以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るインク供給装置の概略構成図である。なお、以下の説明における上下方向は鉛直方向であり、図1における紙面の上下を上下方向とする。
図1に示すインク供給装置(液体供給装置に相当)1は、インクジェット印刷装置に設けられ、インクジェット印刷装置のバッファタンク(供給先に相当)100にインク(液体に相当)を供給するものである。
バッファタンク100は、インクジェット印刷装置のインクジェットヘッドへインクを供給するためのインク供給機構に設けられたものであり、インクを貯留する。バッファタンク100内のインクは、インク供給機構に設けられたインクタンク(図示せず)へ送液される。
バッファタンク100には、バッファタンク液面センサ101が設けられている。バッファタンク液面センサ101は、バッファタンク100内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。バッファタンク液面センサ101は、バッファタンク100内の液面高さが基準高さ以上である場合、「オン」を示す信号を出力し、液面高さが基準高さ未満である場合、「オフ」を示す信号を出力する。
インク供給装置1は、インクカートリッジタンク(容器に相当)2と、キャップ3と、トレイ4と、トレイ開閉センサ5と、インクチューブ(チューブに相当)6と、ポンプ7と、圧力検出機構(圧力検出部に相当)8と、制御部(判定部に相当)9とを備える。
インクカートリッジタンク2は、バッファタンク100に供給するインクを収納する容器である。インクカートリッジタンク2は、交換可能なものである。インクカートリッジタンク2は、トレイ4に積載されている。
キャップ3は、インクカートリッジタンク2の上部の天板2aに形成された開口部(図示せず)を塞ぐとともに、インクチューブ6および後述するエアチューブ11をインクカートリッジタンク2に上側から挿入した状態で保持するためのものである。キャップ3は、インクカートリッジタンク2に着脱可能に構成されている。
トレイ4は、インクカートリッジタンク2を支持するものである。トレイ4は、インクジェット印刷装置の筐体110内の収納位置から筐体110の外部へ引き出し可能である。トレイ4の収納位置は、図1におけるトレイ4の位置である。
トレイ開閉センサ5は、トレイ4の開閉状態を検出する。ここで、トレイ4が収納位置にある状態が閉状態、トレイ4が収納位置から引き出された状態が開状態である。トレイ開閉センサ5は、トレイ4が閉状態である場合、「オン」を示す信号を出力し、トレイ4が開状態である場合、「オフ」を示す信号を出力する。
インクチューブ6は、インクカートリッジタンク2とバッファタンク100とを接続し、インクカートリッジタンク2からバッファタンク100へのインクの供給経路を形成する。インクチューブ6は、キャップ3の貫通穴(図示せず)に挿通され、かつキャップ3に固定されている。キャップ3がインクカートリッジタンク2に対して着脱可能であるので、インクチューブ6は、インクカートリッジタンク2に挿抜可能である。
キャップ3がインクカートリッジタンク2に装着された状態において、インクチューブ6は、一方端6aの開口部を下向きにして、一方端6a側がインクカートリッジタンク2に挿入されている。この状態において、インクチューブ6の一方端6aは、インクカートリッジタンク2の底板2bの上側近傍の所定高さ位置に配置されている。インクチューブ6の他方端6bは、バッファタンク100に接続されている。
ポンプ7は、インクチューブ6を介してインクカートリッジタンク2からインクを吸引してバッファタンク100へ送液する。ポンプ7は、キャップ3とバッファタンク100との間において、インクチューブ6に設置されている。
圧力検出機構8は、インクカートリッジタンク2に挿入されたインクチューブ6のインクカートリッジタンク2側の端である一方端6aの高さ位置における、インクカートリッジタンク2内のインクの液面高さに応じた圧力値を検出する。すなわち、圧力検出機構8は、キャップ3がインクカートリッジタンク2に装着された状態でのインクチューブ6の一方端6aの高さ位置における、一方端6aと液面との高低差Hに応じた圧力値を検出する。
圧力検出機構8は、エアチューブ11と、大気開放チューブ12と、弁13と、圧力センサ14とを備える。
エアチューブ11は、インクチューブ6の一方端6aの高さ位置における圧力検出のための経路を形成する。エアチューブ11は、キャップ3の貫通穴(図示せず)に挿通され、かつキャップ3に固定されている。このため、エアチューブ11は、インクチューブ6と同様に、インクカートリッジタンク2に挿抜可能である。
キャップ3がインクカートリッジタンク2に装着された状態において、エアチューブ11は、一方端11aの開口部を下向きにして、一方端11a側がインクカートリッジタンク2に挿入されている。この状態において、エアチューブ11の一方端11aは、インクチューブ6の一方端6aと同じ高さ位置にある。エアチューブ11内は空気で満たされている。エアチューブ11の他方端11bは、圧力センサ14に接続されている。
