本発明の一実施形態によるガスセンサについて図1から図15を用いて説明する。まず、本実施形態によるガスセンサ1の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。図1(b)では、理解を容易にするため、ガスセル基板5に設けられた対向壁56及び壁反射部561が透過して図示され、光路変更反射膜531,541、反射膜731,732、発光側赤外線吸収部75、受光側赤外線吸収部76、レンズ周辺反射膜771,781及び不織布9の図示は省略されている。また、図2では、理解を容易にするため、不織布9の図示は省略されている。
図1(a)に示すように、ガスセンサ1は例えば直方体形状を有している。ガスセンサ1は、後述する発光素子31及び受光素子32(図2参照)が設けられ薄板直方体形状を有するベース基板3を備えている。また、ガスセンサ1は、ベース基板3に対向して配置されて検出対象の気体が満たされる空間部51(図2参照。詳細は後述する)が設けられ全体的に薄板形状を有するガスセル基板5を備えている。また、ガスセンサ1は、ベース基板3及びガスセル基板5の間に配置され薄板形状を有する中間基板7を備えている。中間基板7は、発光素子31で発光された赤外線をガスセル基板5に導き、空間部51を通ってガスセル基板5から照射される赤外線を受光素子32に導くようになっている。さらに、ガスセンサ1は、ガスセル基板5上に配置された不織布9を備えている。
図2に示すように、ガスセンサ1は、ベース基板3と中間基板7とを接着する第一接着層6と、中間基板7とガスセル基板5とを接着する第二接着層8とを備えている。第一接着層6及び第二接着層8は、金属薄膜、ガラス及び接着剤の少なくとも1つにより形成されている。第一接着層6は、ベース基板3と中間基板7との間でベース基板3及び中間基板7の周囲端部に設けられている。第二接着層8は、中間基板7とガスセル基板5との間で中間基板7及びガスセル基板5の周囲端部に設けられている。図1(b)に示すように、第二接着層8は、ガスセル基板5及び中間基板7の少なくとも一方の外形に沿う枠状を有している。図示は省略するが、第一接着層6は、ベース基板3及び中間基板7の少なくとも一方の外形に沿う枠状を有している。ガスセル基板5、中間基板7及びベース基板3が重なる方向にガスセンサ1を見た場合、第一接着層6及び第二接着層8は、ほぼ重なるように設けられている。
ガスセンサ1は、ベース基板3に設けられた発光素子31が発光する赤外線を中間基板7、ガスセル基板5の空間部51及び中間基板7を通して受光素子32で受光するようになっている。空間部51には不織布9及び通気口52を介して外部から導入された気体が満たされている。空間部51を通過する赤外線は、空間部51に満たされた気体が有する赤外線吸収波長の特性に応じて選択的に吸収される。ガスセンサ1は、気体の赤外線吸収波長の特性を利用して、検出対象の気体の成分や濃度などを検出するようになっている。すなわち、ガスセンサ1は、NDIR(Non Dispersive InfraRed)方式を利用したガスセンサである。
以下、ガスセンサ1の各構成要素の概略構成について説明する。
<ベース基板>
図1及び図2に示すように、ガスセンサ1は、赤外線を発光する発光素子31及び発光素子31と同一面(すなわち実装面37)上に配置されて赤外線を受光する受光素子32を有するベース基板3を備えている。ベース基板3は、例えばシリコンで形成されている。これにより、ガスセンサ1の製造過程においてハンドリングが容易となり、ベース基板3と中間基板7との貼り合わせ時及びガスセンサ1のダイシング時(個片化時)の少なくとも一方で割れたり欠けたりしてしまうのが抑制される。また、ベース基板3は、シリコンに限られず、ガリウムヒ素、ゲルマニウム及び石英の少なくとも1つを含む材料により形成されていてもよい。これらの材料で形成されたベース基板3は、シリコンで形成されている場合と比較すると、製造過程におけるハンドリングが困難になったり割れたり欠けたりし易くなる。しかしながら、これらの材料で形成されたベース基板であっても、ガスセンサとしての機能を発揮させることはできる。また、シリコンは、ガリウムヒ素などの他の材料と比較すると入手が容易であり、大きなサイズのウエハー基板を準備し易いため、ガスセンサ1の低コスト化を図ることができる。
ベース基板3は薄板直方体形状を有している。図1(b)に示すように、発光素子31は、例えば発光ダイオードで構成されベース基板3の四隅のうちの一の角部に配置されている。受光素子32は、ベース基板3の四隅のうちの発光素子31が設けられた角部に対して対角に位置する角部に配置されている。
ベース基板3は、発光素子31及び受光素子32が実装される実装面37に形成された導体層33と、実装面37の裏面38に設けられた裏面端子部34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g,34hと、ベース基板3を貫通して設けられ導体層33と裏面端子部34とを電気的に接続する導電ビア35a,35b,35c,35d,35e,35f,35g,35hとを有している。以下、連続する参照符号は、最小値及び最大値とこれらの番号の間の「~」とで表す場合がある。例えば、「裏面端子部34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g,34h」は、「裏面端子部34a~34h」と表す場合がある。また、以下、裏面端子部34a~34hを「裏面端子部34」と総称し、「導電ビア35a~35h」を「導電ビア35」と総称する場合がある。
導体層33は、所定のパターンで形成されている。導体層33は、発光素子31及び受光素子32にそれぞれ電源を供給するための配線パターン、この電源が供給される電源パターン及びグランドパターン、及び受光素子32で光電変換された電気信号が送信される信号パターンなどを有している。また、導体層33は、発光素子31及び受光素子32をFCB(フリップチップボンディング)などの手法によって実装・搭載するためのパッドと、このパッドと他の端子(ベース基板3上の素子や回路につながる端子)とを接続するための配線ラインを有している。
また、導体層33には、種々の機能を発揮する素子及び回路の少なくとも一方が1つ以上が搭載されていてもよい。これらの素子及び回路として、例えば、静電気対策保護素子(例えばツェナーダイオード)、温度検出部、逆接続防止部、過電流検出部、過電圧検出部、過電流防止部、過電圧防止部、駆動制御部、使用時間積算部、寿命予測部、光出力検出部、発光素子特性検査部、受光信号処理部・演算部、通信機能部などが挙げられる。導体層33にこれらの素子や回路が搭載される場合は、これらの素子や回路の厚み分の深さを有する穴部が中間基板7に形成される。光出力検出部は、シリコンフォトダイオードなどで形成されて例えば発光素子31の直下に設けられてもよい。温度検出部は複数個所の温度を検出できるように複数設けられてもよい。
ベース基板3には、複数(本例では8個)の裏面端子部34a~34hが設けられている。図2に示す裏面端子部34の個数や配置場所は、一例であって、これに限られない。例えば裏面端子部は、ベース基板3の裏面においてマトリクス状に等間隔に配置されていてもよい。
裏面端子部34は、ガスセンサ1と外部回路との接続に主に用いられる。裏面端子部34は、電源端子、グランド端子、及びアナログ信号又はデジタル信号のセンサ出力端子などに用いられる。また、ガスセンサ1を備えるガスセンサシステムが通信機能を搭載している場合には、裏面端子部34は、通信機能を制御する制御端子として用いられる。また、裏面端子部34は、発光素子31をオン状態及びオフ状態の一方から他方に切り替えるための制御信号が入力される制御端子、ガスセンサ1の動作を確認するためのテスト端子として用いられる。また、裏面端子部34は、発光素子31や受光素子32の素子特性などのテストの利便性や冗長性を目的として設けられていてもよい。
裏面端子部34には例えば半田ボール(不図示)が取り付けられ、ガスセンサ1は、この半田ボール介してプリント回路基板やフレキシブル回路基板(いずれも不図示)に実装されて動作するようになっている。
ベース基板3には、裏面端子部34と例えば同数の導電ビア35が設けられている。図2に示す導電ビア35の個数や配置場所は、一例であって、これに限られない。例えば導電ビア35は、ベース基板3の裏面においてマトリクス状に等間隔に配置されていてもよい。
導電ビア35aの内壁面には、絶縁膜(不図示)が形成され、この絶縁膜上に導電膜351aが形成されている。導電ビア35bの内壁面には、絶縁膜(不図示)が形成され、この絶縁膜上に導電膜351bが形成されている。導電ビア35cの内壁面には、絶縁膜(不図示)が形成され、この絶縁膜上に導電膜351cが形成されている。導電ビア35dの内壁面には、絶縁膜(不図示)が形成され、この絶縁膜上に導電膜351dが形成されている。導電ビア35eの内壁面には、絶縁膜(不図示)が形成され、この絶縁膜上に導電膜351eが形成されている。導電ビア35fの内壁面には、絶縁膜(不図示)が形成され、この絶縁膜上に導電膜351fが形成されている。導電ビア35gの内壁面には、絶縁膜(不図示)が形成され、この絶縁膜上に導電膜351gが形成されている。導電ビア35hの内壁面には、絶縁膜(不図示)が形成され、この絶縁膜上に導電膜351hが形成されている。
