検出素子21は、上述した通り、ギ酸が吸収する波長域や石英ガラスを透過する波長域を考慮して、その受光波長域が一般的に0.5~2.6μmであるInGaAsフォトダイオードを採用している。したがって、この検出素子21はその受光波長域からみて赤外線(IR)ランプ12から放射される赤外光を受光可能である。このことから、一連のステップにおいて放射型温度計20が検出した放射エネルギーに基づいて特定される温度測定結果Taの方が対応する熱電対40による温度測定結果Tbよりも高くなっている原因の1つとして、赤外線ランプ12からの放射エネルギーが外乱として放射型温度計20内に入射している可能性が考えられる。
そこで、本実施の形態に係る半田付け装置1においては、放射型温度計20の出力値Eは、測定領域TAからの放射エネルギーREの値rに外乱の値Δrが付加されたものに基づいて生成されたものであると仮定する。加えて、同一の測定領域TAに対して熱電対40が測定した温度Tは、測定領域TAの実際の温度、換言すれば、放射型温度計20が測定領域TAからの放射エネルギーREの値rのみを検出していた(言い換えれば、検出素子21に外乱が入り込まなかった)場合に生成される温度であるものとする。そして、これら放射型温度計20の出力値E及び熱電対40が測定した温度Tを用いて、温度換算式f(E)を特定する。この温度換算式f(E)は、各ステップにおいて所定時間間隔で取得された熱電対温度Tと放射型温度計20の出力値Eとを用いて折線近似により、熱電対温度Tと放射型温度計20の出力値Eとを近似多項式で近似させることにより、あるいは予め準備したデータテーブルを適用することにより、特定することができる。ここで、上述した通り、外乱の値Δrは上述したステップ毎に大きく異なるため、より高精度に温度の計測ができるよう、温度換算式はステップ毎に作成することとする。また、温度換算式は、複数個(n個)の放射型温度計20のそれぞれに対して作成される。一の測定領域TAに関するステップ毎の温度換算式f(E)は、下記表1に示すように作成できる。
上記のような温度換算式を利用することにより、温度換算部33では、放射型温度計20において外乱を含む放射エネルギーに基づいて出力された出力値Eから、測定領域TAの温度を正確に算出することができる。
次に、上述の構成を備える半田付け装置1を用いた半田付け製品の製造方法の一例について簡単に説明する。なお、以下の説明に際しては、半田付け製品をワークWとし、半田付け装置1を用いてリフロー半田付けを実行するものを説明するものとする。ただし、半田付け製品の製造方法を実行する半田付け装置1には、温度換算式を作成する際に用いた熱電対40は取り外されている。また、以下に説明する半田付け製品の製造方法はあくまで一例であって、ギ酸ガスの供給タイミングや温度制御の詳細は下記の説明に示したものに何ら限定されない。
図6は、図1に示す半田付け装置を用いた半田付け製品の製造方法の一例を示すフローチャートである。本実施の形態に係る半田付け製品の製造方法は、図6に示すように、先ず、入口側ゲート14Aを開放し、チャンバ10内にリフロー半田付けを行うワークWを搬入して加熱プレート16上の所定の位置に配設(載置)する(工程S11)。次いで、入口側ゲート14Aを閉塞してチャンバ10内を気密状態とし、窒素ガスパージ及び真空引き等を適宜実行した後、赤外線ランプ12を動作させて加熱プレート16及びワークWの加熱を開始する(ステップ1に対応)。この際、放射型温度計20による放射エネルギーの測定も開始され、この放射型温度計20は以降の工程中継続的に放射エネルギーの測定を実行する。また、これに並行して、温度計測部31での温度計測も開始される。これにより、以降の工程中は常に温度計測部31による各放射型温度計20の測定領域TAの温度の計測が行われる。
