小容量HIAC分析によって行われた、サブビジブル(subvisible)粒子分析の結果を示す図である。10μm粒子の結果は、貯蔵中に粒子レベルの増加を示した製剤である製剤7を除いて、全ての試料が低レベルの粒子を有することを示した。
小容量HIAC分析によって行われた、サブビジブル粒子分析の結果を示す図である。25μmの結果は、全ての試料が低レベル又は検出不能なレベルの粒子を有することを示した。3連測定値の標準偏差を表すエラーバーは、観察された粒子の数より大きい。
4℃で貯蔵した試料のサイズ排除高速液体クロマトグラフィーの結果を示す図である。製剤8を除いて、全ての製剤が同様のHMW形成速度を示した。
30℃で貯蔵した試料のサイズ排除高速液体クロマトグラフィーの結果を示す図である。製剤8を除いて、全ての製剤が同様のHMW形成速度を示した。
4℃の貯蔵条件についての還元型CE-SDS分析の結果を示す図である。7週間の試験中、全ての製剤が同様のレベルの純度%を示した。
30℃の貯蔵条件についての還元型CE-SDS分析の結果を示す図である。製剤7を除く全ての製剤が、30℃貯蔵中に同様のレベルの純度%を示した。製剤7は経時的に純度%の一貫した減少を示した。
4℃貯蔵中のアフリベルセプト電荷分布を評価するために使用されたcIEF分析の結果を示す図である。全ての製剤が、経時的に同様のレベルの塩基性種%を示した。
4℃貯蔵中のアフリベルセプト電荷分布を評価するために使用されたcIEF分析の結果を示す図である。全ての製剤が、経時的に同様のレベルの酸性種%を示した。
30℃貯蔵中のアフリベルセプト電荷分布を評価するために使用されたcIEF分析の結果を示す図である。全ての製剤が、経時的に同様のレベルの塩基性種%を示した。
30℃貯蔵中のアフリベルセプト電荷分布を評価するために使用されたcIEF分析の結果を示す図である。全ての製剤が、経時的に同様のレベルの酸性種%を示した。
SE-HPLCによって測定される、30℃で貯蔵された種々のアフリベルセプト製剤中のHMW形成を示す図である。(製剤の略語については表4を参照されたい)。
市販のEylea(登録商標)(アフリベルセプト;Regeneron Pharmaceuticals, Inc.、ニューヨーク州タリータウン)と比較した、30℃での組換え製造アフリベルセプトの安定性比較の結果を示す図である。組換え製造アフリベルセプトはJust Biotherapeutics(ワシントン州シアトル)によって製造され、10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、pH5.2、0.1%(w/v)ポロキサマー製剤(A52ProPl-0.1)に製剤化された。
30℃で貯蔵中の、10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、pH5.2製剤(A52ProPl-0.1)中の組換え製造アフリベルセプトの安定性に対する、対照(添加塩化ナトリウムを含まない)と比較した100mM塩化ナトリウム(「塩」)の効果を示す図である。
態様についての詳細な説明
本明細書で使用される節の見出しは、組織化目的のためだけであり、記載されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
定義
本明細書で特に定義しない限り、本出願に関して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。よって、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「タンパク質(a protein)」への言及は複数のタンパク質を含み;「細胞(a cell)」への言及は、複数の細胞の集団を含む。
本発明は、Eylea(登録商標)としても商業的に知られているアフリベルセプトを含む、患者への硝子体内又は局所投与に適した水性眼科用製剤に関する。アフリベルセプトは、典型的には組換えDNA発現技術によって最も簡便に製造される、アフリベルセプトアミノ酸配列(配列番号1)を有する2つの同一の融合ポリペプチド鎖の集合体である。アフリベルセプトアミノ酸配列は以下の通りである:
SDTGRPFVEMYSEIPEIIHMTEGRELVIPCRVTSPNITVTLKKFPLDTLIPDGKRIIWDS
RKGFIISNATYKEIGLLTCEATVNGHLYKTNYLTHRQTNTIIDVVLSPSHGIELSVGEKL
VLNCTARTELNVGIDFNWEYPSSKHQHKKLVNRDLKTQSGSEMKKFLSTLTIDGVTRSDQ
GLYTCAASSGLMTKKNSTFVRVHEKDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISR
TPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLN
GKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPS
DIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNH
YTQKSLSLSPG//配列番号1
ジスルフィド架橋は、配列番号1の以下のアミノ酸位置のシステイン残基間に予想される(上記の配列番号1に示される下線のシステイン(C)残基)。
30~79(鎖内)
124~185(鎖内)
211~211(鎖間)
214~214(鎖間)
246~306(鎖内)
352~410(鎖内)。
アフリベルセプトの2つの融合ポリペプチド鎖は、配列番号1のアミノ酸位置211及び214でジスルフィド結合によって共有結合している。融合タンパク質は、典型的にはグリコシル化されており、配列番号1の36、68、123、196、及び282位のアスパラギン残基(上記の配列番号1に示される太字/イタリック体のアスパラギン(N)残基)でN-グリカンが共有結合している。本発明の範囲内の「アフリベルセプト」は、融合ポリペプチド鎖の一方、両方がさらなるカルボキシ末端リジン(K)残基を有する配列番号1のアミノ酸配列を有する又は融合ポリペプチド鎖のいずれもさらなるカルボキシ末端リジン(K)残基を有する配列番号1のアミノ酸配列を有さない実施形態も含む。本発明の眼科用製剤中のアフリベルセプトの濃度は、約20mg/mL~約80mg/mL、又は約30mg/mL~約50mg/mLであり;例えば、約40mg/mLの濃度が製剤の多くの実施形態において有用である。
「安定な」製剤は、その中のタンパク質が、アフリベルセプトを含む原薬及び/又は製剤の処理(例えば、限外濾過、透析濾過、他の濾過工程、バイアル充填)、輸送及び/又は貯蔵の際にその物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を本質的に保持するものである。合わせて、製剤中のタンパク質の物理的、化学的及び生物学的安定性は、製剤化された製剤(DP)が貯蔵される条件に特異的なタンパク質製剤、例えば、アフリベルセプト製剤の「安定性」を具体化している。例えば、零下温度で貯蔵された製剤は化学的、物理的又は生物学的活性のいずれにも有意な変化がないと予想され、一方40℃で貯蔵された製剤はその物理的、化学的及び生物学的活性に変化があると予想され、変化の程度は、原薬又は製剤の貯蔵時間に依存する。タンパク質製剤の構成も変化速度に影響を及ぼし得る。例えば、凝集体形成はタンパク質濃度によって大きく影響され、より高いタンパク質濃度でより高い凝集速度が観察される。賦形剤も、例えば、あるタンパク質の凝集速度を増加させる塩の添加によって製剤の安定性に影響を及ぼすことが知られているが、スクロースなどの他の賦形剤は貯蔵中の凝集速度を低下させることが知られている。不安定性はまた、修飾の種類及びpH依存性に応じて、高い分解速度と低い分解速度の両方を生じさせるpHによって大きく影響される。
タンパク質安定性を測定するための種々の分析技術が当技術分野で利用可能であり、例えば、Wang,W.(1999)、液体タンパク質医薬品の不安定性、安定化及び製剤化、Int J Pharm 185:129~188に概説されている。安定性は、選択された温度で選択された期間測定することができる。迅速なスクリーニングのためには、例えば、製剤を2週間~1ヶ月間40℃に保ち、その時点で安定性を測定する。製剤を2~8℃で貯蔵する場合、一般に製剤は30℃で少なくとも1ヶ月間、又は40℃で少なくとも1週間安定である、及び/又は2~8℃で少なくとも2年間安定であるべきである。
タンパク質は、それが色及び/又は透明度の目視検査で、あるいはUV光散乱又はサイズ排除高速液体クロマトグラフィー、又は他の適切な方法によって測定される、二次及び/又は三次構造(すなわち、固有構造)への変化、又は凝集及び/又は沈殿及び/又は変性の最小の兆しを示す場合に、医薬製剤において「その物理的安定性を保持する」。タンパク質の物理的不安定性、すなわち物理的安定性の喪失は、二量体及びより高次の凝集体、サブビジブル、及び目に見える粒子形成、ならびに沈殿をもたらすオリゴマー化によって引き起こされ得る。物理的分解の程度は、目的の分解物の種類に応じて種々の技術を用いて確認することができる。二量体及びより高次の可溶性凝集体はサイズ排除クロマトグラフィーを用いて定量化することができる一方、サブビジブル粒子は光散乱、光遮蔽又は他の適切な技術を用いて定量化することができる。一実施形態では、タンパク質の安定性が、低い割合の分解(例えば、断片化)及び/又は凝集したタンパク質と共に、溶液中のアフリベルセプト単量体タンパク質の割合に従って決定される。「アフリベルセプト単量体」とは、ポリペプチド鎖のいずれかの上にさらなるカルボキシ末端リジン残基を有する又は有さない、アフリベルセプトアミノ酸配列(配列番号1)を有する2つのポリペプチド鎖の集合体を意味する。「アフリベルセプト単量体」において、2つのアフリベルセプトポリペプチド鎖は、上記のように、配列の免疫グロブリンFcドメイン部分の会合及びジスルフィド架橋によって組み立てられる。例えば、安定なタンパク質を含む水性製剤は、(全タンパク質の百分率として)少なくとも95%のアフリベルセプト単量体、少なくとも96%のアフリベルセプト単量体、少なくとも97%のアフリベルセプト単量体、少なくとも98%のアフリベルセプト単量体、又は少なくとも99%のアフリベルセプト単量体タンパク質を含み得る。あるいは、本発明の水性製剤は、(全タンパク質の百分率として)約5%の凝集体及び/又は分解アフリベルセプトタンパク質を含み得る。
所与の時点での化学的安定性が、タンパク質成分、例えばアフリベルセプトの一次構造の変化をもたらす共有結合が形成も破壊もされないようなものである場合、タンパク質は医薬製剤中で「その化学的安定性を保持する」。一次構造の変化は、タンパク質の二次及び/又は三次及び/又は四次構造の修飾をもたらし得、凝集体の形成又は既に形成された凝集体の反転をもたらし得る。典型的な化学修飾には、異性化、脱アミド、N末端環化、主鎖加水分解、メチオニン酸化、トリプトファン酸化、ヒスチジン酸化、β脱離、ジスルフィド形成、ジスルフィドスクランブリング(disulfide scrambling)、ジスルフィド切断、及びD-アミノ酸形成を含む一次構造の変化をもたらす他の変化が含まれ得る。化学的不安定性、すなわち化学的安定性の喪失は、イオン交換クロマトグラフィー、毛管等電点電気泳動、ペプチド消化物の分析、及び複数の種類の質量分析技術を含む種々の技術によって調べることができる。化学的安定性は、化学的に変化した形態のタンパク質を検出及び定量することによって評価することができる。化学的変化は、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGE及び/又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)を使用して評価することができるサイズ修飾(例えばクリッピング)を含み得る。他の種類の化学的変化には、それだけに限らないが、イオン交換クロマトグラフィー、毛管等電点電気泳動、又はペプチドマッピングなどの電荷に基づく方法によって評価することができる電荷変化(例えば、脱アミドの結果として起こる)が含まれる。
物理的及び/又は化学的安定性の喪失は、修飾及び修飾されるタンパク質に応じて、目的の生物学的活性の増加又は減少のいずれかとしての生物学的活性の変化をもたらし得る。所与の時点でのタンパク質の生物学的活性が医薬製剤の調製時に示された生物学的活性の約30%以内である場合、タンパク質は医薬製剤中で「その生物学的活性を保持する」。活性がその開始値の70%未満である場合、活性は減少したと見なされる。生物学的アッセイは、リガンド結合、効力、細胞増殖、又はその生物製剤活性の他の代用尺度などのインビボとインビトロの両方に基づくアッセイを含み得る。例として、アフリベルセプトの生物学的活性は、ELISA又はヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)増殖アッセイによるPGFに結合する抗胎盤増殖因子の阻害などのインビトロリガンド結合アッセイを用いて推定することができる。
本発明で使用するためのアフリベルセプトは、典型的には組換え発現技術によって製造される。「組換え」という用語は、材料(例えば、核酸又はポリペプチド)が人の介入によって人工的又は合成的(すなわち、非天然)に改変されていることを示す。改変は、その天然の環境又は状態内で、又はそこから取り出された材料に対して行うことができる。例えば、「組換え核酸」は、例えばクローニング、DNAシャフリング又は他の周知の分子生物学的手順の間に、核酸を組換えることによって作製されるものである。このような分子生物学的手順の例は、Maniatisら、Molecular Cloning. A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、ニューヨーク(1982)に見られる。「組換えDNA分子」は、このような分子生物学的技術によってつなぎ合わされたDNAのセグメントからなる。本明細書で使用される「組換えタンパク質」又は「組換えポリペプチド」という用語は、組換えDNA分子を用いて発現されるタンパク質分子を指す。「組換え宿主細胞」は、組換え核酸を含む及び/又は発現する細胞である。アフリベルセプト融合タンパク質を発現させるのに有用な組換えDNA分子は、例えば、Papadopoulosら、改善した薬物動態特性を有する修飾キメラポリペプチド、米国特許第7070959号明細書及び国際公開第00/75319号パンフレットによって記載されている。
「天然の」という用語は、ポリペプチド、核酸、宿主細胞などの生物学的材料に関連して本明細書中に存在する場合、自然で見られる材料を指す。
「制御配列」又は「制御シグナル」という用語は、特定の宿主細胞において、それが連結されているコード配列の発現及びプロセシングに影響を及ぼし得るポリヌクレオチド配列を指す。このような制御配列の性質は宿主生物に依存し得る。特定の実施形態では、原核生物の制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列を含み得る。真核生物のための制御配列は、転写因子のための1つ又は複数の認識部位を含むプロモーター、転写エンハンサー配列又はエレメント、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列を含み得る。制御配列はリーダー配列及び/又は融合パートナー配列を含み得る。プロモーター及びエンハンサーは、転写に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用する短い一連のDNAからなる(Maniatisら、Science 236:1237(1987))。プロモーター及びエンハンサーエレメントは、酵母、昆虫及び哺乳動物細胞ならびにウイルスの遺伝子を含む種々の真核生物源から単離されてきた(類似の制御エレメント、すなわちプロモーターは原核生物にも見られる)。特定のプロモーター及びエンハンサーの選択は、どの細胞型を使用して目的のタンパク質を発現させるかに依存する。真核生物プロモーター及びエンハンサーの中には広い宿主範囲を有するものもあれば、限られたサブセットの細胞型において機能的であるものもある(総説についてはVossら、Trends Biochem.Sci.、11:287(1986)及びManiatisら、Science 236:1237(1987)参照)。
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼが結合して1つ又は複数の下流構造遺伝子によるメッセンジャーRNAの転写を開始する部位を含むDNAの領域である。プロモーターは、遺伝子の転写開始部位の近く、同じ鎖上及びDNAの上流(センス鎖の5’領域に向かって)に位置している。プロモーターは、典型的には約100~1000bpの長さである。
「エンハンサー」は、遺伝子の転写を活性化するために1つ又は複数の活性化タンパク質(転写因子)と結合することができる短い(50~1500bp)DNAの領域である。
本明細書で使用される「作動可能な組み合わせで」、「作動可能な順序で」及び「作動可能に連結した」という用語は、所与の遺伝子の転写及び/又は所望のタンパク質分子の合成を指令することができる核酸分子が産生されるような核酸配列の結合を指す。この用語はまた、機能的タンパク質が産生されるようなアミノ酸配列の結合も指す。例えば、タンパク質コード配列に「作動可能に連結した」ベクター中の制御配列は、タンパク質コード配列の発現が制御配列の転写活性と適合する条件下で達成されるようにそれに連結される。