導電膜351aは、図2(a)に示す断面内の領域において導体層33の所定箇所と裏面端子部34aとに接続されている。導電膜351bは、図2(a)に示す断面内の領域において導体層33の所定箇所に接続され、図2(a)に示す断面内とは異なる領域において裏面端子部34bに接続されている。導電膜351cは、図2(b)に示す断面内の領域において導体層33の所定箇所に接続され、図2(b)に示す断面内の領域において裏面端子部34dに接続されている。導電膜351dは、図2(b)に示す断面内の領域において導体層33の所定箇所に接続され、図2(a)及び図2(b)に示す断面内とは異なる領域において裏面端子部34cに接続されている。導電膜351eは、図2(b)に示す断面内の領域において導体層33の所定箇所に接続され、図2(b)に示す断面内とは異なる領域において裏面端子部34eに接続されている。導電膜351fは、図2(c)に示す断面内の領域において導体層33の所定箇所に絶属され、図2(c)に示す断面内とは異なる領域において裏面端子部34fに接続されている。導電膜351gは、図2(c)に示す断面内の領域において導体層33の所定箇所に接続され、図2(c)に示す断面内とは異なる領域において裏面端子部34gに接続されている。導電膜351hは、図2(c)に示す断面内の領域において導体層33の所定箇所と裏面端子部34hとに接続されている。これにより、導体層33と裏面端子部34a~34hとは導電ビア35a~35hを介して電気的に接続される。
ベース基板3は、裏面端子部34a~34h以外の裏面38を覆って形成された保護層39を有している。保護層39は、裏面端子部34と導電ビア35とを接続する導体パターン上に形成される。これにより、保護層39は、この導体パターンが腐食や錆による導体表面の劣化を緩和したり、露出した導体部分が異物混入などによって短絡されたりしてしまうのを防止できる。
<ガスセル基板>
図1(a)及び図2に示すように、ガスセンサ1は、ベース基板3に対向して配置されたガスセル基板5を備えている。ガスセル基板5は、検出対象のガスで満たされる空間部51と、外部から空間部51にガスを導入して空間部51に導入したガスを排出する通気口52と、発光素子31から入射された赤外線を空間部51側に反射する発光側反射部53と、空間部51から入射された赤外線を受光素子32側に反射する受光側反射部54とを有している。ガスセル基板5は、全体的に薄板直方体形状を有している。ガスセル基板5は、例えばシリコンで形成されている。これにより、ガスセンサ1の製造過程においてハンドリングが容易となり、ガスセル基板5及び中間基板7の貼り合わせ時及びガスセンサ1のダイシング時(個片化時)の少なくとも一方で割れたり欠けたりしてしまうのが抑制される。また、ガスセル基板5は、シリコンに限られず、ガリウムヒ素、ゲルマニウム及び石英の少なくとも1つを含む材料により形成されていてもよい。これらの材料で形成されたガスセル基板5は、シリコンで形成されている場合と比較すると、製造過程におけるハンドリングが困難になったり割れたり欠けたりし易くなる。しかしながら、これらの材料で形成されたガスセル基板であっても、ガスセンサとしての機能を発揮させることはできる。また、シリコンは、ガリウムヒ素などの他の材料と比較すると入手が容易であり、大きなサイズのウエハー基板を準備し易いため、ガスセンサ1の低コスト化を図ることができる。
発光側反射部53及び受光側反射部54は、平面及び凹面形状のいずれか一方の形状に形成された反射面を有している。本実施形態における発光側反射部53及び受光側反射部54は、平面形状の反射面を有している(図2(a)及び図2(c)参照)。
ガスセル基板5は、空間部51を画定する側壁55と、側壁55とともに空間部51を画定し中間基板7に対向する対向壁56とを有している。対向壁56は、薄板直方体形状を有している。側壁55は、対向壁56から突出して設けられている。側壁55及び対向壁56は同一材料で一体に形成されている。図1(b)に示すように、側壁55は、対向壁56の周囲端部に設けられている。側壁55は、四角形の環状形状を有している。発光側反射部53は、側壁55の四隅のうちの一の角部に形成されている。受光側反射部54は、発光側反射部53が形成された角部に対して対角に位置する角部に形成さている。
発光側反射部53は、側壁55及び対向壁56のいずれに対しても傾斜する発光側傾斜領域532と、発光側傾斜領域532の傾斜面に形成された光路変更反射膜531とを有している。発光側反射部53は、発光側反射部53に入射する赤外線を光路変更反射膜531で反射し、赤外線の反射方向を発光側傾斜領域532の傾斜角度によって規定する。すなわち、発光側反射部53は、光路変更反射膜531及び発光側傾斜領域532が協働して発光側反射部53に入射する赤外線の光路を変更するようになっている。
図2(a)に示すように、発光側傾斜領域532は、側壁55及び対向壁56に跨って形成されている。発光側傾斜領域532は、側壁55及び対向壁56と一体に形成されている。発光側傾斜領域532の傾斜面は、側壁55及び対向壁56のそれぞれにほぼ45°傾いて設けられている。発光側傾斜領域532の傾斜面は、光路変更反射膜531が形成されることにより、発光側反射部53に入射する赤外線を反射する反射面となる。発光側反射部53の傾斜面は、ベース基板3の実装面37に対してほぼ45°の角度となるように配置される。したがって、発光側反射部53の反射面は、ベース基板3の実装面37に対してほぼ45°の角度となるように配置される。
発光側反射部53の傾斜面がベース基板3の実装面37に対してほぼ45°の角度となるように配置されることにより、発光側反射部53は、入射する赤外線の光路をほぼ90°変更するようになっている。より具体的に、発光側反射部53は、対向壁56にほぼ直交する光路を対向壁56にほぼ平行な光路に変更するようになっている。
シリコンは、赤外線を概ね透過してしまう。本実施形態におけるガスセル基板5は、シリコンで形成されているため、発光側反射部53は、光路変更反射膜531を有さない場合、発光側傾斜領域532に入射する赤外線を透過してしまう。このため、発光側反射部53は、赤外線が入射する発光側傾斜領域532の傾斜面に例えばアルミニウムで形成された光路変更反射膜531を有することにより、所定方向(本実施形態では空間部51が設けられた方向)に赤外線を反射できるようになっている。
受光側反射部54は、側壁55及び対向壁56のいずれに対しても傾斜する受光側傾斜領域542と、受光側傾斜領域542の傾斜面に形成された光路変更反射膜541とを有している。受光側反射部54は、受光側反射部54に入射する赤外線を光路変更反射膜541で反射し、赤外線の反射方向を受光側傾斜領域542の傾斜角度によって規定する。すなわち、受光側反射部54は、光路変更反射膜541及び受光側傾斜領域542が協働して受光側反射部54に入射する赤外線の光路を変更するようになっている。
図2(c)に示すように、受光側反射部54は、側壁55及び対向壁56に跨って形成されている。受光側傾斜領域542は、側壁55及び対向壁56と一体に形成されている。受光側傾斜領域542の傾斜面は、側壁55及び対向壁56のそれぞれにほぼ45°傾いて設けられている。受光側傾斜領域542の傾斜面は、光路変更反射膜541が形成されることにより、受光側反射部54に入射する赤外線を反射する反射面となる。受光側反射部54の傾斜面は、ベース基板3の実装面37に対してほぼ45°の角度となるように配置される。したがって、受光側反射部54の反射面は、ベース基板3の実装面37に対してほぼ45°の角度となるように配置される。
受光側反射部54の傾斜面がベース基板3の実装面37に対してほぼ45°の角度となるように配置されることにより、受光側反射部54は、入射する赤外線の光路をほぼ90°変更するようになっている。より具体的に、受光側反射部54は、対向壁56にほぼ平行な光路を対向壁56にほぼ直交する光路に変更するようになっている。
本実施形態におけるガスセル基板5は、シリコンで形成されているため、受光側反射部54は、光路変更反射膜541を有さない場合、受光側傾斜領域542に入射する赤外線を透過してしまう。このため、受光側反射部54は、赤外線が入射する受光側傾斜領域542の傾斜面に例えばアルミニウムで形成された光路変更反射膜541を有することにより、所定方向(本実施形態では受光素子32が設けられた方向)に赤外線を反射できるようになっている。
本実施形態では、ガスセル基板5がシリコンで形成されているため、発光側反射部53には光路変更反射膜531が設けられて、受光側反射部54には光路変更反射膜541が設けられている。しかしながら、ガスセル基板5の全体のうち、少なくとも発光側傾斜領域532及び受光側傾斜領域542のそれぞれの傾斜面が赤外線を反射できる材料で形成されていれば、発光側反射部53は光路変更反射膜531を有しておらず、受光側反射部54は光路変更反射膜541を有していなくてもよい。
通気口52は、複数(本例では12個)設けられている。通気口52の内部空間と空間部51とは連通して形成されている。このため、通気口52から進入する気体は、空間部51に到達することができる。図1(b)に示す通気口52の個数及び配置場所は一例であって、通気口52は少なくとも1つ設けられていれば、他の個数及び配置場所であってももちろんよい。
ガスセル基板5は、空間部51に配置されて発光側反射部53で反射された赤外線を反射して受光側反射部54に導く光路L1を形成する光路形成反射部50を有している。図1(b)に示すように、光路形成反射部50は、対向する側壁55のそれぞれに設けられている。
