本発明は、その一部の実施形態では、療法に関し、より具体的には、排他的なものではないが、特に薬物送達ビヒクルの形成のために使用可能な新規のポリマー化合物に関する。
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、以下の説明に記載されるまたは実施例により例示される詳細に本発明の応用は必ずしも限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施もしくは実行することができる。
リポソームをin vivoで研究していたところ、本発明者らは、モノマーがリン酸およびアンモニウムの両方のイオン基を含む脂質由来のポリマー化合物を用いて安定化されたリポソームは、in vivoで特に長い保持時間を有することを偶然に発見した。後述する実施例セクションにおいて実証される通り、本発明者らは、そのようなポリマー化合物を含むリポソームは薬物送達のために好適であり、薬物送達用の当該技術分野の先端的なPEG化リポソームと有利に比較され、例えば、同等のPEG化リポソームより長い保持時間を呈することを発見した。
したがって、本発明の実施形態は、薬物送達ビヒクルとしてのそのようなリポソームの使用、すなわち、治療活性剤を組み込んだリポソームおよび医学的状態の治療におけるその使用に関する。一部の実施形態では、リポソームは、リポソーム中での治療活性剤の長期化された保持時間が所望されまたは必要とされる医学的状態を治療するために使用される。
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、リポソームであって、少なくとも1つの二重層形成脂質、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるポリマー化合物、ならびにリポソーム中および/またはリポソーム上に組み込まれた治療活性剤を含む、リポソームが提供される。一部の実施形態では、リポソームは、それを必要とする対象への治療活性剤の送達において使用するためのものである。
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、それを必要とする対象への治療活性剤の送達において使用するための医薬の製造におけるリポソームの使用であって、リポソームが、少なくとも1つの二重層形成脂質、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるポリマー化合物、ならびにリポソーム中および/またはリポソーム上に組み込まれた治療活性剤を含む、使用が提供される。
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、それを必要とする対象に治療活性剤を送達する方法であって、少なくとも1つの二重層形成脂質、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるポリマー化合物、ならびにリポソーム中および/またはリポソーム上に組み込まれた治療活性剤を含むリポソームを対象に投与し、それにより、それを必要とする対象に治療活性剤を送達することを含む、方法が提供される。
本明細書に記載される態様のいずれかによる実施形態のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されるリポソームの使用および/または方法は、対象において(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかにしたがって)治療活性剤により治療可能な医学的状態を治療するためのものである。
本明細書に記載される態様のいずれかによる実施形態のいずれかの一部の実施形態では、治療活性剤を送達することは、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる治療活性剤の持続放出を含む。
本明細書に記載される態様のいずれかによる実施形態のいずれかの一部の実施形態では、リポソームは、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる治療活性剤の持続放出が可能なように選択される。
本明細書において使用される場合、治療活性剤または薬物(これらの用語は本明細書において交換可能に使用される)の「送達」または「送達すること」は、対象の状態に応じて、所望の身体部位(例えば、剤が治療効果を発揮することが所望される身体部位)における剤の持続期間および/または割合を制御しながら対象に治療活性剤を投与することを指す。したがって、「送達」および「送達すること」という用語(およびこれらの文法的変形)は、特定の身体部位に治療活性剤を、(例えば、好適な標的化部分を使用して)より高い割合の剤が前記身体部位に達するように標的化すること;および/または、例えば、所望の身体部位におけるそのような剤の持続期間と関連付けられ得る持続放出により、身体中(例えば、血液中)のそのような剤の存在の持続期間を制御すること(該身体部位への特定の標的化の非存在下であっても)を包含する。
本明細書において使用される場合、「持続放出」は、(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるリポソームなどのリザーバーからの)剤の徐放および/または遅延(「持続」)放出を提供する剤の配合物であって、剤が(同じ投与経路を介して)それ自体で投与された場合よりも長い持続期間にわたりかつ/または(投与に対して)より遅い時点において剤が身体部位中(例えば、全身投与時には血液中、または剤が局所投与された身体部位中)に存在することを結果としてもたらす配合物を指す。
例えば、本発明の実施形態の文脈における(持続放出配合物と対照的に)それ自体で投与される剤は、任意選択で、本発明の実施形態によるリポソームを欠くが、持続放出配合物と同じ担体(それがある場合)を含む剤の配合物を指す。
一部の実施形態では、持続放出は、同じ最大濃度を結果としてもたらす量での治療的に効果的な剤それ自体(例えば、本明細書において定義されているもの)での投与の対応する期間(すなわち、剤の濃度が最大濃度の少なくとも半分である期間)より少なくとも50%長い期間にわたり、(例えば、全身投与時には血液中、または剤が局所投与された身体部位中の)治療活性剤の濃度が最大濃度(Cmax)の少なくとも半分であることにより特徴付けられる。一部のそのような実施形態では、(持続放出についての)期間は、(剤それ自体についての)対応する期間より少なくとも100%長い(すなわち、2倍)。一部の実施形態では、(持続放出についての)期間は、(剤それ自体についての)対応する期間より少なくとも200%長い(すなわち、3倍)。一部の実施形態では、(持続放出についての)期間は、(剤それ自体についての)対応する期間より少なくとも400%長い(すなわち、5倍)。
一部の実施形態では、持続放出は、少なくとも6時間の期間にわたり、(例えば、全身投与時には血液中、または剤が局所投与された身体部位中の)治療活性剤の濃度が最大濃度(Cmax)の少なくとも半分であることにより特徴付けられる。一部のそのような実施形態では、期間は少なくとも12時間である。一部の実施形態では、期間は少なくとも24時間である。一部の実施形態では、期間は少なくとも2日である。一部の実施形態では、期間は少なくとも4日である。一部の実施形態では、期間は少なくとも1週である。一部の実施形態では、期間は少なくとも2週である。一部の実施形態では、期間は少なくとも4週である。
(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)持続放出は、例えば、より少ない頻度の投与および/または任意の所与の投与についてのより大きい治療効果により特徴付けられるレジメンを可能とし得る。当業者は、持続放出の持続期間(例えば、剤の濃度が、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかにしたがって最大濃度の少なくとも半分であり、かつ/または少なくとも最小有効濃度である期間)、および所与の剤についての望ましい最大濃度と最小有効濃度との比(例えば、剤の「治療ウインドウ」)に基づいて所与の治療活性剤についての投与の好適な頻度を容易に決定することができる。
ポリマー化合物:
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態によれば、(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)リポソームに含まれるポリマー化合物は、本明細書において以下により詳細に記載される通り、一般式I:
式I
(式中、
mは0または正の整数であり;
nは少なくとも1の整数であり;
Xは脂質部分であり、Xがリン酸基を含まない場合、nは少なくとも2であり;
Yは、ポリマー骨格を形成する骨格単位であり;
Lは存在しないか、または連結部分であり;かつ
Zは一般式II:
式II
(式中、
Aは置換または非置換の炭化水素であり;
Bは酸素原子であるか、または存在せず;かつ
R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロ脂環式基、アリールおよびヘテロアリールである)を有する)を有する。
式Iは、本明細書において単に
X-[Y(-L-Z)]n[Y]m
と記載されることもあり、これは上記の図式的描写と交換可能であると考えられるべきである。
本明細書において、「ポリマー」(polymeric)という用語は、同一または類似の少なくとも2つの繰返し単位(より好ましくは少なくとも3つの繰返し単位)を有する化合物を指す。一般式Iの化合物は、定義により、nが少なくとも2の場合にYにより表される骨格単位の少なくとも2つを含むので、ポリマーであると理解されるべきである。
本明細書において、「ポリマー部分」という語句は、一般式Ia:
式Ia
(式中、m、n、Y、LおよびZは、一般式Iについて本明細書において定義される通りである)を有する、(一般式Iに関する本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)ポリマー化合物の部分を指す。
式Iaは、本明細書において単に
[Y(-L-Z)]n[Y]m
と記載されることもあり、これは上記の図式的描写と交換可能であると考えられるべきである。
本明細書において、「ポリマー化合物」という語句は、(例えば、nが1である式Iaによる)1つの単位を有する本明細書に記載される「ポリマー部分」を有する化合物をさらに包含し、但し、本明細書に記載される脂質部分(例えば、Xにより表される脂質部分)は類似の単位を有する。例えば、脂質部分がリン酸基を含み(例えば、脂質部分がグリセロリン脂質部分であり)、それにより脂質部分がリン酸基を有しかつポリマー部分の単一の単位がリン酸基を有する場合、2つのリン酸基は繰返し単位と考えることができる。
しかしながら、好ましい実施形態では、nは少なくとも2であり、それによりポリマー部分自体が少なくとも2つの単位を有する。一部の実施形態では、nは少なくとも3である。
本明細書において使用される場合、「骨格単位」という用語は、繰返し単位であって、複数の繰返し単位の連結(例えば、逐次的な連結)がポリマー骨格を形成するものを指す。複数の連結された繰返し単位自体は、本明細書において「ポリマー骨格」とも称される。
式Iおよび式Iaに示すように、LおよびZは、一緒になって、骨格単位の少なくとも一部分のペンダント基を形成し、該基は、本明細書において簡潔性のために単に「ペンダント基」と称される。
ペンダント基を有する各骨格単位Y(すなわち、Y(-L-Z)により表される単位であって、その数は記号nにより表される)およびペンダント基を有しない各骨格単位Y(その数は記号mにより表される)は、本明細書において「モノマー単位」とも称される。
骨格単位は、任意選択で、重合可能なモノマーの残基またはモノマーの重合可能な部分であり得る。多様な重合可能なモノマーおよび部分が当業者に公知であり、重合を結果としてもたらすそのようなモノマーの残基の構造(例えば、モノマー単位)も当業者に公知である。
「重合可能なモノマーの残基」は、重合可能なモノマーの修飾形態および/または重合後に残る重合可能なモノマーの部分を指す。
重合可能なモノマーの部分は、例えば、縮合反応により形成されてもよく、該縮合反応では、例えば、モノマー中の少なくとも1つの原子または基(例えば、水素原子またはヒドロキシル基)、および任意選択でモノマー中の少なくとも2つの原子または基(例えば、水素原子およびヒドロキシル基)が別の重合可能なモノマーと共有結合により置換される。
重合可能なモノマーの修飾形態は、例えば、開環(環中の2つの原子間の共有結合が破壊され、任意選択で2つの原子はそれぞれ別の重合可能なモノマーに連結される)により;および/または不飽和結合に付加を行い、2つの隣接する原子間の不飽和結合が破壊され(例えば、不飽和二重結合の飽和結合への変換、または不飽和三重結合の不飽和二重結合への変換)、任意選択で2つの原子がそれぞれ別の重合可能なモノマーに連結されることにより、形成されてもよい。
重合可能なモノマーの修飾形態は、元々のモノマーと同じ原子から本質的になるものであってもよく、例えば、共有結合の転位においてのみ異なるものであり、あるいは、異なる原子組成を有してもよく、例えば、重合は(例えば、本明細書に記載される)縮合反応を含む。
