JP7108281B2 - 50歳未満発症うつ病の罹患の有無を予測する方法 - Google Patents
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Description
(1)被検対象における50歳未満発症うつ病の罹患の有無を予測する方法であって、以下の工程(a)~(c)を順次備えたことを特徴とする方法。
(a)被検対象から採取された生体試料中のゲノムDNAを抽出する工程;
(b)工程(a)により得られたゲノムDNAにおける以下の(i)~(iii)のいずれかのシトシンのメチル化程度を測定する工程;
(i)ヒト第16染色体の塩基配列中の第72058938位のシトシン
(ii)ヒト第17染色体の塩基配列中の第57642749位のシトシン
(iii)ヒト第5染色体の塩基配列中の第160974837位のシトシン
(c)工程(b)で測定した(i)~(iii)のいずれかのシトシンのメチル化程度に基づき、被検対象における50歳未満発症うつ病の罹患の有無を予測する工程;
(2)工程(c)が、(b)で測定した(i)~(iii)のいずれかのシトシンのメチル化程度が予め定めた閾値(cut off)未満の場合に、被検対象において50歳未満発症うつ病の罹患が有ると予測し、該(i)~(iii)のいずれかのシトシンのメチル化程度が予め定めた閾値以上の場合に、被検対象において50歳未満発症うつ病の罹患が無いと予測する工程(c-1)であることを特徴とする上記(1)記載の方法。
(3)工程(b)が、工程(a)により得られたゲノムDNAにおける以下の(i)及び(iii)の2か所のシトシンのメチル化程度を測定する工程(b-1)であり、工程(c)が、工程(b-1)で測定した2か所のシトシンのメチル化程度を特徴値とした機械学習の識別器による識別を行い、被検対象において50歳未満発症うつ病の罹患の有無を予測する工程(c-2)であることを特徴とする上記(1)記載の方法。
(i)ヒト第16染色体の塩基配列中の第72058938位のシトシン
(iii)ヒト第5染色体の塩基配列中の第160974837位のシトシン
(4)工程(b)が、工程(a)により得られたゲノムDNAにおける以下の(i),(ii)及び(iii)の3か所のシトシンのメチル化程度、(i),(ii)及び(iv)の3か所のシトシンのメチル化程度、又は、(i),(ii)及び(v)の3か所のシトシンのメチル化程度を測定する工程(b-2)であり、工程(c)が、(b-2)で測定した3か所のシトシンのメチル化程度を特徴値とした機械学習の識別器による識別を行い、被検対象において50歳未満発症うつ病の罹患の有無を予測する工程(c-3)であることを特徴とする上記(1)記載の方法。
(i)ヒト第16染色体の塩基配列中の第72058938位のシトシン
(ii)ヒト第17染色体の塩基配列中の第57642749位のシトシン
(iii)ヒト第5染色体の塩基配列中の第160974837位のシトシン
(iv)ヒト第6染色体の塩基配列中の第150254442位のシトシン
(v)ヒト第17染色体の塩基配列中の第56297443位のシトシン
(5)被検対象から採取した生体試料が、被検対象から採取した血中白血球であることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれか記載の方法。
(6)以下の(i)~(iii)のいずれかのシトシンのメチル化程度を測定するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする、50歳未満発症うつ病の罹患の有無の予測キット。
(i)ヒト第16染色体の塩基配列中の第72058938位のシトシン
(ii)ヒト第17染色体の塩基配列中の第57642749位のシトシン
(iii)ヒト第5染色体の塩基配列中の第160974837位のシトシン
(a)被検対象から採取された生体試料中のゲノムDNAを抽出する工程;
(b)工程(a)により得られたゲノムDNAにおける以下の(i)~(iii)のいずれかのシトシンのメチル化程度を測定する工程;
(i)ヒト第16染色体の塩基配列中の第72058938位のシトシン
(ii)ヒト第17染色体の塩基配列中の第57642749位のシトシン
(iii)ヒト第5染色体の塩基配列中の第160974837位のシトシン
(c)工程(b)で測定した(i)~(iii)のいずれかのメチル化程度に基づき、被検対象における50歳未満発症うつ病の罹患の有無を予測する工程;
の工程(a)~(c)を順次備えたことを特徴とする、被検対象における50歳未満発症うつ病の罹患の有無を予測する方法である。
(i)ヒト第16染色体の塩基配列中の第72058938位のシトシン
(ii)ヒト第17染色体の塩基配列中の第57642749位のシトシン
