JP7114955B2 - 気化式熱交換器 - Google Patents

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Description

この発明は、気化式熱交換器に関し、特に、複数の冷却フィンの各々の表面に設けられ、液体を保持する保持材を備える気化式熱交換器に関する。
従来、複数の冷却フィンの各々の表面に設けられ、液体を保持する保持材を備える気化式熱交換器が知られる(たとえば、特許文献1参照)。
上記特許文献1には、第1プラスチック基板(冷却フィン)の表面に、親水素材の織布、不織布または静電植毛により設けられる繊維により構成され、水(液体)を保持する湿潤層が形成された間接気化空調装置(気化式熱交換器)が開示されている。間接気化空調装置では、第1プラスチック基板は、第2プラスチック部材を介して複数配置されている。
ここで、上記特許文献1に記載の間接気化空調装置では、湿潤層に水を供給したうえで、第1プラスチック基板の湿潤層同士の間に空気を流すと、湿潤層に保持された水が気化することにより、第1プラスチック基板を冷却することが可能である。
特開2017-142032号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の間接気化空調装置では、保持された水に起因して湿潤層が膨張してしまい、第1プラスチック基板の湿潤層同士の隙間が小さくなるという不都合がある。このため、第1プラスチック基板の湿潤層に保持されている水同士が結合してしまい、第1プラスチック基板(冷却フィン)同士の間の空気の流れに対する圧力損失が増大するという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、冷却フィン同士の間の空気の流れに対する圧力損失の増大を抑制することが可能な気化式熱交換器を提供することである。
この発明の一の局面による気化式熱交換器は、互いに対向するように配置された平板形状の複数の冷却フィンと、複数の冷却フィンの各々に液体を供給する液体供給部材と、複数の冷却フィンの各々の表面に設けられ、液体供給部材から供給された液体を保持する隙間を有する保持材とを備え、保持材は、保持した液体に起因する保持材の変形を抑制可能な硬さを有し、複数の冷却フィンの各々の内部には、複数の冷却フィンの並ぶ方向に直交する方向に延びる冷媒流路が形成され、保持材は、複数の冷却フィンの並ぶ方向における冷却フィンの各々の表面の全体にわたって配置された複数の短繊維を含み、複数の短繊維は、互いに絡み合わないように、冷却フィンの各々の表面から突出している。
この発明の一の局面による気化式熱交換器では、上記のように、保持材は、保持した液体に起因する保持材の変形を抑制可能な硬さを有する。これにより、複数の冷却フィンの各々の表面に設けられた保持材同士の間に形成される隙間の大きさの変化が抑制されるので、複数の冷却フィンの各々において保持した液体同士が保持材に起因して結合することを抑制することができる。この結果、冷却フィン同士の間の空気の流れに生じる圧力損失の増大を抑制することができる。なお、圧力損失とは、冷却フィン同士の間を空気が流れる際のエネルギー損失である。
上記複数の線状構造物、複数の粒状構造物、多孔質体状構造物のいずれかにより構成される保持材を備える気化式熱交換器において、好ましくは、保持材は、複数の冷却フィンの各々の表面上に、互いの間に隙間を形成し、複数の冷却フィンのうち対向する冷却フィンに向かって突出し、上記硬さを有するとともに、保持した液体に起因する保持材の膨張を抑制可能な突出長さを有する複数の短繊維を含む。このように構成すれば、保持材が複数の短繊維であることにより、複数の保持材を構成する繊維同士が絡み合いにくい構成であるので、複数の保持材同士が絡み合うことにより水が保持されることを抑制することができる。
上記一の局面による気化式熱交換器において、好ましくは、保持材の表面には、親水性処理が施されている。このように構成すれば、複数の冷却フィンの各々の表面上に液体をより保持しやすくすることができる。
上記一の局面による気化式熱交換器において、好ましくは、液体供給部材により、複数の冷却フィンの各々に連続的に液体を供給するように構成されている。このように構成すれば、複数の冷却フィンの各々の表面が乾燥することを抑制することができるので、複数の冷却フィンによる冷却性能の低下を抑制することができる。また、液体供給部材により複数の冷却フィンの各々に間欠的に液体を供給するためのタイマまたはセンサが必要ないので、気化式熱交換器の構成の複雑化を抑制することができる。また、液体供給部材により複数の冷却フィンの各々に間欠的に液体を供給する場合よりも、複数の冷却フィンの各々の表面が乾燥することを抑制することができるので、複数の冷却フィンの各々の表面上にスケールが生じることを抑制することができる。なお、スケールとは、複数の冷却フィンの各々の表面の乾燥により、複数の冷却フィンの各々の表面上に析出した炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ等の無機塩類である。