骨格単位の例としては、アルキレン単位などの置換または非置換の炭化水素(置換または非置換の炭化水素骨格を形成し得る);ヒドロキシカルボン酸単位(ポリエステル骨格を形成し得る)、例えば、グリコレート、ラクテート、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、ヒドロキシカプロエートおよびヒドロキシベンゾエート単位;ジカルボン酸単位(ジオールと組み合わせてポリエステル骨格および/またはジアミンと組み合わせてポリアミドを形成し得る)、例えば、アジペート、サクシネート、テレフタレートおよびナフタレンジカルボン酸単位;ジオール単位(ポリエーテル骨格を形成し得るか、またはジカルボン酸と組み合わせてポリエステル骨格を形成し得る)、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、およびビスフェノールA単位;ジアミン単位(ジカルボン酸と組み合わせてポリアミド骨格を形成し得る)、例えば、パラ-フェニレンジアミンおよびヘキシレンジアミンなどのアルキレンジアミン;カルバメート単位(ポリウレタン骨格を形成し得る);アミノ酸残基(ポリペプチド骨格を形成し得る);およびサッカリド残基(多糖骨格を形成し得る)が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Yは置換または非置換のアルキレン単位である。
一部の実施形態では、Yは置換または非置換のエチレン単位、すなわち、2原子の長さのアルキレン単位である。
Yが置換または非置換のエチレン単位であるポリマー骨格は、任意選択で、エチレン(CH2=CH2)および/またはその置換誘導体(本明細書において「ビニルモノマー」とも称される)を重合させることにより形成されるものなどのポリマー骨格であってもよい。そのような重合は非常によく研究された手順であり、当業者はそのような重合の効果をもたらすための多数の技術を認識している。
重合により形成されるポリマー骨格に関する本明細書に記載される任意の実施形態は、ポリマー骨格が実際にそのような重合(または任意の他の種類の重合)により形成されたかどうかにかかわらず、そのような重合により形成され得る構造を有する任意のポリマー骨格を包含することが理解されるべきである。
当該技術分野において周知の通り、エチレンおよび置換エチレン誘導体の不飽和結合は重合時に飽和され、それにより、ポリマー骨格中の骨格単位は飽和しているが、それらはそれらが類似する不飽和化合物の単位(例えば、「ビニルモノマー」または「オレフィンモノマー」)と称されることがある。
ビニルモノマーおよびオレフィンモノマーなどの不飽和モノマーから形成され得るポリマーは、「ポリビニル」および「ポリオレフィン」という用語によっても称される。
本明細書において、「非置換」のアルキレン単位(例えば、エチレン単位)は、本明細書で論じるペンダント基((-L-Z)として表される)以外のいかなる置換基も有しないアルキレン単位を指す。すなわち、上述のペンダント基に結合したアルキレン単位は、アルキレン単位上のいかなる他の位置にも置換基がない場合に非置換と考えられる。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Yは式-CR4R5-CR6D-を有する。
YがLおよびZ(すなわち、本明細書に記載されるペンダント基)のいずれにも結合していない骨格単位である場合、DはR7(本明細書において定義される末端基)であり;YがLまたはZに結合した骨格単位である場合、Dは、共有結合であるか、またはYをLもしくはZに結合させる連結基である。連結基は、任意選択で、-O-、-S-、アリーレン、スルフィニル、スルホニル、ホスフェート、ホスホニル、ホスフィニル、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、またはアミノであってもよい。
R4~R7は、それぞれ独立して、水素、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アジド、アゾ、ホスフェート ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、またはアミノである。
本明細書において、「連結基」という語句は、化合物中の2つまたはそれより多くの部分に結合した基(例えば、置換基)を表す。
本明細書において、「末端基」という語句は、化合物中の単一の部分にその1つの原子を介して結合した基(例えば、置換基)を表す。
R4~R6のそれぞれが水素であり、かつ、Dが共有結合または連結基である場合、Yは、本明細書に記載されるペンダント基に(Dを介して)結合した非置換のエチレン基である。
R4~R7のそれぞれが水素(かつDがR7)である場合、Yは、本明細書に記載されるペンダント基に結合していない非置換のエチレン基である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、R4およびR5はそれぞれ水素である。そのような実施形態としては、多くの広範に使用されるビニルモノマー(エチレンを含む)から形成されたポリマー骨格が挙げられ、ビニルモノマーとしては、例えば、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、イソブチレン、4-メチル-1-ペンテン)、塩化ビニル、スチレン、ビニルアセテート、アクリロニトリル、アクリレートおよびその誘導体(例えば、アクリル酸エステル、アクリルアミド)、ならびにメタクリレートおよびその誘導体(例えば、メタクリル酸エステル、メタクリルアミド)が挙げられる。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、R6は水素である。一部のそのような実施形態では、R4およびR5はそれぞれ水素である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、R6はメチルである。一部のそのような実施形態では、R4およびR5はそれぞれ水素である。一部のそのような実施形態では、骨格単位は、メタクリレートまたはその誘導体(例えば、メタクリル酸エステル、メタクリルアミド)の単位である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、記号Dにより表される連結基は、-O-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-またはフェニレンである。例示的な実施形態では、Dは-C(=O)O-である。
例えば、骨格単位は、任意選択で、Dが-O-である場合、ビニルアルコール誘導体(例えば、ビニルアルコール単位のエステルまたはエーテル);Dが-C(=O)O-である場合、アクリレートまたはメタクリレート誘導体(例えば、アクリレートまたはメタクリレート単位のエステル);Dが-C(=O)NH-である場合、アクリルアミドまたはメタクリルアミド単位;および/またはDがフェニレンである場合スチレン誘導体(例えば、置換スチレン単位)であってもよい。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Lは、1~10個の炭素原子の長さの置換または非置換の炭化水素である。一部の実施形態では、炭化水素は非置換である。一部の実施形態では、炭化水素は線状の非置換の炭化水素;すなわち、-(CH2)i-(式中、iは1~10の整数である)である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Lは置換または非置換のエチレン基である。一部の実施形態では、Lは非置換のエチレン基(-CH2CH2-)である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Bは酸素原子である。一部のそのような実施形態では、Lは、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる炭化水素であり(すなわち、Lは存在しないものではない)、かつ、Zは、Lに結合したリン酸基である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Bは存在しない。一部のそのような実施形態では、Lは、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる炭化水素であり(すなわち、Lは存在しないものではない)、かつ、Zは、Lに結合したホスホン酸基である。一部の実施形態では、Lもまた存在せず、それにより、式IIのリン原子はYに直接結合している。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Aは、1~4個の炭素原子の長さの置換または非置換の炭化水素である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Aは非置換の炭化水素である。一部のそのような実施形態では、非置換の炭化水素は1~4個の炭素原子の長さである。一部の実施形態では、炭化水素は線状の非置換の炭化水素;すなわち、-(CH2)j-(式中、jは1~4の整数である)である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Aは置換または非置換のエチレン基である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Aは非置換のエチレン基(-CH2CH2-)である。そのような実施形態では、一般式IIを有する部分(記号Zにより表される)は、ホスホエタノールアミンまたはホスホコリン部分と類似または同一である。ホスホエタノールアミンおよびホスホコリン部分は、多くの天然に存在する化合物(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン)中に存在する。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Aは、C-カルボキシ基により置換されたエチレン基である。一部の実施形態では、C-カルボキシは、式IIに示される窒素原子に隣接する炭素原子(示される酸素原子に結合した炭素原子ではなく)に結合している。そのような実施形態では、一般式IIを有する部分(記号Zにより表される)は、ホスホセリン部分に類似または同一である。ホスホセリンは、多くの天然に存在する化合物(例えば、ホスファチジルセリン)中に存在する。
いかなる特定の理論によっても縛られるものではないが、ホスホコリン、ホスホエタノールアミンおよび/またはホスホセリンなどの天然に存在する部分に類似または同一の部分は、特に生体適合性であり得ると考えられる。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、R1~R3(一般式IIに示される窒素原子の置換基)はそれぞれ独立して水素またはC1~4-アルキルである。一部の実施形態では、R1~R3はそれぞれ独立して水素またはメチルである。一部の実施形態では、R1~R3はそれぞれメチルである。一部のそのような実施形態では、R1~R3はそれぞれ水素である。
記号nは、(-L-Z)により表されるペンダント基により置換された骨格単位(記号Yにより表される)の数を表すと考えることができ、また記号mは、そのようなペンダント基により置換されていない骨格単位の数を表すと考えることができる。和n+mは、ポリマー骨格中の骨格単位の総数を表すと考えることができる。比n/(n+m)は、(-L-Z)により表されるペンダント基により置換された骨格単位の割合を表すと考えることができる。
ペンダント基により置換された骨格単位Yは、ペンダント基により置換されていない骨格単位Yと同じであってもよいし、または異なっていてもよい(例えば、mが少なくとも1である場合)。
ペンダント基により置換された複数(記号nにより指し示される)の骨格単位Yは、互いに同じであってもよいし、または互いに異なっていてもよい。
加えて、複数の骨格単位Yに結合した複数(記号nにより指し示される)のペンダント基(-L-Z)は、互いに同じであってもよいし、または互いに異なっていてもよい(例えば、A、B、R1、R2、R3およびLのいずれか1つまたは複数の素性において異なっていてもよい)。
1つより多くの骨格単位Yが本明細書に記載されるペンダント基により置換されていない(すなわち、mが1より大きい場合)本明細書に記載されるいずれかの実施形態では、ペンダント基により置換された骨格単位Yの複数(記号mにより指し示される)は、互いに同じであってもよいし、または互いに異なっていてもよい。
ペンダント基により置換された骨格単位の種類の数、ペンダント基により置換されていない骨格単位の種類の数(そのような単位が存在する場合)、および/またはポリマー部分中のペンダント基の種類の数は、それぞれ独立して任意の数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多い)であってもよい。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、ポリマー部分はコポリマー部分であり、すなわち、ポリマー部分は少なくとも2つの異なる種類のモノマー単位を含む。異なる種類のモノマー単位は、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるペンダント基(-L-Z)を含むかどうか(例えば、mが少なくとも1である場合)において異なっていてもよく、骨格単位Yの種類において異なっていてもよく、かつ/またはペンダント基(-L-Z)の種類において異なっていてもよい。