(iii)ヒト第5染色体の塩基配列中の第160974837位のシトシン
Radish Peroxidase;HRP)、32P等を具体的に挙げることができる。
(i)ヒト第16染色体の塩基配列中の第72058938位のシトシン
(ii)ヒト第17染色体の塩基配列中の第57642749位のシトシン
(iii)ヒト第5染色体の塩基配列中の第160974837位のシトシン
(iv)ヒト第6染色体の塩基配列中の第150254442位のシトシン
(v)ヒト第17染色体の塩基配列中の第56297443位のシトシン
患者は、アメリカ精神医学会が作成した「精神障害の分類と診断の手引きDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorder(DSM-IV-TR)」に基づいて、第一コホートは大うつ病性障害診断基準を満たした50歳以上90歳未満の患者、第二コホートは20歳以上90歳未満の患者を対象とした。診断は臨床診断面接及び構造面接The Mini-International Neuropsychiatric Interview(M.I.N.I.)により診断した。うつ状態の重症度評価は構造化面接であるStructured Interview Guide for the Hamilton Depression Rating Scale(SIGH-D)を用いて行い、躁状態はYoung Mania Rating Scale
(YMRS)で評価した。うつ状態はSIGH-Dが18点以上、YMRSが8点以下と定義した。寛解期については、SIGH-D及びYMRSが8点以下かつDSMの「完全寛解」基準に基づき、「過去2か月間はっきりした兆候や症状が見られていない」者とした。脳器質性疾患(てんかん、脳性まひなど)がある者や、重篤な内科的疾患をもっている者等は除外した。
健常者は、第一コホートは50歳以上90歳未満、第二コホートは20歳以上90歳未満の者を対象とした。構造化面接(M.I.N.I.,SCID)で精神疾患を有すると診断された者、第一親等に精神疾患患者がいる者、抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬といった精神科的薬物を内服した既往のある者、MMSEが23点以下の者、脳器質性疾患がある者、重篤な内科的疾患をもっている者などは除外した。国立大学法人群馬大学のサンプルは、第一コホートのリクルート基準に準じて集められた。
白血球mRNAから多くのうつ病バイオマーカー候補遺伝子を同定した本発明者らのこれまでの研究実績から、白血球からのゲノムDNAを用いた。各患者及び健常者から末梢血40 mlを採取した。身体合併症等の除外のため、血算、ALB、GOT、GPT、ALP、T-Bil、Na、K、Cl、BUN、Cr、T-CHO、HbA1c、TSH、fT3、fT4、コルチゾール、プロラクチン、HBs抗原、HCV、梅毒定性(RPR, TP抗体)を検査した。全血からの分離白血球よりゲノムDNAを調整した。ゲノムDNAはQuant-iT ds DNA BR Assay kit(Invitrogen社製)を用いて定量した。
第一コホートのうち、健常者(HC)30名、うつ病期うつ病患者延べ35名、寛解期うつ病患者延べ25名のゲノムDNAを用いた。発症年齢が50歳未満のうつ病を50歳未満発症うつ病(EOD)(うつ病期 10名、寛解期 16名)、50歳以上を50歳以上発症うつ病(LOD)(うつ病期25名、寛解期9名)と定義した。第二コホート(独立なテストサンプル)は国立大学法人山口大学の健常者5名、50歳未満発症うつ病患者5名と、国立大学法人群馬大学の健常者6名、50歳未満発症うつ病患者6名とした。第一コホートのうち、健常者(HC)30名、うつ病期EOD患者10名、うつ病期LOD患者25名のデモグラフィックデータを図1に示す。図1に示すとおり、EOD患者はHC患者と比べて、有意に若かった。
健常者及び患者から採取した静脈血の末梢血細胞からQIAamp DNA Blood
Midi Kit(Qiagen社製)用いてゲノムDNAを精製した。次に、0.5μgのゲノムDNAをEZ DNA Methylation Kit (Zymo Research社)を用いてバイサルファイト処理した。バイサルファイト処理したゲノムDNAはアルカリ変性した後、酵素による全ゲノム増幅を行った。Infinium(登録商標)HumanMethylation450 BeadsChip(イルミナ社製)を用いて、網羅的なシトシンのメチル化解析を行った。解析にはGenomeStudio(version2011.1)/Methylation Module(version 1.9.0)(イルミナ社製)を用いた。それぞれのシトシンのメチル化は、β値で「0:完全に非メチル化」と「1:完全にメチル化」として示された。得られた各シトシンのメチル化データのうち、HC、うつ病期EOD、寛解期EOD、うつ病期LOD、寛解期LODの全5群で欠損データのない411383種類のプローブに含まれるCpG配列のシトシンをターゲットとした。