この場合、好ましくは、液体供給部材により、複数の冷却フィンの各々の表面における液体の蒸発量よりも、多量の液体を複数の冷却フィンに供給するように構成されている。このように構成すれば、複数の冷却フィンの表面上の不純物を洗い流しやすくすることができるので、冷却フィンの経年劣化を抑制することができる。
本発明によれば、上記のように、冷却フィン同士の間の空気の流れに対する圧力損失の増大を抑制することができる。
第1実施形態による気化式熱交換器の構成を示した図である。 図2(A)は第1実施形態による気化式熱交換器の冷却フィンの表面上に保水層が形成される前の状態を示した模式図である。図2(B)は冷却フィンの表面上に保水層が形成された後の状態を示した模式図である。 第1実施形態による気化式熱交換器において、保水層に保持される水量と冷却フィンの表面上から蒸発する水の蒸発量との関係を示した模式的なグラフである。 図4(A)は第2実施形態による気化式熱交換器の冷却フィンの表面上に保水層が形成される前の状態を示した模式図である。図4(B)は冷却フィンの表面上に保水層が形成された後の状態を示した模式図である。 図5(A)は第3実施形態による気化式熱交換器の冷却フィンの表面上に保水層が形成される前の状態を示した模式図である。図5(B)は冷却フィンの表面上に保水層が形成された後の状態を示した模式図である。 図6(A)は第4実施形態による気化式熱交換器の冷却フィンの表面上に保水層が形成される前の状態を示した模式図である。図6(B)は冷却フィンの表面上に保水層が形成された後の状態を示した模式図である。 図7(A)は冷却フィンの表面上に撥水性を有しない棒により水を供給する第1変形例を示した模式図である。図7(B)は冷却フィンの表面上に多孔板により水を供給する第1変形例を示した模式図である。図7(C)は冷却フィンの表面上に噴霧器により水を供給する第1変形例を示した模式図である。 第2変形例による気化式熱交換器の構成を示した図である。 第3変形例による気化式熱交換器の構成を示した図である。 第4変形例による気化式熱交換器の構成を示した図である。
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
まず、図1および図2を参照して、第1実施形態による気化式熱交換器1の構成について説明する。気化式熱交換器1は、冷却フィン2の表面上に保持された水を気化させることにより生じる気化熱によって冷却フィン2を冷却し、冷却フィン2内に形成された冷媒流路2aを流れる冷媒Wを冷却する装置である。気化式熱交換器1は、生鮮食品などを冷凍・冷蔵するための冷熱機器として構成されている。具体的には、図1に示すように、気化式熱交換器1は、水平方向に複数並んで配置される冷却フィン2と、送風ファン3と、保持材4と、冷却フィン2に水を供給する水供給部材5とを備えている。ここで、水平方向において冷却フィン2の並ぶ方向をX方向とし、水平方向においてX方向に直交する方向をY方向とする。また、X方向およびY方向に直交する方向をZ方向(上下方向)とする。なお、水供給部材5は、特許請求の範囲の「液体供給部材」の一例である。また、水は、特許請求の範囲の「液体」の一例である。
冷却フィン2は、アルミニウムなどの金属または樹脂から形成されている。また、冷却フィン2は、平板形状に形成されている。冷却フィン2は、X方向から視た際において矩形形状を有しており、Y方向に幅を有し、Y方向の幅よりも小さなX方向の厚みを有している。複数の冷却フィン2は、互いに対向するように複数(2枚)配置されている。複数の冷却フィン2は、互いに略平行になるように配置されている。また、複数の冷却フィン2は、それぞれ、X方向に一定の間隔を空けて配置されている。
送風ファン3は、複数の冷却フィン2の間に空気を送るように構成されている。
〈保持材〉
保持材4は、図2(A)に示すように、複数の冷却フィン2の各々に設けられ、水供給部材5から供給された水を保持する隙間6を形成している。ここで、保持材4は、冷却フィン2のX方向の各々の表面上に、Z1方向からZ2方向に亘って複数配置されている。つまり、保持材4は、冷却フィン2のX方向の各々の表面上に全体に亘って複数配置されている。気化式熱交換器1では、複数の冷却フィン2の各々に配置された複数の保持材4により形成された隙間6に生じる毛細管現象によって、水供給部材5から供給された水が複数の冷却フィン2の各々の表面上に保持される。このようにして、図2(B)に示すように、複数の冷却フィン2の各々の表面上に保水層7が形成される。ここで、保水層7の厚みは、保持材4の突出長さよりも小さくなっている。
