以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
1.自動分析装置の構成
まず、本発明の実施の形態例に係る自動分析装置について図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態例に係る自動分析装置を示す概略構成図である。
[自動分析装置の概要]
図1に示す自動分析装置1は、被検体の抗原抗体反応などの免疫分析を行う免疫分析装置を自動分析装置に適用したものである。自動分析装置1は、測定装置2と、測定装置2を含む自動分析装置1全体の制御を行うとともに測定装置2から出力される測定データの分析を行う制御装置80とを備える。
免疫分析装置が適用された自動分析装置1は、例えば化学発光酵素免疫測定法(CLEIA:Chemiluminescent Enzyme Immunoassay)を用いて、高感度の測定を行う。CLEIAは、主な工程として、反応工程、分離工程(BF分離)及び測光工程を有する。反応工程では、反応容器内で検体(抗原又は抗体)と試薬とを反応させる。分離工程(BF分離)では、反応容器内の反応生成物(bound)と未反応物質(free)とを分離する。測光工程では、各試薬と検体とが反応して生成される免疫複合体から生じる発光の発光量を測定する。
[自動分析装置の測定系]
測定装置2は、大別して容器供給ユニット3、検体架設ユニット4、容器搬送ユニット5、検体分注ユニット6、試薬保冷ユニット7、第1の試薬分注ユニット8、第2の試薬分注ユニット9、免疫酵素反応ユニット10(反応ユニットの一例)、第1のBF分離ユニット11、第2のBF分離ユニット12、基質液保冷庫14、容器移送ユニット15及び発光測定ユニット16を備える。これら容器供給ユニット3、検体架設ユニット4等の各ユニットや基質液保冷庫14、容器移送ユニット15及び発光測定ユニット16は、装置外装体18に収容される。
容器供給ユニット3は、複数の容器(キュベット)100を収容し、それら複数の容器100を1つずつ移送位置に配置する。移送位置に配置された容器100は、容器搬送ユニット5によって免疫酵素反応ユニット10に搬送される。免疫酵素反応ユニット10に搬送された容器100には、検体と所定の試薬とが注入される。
容器搬送ユニット5は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームと、アームの先端部に設けられた保持部とを備える。容器搬送ユニット5は、容器供給ユニット3の移送位置に配置された容器100を保持部により保持し、アームを旋回して、所定のタイミングで免疫酵素反応ユニット10の所定の位置に搬送する。
検体架設ユニット4は、軸方向の一端が開口した略円筒状をなす容器状に形成されたターンテーブルを備える。この検体架設ユニット4には、複数の検体容器4aが収容される。検体容器4aには、被検者から採取した血液又は尿等からなる検体(サンプル)が収容される。複数の検体容器4aは、検体架設ユニット4の周方向に所定の間隔を空けて並べて配置される。検体架設ユニット4は、不図示の駆動機構によって周方向に沿って回転可能に支持される。そして、検体架設ユニット4は、不図示の駆動機構により、周方向に所定の角度範囲ごとに、所定の速度で回転する。図1の例では、検体架設ユニット4の周方向に並べられた検体容器4aの列は、検体架設ユニット4の半径方向に所定の間隔を空けて2列設けられている。なお、検体として、所定の希釈液で希釈された検体等を用いてもよい。
検体分注ユニット6は、検体の吸引及び吐出を行う先端部に取り付けられたプローブと、鉛直方向への昇降及び自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームとを備える。検体分注ユニット6は、検体架設ユニット4の所定位置に移動された検体容器4a内の検体をプローブによって吸引し、アームを旋回させて、所定のタイミングで免疫酵素反応ユニット10の所定の位置にある容器100に分注する。
試薬保冷ユニット7は、検体架設ユニット4と同様に、軸方向の一端が開口した略円筒状をなす容器状に形成されたターンテーブルを備える。試薬保冷ユニット7は、不図示の駆動機構によって周方向に沿って回動可能に支持されており、この不図示の駆動機構により、その周方向に所定の角度範囲ずつ、所定の速度で正回転又は逆回転する。
試薬保冷ユニット7には、第1の試薬容器7aと第2の試薬容器7bが収容される。第1の試薬容器7a及び第2の試薬容器7bは、試薬保冷ユニット7の周方向上に所定の間隔を空けて並べて配置される。第1の試薬容器7aには、第1の試薬として、検体中の目的の抗原と反応する磁性粒子からなる磁性試薬が収容される。また、第2の試薬容器7bには、第2の試薬として、検体中の抗原と磁性試薬とが結合した反応生成物と、反応する標識試薬(酵素抗体)とが収容される。試薬保冷ユニット7内は、不図示の保冷機構によって所定の温度に保たれる。そのため、第1の試薬容器7aに収容された第1の試薬(磁性試薬)と、第2の試薬容器7bに収容された第2の試薬(標識試薬)とは、所定の温度で保冷される。
第1の試薬分注ユニット8は、検体の吸引及び吐出を行う先端部に取り付けられたプローブと、鉛直方向への昇降及び自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームとを備える。第1の試薬分注ユニット8は、試薬保冷ユニット7の所定位置に移動された第1の試薬容器7a内の第1の試薬(磁性試薬)をプローブによって吸引し、アームを旋回させて、所定のタイミングで免疫酵素反応ユニット10の所定の位置にある容器100に分注する。
第2の試薬分注ユニット9は、第1の試薬分注ユニット8と同様の構成を有する。第2の試薬分注ユニット9は、試薬保冷ユニット7の所定位置に移動された第2の試薬容器7b内の第2の試薬(標識試薬)をプローブによって吸引し、アームを旋回させて、所定のタイミングで免疫酵素反応ユニット10の所定の位置にある容器100に分注する。
免疫酵素反応ユニット10では、周方向に配置された容器100内で、検体と分析項目に対応する所定の試薬との免疫反応と、この免疫反応で生成される免疫複合体と化学発光基質による酵素反応とが行われる。免疫酵素反応ユニット10は、検体架設ユニット4と同様に、軸方向の一端が開口した略円筒状をなす容器状に形成されたターンテーブルを備える。免疫酵素反応ユニット10は、不図示の駆動機構によって周方向に沿って回転可能に支持されており、この不図示の駆動機構により、その周方向に所定の角度範囲ずつ、所定の速度で回転する。ここでは、免疫酵素反応ユニット10は、反時計回りに回転する。図1の例では、免疫酵素反応ユニット10の周方向に並べられた容器100の列は、免疫酵素反応ユニット10の半径方向に所定の間隔を空けて1列セットされているが、後述する第1の試薬用の容器100の列と第2の試薬用の容器100の列を半径方向に所定の間隔を空けて設けてもよい。
免疫酵素反応ユニット10は、検体が注入された容器100に第1の試薬分注ユニット8によって磁性試薬が分注されると、不図示の撹拌機構により磁性試薬と検体の混合液を撹拌し、検体中の抗原と磁性試薬とを一定時間免疫反応させる(1次免疫反応)。次に、免疫酵素反応ユニット10は、この容器100を第1の集磁機構(磁石13)に移動し、抗原と磁性試薬とが結合した反応生成物を磁力により集磁する。そして、この状態で容器100内が洗浄され、磁性試薬と反応しなかった未反応物質が除去される(1次BF分離)。
第1の集磁機構は、免疫酵素反応ユニット10の外周部近傍に配置された第1のBF分離ユニット11に対応した位置に固定される。免疫酵素反応ユニット10のターンテーブルは、固定された下層と回転可能な上層の二層で構成される。下層のターンテーブルには、第1の集磁機構として磁石13が配置され、上層のターンテーブルには容器100が配置される。磁石13は、容器100内の反応生成物を集磁する。
第1のBF分離ユニット11は、アーム25と、アーム25に取り付けられたノズル21と、洗浄槽24とを備える。アーム25は、鉛直方向への昇降及び自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。このアーム25は、ノズル21を、免疫酵素反応ユニット10の1次BF分離位置にある容器100と、第1のBF分離ユニット11側のノズル洗浄位置にある洗浄槽24とに移動する。ノズル21は、1次BF分離位置において、検体と磁性試薬が注入された容器100内に洗浄液を吐出及び吸引して洗浄し、磁性試薬と反応しなかった未反応物質を除去する(BF洗浄)。
第1のBF分離ユニット11は、容器100が1次BF分離位置に搬送されると、1次BF分離を行う。1次BF分離及びBF洗浄により、容器100には、検体中の目的の抗原と磁性試薬が結合した反応生成物が集磁される。そして、1次BF分離が終了すると、アーム25によりノズル21を洗浄槽24があるノズル洗浄位置に移動する。