「ポリペプチド」及び「タンパク質」は本明細書で互換的に使用され、ペプチド結合を通して共有結合している2つ以上のアミノ酸の分子鎖を含む。この用語は特定の長さの産物を指すものではない。したがって、「ペプチド」及び「オリゴペプチド」がポリペプチドの定義内に含まれる。この用語は、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などを含む。さらに、タンパク質断片、類似体、突然変異型又は変異型タンパク質、融合タンパク質などもポリペプチドの意味に含まれる。この用語はまた、公知のタンパク質工学技術を使用して組換え的に発現され得る、1つ又は複数のアミノ酸類似体又は非標準もしくは非天然アミノ酸が含まれる分子も含む。さらに、融合タンパク質は、本明細書に記載されるように、周知の有機化学技術によって誘導体化され得る。
ポリペプチド(例えば、免疫グロブリン、又は抗体)の「変異体」は、1つ又は複数のアミノ酸残基が別のポリペプチド配列に対してアミノ酸配列に挿入、アミノ酸配列から欠失及び/又はアミノ酸配列に置換されているアミノ酸配列を含む。変異体は融合タンパク質を含む。
例えば、アフリベルセプトに関する「融合タンパク質」という用語は、タンパク質が、2つ以上の親タンパク質又はポリペプチドに由来するポリペプチド成分を含むことを示す。典型的には、融合タンパク質は、あるタンパク質由来のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が、異なるタンパク質由来のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列と、インフレームで付加され、場合によりリンカーによって分離される「融合遺伝子」から発現される。その後、融合遺伝子は単一タンパク質として組換え宿主細胞によって発現され得る。
「分泌」タンパク質とは、分泌シグナルペプチド配列の結果として小胞体(ER)、分泌小胞、又は細胞外空間に向けられ得るタンパク質、ならびに必ずしもシグナル配列を含まない、細胞外空間に放出されるタンパク質を指す。分泌タンパク質が細胞外空間に放出されると、分泌タンパク質は細胞外プロセシングを受けて「成熟」タンパク質を産生することができる。細胞外空間への放出は、エキソサイトーシス及びタンパク質切断を含む多くの機構によって起こり得る。いくつかの他の実施形態では、目的のアフリベルセプト融合タンパク質を、分泌タンパク質として宿主細胞によって合成することができ、次いでこれを細胞外空間及び/又は培地からさらに精製することができる。
本明細書で使用される場合、宿主細胞中で組換えDNA技術によって産生されるタンパク質に関する場合の「可溶性」は、水溶液中に存在するタンパク質である;タンパク質がツインアルギニンシグナルアミノ酸配列を含む場合、可溶性タンパク質はグラム陰性細菌宿主では細胞膜周辺腔に輸送される、又は分泌可能な真核生物宿主細胞によって、もしくは適切な遺伝子(例えば、kil遺伝子)を有する細菌宿主によって培養培地に分泌される。したがって、可溶性タンパク質は、宿主細胞内の封入体には見られないタンパク質である。あるいは、状況に応じて、可溶性タンパク質は、細胞膜に組み込まれて見られない、又はインビトロでは溶解している、又は生理学的条件下で目的の水性緩衝液中(このような緩衝液なドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、尿素、塩酸グアニジニウム、又は過塩素酸リチウムなどのイオン性界面活性剤又はカオトロピック剤を含まない)に他のタンパク質なしで懸濁した場合に、有意な量の不溶性凝集体を形成することなく(すなわち、全タンパク質の10%未満の凝集体、典型的には約5%未満の凝集体を形成する)生理学的条件下で水性緩衝液に溶解され得るタンパク質である。対照的に、不溶性タンパク質は、宿主細胞内の細胞質顆粒(封入体と呼ばれる)の内部に変性した形態で存在するものである、あるいは文脈に応じて、不溶性タンパク質は、それだけに限らないが、細胞質膜、ミトコンドリア膜、葉緑体膜、小胞体膜等を含む細胞膜に存在する、又は生理学的条件下で目的の水性緩衝液中(このような緩衝液なドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、尿素、塩酸グアニジニウム、又は過塩素酸リチウムなどのイオン性界面活性剤又はカオトロピック剤を含まない)に(生理学的に適合性の温度で)他のタンパク質なしで懸濁した場合に、生理学的条件下、インビトロ水性緩衝液中で、有意な量の不溶性凝集体を形成する(すなわち、全タンパク質の約10%以上の凝集体を形成する)ものである。
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、2つ以上のヌクレオチド残基を含む一本鎖と二本鎖の両方のヌクレオチドポリマーを含む。ポリヌクレオチドを含むヌクレオチド残基は、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、又はいずれかの種類のヌクレオチドの修飾型であり得る。前記修飾には、塩基修飾、例えばブロモウリジン及びイノシン誘導体、リボース修飾、例えば2’,3’-ジデオキシリボース、ならびにヌクレオチド間結合修飾、例えばホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホロセレノアート(phosphoroselenoate)、ホスホロジセレノアート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオアート(phosphoroanilothioate)、ホスホラニラダート(phosphoraniladate)及びホスホロアミダートなどが含まれる。
「オリゴヌクレオチド」という用語は、200個以下のヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチドを意味する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドが10~60塩基長である。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドが12、13、14、15、16、17、18、19又は20~40ヌクレオチド長である。オリゴヌクレオチドは、例えば、突然変異遺伝子の構築に使用するために、一本鎖又は二本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドはセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドは、検出アッセイ用の放射標識、蛍光標識、ハプテン又は抗原標識を含む標識を含み得る。オリゴヌクレオチドは、例えば、PCRプライマー、クローニングプライマー又はハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド配列」又は「ヌクレオチド配列」又は「核酸配列」は、オリゴヌクレオチド、DNA、及びRNAを含む、ポリヌクレオチド中のヌクレオチド残基一次配列、核酸又は状況に応じて、ヌクレオチド残基の一次配列を表す文字列である。任意の特定のポリヌクレオチド配列から、所与の核酸又は相補的ポリヌクレオチド配列のいずれかを決定することができる。一本鎖又は二本鎖であり得、センス鎖又はアンチセンス鎖を表し得る、ゲノム又は合成起源のDNA又はRNAが含まれる。特に指定されない限り、本明細書で論じられる任意の一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左方向は5’方向と呼ばれる。新生RNA転写産物の5’から3’への付加の方向は転写方向と呼ばれる;RNA転写産物の5’末端に対して5’にあるRNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と呼ばれる;RNA転写産物の3’末端に対して3’にあるRNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と呼ばれる。
本明細書中で使用される場合、「単離核酸分子」又は「単離核酸配列」とは、(1)同定され、核酸の天然源中で通常会合している少なくとも1つの混入核酸分子から分離された、又は(2)クローニング、増幅、タグ付けもしくは目的の核酸の配列を決定することができるようにバックグラウンド核酸から区別された核酸分子である。単離核酸分子は、それが自然に見られる形態又は設定以外のものである。しかしながら、単離核酸分子は、通常、免疫グロブリン(例えば、抗体)を発現する細胞に含まれる核酸分子を含み、例えば、核酸分子は、天然の細胞とは異なる染色体位置にある。
本明細書で使用される場合、「コードする核酸分子」、「コードするDNA配列」及び「コードするDNA」という用語は、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序又は配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、mRNA鎖に沿ったリボヌクレオチドの順序を決定し、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序も決定する。したがって、DNA配列はRNA配列及びアミノ酸配列をコードする。
「遺伝子」という用語は、生物学的機能に関連する任意の核酸を指すために広く使用される。遺伝子は典型的にはコード配列及び/又はこのようなコード配列の発現に必要な調節配列を含む。「遺伝子」という用語は、特定のゲノム又は組換え配列、ならびにその配列によってコードされるcDNA又はmRNAに適用される。遺伝子はまた、例えば他のタンパク質の認識配列を形成する、発現されない核酸セグメントも含む。転写因子などの調節タンパク質が結合する転写制御エレメントを含む、発現されない調節配列は、隣接する又は近くの配列の転写をもたらす。
「遺伝子の発現」又は「核酸の発現」は、文脈によって示されるように、DNAのRNAへの転写(場合によりRNAの修飾、例えばスプライシングを含む)、RNAのポリペプチドへの翻訳(場合によりその後のポリペプチドの翻訳後修飾を含む)、又は転写と翻訳の両方を意味する。
発現カセットは組換え発現技術の典型的な特徴である。発現カセットは、目的のタンパク質をコードする遺伝子、例えば、アフリベルセプト融合タンパク質配列をコードする遺伝子を含む。真核生物の「発現カセット」は、哺乳動物細胞などの真核生物細胞におけるタンパク質の産生を可能にする発現ベクターの一部を指す。これは、mRNA転写のために真核細胞中で作動可能なプロモーター、目的のタンパク質をコードする1つ又は複数の遺伝子、ならびにmRNA終結及びプロセシングシグナルを含む。発現カセットは、コード配列の中に、選択マーカーとして有用な遺伝子を有用に含み得る。発現カセットにおいて、プロモーターは、目的の外因性タンパク質をコードするオープンリーディングフレームに5’で作動可能に連結しており、ポリアデニル化部位は、オープンリーディングフレームに3’で作動可能に連結している。発現カセットが作動可能なままである限り、他の適切な制御配列を含めることもできる。オープンリーディングフレームは、場合により2つ以上の目的のタンパク質のコード配列を含み得る。
本明細書で使用される場合、構造遺伝子に関して使用される場合の「コード領域」又は「コード配列」という用語は、mRNA分子の翻訳の結果として新生ポリペプチド中に見られるアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を指す。コード領域は、真核生物において、5’側で、開始因子メチオニンをコードするヌクレオチドトリプレット「ATG」によって、及び3’側で、終止コドンを特定する3つのトリプレット(すなわち、TAA、TAG、TGA)のうちの1つによって境界付けられる。
組換え発現技術は、典型的には発現カセットを含む組換え発現ベクターの使用を含む。
「ベクター」という用語は、タンパク質コード情報を宿主細胞に移入するために使用される任意の分子又は実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ又はウイルス)を意味する。
本明細書で使用される「発現ベクター」又は「発現構築物」という用語は、所望のコード配列及び特定の宿主細胞における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な適切な核酸制御配列を含む組換えDNA分子を指す。発現ベクターは、それだけに限らないが、転写、翻訳に影響を及ぼす又はこれを制御し、イントロンが存在する場合には、それに作動可能に連結したコード領域のRNAスプライシングに影響を及ぼす配列を含み得る。原核生物における発現に必要な核酸配列には、プロモーター、場合によりオペレーター配列、リボソーム結合部位及びおそらく他の配列が含まれる。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、ならびに終結及びポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。分泌シグナルペプチド配列はまた、場合により、所望であれば、細胞から目的のポリペプチドをより容易に単離するために、発現されたポリペプチドが組換え宿主細胞によって分泌され得るように、目的のコード配列と作動可能に連結した発現ベクターによってコードされ得る。このような技術は当技術分野で周知である。(例えば、Goodey、Andrew R.ら;Peptide and DNA sequences、米国特許第5302697号明細書;Weinerら、Compositions and methods for protein secretion、米国特許第6022952号明細書及び米国特許第6335178号明細書;Uemuraら、Protein expression vector and utilization thereof、米国特許第7029909号明細書;Rubenら、27 human secreted proteins、米国特許出願公開第第2003/0104400号明細書)。目的のマルチサブユニットタンパク質を発現させるために、各々が異なるサブユニットモノマーの各々のコード配列を含む適切な数及び割合の別々の発現ベクターを使用して宿主細胞を形質転換することができる。他の実施形態では、単一の発現ベクターを使用して目的のタンパク質の異なるサブユニットを発現させることができる。
組換え発現技術は、典型的には組換え発現ベクターを含む哺乳動物宿主細胞を含む。
「宿主細胞」という用語は、核酸で形質転換されている、又は形質転換することができ、それによって目的の遺伝子又はコード配列を発現する細胞を意味する。この用語は、目的の遺伝子が存在する限り、その子孫が形態又は遺伝的構成において元の親細胞と同一であるかどうかにかかわらず、親細胞の子孫を含む。多数の入手可能で周知の宿主細胞のいずれかを本発明の実施に使用してアフリベルセプトを得ることができる。特定の宿主の選択は、当技術分野によって認識されているいくつかの因子に依存する。これらには、例えば、選択された発現ベクターとの適合性、DNA分子によってコードされるペプチドの毒性、形質転換速度、ペプチドの回収の容易さ、発現特性、生物学的安全性及び費用が含まれる。これらの因子のバランスは、全ての宿主が特定のDNA配列の発現に等しく有効であり得るわけではないという理解に捕らわれるにちがいない。これらの一般的な指針の範囲内で、培養中の有用な微生物宿主細胞には、細菌(大腸菌(Escherichia coli)種など)、酵母(サッカロミセス属(Saccharomyces)種など)及び他の真菌細胞、藻類又は藻類様細胞、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物(ヒトを含む)細胞、例えばCHO細胞及びHEK-293細胞が含まれる。修飾はDNAレベルでも行うことができる。ペプチドをコードするDNA配列を、選択された宿主細胞により適合性のあるコドンに変更することができる。大腸菌については、最適化コドンが当技術分野で公知である。コドンを、制限部位を排除するように、又は選択された宿主細胞中のDNAのプロセシングを補助し得るサイレント制限部位を含むように置換することができる。次に、形質転換宿主を培養し、精製する。宿主細胞を、所望の化合物が発現されるように従来の発酵条件下で培養することができる。このような発酵条件は当技術分野で周知である。
有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、CHO-K1細胞(例えば、ATCC CCL61)、DXB-11、DG-44及びチャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣細胞;SV40によって形質転換されたサル腎臓CVl株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(懸濁培養における増殖のためにサブクローニングされた293又は293細胞(Grahamら、J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);マウスセルトリ細胞(TM4)、Mather、Biol.Reprod.23:243~251(1980));サル腎臓細胞(CVl ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞癌細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44~68(1982));MRC 5細胞もしくはFS4細胞;又は哺乳動物骨髄腫細胞である。