赤外線ランプ12及び加熱プレート16によりワークWが加熱され、制御用熱電対18が計測した温度、あるいは複数個の放射型温度計20のうちの、ワークW上に測定領域TAが設定された放射型温度計20(例えば、図1における2つの放射型温度計20-2、20-3)の出力結果を用いて温度計測部31が計測した温度が還元温度(例えば、180~260℃)に到達したことを検出(工程S12)すると、所定のタイミングで(例えばステップ2又は3中の適切なタイミングで)還元ガス供給部15を動作させてチャンバ10内にギ酸ガスの供給を開始(工程S13)する。チャンバ10内にギ酸ガスが供給されると、ワークWの半田バンプあるいはクリーム半田の表面に形成された酸化膜が還元除去される。また、この還元除去の途中あるいは還元除去が完了した後の所定のタイミングで、赤外線ランプ12の出力を上昇させて更なる加熱を開始(ステップ4に対応)し、同じく制御用熱電対18が計測した温度、あるいは放射型温度計20の出力結果を用いて温度計測部31が計測した温度が半田溶融温度(例えば、220~350℃)に到達したことを検知すると(工程S14)、ワークWの半田溶融が完了するまで所定の時間この温度状態を維持(ステップ5に対応)する。その後、チャンバ10内への窒素ガス供給及びチャンバ10内の排気を行ったのち、ワークWの冷却を行うために、出口側ゲート14Bを開放してワークWを別のチャンバへ搬出して(工程S15)半田付け装置1による一連の半田付け処理を完了する。
上述した半田付け製品の製造方法によれば、上述した半田付け装置1が用いられるため、半田付け処理中のチャンバ10内の各所の温度を高精度に検出することができる。したがって、半田付け処理における各構成要素の動作タイミング(例えば赤外線ランプ12の出力の変更タイミングやギ酸ガスの供給タイミング等)を適切に制御できる、あるいは半田付け装置1の生産管理(例えば不良品や装置に生じる不具合の検出)を確実に実行することができるようになる。これにより、半田付け製品の製造歩留まりの高い製造方法を提供することができる。
オプションとして、上記第1の実施の形態に係る半田付け装置1は、インラインタイプのリフロー炉として機能するものを例示したが、これに代えて、バッチ処理タイプのリフロー炉として機能するものを採用することもできる。その場合には、入口側及び出口側ゲート14A、14Bに代えて、チャンバ10の天板10Tに開閉可能な構造を採用するとよい。また、チャンバ10内にワークWを冷却するための部材等を配設するとよい。
以上説明した通り、上記第1の実施の形態に係る半田付け装置1及び半田付け製品の製造方法によれば、チャンバ10の天板10T側に設けられた1乃至複数個の放射型温度計20によって測定される放射エネルギーに外乱が含まれていた場合であっても、予め準備した温度換算式を用いることで測定領域TAの温度を正確に計測することができるようになる。したがって、放射型温度計20を用いた温度測定の精度が向上する。また、上述した半田付け製品の製造方法において、放射型温度計20の出力結果を用いて計測された温度を生産管理のためのモニタリング手段として利用する場合には、複数の放射型温度計20がそれぞれ異なる測定領域TAに対して放射エネルギーの測定を行うため、局所的な温度変動を検出することができ、制御用熱電対18が計測した温度と比較等することで、不良品の検出や装置自体の不具合の検出を精度良く行うことができる。
なお、上述した半田付け製品の製造方法において、放射型温度計20の出力結果を用いて計測された温度を一連の半田付け処理の制御に利用する場合、加熱プレート16上に測定領域TAが設定された放射型温度計20(例えば放射型温度計20-1、20-n)の出力結果を用いて計測された温度や制御用熱電対18が計測した温度をも考慮して、一連の半田付け処理の制御を行うことができる。また、ワークW上に測定領域TAが設定された放射型温度計20が複数個ある場合には、必要に応じて、各放射型温度計20の出力結果を用いて計測された温度の平均値をワークWの温度として採用するとよい。
上述した第1の実施の形態においては、熱源駆動部13が赤外線ランプ12を動作させている状態、具体的には上述したステップ1~5の期間における、放射型温度計20の出力値Eと熱電対40が検出した温度Tとから特定される特性データに基づいて、各ステップ1~5毎に温度換算式を作成したものを例示した。このような温度換算式を用いれば、予め準備された温度換算式から最適なものを選択して利用するだけで、放射型温度計20を用いた高精度な温度計測が可能となる。ところで、半田付け装置1で半田付け処理されるワークWの形状や材質、ワークWに含まれる半田の種類等は種々変更されるのが通常である。ワークWの形状等が異なると、半田付け装置1による半田付け処理の制御内容もワークWの形状等に合わせて調整する必要があるため、半田付け処理時に放射型温度計20に入射する外乱の値も異なってくる。よって、ワークWの形状等が異なっても放射型温度計20を用いた温度計測を高精度に行うためには、ワークWの形状等に合わせて温度換算式を複数準備する、あるいは温度換算式に入力される放射型温度計20の出力結果あるいは温度換算部33で算出した温度を補正するとよい。