1次BF分離後、免疫酵素反応ユニット10は、反応生成物が残留した容器100に、第2の試薬分注ユニット9によって標識試薬が分注されると、不図示の撹拌機構により磁性試薬と検体の混合液を撹拌し、反応生成物と標識試薬とを一定時間免疫反応させる(2次免疫反応)。次に、免疫酵素反応ユニット10は、この容器100を不図示の第2の集磁機構に移動し、反応生成物と標識試薬とが結合した免疫複合体を磁力により集磁する。そして、この状態で容器100内が洗浄され、標識試薬と反応しなかった未反応物質が除去される(2次BF分離)。
第2の集磁機構は、第1の集磁機構の磁石13と同様の磁石を有し、免疫酵素反応ユニット10の外周部近傍に配置された第2のBF分離ユニット12に対応した位置に固定される。図1の例では、第2の集磁機構が備える磁石は、2次BF分離位置にあるノズル21の下方に配置される。
第2のBF分離ユニット12は、第1のBF分離ユニット11と同様の構成を有し、第1のBF分離ユニット11に対し周方向に所定の距離をあけて配置される。アーム25は、鉛直方向への昇降及び自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。このアーム25は、ノズル21を、免疫酵素反応ユニット10の2次BF分離位置にある容器100と、第2のBF分離ユニット12側のノズル洗浄位置にある洗浄槽24とに移動する。ノズル21は、2次BF分離位置において、標識試薬が注入された容器100内に洗浄液を吐出及び吸引して洗浄し、標識試薬と反応しなかった余剰の未反応物質を除去する(BF洗浄)。
第2のBF分離ユニット12は、容器100が2次BF分離位置に搬送されると、2次BF分離を行う。2次BF分離及びBF洗浄により、容器100には、検体中の目的の抗原及び磁性試薬からなる反応生成物と標識試薬とが結合した免疫複合体が集磁される。そして、2次BF分離が終了すると、アーム25によりノズル21を洗浄槽24があるノズル洗浄位置に移動する。
第2のBF分離ユニット12のアーム25には、さらに基質液分注ユニット26が取り付けられる。基質液分注ユニット26は、ノズル21よりもアーム25の回転軸から遠い位置に配置される。基質液分注ユニット26は、不図示のチューブを介して、基質液を収容して保冷する基質液保冷庫14と接続する。基質液分注ユニット26は、磁性試薬、抗原及び標識試薬(酵素抗体)が結合した免疫複合体に対し、標識試薬と特異的に反応する化学発光基質を含んだ基質液を、2次BF分離後の容器100内に分注する。そして、基質液が注入された容器100は、免疫酵素反応ユニット10の回転によって、所定位置まで搬送される。所定位置に搬送された容器100は、容器移送ユニット15によって発光測定ユニット16へ移送される。
発光測定ユニット16は、光電子増倍管(PMT)16aを検出器とする測光部であり、免疫複合体と化学発光基質とからなる発光現象をフォトカウントにより測光する。つまり、発光量を測定する。発光測定ユニット16で検出された光束(発光量)に対応する測光信号は、不図示のアナログ-デジタル変換器によりデジタル化される。そして、デジタル化された測光信号は、不図示のシリアルインターフェース等を介して制御装置80に入力され、制御装置80によって分析処理が行われる。
2.容器の構成
次に、容器100の構成について、図2を参照して説明する。図2は、自動分析装置1において使用される容器100を示す斜視図である。
図2に示すように、容器100は、有底の円筒状に形成されており、胴体部101と、首部102とを有する。容器100の材料としては、樹脂やガラス等を挙げることができる。また、容器100は、透明又は半透明に形成される。
胴体部101の軸方向の一端部は、容器100の底部を形成しており、略半球状に形成される。首部102は、胴体部101の軸方向の他端部に設けられる。この首部102の外径は、胴体部101の外径よりも大きい。首部102の外径を胴体部101の外径よりも大きく形成することにより、首部102と胴体部101との間に段差が形成される。また、首部102の外周面には、首部102の軸方向に沿って延びる溝102aが形成される。
なお、容器における首部は、胴体部の外径よりも大きい外径であればよく、溝を有するものに限定されない。容器の首部としては、例えば、胴体部の外径よりも大きい第1外径部と、第1外径部の外径よりも大きい第2外径部を有するものや、一部が胴体部の外径よりも大きい外径のものであってもよい。
3.容器供給ユニットの構成
次に、容器供給ユニット3の詳細な構成について、図3~図6を参照して説明する。図3及び図4は、容器供給ユニット3の斜視図であり、図5は、容器供給ユニット3の側面図である。図6は、容器供給ユニット3の容器整列部34の側面図である。
図3及び図4に示すように、容器供給ユニット3は、ベース部31と、容器貯留部32と、容器排出部33と、容器整列部34と、振動状態検出センサ110とを備える。ベース部31は、適当な厚みを有する矩形の板状に形成される。
[容器貯留部]
まず、容器貯留部32について、図3を参照して説明する。図3に示すように、容器貯留部32は、上面が開口した中空の箱状に形成されており、複数の容器100(図2参照)を貯留する。この容器貯留部32は、4つの側面板32a,32b,32c,32dと、底面板32eとを有する。側面板32a,32bは、互いに対向しており、側面板32c,32dは、互いに対向している。
側面板32dには、上下方向に延びる切欠き38が形成される。この切欠き38には、容器排出部33が配置される。また、側面板32dには、切欠き38及び容器排出部33を覆うカバー部材39が取り付けられている。このカバー部材39内には、容器整列部34の後述する整列レール51の一端部が配置される。
底面板32eの内面は、側面板32cから側面板32dへ向かうにつれて低くなるように傾斜している。これにより、容器貯留部32に貯留された複数の容器100は、不図示の底面板に案内されて、容器排出部33が配置された側面板32d側に移動する。
容器貯留部32の開口は、装置外装体18(図1参照)に設けられた貯留部用蓋(不図示)によって閉じられている。容器貯留部32に複数の容器100を投入する場合は、ユーザーは、貯留部用蓋を開けて、容器貯留部32の開口を露出させる。
容器排出部33は、容器貯留部32に貯留された複数の容器を側面板32dの外側に排出する。
[容器排出部]
次に、同じく図3を参照して、容器排出部33について説明する。図3に示すように、容器排出部33は、環状ベルト43と、環状ベルト43を回転可能に支持するベルト支持機構44と、環状ベルト43を回転させる不図示のベルト回転機構と、環状ベルト43に設けられた載置部材45とを備える。
環状ベルト43は、無端状に形成されており、ベルト支持機構44の駆動ローラ及び従動ローラに掛け渡される。環状ベルト43の材料としては、ゴム材、合成樹脂、金属ワイヤ等をあげることができる。
環状ベルト43の外周面には、複数の載置部材45が設けられる。複数の載置部材45は、環状ベルト43の周方向に所定の間隔をあけて配置される。この複数の載置部材45には、容器貯留部32に貯留された容器100が載置される。
ベルト支持機構44は、駆動ローラと、従動ローラと、一対のローラ支持板46A,46Bとを有する。一対のローラ支持板46A、46Bは、上下方向に延びる略長方形の板体からなっており、互いの一方の平面が対向している。
駆動ローラは、一対のローラ支持板46A、46B間に配置され、一対のローラ支持板46A、46Bの下部に回転可能に支持される。従動ローラは、一対のローラ支持板46A、46B間に配置され、一対のローラ支持板46A、46Bの上部に回転可能に支持される。これにより、駆動ローラ及び従動ローラに掛け渡されている環状ベルト43は、上下方向に長い環状に形作られる。
駆動ローラには、不図示のベルト回転機構を構成するモータが連結される。そして、モータが駆動すると、駆動ローラが回転し、駆動ローラに掛け渡された環状ベルト43が回転する。
その結果、環状ベルト43には、載置部材45が上方向に移動する往路と、載置部材45が下方向に移動する復路が形成される。なお、環状ベルト43の往路は、容器貯留部32内に配置され、環状ベルト43の復路は、容器貯留部32の外側に配置される。
また、環状ベルト43の往路は、環状ベルト43の上部である湾曲部(以下、「上湾曲部」という)を経て復路に切り替わる。そして、環状ベルト43の復路は、環状ベルト43の下部である湾曲部(以下、「下湾曲部」という)を経て往路に切り替わる。環状ベルト43の下湾曲部は、ベルト回転機構と共に、容器貯留部32の底面板32eの下方に配置されている。
そして、複数の載置部材45は、往路において載置された容器100を搬送し、往路と復路が切り替わる上部湾曲部においてカバー部材39に向けて容器100を排出する。
[容器整列部]
次に、容器整列部34について、図4及び図5を参照して説明する。図4及び図5に示すように、容器整列部34は、容器排出部33から排出された容器100を整列させ、整列された容器100を、容器搬送ユニット5に受け渡す移送位置まで搬送する。
容器整列部34は、整列レール51と、シャッタ機構52と、数量監視センサ53A、53Bと、容器有無センサ54と、整列レール51を支持する整列部支持部材90と、整列レール51に振動を加える加振器55と、整列レール51の振動状態を検出する振動状態検出センサ110とを備える。