「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養物」はしばしば互換的に使用され、本明細書におけるこのような表示は全て細胞子孫を含む。例えば、CHO細胞に「由来する」細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞の細胞子孫であり、これは元の初代細胞親から任意の数の世代離れていてもよく、また形質転換子孫細胞を含み得る。形質転換体及び形質転換細胞は、初代対象細胞及びそれに由来する培養物を導入数に関係なく含む。故意又は偶然の突然変異のために、全ての子孫がDNA量において正確に同一ではないかもしれないこともまた理解される。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされたのと同じ機能又は生物学的活性を有する突然範囲変異子孫が含まれる。
宿主細胞を、ポリペプチド(抗体などの抗原結合タンパク質を含む)を産生するために上記核酸又はベクターで形質転換又はトランスフェクトし、プロモーターの誘導、形質転換体の選択又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適するように修飾された従来の栄養培地で培養する。さらに、選択マーカーによって分離された複数コピーの転写単位を有する新規なベクター及びトランスフェクト細胞株は、抗体などのポリペプチドの発現に特に有用である。
「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来又は外因性DNAの取り込みを意味し、外因性DNAが細胞膜の内側に導入されると、細胞は「トランスフェクト」されている。いくつかのトランスフェクション技術が当技術分野で周知であり、本明細書に開示される。例えば、Grahamら、1973、Virology 52:456;Sambrookら、2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、上記;Davisら、1986、Basic Methods in Molecular Biology、Elsevier;Chuら、1981、Gene 13:197を参照されたい。このような技術を使用して、1つ又は複数の外因性DNA部分を適切な宿主細胞に導入することができる。
「形質転換」という用語は、細胞の遺伝的特性の変化を指し、細胞は、それが新しいDNA又はRNAを含むように改変されると形質転換されている。例えば、細胞は、トランスフェクション、形質導入又は他の技術によって新しい遺伝物質を導入することによって天然状態から遺伝的に改変されている場合に形質転換されている。トランスフェクション又は形質導入の後、形質転換DNAは、細胞の染色体に物理的に組み込まれることによって細胞のDNAと再結合し得る、又は複製されることなくエピソームエレメントとして一過的に維持され得る、又はプラスミドとして独立に複製し得る。形質転換DNAが細胞の分裂と共に複製される場合、細胞は「安定に形質転換された」と見なされる。
本発明において有用なアフリベルセプト融合ポリペプチドを製造するために使用される宿主細胞は、種々の培地中で培養され得る。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地が宿主細胞の培養に適している。さらに、Hamら、Meth.Enz.58:44(1979)、Barnesら、Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4767704号明細書;同第4657866号明細書;同第4927762号明細書;同第4560655号明細書;又は同第5122469号明細書;国際公開第90103430号パンフレット;国際公開第87/00195号パンフレット;又は米国特許再番号30985号明細書に記載されている培地のいずれかを宿主細胞用の培地として使用することができる。これらの培地のいずれにも、培地中又は培地上の細胞の生理学的条件が、宿主細胞による目的のタンパク質の発現を促進するように、ホルモン及び/又は他の増殖因子(インスリン、トランスフェリン又は上皮増殖因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩など)、緩衝剤(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシン(商標)薬物など)、微量元素(通常はマイクロモル濃度範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補足することができる;任意の他の必要な補足物も当業者に知られているであろう適切な濃度で含めることができる。培養条件、例えば温度(典型的には、必ずしもそうとは限らないが約37℃)、pH(典型的には、必ずしもそうとは限らないが約pH6.5~7.5)、酸素付加などは、目的のタンパク質の発現のために選択された宿主細胞と共に以前に使用されたものであり、当業者に明らかである。培養培地は、適量のウシ胎児血清(FBS)などの血清を含むことができる、又は好ましくは、宿主細胞を無血清培地中での培養に適合させることができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞が液体培地内の細胞懸濁液中で培養されるように、水性培地が液体である。宿主細胞はバッチ培養又は連続培養システムで有用に増殖させることができる。
他の実施形態では、哺乳動物宿主細胞を、例えば寒天又はアガロースを含む固体又は半固体の水性培地上で培養して、細胞が接着する培地又は基質表面を形成し、接着層を形成することができる。
宿主細胞を培養すると、組換えポリペプチドが細胞内で、細胞膜周辺腔で産生され得る、又は培地に直接分泌され得る。アフリベルセプトなどのポリペプチドを第一段階として細胞内で産生する場合、宿主細胞又は溶解断片のいずれかの粒状壊死組織片を、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去する。
アフリベルセプトなどの目的のタンパク質は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、カチオンもしくはアニオン交換クロマトグラフィー、又は好ましくはアフィニティクロマトグラフィーを用いて、目的の抗原又はプロテインAもしくはプロテインGをアフィニティーリガンドとして用いて精製することができる。プロテインAを使用して、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づくポリペプチドを含むタンパク質を精製することができる(Lindmarkら、J.Immunol.Meth.62:1~13(1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Gussら、EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。制御細孔ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースで達成され得るよりも速い流速及び短い処理時間を可能にする。タンパク質がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製に有用である。回収する抗体に応じて、エタノール沈殿、逆相HPLC、等電点電気泳動、SDS-PAGE及び硫酸アンモニウム沈殿などの他のタンパク質精製技術も可能である。
緩衝液及び免疫グロブリン、又は他の結合アッセイ試薬をインキュベートすることに関して「生理学的条件下」は、非共有結合反応などの生化学的反応が起こることを可能にする温度、pH及びイオン強度の条件下でのインキュベーションを意味する。典型的には、温度は室温又は周囲温度~最高約37℃まで及びpH6.5~7.5である。
組成物の「生理学的に許容される塩」、例えば目的のタンパク質、例えば融合タンパク質もしくは免疫グロブリン、例えば抗体、又は任意の他の目的のタンパク質の塩、又はアミノ酸の塩、例えばそれだけに限らないが、リジン、ヒスチジンもしくはプロリン塩は、薬学的に許容されることが知られている又は後で発見される任意の塩を意味する。薬学的に許容される塩のいくつかの非限定的な例は以下の通りである:酢酸塩;トリフルオロ酢酸塩;ハロゲン化水素酸塩、例えば塩酸塩(例えば、一塩酸塩又は二塩酸塩)及び臭化水素酸塩;硫酸塩;クエン酸塩;マレイン酸塩;酒石酸塩;グリコール酸塩;グルコン酸塩;コハク酸塩;メシル酸塩;ベシル酸塩;没食子酸エステルの塩(没食子酸は3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸としても知られている)、例えばペンタガロイルグルコース(PGG)及びエピガロカテキンガラート(EGCG)、硫酸コレステリルの塩、パモ酸塩、タンニン酸塩及びシュウ酸塩。
「反応混合物」は、インキュベーションの生理学的条件下で、共有結合又は非共有結合反応などの目的のインビトロ生化学反応が起こるのを可能にする、必要な全ての試薬及び因子を含む水性混合物である。
ポリヌクレオチドの「ドメイン」又は「領域」(本明細書では互換的に使用される)は、最大で完全なポリヌクレオチドを含むが、典型的には完全なポリヌクレオチド未満を含む、完全なポリヌクレオチドの任意の部分である。ドメインは、その必要はないが、ポリヌクレオチド鎖の残りの部分から独立に折り畳むことができる(例えば、DNAヘアピン折り畳み)、及び/又は特定の生物学的、生化学的もしくは構造的な機能もしくは位置、例えばコード領域もしくは調節領域と相関することができる。
タンパク質の「ドメイン」又は「領域」(本明細書では互換的に使用される)は、最大で完全なタンパク質を含むが、典型的には完全なタンパク質未満を含む、完全なタンパク質の任意の部分である。ドメインは、その必要はないが、タンパク質鎖の残りの部分から独立に折り畳むことができる、及び/又は特定の生物学的、生化学的もしくは構造的な機能もしくは位置(例えば、リガンド結合ドメイン、サイトゾル、膜貫通もしくは細胞外ドメイン)と相関することができる。
アフリベルセプト融合タンパク質の定量は通常、タンパク質産生の追跡において、又はアフリベルセプトを含む原薬又は製剤のロット放出アッセイに有用である又は必要である。したがって、アフリベルセプトに特異的に結合する抗体、特にモノクローナル抗体が、これらの目的に有用であり得る。
「抗体」又は互換的に「Ab」という用語は、最も広い意味で使用され、完全に組み立てられた抗体、モノクローナル抗体(ヒト、ヒト化又はキメラ抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を示す限り、上記の相補性決定領域(CDR)を含む、抗原に結合することができる抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、一本鎖抗体、ダイアボディ)を含む。化学的に誘導体化された抗体を含む、インタクトな分子及び/又はフラグメントの多量体又は凝集体が企図される。IgG、IgM、IgD、IgA及びIgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2を含む任意のアイソタイプクラスもしくはサブクラス、又は任意のアロタイプの抗体が企図される。異なるアイソタイプは異なるエフェクター機能を有する;例えば、IgG1及びIgG3アイソタイプは抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有する。
「単離」タンパク質、例えば、アフリベルセプト融合タンパク質は、その自然環境又は産生細胞によって分泌された培養培地の1つ又は複数の成分から同定及び分離されたものである。いくつかの実施形態では、単離タンパク質が、その治療的、診断的、予防的(prophylactic)、研究的又は他の使用を妨害するその自然又は培養培地環境において見られるタンパク質もしくはポリペプチド又は他の汚染物質を実質的に含まない。その自然環境又は培地の「汚染」成分は、タンパク質、例えば抗体の診断又は治療的使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性(例えば、ポリヌクレオチド、脂質、炭水化物)溶質を含み得る。典型的には、「単離タンパク質」は、所与の試料の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、又は少なくとも約50%を構成する。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質、例えば、アフリベルセプト融合タンパク質又は抗体が、(1)95重量%超のタンパク質、最も好ましくは99重量%超のタンパク質まで、又は(2)SDS-PAGEにより、又は還元条件下もしくは非還元条件下で、場合により染色剤、例えばクーマシーブルー又は銀染色を使用して、他の適切な技術により、均質に精製される。タンパク質の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離天然抗体には、組換え細胞内のインサイチューの抗体が含まれる。しかしながら、典型的には、目的の単離タンパク質(例えば、アフリベルセプト又は抗体)は少なくとも1つの精製工程により調製される。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在する可能性のある天然突然変異を除いて同一である。抗原結合タンパク質であるモノクローナル抗体は、典型的には異なるエピトープに対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、個々の抗原部位又はエピトープに対する非常に特異的な結合剤である。モノクローナル抗体の非限定的な例としては、マウス、ウサギ、ラット、ニワトリ、キメラ、ヒト化もしくはヒト抗体、完全に組み立てられた抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、抗原に結合することができる抗体フラグメント(Fab、Fab’、F(ab)2、Fv、一本鎖抗体、ダイアボディを含む)、マキシボディ(maxibody)、ナノボディ、及び所望の生物学的活性を示す限り、前記のCDRを含む組換えペプチド、又はこれらの変異体もしくは誘導体が挙げられる。
「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に均質な抗体の集団から得られるという抗体の性質を示し、特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature、256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得る、又は組換えDNA法によって作製され得る(例えば、米国特許第4816567号明細書参照)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clacksonら、Nature、352:624~628(1991)及びMarksら、J.Mol.Biol.、222:581~597(1991)に記載される技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
「免疫グロブリン」という用語は、それぞれ軽鎖(LC)に共有結合した2つの二量化重鎖(HC);単一の未二量化免疫グロブリン重鎖及び共有結合した軽鎖(HC+LC)、又はキメラ免疫グロブリン(軽鎖+重鎖)-Fcヘテロ三量体(いわゆる「ヘミボディ」)を含む完全抗体を包含する。「免疫グロブリン」はタンパク質であるが、必ずしも抗原結合タンパク質ではない。
「抗体」において、各四量体は2つの同一のポリペプチド鎖対からなり、各対は約220アミノ酸(約25kDa)の1つの「軽」鎖及び約440アミノ酸(約50~70kDa)の1つの「重」鎖を有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識を主に担う約100~110以上のアミノ酸の「可変」(「V」)領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を規定する。可変領域は抗体によって異なる。定常領域は異なる抗体間で同じである。抗原結合タンパク質である抗体の場合、各重鎖又は軽鎖の可変領域内に、抗原に対する抗体の特異性を決定するのを助ける3つの超可変小領域がある。超可変領域間の可変ドメイン残基はフレームワーク残基と呼ばれ、一般的には異なる抗体間である程度相同である。免疫グロブリンを、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて異なるクラスに割り当てることができる。ヒト軽鎖はカッパ(κ)及びラムダ(λ)軽鎖として分類される。軽鎖及び重鎖内で、可変領域及び定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域が結合しており、重鎖は約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。一般的には、Fundamental Immunology、Ch.7(Paul、W.編、第2版Raven Press、N.Y.(1989))を参照されたい。「抗体」はまた、組換え的に作製された抗体、及びグリコシル化されている又はグリコシル化を欠いている抗体も包含する。