対向する側壁55のそれぞれには、例えば複数(本例では3個)の光路形成反射部50a,50b,50c,50d,50e,50fが設けられている。発光側反射部53に対向して光路形成反射部50aが配置されている。光路形成反射部50aの隣には、光路形成反射部50c及び光路形成反射部50eがこの順に並んで配置されている。また、発光側反射部53の隣には、光路形成反射部50b、光路形成反射部50d及び光路形成反射部50fがこの順に並んで配置されている。光路形成反射部50fに対向して受光側反射部54が配置されている。以下、後述する変形例1を除いて「光路形成反射部50a~50f」を「光路形成反射部50」と総称する場合がある。
光路形成反射部50は、側壁55と一体に設けられている。光路形成反射部50a,50c,50eは、側壁55上に鋸刃形状に形成されている。光路形成反射部50b,50d,50fは、側壁55上に鋸刃形状に形成されている。光路形成反射部50は、平面、円筒状凹面及び球状凹面の少なくとも1つの形状に形成された反射面を有している。本実施形態における光路形成反射部50は、平面形状の反射面を有している(図1(b)参照)。
光路形成反射部50は、赤外線を反射する反射面に形成された反射膜501を有している。反射膜501は、例えばアルミニウムで形成されている。光路形成反射部50は、反射膜501を有することにより、入射する赤外線を反射できるようになっている。
光路形成反射部50は、「光路形成反射部50a→光路形成反射部50b→光路形成反射部50c→光路形成反射部50d→光路形成反射部50e→光路形成反射部50f」のように発光側反射部53と受光側反射部54とを結ぶ光路L1を空間部51に形成している。発光素子31で発光した赤外線は、発光側反射部53で反射して光路形成反射部50aに入射すると、光路L1を通って受光側反射部54に入射する。光路形成反射部50は、発光側反射部53で反射した赤外線が受光側反射部54に直接入射する場合と比較して、赤外線が空間部51を通過する距離を長くできる。赤外線が空間部51を通過する距離が長いほど、空間部51を満たす気体が吸収する波長帯域の光強度の減衰量が大きくなる。このため、空間部51を通過した赤外線の特定の波長帯域における光強度の減衰量は、空間部51よりも大きい容積で光路形成反射部50が設けられていない空間部であって同距離の光路の場合と同等になり、気体の成分や濃度の検出精度が低下しない。したがって、光路形成反射部50を有することによりガスセンサ1の小型化を図ることができる。
ガスセル基板5は、側壁55及び対向壁56に設けられ空間部51を導光する赤外線を反射する壁反射部551(図1(b)参照)及び壁反射部561(図2参照)を有している。壁反射部551は、光路形成反射部50が設けられていない側壁55(本例では短辺側の側壁55)の表面と、光路形成反射部50と発光側反射部53及び受光側反射部54とのそれぞれの間の側壁55(本例では長辺側の側壁55)の表面とに形成されている。壁反射部561は、中間基板7に対向する対向壁56の表面に形成されている。本実施形態では、壁反射部は、側壁55及び対向壁56の両方に設けられているが、側壁55及び対向壁56の少なくとも一部に設けられていてもよい。
壁反射部551,561は、空間部51に入射して光路形成反射部50で反射されない赤外線を反射して受光側反射部54に赤外線を導くことができる。これにより、受光素子32での赤外線の受光量が増加するので、ガスセンサ1は、赤外線の検出精度の向上を図ることができる。
<中間基板>
図1(a)及び図2に示すように、ガスセンサ1は、ベース基板3とガスセル基板5との間に配置された中間基板7を備えている。中間基板7は、発光素子31を囲んで設けられた発光側穴部71と、発光側穴部71の内壁に設けられ発光素子31から入射された赤外線を反射する発光側内壁反射部73と、受光素子32を囲んで設けられた受光側穴部72と、受光側穴部72の内壁に設けられ受光側内壁反射部74から入射された赤外線を反射する受光側内壁反射部74とを有している。発光側穴部71、発光側内壁反射部73及び発光側反射部53によって発光機構部300が構成され、受光側穴部72、受光側内壁反射部74及び受光側反射部54によって受光機構部400が構成されている。
中間基板7は、赤外線を透過可能な材料で形成されており、例えばシリコンで形成されている。これにより、ガスセンサ1の製造過程においてハンドリングが容易となり、中間基板7及びガスセル基板5の貼り合わせ時及びガスセンサ1のダイシング時(個片化時)の少なくとも一方で割れたり欠けたりしてしまうのが抑制される。また、中間基板7は、シリコンに限られず、ガリウムヒ素、ゲルマニウム及び石英の少なくとも1つを含む材料により形成されていてもよい。これらの材料で形成された中間基板7は、シリコンで形成されている場合と比較すると、製造過程におけるハンドリングが困難になったり割れたり欠けたりし易くなる。しかしながら、これらの材料で形成された中間基板7であっても、赤外線を透過することができるため、ガスセンサとしての機能を発揮させることはできる。また、シリコンは、ガリウムヒ素などの他の材料と比較すると入手が容易であり、大きなサイズのウエハー基板を準備し易いため、ガスセンサ1の低コスト化を図ることができる。
中間基板7は、発光側穴部71と発光側反射部53との間に設けられた発光側レンズ77と、受光側穴部72と受光側反射部54との間に設けられた受光側レンズ78とを有している。発光側レンズ77は、発光側穴部71側が平坦形状を有し、発光側反射部53側が曲面状を有する平凸レンズである。受光側レンズ78は、受光側反射部54側が曲面状を有し、受光側穴部72側が平坦形状を有する平凸レンズである。
発光側レンズ77は、ベース基板3側に向かう凹状部に配置されている。発光側レンズ77の周辺であってこの凹状部には、レンズ周辺反射膜771が設けられている。レンズ周辺反射膜771は、この凹状部の側壁面と、この凹状部の底面であって発光側レンズ77が設けられていない領域に形成されている。レンズ周辺反射膜771は、発光側レンズ77の周囲を囲んで設けられている。
受光側レンズ78は、ベース基板3側に向かう凹状部に配置されている。受光側レンズ78の周辺であってこの凹状部には、レンズ周辺反射膜781が設けられている。レンズ周辺反射膜781は、この凹状部の側壁面と、この凹状部の底面であって受光側レンズ78が設けられていない領域に形成されている。レンズ周辺反射膜781は、受光側レンズ78の周囲を囲んで設けられている。
ガスセル基板5の対向壁56に直交する方向にガスセンサ1を見たとき、発光側レンズ77の全体は、発光側反射部53に重なって配置されている(図1参照)。また、この方向にガスセンサ1を見たとき、光路変更反射膜531は、発光側レンズ77の外周端部を覆うように配置されている。発光側反射部53が発光側レンズ77の全体に重なって配置されることにより、発光側レンズ77の外周端部近傍のガスセル基板5や中間基板7の端部から外乱光が入射するのを防止できる。さらに、発光側レンズ77は、レンズ周辺反射膜771によって周囲を囲まれている。このため、中間基板7の端部から外乱光が発光側レンズ77に入射するのがより一層防止される。
ガスセル基板5の対向壁56に直交する方向にガスセンサ1を見たとき、受光側レンズ78の全体は、受光側反射部54に重なって配置されている(図1参照)。また、この方向にガスセンサ1を見たとき、光路変更反射膜541は、受光側レンズ78の外周端部を覆うように配置されている。受光側反射部54が受光側レンズ78の全体に重なって配置されることにより、受光側レンズ78の外周端部近傍のガスセル基板5や中間基板7の端部から外乱光が入射するのを防止できる。さらに、受光側レンズ78は、レンズ周辺反射膜781によって周囲を囲まれている。このため、中間基板7の端部から外乱光が受光側レンズ78に入射するのがより一層防止される。
発光側レンズ77のガスセル基板5側の表面(すなわち曲面状表面)上には、光学フィルタ膜70aが形成されている。光学フィルタ膜70aは、ガスセンサ1の検出対象のガスが吸収する波長帯域の赤外線を選択的に透過するように構成されている。これにより、発光側レンズ77に入射した赤外線のうち、検出対象のガスが吸収する波長帯域の赤外線のみがガスセル基板5に入射される。
また、受光側レンズ78のガスセル基板5側の表面(すなわち曲面状表面)上には、光学フィルタ膜70bが形成されている。光学フィルタ膜70bは、光学フィルタ膜70aと同じ波長帯域の赤外線を選択的に透過するように構成されている。これにより、受光側レンズ78に入射した赤外線のうち、検出対象のガスが吸収する波長帯域の赤外線のみが受光素子32に入射される。
このように、ガスセンサ1は、光学フィルタ膜70a,70bを有することにより、発光側で空間部51に入射する赤外線の波長帯域を対象の波長帯域に絞り、受光側で空間部51に混入した対象以外の波長帯域を除去できる。これにより、ガスセンサ1は、ガスの検出精度の向上を図ることができる。
発光側穴部71は、円柱及び角柱などの柱状並びに円錐台及び角錐台などの錐台状の凹形状を有している。発光側穴部71は、貫通孔ではなく、発光側レンズ77側が塞がれた穴形状を有している。このため、発光側穴部71と発光側レンズ77との間には、中間基板7を形成するシリコンが挟まれているが、シリコンは赤外線を透過できるので、特別な問題は生じない。中間基板7の端部から発光側穴部71と発光側レンズ77との間の領域に入射する外乱光は、中間基板7の端部からこの領域に到達するまでに中間基板7で吸収されて減衰する。また、この領域は、発光側穴部71に形成された反射膜731の高さやレンズ周辺反射膜771の高さに対して薄くなっている。このため、この領域から発光側レンズ77に進入する外乱光は、発光素子31が発光する赤外線に対して光量が極めて小さく、ガスセンサ1のガス検知にほとんど影響しない。