上記に関連して、以下には、本開示の他の実施の形態として、1又は複数の放射型温度計が測定した放射エネルギーを示す出力結果、又は1又は複数の放射型温度計が測定した放射エネルギーを示す出力結果に基づいて特定される温度を補正する補正部を有する半田付け装置について、説明を行う。
<第2の実施の形態>
以下には先ず、本開示の第2の実施の形態に係る半田付け装置1Aとして、半田付け処理中における測定対象の温度を各放射型温度計を用いて精度良く測定するために、熱源の動作状態の異なる複数のステップ毎に補正値(以下、「第1の補正値」という)を設定し、この補正値を用いて放射型温度計が測定した放射エネルギーを示す出力結果の値を補正するものについて説明する。
本実施の形態において実施される補正の詳細を説明する前に、本実施の形態では上述した補正を行うため、温度換算部33で用いる温度換算式は、第1の実施の形態に示したようなステップ毎に作成されたものを準備する必要は必ずしもない。一方で、放射型温度計20は非接触式の温度計のため、その測定精度は接触式の温度計に比べると、放射率や外乱の影響を受けやすく精度が悪化する場合がある。以上の点を考慮すると、放射型温度計20の測定精度を高める等の目的から、放射型温度計20が検出した放射エネルギーと熱電対40が検出した温度とから特定される特性データに基づいて作成される温度換算式を用いた温度換算は必要である。そこで、本実施の形態においては、その作成が(第1の実施の形態で説示したものに比べて)比較的簡単な第1の温度換算式を作成し、この第1の温度換算式に入力される放射型温度計20の出力結果の値を補正して入力することで、高精度な温度の計測を実現する。
上述の第1の温度換算式は、第1の実施の形態で説示した温度換算式と同様に、図4に示す半田付け装置1を用いて、各放射型温度計20が検出した放射エネルギーを示す出力結果と熱電対40が検出した温度とから特定される特性データ(以下、「第1の特性データ」ともいう)に基づいて作成されるものである。しかしながら、この第1の特性データは、熱源駆動部13が赤外線ランプ12を動作させていない状態における放射型温度計20の出力結果及び熱電対40の検出温度から特定されたものである点で、第1の実施の形態で説示したものとは異なっている。具体的には、第1の温度換算式は、例えばオフライン状態で専用のプログラム(例えばチャンバ10内を所定温度まで加熱した後、長時間赤外線ランプ12をオフにするような制御を実行するためのものであってもよい)を実行した際に得られる、放射型温度計20により検出された放射エネルギーを示す出力値、及び熱電対40により検出された温度から特定される特性データに基づいて作成することができる。あるいは、黒体炉を用いて特定された特性データに基づいて作成することもできる。このようにして作成された第1の温度換算式においては、赤外線ランプ12からの放射エネルギーは考慮されていないものの、他の要因で生じ得る測定誤差を抑制可能な温度換算を実現することができる。
上述の通り、第1の温度換算式においては赤外線ランプ12からの放射エネルギーに起因する外乱は考慮されていないため、この外乱に起因する測定誤差を抑えるために、本実施の形態に係る半田付け装置1Aは放射型温度計20が検出した放射エネルギーを示す出力結果を補正する。言い換えれば、本実施の形態に係る半田付け装置1Aは、上述した第1の実施の形態に係る半田付け装置1のような、外乱を考慮した温度換算式を利用して温度計測を行うことに代えて、下記の第1の補正部35による補正を採用しているともいえる。
図7は、本開示の第2の実施の形態に係る半田付け装置の制御部の一部を例示的に示した機能ブロック図である。本実施の形態に係る半田付け装置1Aの制御部30内には、温度計測部31Aが設けられており、且つこの温度計測部31Aは、第1の補正部35を含んでいる。なお、本実施の形態に係る半田付け装置1Aは、上述の第1の補正部35を有している点以外は上述した第1の実施の形態に係る半田付け装置1と同様の構成を有していてよい。したがって、半田付け装置1Aのうち、半田付け装置1と同様の構成からなる部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