「軽鎖」又は「免疫グロブリン軽鎖」という用語は、全長軽鎖及び結合特異性を付与するのに十分な可変領域配列を有するそのフラグメントを含む。全長軽鎖は、可変領域ドメイン、VL、及び定常領域ドメイン、CLを含む。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にある。軽鎖はκ鎖及びλ鎖を含む。
「重鎖」又は「免疫グロブリン重鎖」という用語は、全長重鎖及び結合特異性を付与するのに十分な可変領域配列を有するそのフラグメントを含む。全長重鎖は、可変領域ドメイン、VH、ならびに3つの定常領域ドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。VHドメインはポリペプチドのアミノ末端にあり、CHドメインはカルボキシル末端にあり、CH3はポリペプチドのカルボキシ末端に最も近い。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)及びイプシロン(ε)として分類され、それぞれ抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと定義する。重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4サブタイプを含む)、IgA(IgA1及びIgA2サブタイプを含む)、IgM及びIgEを含む任意のアイソタイプであり得る。これらのいくつかは、サブクラス又はアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2にさらに分類され得る。異なるIgGアイソタイプは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)などの異なるエフェクター機能(Fc領域によって媒介される)を有し得る。ADCCでは、抗体のFc領域が、ナチュラルキラー及びマクロファージなどの免疫エフェクター細胞の表面上のFc受容体(FcγR)に結合し、標的細胞の食作用又は溶解をもたらす。CDCでは、抗体が細胞表面で補体カスケードを誘因することによって標的細胞を殺傷する。
「Fc領域」、又は本明細書で互換的に使用される「Fcドメイン」又は「免疫グロブリンFcドメイン」は、完全抗体において抗体のCH1ドメイン及びCH2ドメインを含む2つの重鎖フラグメントを含む。2つの重鎖フラグメントは、2つ以上のジスルフィド結合によって及びCH3ドメインの疎水性相互作用によって結合している。
「サルベージレセプター(salvage receptor)結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボ血清半減期を増大させる原因となるIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
抗体の構造及び生成の詳細な説明については、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Roth, D.B.及びCraig, N.L.、Cell、94:411~414(1998)を参照されたい。手短に言えば、重鎖及び軽鎖免疫グロブリン配列をコードするDNAを生成する過程は、主に発生中のB細胞において起こる。種々の免疫グロブリン遺伝子セグメントの再配列及び結合の前に、V、D、J及び定常(C)遺伝子セグメントは一般に単一の染色体上に比較的近接して見られる。B細胞分化の間に、V、D、J(又は軽鎖遺伝子の場合にはV及びJのみ)遺伝子セグメントの適切なファミリーメンバーのそれぞれのうちの1つが組み換えられて、重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子の機能的に再配列された可変領域を形成する。この遺伝子セグメント再配列工程は逐次的であるように思われる。最初に、重鎖のDからJへの連結が作られ、引き続いて重鎖のVからDJへの連結及び軽鎖のVからJへの連結が作られる。V、D及びJセグメントの再配列に加えて、軽鎖中のV及びJセグメントが結合している場所ならびに重鎖のD及びJセグメントが結合している場所での可変組換えによる免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の一次レパートリーにおいてさらなる多様性が生じる。軽鎖におけるこのような変異は、典型的にはV遺伝子セグメントの最後のコドン及びJセグメントの最初のコドン内で起こる。結合における同様の不正確さは、DセグメントとJHセグメントとの間の重鎖染色体上で起こり、10ヌクレオチドほどにも及ぶ可能性がある。さらに、ゲノムDNAによってコードされていないいくつかのヌクレオチドがDとJH遺伝子セグメントとの間及びVHとD遺伝子セグメントとの間に挿入され得る。これらのヌクレオチドの付加は、N領域多様性として知られている。可変領域遺伝子セグメントにおけるこのような再配列及びこのような結合の間に起こり得る可変組換えの正味の効果は、一次抗体レパートリーの産生である。
「超可変」領域という用語は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、相補性決定領域又はCDR由来のアミノ酸残基[すなわち、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、編集公衆衛生局、国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州(1991)によって記載される軽鎖可変ドメイン中の残基24~34(L1)、50~56(L2)及び89~97(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の残基31~35(H1)、50~65(H2)及び95~102(H3)]を含む。単一のCDRでさえ抗原を認識し、これに結合することができるが、CDRの全てを含む抗原結合部位全体よりも低い親和性である。
超可変「ループ」由来の残基の代わりの定義は、Chothiaら、J.Mol.Biol.196:901-917(1987)により、軽鎖可変ドメイン中の残基26~32(L1)、50~52(L2)及び91~96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の残基26~32(H1)、53~55(H2)及び96~101(H3)として記載されている。
「フレームワーク」又は「FR」残基は、超可変領域残基以外の可変領域残基である。
「抗体フラグメント」は、インタクト全長抗体の一部、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFvフラグメント;ダイアボディ;直鎖状抗体(Zapataら、Protein Eng.、8(10):1057~1062(1995));一本鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。
抗体のパパイン消化は、それぞれ単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントと、定常領域を含む残りの「Fc」フラグメントを生成する。Fabフラグメントは、可変ドメインの全て、ならびに軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。Fcフラグメントは炭水化物を提示し、あるクラスの抗体を別のクラスの抗体から区別する多くの抗体エフェクター機能(結合補体及び細胞受容体など)を担う。
ペプシン処理は、抗体のVH及びVLドメインを含む2つの「単鎖Fv」又は「scFv」抗体フラグメントを有するF(ab’)2フラグメントを生じ、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。Fabフラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ又は複数のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端にいくつかのさらなる残基を含むことによってFab’フラグメントとは異なる。好ましくは、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間に、Fvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概説については、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、Rosenburg及びMoore編、Springer-Verlag、ニューヨーク、269~315頁(1994)を参照されたい。
「Fabフラグメント」は、1つの軽鎖ならびに1つの重鎖のCH1及び可変領域からなる。Fab分子の重鎖は別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することはできない。
「Fab’フラグメント」は、鎖間ジスルフィド結合が2つのFab’フラグメントの2つの重鎖の間に結合されて、F(ab’)2分子を形成することができるように、1つの軽鎖ならびにVHドメイン及びCH1ドメイン及びCH1ドメインとCH2ドメインの間の領域も含む1つの重鎖の一部を含む。
「F(ab’)2フラグメント」は、鎖間ジスルフィド結合が2つの重鎖の間に形成されるように、2つの軽鎖及びCH1ドメインとCH2ドメインの間の定常領域の一部を含む2つの重鎖を含む。したがって、F(ab’)2フラグメントは、2つの重鎖間のジスルフィド結合によって結合している2つのFab’フラグメントからなる。
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインの密接な非共有結合の二量体からなる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH VL二量体の表面上に抗原結合部位を規定するのがこの構成にある。単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)は、結合部位全体よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識及び結合する能力を有する。
「単鎖抗体」は、重鎖及び軽鎖可変領域が可撓性リンカーによって連結されて抗原結合領域を形成する単一のポリペプチド鎖を形成するFv分子である。単鎖抗体は、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開番号、国際公開第88/01649号パンフレット及び米国特許第4946778号明細書及び同第5260203号明細書に詳細に論じられている。
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在し、場合によりFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にするVHドメインとVLドメインの間のポリペプチドリンカーを含む(Birdら、Science 242:423~426、1988、及びHustonら、Proc.Nati.Acad.Sci. USA 85:5879~5883、1988)。「Fd」フラグメントは、VHドメイン及びCH1ドメインからなる。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを指し、このフラグメントは、同じポリペプチド鎖(VH VL)中の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは別の鎖の相補的ドメインと対形成し、2つの抗原結合部位を作り出すことを強いられる。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号明細書;国際公開第93/11161号パンフレット;及びHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444~6448(1993)により完全に記載されている。
「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域又は軽鎖の可変領域のみを含む免疫学的に機能的な免疫グロブリンフラグメントである。いくつかの例では、2つ以上のVH領域をペプチドリンカーで共有結合して二価ドメイン抗体を作製する。二価ドメイン抗体の2つのVH領域は、同じ又は異なる抗原を標的とし得る。
「抗原結合タンパク質」(ABP)という用語は、本明細書で定義される、アフリベルセプト、又は抗体もしくは抗体フラグメント、及び目的の標的抗原に特異的に結合するように所望の抗原結合特性を有するCDR由来の配列を含む他の化合物を含む。
一般に、抗原結合タンパク質、例えばアフリベルセプト又は抗体もしくは抗体フラグメントは、同様の結合アッセイ条件下で、他の無関係のタンパク質に対する親和性と比較して、目的の抗原に対する有意に高い結合親和性を有し、目的の抗原を識別することができる場合に、その抗原に「特異的に結合する」。典型的には、抗原結合タンパク質は、解離定数(KD)が10-8M以下である場合に、その標的抗原に「特異的に結合する」と言われる。抗原結合タンパク質は、KDが10-9M以下の場合に「高親和性」で抗原と特異的に結合し、KDが10-10M以下の場合に「極めて高親和性」で抗原に結合する。
「抗原結合領域」又は「抗原結合部位」は、特定の抗原に特異的に結合するタンパク質の部分を意味する。例えば、抗原と相互作用し、抗原結合タンパク質に抗原に対する特異性及び親和性を付与するアミノ酸残基を含む抗原結合タンパク質のその部分が、「抗原結合領域」と呼ばれる。抗原結合領域は、典型的には1つ又は複数の「相補的結合領域」(「CDR」)を含む。一定の抗原結合領域はまた、1つ又は複数の「フレームワーク」領域(「FR」)を含む。「CDR」は、抗原結合特異性及び親和性に寄与するアミノ酸配列である。「フレームワーク」領域は、抗原結合領域と抗原の間の結合を促進するためにCDRの適切な立体配座を維持するのに役立ち得る。伝統的な抗体では、CDRが重鎖及び軽鎖可変領域のフレームワーク内に埋め込まれており、そこで抗原結合及び認識を担う領域を構成する。免疫グロブリン抗原結合タンパク質の可変領域は、フレームワーク領域(Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、Public Health Service N.I.H.、Bethesda、Md.により命名されたフレームワーク領域1~4、FR1、FR2、FR3及びFR4;Chothia及びLesk、1987、上記も参照)内に少なくとも3つの重鎖又は軽鎖CDRを含む、上記を参照されたい(Kabatら、1991、上記;Chothia及びLesk、1987、J.Mol.Biol. 196:901~917;Chothiaら、1989、Nature 342:877~883も参照)。
「抗原」という用語は、抗原結合タンパク質(例えば、アフリベルセプト、又は抗体もしくは抗体の免疫学的に機能的なフラグメントを含む)などの選択的結合剤が結合することができ、さらにその抗原に結合することができる抗体を産生するために動物において使用することができる分子又は分子の一部を指す。抗原は、異なる抗原結合タンパク質、例えば抗体と相互作用することができる1つ又は複数のエピトープを保有してもよい。
「エピトープ」という用語は、抗原結合タンパク質(例えば、アフリベルセプト又は抗体)が結合する分子の部分である。この用語は、抗原結合タンパク質、例えば抗体又はT細胞受容体に特異的に結合することができる任意の決定基を含む。エピトープは、連続的又は非連続的であり得る(例えば、一本鎖ポリペプチドにおいて、ポリペプチド配列が互いに連続していないが、分子の状況内では抗原結合タンパク質が結合しているアミノ酸残基)。一定の実施形態では、エピトープが、抗原結合タンパク質を生成するために使用されるエピトープと同様の三次元構造を含むが、抗原結合タンパク質を生成するために使用されるそのエピトープに見られるアミノ酸残基を全く又は全く含まない又はいくらかしか含まないという点で模倣であり得る。ほとんどの場合、エピトープはタンパク質上に存在するが、場合によっては核酸などの他の種類の分子上に存在することもある。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面群を含み得、特定の三次元構造特性及び/又は特定の電荷特性を有し得る。一般に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質及び/又は高分子の複雑な混合物中の標的抗原上のエピトープを優先的に認識するだろう。
