以下、添付図面を参照しながら本発明をその例示的な実施形態を通して説明する。
図1、図2は、本発明の一実施形態のインプリント装置1の構成が模式的に示す側面図、平面図である。インプリント装置1は、基板Sの上にインプリント材IMを配置し、インプリント材IMに型Mのパターン領域PRを接触させ、インプリント材IMを硬化させる。これによって、基板Sの上にパターンが形成される。インプリント装置1は、型を使って基板Sの上で組成物(あるいはインプリント材)を成形する成形装置の1つとして理解されうる。
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
本明細書および添付図面では、基板Sの表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。位置合わせは、基板および型の少なくとも一方の位置および/または姿勢の制御を含みうる。
インプリント装置1は、基板Sを保持し位置決めする基板位置決め機構SA、型Mを保持し位置決めする型位置決め機構MA、型位置決め機構MAを支持する支持機構50を備えうる。基板位置決め機構SAおよび型位置決め機構MAは、基板Sと型Mとの相対位置が調整されるように基板Sおよび型Mの少なくとも一方を駆動する駆動機構DMを構成する。駆動機構DMによる相対位置の調整は、基板Sの上のインプリント材IMに対する型Mの接触、および、硬化したインプリント材(硬化物のパターン)からの型Mの分離のための駆動を含む。また、駆動機構DMによる相対位置の調整は、基板Sのショット領域と型Mとの位置合わせのための駆動を含む。
基板位置決め機構SAは、基板Sを保持する基板ステージSSと、基板ステージSSを駆動することによって基板Sを駆動する基板駆動機構24とを含む。基板ステージSSは、基板Sを保持する基板チャック21と、基板チャック21を支持するテーブル22とを含みうる。また、基板ステージSSは、基板Sの周囲を取り囲む同面板23を含みうる。同面板23の表面は、基板Sの表面とほぼ同一の高さを有しうる。型位置決め機構MAは、型Mを保持する型チャック41と、型チャック41を駆動することによって型Mを駆動する型駆動機構42とを含みうる。
基板位置決め機構SA(基板駆動機構24)は、基板Sを複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。型位置決め機構MA(型駆動機構42は、型Mを複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。
インプリント装置1は、硬化部90およびディスペンサ32を備える。硬化部90は、基板Sのショット領域の上のインプリント材IMと型Mのパターン領域PRとが接触し、パターン領域PRのパターンを構成する凹部にインプリント材が充填された状態でインプリント材に硬化用のエネルギーEを照射する。ディスペンサ32は、基板Sの上にインプリント材IMを供給する。ディスペンサ32は、例えば、基板位置決め機構SAによって基板Sが移動されている状態でインプリント材IMを吐出することによって、基板Sの上の目標位置にインプリント材IMを配置する。
また、インプリント装置1は、基板Sと型Mとの間(の空間)にガスを供給するガス供給部GSを備える。このガスは、パージガスあるいは充填促進ガスとも呼ばれうる。パージガスとしては、インプリント材に対して可溶性および拡散性の少なくとも一方を有するガス、例えば、ヘリウムガスおよび窒素ガスの少なくとも一方が好適である。可溶性または拡散性により、型Mのパターン領域PRのパターンを構成する凹部内のパージガスがインプリント材IMに溶解または拡散し、凹部内にインプリント材IMが速やかに充填される。あるいは、パージガスとしては、凝縮性ガス(例えば、ペンタフルオロプロパン(PFP))が好適である。型Mのパターン領域PRのパターンを構成する凹部内の凝縮性ガスは、インプリント材IMとの接触時に凝縮することによって体積が著しく小さくなり、これによって凹部内にインプリント材IMが速やかに充填される。
ガス供給部GSは、ディスペンサ32と型位置決め機構MAとの間に配置されたガス供給口64を有し、基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている状態でガス供給口64から基板Sの上にガスを供給する。ガス供給部GSは、ガス供給口64を含む複数のガス供給口61~64を含んでもよく、複数のガス供給口61~64は、型Mの周囲に配置されうる。ガス供給部GSは、複数のガス供給口61~64のそれぞれとガス供給源(不図示)との間に配置され、複数のガス供給口61~64から供給されるガスの流量を個別に調整可能な流量調整機構111~114を含みうる。複数のガス供給口61~64は、型チャック41、又は、型チャック41に固定された部材に設けられてもよいし、型駆動機構42、又は、型駆動機構42に固定された部材に設けられてもよいし、型位置決め機構MAとは独立した構造体に設けられてもよい。