例えば、本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、各Y(-L-Z)単位中の骨格単位Yは、任意選択で同じまたは異なっていてもよく、LおよびZ部分はY(-L-Z)単位にわたって同じである。一部のそのような実施形態では、ペンダント基により置換されていない骨格単位(そのような単位が存在する場合)は、任意選択で各Y(-L-Z)単位中の骨格単位Yと同じであってもよい。あるいは、ペンダント基により置換されていない骨格単位(そのような単位が存在する場合)は、任意選択で各Y(-L-Z)単位中の骨格単位Yと異なっていてもよい(任意選択でペンダント基により置換されていない全ての骨格単位にわたって同じであってもよい)。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、各Y(-L-Z)単位中のL部分は、任意選択で同じまたは異なっていてもよく、骨格単位YおよびZ部分はY(-L-Z)単位にわたって同じである。一部のそのような実施形態では、ペンダント基により置換されていない骨格単位(そのような単位が存在する場合)は、任意選択で各Y(-L-Z)単位中の骨格単位Yと同じであってもよい。あるいは、ペンダント基により置換されていない骨格単位(そのような単位が存在する場合)は、任意選択で各Y(-L-Z)単位中の骨格単位Yと異なっていてもよい(任意選択でペンダント基により置換されていない全ての骨格単位にわたって同じであってもよい)。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、各Y(-L-Z)単位中のZ部分は、任意選択で同じまたは異なっていてもよく、骨格単位YおよびZ部分はY(-L-Z)単位にわたって同じである。一部のそのような実施形態では、ペンダント基により置換されていない骨格単位(そのような単位が存在する場合)は、任意選択で各Y(-L-Z)単位中の骨格単位Yと同じであってもよい。あるいは、ペンダント基により置換されていない骨格単位(そのような単位が存在する場合)は、任意選択で各Y(-L-Z)単位中の骨格単位Yと異なっていてもよい(任意選択でペンダント基により置換されていない全ての骨格単位にわたって同じであってもよい)。
ポリマー部分がコポリマー部分である本明細書に記載されるいずれかの実施形態では、任意の2つまたはそれより多くの異なる種類のモノマー単位は、ポリマー部分の全体にわたってランダムまたは非ランダムに分布していてもよい。異なる種類のモノマー単位が非ランダムに分布している場合、コポリマーは、任意の非ランダムな分布、例えば、交互コポリマー、周期コポリマー、および/またはブロックコポリマーにより特徴付けられるものであってもよい。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、ポリマー部分のモノマー単位の少なくとも一部分は、標的化部分(標的化部分に関する本明細書に記載されるいずれかの実施形態による)を含む。
標的化部分は、任意選択で、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる骨格単位Y、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる連結部分L、および/または本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる部分Zに含まれてもよく、例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる置換基は標的化部分を含む(および任意選択でそれからなる)。例えば、骨格単位Yの少なくとも一部分が式-CR4R5-CR6D-(各々の実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載される)を有する一部の実施形態では、R4~R6およびD(任意選択でDは本明細書に記載されるR7である)のいずれか1つまたは複数は、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる標的化部分を含み(例えば、R4~R6およびDのいずれか1つまたは複数は、標的化部分である置換基を含む置換基である)、かつ任意選択で任意の1つまたは複数のR4~R6およびDは標的化部分である。しかしながら、標的化部分を含む(および任意選択でそれからなる)置換基を含むモノマー単位の多くの他の構造も本発明の実施形態に包含される。
YがLおよびZ(すなわち、本明細書に記載されるペンダント基)のいずれにも結合していない骨格単位である場合、DはR7(本明細書において定義される末端基)であり;YがLまたはZに結合した骨格単位である場合、Dは、共有結合であるか、またはYをLもしくはZに結合させる連結基である。連結基は、任意選択で、-O-、-S-、アリーレン、スルフィニル、スルホニル、ホスフェート、ホスホニル、ホスフィニル、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、またはアミノであってもよい。
R4~R7は、それぞれ独立して、水素、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アジド、アゾ、ホスフェート ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、またはアミノである。
一部の実施形態では、ポリマー部分は、少なくとも1つの種類のモノマー単位が標的化部分(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)を含みかつ少なくとも1つの種類のモノマー単位がそのような標的化部分を含まないコポリマー部分である。標的化部分を含むモノマー単位の分布は、コポリマー部分中のモノマー単位の本明細書に記載される任意の分布に従うものであってもよい(例えば、ランダム、交互、周期コポリマー、および/またはブロックコポリマー)。
モノマー単位の部分が標的化部分を含む本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、標的化部分を含むモノマー単位は、平均で、脂質部分に対して遠位のポリマー部分の末端により近く、例えば、脂質部分からの標的化部分を含むモノマー単位の平均距離(ポリマー部分の骨格に沿って原子または骨格単位において測定される)は、脂質部分からの他のモノマー単位の平均距離より大きい。
一部の実施形態では、標的化部分を含むモノマー単位の少なくとも一部分(および任意選択で全て)は、脂質部分に対して遠位のポリマー部分の末端の近くにおいて(および任意選択で該末端において)(1つまたは複数のモノマー単位の)ブロックを形成する。一部のそのような実施形態では、コポリマー部分は、標的化部分を含む単一のモノマー単位を含有し、かつ前記モノマー単位は、脂質部分に対して遠位のポリマー部分の末端にある。
いかなる特定の理論によっても縛られるものではないが、脂質部分に対して遠位に位置する標的化部分は、標的化部分としてより効果的(例えば、標的への結合においてより効果的)なことがあり、これは例えば、標的化部分が(例えば、脂質部分が会合する表面により)立体的に遮蔽される度合いがより低く、したがって、水性環境中の標的により曝露されてより良好にそれと接触することができることに起因すると想定される。
代替的な実施形態では、ポリマー部分は、各々の実施形態のいずれかによる本明細書に記載される標的化部分を含まない。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、(-L-Z)により表されるペンダント基により置換された骨格単位(記号Yにより表される)のパーセンテージ(式100%×n/(n+m)により表される)は少なくとも20%である。一部の実施形態では、上述のペンダント基により置換された骨格単位のパーセンテージは少なくとも30%である。一部の実施形態では、上述のペンダント基により置換された骨格単位のパーセンテージは少なくとも40%である。一部の実施形態では、上述のペンダント基により置換された骨格単位のパーセンテージは少なくとも50%である。一部の実施形態では、上述のペンダント基により置換された骨格単位のパーセンテージは少なくとも60%である。一部の実施形態では、上述のペンダント基により置換された骨格単位のパーセンテージは少なくとも70%である。一部の実施形態では、上述のペンダント基により置換された骨格単位のパーセンテージは少なくとも80%である。一部の実施形態では、上述のペンダント基により置換された骨格単位のパーセンテージは少なくとも90%である。一部の実施形態では、上述のペンダント基により置換された骨格単位のパーセンテージは少なくとも95%である。一部の実施形態では、上述のペンダント基により置換された骨格単位のパーセンテージは少なくとも98%である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、mは0であり、それにより、骨格単位(記号Yにより表される)のそれぞれは、(-L-Z)により表されるペンダント基により置換されている。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは少なくとも5である。一部の実施形態では、nは少なくとも10である。一部の実施形態では、nは少なくとも15である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは2~1,000の範囲内である。本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは2~500の範囲内である。本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは2~200の範囲内である。本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは2~100の範囲内である。本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは2~50の範囲内である。一部のそのような実施形態では、mは0である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは3~1,000の範囲内である。本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは3~500の範囲内である。本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは3~200の範囲内である。本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは3~100の範囲内である。本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは3~50の範囲内である。本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは5~50の範囲内である。本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは10~50の範囲内である。本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、nは10~25の範囲内である。一部のそのような実施形態では、mは0である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、mは0~1,000の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは2~1,000の範囲内であり、それにより、骨格単位の総数は2~2,000の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは3~1,000の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~500の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~200の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~100の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは5~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは10~50の範囲内である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、mは0~500の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは2~1,000の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは3~1,000の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~500の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~200の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~100の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは5~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは10~50の範囲内である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、mは0~200の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは2~1,000の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは3~1,000の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~500の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