第1の補正部35は、放射型温度計20が検出した放射エネルギーから、外乱に起因する放射エネルギーを取り除く補正を行うためのものであってよい。具体的には、この第1の補正部35は、半田付け装置1Aによる半田付け処理が、赤外線ランプ12の動作状態の異なる複数のステップ(詳しくは、上述したステップ1~5)を有することに着目し、これらのステップ毎に生じる外乱の値を特定し、この外乱の値に基づいて第1の補正値を特定する。そして、出力結果取得部32で放射型温度計20の検出した放射エネルギーを示す出力結果が取得された際、この出力結果を、半田付け装置1Aの実行しているステップに合わせて第1の補正値を用いて補正する。このような補正を行うと、放射型温度計20が検出した放射エネルギーのうち、外乱に起因するものを除去するため、補正された出力結果は、補正前の出力結果よりも小さな値となる。そして、この補正された出力結果を温度換算部33にて温度換算すれば、補正を行わなかった場合に比べて測定領域TAの温度を精度よく計測できる。
第1の補正部35で用いられる第1の補正値は、種々の方法で特定することができるが、例えば、上述した熱電対40を用いて放射型温度計20が検出した放射エネルギーに含まれる外乱の程度を特定することで特定してもよい。具体的には、各放射型温度計20それぞれに、図5に示すようなグラフを作成し、ステップ1~5における放射型温度計20が検出した放射エネルギーに基づいて特定される温度と熱電対40により特定される温度との間の温度差から放射型温度計20に入射する外乱の程度を特定することで、放射型温度計20が検出した放射エネルギーを示す出力結果を外乱の影響を除いた出力結果に補正可能な補正値を特定するようにしてもよい。
上記第2の実施の形態に係る半田付け装置1Aによれば、第1の補正部35による補正を行うことで、第1の実施の形態に係る半田付け装置1と同様に、放射型温度計20によって測定される放射エネルギーに外乱が含まれていた場合であっても、測定領域TAの温度を正確に計測することができるようになる。そして、放射型温度計20を用いた温度測定の精度が向上し、半田付け処理や生産管理を円滑に実行することができるようになる。
<第3の実施の形態>
次に、本開示の第3の実施の形態に係る半田付け装置1Bとして、半田付け処理中における測定対象の温度を各放射型温度計を用いて精度良く測定するために、主に赤外線ランプ12の出力制御に用いられる制御用熱電対18の測定結果を利用して、各放射型温度計が測定した放射エネルギーに基づいて特定される温度を補正するものについて説明する。
図8は、本開示の第3の実施の形態に係る半田付け装置の制御部の一部を例示的に示した機能ブロック図である。本実施の形態に係る半田付け装置1Bの制御部30内には、温度計測部31Bが設けられており、且つこの温度計測部31Bは、第2の補正部36を含んでいる。なお、本実施の形態に係る半田付け装置1Bは、上述の第2の補正部36を有している点以外は上述した第1の実施の形態に係る半田付け装置1と同様の構成を有していてよい。したがって、半田付け装置1Bのうち、半田付け装置1と同様の構成からなる部分については同一の符号を付してその説明を省略する。ただし、本実施の形態に係る半田付け装置1Bが有する放射型温度計20の数は、複数であるものとする。また、本実施の形態における温度換算部33は、上述した第2の実施の形態に係るものと同様に、第1の温度換算式を用いて温度換算を行うものを例示する。
第2の補正部36は、赤外線ランプ12の出力を制御するために設けられた制御用熱電対18の測定結果を利用して、各放射型温度計20が検出した放射エネルギーを示す出力結果に基づいて計測された温度を補正するものであってよい。これに関連して、第2の補正部36は、制御用熱電対18に接続され制御用熱電対18の測定結果を取得することが可能となっている。第2の補正部36による補正は、例えば以下のように行うことができる。すなわち、先ず制御用熱電対18が接触している加熱プレート16の位置に最も近接した測定領域TAからの放射エネルギーを検出する一の放射型温度計20(図1の場合であれば放射型温度計20-1)を特定する。次いで、この一の放射型温度計20-1が測定した放射エネルギーに基づいて特定される温度と、制御用熱電対18が計測した温度との温度差を特定することで、この温度差に対応する補正値(以下、「第2の補正値」という)を特定する。そして、一の放射型温度計20-1の出力結果に基づいて計測された温度に加えて、他の放射型温度計20-2、20-3、・・・、20-nに基づいて計測された温度を、第2の補正値を用いて補正する。