ガス供給部GSは、基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている状態で、ディスペンサ32と型位置決め機構MAとの間に配置されたガス供給口64から基板Sの上にパージガスを供給する。ここで、パージガスの流量は、ディスペンサ32によってインプリント材IMが配置されたショット領域が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間(以下、帰りの駆動機構)において減少を開始する。このような制御によっても、基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されることによって発生するクエット流によって、インプリント材IMが配置されたショット領域と型Mとの間にパージガスが供給される。また、駆動期間においてパージガスの流量の減少を開始することによって、パージガスの消費量を低減することができる。
インプリント装置1は、更に、型位置決め機構MAの周囲に配置された第2ガス供給口70を含む第2ガス供給部72を備えていてもよい。ガス供給口61~64は、型駆動機構MA(型M)と第2ガス供給口70との間に配置されうる。第2ガス供給部72は、基板Sと型Mとの間へのパーティクルの侵入を抑制するように第2ガスを吐出する。第2ガスは、パーティクルが除去または低減された空気等のガスでありうる。
図3(a)には、第1実施形態のガス供給部GSの構成が模式的に示されている。図3(a)では、ガス供給口61~63および流量調整機構111~113が省略されているが、これらは、ガス供給口64および流量調整機構114と同様の構成を有しうる。また、帰りの駆動期間において、ガス供給口61~63からのパージガスの供給は、ガス供給口64からのパージガスの供給と同様に制御されてもよいし、補助的になされてもよい。あるいは、帰りの駆動期間において、ガス供給口61~63からのパージガスの供給はなされなくてもよい。流量調整機構111~114は、マスフローコントローラーを含みうる。
図3(b)には、第1実施形態の1つの処理サイクルにおけるパージガスの供給制御が示されている。図7には、比較例の処理サイクルにおけるパージガスの供給制御が示されている。図3(b)、図7において、横軸は時間、縦軸はガス供給口64からのパージガスの供給量である。図3(b)、図7において、流量(実際の流量)の面積がパージガスの消費量に相当する。
一点鎖線で示された「分離」は、1つの前の処理サイクルにおける硬化したインプリント材IMと型Mとの分離を意味する。1つの処理サイクルは、複数のショット領域のうち処理対象のショット領域に関する「行きの駆動」、「帰りの駆動」、「インプリント」および「分離」を含む。「行きの駆動」は、処理対象のショット領域がディスペンサ32によってインプリント材IMの塗布を開始する位置に移動させるための基板位置決め機構SAによる駆動を意味する。「帰りの駆動」は、処理対象のショット領域を型Mのパターン領域PRの直下の位置に配置するための基板位置決め機構SAによる駆動を意味する。この例では、「帰りの駆動」において、処理対象のショット領域の上にディスペンサ32によってインプリント材IMが塗布(配置)される。しかし、「行きの駆動」において処理対象のショット領域の上にディスペンサ32によってインプリント材IMが塗布(配置)されてもよい。「インプリント」は、処理対象のショット領域の上のインプリント材IMと型Mのパターン領域PRとの接触、パターン領域PRの凹部へのインプリント材IMの充填、硬化部90によるインプリント材IMの硬化を含む処理を意味する。「分離」は、硬化したインプリント材IMと型Mのパターン領域PRとの分離を意味する。
基板Sの処理対象のショット領域と型Mとの間にパージガスを配置するために、ガス供給口64からパージガスを常に吐出する必要はない。例えば、ディスペンサ32によってインプリント材を配置するべきショット領域がディスペンサ32に近づくように基板位置決め機構SAによる基板Sの駆動が開始された後(行きの駆動が開始された後)に、基板Sの上へのガスの供給を開始すればよい。これにより、パージガスの消費量を低減することができる。
また、処理対象のショット領域が型Mの直下の位置に配置するための基板位置決め機構SAによる基板Sの駆動の開始タイミング(帰り駆動の開始タイミング)に基板Sの上へのガスの供給が開始されてもよい。あるいは、ディスペンサ32によってショット領域へのインプリント材の供給が開始されるタイミングに基板Sの上へのガスの供給が開始されてもよい。これらのような制御により、更にパージガスの消費量を低減することができる。また、ディスペンサ32によってインプリント材IMが配置されたショット領域がガス供給口64に対面するタイミングで基板Sの上へのガスの供給を開始すれば、更にパージガスの消費量を低減することができる。つまり、基板Sの上へのガスの供給が開始されるタイミングは、帰りの駆動の開始タイミングでもよいし、その前でもよいし、その後でもよい。