整列レール51は、互いに対向する2つの平板61A,61Bから構成される。これら平板61A,61Bは、横長の略長方形に形成されており、側面板32dに略平行に配置される。平板61A,61Bの互いに対向する平面間の距離は、容器100における胴体部101の外径よりも長く、首部102の外径よりも短い。例えば、平板61A、61Bの互いに対向する平面間の距離は、胴体部101の外径よりも、0.1~0.5mm程度長く設定される。
平板61A、61Bにおける上下方向の上端部には、第1傾斜面部61a(傾斜面部の一例)と、第2傾斜面部61b(傾斜面部の一例)と、段差面部61cが形成される。第1傾斜面部61aは、搬送方向の上流側、すなわちカバー部材39から容器100を受け取る受取位置から下流側に向かうにつれて上下方向の高さが連続して低くなるように傾斜している。第1傾斜面部61aは、水平方向に対して第1の傾斜角度θ1で傾斜している。第1の傾斜角度θ1は、容器100の搬送速度及び移送位置において容器100を受け渡すタイミングに基づいて設定される。第1の傾斜角度θ1は、容器100を搬送するために最低限の搬送力を得るための角度の2倍に設定されている。第1の傾斜角度θ1としては、例えば4.5°に設定される。
第2傾斜面部61bは、第1傾斜面部61aと同様に、搬送方向の上流側から下流側に向かうにつれて上下方向の高さが連続して低くなるように傾斜している。第2傾斜面部61bは、水平方向に対して第2の傾斜角度θ2で傾斜している。第2の傾斜角度θ2は、第1の傾斜角度θ1よりも小さく設定されている(θ1>θ2)。すなわち、第2傾斜面部61bは、第1傾斜面部61aよりも緩やかに形成されている。
第2傾斜面部61bでは、第1傾斜面部61aを通過した容器100の姿勢を安定化させる。すなわち、第2傾斜面部61bを容器100が通過する際に、容器100は、その軸方向が上下方向と略平行となり、その姿勢が安定する。第2の傾斜角度θ2は、容器100を搬送するために最低限の搬送力を得るための角度に設定されている。第2の傾斜角度θ2としては、例えば2°に設定されている。
上述の各部材により構成される整列レール51は、図5に示すように、長手方向の一端部、すなわち搬送方向の上流側が上述のカバー部材39を貫通して、カバー部材39内に配置される。すなわち、容器排出部33から排出された容器100は、カバー部材39内において、整列レール51に渡される。
シャッタ機構52は、整列レール51における搬送方向の下流側、すなわち移送位置の近傍において、整列レール51の移送位置よりもカバー部材39側に配設される。シャッタ機構52は、整列レール51に沿って移動する複数の容器100の移動を一時的に遮断し、整列レール51の移送位置に容器100を1つずつ送り出す。
数量監視センサ53A,53Bは、カバー部材39とシャッタ機構52との間に配置される。これら数量監視センサ53A,53Bは、例えば、フォトセンサであり、対向する位置に容器100があるか否かを検出する。
容器有無センサ54は、不図示のブラケットを介して支持フレーム71に固定される。容器有無センサ54は、整列レール51の移送位置に配置された容器100に対向している。容器有無センサ54は、例えば、フォトセンサであり、対向する位置(移送位置)に容器100があるか否かを検出する。容器有無センサ54で移送位置に容器100がないことが検出された場合、制御装置80によって、容器100の詰まりやジャム等が発生したと判断され、分析動作を保留する等の処置が行われた上で、容器100の供給に失敗した旨がユーザーに通知される。
さらに、シャッタ機構52には、ストッパ部材62が設けられている。ストッパ部材62は、固定ブラケット86を介して支持フレーム71に固定されている。ストッパ部材62は、後述する整列レール51の段差面部61cの上下方向の上方に配置されており、段差面部61cと上下方向の上方に隙間を空けて対向する。そして、ストッパ部材62は、整列レール51の移動位置に配置された容器100の首部102に当接する。
数量監視センサ53A,53Bは、カバー部材39とシャッタ機構52との間に配置されている。これら数量監視センサ53A,53Bは、例えば、フォトセンサであり、対向する位置に容器100があるか否かを検出する。
数量監視センサ53A,53Bの両方が、対向する位置に容器100が有ることを検出した場合は、シャッタ機構52を通過する前の容器100が所定の個数以上あると判別できる。これにより、少なくとも所定の個数以上の容器100が連続的に後工程に供給されるという情報を、後工程を制御する制御装置80に送信することができる。
また、数量監視センサ53A,53Bの少なくとも一方が、対向する位置に容器100が無いことを検出した場合は、シャッタ機構52を通過する前の容器100が所定の個数未満であると判別できる。これにより、少なくとも所定の個数以上の容器100が連続的に後工程に供給されないという情報を、後工程を制御する制御装置80に送信することができる。
加振器55は、整列レール51を支持する整列部支持部材90に取り付けられる。加振器55としては、例えば、ソレノイド(コイル)等を挙げることができる。加振器55により整列レール51に振動が加えられることにより、整列レール51に保持された容器100は、徐々に整列レール51の他端部、すなわち搬送方向の下流側に向かって移動する。整列レール51の下流側は、上述した容器搬送ユニット5に容器100を渡す移送位置に設定される。
次に、整列レール51を支持する整列部支持部材90の詳細な構成について、図6を参照して説明する。図6に示すように、整列部支持部材90は、固定架台91Aと、第1の振動体91Bと、第2の振動体91Cと、加振器55とを備える。
固定架台91Aは、整列レール51を含む容器整列部34の構造を自動分析装置1に固定する土台である。第1の振動体91Bは、固定架台91Aの上に配置され、第1の振動体91Bの上には、第2の振動体91Cが配置される。そして、第2の振動体91Cの上に整列レール51が配置される。
第1の振動体91B及び第2の振動体91Cが有する面のうちの、搬送方向の下流側の面である第1の面Sd1、及び、搬送方向の下流側の面である第2の面Sd2は、搬送方向と垂直な方向に対して所定の角度だけ傾斜している。
第1の振動体91B及び固定架台91Aは、平板状の板ばね92A及び92Bによって接続される。板ばね92Aは、ボルト93A~93D(ボルト93B及び93Cは図示略)によって、第1の振動体91B及び固定架台91Aの第1の面Sd1上に取り付けられる。板ばね92Bは、ボルト93E~93H(ボルト93F及び93Gは図示略)によって、第1の振動体91B及び固定架台91Aの第2の面Sd2上に取り付けられる。つまり、第1の振動体91Bは、板ばね92A及び92Bを介して、搬送方向に往復移動可能な状態で固定架台91Aに支持される。
第2の振動体91C及び第1の振動体91Bは、平板状の板ばね92C及び92Dによって接続される。板ばね92Cは、ボルト93I~93L(ボルト93J及び93Kは図示略)によって、第2の振動体91C及び第1の振動体91Bの第1の面Sd1上に固定される。板ばね92Dは、ボルト93M~93P(ボルト93N及び93Pは図示略)によって、第2の振動体91C及び第1の振動体91Bの第2の面Sd2上に固定される。つまり、第2の振動体91Cは、板ばね92C及び92Dを介して、搬送方向に往復移動可能な状態で第1の振動体91Bに支持される。
第1の振動体91Bは、上端部が開口されて下端部に底部が形成されるU字形状の開口部91Baを有する。開口部91Baの底部には、コイル(ソレノイド)で形成された加振器55が取り付けられる。
コイルで構成された加振器55に電流が印加されると、第2の振動体91Cが加振器55側に引き寄せられる。一方、加振器55に印加されていた電流が遮断されると、板ばね92C及び92Dが元の位置に戻る力、すなわち、加振器55が第2の振動体91Cを引き寄せる力と逆向きの力を発生する。これにより第2の振動体91Cは元の位置に復帰する。そして、加振器55に対する電流の印加及び遮断を繰り返すことにより、第2の振動体91Cは上下の方向に振動する。このとき、加振器55が取り付けられている第1の振動体91Bは、第2の振動体91Cが加振器55に引き寄せられたり離れたりする動きの反作用により反力を受けて振動する。
上述のように、第1の振動体91B及び第2の振動体91Cはともに、搬送方向と垂直な方向に対して所定の角度だけ傾斜した第1の側面Sd1及び第2の側面Sd2を有することから、第1の振動体91B及び第2の振動体91Cの上下方向の振動は、搬送方向の往復動作に変換される。
第1の振動体91Bが固定架台91Aに対して完全に固定されている場合、この反力が構造体としての容器整列部34の外部に逃げてしまい、その分、振動発生効率が悪化する。本実施形態では、第1の振動体91Bと固定架台91Aとを、板ばね92A及び92Bで固定することにより、第1の振動体91Bは固定架台91Aに対して可動できるようになる。したがって、本実施形態によれば、反作用による反力は構造体に吸収され、それゆえ、振動発生効率の低下を防ぐことが可能となる。