上記マイクロアレイ解析結果の妥当性検証のために、パイロシークエンス解析を用いた。一塩基のメチル化程度を測定するのに、パイロシークエンス解析は有効な方法であるが、パイロシークエンス解析の感度は5%程度と言われる(Mikeska T et.al Epigenomics. 2010, 2:561-73. doi: 10.2217/epi.10.32.)。そのため、図2に示すプローブの配列に含まれるシトシンのうち、まずHC vs EODでメチル化程度の平均値が5%以上違うシトシンうちFisher比の大きい上位4つのシトシンを、第一コホートの一部(HC10名、うつ病期EOD患者10名、うつ病期LOD患者10名:図3)のゲノムDNA、及び第二コホートの独立なテストサンプルであるHC11名、うつ病期EOD患者11名(図4)のゲノムDNAを用いてPyroMarkTM ID systemとPyroMarkTM Gold
reagents kit (Qiagen社製)によりパイロシークエンス解析を行った。プライマー設計はPyrosequencing Assay Design Software v2.0 (Qiagen社製)を用いた。用いたプライマー配列及びプローブ配列を図5に示す。図5中、ターゲットのシトシン及びそれに続くグアニンは、Probe seq欄中、「[CG]」と表す。その後、各ターゲットのシトシンのメチル化程度について、マイクロアレイ結果とパイロシークエンス結果の相関をPearsonの積率相関係数を用いて検定した。
マイクロアレイ解析における識別率の高いTOP50のターゲットのシトシンの多くは各群間のメチル化程度の平均差が5%未満の小さな差であった。そこで、上記マイクロアレイ解析によって抽出されたターゲットのシトシンのうち、8か所のシトシン(図2に示す点線枠のプローブID:cg15794987, cg07763047, cg21347377, cg17458347, cg14567489, cg16579770, cg23543123, cg15971980で解析可能なシトシン)及びその近隣の配列に対して、Methyl Primer Express v1.0(ライフテクノロジーズ社製)ソフトにてプライマー設計を行った。0.5μg のゲノムDNAをMethylEasyXceedキット(タカラバイオ社製)でバイサルファイト処理し、EpiTaqHSキット(タカラバイオ社製)の添付プロトコールに沿ってPCR増幅した。増幅されたゲノムDNAは、NucleoSpin(登録商標) Gel and PCR Clean-upキット(タカラバイオ社製)を用いて精製した。精製したゲノムDNAは両末端を平滑化リン酸化処理し、3’-dA処理を行い、Index付アダプターを連結し、これを鋳型としてPCR増幅を行った。シークエンス解析延期長250で、MiSeq(イルミナ社製)を用いて高速シークエンス解析を行った。用いたプライマー配列及びPCR増幅した配列を図6に示す。
第一コホートの一部(HC10名、うつ病期EOD患者10名、うつ病期LOD患者10名:図3)のゲノムDNAにおける6か所のシトシン(プローブID:cg16579770, cg07584066, cg07763047, cg20903900, cg10294474, cg15971980を用いて解析したシトシン)のメチル化程度について、1st Receiver Operating Characteristic(ROC)曲線解析を行い、感度+特異度が最大となるように閾値(cut off)を設定した。次に、独立なテストサンプルであるHC11名、うつ病期EOD患者11名のゲノムDNA(図4)を用いて、設定した閾値を用いて判別した際の感度及び特異度を求めた。
パイロシークエンス解析及びアンプリコンシークエンス解析で検証したプローブID:cg16579770、cg07763047、cg15971980、cg20903900、cg10294474及びcg07584066の6つのプローブを用いて解析したシトシンのメチル化程度を用いて、50歳未満発症うつ病の罹患の有無の予測に対する識別率、感度、特異度を解析した。
1)d1<d2の場合 テストサンプルを健常者であると識別する。
2)d2<d1の場合 テストサンプルを50歳未満発症うつ病患者であると識別する。
その後、テストサンプルの識別結果とブラインドされていた正解ラベルを比較することで