~200の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~100の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは5~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは10~50の範囲内である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、mは0~100の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは2~1,000の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは3~1,000の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~500の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~200の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~100の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは5~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは10~50の範囲内である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、mは0~50の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは2~1,000の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは3~1,000の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~500の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~200の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~100の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは5~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは10~50の範囲内である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、mは0~20の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは2~1,000の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは3~1,000の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~500の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~200の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~100の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは5~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは10~50の範囲内である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、mは0~10の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは2~1,000の範囲内である。一部のそのような実施形態では、nは3~1,000の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~500の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~200の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~100の範囲内である。一部の実施形態では、nは3~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは5~50の範囲内である。一部の実施形態では、nは10~50の範囲内である。
本明細書の実施形態のいずれかによる脂質部分(本明細書において式I中の記号Xにより表される)は、ポリマー部分に関する本明細書に記載されるいずれかの実施形態によるポリマー部分に結合していてもよい。
脂質部分は、任意選択で、当該技術分野において公知の任意の脂質(天然に存在する脂質が挙げられるがこれに限定されない)に由来してもよい。脂質からの脂質部分の誘導体化は、任意選択で、一般式Iにおいて[Y(-L-Z)]n[Y]mにより表されるポリマー部分(すなわち、一般式Iaにより表されるポリマー部分)により脂質の任意の位置において水素原子を置換することからなるものであってもよい。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、脂質部分(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)は、Y(-L-Z)単位(Y、Lおよび/またはZに関する本明細書に記載されるいずれかの実施形態による)、すなわち、本明細書に記載されるペンダント基により置換された骨格単位(例えば、ペンダント基により置換されていない骨格単位ではなく)に結合している。
あるいはまたはさらに、mが少なくとも1である本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、脂質部分(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)は、任意選択で、本明細書に記載されるペンダント基により置換されていない骨格単位(Y)に結合していてもよい(例えば、ペンダント基により置換された骨格単位に結合するのではなく)。例えば、ポリマー部分は、任意選択で、脂質部分に結合した骨格単位の素性が分子間でランダムに異なるコポリマーであってもよい。したがって、非置換の骨格単位Yではなくペンダント基により置換された骨格単位(すなわち、Y-(L-Z))に結合しているという式IにおけるXの描写は任意選択的なものであり、限定的であることを意図しない。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、脂質部分は、脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、またはステロールである脂質の部分である。一部の実施形態では、脂質はグリセロリン脂質である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、脂質部分は、少なくとも1つの脂肪酸部分(例えば、脂肪酸に由来するアシル基)を含む。脂肪酸部分は、飽和または不飽和の脂肪酸に由来してもよい。例えば、脂質部分は、脂肪酸部分からなるものであってもよく、または1つの脂肪酸部分を含むモノグリセリド部分、2つの脂肪酸部分を含むジグリセリド部分、もしくは3つの脂肪酸部分を含むトリグリセリド部分であってもよい。
任意選択で脂質部分に含まれてもよい脂肪酸部分の例としては、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、パルミトレオイル、オレオイル、およびリノレオイルが挙げられるがこれらに限定されない。
グリセロリン脂質の好適な例としては、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルイノシトールが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、記号Xにより表される脂質部分は、一般式III:
式III
(式中、
W1およびW2は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアシルであり、W1およびW2の少なくとも1つは水素ではなく;
Jは-P(=O)(OH)-O-であるか、またはJは存在せず(それにより、Kはグリセロール部分の示した酸素原子に直接結合している);
Kは1~10個の炭素原子の長さの置換もしくは非置換の炭化水素であるか、またはKは存在せず(それにより、MはJに直接結合しているか、またはJが存在しない場合、Mはグリセロール部分の示した酸素原子に直接結合している);
Mは、-O-、-S-、アミノ、スルフィニル、スルホニル、ホスフェート、ホスホニル、ホスフィニル、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、カルバミル、チオカルバミル、アミド、カルボキシ、もしくはスルホンアミドである連結基であるか、またはMは存在せず;かつ
Qは、1~10個の炭素原子の長さの置換または非置換の炭化水素であり、かつ本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるポリマー骨格の骨格単位に結合している)を有する。
Mが存在しない場合、Kも存在せず、かつQはJに直接結合しており、またはJが存在しない場合、Qはグリセロール部分の示した酸素原子に直接結合している。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、W1およびW2の一方は水素であり、かつ、他方は水素ではない。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、W1およびW2のいずれも水素ではない。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、W1およびW2の少なくとも1つは、10~30個の炭素原子の長さの、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアシルである。一部の実施形態では、W1およびW2のそれぞれは10~30個の炭素原子の長さである。
任意選択で独立してW1および/またはW2として働き得るアシル基の例としては、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、パルミトレオイル、オレオイル、およびリノレオイルが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Jは-P(=O)(OH)-O-である(例えば、脂質部分はグリセロリン脂質である)。
本明細書において、記号Kにより表される炭化水素の長さは、式IIIに描写されるJおよびMを分離する原子の数(すなわち、JとMとの最短経路に沿って)を指す。
Kが置換された炭化水素である場合、Mは炭化水素自体の炭素原子に結合していてもよく、または炭化水素の置換基に結合していてもよい。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Kは、エタノールアミン部分(例えば、-CH2-CH2-NH-、または窒素原子に結合した-CH2-CH2-)、セリン部分(例えば、-CH2-CH(CO2H)-NH-、または窒素原子に結合した-CH2-CH(CO2H)-)、グリセロール部分(例えば、-CH(OH)-CH(OH)-CH-O-)およびイノシトール部分(例えば、-シクロヘキシル(OH)4-O-)である。一部の実施形態では、Jは-P(=O)(OH)-O-である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Mはアミドであり、任意選択で-C(=O)NH-である。
一部の実施形態では、アミドの窒素原子はKに結合している。一部のそのような実施形態では、Kは、エタノールアミンまたは本明細書に記載されるセリン部分である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Jは存在しない(例えば、グリセロ脂質がグリセロリン脂質ではない場合)。一部のそのような実施形態では、Kもまた存在せず、それにより、Mはグリセロール部分の示した酸素原子に直接結合しているか、またはMもまた存在しない場合、Qはグリセロール部分の示した酸素原子に直接結合している(例えば、グリセロ脂質がモノアシルグリセロール誘導体またはジアシルグリセロール誘導体である場合)。一部の実施形態では、Mはカルボニル連結基であり、それにより、グリセロール部分の上述の酸素原子へのMの結合はエステル結合を介する。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Qは置換または非置換のメチレン基である。一部のそのような実施形態では、Mはカルボニル(すなわち、C(=O))連結基を含む。一部の実施形態では、Mはアミド(カルボニルおよび窒素原子を含む)である。一部の実施形態では、(例えば、アミドの)C(=O)はQに結合している。一部の実施形態では、Mはカルボニル連結基からなる。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Qは、1つまたは2つの置換基により置換されたメチレン基である。一部の実施形態では、メチレン基は、1つまたは2つのアルキル基(例えば、C1~4-アルキル)により置換されている。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、Qは、2つの置換基により置換されたメチレン基である。一部の実施形態では、メチレン基は、2つのアルキル基(例えば、C1~4-アルキル)により置換されている。一部の実施形態では、アルキル基はメチルであり、それによりQはジメチルメチレン(-C(CH3)2-)である。