大気開放チューブ12は、圧力センサ14の調整のために、圧力センサ14を大気開放するためのものである。大気開放チューブ12の一端は大気に通じ、大気開放チューブ12の他端は弁13を介してエアチューブ11に接続されている。
弁13は、キャップ3と圧力センサ14との間において、エアチューブ11に設置されている。弁13は、エアチューブ11の弁13より他方端11b側の部分の連通先を、エアチューブ11の弁13より一方端11a側の部分と大気開放チューブ12との間で選択的に切り替える。圧力センサ14の調整時以外は、弁13は、エアチューブ11の一方端11a側の部分と他方端11b側の部分とを連通させる設定となっている。これにより、圧力センサ14が、エアチューブ11の一方端11aの高さ位置における圧力値を検出可能になっている。
圧力センサ14は、エアチューブ11の一方端11aの高さ位置における圧力値を検出する。ここで、前述のように、エアチューブ11の一方端11aは、インクチューブ6の一方端6aと同じ高さ位置にある。このため、圧力センサ14は、エアチューブ11の一方端11aの高さ位置における圧力値を検出することで、インクチューブ6の一方端6aの高さ位置における圧力値を検出しているといえる。圧力センサ14は、エアチューブ11の他方端11bに接続されている。
制御部9は、インク供給装置1全体の動作を制御する。制御部9は、インク供給装置1が設けられたインクジェット印刷装置全体の動作を制御するものであってもよい。制御部9は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
具体的には、制御部9は、バッファタンク液面センサ101がオフの場合、ポンプ7を駆動させて、インクカートリッジタンク2からバッファタンク100へインクを供給するよう制御する。ここで、後述するように、トレイ4が開状態の場合、制御部9は、バッファタンク液面センサ101がオフになったとしても、バッファタンク100へインクを供給するためのポンプ7の駆動は行わない。
また、制御部9は、圧力検出機構8が検出する圧力値に基づき、インクカートリッジタンク2内のインクの有無を判定する。具体的には、制御部9は、圧力検出機構8が検出する圧力値が大気圧値である場合、インクカートリッジタンク2内にインク「無」と判定する。ここで、大気圧値は、インクチューブ6(の一方端6a)がインクから露出していることを示す値であり、大気圧を示す値である。圧力検出機構8が検出する圧力値が大気圧値より大きい場合は、制御部9は、インクカートリッジタンク2内にインク「有」と判定する。
制御部9は、トレイ4が開状態であるためバッファタンク100へのインク供給のためのポンプ7の駆動は行われない期間において、インクカートリッジタンク2内のインクの有無の判定が、「有」から「無」へ遷移した場合、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定する。換言すれば、制御部9は、トレイ4が開状態の期間において、圧力検出機構8が検出する圧力値が、大気圧値より大きい値から大気圧値へ遷移した場合、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定する。
ここで、「インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられる」とは、一方端6aがインクに浸かった状態のインクチューブ6が、一方端6aがインクから露出するまで持ち上げられることをいう。
インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられるのは、インク「有」の状態のインクカートリッジタンク2からキャップ3が取り外され、インクチューブ6およびエアチューブ11がインクカートリッジタンク2から引き抜かれるときである。
制御部9は、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定すると、インクの飛散を防止するために、ポンプ7を一時的に駆動させてインクを吸引させる。
次に、インク供給装置1のインク供給時の動作について説明する。
インク供給装置1は、インク供給装置1が搭載されたインクジェット印刷装置の印刷動作中において、印刷動作によるインク消費に応じてインクが減少するバッファタンク100にインクを供給する動作を行う。
インクカートリッジタンク2からバッファタンク100へのインク供給は、ポンプ7の駆動により行われる。バッファタンク100へのインク供給のためのポンプ7の駆動条件を図2に示す。