加振器55に対する電流の印加及び遮断は、後述の振動状態制御部200の加振器ドライバ204(図10参照)から加振器55に対して、ON及びOFFの二値を有する制御信号が供給されることにより実現される。ここで、第1の振動体91B及び第2の振動体91Cの往復動作の周波数が、これらの振動体を含む構造体としての容器整列部34の共振周波数と一致するように、加振器55に与える電流の周期を調整することにより、容器整列部34が共振状態となる。そして、容器整列部34が共振状態となることにより、第1の振動体91B及び第2の振動体91Cが大きく振動する。
なお、容器供給ユニット3を構成する固定架台91A、第1の振動体91B、第2の振動体91C、板ばね92A~92Dは、例えば、アルミニウム、鋳鉄、ステンレス鋼等の金属材料で構成される。これらの金属材料は、それぞれ固有の熱膨張係数を有する。すなわち、これらの金属材料は置かれた場所(環境)の温度(以下、「環境温度」とも称する)によって膨張したり収縮したりする。具体的な熱膨張係数(熱膨張率)の代表値を表1に示す。
表1には、アルミニウムの熱膨張係数は23×10-6/℃であり、鋳鉄の熱膨張係数は11.7×10-6/℃であり、ステンレス鋼の熱膨張係数は17×10-6/℃であることが示されている。
ここで、このような様々な種類の金属材料で構成される容器整列部の共振周波数と、環境温度との対応について、図7を参照して説明する。図7は、容器整列部の共振周波数と環境温度との対応を示すグラフである。図7のグラフの縦軸は共振周波数(Hz)を示し、横軸は環境温度(℃)を示す。
図7に示すグラフは、ある常温の環境下で共振周波数が調整された容器整列部を含む自動分析装置を、環境試験室等の室温を制御できる環境に設置し、環境温度を15℃~30℃まで変化させた場合における、容器整列部の共振周波数と、環境温度との対応を示すグラフである。この実験は、共振周波数を調整済みの3台の異なる自動分析装置を対象として行われた。3台の自動分析装置における各測定結果は、図7において、それぞれ、三角形のマーカーが付与された直線、円形のマーカーが付与された直線、及び、四角形のマーカーが付与された直線として示される。
図7に示すグラフによれば、3台のいずれの自動分析装置においても、環境温度が15℃である場合と30℃である場合とでは、共振周波数がおおよそ1Hz程度変化している。つまり、製造工場で共振周波数の調整が行われた自動分析装置を、実際に使用する環境にユーザーが設置した場合にも同様に、環境温度の変化に伴って、容器整列部の共振周波数が変化する。そして、容器整列部の共振周波数が変化した場合には、整列レールの振動状態も変化する。
容器整列部の共振周波数の変化に伴って、容器整列部の整列レールに加わる振動が想定される振動よりも大きくなった場合、整列レール上を搬送される容器に加わる振動は大きくなる。その結果、移送位置にある容器が想定より大きく振動してしまい、容器搬送ユニットのアームが、移送位置にある容器を掴めなく(チャックできなく)なってしまう。この場合、容器の搬送失敗を検知した制御装置の制御に基づいて、自動分析装置の分析動作が停止してしまう。
一方、容器整列部の整列レールに加わる振動が、想定される振動よりも小さくなった場合、整列レール上を搬送される容器に加わる振動も小さくなる。その結果、容器の搬送速度が遅くなり、免疫酵素反応ユニットへの容器の供給不足を招いてしまう。つまり、自動分析装置が置かれた環境の温度変化によって容器整列部の共振周波数が変化し、整列レールの振動状態が変化した場合、整列レール上を搬送される容器の搬送速度が変動するため、自動分析装置の動作に悪影響を及ぼす結果となってしまう。
本実施形態では、整列レール51の振動の状態を検出する振動状態検出センサ110(図3,図5参照)を自動分析装置1に搭載もしくは装置近傍に配置し、制御装置80の振動状態制御部200(図10参照)が、振動状態検出センサ110の検出値をフィードバック信号として用いて加振器55に入力する制御信号を制御する。
振動状態検出センサ110には、例えば、磁気誘導型近接センサ又はレーザー変位計等を用いることができる。図5の容器供給ユニット3の側面図においては、振動状態検出センサ110として、磁気誘導型近接センサ110αを使用した例を示す。磁気誘導型近接センサ110αのコイルは、例えば、不図示のプリント基板上に配線パターンとして形成される。そして、磁気誘導型近接センサ110αは、ベース部31にその一端が固定された剛体112上の、整列レール51の一端部の近傍の位置に取り付けられる。
磁気誘導型近接センサ110αが取り付けられた剛体112を、整列レール51の振動時にも振動しないベース部31に固定することにより、磁気誘導型近接センサ110αが整列レール51の振動の影響を受けなくなる。これにより、磁気誘導型近接センサ110αが、整列レール51の振動状態を正確に検出することができる。磁気誘導型近接センサ110αの配置箇所には、保護カバー111が設けられる。
図8に、振動状態検出センサ110としてレーザー変位計110βを使用した場合における、レーザー変位計110β及び容器供給ユニット3の側面図を示す。図8に示す例では、レーザー変位計110βは、容器供給ユニット3の近傍の位置に配置された平板状の剛体113上の、整列レール51の一端部の近傍の位置に固定される。
磁気誘導型近接センサ110αは、センサに組み込まれたコイルから発せられる高周波の磁界を金属製の対象物(被測定物)に当て、コイル周囲の磁気抵抗変化による自己のコイルのインダクタンスの変化を検出することにより、被測定物の変位量(自センサとの距離の変動)を測定するセンサである。磁気誘導型近接センサ110αでは、コイルの設計及び/又は調整を行うことにより、サブミクロン単位の変位量も検出することが可能となる。
レーザー変位計110βは、測定対象物にレーザー光を照射し対象物からの反射光の角度を測定することにより、三角測量の原理に基づき対象物との距離を算出する測定器である。受光素子の性能により、対象物との距離をサブミクロン単位で測定することができる。
ここで、レーザー変位計110βの出力波形について、図9を参照して説明する。図9は、レーザー変位計110βの出力波形を示すグラフである。図9のグラフの縦軸は、レーザー変位計110βの出力波形の振幅(mm)を示し、横軸は時間(s)を示す。図9に示すグラフには、加振器55に印加(入力)する制御信号の波形のデューティ(波形のON時間)を500μs、800μs、1000μsと変化させた各場合に対応するレーザー変位計110βの出力波形が、それぞれ、実線、破線、一点鎖線で示される。
図9に示されるように、制御信号の波形のデューティが500μsの場合と、800μsの場合と、1000μsの場合とで、レーザー変位計110βの出力波形の振幅が異なる。具体的には、制御信号の波形のデューティが大きくなるほど、レーザー変位計110βの出力波形の振幅も大きくなる。制御信号の波形のデューティが大きくなるほど、整列レール51の振動の振幅も大きくなり、それゆえ、レーザー変位計110βの出力波形の振幅も大きくなるためである。つまり、レーザー変位計110βの出力波形の振幅は、整列レール51の振動の振幅を表したものであると考えられる。
したがって、レーザー変位計110βの出力波形の振幅のピークトゥピークを測定することにより、整列レール51の振動の振幅を算出ことができる。また、レーザー変位計110βの出力波形のピークトゥピークの周期を測定することにより、副次的に、加振器55を駆動する制御信号の周波数(駆動周波数)を算出することも可能である。
磁気誘導型近接センサ110α及びレーザー変位計110βのいずれのセンサであっても、対象物との距離を測定できるため、これらのセンサで検出された、整列レール51の一端部との距離の時間方向における変位の情報に基づいて、整列レール51の振動の振幅を測定することができる。したがって、これらのセンサ又は測定器で構成した振動状態検出センサを容器整列部34の整列レール51の近傍に配置することにより、整列レール51の振動の振幅を測定することができる。そして、測定した整列レール51の振動の振幅の情報を用いて、制御装置80の振動状態制御部200が行うフィードバック制御で使用されるフィードバックパラメータの計算も容易に行うことができる。
なお、いずれのセンサ及び測定器も、振動に伴う整列レール51の変位量を非接触で測定することが可能であるが、これらのセンサ及び測定器は感度が高く振動に対して敏感であるため、剛体等に固定して使用する等の対応が必要となる。
本実施形態では、振動状態制御部200が、磁気誘導型近接センサ110α又はレーザー変位計110β等で構成される振動状態検出センサ110が検出した、整列レール51の一端部との距離の時間方向における変位を、整列レール51の振動の振幅として検出する。そして、振動状態制御部200は、振動状態検出センサ110の検出値に基づいて測定された整列レール51の振動の振幅に基づいて、加振器55に入力する制御信号を制御する。より詳細には、振動状態制御部200は、測定された整列レール51の振動の振幅が、予め定められた目標の振幅(以下、「目標値」とも称する)に近づくようにフィードバック制御を行う。振動状態制御部200によるフィードバック制御は、加振器55に印加する制御信号の波形のデューティを変更することにより行う。