「同一性」という用語は、配列を整列させ、比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド分子又は2つ以上の核酸分子の配列間の関係を指す。「同一性%」は、比較される分子中のアミノ酸又はヌクレオチド間の同一残基の%を意味し、比較している分子の最小のもののサイズに基づいて計算される。これらの計算のために、(もしあれば)アラインメントのギャップが、特定の数学的モデル又はコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)によって対処されなければならない。整列された核酸又はポリペプチドの同一性を計算するために使用することができる方法には、Computational Molecular Biology(Lesk, A.M.編)、1988、ニューヨーク:Oxford University Press;Biocomputing Informatics and Genome Projects(Smith, D.W.編)、1993、ニューヨーク:Academic Press;Computer Analysis of Sequence Data, Part I(Griffin, A. M.及びGriffin, H. G.編)、1994、ニュージャージー:Humana Press;von Heinje, G.、1987、Sequence Analysis in Molecular Biology、ニューヨーク:Academic Press;Sequence Analysis Primer(Gribskov, M.及びDevereux, J.編)、1991、ニューヨーク:M.Stockton Press;及びCarilloら、1988、SIAM J.Applied Math.48:1073に記載されているものが含まれる。例えば、配列同一性は、2つのポリペプチドのアミノ酸の位置の類似性を比較するために一般的に使用されている標準的な方法によって決定することができる。BLAST又はFASTAなどのコンピュータプログラムを使用して、2つのポリペプチド又は2つのポリヌクレオチド配列を、それぞれの残基の最適マッチングのために整列させる(一方もしくは両方の配列の全長に沿って、又は一方もしくは両方の所定部分に沿って)。これらのプログラムはデフォルトオープニングペナルティ及びデフォルトのギャップペナルティを提供し、PAM250などのスコアリング行列[標準スコアリング行列;Dayhoffら、Atlas of Protein Sequence and Structure、第5巻、補遺3(1978)参照]をコンピュータプログラムと合わせて使用することができる。次いで、例えば、同一性%を次のように計算することができる:同一一致の総数に100を掛け、次いで、一致したスパン内のより長い配列の長さと、2つの配列を整列させるためにより長い配列に導入されたギャップの数の和で割る。同一性%を計算する際に、比較される配列を、配列間で最大の一致を与えるように整列させる。
GCGプログラムパッケージは、同一性%を決定するために使用することができるコンピュータプログラムであり、そのパッケージにはGAPが含まれる(Devereuxら、1984、Nucl.Acid Res.12:387;ウィスコンシン大学、ウィスコンシン州マディソンのGenetics Computer Group)コンピュータアルゴリズムGAPを使用して、配列同一性%を決定しようとする2つのポリペプチド又は2つのポリヌクレオチドを整列させる。配列を、それらのそれぞれのアミノ酸又はヌクレオチドの最適な一致(アルゴリズムによって決定される「一致スパン」)のために整列させる。ギャップオープニングペナルティ(これは3×平均対角線として計算され、「平均対角線」は使用している比較行列の対角線の平均であり;「対角線」は特定の比較行列によって各完全アミノに割り当てられるスコア又は数である)及びギャップ伸長ペナルティ(これは通常、ギャップオープニングペナルティの1/10倍である)、ならびにPAM250又はBLOSUM62などの比較行列をアルゴリズムと合わせて使用する。一定の実施形態では、標準比較行列(PAM250比較行列については、Dayhoffら、1978、Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345~352;BLOSUM62比較行列については、Henikoffら、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915~10919参照)もアルゴリズムによって使用される。
GAPプログラムを使用してポリペプチド又はヌクレオチド配列についての同一性%を決定するための推奨パラメータには以下が含まれる:
アルゴリズム:Needlemanら、1970、J.Mol.Biol.48:443~453;
比較行列:Henikoffら、1992、上記からのBLOSUM62;
ギャップペナルティ:12(ただし、エンドギャップにペナルティはない)
ギャップ長ペナルティ:4
類似性の閾値:0
2つのアミノ酸配列を整列させるための一定のアラインメントスキームは、2つの配列の短い領域のみの一致をもたらし得、この小さな整列領域は、2つの全長配列間に有意な関係がないとしても極めて高い配列同一性を有し得る。したがって、所望であれば、選択されたアラインメント方法(GAPプログラム)を調整して、標的ポリペプチドの少なくとも50の連続アミノ酸にわたるアラインメントをもたらすことができる。
目的のタンパク質と関連して使用される場合の「修飾」という用語は、それだけに限らないが、1つ又は複数のアミノ酸変化(置換、挿入又は欠失を含む);化学修飾;治療薬又は診断薬との抱合による共有結合修飾;標識(例えば、放射性核種又は種々の酵素による);PEG化などの共有ポリマー付着(ポリエチレングリコールによる誘導体化)及び非天然アミノ酸化学合成による挿入又は置換を含む。当業者に公知の方法により、タンパク質を、「操作」タンパク質のコード配列を発現カセットに含める前に、改善された標的親和性、選択性、安定性及び/又は製造可能性のために、「操作」又は修飾することができる。
アフリベルセプト又は抗体などの目的のタンパク質と関連して使用される場合の「誘導体」という用語は、治療薬又は診断薬との抱合、標識(例えば、放射性核種又は種々の酵素による)、PEG化などの共有ポリマー付着(ポリエチレングリコールによる誘導体化)及び非天然アミノ酸化学合成による挿入又は置換によって共有結合的に修飾されたタンパク質を指す。
本発明の範囲内で、アフリベルセプトタンパク質は、それだけに限らないが、ヒトの疾患又は障害、例えば眼の疾患又は障害を含む疾患を治療するための治療用タンパク質又は「生物製剤」であり得る。「治療」又は「治療すること」は、障害の発症を予防すること又は障害の病状を変えることを意図して行われる介入である。したがって、「治療」とは治療的処置と予防的(prophylactic)又は予防・阻止的(preventative)手段の両方を指す。治療を必要としている人々には、障害を既に持っている人々ならびに障害を予防すべき人々も含まれる。「治療」は、症状の低減;寛解;減少、又は傷害、病状もしくは状態を患者にとってより許容できるようにすること;変性もしくは減退の速度を遅らせること;変性の最終点をあまり衰弱させるものにしないこと;患者の身体的もしくは精神的な幸福を向上させることなどの任意の客観的又は主観的パラメータを含む、傷害、病状又は状態の改善の成功のあらゆる兆候を含む。症状の治療又は改善は、医師、例えば眼科医もしくは他の医療提供者による身体検査、又は患者による自己報告の結果を含む、客観的又は主観的パラメータに基づき得る。
治療薬の「有効量」は、一般に、症状の重症度及び/又は頻度を低減し、症状及び/又は根本的な原因を取り除き、症状の発生及び/又は根本的な原因を防止し、ならびに/あるいは眼障害又は疾患から生じる又はこれに関連する損傷を改善又は修復するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量が治療上有効量又は予防上有効量である。「治療上有効量」は、形はどうであれ、疾患状態(例えば、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)後の黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、新生血管(滲出型)加齢黄斑変性(AMD)、近視性脈絡膜新生血管による視力低下、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、DME患者における糖尿病性網膜症(DR)、及び新生血管加齢黄斑変性(AMD)、移植拒絶又はGVHD、炎症、多発性硬化症、がん、心血管疾患、糖尿病、ニューロパシー、疼痛)もしくは症状、特に疾患状態に関連する状態もしくは症状を治療する、又は疾患状態もしくは疾患に関連する他の望ましくない症状の進行を予防する、妨害する、遅延させるもしくは逆戻りさせる(すなわち、「治療有効性」を提供する)のに十分な量である。「予防上有効量」は、対象に投与した場合に意図された予防的効果を有する医薬組成物の量である。完全な治療的又は予防的効果は、必ずしも一用量の投与によって生じるわけではなく、一連の用量の投与後にのみ生じる場合もある。したがって、治療上又は予防上有効量は、1回又は複数回の投与で投与することができる。
DNAのクローニング
DNAのクローニングは、標準的な技術を用いて行われる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Guide、第1~3巻、Cold Spring Harbor Press参照)。例えば、cDNAライブラリーを、ポリA+mRNA、好ましくは膜結合mRNAの逆転写によって構築し、ライブラリーをヒト免疫グロブリンポリペプチド遺伝子配列に特異的なプローブを用いてスクリーニングすることができる。しかしながら、一実施形態では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、目的の免疫グロブリン遺伝子セグメント(例えば、軽鎖又は重鎖可変セグメント)をコードするcDNA(又は全長cDNAの一部)を増幅する。増幅された配列を、例えば発現ベクター、ミニ遺伝子ベクター又はファージディスプレイベクターなどの任意の適切なベクターに容易にクローニングすることができる。目的のポリペプチド、例えば、アフリベルセプト融合ポリペプチド配列のある部分の配列を決定することが可能である限り、使用される特定のクローニング方法は重要ではないことが認識されるだろう。
抗体核酸の1つの供給源は、目的の抗原で免疫した動物からB細胞を得て、それを不死細胞に融合することによって産生されるハイブリドーマである。あるいは、核酸を免疫化動物のB細胞(又は全脾臓)から単離することができる。抗体をコードする核酸のさらに別の供給源は、例えばファージディスプレイ技術によって生成されるこのような核酸のライブラリーである。目的のペプチド、例えば所望の結合特性を有する可変領域ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、パニングなどの標準的な技術によって同定することができる。
DNAの配列決定は、標準的な技術を用いて行われる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Guide、第1~3巻、Cold Spring Harbor Press及びSanger,F.ら(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.米国 74:5463~5467参照)。クローニングされた核酸の配列を公開されている遺伝子及びcDNAの配列と比較することによって、当業者であれば配列決定される領域に応じて容易に決定することができるだろう。遺伝子配列情報の1つの源は、国立バイオテクノロジー情報センター、国立医学図書館、国立衛生研究所、メリーランド州ベセスダである。
単離DNAを制御配列に作動可能に連結する、又は発現ベクターに配置し、次いで、これを免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を指示することができる。抗体の組換え産生は当技術分野で周知である。
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係にある場合に機能的に連結されている。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのためのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドのためのDNAに作動可能に連結されている;プロモーター又はエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されている;又は、リボソーム結合部位は、それが翻訳を容易にするように配置されている場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般的に、作動可能に連結されているとは、連結されているDNA配列が隣接しており、分泌リーダーの場合には、隣接しており、読み取り段階にあることを意味する。ただし、エンハンサーは連続している必要はない。連結は好都合な制限部位でのライゲーションによって達成される。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが慣行的実務に従って使用される。
多くのベクターが当技術分野で公知である。ベクター成分は以下の1つ又は複数を含み得る:その全てが当技術分野で周知である、シグナル配列(例えば、発現タンパク質の分泌を指令し得る);複製起点、1つ又は複数の選択マーカー遺伝子(例えば、抗生物質もしくは他の薬剤耐性を付与し得る、栄養要求性の欠乏を補完し得る、又は培地中で利用可能でない必須栄養素を補足し得る)、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。
水及び他の成分の純度.本発明の眼科用製剤を製造するために使用される水及び他の全ての成分は、好ましくは、対象となる管轄、例えば米国薬局方(USP)、欧州薬局方、日本薬局方又は中国薬局方等においてこのような医薬組成物及び医薬品に要求される適用可能な法的又は薬局方基準を満たす純度レベルのものである。例えば、USPによると、注射用水が製品エンドトキシン含量を制御しなければならない非経口製剤及び他の製剤の製造、ならびに一定の機器及び非経口製品-接触成分の洗浄などの他の医薬用途において賦形剤として使用され;注射用水を生成するための供給源又は供給水の最低品質は、米国環境保護庁(EPA)、EU、日本、又はWHOによって定義される飲料水である。
患者への投与の前に、本発明の製剤は、無菌性、エンドトキシ又はウイルス汚染物質の欠如等に関して、対象となる管轄においてこのような医薬組成物及び医薬品に要求される適用可能な法的又は薬局方基準を満たすべきである。
緩衝剤系
本発明の眼科用製剤は、約5~50mM濃度の範囲の緩衝剤を含む。本発明の眼科用製剤に適した緩衝剤系は、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グルタミン酸塩及び乳酸塩から選択することができる、又は緩衝剤はこれらの緩衝剤系の2つ以上の組み合わせであり得る。本発明のいくつかの有用な実施形態は、約5mM~約20mMの範囲の緩衝剤濃度を有し、他の実施形態は、約5~約10mMの緩衝剤濃度を有する。ヒスチジン緩衝液が選択される場合、約5~20mMの範囲のヒスチジン濃度が好ましい。
非イオン性界面活性剤
本発明の眼科用製剤は、好ましくは約0.001%(w/v)~約5.0%(w/v)の濃度の非イオン性界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤の濃度が、約0.001%(w/v)~約2.0%(w/v)、又は約0.001%(w/v)~約1.0%(w/v)であり、又は約0.001%(w/v)~約0.10%(w/v)、又は約0.001%(w/v)~約0.01%(w/v)である。有用な非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80)、Brij(登録商標)35(すなわち、ポリエチレングリコールドデシルエーテル)、ポロキサマー(すなわち、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ポリ(エチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド))、例えばポロキサマー188(すなわち、Pluronic F68)、又はTriton(商標)X-100(すなわち、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール))であり得る。本発明を実施する目的のための「非イオン性界面活性剤」には、アルキルサッカライド又はアルキルグリコシド(例えば、Aegis Therapeutics, LLCによりProTek(登録商標)の商品名で販売されている;例えば、Maggio、Stabilizing Alkylglycoside Compositions And Methods Thereof、米国特許第8133863号明細書参照)も包含される。