ここで、流量調整機構114に設定された流量と実際の流量とは一致せず、例えば、流量調整機構114に設定された流量に対して実際の流量が時間的な遅れを持っていることを考慮するべきである。ここで、パターン領域PRの凹部へのインプリント材IMの充填を促進するために、ある基準タイミングにおいて必要なパージガスの流量をQ0とする。基準タイミングは、任意に定められうるものである。以下では、一例として基準タイミングを帰りの駆動の開始タイミングとして説明する。
図7に示された比較例において、基準タイミングとしての帰りの駆動の開始タイミングにパージガスの流量がQ0に達するようにパージガスの流量を制御するためには、帰りの駆動の開始タイミングより早いタイミングでガスの供給(吐出)を開始する必要がある。したがって、クロスハッチングが付された部分の面積に相当するパージガスの消費量は、流量調整機構114に設定された流量に対して実際の流量が時間的な遅れを持っていることに起因する付加的な消費量である。仮に、流量調整機構114に設定された流量に対する実際の流量の時間的な遅れがないとすれば、パージガスの消費量は、シングルハッチングが付された部分の面積に相当する消費量まで低減される。
第1実施形態では、基準タイミングの一例である帰りの駆動の開始タイミングにおいてパージガスの流量がQ0に達するように、帰りの駆動の開始タイミングより早いタイミングで、流量調整機構114の設定流量がQ0より大きい第1の設定流量Q1aになる。また、第1実施形態では、帰りの駆動がなされている期間において、流量調整機構114の設定流量がQ0より小さく、かつ、Q1aより小さい第2の設定流量Q2aになる。ここで、流量調整機構114の設定流量がQ1aからQ2aになるタイミングは、ディスペンサ32によるインプリント材の供給がなされている期間内にであってもよいし、該期間の後であってもよい。流量調整機構114の設定流量は、流量調整機構114に設定されている流量であり、図3(b)において黒の実線で示されている。流量調整機構114がマスフローコントローラーを含む場合、設定流量は、マスフローコントローラーに対する流量指令値でありうる。ガス供給口64から実際に供給される流量(実際の流量)は、図3(b)において太いグレーの実線で示されている。
ガス供給部GSによって基板Sの上に供給されるパージガスの流量は、ディスペンサ32によってインプリント材が配置されたショット領域が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間において減少を開始する。そして、該期間において、パージガスの流量は、Q0より小さいQ2aまで減少する。これにより、パージガスの消費量を低減することができる。また、Q1aをQ0より大きい値にすることによって、実際の流量がQ0まで到達するために要する時間を短縮することができる。これによっても、パージガスの消費量を低減することができる。
図3(b)、(c)の例では、基板Sの上に供給されるガスの流量は、インプリント材が配置されたショット領域が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間において、増加した後に減少する。また、図3(b)、(c)の例では、基板Sの上に供給されるガスの流量は、インプリント材が配置されたショット領域が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間において、増加した後に減少し、その後に一定になる。
以上のような制御において、基板Sのショット領域と型Mとの間のパージガスの濃度は、図7に示された比較例と同等であることが確認されている。また、パージガスの消費量が図7に示された比較例より低減されることが確認されている。
図3(c)に例示されるように、Q2aは、0であってもよい。この場合、帰りの駆動の期間中にパージガスの実際の流量が0になりうる。ガス供給口64から吐出されたパージガスは、基板Sの上に存在するので、基板Sの移動とともに型Mの下の位置まで移動する。
帰りの駆動に次いで、インプリントが開始される。インプリントは、前述のように、処理対象のショット領域の上のインプリント材IMと型Mのパターン領域PRとの接触、パターン領域PRの凹部へのインプリント材IMの充填、硬化部90によるインプリント材IMの硬化を含む。インプリント材IMと型Mのパターン領域PRとの接触により、基板Sと型Mとの距離が小さくなる。したがって、基板Sと型Mと間におけるパージガスの濃度は高くなるか、維持されるかする。また、この状態で、ガス供給口64からパージガスを供給することによっては、基板Sと型Mと間におけるパージガスの濃度を制御することは困難である。したがって、インプリントの期間において、流量調整機構114の設定流量がQ2aより小さいQ3aに変更されうる。Q3aは、例えば、0でありうる。ガス供給部GSは、硬化したインプリント材と型Mとの分離が完了する前に、基板Sの上へのガスの供給を停止するように構成されうる。