整列レール51の振動の振幅と、整列レール51における容器100の搬送速度とは、概ね比例関係にあることが実験的に分かっているため、整列レール51の振動の振幅の目標値は、容器100の最適な搬送速度に基づいて設定が可能である。
[振動状態制御に関わるブロックの構成]
次に、容器整列部34の整列レール51の振動状態制御に関わるブロックの構成について、図10を参照して説明する。図10は、整列レール51の振動状態制御に関わる各ブロックの構成例を示すブロック図である。
図10には、内部に加振器55が設置された第1の振動体91Bと、板ばね92A~92Dによって第1の振動体91Bと接続された第2の振動体91Cと、第2の振動体91Cの上部に配置された整列レール51とを備えた容器整列部34を、模式的に示す。容器整列部34の整列レール51の一端部の近傍の位置には、振動状態検出センサ110が配置され、振動状態検出センサ110と振動状態制御部200とは、データを送受信可能に接続される。
振動状態制御部200は、振幅検出部201、発振器202、デューティ制御回路203及び加振器ドライバ204を有する。振動状態制御部200を構成する各部の動作は、制御部210によって制御される。
振幅検出部201は、振動状態検出センサ110の検出値に基づいて、整列レール51の振動の振幅を検出(測定)し、検出した振幅値をデューティ制御回路203に出力する。発振器202は、加振器55に印加する制御信号の基本波を発生させてデューティ制御回路203に出力する。デューティ制御回路203は、振幅検出部201から入力された振幅値に応じて制御信号の波形のデューティ(波形がON(ハイレベル)である区間の時間)を変化させて、波形のデューティが変更された制御信号を加振器ドライバ204に出力する。加振器ドライバ204は、例えばアンプ等で構成され、デューティ制御回路203から入力された制御信号を加振器55が動作可能なレベルまで増幅して加振器55に印加する。加振器55は、加振器ドライバ204から制御信号が印加されることにより磁界を発生させ、第2の振動体91Cを振動させる。
本実施形態では、デューティ制御回路203は、振幅検出部201から入力された実際の振幅の値と、予め設定された目標値とを比較し、実際の振幅が目標値に近づくように波形のデューティを変化させる。
上述の通り、容器整列部34を構成する第1の振動体91B及び91Bは、自身を含む容器整列部34の共振周波数で加振器55が駆動されることにより、大きく振動する。そして、その振動状態が最適に調整されることにより、整列レール51による容器100の搬送速度も最適化される。つまり、容器100の搬送速度の最適化にあたっては、加振器55に印加する制御信号の周波数及びデューティが重要なパラメータとなる。
整列レール51の振動状態を最適化するためのフィードバック制御は、加振器55に印加する制御信号の周波数及びデューティの両方を変化させることによっても行うことが可能である。しかしながら、周波数及びデューティの両方をフィードバック制御のパラメータとした場合、最適な振動を発生させるためのパラメータの組み合わせが幾通りも生まれてしまい、フィードバック制御が収束せずに発散してしまう可能性が高くなる。したがって、本実施形態においては、このようにフィードバック制御が発散してしまうことを防ぐため、振動状態制御部200は、より簡易的な制御として、加振器55に印加する制御信号の周波数は変化させずに、制御信号の波形のデューティのみを変化させる制御を行う。
上記フィードバック制御を含む、整列レール51の振動状態の制御は、例えば以下の手順で行われる。まず、自動分析装置1の製造段階で、工場において自動分析装置1の個体の共振周波数を測定する。次に、測定した共振周波数で容器供給ユニット3を駆動し、振動状態検出センサ110で測定される実際の振幅を目標値と一致させるように、加振器55に印加する制御信号の波形のデューティを変化させる。そして、振動状態検出センサ110で測定される実際の振幅が目標値と一致した場合の測定値(振幅)を、自動分析装置1の固有の共振周波数(初期値)として、工場出荷段階で自動分析装置1内に記録させる。自動分析装置1への記録は、例えば、測定値を制御装置80等にパラメータとして書き込むこと等によって行うことができる。
続いて、自動分析装置1を実際に作業現場で動作させる場合には、まず、自動分析装置1に記録された初期値で容器供給ユニット3を駆動する。次いで、振動状態検出センサ110から出力される情報に基づいて、制御装置80の振動状態制御部200が上述のフィードバック制御を行う。
なお、本実施形態では、振動状態制御部200は、例えば、PID制御、移動平均法、ある所定の時間枠(区間)の平均値を用いて制御を行う方法(以下、「区間平均法」と称する)等の手法を用いてフィードバック制御を行う。
PID制卸は、目標値と現在値との差の大きさに比例した操作(制御)を行う比例制御(P)、現在値の変化に対してこれを抑えるような操作を行う微分制御(D)、及び、目標値と現在値との差を無くすように操作を行う積分制御(I)の各パラメータにより構成される。ただし、PID制御においては各パラメータを最適に決定する為のチューニング作業が必要となり、パラメータが適切でない場合はオーバーシュートを引き起こす可能性がある。
移動平均法では、振幅の値を所望の時間だけ過去に遡って平均値を算出し、算出した移動平均値と目標値とを比較し、目標値に近づけるよう操作を行う。移動平均値を参照しながら制御を行う為、平均化する時間間隔を適切に設定すれば、長期的の緩やかな変動を抑える上では効果的な方法である。また過渡的な変化に対しては鈍感な反応となる。本実施形態では、数時間オーダーの経時的な周囲温度変動に対する制御を行うことを目的とするため、移動平均を行う時間は、数分~数十分程度に設定することが望ましい。
区間平均法は、移動平均法と類似の方法であるが、移動平均のように時系列的に平均値を算出するのではなく、ある時間枠を区切ってその時間枠内に存在する値の平均を算出し、求めた平均値(区間平均値の一例)と目標値とを比較して制御を行う方法である。平均値を算出するための時間枠の長さを短く設定することにより、短期間における振幅値の平均値が算出され、急峻な変動が起こった場合でもある程度敏感に反応することが可能となる。しかしながら、移動平均法に比べるとオーバーシュートが発生する可能性が高くなる。
フィードバック制御方法は、自動分析装置1の装置設置環境の変動幅に応じて、上述した各制御方法の中から適切なものを適宜選択すればよい。なお、上述した制御方法以外の方法を用いてもよい。
[デューティ制御回路によるフィードバック制御の手法]
次に、振動状態制御部200によるフィードバック制御の手順について、図11を参照して詳述する。図11は、振動状態制御部200によるフィードバック制御の手順の例を示すフローチャートである。
まず、振動状態制御部200を制御する制御部210は、フィードバック制御に用いる各設定値及びフラグに初期値を設定する(ステップS1)。具体的には、制御部210は、加振器ドライバ204に出力する制御信号において波形がONである時間を示す、デューティDUTYに“5%”を設定する。また、制御部210は、デューティの変化量を示す“dDUTY”に所定の値を設定する。さらに、制御部210は、前回のフィードバック制御時に、デューティDUTYを増加させたか減少させたか、すなわち、前回の制御時のデューティDUTYの増減の方向を示すフラグである“iPrev”に“0”を設定する。
次に、デューティ制御回路203は、振幅検出部201で算出された現在の整列レール51の振動の振幅値(以下「現在値」とも称する)LDCを取得する(ステップS2)。次に、デューティ制御回路203は、ステップS2で取得した振幅の現在値LDCが、目標の振幅値として設定された目標値tLDCからδ(μm)を減算した値よりも、小さいか否かを判定する(ステップS3)。“δ”は、目標値に対する許容値を示す値であり、許容値δの値には、実験等に基づいて求まる最適な値を設定可能である。
ステップS3で、振幅の現在値LDCが、目標値tLDCから許容値δ(μm)減算した値以上であると判定された場合(ステップS3がNO判定の場合)、デューティ制御回路203は、振幅の現在値LDCが、目標値tLDCに許容値δ(μm)を加算した値よりも、大きいか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4で、振幅の現在値LDCが、目標値tLDCに許容値δ(μm)を加算した値以下であると判定された場合(ステップS4がNO判定の場合)、デューティ制御回路203は、フラグiPrevに“0”を設定する(ステップS5)。
つまり、デューティ制御回路203は、整列レール51の振動の振幅の現在値LDCが目標値tLDC±許容値δμmの範囲内である場合には、制御信号の波形のデューティを変更する制御は行わず、前回の制御時のデューティDUTYの増減の方向を示すフラグiPrevに“0”を設定する。ステップS5の処理後、デューティ制御回路203は、処理を図12のステップS20に移す。