発光側穴部71が柱状の凹形状を有している場合には、発光側内壁反射部73での赤外線の反射の効果を均一にできる。また、発光側穴部71が円柱の凹形状、すなわち円筒状を有している場合、反射膜731及び必要に応じて設けられる発光側赤外線吸収部75は、容易に形成されることができ、スパッタリング法などの半導体製造工程で用いられる技術を用いて形成できる。
また、発光側穴部71を形成する面(開口面)の結晶構造を選んで、特定のエッチングを施すと、発光側穴部71は四角錐台に形成される。この場合、他の形状と比較して、比較的高速かつ低コストで、一般的なエッチング装置で簡易にかつ斜面の表面を凸凹の少ない平坦面に仕上げることができる。発光側穴部71は光路設計上、発光素子31側から発光側レンズ77側に向かって徐々に広くなる形状、又は発光素子31側から発光側レンズ77側に向かって傾斜のない柱状であるとよい。
受光側穴部72は、円柱及び角柱などの柱状並びに円錐台及び角錐台などの錐台状の凹形状を有している。受光側穴部72は、貫通孔ではなく、受光側レンズ78側が塞がれた穴形状を有している。このため、受光側穴部72と受光側レンズ78との間には、中間基板7を形成するシリコンが挟まれているが、シリコンは赤外線を透過できるので、特別な問題は生じない。中間基板7の端部から受光側穴部72と受光側レンズ78との間の領域に入射する外乱光は、中間基板7の端部からこの領域に到達するまでに中間基板7で吸収されて減衰する。また、この領域は、受光側穴部72に形成された反射膜741の高さやレンズ周辺反射膜781の高さに対して薄くなっている。このため、この領域から受光素子32に入射する外乱光は、受光側レンズ78を通って入射する赤外線に対して光量が極めて小さく、ガスセンサ1のガス検知にほとんど影響しない。
受光側穴部72が柱状の凹形状を有している場合には、受光側内壁反射部74での赤外線の反射の効果を均一にできる。また、受光側穴部72が円柱の凹形状、すなわち円筒状を有している場合、反射膜741及び必要に応じて設けられる受光側赤外線吸収部76は、容易に形成されることができ、スパッタリング法などの半導体製造工程で用いられる技術を用いて形成できる。
また、受光側穴部72を形成する面(開口面)の結晶構造を選んで、特定のエッチングを施すと、受光側穴部72は四角錐台に形成される。この場合、他の形状と比較して、比較的高速かつ低コストで、一般的なエッチング装置で簡易にかつ斜面の表面を凸凹の少ない平坦面に仕上げることができる。受光側穴部72は光路設計上、受光側レンズ78側から受光素子32側に向かって徐々に広くなる形状、又は受光側レンズ78側から受光素子32側に向かって傾斜のない柱状であるとよい。
発光側内壁反射部73は、発光側穴部71の内壁上の少なくとも一部に形成された反射膜731を有している。反射膜731は、例えばアルミニウムで形成されている。発光側穴部71は、反射膜731を有することにより、入射する赤外線を反射できるようになっている。
受光側内壁反射部74は、受光側穴部72の内壁上の少なくとも一部に形成された反射膜732を有している。反射膜732は、例えばアルミニウムで形成されている。受光側穴部72は、反射膜732を有することにより、入射する赤外線を反射できるようになっている。
中間基板7は、発光側穴部71の内壁と発光側内壁反射部73との間に設けられた発光側赤外線吸収部75と、受光側穴部72の内壁と受光側内壁反射部74との間に設けられた受光側赤外線吸収部76とを有している。より具体的に、発光側赤外線吸収部75は、発光側穴部71の内壁と反射膜731との間に形成されている。受光側赤外線吸収部76は、受光側穴部72の内壁と反射膜732との間に形成されている。発光側赤外線吸収部75は、ガスセンサ1の外部から入射する光に含まれる赤外線を吸収して発光側穴部71に赤外線が進入するのを防止するようになっている。また、受光側赤外線吸収部76は、ガスセンサ1の外部から入射する光に含まれる赤外線を吸収して受光側穴部72に赤外線が進入するのを防止するようになっている。このように、発光側赤外線吸収部75及び受光側赤外線吸収部76は、発光素子31から照射された赤外線にガスセンサ1の外部の赤外線がガスセンサ1に混入するのを防止できる。このため、ガスセンサ1は、空間部51に満たされている気体の成分の検出精度が向上する。
ガスセンサ1は、発光側穴部71及びベース基板3で形成された発光側密閉空間710と、受光側穴部72及びベース基板3で形成された受光側密閉空間720とを備えている。本実施形態では、発光側密閉空間710及び受光側密閉空間720は、それぞれ、空気、ヘリウムガス及び窒素ガスの少なくとも1つで満たされている。発光側密閉空間710は、発光側穴部71の密閉性を確保できるので、ベース基板3(特に発光素子31)への水分の流入を防止できる。同様に、受光側密閉空間720は、受光側穴部72の密閉性を確保できるので、ベース基板3(特に受光素子32)への水分の流入を防止できる。これにより、ガスセンサ1は、水分による故障の発生を抑制できる。
発光側密閉空間710及び受光側密閉空間720は、完全な密閉空間であることが好ましいが、高い密閉性を有する密閉空間であってもよい。発光側密閉空間710及び受光側密閉空間720の密閉性が高いほどベース基板3への水分の流入の防止効果が高くなり、ガスセンサ1の水分による故障の発生の抑制効果が高くなる。
図2に示すように、中間基板7は、空間部51に露出する部分(ガスセル基板5の対向壁56に直交する方向に見て空間部51と重なる領域)のうち発光側レンズ77及び受光側レンズ78が配置された領域以外の領域に設けられ空間部51を導光する赤外線を反射する中間反射部79を有している。中間反射部79は、例えばアルミニウムで形成された反射膜である。中間反射部79は、ガスセル基板5の対向壁56に対向する中間基板7の表面の少なくとも一部に形成されている。中間反射部79は、ガスセル基板5に形成された壁反射部551,561とともに、光路L1からずれて空間部51を導光する赤外線を受光側反射部54に導くようになっている。
発光素子31から受光素子32に至る光路は、発光側穴部71に形成された反射膜731、レンズ周辺反射膜771、光路変更反射膜531、光路形成反射部50に形成された反射膜501、壁反射部551,561、中間反射部79、光路変更反射膜541、レンズ周辺反射膜781及び受光側穴部72に形成された反射膜732で覆われている。このように、ガスセンサ1は、発光素子31から受光素子32に至る光路全体を覆う反射部を有している。
<不織布>
図1(a)に示すように、不織布9は、ガスセル基板5の全面を覆って配置されている。不織布9は、接着層(不図示)によってガスセル基板5に接着されている。不織布9は、気体を通過することができる。このため、ガスセンサ1は、不織布9及び通気口52を通して外部の気体を空間部51に導入することができる。一方、不織布9は、塵埃などの異物を通過させないようになっている。このため、不織布9は、通気口52の内径よりも小さい異物が通気口52を通って空間部51に混入するのを防止できる。
<ガスセンサの動作>
次に、本実施形態によるガスセンサの動作について、図1及び図2を用いて説明する。
図1(b)及び図2(a)に示すように、発光素子31が発光した赤外線は、発光側穴部71を通って発光側レンズ77に入射する。発光素子31は、例えば発光ダイオードで構成されている場合には配向性を有している。発光素子31は、赤外線の強度が最も強い位置に発光側レンズ77の光軸がほぼ一致するように位置合わせされている。また、発光素子31が発光して発光側穴部71の内壁側に向かう赤外線は、発光側内壁反射部73(すなわち反射膜731)で反射されて発光側レンズ77に入射する。発光側レンズ77に入射した赤外線のうち、検出対象のガスが吸収する波長帯域の赤外線が光学フィルタ膜70aによって選択されて透過し、発光側反射部53に入射する。このように、発光素子31が発光した赤外線のうち対象の波長帯域の赤外線が効率よく発光側反射部53に集光される。
発光側レンズ77で集光されて出射された赤外線は、発光側反射部53(すなわち光路変更反射膜531)で反射して光路が約90°変更し、空間部51に入射する。空間部51に入射した赤外線は、光路形成反射部50a~50fで順次反射される。これにより、赤外線は、空間部51において光路形成反射部50が形成する光路L1上を進行して受光側反射部54に到達する。また、空間部51に入射して光路L1から外れた赤外線は、壁反射部551,561及び中間反射部79の少なくともいずれかで反射して受光側反射部54に到達する。空間部51に入射した赤外線は、空間部51に満たされている気体に吸収される。
図1(b)及び図2(c)に示すように、受光側反射部54に入射した赤外線は、受光側反射部54(すなわち光路変更反射膜541)で反射して光路が約90°変更し、光学フィルタ膜70b及び受光側レンズ78にこの順に入射する。受光側レンズ78は、光路形成反射部50が形成する光路L1に光軸が一致するように位置合わせされている。さらに、受光素子32の受光面(不図示)は、受光側レンズ78の光軸上に位置合わせされている。このため、光路L1を通って受光側レンズ78に入射する赤外線は、受光側レンズ78の光軸上を進行し、受光側レンズ78をほぼ直進して受光素子32の受光面に入射する。また、光路L1から外れた赤外線は、受光側レンズ78の光軸からずれて受光側レンズ78に入射するため、受光側レンズ78に入射出する際に屈折して受光側穴部72の内壁面側に向かって進行する。受光側穴部72の内壁面側に向かって進行する赤外線は、受光側内壁反射部74(すなわち反射膜741)で反射して受光素子32の受光面に入射する。受光素子32の受光面に入射する赤外線は、光学フィルタ膜70bで選択されて透過した対象の波長帯域の赤外線である。