ここで、複数の放射型温度計20に適用される第2の補正値は、共通の値であっても、異なる値であってもよい。第2の補正値を異なる値で構成する場合には、例えば各放射型温度計20の配置や測定領域TAが形成された測定対象物の種類(例えばワークWであるのか、加熱プレート16であるのか)に合わせて調整することで、複数の放射型温度計20毎に異なる値を設定すればよい。
上記第3の実施の形態に係る半田付け装置1Bによれば、第2の補正部36による補正を行うことで、第1及び第2の実施の形態に係る半田付け装置1、1Aと同様に、放射型温度計20によって測定される放射エネルギーに外乱が含まれていた場合であっても、測定領域TAの温度を正確に計測することができるようになる。そして、放射型温度計20を用いた温度測定の精度が向上し、半田付け処理や生産管理を円滑に実行することができるようになる。
加えて、上述した第2の補正部36によれば、半田付け装置1Bが赤外線ランプ12の出力を制御するために有している制御用の熱電対の測定結果を温度補正に流用することができる。したがって、第2の補正部36で第2の補正値を特定する際、補正値を特定するための構成要素、例えば上述した熱電対40のようなものを別途準備しなくてもよい。したがって、本実施の形態に係る半田付け装置1Bは、各放射型温度計が測定した放射エネルギーに基づいて特定される温度の補正を簡単に実現することができる。
<第4の実施の形態>
次に、本開示の第4の実施の形態に係る半田付け装置1Cとして、半田付け処理中において測定対象の温度を各放射型温度計を用いて精度良く測定するために、赤外線ランプ12の出力に基づいて、各放射型温度計が測定した放射エネルギーを補正するものについて説明する。
図9は、本開示の第4の実施の形態に係る半田付け装置の制御部の一部を例示的に示した機能ブロック図である。本実施の形態に係る半田付け装置1Cの制御部30内には、温度計測部31Cが設けられており、且つこの温度計測部31Cは、第3の補正部37を含んでいる。また、本実施の形態に係る半田付け装置1Cの熱源駆動部13内には、赤外線ランプ12に供給する電力を測定可能な電力測定部41が設けられている。なお、本実施の形態に係る半田付け装置1Cは、上述の第3の補正部37及び電力測定部41を有している点以外は上述した第1の実施の形態に係る半田付け装置1と同様の構成を有していてよい。したがって、この半田付け装置1Cのうち、半田付け装置1と同様の構成からなる部分については同一の符号を付してその説明を省略する。また、本実施の形態における温度換算部33は、上述した第2及び第3の実施の形態に係るものと同様に、第1の温度換算式を用いて温度換算を行うものを例示する。
第3の補正部37は、熱源駆動部13内に設けられた電力測定部41に接続され、この電力測定部41が測定した熱源駆動部13から赤外線ランプ12に供給される電力値に基づいて、1乃至複数の放射型温度計20が検出した放射エネルギーを示す出力結果を補正するものであってよい。言い換えれば、第3の補正部37は、赤外線ランプ12に供給される電力値から赤外線ランプ12の出力を特定し、赤外線ランプ12の出力から、放射型温度計20に外乱として入射する赤外線ランプ12からの放射エネルギーを特定することで、1乃至複数の放射型温度計20が検出した放射エネルギーを示す出力結果を補正しようとするものであるといえる。
第3の補正部37による補正を行うために、電力測定部41が測定した赤外線ランプ12に供給される電力値と、各放射型温度計20が検出した放射エネルギーに含まれる外乱の値、詳しくは放射型温度計20に入射する赤外線ランプ12からの放射エネルギーとの関係を特定した第1の調整テーブルを作成するとよい。なお、各放射型温度計20が検出した放射エネルギーに含まれる外乱の値は、赤外線ランプ12を動作させた状態下で検出した放射エネルギーと赤外線ランプ12を動作させていない状態下で検出した放射エネルギーとを比較すれば特定することができる。作成された第1の調整テーブルは、データ格納部34内に格納しておくとよい。