本明細書の実施例セクションにおいて例示されるように、記号Qにより表される置換メチレン(例えば、二置換メチレン)は、(例えば、開始剤として)重合反応に参加するために特に好適であり、その理由は、メチレン上のフリーラジカルおよび/またはイオンはその置換基により安定化され得るからである。
本明細書においてさらに例示されるように、アミド基(記号Mにより表される)の形成は、上記の置換メチレンをホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルセリンなどの脂質(例えば、天然に存在する脂質)に結合させる簡便な方法として働き得る。
本明細書においてさらに例示されるように、カルボニル(例えば、Mに含まれる)と脂質の酸素原子(例えば、グリセロール部分の酸素原子)との間のエステル結合の形成は、上記の置換メチレンをモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、ホスファチジルグリセロールまたはホスファチジルイノシトールなどの脂質(例えば、天然に存在する脂質)に結合させる簡便な方法として働き得る。
標的化部分:
本明細書において上記されるように、本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、モノマー単位の少なくとも一部分は標的化部分(標的化部分に関する本明細書に記載されるいずれかの実施形態による)を含む。
本明細書において、「標的化部分」は、化合物(例えば、本発明の一部の実施形態による化合物)を、選択された物質および/または材料(本明細書において「標的」と称される)に近接させることができる部分を指す。標的は、任意選択で、細胞(例えば、増殖性疾患または障害と関連付けられる増殖性細胞)であり、近接は、標的化部分が標的細胞への化合物の結合および/または内部移行を促進するようなもの、および該化合物が治療効果を発揮し得るようなものである。
mが少なくとも1である本明細書に記載されるいずれかの実施形態では、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる、標的化部分を含むモノマー単位(その数は記号mにより表される)の少なくとも一部分は、(-L-Z)により表されるペンダント基を含まないモノマー単位である。一部のそのような実施形態では、標的化部分を含むモノマー単位(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)のそれぞれは、(-L-Z)により表されるペンダント基を含むモノマー単位(すなわち、(-L-Z)により置換された骨格単位Y)であり、すなわち、(-L-Z)により表されるペンダント基を含むモノマー単位のいずれも上述の標的化部分を含まない。
mが少なくとも1である本明細書に記載されるいずれかの実施形態では、(-L-Z)により表されるペンダント基を含まないモノマー単位(その数は記号mにより表される)のそれぞれは、標的化部分(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)を含む。一部のそのような実施形態では、標的化部分を含むモノマー単位(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)のそれぞれは、(-L-Z)により表されるペンダント基を含まないモノマー単位であり、すなわち、(-L-Z)により表されるペンダント基を含むモノマー単位のいずれも上述の標的化部分を含まず、かつ(-L-Z)により表されるペンダント基を含まないモノマー単位のそれぞれは上述の標的化部分を含む。
mが少なくとも1である本明細書に記載されるいずれかの実施形態では、標的化部分を含むモノマー単位は、1つまたは複数の標的化部分(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)により置換された骨格単位Y(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)から本質的になるものであってもよい。
標的化部分を含むモノマー単位の骨格単位Yは、任意選択で、ポリマー部分(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)中の他のモノマー単位の骨格単位Yとは構造が異なっていてもよい(任意選択で大きく異なっていてもよい)。
mが少なくとも1である本明細書に記載されるいずれかの実施形態では、ポリマー部分は、標的化部分を含むモノマー単位を含み、かつ、前記モノマー単位は、脂質部分に対して遠位のポリマー部分の末端にある。そのような実施形態では、一般式Iにより表される化合物は、式Ib:
式Ib
(式中、
Tは、標的化部分を含むモノマー単位(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)であり;
XおよびTは、[Y(-L-Z)]n[Y]m-1により表される部分の遠位末端に結合しており;かつ
X、Y、L、Z、nおよびmは、一般式Iに関する本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがって定義され、但し、mは少なくとも1である)を有する。
式Ib中のTは式Iおよび式Ia中のYにより表されるモノマー単位(すなわち、(-L-Z)により表されるペンダント基を有しない)の一種であり、かつ、T以外のYにより表されるモノマー単位(すなわち、(-L-Z)により表されるペンダント基を有しない)の数は値m-1により表され、それにより、Tなどの(-L-Z)により表されるペンダント基を有しないモノマー単位の総数は、式Iおよび式Iaにおけるように、記号mにより表されることが理解されるべきである。
一部の実施形態では、mは1であり、それによりm-1は0であり、かつ、式Ibにより表される化合物は結果的に、式:X-[Y(-L-Z)]n-T(式中、L、T、X、Y、Zおよびnは、本明細書に記載されるいずれかの実施形態にしたがって定義される)を有する。
本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる標的化部分を含むモノマー単位は、任意選択で、標的化部分を含むモノマーを調製すること、および前記モノマーを使用して本明細書に記載されるポリマー部分を調製することにより(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるモノマーの重合による)、および/または、共役のための技術が挙げられるがこれに限定されない当該技術分野において公知の任意の好適な技術を使用してポリマー部分の調製(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるモノマーの重合による)後にポリマー部分中のモノマー単位を修飾することにより調製されてもよい。
標的化部分に関する本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、標的化部分は、一般式IIを有する部分(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)を含まない。例えば、一般式IIにより表される部分が本明細書に記載される標的と結合を形成することができる場合であっても、「標的化部分」という語句は、一部の実施形態では、記号Zにより表される部分(一般式IIを有する)とは別個の部分に関するものと理解されるべきである。
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つの一部の実施形態では、(-L-Z)により表されるペンダント基は、標的と結合を形成しないようにならびに/または各々の実施形態のいずれか1つにおいて本明細書に記載される標的化部分の構造および/もしくは特性を含まないように選択される。例えば、求核基を含む標的化部分(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)、例えばアミン基が標的と結合(例えば、共有結合)を形成することができる実施形態では、記号Z(一般式IIを有する)は、任意選択で、示されるアミン/アンモニウム基が第三級アミン/アンモニウム(すなわち、R1~R3の1つより多くが水素ではない)または第四級アンモニウム(すなわち、R1~R3のいずれも水素ではない)、好ましくは第四級アンモニウム(例えば、ホスホコリンにおけるように、トリメチルアミノ基を含む)であるように選択される。第三級アミン基、特に第四級アンモニウム基は、第一級および第二級アミン基よりも有意に反応性が低い求核基であり得る。
標的化部分に関する本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、標的化部分は、例えば標的の表面(例えば、細胞および/または組織の表面)において、物質および/または材料(本明細書において「標的」と称される)と共有結合または非共有結合(好ましくは選択的な非共有結合)を形成することができる少なくとも1つの官能基を含む(および任意選択でそれからなる)。
本明細書において、「官能基」という語句は、本明細書に記載される任意のサイズおよび任意の機能性(例えば、標的と共有結合または非共有結合を形成することができる任意の機能性)の化学基および部分を包含する。
本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる非共有結合は、任意選択で、以下に限定されないが、静電誘引、疎水性結合、水素結合、および芳香族相互作用などの非共有結合性相互作用により効果がもたらされ得る。
一部の実施形態では、標的化部分は、標的に対して選択的な非共有結合を形成することができる官能基を含み、例えば、標的に対する標的化部分および/または官能基の親和性(例えば、解離定数に基づいて決定される)は、標的化部分と非共有結合を形成することができるほとんど(または全て)の他の化合物に対する標的化部分および/または官能基の親和性より大きい。
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つの一部の実施形態では、官能基は、標的(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる標的)上に存在する1つまたは複数の特定の官能基(例えば、ヒドロキシ、アミン、チオヒドロキシおよび/またはオキソ基)と共有結合を形成することができる。
標的(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)と共有結合を形成することができる(標的化部分中の)官能基およびそれらが形成することができる共有結合の種類の例としては、非限定的に以下が挙げられる:
標的中の例えば、求核性脱離基(例えば、本明細書に記載される任意の求核基)、マイケル受容体(例えば、本明細書に記載される任意のマイケル受容体)、ハロゲン化アシル、イソシアネートおよび/またはイソチオシアネート(例えば、本明細書に記載される)と共有結合を形成し得る、チオヒドロキシ、アミン(例えば、第一級または第二級アミン)およびヒドロキシなどの求核基;
例えば、標的中の求核基(例えば、本明細書に記載される)と共有結合を形成し得る、ハロ、アジド(-N3)、スルフェート、ホスフェート、スルホニル(例えば、メシル、トシル)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(例えば、NHSエステル)、スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド、および無水物などの求核性脱離基;
例えば、標的中の求核基(例えば、本明細書に記載される)、任意選択でチオヒドロキシと共有結合を形成し得る、エノン(例えば、マレイミド、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド)、ニトロ基およびビニルスルホンなどのマイケル受容体;
例えば、本明細書に記載される、標的中の求核基(例えば、本明細書に記載される)および/または置換もしくは非置換のフェニル基(例えば、別のジヒドロキシフェニル基)と共有結合を形成し得るジヒドロキシフェニル基(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる);
例えば、標的中の求核基(例えば、本明細書に記載される)と共有結合を形成し得る、ハロゲン化アシル(-C(=O)-ハロゲン)、イソシアネート(-NCO)およびイソチオシアネート(-N=C=S)基;
例えば、標的中のヒドロキシル基と共有結合を形成してエステル結合を形成し得るおよび/または標的中のアミン基(例えば、第一級アミン)と共有結合を形成してアミド結合を形成し得る(任意選択でカルボジイミドなどのカップリング試薬との反応による)カルボキシレート(-C(=O)OH)基;かつ/またはカルボキシレート基は標的中にあり、標的化部分中のアミンまたはヒドロキシル基とそれぞれアミドまたはエステル結合を形成し得る;
標的中のアミン基(例えば、第一級アミン)と共有結合性イミン結合を形成し得る(任意選択でアルデヒド基(-C(=O)H)中の)オキソ基;かつ/または(任意選択でアルデヒド基中の)オキソ基は標的中にあり、標的化部分中のアミン基と共有結合性イミン結合を形成し得る;および/または
標的中のチオヒドロキシ基と共有結合性ジスルフィド(-S-S-)結合を形成し得るチオヒドロキシ基。