第1実施形態の気化式熱交換器1は、図2に示すように、保持された水の吸水に起因する保水層7の膜厚変化を抑制可能なように構成されている。
具体的には、保持材4は、保持した水に起因する保持材4の変形を抑制可能な硬さの材質で形成されている。すなわち、保持材4は、水を保持する前と水を保持した後において、体積変化を略生じない材質で形成されている。具体的には、保持材4は、樹脂材(レーヨン、ナイロンおよびアクリルなどの樹脂)により形成された樹脂製繊維である。保持材4は、樹脂製繊維であるので、植物性繊維よりも吸水性が小さくなっている。このように、保持材4は、材質として吸水性を略有していないものが好適に用いられている。
また、保持材4は、保持した水に起因する保持材4の変形を抑制可能な突出長さを有している。すなわち、保持材4は、水を保持する前と水を保持した後において、突出長さの変化を略生じないように構成されている。具体的には、保持材4は、複数の冷却フィン2の各々の表面から対向する冷却フィン2に向かって突出する突出長さが約0.3[mm]以下の短繊維である。このように、保持材4は、突出長さを短くすることにより、多少水を吸収をしたとしても、体積変化の度合いを突出長さが約1.0[mm]程度の繊維よりも小さくすることが可能である。なお、保持材4の突出長さは、対向する冷却フィン2同士の間隔の約1/3以下の長さであることが好ましい。
保持材4は、保持した水に起因する保持材4の変形を抑制可能な構造で形成されている。すなわち、保持材4は、水を保持する前と水を保持した後において、形状変化が略生じない線状構造物11として形成されている。具体的には、複数の保持材4は、それぞれ、冷却フィン2の表面から対向する冷却フィン2に向かって直線状に起立しているのみで、隣り合う保持材4同士が絡み合っていない。これにより、隣り合う樹脂製の繊維である保持材4が絡み合わせたことにより形成される空間に水を保持したことに起因する保水層7の膨張を生じないようにすることが可能である。複数の保持材4は、冷却フィン2の表面上に、たとえば静電植毛により接合されることが好ましい。なお、複数の保持材4は、冷却フィン2の表面上に接着剤とともに吹き付けることにより接合されてもよい。
これらにより、気化式熱交換器1において、複数の冷却フィン2のうちの一方の冷却フィン2から突出した保持材4の突出先端と、一方の冷却フィン2に対向する他方の冷却フィン2から突出した保持材4の突出先端との間隔Mが、保水層7において水を保持する前後で略変化しないようにすることが可能である。この結果、一方の冷却フィン2の表面上の保水層7の水と他方の冷却フィン2の表面上の水との結合を抑制することが可能である。
また、一方の冷却フィン2と他方の冷却フィン2との間の一定間隔において、一方の冷却フィン2の保持材4の突出先端と他方の冷却フィン2の保持材4の突出先端との間には、保持材4の突出長さの1倍以上の間隔Mが形成されていることが好ましい。これにより、一方の冷却フィン2の表面上の保水層7の水と他方の冷却フィン2の表面上の水との結合をより抑制することが可能である。
また、保持材4の表面には、親水性処理が施されている、具体的には、保持材4の表面に、親水塗装、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理およびプラズマ処理などが施される。これにより、保持材4の表面が親水性を有するので、冷却フィン2の表面上の保水層7によってより多くの水を保持させることが可能である。
〈水供給部材〉
水供給部材5は、図1および図2(B)に示すように、複数の冷却フィン2の各々に連続的に水を供給するように構成されている。具体的には、水供給部材5は、Z2方向側に複数の孔(図示せず)が形成された管部を含んでいる。水供給部材5は、複数(5枚)の冷却フィン2に対して複数(2個)配置されている。複数の水供給部材5は、それぞれ、複数の冷却フィン2の各々のZ1方向側の端部に配置されている。なお、連続的に水を供給するとは、中断させることなく水を供給し続けることである。
水供給部材5は、図3に示すように、複数の冷却フィン2の各々の表面における水の蒸発量よりも、多量の水を複数の冷却フィン2の各々の表面に供給するように構成されている。具体的には、気化式熱交換器1は、保水層7内に保持されている水の量が一定量となるように、複数の水供給部材5により、複数の冷却フィン2の各々の表面に連続的に水を供給するように構成されている。この際、気化式熱交換器1では、保持材4の半分以上であり保持材4の突出先端未満の位置になるように、保水層7の厚みが保持されることが好ましい。なお、水供給部材5による水の供給量は、冷却フィン2における蒸発量の設計値の約1.4倍にすることが好ましい。