図2に示すように、トレイ開閉センサ5がオンの状態(トレイ4が閉状態)において、バッファタンク液面センサ101がオフの場合、制御部9は、ポンプ7をオンとする。これにより、インクカートリッジタンク2内のインクがポンプ7により吸引され、バッファタンク100へ送液される。バッファタンク液面センサ101がオンになると、制御部9は、ポンプ7をオフとする。
トレイ開閉センサ5がオフの状態(トレイ4が開状態)では、バッファタンク液面センサ101がオンでもオフでも、ポンプ7はオフである。
すなわち、バッファタンク100へのインク供給のためにポンプ7が駆動されるのは、トレイ4が閉状態、かつバッファタンク液面センサ101がオフの場合のみである。
ここで、トレイ4が引き出されるのは、主に、インクカートリッジタンク2が交換される場合である。インク「無」になったインクカートリッジタンク2の交換のためにトレイ4が引き出された状態でポンプ7が駆動されると、空気がバッファタンク100へ送られてバッファタンク100内のインクに空気が混入するおそれがある。
また、後述するように、インク「有」の状態でインクカートリッジタンク2の交換が行われることもある。インク「有」のインクカートリッジタンク2の交換のためにトレイ4が引き出された場合は、インクカートリッジタンク2からキャップ3が取り外され、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられた後にポンプ7が駆動されると、空気がバッファタンク100へ送られてバッファタンク100内のインクに空気が混入するおそれがある。
上述のような不具合を予防するために、図2のように、トレイ4が開状態では、バッファタンク100へのインク供給のためのポンプ7の駆動は行わない制御としている。
次に、インクカートリッジタンク2の交換について説明する。
バッファタンク100へのインク供給によりインクカートリッジタンク2内のインク減少し、インクがほぼなくなった状態になると、インクチューブ6がインクから露出した状態になる。この状態では、圧力検出機構8が検出する圧力値が大気圧値になる。インクチューブ6の一方端6aがインクに浸かっている状態では、圧力検出機構8が検出する圧力値は、大気圧値より大きい。
そこで、前述のように、制御部9は、圧力検出機構8が検出する圧力値に基づき、インクカートリッジタンク2内のインクの有無を判定する。具体的には、制御部9は、圧力検出機構8が検出する圧力値が大気圧値である場合、インクカートリッジタンク2内にインク「無」と判定する。圧力検出機構8が検出する圧力値が大気圧値より大きい場合は、制御部9は、インクカートリッジタンク2内にインク「有」と判定する。
トレイ4が閉状態において、インク「有」からインク「無」へ遷移した場合、バッファタンク100へのインク供給により、インクカートリッジタンク2内のインクがなくなったと判断できる。この場合、インクカートリッジタンク2の交換が必要なため、制御部9は、インクカートリッジタンク交換要求を行う。具体的には、制御部9は、インクカートリッジタンク2の交換をユーザに要求するメッセージを、図示しない操作パネルの表示部に表示させる。
上記のメッセージを確認したユーザが、トレイ4を引き出し、インクカートリッジタンク2からキャップ3を取り外してインクチューブ6およびエアチューブ11を引き抜く。そして、ユーザが、新たなインクカートリッジタンク2にインクチューブ6およびエアチューブ11を挿入してキャップ3を取り付ける。このようにして、インクカートリッジタンク2の交換が行われる。
新たなインクカートリッジタンク2にインクチューブ6およびエアチューブ11が挿入されると、インク「無」からインク「有」へ遷移する。これにより、制御部9は、インクカートリッジタンク2にインクチューブ6およびエアチューブ11が挿入されたことを確認できる。
インク「無」からインク「有」へ遷移しないまま、トレイ4が開状態から閉状態へ遷移した場合、制御部9は、インクチューブ6およびエアチューブ11の挿入が行われていないと判断できる。この場合、制御部9は、インクチューブ6およびエアチューブ11の挿入が行われていないことをユーザに通知するメッセージを、操作パネルの表示部に表示させる。
インクカートリッジタンク2の交換は、インク「無」となる前に行われることもある。例えば、印刷ジョブを実行する際、インクカートリッジタンク2のインク残量が、当該印刷ジョブの完了には不足する場合に、インク「有」の状態でインクカートリッジタンク2の交換が行われることがある。
ここで、インクカートリッジタンク2のインク残量が多いほど、圧力検出機構8が検出する圧力値が大きい。このため、インクカートリッジタンク2のインク残量は、圧力検出機構8が検出する圧力値から算出可能である。
インク「有」の状態でインクカートリッジタンク2の交換が行われる場合、インク「有」の状態のインクカートリッジタンク2からキャップ3が取り外され、インクチューブ6およびエアチューブ11がインクカートリッジタンク2から引き抜かれる。