上記第4の実施の形態に係る半田付け装置1Cによれば、第3の補正部37による補正を行うことで、第1乃至第3の実施の形態に係る半田付け装置1、1A、1Bと同様に、放射型温度計20によって測定される放射エネルギーに外乱が含まれていた場合であっても、測定領域TAの温度を正確に計測することができるようになる。そして、放射型温度計20を用いた温度測定の精度が向上し、半田付け処理や生産管理を円滑に実行することができるようになる。
<第5の実施の形態>
最後に、本開示の第5の実施の形態に係る半田付け装置1Dとして、半田付け処理中における測定対象の温度を各放射型温度計を用いて精度良く測定するために、チャンバ内のギ酸濃度を参照して、各放射型温度計が測定した放射エネルギーを補正するものについて説明する。
本実施の形態に係る半田付け装置1Dにおいて、処理流体として用いられるギ酸は、特定波長の放射エネルギーを吸収することが知られている。ここで、他の条件によってはギ酸による放射エネルギーの吸収の影響を大きく受けるような検出素子(例えばInSb等)を使う必要が生じることがある。そこで、本実施の形態は、チャンバ内のギ酸濃度からギ酸ガス雰囲気下における放射エネルギーの透過率を参照することで、放射型温度計20を用いた温度計測の精度を向上させようとするものである。
図10は、本開示の第5の実施の形態に係る半田付け装置の制御部の一部を例示的に示した機能ブロック図である。本実施の形態に係る半田付け装置1Dの制御部30内には、温度計測部31Dが設けられており、且つこの温度計測部31Dは、第4の補正部38を含んでいる。なお、本実施の形態に係る半田付け装置1Dは、上述の第4の補正部38を有している点以外は上述した第1の実施の形態に係る半田付け装置1と同様の構成を有していてよい。したがって、この半田付け装置1Dのうち、半田付け装置1と同様の構成からなる部分については同一の符号を付してその説明を省略する。また、本実施の形態における温度換算部33は、上述した第2乃至第4の実施の形態に係るものと同様に、第1の温度換算式を用いて温度換算を行うものを例示する。
第4の補正部38は、還元ガス供給部15、特に還元ガス供給部15内の還元ガスの供給量を制御する制御バルブに接続され、還元ガス供給部15から供給された還元ガスの量等に基づいてチャンバ10内のギ酸濃度を特定し、特定されたギ酸濃度から放射エネルギーの透過率を特定して、1乃至複数の放射型温度計20が検出した放射エネルギーを示す出力結果を補正するものであってよい。なお、この第4の補正部38は、還元ガス供給部15に加えて、チャンバ10内のガスを排出するための排出路や、チャンバ10内に不活性ガス等の他のガスを供給するためのガス供給路の動作状態をも検出可能な構成とするとよい。
第4の補正部38による補正を行うために、還元ガス供給部15から供給された還元ガスの量等に基づいて特定されるチャンバ10内のギ酸濃度と、チャンバ10内の放射エネルギーの透過率との関係を特定した第2の調整テーブルを作成するとよい。この第2の調整テーブルは実験により求めることができる。作成された第2の調整テーブルは、データ格納部34内に格納しておくとよい。
上記第5の実施の形態に係る半田付け装置1Dによれば、第4の補正部38による補正を行うことで、チャンバ10内のギ酸濃度を考慮した温度測定が可能となり、測定領域TAの温度を正確に計測することができるようになる。そして、放射型温度計20を用いた温度測定の精度が向上したことで、半田付け処理や生産管理を円滑に実行することができるようになる。
上述した第2乃至第5の実施の形態で説示した各補正部は、それぞれを組み合わせて採用することが可能である。各補正部を組み合わせることにより、放射型温度計20を用いて温度測定の精度をさらに向上させることができる。同様に、第1の実施の形態に係る半田付け装置1に、上述の各補正部、特に第2乃至第4の補正部を適用すること、言い換えれば、第3乃至第5の実施の形態において用いられる温度換算式として、第1の実施の形態で説示したものを採用することも可能であることはいうまでもない。
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。