ガスセンサ1は、定常状態(例えば無人になったビル内)の濃度(濃度に応じた光信号)を、予め計測して記憶したりコントローラに送信したり入力したりしておく。ガスセンサ1は、この光信号を光電変換した電気信号と、受光素子32で受光した赤外線を光電変換した電気信号である出力信号とを比較して、特定ガス成分の濃度を検出する。
<ガスセンサの製造方法>
次に、本実施形態によるガスセンサ1の製造方法について図3から図14を用いて説明する。ガスセンサ1は、ベース基板3、ガスセル基板5及び中間基板7が例えば異なるシリコンウエハーにそれぞれ複数形成された後に、これらのシリコンウエハーを重ね合わせて貼り合わせ、ダイシングにより個片化されて形成される。以下、ガスセンサの製造方法について、シリコンウエハーに同時に形成される複数の素子のうちの1つを例にとって説明する。なお、図3から図14では、理解を容易にするため、新たに形成された膜など(例えば、金属膜やレジストパターンなど)の構成のみにハッチングが付されている。
<ベース基板の製造方法>
まず、ベース基板3の製造方法について図3から図7を用いて説明する。図3(a)中から図7(b)中の、右側には図2(a)に示すベース基板3の断面における製造工程が図示され、中央には図2(b)に示すベース基板3の断面における製造工程が図示され、左側には図2(c)に示すベース基板3の断面における製造工程が図示されている。なお、図3から図7では、理解を容易にするため、ベース基板3の製造工程において形成されるレジストパターンについては、切断部の端面が図示されている。
図3(a)に示すように、まず、ベース基板3を形成するシリコンウエハー3wを準備し、表面を洗浄する。
次に、図3(b)に示すように、導電ビア35を形成する箇所に貫通孔350を形成する。貫通孔350は、例えばシリコンウエハー3wをある程度薄くしてからドライエッチングにより形成される。ドライエッチングは、導体層33が形成されている位置で化学的に停止する。導電ビア35aを形成する箇所は貫通孔350aを形成し、導電ビア35bを形成する箇所は貫通孔350bを形成し、導電ビア35cを形成する箇所は貫通孔350cを形成し、導電ビア35dを形成する箇所は貫通孔350dを形成する。また、導電ビア35eを形成する箇所は貫通孔350eを形成し、導電ビア35fを形成する箇所は貫通孔350fを形成し、導電ビア35gを形成する箇所は貫通孔350gを形成し、導電ビア35hを形成する箇所は貫通孔350hを形成する。以下、「貫通孔350a~350h」を「貫通孔350」と総称する場合がある。
次に、貫通孔350の内壁面にそれぞれ絶縁膜(不図示)を形成した後に、図4(a)に示すように、この絶縁膜上に導電膜351を形成する。導電膜351は、スパッタリング法又はめっき法で形成される。具体的に、貫通孔350aは導電膜351aを形成し、貫通孔350bは導電膜351bを形成し、貫通孔350cは導電膜351cを形成し、貫通孔350dは導電膜351dを形成する。また、貫通孔350eは導電膜351eを形成し、貫通孔350fは導電膜351fを形成し、貫通孔350gは導電膜351gを形成し、貫通孔350hは導電膜351hを形成する。これにより、導電ビア35a~35hが形成される。
次に、図4(b)に示すように、シリコンウエハー3wの全面に導電膜340を形成し、次いで、導電膜340の全面にレジストを塗布してパターニングし、裏面端子部34及び裏面端子部34と導電ビア35とを接続する配線パターンなどが描画されたレジストパターンRP34を形成する。
次に、レジストパターンRP34をマスクにして導電膜340をエッチングする。これにより、図5(a)に示すように、裏面端子部34と導電ビア35とを接続する配線パターンなどがシリコンウエハー3w上に形成される。次に、レジストパターンRP34と、導電膜340を形成する際に導電ビア35内に埋め込まれた導電物とを順次除去する。これにより、裏面端子部34が形成され、かつ裏面端子部34と導電ビア35とが接続される。
次に、裏面端子部34および配線パターンを含んでシリコンウエハー3wの全面に絶縁膜390を形成する。このとき、導電ビア35内に絶縁膜390が埋め込まれる。次いで、図5(b)に示すように、絶縁膜390の全面にレジストを塗布してパターニングし、裏面端子部34の所定領域が開口されたレジストパターンRP39を形成する。
次に、レジストパターンRP39をマスクにして絶縁膜390をエッチングして裏面端子部34を絶縁膜390から露出し、次いでレジストパターンRP39を除去する。これにより、図6(a)に示すように、導電ビア35内に埋め込まれた状態で保護層39が形成される。こうして、シリコンウエハー3wに複数のベース基板3が形成される。
次に、シリコンウエハー3wを反転し、最終的に実装面37となるシリコンウエハー3wの表面の全面に導電膜330を形成する。次いで、図6()に示すように、導電膜330の全面にレジストを塗布してパターニングし、導体層33のパターンが描画されたレジストパターンRP33を形成する。
次に、レジストパターンRP33をマスクにして導電膜330をエッチングし、次いでレジストパターンRP33を除去する。これにより、図7(a)に示すように、最終的に実装面37となるシリコンウエハー3wの表面に導体層33が形成される。
次に、図7(b)に示すように、発光素子31及び受光素子32を導体層33の所定位置に実装する。シリコンウエハーでの部品実装では、一旦基準位置を決めると、この基準位置から機械的に部品を移動して所定位置に部品を落とし込むことが可能である。このため、プリント回路基板での部品実装のようにカメラなどの撮像装置を用いて実装位置を検出する必要がない。これにより、シリコンウエハーでの部品実装では、プリント回路基板での部品実装と異なり、撮像装置の精度と移動の精度が部品実装の全体の位置精度に影響することがない。また、標準サイズのシリコンウエハー同士の貼り合わせは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等で実績があり、水平度も極めて精度よく保てる。このため、シリコンウエハーでの部品実装は、プリント回路基板での部品実装よりも、光路の垂直方向及び水平方向の精度を高くできる。このように、シリコンウエハーへの発光素子及び受光素子の位置合わせ精度は、プリント回路基板に実装する場合と比較して高くなる。このため、ベース基板3をシリコンで形成することにより、発光素子31及び受光素子32の位置ずれの偏差(クリアランス)を小さくできるので、ガスセンサ1の小型化を図ることができる。また、当該偏差を小さくできるので、ガスセンサ1の仕上がりの公差を小さくしながら大量生産できる。
<中間基板の製造方法>
次に、中間基板7の製造方法について図8から図10を用いて説明する。図8(a)中から図10(c)中の、右側には図2(a)に示す中間基板7の断面における製造工程図示され、左側には図2(c)に示す中間基板7の断面における製造工程が図示されている。なお、図8から図10では、理解を容易にするため、中間基板7の製造工程において形成される各レジストパターンについては、切断部の端面が図示されている。
図8(a)に示すように、まず、中間基板7を形成するシリコンウエハー7wを準備し、表面を洗浄する。
次に、図8(b)に示すように、シリコンウエハー7wの全面にレジストを塗布してパターニングし、発光側レンズ77及び受光側レンズ78が形成される箇所が曲面状のレジストパターンRP77を形成する。
次に、例えば反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching; RIE)などのドライエッチング技術を用いてレジストパターンRP77及びシリコンウエハー7wをエッチングし、発光側レンズ77及び受光側レンズ78が形成される箇所のシリコンウエハー7wを曲面状又は概曲面状(連続曲面ではなく細かい階段状)に形成する。これにより、図8(c)に示すように、シリコンウエハー7wに凹状部が形成されるとともに、この凹状部に発光側レンズ77及び受光側レンズ78が形成される。
次に、発光側レンズ77及び受光側レンズ78を含んでシリコンウエハー7wの全面に誘電体層700を形成する。次に、図8(d)に示すように、誘電体層700の全面にレジストを塗布してパターニングし、発光側レンズ77及び受光側レンズ78上を覆うレジストパターンRP70を形成する。
次に、レジストパターンRP70をマスクにして誘電体層700をエッチングし、次いでレジストパターンRP70を除去する。これにより、図9(a)に示すように、発光側レンズ77の曲面状の表面に光学フィルタ膜70aが形成され、受光側レンズ78の曲面状の表面に光学フィルタ膜70bが形成される。
次に、図9(b)に示すように、誘電体層700を含んでシリコンウエハー7wの全面にアルミニウムで形成された薄膜790を形成する。次いで、図9(b)に示すように、薄膜790の全面にレジストを塗布してパターニングし、レンズ周辺反射膜771,781及び中間反射部79の形状が描画されたレジストパターンRP79を形成する。
次に、レジストパターンRP79をマスクにして薄膜790をエッチングし、次いでレジストパターンRP79を除去する。これにより、図9(c)に示すように、レンズ周辺反射膜771,781及び中間反射部79が形成される。このように、レンズ周辺反射膜771,781及び中間反射部79は、同一の材料で同時に同層に一体に形成される。レンズ周辺反射膜771,781及び中間反射部79は、一続きの膜である。