本明細書に記載される官能基のいずれかを含ませるためのモノマー(例えば、重合前)またはポリマー部分のモノマー単位(例えば、重合後)の修飾は、任意選択で、当該技術分野において公知の共役のための任意の好適な技術を使用して行うことができる。当業者は、修飾すべき任意の所与の分子のために好適な技術を容易に選択することができる。
本明細書において、「ジヒドロキシフェニル」という用語は、その任意の位置において2つのヒドロキシル基により置換されたフェニルであるアリール基(本明細書において定義されている)を指す。フェニルは、任意選択で、追加の置換基(任意選択で追加のヒドロキシル基を含んでもよい)により置換されることにより、置換されたジヒドロキシフェニル基を形成してもよく;あるいは、フェニルは、2つのヒドロキシル基以外の置換基を含まず、それにより、ジヒドロキシフェニル基は非置換のジヒドロキシフェニル基である。
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つの一部の実施形態では、ジヒドロキシフェニル基は、オルト-ジヒドロキシフェニル(ヒドロキシル基は隣接する位置においてフェニルに結合している)またはパラ-ジヒドロキシフェニル(ヒドロキシル基はフェニル環の反対側に結合している)であり、それぞれは置換または非置換のジヒドロキシフェニルである。一部のそのような実施形態では、オルト-ジヒドロキシフェニルまたはパラ-ジヒドロキシフェニルは非置換のジヒドロキシフェニルである。
本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるジヒドロキシフェニル基は、任意選択で、Leeら[PNAS 2006年、103巻:12999~13003号]、Brodieら[Biomedical Materials 2011年、6巻:015014]および/または国際特許出願第PCT/IL2015/050606号(国際公開第2015/193888号パンフレットとして公開)においてジヒドロキシフェニル(カテコール)基について記載されている任意の1つまたは複数の結合機序にしたがって標的に共有結合および/または非共有結合により結合していてもよく、上記の各文献の内容、特に、表面へのジヒドロキシフェニル(カテコール)基により形成された結合に関する内容は、それらの全体が組み込まれる。
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つの一部の実施形態では、標的への結合を形成することができる官能基は、アミン基、任意選択で第一級アミン基と共有結合を形成することができる官能基である。一部のそのような実施形態では、標的は、1つ(on)またはそれより多くのアミノ酸またはアミノ酸残基、例えば、任意の長さのペプチドまたはポリペプチド(例えば、少なくとも2つのアミノ酸残基、例えば、タンパク質)を含み、かつ、アミン基は、任意選択でリシン側鎖のアミン基および/またはN末端アミン基であってもよい。一部の実施形態では、標的は、細胞外マトリックスタンパク質、例えばコラーゲンを含む。一部の実施形態では、標的は軟骨(例えば、関節軟骨)を含む。
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つの一部の実施形態では、標的化部分は、標的(例えば、各々の実施形態のいずれか1つにおいて本明細書に記載される)と非共有結合を形成することができる少なくとも1つの官能基を含む(および任意選択でそれからなる)。
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つの一部の実施形態では、標的と非共有結合を形成することができる官能基は、多糖および/またはポリペプチド(例えば、タンパク質および/またはその断片)を含み(および任意選択でそれからなり)、標的は、任意選択で、多糖および/またはポリペプチドのリガンドを含み;かつ/または標的は多糖および/またはポリペプチド(例えば、タンパク質および/またはその断片)を含み、かつ標的と非共有結合を形成することができる官能基は多糖および/またはポリペプチドのリガンドである。
好適な多糖および/またはポリペプチド、およびそのリガンドの例としては、非限定的に以下が挙げられる:
本明細書に記載されるポリペプチドとしてアビジンまたはストレプトアビジン、およびそのリガンドとしてビオチン;
本明細書に記載されるポリペプチドとして多糖結合ポリペプチド、およびそのリガンドとして相補的な多糖(または本明細書に記載される多糖のリガンドとして相補的な多糖結合ポリペプチド);
本明細書に記載されるポリペプチドとしてコラーゲン結合ポリペプチド、およびそのリガンドとして相補的なコラーゲン(または本明細書に記載されるポリペプチドとしてコラーゲンおよびそのリガンドとして相補的なコラーゲン結合ポリペプチド);
細胞により発現される細胞受容体、および該受容体により選択的に結合されるリガンド;
本明細書に記載されるポリペプチドとして任意の抗原に対する抗体(例えば、本明細書に記載される標的が任意選択で抗原を含む場合)またはそのような抗体の断片、およびそのリガンドとして各々の抗原;および
任意の抗原に対する抗体模倣物(例えば、本明細書に記載される標的が任意選択で抗原を含む場合)。
細胞により発現される細胞受容体の例としては、特定の種類の細胞および/または組織に特徴的な受容体、ならびにがん細胞により過剰発現される受容体が挙げられるがこれらに限定されない。細胞受容体または細胞は、任意選択で本明細書に記載される標的であり、かつ、標的化部分は、任意選択で受容体の任意のリガンドを含む。そのようなリガンドの例としては、一部のがん細胞により過剰発現されるトランスフェリン受容体を任意選択で標的化し得るトランスフェリン受容体のリガンドであるトランスフェリン;上皮起源の細胞に特異的であり、かつ子宮内膜癌または膵臓癌により過剰発現されるものなどのKGF受容体を任意選択で標的化し得るケラチノサイト増殖因子(KGFまたはFGF7)[Viscoら、Int J Oncol 1999年、15巻:431~435号;Siegfriedら、Cancer 1997年、79巻:1166~1171頁];ならびに神経膠腫および子宮内膜癌により過剰発現されるものなどのEGF受容体、任意選択でerbBを任意選択で標的化し得る上皮成長因子(EGF)[Normannoら、Curr Drug Targets 2005年、6巻:243~257号]が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において使用される場合、「抗体」という用語は、任意の種類の免疫グロビン(immunoglobin)を包含する。
本明細書において使用される場合、「抗体模倣物」という語句は、(例えば、非共有結合により)抗原に選択的に結合することができる当該技術分野においてそのように称される任意の種類の分子、任意選択でポリペプチドを包含する。抗体模倣物の非限定的な例としては、例えば、Nygren[FEBS J 2008年、275巻:2668~2676頁]、Ebersbachら[J Mol Biol 2007年、372巻:172~185頁]、Johnsonら[Anal Chem 2012年、84巻:6553~6560頁]、Krehenbrinkら[J Mol Biol 2008年、383巻:1058~1068頁]、Desmetら[Nature Comm 2014年、5巻:5237頁]、Skerra[FEBS J 2008年、275巻:2677~2683頁]、Silvermanら[Nature Biotechnol 2005年、23巻:1556~1561頁]、Stumppら[Drug Discov Today 2008年、13巻:695~701頁]、Grabulovskiら[J Biol Chem 2007年、282巻:3196~3204頁]、NixonおよびWood[Curr Opin Drug Discov Devel 2006年、9巻:261~268頁]、KoideおよびKoide[Methods Mol Biol 2007年、325巻:95~109頁]、およびGebauerおよびSkerra[Curr Opin Chem Biol 2009年、13巻:245~255頁]に記載されているアフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、DARPin、Fynomers、Kunitzドメインペプチド、およびモノボディが挙げられ、上記の各文献の内容、特に、特定の種類の抗体模倣物に関する内容は、それらの全体が組み込まれる。
本明細書において使用される場合、「多糖結合ポリペプチド」という語句は、多糖に(例えば、非共有結合により)選択的に結合することができる任意のポリペプチドまたはオリゴペプチド(少なくとも2つの、好ましくは少なくとも4つのアミノ酸残基の長さのペプチド鎖)を包含する。多様な多糖結合ポリペプチドおよびそれらの結合特異性が当業者に公知であり、短いペプチド配列(例えば、4~50、任意選択で4~20アミノ酸残基の長さ)、およびタンパク質またはその断片(例えば、炭水化物結合モジュールおよび/またはドメイン)などのより長いポリペプチドが挙げられる。加えて、「多糖結合ポリペプチド」という語句は、多糖に特異的に結合することができる抗体を包含する。そのような抗体は当業者にとって利用可能であり、かつ/または、当該技術分野において公知の免疫学的技術を使用してそのような抗体を調製する方法が当業者に公知である。
本発明の実施形態のいずれか1つの一部において使用され得る多糖結合ポリペプチドの例としては、炭水化物結合モジュール(CBM);ならびにヒアルロン酸結合ペプチド、ポリペプチドおよび/またはモジュール(例えば、国際特許出願公開第2013/110056号パンフレット;国際特許出願公開第2014/071132号パンフレット;Bartaら[Biochem J 1993年、292巻:947~949頁]、Kohdaら[Cell 1996年、86巻:767~775頁]、BrissetおよびPerkins[FEBS Lett 1996年、388巻:211~216頁]、Peachら[J Cell Biol 1993年、122巻:257~264頁]、Singhら[Nature Materials 2014年、13巻:988~995頁]、およびZaleskiら[Antimicrob Agents Chemother 2006年、50巻:3856~3860頁]のいずれかに記載されている配列を有する;上記の各文献の内容、特に、特定の多糖結合ポリペプチドに関する内容は、それらの全体が組み込まれる)、例えば、GAHWQFNALTVR(配列番号1)(ヒアルロン酸結合ペプチド配列)を有するものが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の実施形態のいずれか1つの一部において使用され得るCBMの例としては、ファミリーCBM3、CBM4、CBM9、CBM10、CBM17および/またはCBM28(これらは、任意選択で、例えばセルロース含有標的中の、セルロースに結合するために使用され得る);CBM5、CBM12、CBM14、CBM18、CBM19および/またはCBM33(これらは、任意選択で、例えばキチン含有標的中の、キチンおよび/またはN-アセチルグルコサミンを含む他の多糖に結合するために使用され得る);CBM15(これらは、任意選択で、例えばヘミセルロース含有標的中の、ヘミセルロースに結合するために使用され得る);ならびに/またはCBM20、CBM21および/もしくはCBM48(これらは、任意選択で、例えばデンプン含有および/またはグリコーゲン含有標的中の、デンプンおよび/またはグリコーゲンに結合するために使用され得る)に属するCBMが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において使用される場合、「コラーゲン結合ポリペプチド」という語句は、コラーゲン(例えば、1つの種類のコラーゲン、一部の種類のコラーゲン、全ての種類のコラーゲン)に(例えば、非共有結合により)選択的に結合することができる任意のポリペプチドまたはオリゴペプチド(少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つのアミノ酸残基の長さのペプチド鎖)を包含し、ペプチドグリカンおよびプロテオグリカンなどのグリコシル化ポリペプチドおよびオリゴペプチドが挙げられる。多様なコラーゲン結合ポリペプチドおよびそれらの結合特異性が当業者に公知であり、短いペプチド配列(例えば、4~50、任意選択で4~20アミノ酸残基の長さ)、およびタンパク質またはその断片(例えば、コラーゲン結合ドメイン)などのより長いポリペプチドが挙げられる。加えて、「コラーゲン結合ポリペプチド」という語句は、コラーゲンに特異的に結合することができる抗体を包含する。そのような抗体は当業者にとって利用可能であり、かつ/または、当該技術分野において公知の免疫学的技術を使用してそのような抗体を調製する方法が当業者に公知である。
本発明の実施形態において使用され得るコラーゲン結合ポリペプチドの例としては、米国特許第8,440,618号明細書、Abd-ElgalielおよびTung[Biopolymers 2013年、100巻:167~173頁]、Paderiら[Tissue Eng Part A 2009年、15巻:2991~2999頁]、Rothenfluhら[Nat Mater 2008年、7巻:248~254頁]およびHelmsら[J Am Chem Soc 2009年、131巻:11683~11685頁](これらの各文献の内容、特に、特定のコラーゲン結合ポリペプチドに関する内容は、それらの全体が組み込まれる)に記載されているコラーゲン結合タンパク質(例えば、デコリン)、その断片および/または他のポリペプチドが挙げられるがこれらに限定されず、例えば、配列WYRGRL(配列番号2)である。