気化式熱交換器1では、図2に示すように、給水源(図示せず)から供給された水が、複数の水供給部材5のそれぞれの複数の孔から流出することにより、複数の冷却フィン2の各々に供給される。気化式熱交換器1では、複数の冷却フィン2に供給された水が、複数の冷却フィン2の各々の表面に複数の保持材4により形成された隙間6の毛細管現象により、複数の冷却フィン2の各々の表面上に広げられる。気化式熱交換器1では、複数の冷却フィン2の各々の表面上に広がった水が、Z2方向に流下していくのに伴い、複数の冷却フィン2の表面上の不純物が洗い流される。また、気化式熱交換器1では、複数の冷却フィン2同士の間を流れる風により、複数の冷却フィン2の各々の表面上に広げられた水が気化される。この際、複数の冷却フィン2の各々が気化熱により冷却される。これにより、冷却された冷却フィン2により、冷却フィン2内に形成された冷媒流路2aを流れる冷媒Wを冷却することが可能である。
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、上記のように、保持材4は、保持した水に起因する保持材4の変形を抑制可能な硬さを有する。これにより、複数の冷却フィン2の各々の表面に設けられた保持材4同士の間に形成される隙間6の大きさの変化が抑制されるので、複数の冷却フィン2の各々において保持した水同士が保持材4に起因して結合することを抑制することができる。この結果、冷却フィン2同士の間の空気の流れに生じる圧力損失の増大を抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、保持材4は、複数の冷却フィン2の各々の表面から対向する冷却フィン2に向かって突出し、硬さを有するとともに隙間6を有する複数の線状構造物11により構成されている。これにより、複数の冷却フィン2の各々において保持した水同士が保持材4により結合することを抑制するとともに、複数の冷却フィン2の各々の表面に水を保持する隙間6を有する保持材4を用いた構成を容易に形成することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、複数の冷却フィン2の各々の表面上に、互いの間に隙間6を形成し、複数の冷却フィン2のうち対向する冷却フィン2に向かって突出する突出長さを有する複数の短繊維を含む。これにより、保持材4が複数の短繊維であることにより、複数の保持材4を構成する繊維同士が絡み合いにくい構成であるので、複数の保持材4同士が絡み合うことにより水が保持されることを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、保持材4の表面には、親水性処理が施されている。これにより、複数の冷却フィン2の各々の表面上に水をより保持しやすくすることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、水供給部材5により、複数の冷却フィン2の各々に連続的に水を供給するように構成されている。これにより、複数の冷却フィン2の各々の表面が乾燥することを抑制することができるので、複数の冷却フィン2による冷却性能の低下を抑制することができる。また、水供給部材5により複数の冷却フィン2の各々に間欠的に水を供給するためのタイマまたはセンサが必要ないので、気化式熱交換器1の構成の複雑化を抑制することができる。また、水供給部材5により複数の冷却フィン2の各々に間欠的に水を供給する場合よりも、複数の冷却フィン2の各々の表面が乾燥することを抑制することができるので、複数の冷却フィン2の各々の表面上にスケールが生じることを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、水供給部材5により、複数の冷却フィン2の各々の表面における水の蒸発量よりも、多量の水を複数の冷却フィン2に供給するように構成されている。これにより、複数の冷却フィン2の表面上の不純物を洗い流しやすくすることができるので、冷却フィン2の経年劣化を抑制することができる。
[第2実施形態]
図4を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態とは保水層7の構成が異なる例について説明する。なお、図中において上記第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して図示する。
〈保持材〉