次に、図9(d)に示すように、シリコンウエハー7wを反転し、発光側レンズ77及び受光側レンズ78が形成された面の裏面の全面にレジストを塗布してパターニングし、発光側穴部71及び受光側穴部72が形成される箇所が開口されたレジストパターンRP71を形成する。
次に、レジストパターンRP71をマスクにしてシリコンウエハー7wをエッチングし、次いでレジストパターンRP71を除去する。これにより、図10(a)に示すように、発光側穴部71及び受光側穴部72が形成される。
次に、発光側穴部71及び受光側穴部72を含んでシリコンウエハー7wの全面に赤外線吸収膜を形成し、異方性エッチングにより赤外線吸収膜を除去する。これにより、図10(b)に示すように、発光側穴部71の内壁面上に発光側赤外線吸収部75が形成され、受光側穴部72の内壁面上に受光側赤外線吸収部76が形成される。発光側赤外線吸収部75は、発光側赤外線吸収部75の内壁面が発光側レンズ77の平坦状の面の端部と一致又は当該端部の内側(本実施形態では当該端部と一致)に配置されるだけの膜厚を有している。また、受光側赤外線吸収部76は、受光側赤外線吸収部76の内壁面が受光側レンズ78の平坦状の面の端部と一致又は当該端部の内側(本実施形態では当該端部と一致)に配置されるだけの膜厚を有している。
次に、発光側赤外線吸収部75及び受光側赤外線吸収部76を含んでシリコンウエハー7wの全面にアルミニウムで形成された薄膜を形成し、異方性エッチングによって発光側穴部71及び受光側穴部72のそれぞれの内壁面上の薄膜以外の薄膜を除去する。これにより、図10(c)に示すように、発光側赤外線吸収部75上に反射膜731が形成され、受光側赤外線吸収部76上に反射膜732が形成される。発光側赤外線吸収部75の内壁面が発光側レンズ77の平坦形状の面の端部と一致又は当該端部の内側に配置されているため、発光側赤外線吸収部75の内壁面上に形成された反射膜731は、発光側レンズ77の下方に配置される。同様に、受光側赤外線吸収部76の内壁面が受光側レンズ78の平坦形状の面の端部と一致又は当該端部の内側に配置されているため、受光側赤外線吸収部76の内壁面上に形成された反射膜732は、受光側レンズ78の下方に配置される。このため、発光側レンズ77の周囲端部と反射膜731との間に隙間が生じ難くなり、受光側レンズ78の周囲端部と反射膜732との間に隙間が生じ難くなる。これにより、中間基板7やガスセル基板5のそれぞれの端部から入射される外乱光が発光側穴部71及び受光側穴部72に進入するのが防止される。
こうして、発光側穴部71に発光側内壁反射部73が形成され、受光側穴部72に受光側内壁反射部74が形成される。こうして、シリコンウエハー7wに複数の中間基板7が形成される。
<ガスセル基板の製造方法>
次に、ガスセル基板5の製造方法について図11から図14を用いて説明する。図11(a)中から図14(b)中の、右側には図2(a)に示すガスセル基板5の断面における製造工程が図示され、中央には図2(b)に示すガスセル基板5の断面における製造工程が図示され、左側には図2(c)に示すガスセル基板5の断面における製造工程が図示されている。
まず、ガスセル基板5を形成するシリコンウエハー5wを準備し、表面を洗浄する。次に、図11(a)に示すように、シリコンウエハー5wの全面にレジストを塗布してパターニングし、発光側反射部53及び受光側反射部54が形成される箇所を含む所定領域が開口されたレジストパターンRP53を形成する。
次に、レジストパターンRP53をマスクにしてシリコンウエハー5wをエッチングし、レジストパターンRP53を除去する。これにより、図11(b)に示すように、発光側反射部53の形成箇所に四角錐台形状の凹部530が形成され、受光側反射部54の形成箇所に四角錐台形状の凹部540が形成される。凹部530,540の側面の傾斜角は、シリコンウエハー5wの主面(レジストパターンRPを形成するためのレジストが塗布された面)に対して約45°である。
次に、図12(a)に示すように、凹部530,540を含んでシリコンウエハー5wの全面にレジストを塗布してパターニングし、発光側反射部53及び受光側反射部54が形成される箇所が覆われ、かつ空間部51が形成される箇所が開口されたレジストパターンRP51を形成する。
次に、レジストパターンRP51をマスクにしてシリコンウエハー5wをエッチングし、レジストパターンRP51を除去する。これにより、図12(b)に示すように、発光側傾斜領域532、受光側傾斜領域542及び空間部51が形成される。
次に、発光側傾斜領域532、受光側傾斜領域542及び空間部51を含んでシリコンウエハー5wの全面に例えばアルミニウムで形成された薄膜500を形成する。次いで、図13(a)に示すように、薄膜500の全面にレジストを塗布してパターニングし、発光側傾斜領域532、受光側傾斜領域542及び空間部51を覆うレジストパターンRP501を形成する。
次に、レジストパターンRP501をマスクにして、薄膜500を異方性エッチングし、次いでレジストパターンRP501を除去する。これにより、図13(b)に示すように、反射膜501、光路変更反射膜531,541及び壁反射部551,561が形成される。このように、反射膜501、光路変更反射膜531,541及び壁反射部551,561は、同一の材料で同時に同層に一体に形成される。また、光路変更反射膜531,541が形成されることにより、光路変更反射膜531及び発光側傾斜領域532で構成された発光側反射部53が形成され、光路変更反射膜541及び受光側傾斜領域542で構成された受光側反射部54が形成される。
次に、図14(a)に示すように、反射膜501、光路変更反射膜531,541及び壁反射部551,561を含んでシリコンウエハー5wの全面にレジストを塗布してパターニングし、通気口52が形成される箇所が開口されたレジストパターンRP52を形成する。
次に、レジストパターンRP52をマスクにし、レジストパターンRP52の開口に露出する壁反射部561をエッチングする。次に、レジストパターンRP52の開口に露出する領域のシリコンウエハー5wを貫通する貫通孔を形成し、次いでレジストパターンRP52を除去する。これにより、図14(b)に示すように、シリコンウエハー5wに通気口52が形成される。こうして、シリコンウエハー5wには、複数のガスセル基板5が形成される。
<貼り合わせ工程>
図示は省略するが、まず、複数の中間基板7が形成されたシリコンウエハー7wと、複数のガスセル基板5が形成されたシリコンウエハー5wとが貼り合わされる。例えば、所定領域に第二接着層8が形成されたシリコンウエハー5wに対してシリコンウエハー7wが位置合わせされ、シリコンウエハー5w及びシリコンウエハー7wが接着される。
次に、シリコンウエハー7wの発光側穴部71及び受光側穴部72の開口側を研磨して、シリコンウエハー7w、すなわち複数の中間基板7が薄型化される。
次に、シリコンウエハー3wの所定領域に第一接着層6が形成される。次いで、シリコンウエハー5wが接着されたシリコンウエハー7wをシリコンウエハー3wに位置合わせして、シリコンウエハー3w及びシリコンウエハー7wを接着する。
次に、シリコンウエハー7wが接着された面と反対側のシリコンウエハー5wの表面の所定領域に接着層が形成される。ついで、通気口52を塞いだ状態で不織布9(図1(a)参照)がシリコンウエハー5w上に貼り合わされる。
<最終工程>
図示は省略するが、ウエハー状態でガスセンサ1の簡易動作の試験が実行される。
次に、簡易動作の試験を通過したガスセンサ1を含み接着されたシリコンウエハー3w,5w,7wを所定箇所でダイシングして個片化する。
次に、個片化されたガスセンサ1のそれぞれについて最終動作の試験が実行され、動作不良のガスセンサ1は除外される。こうして、ガスセンサ1が完成する。
以上説明したように、本実施形態によるガスセンサ1は、発光素子31及び受光素子32のベース基板3への位置ずれの偏差(クリアランス)、ベース基板3及び中間基板7の位置ずれの偏差(クリアランス)、中間基板7及びガスセル基板5の位置ずれの偏差(クリアランス)を小さくできる。これにより、本実施形態によるガスセンサ1によれば、発光素子31及び受光素子32の位置精度が向上され、かつ小型化を図ることができる。
(変形例1)
次に、本実施形態の変形例1によるガスセンサについて図15を用いて説明する。本変形例によるガスセンサ2は、ガスセル基板5が空間部51に突出する突出部を有し、この突出部に光路形成反射部50が設けられている点に特徴を有している。以下、図1及び図2に示すガスセンサ1と同様の作用・機能を奏する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。図15では、理解を容易にするため、ガスセル基板5に設けられた対向壁56及び壁反射部561が透過して図示され、光路変更反射膜531,541、反射膜731,741、発光側赤外線吸収部75、受光側赤外線吸収部76、レンズ周辺反射膜771,781及び不織布9の図示は省略されている。
図示は省略するが、本変形例によるガスセンサ2は、図1及び図2に示すガスセンサ1と同様に、ベース基板3と、ベース基板3に対向配置されたガスセル基板5と、ベース基板3とガスセル基板5との間に配置された中間基板7とを備え、全体的に薄板直方体形状を有している。ベース基板3及び中間基板7は、ベース基板3及び中間基板7の少なくとも一方の周囲端部に沿う枠状の第一接着層(不図示)で互いに接着されている。また、ガスセル基板5及び中間基板7は、ガスセル基板5及び中間基板7の少なくとも一方の周囲端部に沿う枠状の第二接着層8(図15参照)で互いに接着されている。