ステップS3で、振幅の現在値LDCが、目標値tLDCから許容値δμmを減算した値未満であると判定された場合(ステップS3がYES判定の場合)、デューティ制御回路203は、フラグiPrevの値が“0”より大きいか、すなわち、正の値であるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6で、フラグiPrevの値が“0”より大きいと判断された場合(ステップS6がYES判定の場合)、デューティ制御回路203は、デューティの変化量dDUTYの値に“2”を乗算する。すなわち、デューティの変化量dDUTYの値を2倍にする(ステップS7)。次に、デューティ制御回路203は、フラグiPrevの値を“+1”にする(ステップS8)。
次に、デューティ制御回路203は、デューティDUTYにデューティ変化量dDUTYを加算した値を、新たなデューティDUTYの値とする(ステップS9)。
つまり、デューティ制御回路203は、振幅の現在値LDCが、目標値tLDCから許容値δμmを減算した値を下回っており、かつ、前回制御時にデューティDUTYが増加されていた場合には、デューティの増加量がまだ足りていないと判断する。そして、デューティ制御回路203は、デューティ変化量dDUTYを2倍にする処理を行い、2倍にされたデューティ変化量dDUTYをデューティDUTYに加算した値を、新たなデューティDUTYとする。ステップS9の処理後、デューティ制御回路203は、処理を図12のステップS20に移す。
ステップS6で、フラグiPrevが“0”以下であると判断された場合(ステップS6がNO判定の場合)、デューティ制御回路203は、フラグiPrevの値が“0”未満であるか否かを判定する(ステップS10)。ステップS10で、フラグiPrevが“0”より小さいと判定された場合(ステップS10がYESの場合)、デューティ制御回路203は、デューティ変化量dDUTYの値を“2”で除算する。すなわち、デューティ変化量dDUTYの値を1/2にする(ステップS11)。ステップS11の処理後、デューティ制御回路203は、ステップS8以降の処理を行う。
ステップS10で、フラグiPrevが“0”より小さくないと判定された場合(ステップS10がNO判定の場合)、すなわち、フラグiPrevが“0”であると判定された場合、デューティ制御回路203は、ステップS8以降の処理を行う。
つまり、デューティ制御回路203は、振幅の現在値LDCが、目標値tLDCから許容値δμmを減算した値を下回っており、かつ、前回制御時にデューティDUTYが減少されていた場合には、デューティの減少量が大きすぎたと判断する。そして、デューティ制御回路203は、デューティ変化量dDUTYを1/2にする処理を行い、1/2とされたデューティ変化量dDUTYをデューティDUTYに加算した値を、新たなデューティDUTYとする。
ステップS4で、振幅の現在値LDCが、目標値tLDCに許容値δ(μm)を加算した値よりも大きいと判定された場合(ステップS4がYES判定の場合)、デューティ制御回路203は、フラグiPrevが“0”より大きいかを判定する(ステップS12)。ステップS12で、フラグiPrevが“0”より大きいと判断された場合(ステップS12がYES判定の場合)、デューティ制御回路203は、デューティ変化量dDUTYの値を“2”で除算する。すなわち、デューティ変化量dDUTYの値を1/2にする(ステップS13)。次に、デューティ制御回路203は、フラグiPrevの値を“-1”にする(ステップS14)。
次に、デューティ制御回路203は、デューティDUTYからデューティ変化量dDUTYを減算した値を、新たなデューティDUTYの値とする(ステップS15)。ステップS15の処理後、デューティ制御回路203は、処理を図12のステップS20に移す。
つまり、デューティ制御回路203は、振幅の現在値LDCが、目標値tLDCに許容値δμmを加算した値を上回っており、かつ、前回制御時にデューティDUTYが増加されていた場合には、デューティの増加量が大きすぎたと判断する。そして、デューティ制御回路203は、デューティ変化量dDUTYを1/2にする処理を行い、1/2にされたデューティ変化量dDUTYをデューティDUTYから減算した値を、新たなデューティDUTYとする。
一方、ステップS12で、フラグiPrevの値が“0”以下であると判定された場合(ステップS12がNO判定の場合)、デューティ制御回路203は、フラグiPrevの値が“0”より未満であるか否かを判定する(ステップS16)。
ステップS16で、フラグiPrevの値が“0”より小さいと判定された場合(ステップS16がYES判定の場合)、デューティ制御回路203は、デューティ変化量dDUTYの値に“2”を乗算する(ステップS17)。ステップS17の処理後、デューティ制御回路203は、ステップS14以降の処理を行う。
ステップS16で、フラグiPrevの値が“0”より小さくないと判定された場合(ステップS16がNO判定の場合)、すなわち、フラグiPrevの値が“0”であると判定された場合、デューティ制御回路203は、ステップS14以降の処理を行う。
つまり、デューティ制御回路203は、振幅の現在値LDCが、目標値tLDCに許容値δμmを加算した値を上回っており、かつ、前回制御時にデューティDUTYが減少されていた場合には、デューティの減少量が少なすぎたと判断する。そして、デューティ制御回路203は、デューティ変化量dDUTYを2倍にする処理を行い、2倍にされたデューティ変化量dDUTYをデューティDUTYから減算した値を、新たなデューティDUTYとする。
次に、図12を参照して、図11に示した結合子A以降の処理について説明する。図12は、図11の結合子A以降の処理の手順を示すフローチャートである。図11のステップS5、S9又はS15の処理後、デューティ制御回路203は、デューティDUTYの値が“5%”未満か否かを判定する(ステップS20)。ステップS20で、デューティDUTYの値が“5%”より小さいと判定された場合(ステップS20がYES判定の場合)、デューティ制御回路203は、デューティDUTYに“5%”を設定する(ステップS21)。ステップS21の処理後、デューティ制御回路203は、処理を図11のステップS2に戻す。
一方、ステップS20で、デューティDUTYの値が“5%”以上であると判定された場合(ステップS20がNO判定の場合)、デューティ制御回路203は、デューティDUTYの値が“15%”より大きいか否かを判定する(ステップS22)。
ステップS22で、デューティDUTYの値が“15%”より大きいと判定された場合(ステップS22がYES判定の場合)、デューティ制御回路203は、デューティDUTYに“15%”を設定する(ステップS23)。ステップS23の処理後、デューティ制御回路203は、処理を図11のステップS2に戻す。一方、デューティDUTYの値が“15%”以下であると判定された場合には、デューティ制御回路203は、処理を図11のステップS2に戻す。
つまり、図12に示す処理では、デューティ制御回路203は、加振器55に印加する制御信号の波形のON時間であるデューティDUTYの値を、5%以上15%以下の範囲内の値に収める処理(リミッター処理)を行っている。デューティ制御回路203がこのような処理を行うことにより、フィードバック制御が発散してしまうことをより確実に防止することができ、かつ、整列レール51の振動の振幅が目標値に収束する時間をより短縮することができる。
なお、図12に示したデューティDUTYの値の制限値(リミッター)は一例であり、これらの値には、容器整列部34の機械的な特性等に応じて求まる最適な値を適宜設定可能である。
上述のフィードバック制御においては、測定された整列レール51の振動の振幅の現在値LDCが目標値tLDCから乖離すればするほど、デューティ変化量dDUTYの値(操作量)が大きくなる。したがって、本実施形態によれば、自動分析装置1の周囲温度の変化に伴って容器整列部34の共振周波数が変化し、整列レール51の振動状態が変化した場合にも、整列レール51の振動の振幅の現在値LDCが、目標値tLDCにすばやく収束する。
ここで、本実施形態に係るフィードバック制御を行った場合と行わなかった場合とにおける、整列レール51の振動の振幅の変化について、図13A及び図13Bを参照して説明する。図13Aは、フィードバック制御を行わなかった場合における整列レール51の振動の振幅の変化を示すグラフであり、図13Bは、フィードバック制御を行った場合における整列レール51の振動の振幅の変化を示すグラフである。
図13Aの左側の縦軸は振幅(μm)を示し、右側の縦軸は温度(×0.1℃)を示し、横軸は時刻(hh:mm)を示す。図13Bの左側の縦軸は、振幅(μm)及び温度(×0.1℃)を示し、右側の縦軸は、加振器55に印加する制御信号のデューティ(波形のON時間)(μs)を示し、横軸は時刻(hh:mm)を示す。また、図13A及び図13Bにおいて、白丸は整列レール51の振動の振幅を示し、白抜きの線は振幅を200区間分移動平均した値の推移を示し、実線は周囲温度の推移を示す。
図13Aに示すグラフは、フィードバック制御を行わずに18時から8時24分までの間自動分析装置1を連続運転させた際の、周辺温度と整列レール51の振動の振幅との関係を表したグラフである。図13Aに示すグラフによれば、実験開始から終了までの間に周辺温度は約1.5℃程度緩やかに減少しているのに対して、整列レール51の振動の振幅は120μm付近から90μm付近まで約30μm以上変動していることが分かる。