この際、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられる。インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたとき、インクチューブ6内には一方端6aまでインクがある。このため、そのままインクチューブ6がインクカートリッジタンク2から引き抜かれると、インクチューブ6からインクが垂れて周囲に飛散するおそれがある。
そこで、制御部9は、インク「有」の状態でインクカートリッジタンク2の交換が行われる場合において、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられると、図3に示すように、ポンプ7を一時的に駆動させてインクを吸引させる。この際、制御部9は、バッファタンク100へ空気が送られることがないように予め設定された規定時間だけポンプ7を駆動させる。これにより、バッファタンク100内のインクへの空気の混入を抑えつつ、インクチューブ6の引き抜き時のインクの飛散が防止される。
このインクチューブ6の引き抜き時のインクの飛散防止のためのポンプ7の駆動条件を図4に示す。
図4に示すように、トレイ開閉センサ5がオフの状態(トレイ4が開状態)で、インクカートリッジタンク2内のインクの有無の判定が「有」から「無」へ遷移すると、制御部9は、ポンプ7を一時的に駆動させる。
ここで、上述のように、インクチューブ6の引き抜き時のインクの飛散防止のためのポンプ7の駆動が行われるのは、インクカートリッジタンク2の交換時である。したがって、この際、トレイ4は開状態である。
また、上述のように、インクチューブ6の引き抜き時のインクの飛散防止のためのポンプ7の駆動が行われるのは、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたときである。この際、圧力検出機構8が検出する圧力値が、大気圧値より大きい値から大気圧値へ遷移する。すなわち、制御部9によるインクカートリッジタンク2内のインクの有無の判定は、「有」から「無」へ遷移する。
前述のように、本実施形態では、トレイ4が開状態では、バッファタンク100へのインク供給のためのポンプ7の駆動は行われない。このため、トレイ4が開状態では、バッファタンク100へのインク供給によるインクカートリッジタンク2内のインクの減少によりインク「有」からインク「無」へ遷移することはない。
このことから、トレイ4が開状態において、インク「有」からインク「無」へ遷移した場合、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定できる。したがって、トレイ4が開状態において、インク「有」からインク「無」へ遷移した場合、制御部9は、図4に示すように、インクの飛散防止のためにポンプ7を駆動させる。
トレイ4が開状態で、インク「無」からインク「有」へ遷移するのは、前述のように、新たなインクカートリッジタンク2にインクチューブ6およびエアチューブ11が挿入されてインクカートリッジタンク2の交換が完了したときである。したがって、この場合、図4に示すように、インクの飛散防止のためのポンプ7の駆動は行われない。
トレイ4が閉状態で、インク「有」からインク「無」へ遷移するのは、前述のように、バッファタンク100へのインク供給によりインクカートリッジタンク2内のインクがなくなった場合である。したがって、この場合、図4に示すように、インクの飛散防止のためのポンプ7の駆動は行われない。
トレイ4が開状態で、インク「無」からインク「有」へ遷移する状況は発生しない。また、インクの有無の状態遷移がない場合、インクチューブ6のインクからの引き上げはないため、図4に示すように、トレイ4の開閉状態およびインクの有無に関わらず、インクの飛散防止のためのポンプ7の駆動は行われない。
次に、第1実施形態における上述したインクチューブ6の引き抜き時のインクの飛散防止のためのポンプ7の駆動を行う制御の手順を、図5のフローチャートを参照して説明する。
図5のステップS1において、制御部9は、インクカートリッジタンク2内のインクの有無の判定が「有」から「無」へ遷移したか否かを判断する。インクの有無の判定が「有」から「無」へ遷移していないと判断した場合(ステップS1:NO)、制御部9は、ステップS1を繰り返す。
インクの有無の判定が「有」から「無」へ遷移したと判断した場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、制御部9は、トレイ4が開状態であるか否かを判断する。
トレイ4が開状態であると判断した場合(ステップS2:YES)、ステップS3において、制御部9は、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定する。
次いで、ステップS4において、制御部9は、ポンプ7を規定時間だけ駆動させる。これにより、一連の処理が終了となる。
ステップS2において、トレイ4が閉状態であると判断した場合(ステップS2:NO)、ステップS5において、制御部9は、前述したインクカートリッジタンク交換要求を行う。これにより、一連の処理が終了となる。