保持材204は、図4(A)および図4(B)に示すように、水を保持する前と水を保持した後において、体積変化を略生じない材質で形成されている。具体的には、保持材204は、樹脂材(レーヨン、ナイロンおよびアクリルなど)により形成された樹脂製ビーズである。保持材204は、材質として吸水性を略有していないものが好適に用いられている。なお、樹脂製ビーズは、特許請求の範囲の「粒状の粒子」の一例である。
また、保持材204は、保持した水に起因する保持材204の変形を抑制可能な硬さを有している。すなわち、保持材204は、水を保持する前と水を保持した後において、水が保持材204内に浸透しにくいので、形状の変化を略生じない粒状構造物212として構成されている。具体的には、保持材204は、約0.15[mm]以下の直径の硬質樹脂製ビーズである。これにより、保持材204の内部への水の浸透が抑制されているので、水を保持する前と水を保持した後において、形状の変化が抑制される。このような保持材204が、冷却フィン2の表面上に積層されている。
これにより、気化式熱交換器1において、複数の冷却フィン2のうちの一方の冷却フィン2に積層された保持材204の先端と、一方の冷却フィン2に対向する他方の冷却フィン2に積層された保持材204の先端との間隔Mが、保水層207において水を保持する前後で略変化しないようにすることが可能である。この結果、一方の冷却フィン2の表面上の保水層207の水と他方の冷却フィン2の表面上の水との結合を抑制することが可能である。
複数の冷却フィン2の表面上には、複数の保持材204のうちの隣接する保持材204同士の間に形成された隙間206に生じる毛細管現象によって、水供給部材5から供給された水が複数の冷却フィン2の各々の表面上に保持される。このようにして、図4(B)に示すように、複数の冷却フィン2の各々の表面上に保水層207が形成される。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、上記のように、保持材204は、複数の冷却フィン2の各々の表面上に、硬さを有するとともに、互いの間に隙間206を形成するように設けられた複数の球状の粒子を含む。これにより、複数の保持材204により形成される隙間206同士を接続する流路が滑らかに形成されるので、複数の冷却フィン2の表面上を水が広がる際の抵抗が大きくなることを抑制することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
[第3実施形態]
図5を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、上記第1実施形態とは保持材4の材質が異なる例について説明する。なお、図中において上記第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して図示する。
〈保持材〉
保持材304は、図5(A)および図5(B)に示すように、水を保持する前と水を保持した後において、体積変化を略生じない材質で形成されている。具体的には、保持材304は、金属(アルミニウム、ステンレスなど)により形成された金属製繊維である。保持材304は、材質として吸水性を略有していないものが好適に用いられている。なお、金属製繊維は、特許請求の範囲の「短繊維」の一例である。
また、保持材304は、保持した水に起因する保持材304の変形を抑制可能な硬さおよび突出長さを有している。すなわち、保持材304は、水を保持する前と水を保持した後において、水が保持材304内に浸透しにくいので、形状の変化を略生じない線状構造物313として構成されている。具体的には、保持材304は、約0.3[mm]以下の突出長さの金属製繊維である。
これにより、気化式熱交換器1において、複数の冷却フィン2のうちの一方の冷却フィン2に設けられた保持材304の突出先端と、一方の冷却フィン2に対向する他方の冷却フィン2に設けられた保持材304の突出先端との間隔Mが、保水層7において水を保持する前後で略変化しないようにすることが可能である。この結果、一方の冷却フィン2の表面上の保水層7の水と他方の冷却フィン2の表面上の水との結合を抑制することが可能である。
複数の冷却フィン2の表面上には、複数の保持材304の間に形成された隙間306に生じる毛細管現象によって、水供給部材5から供給された水が複数の冷却フィン2の各々の表面上に保持される。このようにして、図5(B)に示すように、複数の冷却フィン2の各々の表面上に保水層307が形成される。なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第3実施形態では、上記のように、保持材304は、複数の冷却フィン2の各々の表面上に、互いの間に隙間306を形成し、複数の冷却フィン2のうち対向する冷却フィン2に向かって突出するとともに突出長さおよび硬さを有する複数の金属製繊維を含む。これにより、保持材304が複数の金属製繊維であることにより、複数の保持材304同士が絡み合いにくくかつ樹脂よりも硬さを有しているので、複数の保持材304により水を保持することをより抑制することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