図13Bに示すグラフは、本実施形態に係るフィードバック制御を行った状態で、7時12分から10時付近までの間自動分析装置1を連続運転させた際の、周辺温度と整列レール51の振動の振幅との関係を表したグラフである。図13Bに示すグラフによれば、周囲温度が24℃から27℃付近まで比較的急峻に変動しているのに対して、整列レール51の振動の振幅の変動は200μm±8μm程度の範囲内に抑えられていることが分かる。
上述のように、本実施形態では、デューティ制御回路203が、加振器55に印加する制御信号の周波数は変化させずに、制御信号の波形のデューティのみを変化させる制御を行う。これにより、周囲温度の変化に伴い容器整列部34の共振周波数が変化した場合に、フィードバック制御に基づき加振器55に印加される制御信号の周波数が、真の共振周波数と一致しない場合もありうる。
しかしながら、図7のグラフに示したように、自動分析装置1の周囲温度(環境温度)を15℃から30℃まで変化させた場合における容器整列部34の共振周波数の変動幅は、1Hz程度である。したがって、共振周波数の変動幅が1Hz程度である自動分析装置1においては、加振器55に印加する制御信号のデューティのみを変化させる制御によっても、目標振幅に対する制御は十分に可能である。さらに、デューティのみを変化させる制御を行うことにより、制御の発散を確実に防止することができる。
なお、デューティ制御回路203によるフィードバック制御の手法は、図11及び図12に示した手法に限定されず、他の手法で行われてもよい。例えば、デューティ制御回路203は、図14に示す、より簡易的な手法を用いてフィードバック制御を行ってもよい。図14は、振動状態制御部200によるより簡易的な手法でのフィードバック制御の手順を示すフローチャートである。
まず、デューティ制御回路203は、整列レール51の振動の振幅の目標値tLDCからの、振動状態検出センサ110で測定された振幅の現在値LDCの乖離DIFFを算出する(ステップS31)。乖離DIFFは、以下の式(1)により算出できる。
乖離DIFF=|目標値tLDC-現在値LDC|…式(1)
次に、デューティ制御回路203は、乖離DIFFが、目標値tLDCに対する許容値として設定された“δ”μmよりも大きいか否かを判定する(ステップS32)。ステップS32で、乖離DIFFが許容値δよりも大きいと判定された場合(ステップS32がYES判定の場合)、デューティ制御回路203は、乖離DIFFを目標値tLDC及び定数aで除算した値を、デューティ変化量dDUTYに設定する(ステップS33)。定数aは、デューティ変化量dDUTYの値を変化させるための定数であり、容器供給ユニット3の機械的な特性等に応じて求まる最適な値を適宜設定可能である。
一方、ステップS32で、乖離DIFFが許容値δ以下であると判定された場合(ステップS32がNO判定の場合)、デューティ制御回路203は、乖離DIFFを目標値tLDC及び定数a′で除算した値を、デューティ変化量dDUTYに設定する(ステップS34)。定数a′には、上述の定数aよりも大きな値が設定される。
つまり、デューティ制御回路203は、乖離DIFFが大きいほど、すなわち、現在値LDCが目標値tLDCから乖離すれば乖離するほど、デューティ変化量dDUTYを大きくする。
次に、デューティ制御回路203は、振幅の現在値LDCが目標値tLDC未満であるか否かを判定する(ステップS35)。ステップS35で、現在値LDCが目標値tLDCよりも小さいと判定された場合(ステップS35がYES判定の場合)、デューティ制御回路203は、デューティDUTYにデューティ変化量dDUTYを加算した値を、新たなデューティDUTYとする(ステップS36)。
一方、ステップS35で、現在値LDCが目標値tLDC以上であると判定された場合(ステップS35がNO判定の場合)、デューティ制御回路203は、デューティDUTYからデューティ変化量dDUTYを減算した値を、新たなデューティDUTYとする(ステップS37)。
つまり、デューティ制御回路203は、振幅の現在値LDCが目標値tLDCよりも小さい場合にはデューティDUTYを増加させ、大きい場合にはデューティDUTYを減少させる制御を行う。
ステップS36又はS37の処理後、デューティ制御回路203は、デューティDUTYの値が“5%”未満であるか否かを判定する(ステップS38)。ステップS38で、デューティDUTYの値が“5%”より小さいと判定された場合(ステップS38がYES判定の場合)、デューティ制御回路203は、デューティDUTYに“5%”を設定する(ステップS39)。
一方、ステップS38で、デューティDUTYの値が“5%”以上であると判定された場合(ステップS38がNO判定の場合)、デューティ制御回路203は、デューティDUTYの値が“15%”より大きいか否かを判定する(ステップS40)。
ステップS40で、デューティDUTYの値が“15%”より大きいと判定された場合(ステップS40がYES判定の場合)、デューティ制御回路203は、デューティDUTYに“15%”を設定する(ステップS41)。一方、デューティDUTYの値が“15%”以下であると判定された場合には、デューティ制御回路203は、処理をステップS31に戻す。
上述のより簡易的なフィードバック制御においても、測定された整列レール51の振動の振幅の現在値LDCが目標値tLDCから乖離すればするほど、デューティ変化量dDUTYの値(操作量)が大きくなる。したがって、整列レール51の振動状態が変化した場合にも、整列レール51の振動の振幅の現在値LDCが、目標値tLDCにすばやく収束する。また、上述のより簡易的なフィードバック制御によれば、前回制御時のデューティの増減の方向を示すフラグ等を用いなくても、整列レール51の振動の振幅LDCを目標値tLDCに収束させることができる。
ここで、上述の簡易的なフィードバック制御を行った場合の、自動分析装置1の起動から、整列レール51の振動の振幅が目標値に収束するまでの間の、制御信号の波形のデューティ及び振幅の推移(挙動)について、図15A及び図15Bを参照して説明する。ここでは、フィードバック制御における振幅の目標値に200μmが設定され、目標値からの許容値δに5μmが設定された場合の例を示す。図15A及び図15Bに示す例において、整列レール51の振動は、磁気誘導型近接センサ110α(図5参照)の検出値に基づいて測定した。
図15Aは、整列レール51の振動の振幅が目的値に収束するまでの間の、制御信号の波形のデューティ及び振幅の推移を示すグラフである。図15Bは、意図的に熱負荷を与えた場合における、整列レール51の振動の振幅が目的値に収束するまでの間の、制御信号の波形のデューティ及び振動の振幅の推移を示すグラフである。図15A及び図15Bにおいて、左側の縦軸は整列レール51の振動の振幅(μm)及び温度(×0.1℃)を示し、右側の縦軸は加振器55に印加する制御信号の波形のデューティ(%)を示し、横軸は時間(s)を示す。また、図15A及び図15Bにおいて、一点鎖線は温度の推移を示し、破線は加振器55に印加する制御信号の波形のデューティの推移を示し、実線は整列レール51の振動の振幅の推移を示す。2本の平行する二点鎖線は、目標値200μm±許容値5μmの幅を示す。
図15Aに示す例において、自動分析装置1を起動後30秒程度が経過した時点で、振幅が目標値である200μmを大きく超えている。これに対して、デューティ制御回路203によるフィードバック制御(加振器55に印加する制御信号のデューティのみを変化させる制御)が行われることにより、60秒を超えた時点で振幅が目標値(200μm)に収束している。
図15Bに示す例では、自動分析装置1の起動後約3,840秒が経過した時点と、約4,000秒が経過した時点において、不図示のヒートガンを用いて自動分析装置1に熱負荷が加えられている。そして、これを受けて、整列レール51の振動の振幅も、目標値に設定された200μmから許容値5μmを減算した値である195μmを大きく下回っている。これに対して、加振器55に印加する制御信号のデューティを変更する制御がデューティ制御回路203によって行われることにより、整列レール51の振動の振幅が目標値の200μm±5μmの範囲内に即時に収束している。
上記各実験結果に示される通り、本実施形態では、周辺温度の変化の影響を敏感に受ける容器供給ユニット3において、整列レール51の振動の振幅が変動した場合にも、振動状態制御部200が整列レール51の振動の状態に応じたフィードバック制御を行うことにより、整列レール51の振動の振幅を目標値に収束させることができる。また、振動状態制御部200によるフィードバック制御において、目標値及び目標値に対する許容値に適切な値を設定することにより、整列レール51の振動状態を最適なものとすることができる。つまり、本実施形態によれば、整列レール51による容器100の搬送速度を一定に保つことができるため、より安定的に動作する容器供給ユニット3を提供することが可能となる。これにより、自動分析装置1全体の信頼性を向上させることができる。