Q1a、Q2a、Q3aの値は、基板Sにおける処理対象のショット領域の位置やプロセス条件等に応じて調整されうる。そこで、パージガスの設定流量は、基板Sにおける処理対象のショット領域の位置に応じて変更可能にされうる。インプリント装置1は、ユーザインターフェースを構成するコンソール等の端末を備えることができ、該端末によって、パージガスの設定流量としてデフォルトの設定流量が提供されうる。ユーザーは、デフォルトの設定流量を基準として、より好ましい設定流量を決定することができる。
Q1a、Q2a、Q3aの値は、インプリント装置1における1または複数の基板からなるロットの処理を制御するためのレシピファイル(制御情報ファイル)によって設定されてもよい。
以下、図4を参照しながら本発明の第2実施形態のインプリント装置1について説明する。第2実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。図4(a)には、本発明の第2実施形態のインプリント装置1におけるガス供給部GSの構成が示されている。図4(b)には、第2実施形態の1つの処理サイクルにおけるパージガスの供給制御が示されている。なお、図4(b)における表記方法は、図3(b)における標記方法に従っている。図4(a)では、ガス供給口61~63および流量調整機構111~113が省略されているが、これらは、ガス供給口64および流量調整機構114と同様の構成を有しうる。また、駆動期間において、ガス供給口61~63からのパージガスの供給は、ガス供給口64からのパージガスの供給と同様に制御されてもよいし、補助的になされてもよい。あるいは、駆動期間において、ガス供給口61~63からのパージガスの供給はなされなくてもよい。
第2実施形態のガス供給部GSは、ガス供給源とガス供給口64との間に配置された流量調整機構114を含む。流量調整機構114は、ガス供給口64とガス供給源との間に配置された流量調整器119および開閉弁124と、流量調整器119および開閉弁124を制御する制御器130とを含みうる。制御器130は、流量調整機構111~114において共有されてもよい。流量調整器119は、制御器130から送られてくる流量指令値に基づいて流量調整器119を通過するパージガスの流量をフィードバック制御するように構成される。流量調整器119は、例えば、マスフローコントローラーを含みうる。流量調整器119は、図4(a)に例示されるように開閉弁124とガス供給口64との間に配置されてもよいし、ガス供給源と開閉弁124との間に配置されてもよい。
第2実施形態では、制御器130は、開閉弁124が閉状態である期間において、基準タイミングの一例である帰りの駆動の開始タイミングより早い第1タイミングで、流量調整器119に与える流量指令値を0から第1指令値Q2bに変更する。第1指令値Q2bは、Q0より小さく、0より大きい。その後、制御器130は、帰りの駆動の開始タイミングより早いが、第1タイミングより遅い第2タイミングで、開閉弁124を閉状態から開状態にする。つまり、制御器130は、開閉弁124を閉状態にし、かつ、流量調整器119に対する流量指令値を第1指令値Q2bにした状態の後に、開閉弁124を開状態にする。これにより、ガス供給部GSによって基板Sの上に供給されるパージガスの流量は、インプリント材が配置されたショット領域が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間において、Q1bまで増加した後に減少する。
以下、上記のようにパージガスの流量が変化する原理を説明する。前述のように、流量調整器119は、制御器130から送られてくる流量指令値に基づいて流量調整器119を通過するパージガスの流量をフィードバック制御するように構成される。したがって、流量調整器119は、流量調整器119を通過するパージガスの流量が流量指令値である第1指令値Q2bに一致するように、流量調整器119が有する弁の開度をフィードバック制御する。しかし、この状態において、開閉弁124が閉状態であるので、流量調整器119を通過するパージガスの流量は、0であり続ける。したがって、流量調整器119が有する弁の開度は、最大開度に調整される。
そして、流量調整器119が有する弁の開度が最大開度である状態で開閉弁124が閉状態から開状態にされる。これにより、流量調整器119を通過するパージガスの流量は、Q2bを超えてQ1bまでオーバーシュートする。Q2bは、Q0より大きくなりうる。その後、流量調整器119のフィードバック制御が正しく機能し、流量調整器119を流れるパージガスの流量は、第1指令値Q2bに収束しうる。