以上説明したように、第1実施形態のインク供給装置1では、制御部9は、インク供給のためのポンプ7の駆動は行われないトレイ4が開状態の期間において、圧力検出機構8が検出する圧力値が大気圧値より大きい値から大気圧値へ遷移した場合、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定する。
これにより、圧力検出機構8が検出する圧力値から、インク供給によりインクカートリッジタンク2内のインクがなくなったこととは区別して、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたことが判定される。したがって、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたことを検出できる。
また、インク供給装置1では、制御部9は、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定すると、ポンプ7を駆動させる。これにより、インクチューブ6内に残存したインクがポンプ7により吸引される。この結果、インクチューブ6からインクが垂れて周囲に飛散することを防止できる。
[第2実施形態]
次に、上述した第1実施形態のインクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたことを判定する処理を変更した第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態では、インク供給装置1は、トレイ開閉センサ5を省略した構成であってもよい。
図6は、第2実施形態におけるバッファタンク100へのインク供給のためのポンプ7の駆動条件を示す図である。
図2に示すように、第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、トレイ4の開閉状態に関わらず、制御部9は、バッファタンク液面センサ101がオンの場合はポンプ7をオフとし、バッファタンク液面センサ101がオフの場合はポンプ7をオンとする。
このため、第2実施形態では、トレイ4が開状態であっても、インク供給のためのポンプ7の駆動が行われることがある。すなわち、トレイ4が開状態であっても、インク供給によるインクの減少により、インク「有」からインク「無」への遷移が生じることがある。
ここで、インク「有」からインク「無」への遷移が、インク供給によるインクの減少による遷移である場合と、インクチューブ6がインクから引き上げられたことによる遷移である場合とでは、圧力検出機構8が検出する圧力値の遷移速度(変化率)が異なる。
具体的には、図7に示すように、インク「有」からインク「無」への遷移が、インク供給によるインクの減少による遷移である場合よりも、インクチューブ6がインクから引き上げられたことによる遷移である場合の方が、圧力値の遷移速度が大きい。
そこで、制御部9は、圧力検出機構8が検出する圧力値が大気圧値より大きい値から大気圧値へ遷移し、この遷移時の圧力値の変化率が所定の閾値以上である場合、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定する。ここで、圧力値の変化率の閾値は、圧力検出機構8が検出する圧力値の大気圧値より大きい値から大気圧値への遷移が、インクチューブ6がインクから引き上げられたことによる遷移であるか否かを判定するための閾値として、予め実験等に基づき設定されたものである。
ところで、第2実施形態では、前述のように、トレイ4が開状態であっても、インク供給のためのポンプ7の駆動が行われることがある。このため、インク供給のためのポンプ7の駆動中に、インクカートリッジタンク2からキャップ3が取り外され、インクチューブ6およびエアチューブ11がインクカートリッジタンク2から引き抜かれることがある。すなわち、インク供給のためのポンプ7の駆動中に、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられる可能性がある。
インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられた時点においてポンプ7が駆動中であれば、そのままポンプ7の駆動を継続させれば、インクチューブ6からインクが垂れて周囲に飛散することは抑えられる。ただし、空気がバッファタンク100へ送られてバッファタンク100内のインクに空気が混入するおそれがある。
そこで、制御部9は、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定した時点においてポンプ7が駆動中である場合、バッファタンク100内のインクに空気が混入しないように、規定時間後にポンプ7を停止させる。
インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定した時点においてポンプ7が駆動中ではない場合、制御部9は、インクの飛散を防止するために、ポンプ7を駆動させてインクを吸引させる。
このインクチューブ6の引き抜き時のインクの飛散防止のためのポンプ7の駆動条件を図8に示す。
図8に示すように、インクカートリッジタンク2内のインクの有無の判定が「有」から「無」へ遷移し、この遷移時における圧力検出機構8が検出する圧力値の遷移速度が高速である場合、制御部9は、ポンプ7を一時的に(規定時間だけ)駆動させる。
ただし、インク「有」からインク「無」へ遷移した時点(インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定した時点)において、ポンプ7が駆動中である場合は、制御部9は、前述のように、ポンプ7の駆動を継続し、規定時間後にポンプ7を停止させる。
ここで、圧力検出機構8が検出する圧力値の大気圧値より大きい値から大気圧値への遷移時の変化率が閾値以上の場合、遷移速度が高速である。遷移時の圧力値の変化率が閾値未満の場合、遷移速度は通常速度である。
インク「有」からインク「無」へ遷移し、この遷移時における圧力検出機構8が検出する圧力値の遷移速度が通常速度であるのは、インク供給によりインクカートリッジタンク2内のインクがなくなった場合である。したがって、この場合、図8に示すように、インクの飛散防止のためのポンプ7の駆動は行われない。なお、この場合、制御部9は、前述したインクカートリッジタンク交換要求を行う。
インク「無」からインク「有」へ遷移し、この遷移時における圧力検出機構8が検出する圧力値の遷移速度が高速であるのは、新たなインクカートリッジタンク2にインクチューブ6およびエアチューブ11が挿入されてインクカートリッジタンク2の交換が完了したときである。したがって、この場合、図8に示すように、インクの飛散防止のためのポンプ7の駆動は行われない。
インク「無」からインク「有」へ遷移し、この遷移時における圧力検出機構8が検出する圧力値の遷移速度が通常速度である状況は発生しない。また、インクの有無の状態遷移がない場合、インクチューブ6のインクからの引き上げはないため、図8に示すように、インクの飛散防止のためのポンプ7の駆動は行われない。
次に、第2実施形態における上述したインクチューブ6の引き抜き時のインクの飛散防止のためのポンプ7の駆動を行う制御の手順を、図9のフローチャートを参照して説明する。
図9のステップS11の処理は、前述した図5のステップS1の処理と同様である。
インクの有無の判定が「有」から「無」へ遷移したと判断した場合(ステップS11:YES)、ステップS12において、制御部9は、遷移時における圧力検出機構8が検出する圧力値の遷移速度が高速であるか否かを判断する。
遷移速度が高速であると判断した場合(ステップS12:YES)、ステップS13において、制御部9は、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定する。
次いで、ステップS14において、制御部9は、インクチューブ6がインクから引き上げられたと判定した時点において、ポンプ7が駆動中であるか否かを判断する。
ポンプ7が駆動中であると判断した場合(ステップS14:YES)、ステップS15において、制御部9は、インクチューブ6がインクから引き上げられたと判定した時点から規定時間後にポンプ7を停止させる。これにより、一連の処理が終了となる。
ステップS14において、ポンプ7が駆動中ではないと判断した場合(ステップS14:NO)、ステップS16において、制御部9は、ポンプ7を規定時間だけ駆動させる。これにより、一連の処理が終了となる。
ステップS12において、遷移速度が通常速度であると判断した場合(ステップS12:NO)、ステップS17において、制御部9は、前述したインクカートリッジタンク交換要求を行う。これにより、一連の処理が終了となる。
以上説明したように、第2実施形態では、制御部9は、圧力検出機構8が検出する圧力値が大気圧値より大きい値から大気圧値へ遷移し、この遷移時の圧力値の変化率が閾値以上である場合、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定する。
これにより、第1実施形態と同様に、圧力検出機構8が検出する圧力値から、インク供給によりインクカートリッジタンク2内のインクがなくなったこととは区別して、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたことが判定される。したがって、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたことを検出できる。
また、第2実施形態では、制御部9は、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定した時点においてポンプ7が駆動中ではない場合、ポンプ7を駆動させる。これにより、第1実施形態と同様に、インクチューブ6からインクが垂れて周囲に飛散することを防止できる。