[第4実施形態]
図6を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、上記第1実施形態とは保持材4の構成が異なる例について説明する。なお、図中において上記第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して図示する。
〈保持材〉
保持材404は、図6(A)および図6(B)に示すように、水を保持する前と水を保持した後において、体積変化を略生じない材質で形成されている。具体的には、保持材404は、隙間としての複数の孔部406が形成された金属製板(アルミニウム板、ステンレス板など)である。保持材404は、材質として吸水性を略有していないものが好適に用いられている。なお、金属板は、特許請求の範囲の「多孔質体」の一例である。
また、保持材404は、保持した水に起因する保持材404の変形を抑制可能な硬さを有している。すなわち、保持材404は、水を保持する前と水を保持した後において、水が保持材404内に浸透しにくいので、形状の変化を略生じない多孔質体状構造物414として構成されている。具体的には、保持材404は、約0.15[mm]以下の直径の孔部406が形成された金属製板である。また、保持材404は、X方向の長さが約0.3[mm]以下の金属製板である。このような保持材404が、冷却フィン2の表面上に積層されている。
これにより、気化式熱交換器1において、複数の冷却フィン2のうちの一方の冷却フィン2に積層された保持材404の先端と、一方の冷却フィン2に対向する他方の冷却フィン2に積層された保持材404の先端との間隔Mが、保水層7において水を保持する前後で略変化しないようにすることが可能である。この結果、一方の冷却フィン2の表面上の保水層7の水と他方の冷却フィン2の表面上の水との結合を抑制することが可能である。
複数の冷却フィン2の表面上には、保持材404に形成された隙間6としての孔部406に生じる毛細管現象によって、水供給部材5から供給された水が複数の冷却フィン2の各々の表面上に保持される。このようにして、図6(B)に示すように、複数の冷却フィン2の各々の表面上に保水層407が形成される。なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
(第4実施形態の効果)
第4実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第4実施形態では、上記のように、保持材404は、隙間6としての複数の孔部406を有するとともに硬さを有する多孔質体を含む。これにより、複数の孔部406内に水を保持することができるので、保持材404同士の間の隙間に水を保持する場合よりも、複数の冷却フィン2の表面上に持続して水を保持することができる。なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1~第4実施形態では、水供給部材5は、Z2方向側に複数の孔(図示せず)が形成された管部を含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図7(A)に示す変形例のように、撥水性を有していない棒を冷却フィンのZ1方向側の端部に配置し、給水源からの水を撥水性を有していない棒505に伝わせることにより、複数の冷却フィンの表面上に水を供給してもよい。また、図7(B)に示す変形例のように、多孔板605または多孔シートを冷却フィンのZ1方向側の端部に配置し、給水源からの水を多孔板605または多孔シートに供給することにより、複数の冷却フィンの表面上に水を供給してもよい。また、図7(C)に示す変形例のように、噴射器705を冷却フィンのZ1方向側の端部に配置し、噴射器705により複数の冷却フィンの表面上に水を供給してもよい。
また、上記第1~第4実施形態では、水供給部材5は、複数の冷却フィン2の各々に連続的に水を供給するように構成されているが、本発明はこれに限られない。本発明では、水供給部材は、複数の冷却フィンの各々に間欠的に水を供給するように構成されてもよい。
また、上記第1~第4実施形態では、複数の冷却フィン2は、2枚配置されているが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の冷却フィンは、3枚以上であってもよい。
また、上記第1~第4実施形態では、水供給部材5は、複数の冷却フィン2に対して複数(2個)配置されているが、本発明はこれに限られない。本発明では、水供給部材は、1個または3個以上であってもよい。