よって、第2実施形態においても、ガス供給部GSによって基板Sの上に供給されるパージガスの流量は、インプリント材が配置されたショット領域が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間において減少を開始する。
図4(b)の例では、基板Sの上に供給されるガスの流量は、インプリント材が配置されたショット領域が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間において、増加した後に減少する。また、図4(b)の例では、基板Sの上に供給されるガスの流量は、インプリント材が配置されたショット領域が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間において、増加した後に減少し、その後に一定になる。
流量調整器119に対する流量指令値をQ2bに変更するタイミングは、行きの駆動の期間内に限定されず、例えば、1つの前の処理サイクルにおける硬化したインプリント材IMと型Mとの分離がなされる期間内であってもよい。
開閉弁124を閉状態から開状態に変更するタイミングについても、行きの駆動の期間内に限定されず、例えば、帰りの駆動の開始タイミングの後かつ処理対象のショット領域が型Mに対面するタイミングの前でありうる。開閉弁124を閉状態から開状態に切り替えるために要する時間は、一般的には、流量調整器119の開度を変更するために要する時間よりも短い。よって、第2実施形態は、第1実施形態よりも流量の立ち上がりを高速化するために有利である。
以下、図5を参照しながら本発明の第3実施形態のインプリント装置1について説明する。第3実施形態として言及しない事項は、第2実施形態に従いうる。図5(a)には、本発明の第3実施形態のインプリント装置1におけるガス供給部GSの構成が示されている。図5(b)には、第3実施形態の1つの処理サイクルにおけるパージガスの供給制御が示されている。なお、図5(b)における表記方法は、図3(b)における標記方法に従っている。図5(a)では、ガス供給口61~63および流量調整機構111~113が省略されているが、これらは、ガス供給口64および流量調整機構114と同様の構成を有しうる。また、駆動期間において、ガス供給口61~63からのパージガスの供給は、ガス供給口64からのパージガスの供給と同様に制御されてもよいし、補助的になされてもよい。あるいは、駆動期間において、ガス供給口61~63からのパージガスの供給はなされなくてもよい。
第3実施形態のガス供給部GSは、ガス供給源とガス供給口64との間に配置された流量調整機構114を含む。流量調整機構114は、流量調整器119、開閉弁124および制御器130に加えて、流量制限弁134を有する。流量制限弁134は、ガス供給源とガス供給口64との間の任意の位置に配置されうる。流量制限弁134は、ガス供給部GSによって基板Sの上に供給されるガスの流量の最大値を制限する。第3実施形態の流量調整機構114は、第2実施形態の流量調整機構114に対して流量制限弁134を追加した構成を有する。
第3実施形態では、制御器130は、開閉弁124が閉状態である期間において、基準タイミングの一例である帰りの駆動の開始タイミングより早い第1タイミングで、流量調整器119に与える流量指令値を0から第1指令値Q2cに変更する。第1指令値Q2cは、Q0より小さく、0より大きい。その後、制御器130は、帰りの駆動の開始タイミングより早いが、第1タイミングより遅い第2タイミングで、開閉弁124を閉状態から開状態にする。つまり、制御器130は、開閉弁124を閉状態にし、かつ、流量調整器119に対する流量指令値を第1指令値Q2cにした状態の後に、開閉弁124を開状態にする。これにより、ガス供給部GSによって基板Sの上に供給されるパージガスの流量は、インプリント材が配置されたショット領域が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間において、Q1cまで増加した後に減少する。ここで、Q1cは、第2実施形態におけるQ1bより小さく、流量制限弁134に設定された開度によって決定される。つまり、流量制限弁134は、流量調整器119を通過するパージガスの流量がQ2c(およびQ0)を超えてオーバーシュートするときに、該流量の最大値をQ1bより小さいQ1cに制限する。
第3実施形態においても、ガス供給部GSによって基板Sの上に供給されるパージガスの流量は、インプリント材が配置されたショット領域が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間において減少を開始する。