本出願からの特許の存続期間中に結合用の多くの関連する官能基および部分が開発および/または発見されることが予想され、「標的化部分」、「官能基」、「細胞受容体」、「抗体」、「抗体模倣物」、「コラーゲン結合ポリペプチド」および「多糖結合ポリペプチド」などの用語は、全てのそのような新しい技術を生得的に含むことを意図する。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、標的化部分(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)中の官能基は連結基(本明細書において定義されている)に結合している。連結基は、任意選択で、本明細書に記載される任意の連結基または連結部分であってもよく、置換または非置換の炭化水素が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、標的化部分(任意選択で骨格単位Yの置換基)は、連結基を介してポリマー部分の残余部分に結合している官能基から本質的になる。
官能基は、任意選択で、2つの官能基間の反応により得られ得る共有結合、例えば、官能基と標的との間に共有結合を形成させる文脈において本明細書に記載される任意の共有結合および/または官能基により、連結部分に結合していてもよい。
ペプチドまたはポリペプチドを含む官能基に関する本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸残基は、任意選択で、例えば、(例えば、N末端、リシン側鎖、C末端、グルタミン酸側鎖および/またはアスパラギン酸側鎖における)ペプチドもしくはポリペプチド中のアミンもしくはカルボキシレート基から形成されたアミド結合、(例えば、セリン側鎖、スレオニン側鎖、C末端、グルタミン酸側鎖および/またはアスパラギン酸側鎖における)ペプチドもしくはポリペプチド中のヒドロキシルもしくはカルボキシレート基から形成されたエステル結合、および/または(例えば、システイン側鎖における)ペプチドもしくはポリペプチド中のチオヒドロキシ基から形成されたジスルフィド結合を介して、標的化部分の連結基に結合している。一部の実施形態では、連結基に結合しているアミノ酸残基は、N末端および/またはC末端の残基、例えば、N末端アミノ基もしくはC末端カルボキシレート基を介して結合した任意のアミノ酸残基、ならびに/またはその側鎖を介して結合した末端リシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、スレオニンおよび/もしくはシステイン残基である。
一部の実施形態では、アミノ酸残基および/またはペプチド(例えば、2~20アミノ酸残基の長さ)が(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかにしたがって)官能基のペプチドまたはポリペプチド配列のN末端および/またはC末端に付加され、上述の配列を連結基に連結させる。そのような末端アミノ酸残基および/またはペプチドの例としては、(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかにしたがって)連結基をN末端またはC末端に結合させるために使用され得る、グリシン残基および末端グリシン残基を有するペプチド;(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかにしたがって)任意選択でエステル結合を介して連結基をセリンまたはスレオニン側鎖中のヒドロキシル基に結合させるために使用され得る、セリンおよびスレオニン残基および末端セリンまたはスレオニン残基を有するペプチド;ならびに(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかにしたがって)ジスルフィド結合を介して連結基をペプチドに結合させるために使用され得る、システイン残基および末端システイン残基を有するペプチドが挙げられるがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、末端アミノ酸残基を介する連結基へのペプチドまたはポリペプチドの結合は、連結基への結合後のペプチドまたはポリペプチドの機能性への干渉(例えば、立体障害)を最小化する。
一部の実施形態では、末端グリシンを介する連結基へのペプチドまたはポリペプチドの結合は、連結基への結合へのアミノ酸側鎖(グリシンを欠く)の干渉(例えば、立体障害)を最小化する。
脂質およびリポソーム:
本明細書に記載される通り、実施形態によるリポソームは少なくとも1つの二重層形成脂質を含む。
本明細書において、「二重層形成脂質」という用語は、化合物の純粋な水溶液から、該化合物の分子(「脂質」と称される)の2つの並列の層を含む二重層を形成し得る任意の化合物を包含する。
典型的に、二重層(例えば、本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部によるリポソーム中)は、任意選択で水溶液との境界面および/または固体表面との境界面を含んでもよい、二重層の2つの表面における脂質の比較的極性の部分;ならびに二重層を形成する脂質分子の2つの層の間の境界面における、二重層の内部における脂質の比較的疎水性の部分を含む。
二重層形成脂質の例としては、グリセロリン脂質(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるグリセロリン脂質)が挙げられる。本明細書に記載されるポリマー化合物は、任意選択で、それ自体でまたは1つもしくは複数の追加の二重層形成脂質と組み合わせて二重層を形成することができる二重層形成脂質であってもよいことが理解されるべきである。
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つの一部の実施形態では、二重層形成脂質は少なくとも1つの荷電基(例えば、1つもしくは複数の負に荷電した基および/または1つもしくは複数の正に荷電した基)を含む。
一部の実施形態では、二重層形成脂質は双性イオンであり、負に荷電した基および正に荷電した基の両方(例えば、等しい数)(例えば、それぞれ1つずつ)を含む。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、リポソーム中の二重層形成脂質(ポリマー化合物に加えて含まれる)とポリマー化合物とのモル比は5:1~5,000:1(二重層形成脂質:ポリマー化合物)の範囲内、任意選択で10:1~2,500:1の範囲内、任意選択で25:1~1,000:1の範囲内、任意選択で50:1~500:1の範囲内である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、リポソーム中のポリマー部分は、式Iにおいて記号Xにより表される脂質部分(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)を含み、該脂質部分は、ポリマー部分に加えてリポソームに含まれるまたはリポソームに含まれる二重層形成脂質に密接に関連している二重層形成脂質(例えば、グリセロリン脂質)の残基を含み、例えば、脂質部分はグリセロリン脂質残基を含み、かつ、リポソームは二重層形成脂質とは別のグリセロリン脂質を含む(例えば、任意選択で、グリセロリン脂質残基中の脂肪酸残基は、二重層形成脂質中の脂肪酸残基とおおよそ同じ長さを有し、かつ任意選択で、グリセロリン脂質残基中の脂肪酸残基は、二重層形成脂質中の脂肪酸残基と実質的に同じである)。
いかなる特定の理論によっても縛られるものではないが、ポリマー部分の脂質部分と二重層形成脂質との類似性は、二重層形成脂質を含むリポソーム中のポリマー部分の脂質部分の固着を促進すると考えられる。
リポソームは、任意選択で、単一の二重層(例えば、ユニラメラ小胞)または複数の二重層(例えば、マルチラメラ小胞)を含んでもよく、各二重層は、任意選択で、例えば、同心の二重層小胞および/または同じ二重層小胞に含まれる複数の別々の二重層小胞を含む閉じた小胞を独立して形成する。
本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるリポソームは、おおよそ球形の形状であってもよく、または任意の代替的な形状、例えば、細長い管および/もしくは扁平な(例えば、シート状の)形状を有してもよい。
リポソームの平均直径は、任意選択で20nm~1000nm、任意選択で50nm~300nmの範囲内であってもよい。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、リポソームの平均直径は、少なくとも100nm、例えば、100~1000nm、または100nm~300nmである。一部の実施形態では、リポソームの平均直径は、少なくとも125nm、例えば、125~1000nm、または125nm~300nmである。一部の実施形態では、リポソームの平均直径は、少なくとも150nm、例えば、150~1000nm、または150nm~300nmである。一部の実施形態では、リポソームの平均直径は、少なくとも160nm、例えば、160~1000nm、または160nm~300nmである。一部の実施形態では、リポソームの平均直径は、少なくとも170nm、例えば、170~1000nm、または170nm~300nmである。
本明細書において例示されるように、少なくとも約100nm(例えば、約160~170nm)のリポソームの直径は、in vivoでのより長い保持時間と関連付けられる。
リポソームの平均直径は、例えば、(例えば、本明細書の実施例セクションに記載される通り)当該技術分野において公知の手順にしたがって動的光散乱測定により決定されてもよい。
リポソームに関する本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、リポソームは、リポソームの表面に結合したならびに/または脂質二重層内および/もしくはリポソームのコア内に(例えば、リポソーム二重層内におよび/またはリポソーム二重層に包囲された)少なくとも1つの機能的部分または剤を(本明細書に記載される治療活性剤に加えて)さらに含む。
本明細書に記載される実施形態に含めるために好適な機能的部分および剤の例としては、標識化部分もしくは剤、および/または標的化部分もしくは標的化剤(例えば、リポソームの表面上の標的化部分または剤)が挙げられるがこれらに限定されない。
標識化部分または剤の例としては、発色団(例えば、可視光を吸収する)、蛍光性、リン光性、および/または放射性である部分および化合物が挙げられる。多くのそのような化合物および部分(およびそのような部分を調製するための技術)は当業者に公知である。
本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるリポソームにおける標的化部分は、任意選択で、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる標的化部分であってもよい。リポソーム中の標的化部分は、本発明の一部の実施形態によるポリマー化合物(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)に含まれてもよく、リポソームは該ポリマー化合物を含む。あるいはまたはさらに、リポソーム中の標的化部分は、任意選択で、リポソーム中の別の化合物に含まれてもよく、任意選択で、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる標的化部分に共役された二重層形成脂質(本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる)に含まれてもよい。
本明細書において、「標的化剤」は、(例えば、本明細書に記載されるポリマー化合物に含まれる標的化部分の文脈における)本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる標的化部分を含む(および任意選択でそれから本質的になる)化合物(「剤」)を指す。典型的に、「標的化剤」という語句は、本明細書に記載される標的化部分を含むポリマー化合物以外の化合物を指すために使用される。
一部の実施形態では、機能的部分(例えば、標的化部分または標識化部分)は、リポソームに共有結合により結合している。そのような結合は、一部の実施形態では、当該技術分野において公知の技術(例えば、アミド結合形成)を使用して得ることができる。
治療活性剤および適応症:
本明細書において、「治療活性剤」という語句は、治療効果を有する任意の剤(例えば、化合物)の他に、放出時(例えば、1つまたは複数の共有結合の切断時)に治療効果を有する剤を生成する剤の任意の部分(例えば、化合物の部分)を指す。
リポソーム中および/またはリポソームの表面上に組み込まれた治療活性剤は、例えば、リポソーム(例えば、リポソーム膜の外側表面および/または内側表面)に共有もしくは非共有(例えば、静電および/または疎水性)結合により結合していてもよく、リポソーム膜内に組み込まれていてもよく(例えば、リポソームの脂質相に安定的に仕切りを与える親油性剤)、かつ/またはリポソームのコア内に包囲されていてもよい(例えば、リポソームの水性区画中の親水性剤)。