また、上記第1~第4実施形態では、複数の水供給部材5は、それぞれ、複数の冷却フィン2の各々のZ1方向側の端部に配置されているが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の水供給部材は、複数の冷却フィンの各々のY1方向側端部またはY2方向側端部に配置されてもよい。
また、上記第1~第4実施形態では、水供給部材5による水の供給量は、冷却フィン2における蒸発量の設計値の約1.4倍にする例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、水供給部材による水の供給量は、冷却フィンにおける蒸発量の設計値の約1.1~3.0倍であってもよい。
また、第1~第4実施形態では、気化式熱交換器1が、冷却フィン2の表面上に保持された水を気化させることにより生じる気化熱によって冷却フィン2を冷却し、冷却フィン2内に形成された冷媒流路2aを流れる冷媒Wを冷却する装置である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図8に示す第2変形例のように、気化式熱交換器1Aが、冷却フィン2Aの表面上に保持された水を気化させることにより生じる気化熱によって冷却フィン2Aを冷却し、冷却フィン2Aを貫通する冷媒管路20A内を流れる冷媒Wを冷却する装置であってもよい。また、図9に示す第3変形例のように、気化式熱交換器1Bが、冷却フィン2Bの表面上に保持された水を気化させることにより生じる気化熱によって冷却フィン2Bを冷却し、冷却された冷却フィン2Bにより周囲の空気を冷却する装置であってもよい。また、図10に示す第4変形例のように、気化式熱交換器1Cは、X2側の表面に複数の保持材4(図示せず)が設けられた第1冷却フィン21Cと、X1側の表面に複数の保持材4が設けられた第2冷却フィン22Cとを備えていてもよい。そして、気化式熱交換器1Cでは、第1冷却フィン21Cと第2冷却フィン22Cとが交互に配置されている。この場合には、気化式熱交換器1Cでは、第1冷却フィン21Cおよび第2冷却フィン22Cの各々の保持材4により保持された水を気化させることにより生じる気化熱によって、第1冷却フィン21Cおよび第2冷却フィン22Cの各々が冷却され、第1冷却フィン21Cの保持材4が設けられていない表面と第2冷却フィン22Cの保持材4が設けられていない表面との間を通過する空気が冷却される。
1、1A、1B、1C 気化式熱交換器
2、2A、2B 冷却フィン
4、204、304、404 保持材
5 水供給部材(液体供給部材)
6、206、306 隙間
11、313 線状構造物
21C 第1冷却フィン
22C 第2冷却フィン
212 粒状構造物
406 孔部
414 多孔質体状構造物

Claims (5)

  1. 互いに対向するように配置された平板形状の複数の冷却フィンと、
    前記複数の冷却フィンの各々に液体を供給する液体供給部材と、
    前記複数の冷却フィンの各々の表面に設けられ、前記液体供給部材から供給された液体を保持する隙間を有する保持材とを備え、
    前記保持材は、保持した液体に起因する前記保持材の変形を抑制可能な硬さを有し、
    前記複数の冷却フィンの各々の内部には、前記複数の冷却フィンの並ぶ方向に直交する方向に延びる冷媒流路が形成され
    前記保持材は、前記複数の冷却フィンの並ぶ方向における前記冷却フィンの各々の表面の全体にわたって配置された複数の短繊維を含み、前記複数の短繊維は、互いに絡み合わないように、前記冷却フィンの各々の表面から突出している、気化式熱交換器。
  2. 前記保持材は、前記複数の冷却フィンの各々の表面上に、互いの間に前記隙間を形成し、前記複数の冷却フィンのうち対向する前記冷却フィンに向かって突出し、前記硬さを有するとともに、保持した液体に起因する前記保持材の膨張を抑制可能な突出長さを有する前記複数の短繊維を含む、請求項に記載の気化式熱交換器。
  3. 前記保持材の表面には、親水性処理が施されている、請求項1または2に記載の気化式熱交換器。
  4. 前記液体供給部材により、前記複数の冷却フィンの各々に連続的に液体を供給するように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の気化式熱交換器。
  5. 前記液体供給部材により、前記複数の冷却フィンの各々の表面における液体の蒸発量よりも、多量の液体を前記複数の冷却フィンに供給するように構成されている、請求項に記載の気化式熱交換器。
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