図5(b)の例では、基板Sの上に供給されるガスの流量は、インプリント材が配置されたショット領域が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間において、増加した後に減少する。また、図5(b)の例では、基板Sの上に供給されるガスの流量は、インプリント材が配置されたショット領域が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間において、増加した後に減少し、その後に一定になる。
流量制限弁134の開度は、例えば、流量調整器119の開度が最大に設定された状態で流量調整器119を通過するパージガスがQ1cになるように調整されうる。
以下、図6を参照しながら本発明の第4実施形態のインプリント装置1について説明する。第4実施形態として言及しない事項は、第1乃至第3実施形態に従いうる。図6(a)には、本発明の第4実施形態のインプリント装置1におけるガス供給部GSの構成が示されている。図6(b)には、第4実施形態の1つの処理サイクルにおけるパージガスの供給制御が示されている。なお、図6(b)における表記方法は、図3(b)における標記方法に従っている。図6(a)では、ガス供給口61~63および流量調整機構111~113が省略されているが、これらは、ガス供給口64および流量調整機構114と同様の構成を有しうる。また、駆動期間において、ガス供給口61~63からのパージガスの供給は、ガス供給口64からのパージガスの供給と同様に制御されてもよいし、補助的になされてもよい。あるいは、駆動期間において、ガス供給口61~63からのパージガスの供給はなされなくてもよい。
第4実施形態のガス供給部GSは、ガス供給源とガス供給口64との間に配置された流量調整機構114を含む。流量調整機構114は、開閉弁124と、圧力調整器144と、制御器130とを含みうる。開閉弁124は、ガス供給口64とガス供給源との間に配置される。圧力調整器144は、開閉弁124とガス供給源との間に配置される。制御器130は、圧力調整器144および開閉弁124を制御する。制御器130は、流量調整機構111~114において共有されてもよい。圧力調整器144は、圧力調整器144と開閉弁124とを接続する接続路150の圧力を調整するように構成される。
第4実施形態では、制御器130は、開閉弁124が閉状態である期間において、基準タイミング(ここでは、帰りの駆動の開始タイミング。)より早い第1タイミングで、パージガスの流量がQ2a、Q2b、Q2cに相当する流量Q2dになるように圧力調整器144に与える圧力指令値を変更する。流量Q2dは、Q0より小さく、0より大きい。
その後、制御器130は、帰りの駆動の開始タイミングより早いが、第1タイミングより遅い第2タイミングで、開閉弁124を閉状態から開状態にする。つまり、制御器130は、開閉弁124を閉状態にして圧力調整器に144よって接続路150の圧力が調整された後に、開閉弁124が開状態にする。これにより、ガス供給部GSによって基板Sの上に供給されるパージガスの流量は、インプリント材が配置されたショット領域が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間においてQ1dまで増加した後に減少する。
一般に、圧力調整器は、流量調整器よりも単純な構成を有し安価である。よって、第4実施形態は、構造の単純化および低コスト化に有利である。
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
次に、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。図8(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
図8(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図8(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1と型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを透して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
図8(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凹部が硬化物の凸部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
図8(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図8(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