テストサンプルの識別に対する正誤の判定を行った。この処理を全てのテストサンプルに対して行い、識別率、感度、特異度を計算した。テストサンプルに対する識別結果を図8に示す。図8中、「cg16579770」、「cg07763047」、「cg15971980」、「cg20903900」、「cg10294474」及び「cg07584066」を用いて解析したシトシンをそれぞれ「770」、「047」、「980」、「900」、「474」、及び「066」で表す。
cg16579770、cg07763047、cg15971980、cg20903900、cg10294474及びcg07584066の6つのプローブを用いて解析したシトシンの中から3か所を選択するとした以外は、上述の2か所のシトシンの組み合わせ解析と同様の方法で行った。識別結果を図10に示す。図10中、「cg16579770」、「cg07763047」、「cg15971980」、「cg20903900」、「cg10294474」及び「cg07584066」を用いて解析したシトシンをそれぞれ「770」、「047」、「980」、「900」、「474」及び「066」で表す。また、770、047及び066の組による識別結果の可視化を行った結果を図11に示す。
識別率の最も高かった770と047のシトシンのメチル化程度について、HC群、うつ病期EOD群、うつ病期LOD群(図1)、それぞれの共分散行列の行列式を求めた。行列式の値は分布の広がりを意味する。このとき、うつ病期EOD 10例は固定し、HC30例及びうつ病期LOD25例については、非復元抽出で10例をランダム抽出し行列式の値を求める処理を独立に100回行い、HC群の分布の広がりを基準として有意差を検定した。
Claims (4)
- 被検対象における50歳未満発症うつ病の罹患の有無の予測を補助する方法であって、以下の工程(a)~(c-1)を順次備えたことを特徴とする方法。
(a)被検対象から採取された生体試料中のゲノムDNAを抽出する工程;
(b)工程(a)により得られたゲノムDNAにおける以下の(i)~(iii)のいずれかのシトシンのメチル化程度を測定する工程;
(i)ヒト第16染色体の塩基配列中の第72058938位のシトシン
(ii)ヒト第17染色体の塩基配列中の第57642749位のシトシン
(iii)ヒト第5染色体の塩基配列中の第160974837位のシトシン
(c-1)工程(b)で測定した(i)~(iii)のいずれかのメチル化程度が予め定めた閾値未満の場合に、被検対象において50歳未満発症うつ病の罹患が有るとの予測を補助し、該(i)~(iii)のいずれかのシトシンのメチル化程度が予め定めた閾値以上の場合に、被検対象において50歳未満発症うつ病の罹患が無いとの予測を補助する工程;
を備え、前記予め定めた閾値が、前記(i)に記載のシトシンのメチル化程度の場合は0.87~0.9の範囲の値、前記(ii)に記載のシトシンのメチル化程度の場合は0.29~0.32の範囲の値、前記(iii)に記載のシトシンのメチル化程度の場合は0.01~0.025の範囲の値であることを特徴とする方法。 - 工程(b)が、工程(a)により得られたゲノムDNAにおける以下の(i)及び(iii)の2か所のシトシンのメチル化程度を測定する工程(b-1)であり、工程(c-1)が、工程(b-1)で測定した2か所のシトシンのメチル化程度を特徴値とした機械学習の識別器による識別を行い、被検対象において50歳未満発症うつ病の罹患の有無を予測する工程(c-2)であることを特徴とする請求項1記載の方法。
(i)ヒト第16染色体の塩基配列中の第72058938位のシトシン
(iii)ヒト第5染色体の塩基配列中の第160974837位のシトシン - 工程(b)が、工程(a)により得られたゲノムDNAにおける以下の(i),(ii)及び(iii)の3か所のシトシンのメチル化程度、(i),(ii)及び(iv)の3か所のシトシンのメチル化程度、又は、(i),(ii)及び(v)の3か所のシトシンのメチル化程度を測定する工程(b-2)であり、工程(c-1)が、(b-2)で測定した3か所のシトシンのメチル化程度を特徴値とした機械学習の識別器による識別を行い、被検対象において50歳未満発症うつ病の罹患の有無を予測する工程(c-3)であることを特徴とする請求項1記載の方法。
(i)ヒト第16染色体の塩基配列中の第72058938位のシトシン
(ii)ヒト第17染色体の塩基配列中の第57642749位のシトシン
(iii)ヒト第5染色体の塩基配列中の第160974837位のシトシン
(iv)ヒト第6染色体の塩基配列中の第150254442位のシトシン
(v)ヒト第17染色体の塩基配列中の第56297443位のシトシン - 被検対象から採取した生体試料が、被検対象から採取した血中白血球であることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の方法。
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