なお、整列レール51の振動状態は、周辺温度の変化に伴う容器整列部34の共振周波数の変化以外の要因でも変化する。例えば、整列レール51の振動の妨げとなるゴミ等の物理的な干渉物が容器整列部34のいずれかの位置に挟まることや、搬送するワーク数量(容器の本数)の変化に伴う構造体の質量の変化等によっても、整列レール51の振動状態は変化する。このような場合においても、本実施形態では、振動状態制御部200によってフィードバック制御が行われることにより、振幅の変動が動的に抑制されるため、整列レール51の振動状態を安定した状態とすることができる。
また、上述した本実施形態では、デューティ制御回路203は、整列レール51の振動の状態に応じて行うフィードバック制御において、加振器55に印加する制御信号の周波数は変化させずに、波形のデューティのみを変化させる。それゆえ、本実施形態によれば、デューティ制御回路203によるフィードバック制御が発散してしまうことを防止することができる。また、デューティ制御回路203が加振器55に印加する制御信号の波形のデューティのみを変化させることにより、整列レール51の振動の振幅が目標値に収束するまでの時間を、制御信号の周波数を変化させる制御を行う場合と比較して短縮できる。
また、本実施形態では、デューティ制御回路203がフィードバック制御を行うことにより整列レール51の振動状態が最適化されるため、振動状態を変動させる外乱要因による影響を小さくすることを目的として、容器供給ユニット3を大型化する必要がなくなる。それゆえ、本実施形態によれば、設置スペースに厳しい制約がある自動分析装置1において、省スペース化を実現することができる。
また、本実施形態では、デューティ制御回路203がフィードバック制御を行うことにより整列レール51の振動状態が最適化されるため、整列レール51の振動の低下を補うことを目的として、加振器55に大きな電圧を印加する必要がなくなる。それゆえ、本実施形態によれば、過度の電圧の印加により整列レール51が必要以上に大きく振動することがないため、大きな振動によって自動分析装置1の他のユニットに対して悪影響が及んだり、ユーザーに不快感を与えたりすることを防ぐことができる。つまり、本実施形態によれば、整列レール51における過度の振動の発生を防止しつつ、必要最小限の搬送力も維持することができる。さらに、本実施形態によれば、自動分析装置1の静音化を図ることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
上述した実施形態では、整列レール51の振動の振幅を取得するための振動状態検出センサ110として、磁気誘導型近接センサ110α又はレーザー変位計110βを用いた例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。
例えば、振動状態検出センサ110を、加速度ピックアップや加速度センサ等で構成してもよい。この場合、振幅検出部201(図10参照)は、加速度ピックアップや加速度センサ等で計測された加速度を用いて理論計算を行うことにより、整列レール51の振動に伴う整列レール51の変位量(振動の振幅)を間接的に算出する。
振動状態検出センサ110を加速度センサ110γで構成した場合の、加速度センサ110γの自動分析装置1への取り付け例について、図16を参照して説明する。図16は、加速度センサ110γの自動分析装置1への取り付け例を示す、容器供給ユニット3の側面図である。
図16に示すように、加速度センサ110γは、整列レール51の一端部における、整列レール51の下端部に取り付けられる。加速度センサ110γをこのような位置に配置することにより、加速度センサ110γに整列レール51の振動の加速度を検出させることが可能となる。
加速度センサ110γは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて製造される小型のセンサであり、加速度の検出方式には、例えば、静電容量式、ピエゾ抵抗式、熱検知式等の方式がある。いずれの方式においても、加速度センサは、センサにかかる加速度の変化を電気信号に変換して検出する。
代表的な加速度センサにおいて採用されている静電容量式では、以下の式(2)に示される原理で、加速度aを検出する。
F=m×a…式(2)
上記式(2)において、“F”は重さ“m”[kg]の物質に働く力を示し、“a”は加速度[m/s2]を示す。また、ばねと重りで構成されるシステムにおいては、Fは以下の式(3)で示される。
F=k×x…式(3)
上記式(3)において、“k”はばね定数[N/m]を示し、“x”はばねの変位[m]を示す。以上により、加速度aは、以下の式(4)で表すことができる。
a=k×x/m…式(4)
つまり、加速度aは、既知のばね定数と既知の重さの重りの移動量を計測することにより求めることができる。
整列レール51の動作を単振動と仮定した場合、振動体の最大加速度をa[m/s2]、振動周波数をf[Hz]とすると、片振幅A[m]は以下の式(5)及び式(6)で与えられる。
a=A・ω2…式(5)
A=a/ω2…式(6)
上記式(6)において、“ω”は角周波数[rad/s]を示し、“ω”は以下の式(7)で示すことが可能である。
ω=2・π・f…式(7)
これにより、片振幅Aは、下記の式(8)により求めることができる。
A=a/(2・π・f)2…式(8)
すなわち、加速度a及び周波数fが分かれば、片振幅Aを求めることができる。上記式に、センサ固有の補正値や装置固有の補正係数を加味した補正項C1及びC2を追加するとことで全振幅A′[m]を算出することができる。全振幅A′[m]は以下の式(9)によって求めることができる。
A′=2・α/(2・π・f)2×C1+C2…式(9)
ただし、ここで、補正項:C1およびC2は定数または1次以上の関数として別途実験結果に基づき決定される。
なお、振動状態検出センサ110として、加速度センサ110γを使用する場合、センサの設置状態による誤差を補正する為、キャリブレーションを実施するものとする。また、加速度センサの品種によっては自己調整モードを備えた製品もあるが、基材的には重力加速度を利用してX-Y-Z各軸の校正を行うものとする。
ここで、レーザー変位計で整列レール51の振動の振幅を直接測定した結果と、加速度センサ110γが測定した加速度に基づいて間接的に算出された振幅の測定結果との対比について、図17を参照して説明する。図17Aは、レーザー変位計110βで整列レール51の振動の振幅を直接測定した結果を示すグラフであり、図17Bは、加速度センサ110γが測定した加速度aに基づいて間接的に算出された振幅の測定結果を示すグラフである。
図17A及び図17Bにおいて、横軸は加振器55に印加する矩形波の制御信号の周波数[Hz]を示し、縦軸は矩形波のデューティを示す。グラフにおけるコンターは振幅の大きさを表しており、色が濃いほど振幅が小さく、色が薄いほど振幅が大きいことを示す。
容器整列部34の共振点(振動の振幅が最も大きくなる点)は120.3Hz付近にあり、レーザー変位計110βで直接振幅を測定した場合と、加速度センサ110γで検出された加速度に基づいて間接的に振幅を測定した場合の両方において、同様の結果が得られていることがわかる。
以上説明した通り、振動状態検出センサ110としてより安価な加速度センサ110γを用いた場合であっても、整列レール51の振動の振幅を算出することが可能である。そして、これらの振動状態検出センサ110で得られた振動の振幅の情報に基づいてフィードバック信号を生成することにより、整列レール51を含む容器供給ユニット3の動作を長期的に安定したものとすることができる。
また、上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために装置(容器供給ユニット及び自動分析装置)の構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、上述した実施形態では、整列レールを振動させる加振器を、コイル(ソレノイド)で構成した例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。容器を整列及び搬送する整列レールに対して振動を与えることができるアクチュエータであれば、どのようなもので加振器を構成してもよい。
また、上述した実施形態では、振動状態制御部が、加振器に印加する制御信号の波形のデューティのみを変化させてフィードバック制御を行う例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。振動状態制御部が、加振器に印加する制御信号の周波数のみを変化させる制御や、制御信号の周波数及び波形のデューティの両方を変化させる制御を行ってもよい。
また、上述した実施形態では、複数の振動体(第1の振動体91B及び第2の振動体91C)を、板ばねを介して接続する例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。加振器として、整列レールを往復させる方向に力を発生させることが可能なアクチュエータを用いた場合等には、板ばねは用いなくてもよく、振動体を複数個設けなくてもよい。