図15に示すように、発光機構部300及び受光機構部400は、短辺側の一の側壁55の端部にそれぞれ配置されている。発光機構部300及び受光機構部400は、対向して配置されている。
図15に示すように、ガスセンサ2に備えられたガスセル基板5は、空間部51を画定する側壁55と、側壁55の少なくとも一部から空間部51に突出する側壁突出部57とを有している。光路形成反射部50は、側壁突出部57に設けられている。光路形成反射部50は、側壁突出部57の側面に設けられている。側壁突出部57は、長辺側の側壁55のそれぞれに対向して設けられている。側壁突出部57は、側壁55と一体に形成されている。
発光側反射部53が設けられている側の側壁突出部57には、発光側反射部53の隣から光路形成反射部50b、光路形成反射部50d、光路形成反射部50f、光路形成反射部50h及び光路形成反射部50jがこの順に並んで配置されている。光路形成反射部50b,50d,50f,50h,50jは、全体で鋸刃状を有している。
受光側反射部54が設けられている側の側壁突出部57には、受光側反射部54の隣から光路形成反射部50s、光路形成反射部50q、光路形成反射部50o、光路形成反射部50m及び光路形成反射部50kがこの順に並んで配置されている。光路形成反射部50k,50m,50o,50q,50sは、全体で鋸刃状を有している。
図15に示すように、ガスセンサ2に備えられたガスセル基板5は、空間部51を画定し中間基板7(図15では不図示)に対向する対向壁56(図15では不図示)と、対向壁56の少なくとも一部から空間部51に突出する対向突出部58とを有している。光路形成反射部50は、対向突出部58に設けられている。光路形成反射部50は、対向突出部58の側面に設けられている。対向突出部58は、対向壁56と一体に形成されている。対向突出部58は、発光機構部300と受光機構部400との間に配置されている。
発光機構部300に向けられた対向突出部58の側面には、発光機構部300に対向して光路形成反射部50aが配置されている。発光機構部300に向けられた対向突出部58の側面には、光路形成反射部50aの隣から光路形成反射部50c、光路形成反射部50e、光路形成反射部50g及び光路形成反射部50iがこの順に並んで配置されている。光路形成反射部50a,50c,50e,50g,50iは、全体で鋸刃状を有している。
受光機構部400に向けられた対向突出部58の側面には、受光機構部400に対向して光路形成反射部50tが配置されている。受光機構部400に向けられた対向突出部58の側面には、光路形成反射部50tの隣から光路形成反射部50r、光路形成反射部50p、光路形成反射部50n及び光路形成反射部50lがこの順に並んで配置されている。光路形成反射部50l,50n,50p,50r,50tは、全体で鋸刃状を有している。以下、本変形例では、「光路形成反射部50a~50t」を「光路形成反射部50」と総称する。
側壁突出部57の表面(赤外線が入射して反射する面)には、反射膜571が形成されている。対向突出部58の表面(赤外線が入射して反射する面)には、反射膜581が形成されている。光路形成反射部50の表面(赤外線が入射して反射する面)には、反射膜501が形成されている。光路形成反射部50の表面(赤外線が入射して反射する面)には、反射膜501が形成されている。側壁55の表面(赤外線が入射して反射する面)には、壁反射部551が形成されている。図示は省略するが、対向壁56の表面(赤外線が入射して反射する面)には、壁反射部561が形成されている。反射膜571、反射膜581、反射膜501、壁反射部551及び壁反射部561は、同一材料(例えばアルミニウム)で一体に形成されている。
光路形成反射部50は、「光路形成反射部50a→光路形成反射部50b→光路形成反射部50c→光路形成反射部50d→光路形成反射部50e→光路形成反射部50f→光路形成反射部g→光路形成反射部h→光路形成反射部50h→光路形成反射部50i→光路形成反射部j→光路形成反射部50k→光路形成反射部50l→光路形成反射部50m→光路形成反射部50n→光路形成反射部50o→光路形成反射部50p→光路形成反射部50q→光路形成反射部50r→光路形成反射部50s→光路形成反射部50t」のように発光側反射部53と受光側反射部54とを結ぶ光路L2を空間部51に形成している。発光素子31で発光した赤外線は、発光側反射部53で反射して光路形成反射部50aに入射すると、光路L2を通って受光側反射部54に入射する。光路形成反射部50は、発光側反射部53で反射した赤外線が受光側反射部54に直接入射する場合と比較して、赤外線が空間部51を通過する距離を長くできる。このため、ガスセンサ2は、ガスセンサ1と同様に、小型化を図ることができる。
側壁55に設けられた光路形成反射部50で赤外線を反射すると、その前後で影が生じるような場合、本変形例のように、側壁55や対向壁56から突出する突出部に光路形成反射部を設けることにより、この影の影響を防止できる。
(変形例2)
次に、本実施形態の変形例2によるガスセンサについて図16を用いて説明する。本変形例によるガスセンサ4は、2つの受光機構部を備えている点に特徴を有している。以下、図1及び図2に示すガスセンサ1と同様の作用・機能を奏する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。図16では、理解を容易にするため、ガスセル基板5に設けられた対向壁56及び壁反射部561が透過して図示され、光路変更反射膜531,541、反射膜731,741、発光側赤外線吸収部75、受光側赤外線吸収部76、レンズ周辺反射膜771,781及び不織布9の図示は省略されている。
図示は省略するが、本変形例によるガスセンサ4は、図1及び図2に示すガスセンサ1と同様に、ベース基板3と、ベース基板3に対向配置されたガスセル基板5と、ベース基板3とガスセル基板5との間に配置された中間基板7とを備え、全体的に薄板直方体形状を有している。ベース基板3及び中間基板7は、ベース基板3及び中間基板7の少なくとも一方の周囲端部に沿う枠状の第一接着層(不図示)で互いに接着されている。また、ガスセル基板5及び中間基板7は、ガスセル基板5及び中間基板7の少なくとも一方の周囲端部に沿う枠状の第二接着層8(図15参照)で互いに接着されている。
図16に示すように、ガスセンサ4は、受光素子32a,32b、受光側穴部72、受光側内壁反射部74及び受光側反射部54で構成された受光機構部400a,400bを複数(本例では2つ)備えている。以下、本変形例では、「受光機構部400a,400b」を「受光機構部400」と総称する場合がある。複数の受光機構部400の少なくとも1つ(例えば受光機構部400a)は、発光素子31が発光する赤外線が入射する入射側表面に設けられ第一波長を選択的に透過させる第一光学フィルタ(第一フィルタの一例)700aを有する受光素子32aを有している。また、複数の受光機構部400のうちの残余の1つ(例えば受光機構部400b)は、発光素子31が発光する赤外線が入射する赤外線の入射側表面に設けられ第一波長と異なる第二波長を選択的に透過させる第二光学フィルタ(第二フィルタの一例)700bを有する受光素子32bを有している。複数の受光機構部400のうちの受光機構部400a及び受光機構部400bは、発光素子31に対して互いに線対称な位置に設けられている。
図16に示すように、受光機構部400a及び受光機構部400bは、短辺側の一の側壁55の端部にそれぞれ配置されている。受光機構部400a及び受光機構部400bは、対向して配置されている。発光機構部300は、短辺側の他の側壁55のほぼ中央に配置されている。
受光機構部400a,400bが配置されている短辺側の側壁55には、光路形成反射部50a,50dが設けられている。光路形成反射部50aは、発光素子31の発光部(不図示)の中心及びガスセンサ4の中心を通る仮想中心線BCと受光機構部400bとの間に配置されている。光路形成反射部50bは、仮想中心線BCと受光機構部400aとの間に配置されている。光路形成反射部50a及び光路形成反射部50dはそれぞれ、短辺側の側壁55にほぼ平行な表面の例えば四角柱形状を有している。光路形成反射部50a,50dのこの表面(赤外線が入射して反射する面)にはそれぞれ、反射膜501が形成されている。
発光機構部300が配置されている短辺側の側壁55には、光路形成反射部50b,50eが設けられている。光路形成反射部50bは、受光機構部400bが設けられている長辺側の側壁55と発光機構部300との間に配置されている。光路形成反射部50eは、受光機構部400aが設けられている長辺側の側壁55と発光機構部300との間に配置されている。光路形成反射部50b及び光路形成反射部50eはそれぞれ、短辺側の側壁55に対して傾斜した表面の例えば台形柱形状を有している。光路形成反射部50b,50eのこの表面(赤外線が入射して反射する面)にはそれぞれ、反射膜501が形成されている。
受光機構部400bが設けられている長辺側の側壁55には、光路形成反射部50cが設けられている。受光機構部400aが設けられている長辺側の側壁55には、光路形成反射部50fが設けられている。光路形成反射部50cと光路形成反射部50fとは対向して配置されている。光路形成反射部50c及び光路形成反射部50fはそれぞれ、長辺側の側壁55に対して傾斜した表面の例えば直角三角柱形状を有している。光路形成反射部50c,50fのこの表面(赤外線が入射して反射する面)にはそれぞれ、反射膜501が形成されている。
本実施例では、光路形成反射部50a~50fの表面は、直線状の平坦面を有しているが、集光効率の向上を図るために、凹面鏡のような曲線を有していてもよい。