等張化剤
本発明の眼科用製剤は、製剤が約300mOsm/kg(すなわち300±50mOsm/kg)の最終重量オスモル濃度を有するように等張化剤を含み、塩化物アニオン濃度が約10mM未満、好ましくは約5mM未満、より好ましくは約1mM未満である。重量オスモル濃度は、水の単位当たりの溶解粒子の数の尺度である。溶液中では、水(溶媒)の単位数に比例して溶質の粒子数が少ないほど、溶液の濃縮度は低くなり、低浸透性になる。半透膜(溶媒分子に対してのみ透過性であるもの)を使用して異なる溶質濃度の溶液を分離すると、溶媒分子が低濃度から高濃度へと膜を横切って濃度平衡を確立する浸透として知られる現象が起こる。この運動を駆動する圧力は浸透圧と呼ばれ、溶液中の溶質の「粒子」の数によって支配される。同じ濃度の粒子を含み、したがって等しい浸透圧を及ぼす溶液は、等張と呼ばれる。例えば、赤血球(rbc)内の浸透圧は周囲溶液と等しいため、収縮も膨張もしない。rbcを水に入れると、水だけが低浸透圧性であるため、破裂するだろう。rbcを高塩溶液、すなわち0.9%(w/v)超の塩化ナトリウム溶液に入れると、溶液が高浸透圧性であるため、収縮するだろう。どちらの例でも、rbcは損傷を受ける。眼の中の細胞などのいずれの生物学的細胞でも同じことが起こるだろう。低浸透圧性又は高浸透圧性溶液を眼に入れると、損傷を引き起こすので、眼に使用する薬物には等張溶液が必要になる。実際には、0.9%(w/v)の塩化ナトリウム溶液が等張であり、270~300mOsm/kgの濃度を有する。全ての溶液をこの標準と比較し、それらが250~350mOsm/kgの拡大範囲内にある場合、等張と見なされる。タンパク質を安定化するために使用される賦形剤は、等張溶液を生成する濃度で添加される。例えば、スクロース及びトレハロースなどの二糖類は9.25%の濃度で等張であり、グルコース及びマンノースなどの単糖類は5%の濃度で等張であり、プロリンなどのアミノ酸は約3%の濃度で等張である。重量オスモル濃度は理論的又は実験的に決定することができる。理論計算値は、以下の式に従って決定することができる:
重量オスモル濃度=(化合物g/100mL溶液)*(化合物のE値)
化合物のE値は以下の式によって決定される:
E値=(MW NaCl/i値NaCl)×(i値化合物/MW化合物)。
i値は、80%の理論的解離に基づく化合物からのイオンの数である。解離しない化合物、すなわちスクロースの場合、i値は1である。2つのイオンに解離する化合物、すなわちNaClの場合、i値は1.8であり、3つのイオンに解離する化合物の場合、i値は2.6である。重量オスモル濃度は溶液の束一的特性であるので、添加した溶質による凝固点の低下又は蒸気圧の低下が液体中の溶質分子の総数に直接関係する。重量オスモル濃度を測定する有用な機器を開発するためにこれらの原理の各々が当技術分野で利用されてきた。いずれか又は両方の種類の機器を生物学的試料に使用することができる。一例として、10mMリン酸ナトリウム、40mM NaCl、5%(w/v)スクロース及び0.03%(w/v)ポリソルベート20を含む溶液は、263mOsm/kgの理論重量オスモル濃度を有するであろう。本発明者らの実験室では、実際の測定値は、凝固点降下によって測定されるように270mOsm/kgであった。これは、実験値が理論値と厳密に一致することを示し、本発明を実施する目的のために、溶液がその重量オスモル濃度に基づいて硝子体内注射に適しているかどうかを決定するために理論値又は実験値のいずれかを使用することができることをさらに実証している。
有用な等張化剤はポリオール又はアミノ酸であり得る。有用なポリオール等張化剤の例としては、スクロース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、及びグリセロールが挙げられる。典型的には、ポリオール等張化剤の濃度は、緩衝剤濃度及び他の製剤賦形剤に応じて、5~10%(w/v)の範囲である。アミノ酸等張化剤の濃度は、緩衝剤濃度及び使用される他の等張化剤に応じて、2~4%(w/v)の範囲である。本発明の眼科用製剤において、アミノ酸等張化剤は、薬学的に許容される場合、L-アミノ酸形態及び/又はD-アミノ酸形態であり得る。「アミノ酸等張化剤」の意味には、薬学的に許容されるアミノ酸塩の形態も包含される。
追加の安定化剤
等張化剤がポリオール、例えばスクロース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール又はグリセロールである本発明の眼科用製剤のいくつかの実施形態では、製剤が追加のアミノ酸安定化剤も含有する。追加のアミノ酸安定化剤は、例えば、プロリン、アルギニン、メチオニン、グリシン又はリジンであり得る。追加のアミノ酸安定化剤は、アミノ酸が薬学的に許容される限り、及び薬学的に許容される形態、例えば薬学的に許容される塩形態である限り、L-アミノ酸もしくはD-アミノ酸又は塩形態であり得る。(例えば、Falconerら、精製及び塩基性アミノ酸賦形剤の添加による製剤化中のモノクローナル抗体の安定化、J Chem Technol Biotechnol (2011)86:942~948;Plattsら、正に帯電したアミノ酸賦形剤による水性製剤における球状タンパク質の熱安定性の制御、Journal of Pharmaceutical Sciences 105(2016)3532~3536;Wang, W.、液体タンパク質医薬品の不安定性、安定化及び製剤化、International Journal of Pharmaceutics 185(1999)129~188;Yinら、顆粒球コロニー刺激因子及びヒト副甲状腺ホルモンフラグメント13~34中のメチオニン残基の過酸化水素媒介酸化に対する抗酸化剤の効果、Pharmaceutical Research(2004)21(12):2377~2383;Lamら、組換えモノクローナル抗体HER2中のメチオニン酸化を予防するための抗酸化剤、Journal of Pharmaceutical Sciences 86(11):1250~1255(1997);Levineら、タンパク質中の内因性抗酸化剤としてのメチオニン残基、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)93(26):15036~15040(1996);Maederら、皮下投与用の新規な20%プロリン安定化ポリクローナル免疫グロブリンの最大24ヶ月までの局所耐容性及び安定性、Biologicals 39:43~49(2011);Cramerら、L-プロリンで安定化された新規な液体10%ポリクローナル免疫グロブリン製品(IgPro10, Privigen(著作権))の36ヶ月にわたる安定性、Vox Sanguinis (2009)96、219~225;Bolliら、L-プロリンはIgG二量体含量を減少させ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)溶液の安定性を増加させる、Biologicals 38 (2010)150~157;Truong、D-アミノ酸とリポテイコ酸の組み合わせ、欧州特許第2545909号明細書;Stroppoloら、塩基性アミノ酸と共にS(+)-2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸の塩を含む医薬組成物、米国特許第5510385号明細書参照)。ポリオールと組み合わせた追加のアミノ酸安定化剤の濃度は、アミノ酸と組み合わせたポリオールの濃度に応じて、有用には約0.01~3%(w/v)である。しかしながら、メチオニンをポリオール等張化剤と組み合わせて選択する場合、メチオニンを低濃度、すなわち10mM以下で活性酸素種の捕捉剤として使用することができる。
本発明の例示的製剤
本発明の例示的な眼科用製剤は、緩衝剤がリン酸緩衝液であるものを含む。1つのこのような実施形態では、(a)アフリベルセプト濃度が20~80mg/mLであり;(b)リン酸緩衝液濃度が約10mMであり;(c)非イオン性界面活性剤が約0.03%(w/v)の濃度のポリソルベート20であり;(d)等張化剤が:
(i)約9%(w/v)の濃度のスクロースもしくはトレハロース、又は
(ii)約3%(w/v)の濃度のプロリン
であり;(e)塩化物アニオンの濃度が約1mM未満であり;製剤のpHが約pH6.0~約pH6.5である。この製剤のいくつかの好ましい実施形態では、等張化剤が約9%(w/v)の濃度のスクロース又はトレハロースであり、アフリベルセプト濃度が約30mg/mL~約50mg/mL、例えば、約40mg/mLの濃度である。他の好ましい実施形態では、等張化剤が約3%(w/v)の濃度のプロリンであり、アフリベルセプト濃度が約30mg/mL~約50mg/mL、例えば、約40mg/mLの濃度である。
本発明の例示的な眼科用製剤は、緩衝剤が5~20mMの濃度のヒスチジン緩衝液であるものも含む。1つのこのような実施形態では、(a)アフリベルセプト濃度が20~80mg/mLであり;(b)ヒスチジン緩衝液濃度が約10mMであり;(c)非イオン性界面活性剤が約0.03%(w/v)の濃度のポリソルベート20であり;(d)等張化剤が:
(i)約9%(w/v)の濃度のスクロースもしくはトレハロース、又は
(ii)約3%(w/v)の濃度のプロリン
であり;(e)塩化物アニオンの濃度が約10mM未満、又はより好ましくは約5mM未満であり;製剤のpHが約pH5.5~約pH6.5、又はいくつかの実施形態では約pH6.0~約pH6.5である。この製剤のいくつかの好ましい実施形態では、等張化剤が約9%(w/v)の濃度のスクロース又はトレハロースであり、アフリベルセプト濃度が約30mg/mL~約50mg/mL、例えば、約40mg/mLの濃度である。他の好ましい実施形態では、等張化剤が約3%(w/v)の濃度のプロリンであり、アフリベルセプト濃度が約30mg/mL~約50mg/mL、例えば、約40mg/mLの濃度である。
本発明のさらに他の例示的な眼科用製剤は、緩衝剤が酢酸緩衝液であるものを含む。1つのこのような実施形態では、(a)アフリベルセプト濃度が20~80mg/mLであり;(b)酢酸緩衝液が約10mMであり;(c)非イオン性界面活性剤が約0.01%(w/v)、約0.03%(w/v)、約0.1(w/v)、又は約1%(w/v)の濃度のポリソルベート20、又はポリソルベート80、又はポロキサマー、例えばポロキサマー188であり;(d)等張化剤が:
(i)約9%(w/v)の濃度のスクロースもしくはトレハロース、又は
(ii)約3%(w/v)の濃度のプロリン
であり;(e)塩化物アニオンの濃度が約1mM未満であり;製剤のpHが約pH5.0~約pH5.5である。この製剤のいくつかの好ましい実施形態では、等張化剤が約9%(w/v)の濃度のスクロース又はトレハロースであり、アフリベルセプト濃度が約30mg/mL~約50mg/mL、例えば、約40mg/mLの濃度である。他の好ましい実施形態では、等張化剤が約3%(w/v)の濃度のプロリンであり、アフリベルセプト濃度が約30mg/mL~約50mg/mL、例えば、約40mg/mLの濃度である。
さらなる例示として、以下の番号付けされた実施形態が本発明に包含される:
実施形態1:
(a)5~100mg/mLの濃度のアフリベルセプトと;
(b)5~50mM濃度の緩衝剤と;
(c)非イオン性界面活性剤と;
(d)ポリオール及びアミノ酸からなる群から選択される等張化剤と
を含む眼科用製剤であって、その最終重量オスモル濃度が約300mOsm/kgであり、
(e)塩化物アニオンの濃度が約10mM未満であり、そのpHが約pH5.0~約pH6.5である眼科用製剤。
実施形態2:塩化物アニオンの濃度が約5mM未満である、実施形態1に記載の眼科用製剤。
実施形態3:塩化物アニオンの濃度が約1mM未満である、実施形態1から2に記載の眼科用製剤。
実施形態4:緩衝剤がリン酸緩衝液である、実施形態1から3に記載の眼科用製剤。
実施形態5:緩衝剤が5~20mMの濃度のヒスチジン緩衝液である、実施形態1から3に記載の眼科用製剤。
実施形態6:緩衝剤が酢酸緩衝液である、実施形態1から3に記載の眼科用製剤。
実施形態7:緩衝剤がリン酸塩、ヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、グルタミン酸塩及び乳酸塩から選択される、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択される、実施形態1から3に記載の眼科用製剤。
実施形態8:緩衝剤濃度が5~20mMである、実施形態1から7に記載の眼科用製剤。
実施形態9:非イオン性界面活性剤がポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80)、ポリエチレングリコールドデシルエーテル(すなわち、Brij(登録商標)35)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール(すなわち、Triton(商標)X-100)、アルキルサッカライド及びアルキルグリコシドからなる群から選択される、実施形態1から8に記載の眼科用製剤。
実施形態10:非イオン性界面活性剤がポロキサマー188である、実施形態1から9に記載の眼科用製剤。
実施形態11:等張化剤がスクロース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール及びグリセロールから選択されるポリオールである、実施形態1から10に記載の眼科用製剤。
実施形態12:等張化剤がスクロースである、実施形態1から11に記載の眼科用製剤。
実施形態13:等張化剤がトレハロースである、実施形態1から11に記載の眼科用製剤。
実施形態14:追加のアミノ酸安定化剤をさらに含む、実施形態11に記載の眼科用製剤。
実施形態15:追加のアミノ酸安定化剤がプロリン、アルギニン、メチオニン、グリシン及びリジンからなる群から選択される、実施形態14に記載の眼科用製剤。
実施形態16:等張化剤がプロリン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン及びリジンから選択されるアミノ酸である、実施形態1から15に記載の眼科用製剤。
実施形態17:等張化剤がプロリンである、実施形態1から16に記載の眼科用製剤。
実施形態18:
(a)アフリベルセプト濃度が20~80mg/mLであり;
(b)リン酸緩衝液濃度が約10mMであり;
(c)非イオン性界面活性剤がポリソルベート又はポロキサマーであり;
(d)等張化剤が(i)約9%(w/v)の濃度のスクロースもしくはトレハロース、又は(ii)約3%(w/v)の濃度のプロリンであり;
(e)塩化物アニオンの濃度が約1mM未満であり;
そのpHが約pH6.0~約pH6.5である、実施形態4に記載の眼科用製剤。
実施形態19:等張化剤が約9%(w/v)の濃度のスクロース又はトレハロースである、実施形態18に記載の眼科用製剤。
実施形態20:等張化剤が約3%(w/v)の濃度のプロリンである、実施形態18に記載の眼科用製剤。
実施形態21:
(a)アフリベルセプト濃度が20~80mg/mLであり;
(b)ヒスチジン緩衝液が約10mMであり;
(c)非イオン性界面活性剤がポリソルベート又はポロキサマーであり;
(d)等張化剤が(i)約9%(w/v)の濃度のトレハロース、又は(ii)約3%(w/v)の濃度のプロリンであり;
そのpHが約pH5.5~約pH6.5である、実施形態5に記載の眼科用製剤。
実施態様22:等張化剤が約9%(w/v)の濃度のトレハロースである、実施形態21に記載の眼科用製剤。
実施形態23:等張化剤が約3%(w/v)の濃度のプロリンである、実施形態21に記載の眼科用製剤。
実施形態24:
(a)アフリベルセプト濃度が20~80mg/mLであり;
(b)酢酸緩衝液が約10mMであり;
(c)非イオン性界面活性剤がポリソルベート又はポロキサマーであり;
(d)等張化剤が(i)約9%(w/v)の濃度のスクロースもしくはトレハロース、又は(ii)約3%(w/v)の濃度のプロリンであり;
(e)塩化物アニオンの濃度が約1mM未満であり;
そのpHが約pH5.0~約pH5.5である、実施形態6に記載の眼科用製剤。
実施形態25:眼障害又は疾患を治療するための、実施形態1から24に記載の製剤のいずれかの使用。
実施形態26:眼障害又は疾患が網膜静脈閉塞症(RVO)後の黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、新生血管(滲出型)加齢黄斑変性(AMD)、近視性脈絡膜新生血管による視力低下、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、DME患者における糖尿病性網膜症(DR)、及び新生血管加齢黄斑変性(AMD)から選択される、実施形態25に記載の使用。
実施形態27:眼科用製剤が硝子体内注射によって眼障害又は疾患を有する患者に投与される、実施形態25から26に記載の使用。
以下の例は例示的なものであり、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
例
例1.安定性試験.