以下、図9を参照しながら本発明の第5実施形態の成形装置について説明する。第1から第4実施形態は、本発明に係る成形装置を、型(テンプレート)が有するパターンを基板に転写する処理に適用した例である。第5実施形態は、本発明に係る成形装置を平坦化処理に適用した例である。第5実施形態で使用される型(平面テンプレート)は、パターンを有しない。基板上の下地パターンは、前の工程で形成されたパターンに起因する凹凸プロファイルを有している。特に近年のメモリ素子の多層構造化にともなって、プロセスを経た基板には、100nm程度の段差を持つものもある。基板全体の緩やかなうねりに起因する段差に対しては、フォト工程で使われているスキャン露光装置のフォーカス追従機能によって対応可能である。しかし、スキャン露光装置の露光スリット面積内に収まってしまうピッチの細かい凹凸は、スキャン露光装置のDOF(Depth Of Focus)を消費してしまいうる。
基板上の下地パターンを平滑化する方法としては、SOC(Spin On Carbon)、CMP(Chemical Mechanical Polishing)のように、平坦化層を形成する方法ががある。しかし、既存技術では、図9(a)における孤立パターン領域Aと繰り返しDense(ライン&スペースパターンの密集)パターン領域Bとの境界部分においては、40%~70%の凹凸抑制率では十分な平坦化性能が得られないという問題がある。今後、多層化による下地の凹凸差は更に増加する傾向にある。
この問題に対する解決策として、米国特許第9415418号では、平坦化層となるレジストをインクジェットディスペンサーによって塗布し、平面テンプレートによるインプリントによって連続膜を形成する手法が提案されている。また、米国特許第8394282号では、ウエハ側のトポグラフィ計測結果を、インクジェットディスペンサーに塗布を指示するポジション毎の濃淡情報に反映する方法が提案されている。
第5実施形態は、特に予め塗布された未硬化の組成物(レジスト)に対して平面テンプレートを押し当てて基板面内の局所平坦化を行う平坦加工(平坦化)装置に対して本発明を適用したものである。
図9(a)は、平坦化加工を行う前の基板(ウエハ)を示している。Aは、孤立パターンエリア、即ち、パターン凸部分の面積が少ない領域を模式的に示している。Bは、Denseエリアであり、ここでは、パターン凸部分が占める面積とパターン凹部分が占める面積との比が1:1である領域を模式的に示している。A、Bにおいて、平均の高さは、凸部分が占める割合に応じた互いに異なった値をとる。
図9(b)は、基板に対して平坦化層を形成する組成物(レジスト)を塗布した状態を模式的に示している。基板に対する組成物の塗布は、例えば、米国特許第9415418号に記載されたようにインクジェットディスペンサーを用いて行ってもよいし、スピンコーターを用いて行ってもよいし、他の方法にしたがって行ってもよい。
図9(c)は、基板の上の組成物(レジスト)に平面テンプレートを押し付けて、その状態で組成物に硬化用のエネルギーを照射することによって組成物を硬化させる工程を模式的に示している。平面テンプレートは、例えば、硬化用のエネルギーとしての紫外線を透過するガラスまたは石英で構成されうる。平面テンプレートは、基板全体のなだらかな凹凸に対してならって変形する。図9(d)は、硬化された組成物から平面テンプレートを引き離した状態を模式的に示している。
第5実施形態もまた、基板と型との間に供給すべきガスの使用量を削減するために有利である。第5実施形態の成形装置は、図1に示されたインプリント装置1と同様の構成を有しうるが、基板と型との位置決めに関して高い精度が要求されないので、より単純な構成が採用されてもよい。図1を参照して説明すると、成形装置は、基板Sを位置決めする基板位置決め機構SAと、型Mを位置決めする型位置決め機構MAと、基板S(又は、基板Sのショット領域)の上に組成物を配置するディスペンサ32とを備えうる。また、該成形装置は、ガス供給部GSを備えうる。ガス供給部GSは、ディスペンサ32と型位置決め機構MAとの間に配置されたガス供給口を有し、基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている状態で該ガス供給口から基板Sの上にガスを供給しうる。ガス供給部GSによって基板Sの上に供給されるガスの流量は、ディスペンサ32によって組成物が配置された基板S(又は、基板Sのショット領域)が型Mの下に移動するように基板位置決め機構SAによって基板Sが駆動されている期間において減少を開始しうる。
上記の成形装置を用いて物品を製造する物品製造方法は、該成形装置を用いて基板の上に組成物の硬化物を形成する工程と、前記工程において前記硬化物が形成された基板の処理を行う工程と、を含み、前記処理が行われた前記基板から物品を製造する。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。