[その他の実施形態]
上述のように、本発明は第1および第2実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
上述した第1実施形態では、インク供給のためのポンプ7の駆動は行われないトレイ4が開状態の期間において、圧力検出機構8が検出する圧力値が大気圧値より大きい値から大気圧値へ遷移した場合、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定した。
しかし、第1実施形態におけるトレイ4が開状態の期間のような、インク供給のためのポンプ7の駆動が行われないように設定された期間に限らず、インクの供給のためのポンプ7の駆動が行われていない期間において、圧力検出機構8が検出する圧力値が大気圧値より大きい値から大気圧値へ遷移した場合に、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定するようにすればよい。
例えば、第2実施形態のような、トレイ4の開閉状態に関係なくインク供給のためのポンプ7の駆動制御が行われる構成において、インクの供給のためのポンプ7の駆動が行われていない状態で、圧力検出機構8が検出する圧力値が大気圧値より大きい値から大気圧値へ遷移した場合に、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定するようにしてもよい。このようにしても、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたことを検出できる。
また、インク以外の液体を供給する装置にも本発明は適用可能である。
上述した第1実施形態では、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定すると、バッファタンク100へ空気が送られることがないように設定された規定時間だけポンプ7を駆動させた。また、第2実施形態では、インクチューブ6がインクカートリッジタンク2内のインクから引き上げられたと判定した時点においてポンプ7が駆動中ではない場合、ポンプ7を規定時間だけ駆動させた。しかし、液体の供給先に空気が送られることが許容される装置であれば、チューブが容器内の液体から引き上げられたと判定した場合のポンプの駆動時間は、供給先へ空気が送られることがないように設定された時間に限らない。チューブからの液体の垂れが防止できるようにポンプを駆動させるものであればよい。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
(付記1)
液体を収納する容器に挿入され、前記容器と液体の供給先とを接続するチューブと、
前記チューブを介して前記容器から液体を吸引して前記供給先へ供給するポンプと、
前記容器に挿入された前記チューブの端の高さ位置における、前記容器内の液面高さに応じた圧力値を検出する圧力検出部と、
前記供給先への液体の供給のための前記ポンプの駆動が行われていない期間において、前記圧力検出部が検出する圧力値が大気圧値より大きい値から大気圧値へ遷移した場合、前記チューブが前記容器内の液体から引き上げられたと判定する判定部と
を備えることを特徴とする液体供給装置。
(付記2)
前記容器が積載され、収納位置から引き出し可能なトレイをさらに備え、
前記ポンプは、前記トレイが前記収納位置から引き出されている状態では、前記供給先への液体の供給のための駆動は行われないものであり、
前記判定部は、前記トレイが前記収納位置から引き出されている状態において、前記圧力検出部が検出する圧力値が大気圧値より大きい値から大気圧値へ遷移した場合、前記チューブが前記容器内の液体から引き上げられたと判定することを特徴とする付記1に記載の液体供給装置。
(付記3)
前記判定部は、前記チューブが前記容器内の液体から引き上げられたと判定すると、前記ポンプを駆動させることを特徴とする付記1または2に記載の液体供給装置。
(付記4)
液体を収納する容器に挿入され、前記容器と液体の供給先とを接続するチューブと、
前記容器に挿入された前記チューブの端の高さ位置における、前記容器内の液面高さに応じた圧力値を検出する圧力検出部と、
前記圧力検出部が検出する圧力値が大気圧値より大きい値から大気圧値へ遷移し、この遷移時の圧力値の変化率が閾値以上である場合、前記チューブが前記容器内の液体から引き上げられたと判定する判定部と
を備えることを特徴とする液体供給装置。
(付記5)
前記チューブを介して前記容器から液体を吸引して前記供給先へ供給するポンプをさらに備え、
前記判定部は、前記チューブが前記容器内の液体から引き上げられたと判定した時点において前記ポンプが駆動中ではない場合、前記ポンプを駆動させることを特徴とする付記4に記載の液体供給装置。