材料.VEGF特異的アフリベルセプト融合タンパク質アンタゴニストを、業界標準の組換え発現技術及び精製方法を用いて製造した。Millipore Corporationによるベンチスケール接線流濾過システムを使用して、精製原薬を特定の製剤緩衝液に対して緩衝液交換した。製剤緩衝液で希釈することによって、タンパク質濃度を最終標的濃度に調整した。全ての製剤を製造するのに使用した水は、イオン交換カートリッジを含むMilli-Q(登録商標)(Millipore Corporation)浄水システムによって精製した。水の純度を、導電率を測定することによって監視し、18.2MΩcm-1(25℃で)より大きい値が許容可能であった。製剤緩衝液の調製に使用される全ての賦形剤、緩衝剤及び他の成分は、USPグレード又は等価物であった。
方法.
滴定:等モル濃度で調製した酸及び塩基コンジュゲートを適切なモル比で混ぜ合わせて、ヒスチジン及びリン酸緩衝液系について所望の製剤pHを達成した。Milli-Q精製水に氷酢酸を添加し、引き続いて水酸化ナトリウム滴定して所望の最終pHに到達させて、酢酸塩製剤を調製した。
外観:定性的外観試験を行ってタンパク質粒子又は環境汚染物質について製剤を評価した。タンパク質試料のアリコート(1.1mL)を事前滅菌タイプ1ガラスバイアルに入れ、13mmクロージャで蓋をした。周囲光条件下で、試料を穏やかに旋回させ、5秒間目視検査して可視粒子を検出した。試験した全ての試料について、検出された粒子の数及び説明を記録した。
色.定性的視覚的色評価を行って、製剤安定性の間に製剤の色を監視した。Ricca Chemicalsから市販されているEP2.2.2褐色-黄色標準(BY1~BY7)を、事前滅菌タイプ1ガラスバイアルに等分した。製剤のアリコート(1.1mL)をバイアルに入れ、等量の各褐色-黄色標準と比較して、着色レベルを決定した。全ての試料を白い背景の前で検査し、着色レベルを各試料について記録した。
低減量光遮蔽サブビジブル粒子分析.HRLD-150センサー(Beckman Corporation)を備えたHIACカウンターを使用して、光遮蔽によってサブビジブル粒子を測定した。1~100μmにポリスチレンビーズを用いてセンサーを較正した。分析の前に、きれいなベースラインが達成されるまでMilliQ水を系に流し込み、15μmポリスチレンビーズの標準溶液を使用して系の適合性を確認した。複製試料をガラスバイアル中最終容量1.1mLまでプールし、75トルで2時間真空脱気した。各試料について、0.2mLの5つのアリコートを抜き取り、10μm及び25μmを超える粒子を測定するように機器を設定した。最後の3回の測定の平均を報告した。
サイズ排除クロマトグラフィー.サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)分析を、Waters XBridge Protein BEH SEC 200Aカラムを用いて行った。リン酸、塩化ナトリウム泳動緩衝液を使用して、天然条件下で分離を達成した。ピーク溶出をUV吸光度によって検出し、積分純度の結果を、総補正面積に対する高分子量(HMW)成分、主成分(単量体)及び低分子量(LMW)成分の相対ピーク面積百分率として報告した。
CZE塩化物イオン分析.塩化物イオン分析は、Beckman PA 800キャピラリー電気泳動装置で実行されるMicrosolv Technologies CElixirOA pH 5.4キットを使用して行った。試料及び標準は製造業者の指示に従って調製した。注入は、50.2cmの有効長の裸の溶融キャピラリー上への10秒間1psiの圧力によった。試料をフォトダイオードアレイ検出器(PDA)によって監視した。標準曲線の分析を使用して各試料中の塩化物アニオンの濃度を定量した。
還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(rCE SDS).SDS中70℃で10分間加熱することによってタンパク質試料を変性させ、β-メルカプト-エタノールで還元した。試料を、SDSゲル緩衝液で満たした30.2cmの裸の溶融シリカキャピラリーに電気運動学的に注入した。--15kVの電圧をキャピラリーに印加し、それにより種をそれらの大きさの違いによって分離した。タンパク質をフォトダイオードアレイ検出器を用いて検出した。各成分のピーク面積%を決定することによって純度を評価した。
非還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(nrCE SDS).低pHでSDS及びN-エチルマレイミド(NEM)の存在下、60℃で5分間加熱することによって試料を変性させた。得られた負に帯電したSDS-タンパク質複合体を、SDSゲル緩衝液で満たした30.2cmの裸の溶融シリカキャピラリーに電気運動学的に注入した。--15kVの電圧をキャピラリーに印加し、それにより種をそれらの大きさの違いによって分離した。タンパク質種を、それらが検出窓を通過するときにフォトダイオードアレイ(PDA)検出器によって検出した。各成分のピーク面積%を決定することによって純度を評価した。
毛管等電点電気泳動.毛管等電点電気泳動(cIEF)を使用して、等電点(pI)の違いに基づいてタンパク質を分離した。中性コーティングキャピラリーを両性溶液で満たし、両性種をpH勾配に集中させる電圧を印加した。タンパク質種を、pHがそれらの等電点に等しいpH勾配の部分に集中させた。タンパク質を化学的に動員し、それらが検出窓を通過する際にUV吸光度(280nm)によって検出した。各成分のピーク面積%を決定することによって純度を評価した。
効力評価.アフリベルセプトの効力を、細胞ベースのVEGF-A165依存性増殖アッセイで評価した。ヒト臍帯静脈内皮細胞を、種々の濃度の製剤及び100ng/mLのVEGF-A165と共に増殖因子の非存在下、96ウェルプレートに蒔いた。蛍光生存率試薬の添加前に、アッセイプレートを37℃、5%COで約3日間インキュベートした。製剤濃度対蛍光をグラフ化し、次いで4パラメータ当てはめ式で当てはめることによって用量反応曲線を作成した。試験試料と参照標準との間のx軸に沿った変化を評価することによって、相対効力を測定した。
重量オスモル濃度測定.試料の重量オスモル濃度を、Advanced Instruments, Inc.凝固点浸透圧計を使用して測定した。試料分析の前に、290mOsm/kgのClinitrol(商標)290参照溶液(Fisher Scientific)を用いて機器較正を確認した。試料からの20μLアリコートサブサンプルを試料管に移し、凝固点分析のために機器に入れた。各試料を3連で分析し、報告する結果はこれらの値の平均とした。
例2.安定性試験
分子の安定性に対する塩化物イオン、pH、緩衝剤及び安定剤の種類の重要性を理解するためにアフリベルセプトの安定性分析を行った。この例2及び本明細書の図1~図10の結果を通して使用される各アフリベルセプト(40mg/mL)製剤の組成及び略語(すなわち製剤番号)を表1に概説する。使用したアミノ酸はL-異性体配置であった。
表1.試験した製剤.アフリベルセプト濃度は40mg/mLであった。
塩化物イオン検出.塩化物イオンレベルを、キャピラリーゾーン電気泳動によって測定した。製剤緩衝液及び製剤化された製剤を試験して、各試料中に存在する塩化物イオンのレベルを決定した。塩化ナトリウムを用いて製剤化した製剤試料又はヒスチジンを用いて製剤化した製剤試料は、緩衝液及び製剤試料中に塩化物イオンが存在すると予想される。表2に示されるように、塩化ナトリウムを添加した製剤緩衝液は予想されるレベルの塩化物イオンを有した一方、塩化ナトリウムを添加しなかったヒスチジン製剤は緩衝液調製中に使用したヒスチジン一塩酸塩による結果として低レベルの塩化物イオンを示した。全ての製剤化製剤試料が、対応する緩衝液試料よりもわずかに高レベルの塩化物イオンを示した。この結果は、おそらく生成物精製からの残留塩化物によるものである。
表2.キャピラリーゾーン電気泳動塩化物イオンは、製剤化製剤アフリベルセプト試料に対する製剤緩衝液から生じる。精製工程からの残留塩化物イオンは、製剤緩衝液単独に対して製剤試料中の塩化物イオンレベルをわずかに上昇させた。
重量オスモル濃度製剤溶液の重量オスモル濃度を測定して、製剤調製工程中の製剤成分の共濃縮又は排除が硝子体内注射にとって許容できない重量オスモル濃度レベルをもたらさないことを確実にした。この試験で評価した8つの製剤の重量オスモル濃度の結果は、許容される250~350mOsm/kgの範囲内の重量オスモル濃度レベルを示した。これらの結果の要約を表3に示す。
表3.8つのアフリベルセプト製剤化製剤試料の重量オスモル濃度を凝固点浸透圧計によって測定したところ、全ての試料が許容範囲内であることが示された。
目視評価:目に見える粒子及び色検査.製剤試料の目視評価を行って、環境又は製品関連粒子の有無を判定し、安定性試験の期間にわたって製品の色を評価した。4℃で7週間、及び30℃で4週間保存した安定性試料を目に見える粒子について検査し、全ての試料がこの評価に合格した。
アフリベルセプト製剤安定性試料の色検査を、製剤化タンパク質を市販の褐色-黄色薬局方色標準(EP 2.2.2)と比較することによって行った。この評価の結果から、製剤及び温度に関係なく、製剤の色が貯蔵中に変化しないことが決定された。
サブビジブル粒子試験:HIAC.サブビジブル粒子分析を4℃の安定性試料に行った。粒径10μm及び25μmの結果をそれぞれ図1及び図2に示す。図1及び図2のエラーバーは、3つの読取り値から計算された標準偏差を表す。測定されたサブビジブル粒子レベルは、USPモノグラフ<789>(眼科用溶液中の粒子状物質)によって要求されるレベルをはるかに下回っていた。製剤7とは別に、経時的に増加するレベルのサブビジブル粒子を有する条件である4℃で保存した全ての製剤について10μm粒子が観察された。図2に示される25μm粒子レベルは、4℃で保存した場合には、検出不能又は非常に低いレベルであった。25μmの結果のエラーバーは、報告されている粒子数よりも大きいため、これらの初期の時点のデータから傾向を結論づけることはできないことに留意すべきである。
SE-HPLC.サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)分析を使用して、試験期間を通して安定性試料中の高分子量種(HMW)のレベルを評価した。SE-HPLCを全ての温度条件について全ての時点で行った。4℃及び30℃の温度貯蔵条件の結果をそれぞれ図3及び図4に示す。4℃で7週間貯蔵した後、製剤1~7は、互いに区別がつかないHMWレベルを有し、これらは同等のpHであるが、緩衝剤、等張化剤(tonicity modifier)の種類及び塩化ナトリウムの存在において異なる。驚くべきことに、他の製剤よりも有意に低いpHを有した製剤8もまた、他の製剤と比較して劇的に減少したレベルの凝集体を有した。4℃で観察された傾向は、30℃で4週間の貯蔵後に検出された傾向に匹敵した。
SE-HPLCで測定したHMWデータは、試験した製剤のいずれについても、長期貯蔵中にアフリベルセプトを安定化させるのに塩化ナトリウムが必要ではないことを示唆しており、これは驚くべきことにDixらの教示に反している(米国特許第8921316号明細書、6段、62~65行参照;「NaCl又はスクロースのいずれかを安定剤として使用することができるが、NaClとスクロースの組み合わせが、個々の安定剤単独よりも有効に融合タンパク質を安定化することが確立された」と明言しており、これは本発明者らが本明細書で報告する経験的結果に反している)。ヒスチジン及び酢酸塩緩衝系は、所望のpHに応じてリン酸塩に対する実行可能な代替物である。約5のpH範囲の緩衝液を使用して、有意に減少したレベルの凝集体を得ることができた。スクロースに加えて、等張化剤プロリン及びトレハロースを使用して、アフリベルセプト分子安定性を維持又は増強しながら、適切な重量オスモル濃度(約300mOsm/kg)に達することができる。
還元キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(rCE-SDS).rCE-SDS法を使用して、アミノ酸骨格の開裂などの経時的な生成物分解を監視し、結果を純度%、すなわち重鎖及び軽鎖の合計%として報告した。4℃の結果を図5に要約し、30℃のデータを図6に示す。貯蔵温度にかかわらず、製剤7を除いて、試験した全ての製剤が、試験した時点を通して同様のレベルの純度を有する。製剤間で観察された数値的差異はアッセイ変動性の範囲内である。製剤7は、30℃の高温条件で生成物分解の増加を示し、経時的に純度%の低下をもたらした。
毛管等電点電気泳動(cIEF).毛管等電点電気泳動(cIEF)を使用して、経時的な電荷変異体の分布の変化を監視した。様々な製剤を評価するために、塩基種レベル%及び酸性種レベル%を時間に対してプロットした。これらの種の増加又は減少は、おそらくペプチド骨格の化学修飾から生じるタンパク質電荷の変化を示すであろう。図7、図8、図9及び図10に示されるように、経時的に電荷変異体の分布に変化は観察されなかった。これらのデータは、アフリベルセプトタンパク質の電荷に影響を及ぼす検出可能な化学修飾が起こらなかったことを示している。
例3.安定性試験.
本発明の製剤の種々の実施形態におけるアフリベルセプト安定性のさらなる試験を行った。表4は、試験したアフリベルセプト(40mg/mL)製剤及びそれらの略語のリストを含む。使用したアミノ酸はL-異性体配置であった。
表4.試験したアフリベルセプト(40mg/mL)製剤及びそれらの重量オスモル濃度ならびに本明細書中の表5~15で使用される関連する略語。
材料.VEGF特異的アフリベルセプト融合タンパク質アンタゴニストを、業界標準の組換え発現技術及び精製方法を用いて製造した。Millipore Corporationによる実験室スケール又はベンチスケール接線流濾過システムを使用して、精製原薬を特定の製剤緩衝液に対して緩衝液交換した。製剤緩衝液で希釈することによって、タンパク質濃度を最終標的濃度に調整した。全ての製剤を製造するのに使用した水は、イオン交換カートリッジを含むMilli-Q(登録商標)(Millipore Corporation)浄水システムによって精製した。水の純度を、導電率を測定することによって監視し、18.2MΩcm-1(25℃で)より大きい値が許容可能であった。製剤緩衝液の調製に使用される全ての賦形剤、緩衝剤及び他の成分は、USPグレード又は等価物であった。
方法.