光路形成反射部50a、光路形成反射部50b及び光路形成反射部50cは、発光機構部300の発光側反射部53と受光機構部400aの受光側反射部54との間に光路L3を形成する。また、光路形成反射部50d、光路形成反射部50e及び光路形成反射部50fは、発光機構部300の発光側反射部53と受光機構部400bの受光側反射部54との間に光路L4を形成する。受光機構部400aと受光機構部400bとは、仮想中心線BCに対して線対称に配置されている。光路形成反射部50aと光路形成反射部50dとは、仮想中心線BCに対して線対称に配置されている。光路形成反射部50bと光路形成反射部50eとは、仮想中心線BCに対して線対称に配置されている。光路形成反射部50cと光路形成反射部50fとは、仮想中心線BCに対して線対称に配置されている。このため、光路形成反射部50a,50b,50cが形成する光路L3の光路長と、光路形成反射部50d,50e,50fが形成する光路L4の光路長とは等しくなる。
例えば、第一波長が検出対象の気体が吸収する赤外線の波長であり、第二波長が検出対象の気体が吸収しない波長であるとする。そうすると、第一波長を選択的に透過させる第一光学フィルタ700aを有する受光機構部400aは、検出対象の気体を検出する検出部としての機能を発揮できる。一方、第二波長を選択的に透過させる第二光学フィルタ700bを有する受光機構部400bは、参照信号の出力部として機能を発揮できる。これにより、ガスセンサ4は、参照信号を予め測定して記憶しておく必要がない。また、ガスセンサ4に経年劣化が生じても、受光機構部400a,400b及び光路形成反射部50a~50fは、ほぼ同様に劣化する。このため、ガスセンサ4は、経年劣化が生じても検出精度の劣化を防止できる。さらに、本変形例によるガスセンサ4は、ガスセンサ1と同様の効果が得られる。
本発明は、上記実施形態によらず種々の変形が可能である。
上記実施形態によるガスセンサ1では、発光側内壁反射部73は発光側赤外線吸収部75上に形成された反射膜731を有し、受光側内壁反射部74は、受光側赤外線吸収部76上に形成された反射膜741を有しているが、本発明はこれに限られない。例えば、発光側内壁反射部73は、発光側穴部71の内壁表面に形成された反射膜を有し、受光側内壁反射部74は、受光側穴部72の内壁表面に形成された反射膜を有していてもよい。発光側穴部71及び受光側穴部72の内壁表面の少なくとも一部に反射膜が直接形成されていても、これらの反射膜がガスセンサ1の外部から入射する赤外線を反射できれば、赤外線を吸収したのと同じ効果が得られる。
ガスセンサを構成する各基板は、赤外線を透過しない材料で形成されていてもよい。この場合、中間基板を赤外線が通過するために、発光側穴部及び受光側穴部は貫通穴である必要がある。
上記実施形態における光路形成反射部50は、鋸刃状のアレイ状を有しているが、これに限られない。光路形成反射部の配置位置や形状は、発光側から受光側に対象波長の赤外線を導くことができ、対象波長以外の赤外線が受光素子に入射しなければ、例えば1つのみ形成されているなど、適宜変更が可能である。
光学フィルタ膜70a,70bは、例えばいずれか一方のみに設けられていてもよい。この場合も、ガスセンサは、対象波長帯域の赤外線を選択できるので、検出対象の気体を検出できる。
上記実施形態では、発光側密閉空間710及び受光側密閉空間720は、所定の気体で満たされているが、真空であってもよい。
ガスセンサ1は、中間基板7の端部と、発光側穴部71及び発光側レンズ77の間の領域との間に、所定形状(例えば円筒状)のトレンチと、このトレンチに埋め込まれて例えば反射膜731と同じ材料又はシリコン酸化膜で形成された反射部とを有していてもよい。これにより、ガスセンサ1は、この反射部によって、中間基板7の端部から入射する外乱光がこの領域から進入するのを防止できる。これにより、ガスセンサ1は、ガス検知の精度の向上を図ることができる。
ガスセンサ1は、中間基板7の端部と、受光側穴部72及び受光側レンズ78の間の領域との間に、所定形状(例えば円筒状)のトレンチと、このトレンチに埋め込まれて例えば反射膜731と同じ材料又はシリコン酸化膜で形成された反射部とを有していてもよい。これにより、ガスセンサ1は、この反射部によって、中間基板7の端部から入射する外乱光がこの領域から進入するのを防止できる。これにより、ガスセンサ1は、ガス検知の精度の向上を図ることができる。
上記変形例1によるガスセンサ2は、側壁突出部57及び対向突出部58の両方を有しているが、本変形例はこれに限られない。例えば、ガスセンサ2は、側壁突出部57及び対向突出部58のいずれか一方のみを有していてもよい。
上記変形例2によるガスセンサ4は、受光機構部400a及び受光機構部400bが発光素子31(すなわち仮想中心線BC)に対して線対称に配置され、光路形成反射部50a,50b,50c及び光路形成反射部50d,50e,50fが発光素子31(すなわち仮想中心線BC)に対して線対称に配置されているが、本発明はこれに限られない。受光機構部400a及び受光機構部400bと、光路形成反射部50a,50b,50c及び光路形成反射部50d,50e,50fの少なくともいずれか一方が発光素子31(すなわち仮想中心線BC)に対して線対称に配置されていなくてもよい。この場合、受光機構部400a及び受光機構部400bと光路形成反射部50a,50b,50c及び光路形成反射部50d,50e,50fのうち、配置関係が非対称になることによって生じる赤外線の受光量のオフセット分を補正することにより、上記変形例2と同様の効果が得られる。
上記実施形態によるガスセンサは、発光素子31を有しているが、発光素子31に代えて熱源を有していてもよい。熱源も赤外線を発生しているため、熱源を有するガスセンサは、上記実施形態によるガスセンサ1,2,4と同様の効果が得られる。
上記実施形態では、通気口52が最終段階でシリコンウエハー5wに形成されるが、本発明はこれに限られない。例えば、ガスセル基板5の製造工程において、最終的に通気口52となる未貫通孔又は貫通孔を最初にシリコンウエハー5wに機械的に開けてもよい。未貫通孔は、例えば空間部51を形成する工程において、未貫通部分がエッチングされることによって貫通孔となってもよい。
また、上記実施形態のように、最終段階でエッチングによって通気口52を形成するのではなく、最終段階で機械的に通気口52を形成してもよい。
また、シリコンウエハー5wをシリコンウエハー7wと貼り合わせてから、エッチング又は機械的に通気口52を形成してもよい。
上記実施形態では、ベース基板3の製造に当たって、シリコンウエハー3wに導電ビア35を形成した後に、裏面端子部34などが形成されるようになっているが、本発明はこれに限られない。例えば、ベース基板3は、一部の構成をシリコンウエハー3w単体の状態で形成し(前工程)、互いに接着されたガスセル基板5及び中間基板7のうちの中間基板7に貼り合わされた後に残部の構成をシリコンウエハー3wに形成する(後工程)ようになっていてもよい。この場合、ベース基板3wの製造過程の前工程では、実装面37側への導体層33の形成と、導体層33の所定箇所への発光素子31及び受光素子32の実装が行われる。ベース基板3wの製造過程の後工程では、導電ビア34、裏面端子部34、裏面38側の導体層33及び保護層39の形成がこの順に行われる。
実装面37側の構成要素の形成をした後に導電ビア35が形成される場合、導電ビア35は、発光側穴部71に露出するベース基板3の領域及び受光側穴部72に露出するベース基板3の領域を除く領域に形成できる。これにより、導電ビア35の形成時に、導電ビア35となる貫通孔の洗浄工程で、導電ビア35と直接接合されるベース基板3上のパッドが除去されてしまうのが防止される。導電ビア35と直接接合されるパッドは、例えば貫通孔の直上に予め設けられており貫通孔内の導電膜351と接続されるパッドである。また、このパッドは、ベース基板3の形成工程における貫通孔のエッチングの際のストッパとして機能する。
上記実施形態では、導電ビア35は、貫通孔の内壁に形成された絶縁膜(不図示)と、この絶縁膜上に形成された導電膜351と、導電膜351で囲まれる空間に埋め込まれた保護層39とを有し、導電膜351を介して実装面37と裏面38とを電気的に接続する構成を有しているが、本発明は、これに限られない。例えば、導電ビア35は、低抵抗シリコンで形成されたシリコンウエハー3wを用い、シリコンウエハー3w自体を導電体として用いる構成を有していてもよい。この場合、導電ビア35は、不図示の絶縁膜及び導電膜351ではなく、シリコンウエハー3wを貫通するパイプ状のトレンチと、このトレンチに充填された絶縁材とを有する。これにより、シリコンウエハー3wにおいて、トレンチの内側領域のシリコンと、トレンチの外側領域のシリコンとがトレンチ内の絶縁材によって電気的に絶縁される。このため、トレンチの内側領域のシリコン上に、実装面37上の導体層33の一部を形成することにより、トレンチの内側領域のシリコンと実装面37上の導体層33とを電気的に接続することができる。また、トレンチの内側領域のシリコンは、裏面38側に露出する領域にバンプを形成することにより、この領域を裏面端子部34として用いることができる。したがって、このような構成を有する導電ビア35は、裏面端子部34と実装面37上の導体層33とを電気的に接続することができる。また、このような構成を有する導電ビア35は、上記実施形態と同様に、ベース基板3の製造過程において、シリコンウエハー3wに最初に形成される。
上記の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。