滴定.等モル濃度で調製した酸及び塩基コンジュゲートを適切なモル比で混ぜ合わせて、ヒスチジン及びリン酸緩衝液系について所望の製剤pHを達成した。コンジュゲート方法を使用して、又はMilli-Q精製水に氷酢酸を添加し、引き続いて水酸化ナトリウム滴定して所望の最終pHに到達させて、酢酸塩製剤を調製した。
質量分析に基づく多属性法(Multi-attribute Method)(MAM).安定性試料を6.8Mグアニジンで変性し、10mMジチオトレイトール(DTT)で還元し、20mMヨード酢酸でアルキル化した。サイズ排除に基づく脱塩カラムによって過剰の試薬を除去した。トリプシンを1:10の酵素対基質比で添加し、試料を37℃で30分間消化した。得られたペプチドを、C18カラムでのギ酸/アセトニトリル(FA/ACN)勾配を用いたRP-HPLCによって分離し、Thermo Fisher Q-Exactive質量分析計を使用して質量分析検出によって監視した。個々のペプチドの同定及び定量化を、GenedataのExpressionistソフトウェアを使用して行った。
他の分析方法は、例1に上記した通りに行った。
アフリベルセプトの安定性に対するpHの効果.4℃及び30℃でSE-HPLCによって測定される高分子量形成速度(図11参照)及び4℃でHIACによって測定されるサブビジブル粒子形成速度に対するpHの効果を、様々な製造スケールで、3つの異なるロットで組換え製造されたアフリベルセプトを用いて調査した。3つの異なるスケールで製造されたアフリベルセプトは、全ロットにわたって同様のレベルのグリコシル化を含む同様の製品特性を示した。次いで、アフリベルセプトを10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン及び0.1%(w/v)ポロキサマー188を用いて3つの異なるpH値に製剤化した(製剤の略語については表4を参照されたい)。表5及び表6及び図11に示されるように、10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン及び0.1%(w/v)ポロキサマー188中に製剤化されたアフリベルセプトのSE-HPLC測定HMW形成速度はpHに影響されず、10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース及び0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2中に製剤化された同じロットのアフリベルセプトについて観察された変化率よりも一貫して低かった。HIACによって測定されるサブビジブル粒子形成も4℃での貯蔵中に調査したが、貯蔵期間中、いずれの製剤においてもアフリベルセプトについては有意に変化しなかった(表7)。
表5.SE-HPLCにより測定される4℃でのHMW形成速度;*括弧内の値は、測定された溶液のpHを指す。
表6.SE-HPLCにより測定される30℃でのHMW形成速度;*括弧内の値は、測定された溶液のpHを指す。
表7.小容量HIAC分析によって測定された4℃でのサブビジブル粒子形成;*括弧内の値は、測定された溶液のpHを指す。
異なる非イオン性界面活性剤を含むプロリン及びアルギニン製剤中のアフリベルセプトの安定性.等張化剤としてプロリン又はアルギニンのいずれかを含む製剤中のアフリベルセプトの安定性を、2つの界面活性剤、ポロキサマー188又はポリソルベート80のいずれかの存在下で調査した(それぞれ表8及び表9;製剤の略語については表4を参照されたい)。30℃でSE-HPLCにより測定されるHMW種形成は、それぞれをポリソルベート80又はポロキサマー188のいずれかを用いて製剤化した場合、10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、pH6.2と比較して、アフリベルセプトを10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、pH5.2に製剤化した場合に有意に減少した。10mMリン酸塩、3%(w/v)プロリン、pH6.2中のアフリベルセプトは、10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、pH6.2製剤中のアフリベルセプトの速度と同様のSE-HPLC測定HMW形成速度を示した(それぞれ非イオン性界面活性剤としてポリソルベート80又はポロキサマー188のいずれかを用いて製剤化した)。対照的に、pH5.2の酢酸塩製剤中の等張化剤としてプロリンをアルギニンで置き換えると、SE-HPLC測定HMW形成速度を少なくとも10倍増加した。しかしながら、10mMリン酸緩衝液、pH6.2製剤中では、どのタイプの非イオン性界面活性剤が存在しているかにかかわらず、アルギニンは10mMリン酸塩、3%(w/v)プロリン、pH6.2製剤中のアフリベルセプトと同様の安定性を示した。
表8.SE-HPLCにより測定される30℃でのHMW形成速度.試験した各製剤中に、ポロキサマー188(0.1%(w/v))が非イオン性界面活性剤として存在した。
表9.SE-HPLCにより測定される30℃でのHMW形成速度.試験した各製剤中に、ポリソルベート80(0.03%(w/v))が非イオン性界面活性剤として存在した。
模擬出荷後のアフリベルセプトの安定性及び界面活性剤濃度の効果.アフリベルセプトの安定性を、模擬出荷後の種々の界面活性剤及び濃度を有する10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、pH5.2製剤において特徴付けた。模擬出荷プロトコルは、製品に損傷を与え、安定性プロファイルに影響を及ぼす可能性がある複数の輸送モードを考慮するように設計した。表10に示されるように、10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、pH5.2製剤中に4℃で保存されたアフリベルセプトのSE-HPLC測定HMW形成速度は、界面活性剤の種類にも界面活性剤の濃度にも依存せず、10mMリン酸塩、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、pH6.2製剤中のアフリベルセプトについて観察されたものより有意に低かった。以前の結果と一致して、10mMリン酸塩、3%(w/v)プロリン、pH6.2中のアフリベルセプト安定性は、10mMリン酸塩、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、pH6.2製剤中のものと同様であった。さらに、30℃でのHMW形成速度は4℃での速度よりも速いが、安定性の順序は変わらず、10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、pH5.2が最も安定であった(表11)。模擬出荷後、HIACによって測定されたサブビジブル粒子数は、全ての製剤にわたって同様の程度まで増加した(表12、0週対照の列と0週の列を比較)。HIACによって測定されたサブビジブル粒子数は製剤に依存するようには見えなかった。製品効力を、製剤及び貯蔵温度のサブセットについて13週の時点で評価した(表13参照)。10mMリン酸塩、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、pH6.2製剤と比較した場合、10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、pH5.2製剤又は10mMリン酸塩、3%(w/v)プロリン、pH6.2の間で効力の差は検出されなかった。これらの結果は、種々のプロリン製剤がタンパク質を安定化し、機能的活性を維持することを示している。
質量分析に基づく多属性法(MAM)分析.MAM分析を行って、アスパラギン酸残基の異性化、アスパラギンの脱アミド及びメチオニンの酸化などの属性についての翻訳後修飾レベルの変化を評価した。3つの製剤からの試料を、-70℃対照試料と比較して、4℃、30℃及び40℃で3ヶ月間の貯蔵後に評価した。この分析において、10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、0.1%(w/v)ポロキサマー188、pH5.2及び10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、0.03%(w/v)ポリソルベート80、pH5.2を、アフリベルセプト市販製剤10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2と比較した。
3つの製剤について、-70℃対照と4℃の安定性試料との間で同等レベルのメチオニン酸化が観察された。30℃及び40℃の貯蔵後、3つの製剤全てにおいてより高レベルの酸化が観察され、10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、0.1%(w/v)ポロキサマー188、pH5.2について最低レベルの酸化が報告された。より高レベルのメチオニン酸化を有する2つの製剤は、タンパク質の酸化を促進することが知られている賦形剤であるポリソルベートを含んでいた(Kerwin、タンパク質生物学的製剤の製剤化に使用されるポリソルベート20及び80:構造及び分解経路、Journal of Pharmaceutical Sciences、(2008)97、8:2924~2934)。
4℃、30℃及び40℃で3ヶ月間の貯蔵後に3つの製剤について脱アミドレベルを評価した。4℃の試料間に検出可能な差異は観察されなかったが、高温で保存された試料は脱アミドレベルの有意な増加を有していた。例えば、40℃のアフリベルセプト製剤(10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2)は、N84位に7.6%の脱アミドを有していた一方、10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、0.1%(w/v)ポロキサマー188、pH5.2及び10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、0.03%(w/v)ポリソルベート80、pH5.2製剤は、それぞれ2.8%及び3.0%のN84脱アミドを有していた。検出された5つ全ての脱アミド部位にわたって、10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、pH5.2製剤は、pH6.2のリン酸塩製剤よりも高温貯蔵後に有意に低い脱アミドを有していた。
MAM分析中に異性化アスパラギン酸残基のレベルも評価した。6つのアスパラギン酸残基は異性化を受けやすかった。温度又は製剤にかかわらず、測定された異性化レベル%の差は測定技術の誤差の範囲内であり、したがってこれらのデータから結論を引き出すことはできなかった。
要約すると、MAMデータは、10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、0.1%(w/v)ポロキサマー188、pH5.2製剤が、市販のアフリベルセプト製剤10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2よりも低い又はこれと同等の翻訳後修飾形成速度を有していたことを示している。
表10.SE-HPLCによって測定される4℃でのHMW形成速度;*対照とは、模擬輸送処理を受けずに出荷試験中4℃に保たれた材料を指す。(製剤の略語については表4を参照されたい)。
表11.SE-HPLCによって測定される30℃でのHMW形成速度;*対照とは、模擬輸送処理を受けずに出荷試験中4℃に保たれた材料を指す。(製剤の略語については表4を参照されたい)。
表12.HIACによって測定される4℃でのサブビジブル粒子形成速度;*対照とは、模擬輸送処理を受けずに出荷試験中4℃に保たれた材料を指す。(製剤の略語については表4を参照されたい)。
表13.相対効力;*NT-全ての温度を効力アッセイで試験しなかった;そうでなければn=3
市販のEylea(登録商標)と比較した、本発明の酢酸緩衝製剤における組換え製造アフリベルセプトの比較.10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、pH5.2、0.1%(w/v)ポロキサマー製剤中、30℃での組換え製造アフリベルセプトの安定性を、Eylea(登録商標)(アフリベルセプト; Regeneron Pharmaceuticals,Inc.、ニューヨーク州タリータウン;表14参照)の安定性と比較した。本明細書で市販されていると特に断らない限り、本明細書に記載される全ての実験で使用したアフリベルセプトは、Just Biotherapeutics,Inc.(ワシントン州シアトル)によってこれらの試験のために組換え製造され、本明細書の表1及び表4に記載される製剤に製剤化された。Eylea(登録商標)製剤は欧州市場から購入し、それ自体の容器に安定して入れた。指示された時点で試料をバイアルから取り出し、SE-HPLCによって分析して、存在するHMW種の量を特徴付けた。表14のデータは、Just Biotherapeuticsにより製造され、指示された製剤に製剤化されたアフリベルセプトが、Eylea(登録商標)製剤中のアフリベルセプトよりも低いHMW%及び低いHMW種形成速度を有していたことを実証している。
表14.本発明の製剤の実施形態及び市販のアフリベルセプト製剤(Eylea(登録商標))についての30℃でのHMW形成速度(SE-HPLC)の比較.(製剤の略語については表4を参照されたい)。
アフリベルセプト製剤の安定性に対する塩の効果.アフリベルセプトの安定性に対する塩の効果を、30℃での貯蔵中、10mM酢酸塩、3%(w/v)プロリン、pH5.2製剤で調査した。表15に示されるように、製剤への100mM塩化ナトリウム塩の添加により、SE-HPLC測定HMW種形成速度が3.8倍増加した。
表15.100mM塩化ナトリウム塩を含む又は含まない本発明の製剤の実施形態についての30℃でのHMW形成速度(SE-HPLC)の比較
市販のアフリベルセプトとこれらの実験で使用した組換えアフリベルセプトの安定性比較.Zaltrap(登録商標)(ziv-アフリベルセプト;Regeneron Pharmaceuticals, Inc.、ニューヨーク州タリータウン)として商業的に購入したアフリベルセプトを再処理して市販の製剤成分(ziv-アフリベルセプト以外)を除去し、10mMリン酸塩、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2製剤(P62NaSuT)に再製剤化した。市販の再処理アフリベルセプト及びJust Biotherapeutics, Inc.によりこれらの試験用に製造され、10mMリン酸塩、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2に製剤化された組換えアフリベルセプトを30℃でインキュベートし、HMW形成を監視した。表16に示されるように、市販のZaltrap(登録商標)から精製されたアフリベルセプトのHMW形成速度は、Just Biotherapeuticsによって製造されたアフリベルセプトについて観察された速度よりわずかに速かった。これらの結果は、本明細書に記載される実験で使用されたアフリベルセプトタンパク質と比較して、商業的に得られたアフリベルセプト融合タンパク質の固有の凝集速度の実質的な差がないことを実証している。
表16.組換え製造アフリベルセプト(Just Biotherapeutics, Incによる)と比較した商業的に入手したziv-アフリベルセプト(Zaltrap(登録商標))の30℃でのHMW形成(SE-HPLC).
例4.ウサギにおける硝子体内投与による複数プラセボ製剤の耐容性試験
アフリベルセプト製剤で使用することを意図した本発明の製剤のいくつかの実施形態の耐容性を決定するために、プラセボ製剤の硝子体内注射を、表17に示されるように、Charles River Laboratories, Inc.、640 N. Elizabeth Street、Spencerville、OH45887、アメリカ合衆国で、ウサギへの単回投与として投与した。
表17.雄ウサギにおいて単回投与として試験したプラセボ製剤.
以下のパラメータ及びエンドポイントを試験設計に従って評価した:臨床徴候、体重、体重増加、摂餌量及び眼科学。
本試験の対象ウサギの中では、早期死亡も、治療に関連した臨床徴候も、体重、体重増加、摂餌量、いかなる眼科所見への効果もなかった。結論として、硝子体内注射による全てのプラセボ製剤の投与はウサギにおいて十分に許容された。