一部の実施形態では、治療活性剤は、リポソームに共有結合により結合している部分である(例えば、脂質に結合して、該部分を含む脂質誘導体を形成している)。そのような結合は、一部の実施形態では、当該技術分野において公知の技術(例えば、アミド結合形成)を使用して得ることができる。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、治療活性剤は、例えば、鎮痛剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗微生物剤(抗菌剤、抗マイコバクテリウム剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原生動物剤および/または抗寄生虫剤など)および/またはワクチン抗原である。一部のそのような実施形態では、治療活性剤は鎮痛剤および/または抗炎症剤である。一部のそのような実施形態では、治療活性剤は、単独でまたは追加の治療活性剤と組み合わせて、変形性関節症の治療において使用可能である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部では、該実施形態のリポソームは、指し示される医学的状態の治療において使用可能な追加の治療活性剤またはそれを含む医薬組成物と組み合わせてそれを必要とする対象に投与される。追加の治療活性剤は、該実施形態のリポソーム中、該剤の同じもしくは異なる保持時間を有し得る他のリポソーム中に組み込むことができ、または適切なリポソームフリーの担体と単純に混合することができる。
好適な鎮痛剤の例としては、アリルプロジン、アルファメチルフェンタニル、AP-237、ベジトラミド、ブトルファノール、ブプレノルフィン、カルフェンタニル(carfentanyl)、クロニジン、コデイン、デスメチルプロジン、デキストロモラミド、デキソシン(dexocine)、ジフェノキシン、ジヒドロコデイン、ジヒドロエトルフィン、ジヒドロモルフィン、ジフェノキシレート、ジピパノン、エルキサドリン、エチルモルフィン、エトルフィン、フェンタニル、ヘテロコデイン、ヒドロコン、ヒドロモルフォン、ケタミン、ケトベミドン、レフェタミン、レボメタジル(例えば、酢酸レボメタジル)、レボメトルファン、レボルファノール、ロペラミド、メプタジノール、メタドン、メキシレチン、ミトラギニン、モルヒネ、ナルブフィン、オーメフェンタニル、オキシコドン、オキシモルフォン、パラセタモール、ペンタゾシン、ペチジン、フェネチルフェニルアセトキシピペリジン、ピリトラミド、プロジン、プロメドール、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スルフェンタニル、タペンタドール、チリジン、およびトラマドールが挙げられるがこれらに限定されない。
非ステロイド性抗炎症剤(例えば、本明細書に記載される非ステロイド性抗炎症剤)の他に、ステロイド性抗炎症剤も鎮痛剤として使用することができる。
好適な抗炎症剤の例としては、アルクロフェナク;アルクロメタゾン(例えば、プロピオン酸アルクロメタゾン);アルゲストン(例えば、アルゲストンアセトニド);アルファアミラーゼ;アムシナファル;アムシナフィド;アムフェナク(例えば、アムフェナクナトリウム);アミプリロース(例えば、塩酸アミプリロース);アナキンラ;アニロラク;アニトラザフェン;アパゾン;アスピリン;バルサラジド二ナトリウム;ベンダザック;ベノキサプロフェン;ベンジダミン(例えば、塩酸ベンジダミン);ブロメライン;ブロペラモール;ブデソニド;カルプロフェン;シクロプロフェン;シンタゾン;クリプロフェン;クロベタゾール(例えば、プロピオン酸クロベタゾール、ブチル酸クロベタゾン);クロピラク;クロチカソン(プロピオン酸クロチカソーム(cloticasome propionate));コルメタゾン(酢酸コルメタゾン);コルトドキソン;デフラザコート;デソニド;デソキシメタゾン;デキサメタゾン(例えば、二プロピオン酸デキサメタゾン);ジクロフェナク(例えば、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム);ジフロラゾン(例えば、二酢酸ジフロラゾン);ジフルミドン(例えば、ジフルミドンナトリウム);ジフルニサル;ジフルプレドネート;ジフタロン;ドロシノニド;エンドリソン;エンリモマブ;エノリカム(例えば、エノリカムナトリウム);エピリゾール;エトドラク;エトフェナメート;フェルビナク;フェナモール;フェンブフェン;フェンクロフェナク;フェンクロラク;フェンドサル;フェンピパロン;フェンチアザク;フラザロン;フルアザコート;フルフェナム酸;フルミゾール;フルニソリド(例えば、酢酸フルニソリド);フルニキシン(例えば、フルニキシンメグルミン);フルオコルチン(例えば、フルオルコルチンブチル(fluorcortin butyl));フルオロメトロン(例えば、酢酸フルオロメトロン);フルカゾン;フルルビプロフェン;フルレトフェン;フルチカゾン(例えば、プロピオン酸フルチカゾン);フラプロフェン;フロブフェン;ハルシノニド;ハロベタゾール(例えば、プロピオン酸ハロベタゾール);ハロプレドン(例えば、酢酸ハロプレドン);イブフェナク;イブプロフェン(例えば、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール);イロニダプ;インドメタシン(例えば、インドメタシンナトリウム);インドプロフェン;インドキソール;イントラゾール;イソフルプレドン(例えば、酢酸イソフルプレドン);イソキセパク;イソキシカム;ケトプロフェン;ロフェミゾール(例えば、塩酸ロフェミゾール);ロモキシカム(lomoxicam);ロテプレドノール(例えば、エタボン酸ロテプレドノール);メクロフェナメート(例えば、メクロフェナム酸ナトリウム、メクロフェナム酸);メクロリゾン(例えば、二酪酸メクロリゾン);メフェナム酸;メサラミン;メセクラゾン;メチルプレドニゾロン(例えば、スレプタン酸メチルプレドニゾロン);モミフルメート(momiflumate);ナブメトン;ナプロキセン(例えば、ナプロキセンナトリウム);ナプロキソール;ニマゾン;オルサラジン(例えば、オルサラジンナトリウム);オルゴテイン;オルパノキシン;オキサプロジン;オキシフェンブタゾン;パラニリン(例えば、塩酸パラニリン);ポリ硫酸ペントサン(例えば、ポリ硫酸ペントサンナトリウム);フェンブタゾン(例えば、グリセリン酸フェンブタゾンナトリウム);ピルフェニドン;ピロキシカム(例えば、桂皮酸ピロキシカム、ピロキシカムオラミン);ピルプロフェン;プレドナゼート;プリフェロン;プロドール酸;プロクアゾン;プロキサゾール(例えば、クエン酸プロキサゾール);リメキソロン;ロマザリト;サルコレクス;サリチレート(例えば、サリチル酸);サルナセジン;サルサレート;サングイナリウム(例えば、塩化サングイナリウム);セクラゾン;セルメタシン;スドキシカム;スリンダク;スプロフェン;タルメタシン;タルニフルメート;タロサレート;テブフェロン;テニダプ(例えば、テニダプナトリウム);テノキシカム;テシカム;テシミド;テトリダミン;チオピナク;チキソコルトール(例えば、ピバル酸チキソコルトール);トルメチン(例えば、トルメチンナトリウム);トリクロニド;トリフルミデート;ジドメタシン;およびゾメピラク(例えば、ゾメピラクナトリウム)が挙げられるがこれらに限定されない。
好適な抗増殖剤の例としては、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール(例えば、塩酸アコダゾール);アクロニン;アドリアマイシン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;アメタントロン(例えば、酢酸アメタントロン);アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン(例えば、塩酸ビサントレン);ビスナフィド(例えば、二メシル酸ビスナフィド);ビゼレシン;ブレオマイシン(例えば、硫酸ブレオマイシン);ブレキナル(例えば、ブレキナルナトリウム);ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン(例えば、塩酸カルビシン);カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;コンブレスタチンA-4リン酸塩;クリスナトール(例えば、メシル酸クリスナトール);シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン(例えば、塩酸ダウノルビシン);デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン(例えば、メシル酸デザグアニン);ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン(例えば、塩酸ドキソルビシン);ドロロキシフェン(例えば、クエン酸ドロロキシフェン);ドロモスタノロン(例えば、プロピオン酸ドロモスタノロン);ズアゾマイシン;エダトレキセート;エフロルニチン(例えば、塩酸エフロルニチン);エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン(例えば、塩酸エピルビシン);エルブロゾール;エソルビシン(例えば、塩酸エソルビシン);エストラムスチン(例えば、リン酸エストラムスチンナトリウム);エタニダゾール;エトポシド(例えば、リン酸エトポシド);エトプリン;ファドロゾール(例えば、塩酸ファドロゾール);ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビン(例えば、リン酸フルダラビン);フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシン(例えば、フォストリエシンナトリウム);ゲムシタビン(例えば、塩酸ゲムシタビン);ヒドロキシウレア;イダルビシン(例えば、塩酸イダルビシン);イホスファミド;イルモフォシン;インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-Ia;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;イリノテカン(例えば、塩酸イリノテカン);ランレオチド(例えば、酢酸ランレオチド);レトロゾール;ロイプロリド(例えば、ロイプロリド酢酸塩);リアロゾール(例えば、塩酸リアロゾール);ロメトレキソール(例えば、ロメトレキソールナトリウム);ロムスチン;ロソキサントロン(例えば、塩酸ロソキサントロン);マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン(例えば、塩酸メクロレタミン);メゲストロール(例えば、酢酸メゲストロール);メレンゲストロール(例えば、酢酸メレンゲストロール);メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート(例えば、メトトレキサートナトリウム);メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;ミトマイシン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン(例えば、塩酸ミトキサントロン);ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オンブラブリン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン(例えば、硫酸ペプロマイシン);ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン(例えば、塩酸ピロキサントロン);プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマー(例えば、ポルフィマーナトリウム);ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン(例えば、塩酸プロカルバジン);ピューロマイシン(例えば、塩酸ピューロマイシン);ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール(例えば、塩酸サフィンゴール);セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセート(例えば、スパルフォセートナトリウム);スパルソマイシン;スピロゲルマニウム(例えば、塩酸スピロゲルマニウム);スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガラン(例えば、テコガランナトリウム);テガフール;テロキサントロン(例えば、塩酸テロキサントロン);テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トポテカン(例えば、塩酸トポテカン);トレミフェン(例えば、クエン酸トレミフェン);トレストロン(例えば、酢酸トレストロン);トリシリビン(例えば、リン酸トリシリビン);トリメトレキセート(例えば、グルクロン酸トリメトレキセート);トリプトレリン;ツブロゾール(例えば、塩酸ツブロゾール);ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン;ビンクリスチン(例えば、硫酸ビンクリスチン);ビンデシン(例えば、硫酸ビンデシン);ビネピジン;ビングリシネート;ビンロイロシン;ビノレルビン(例えば、酒石酸ビノレルビン);ビンロシジン;ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;およびゾルビシン(例えば、塩酸ゾルビシン)が挙げられるがこれらに限定されない。追加の抗がん剤としては、Antineoplastic Agents(Paul CalabresiおよびBruce A. Chabner)のChapter 52、およびGoodmanおよびGilmanの「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第8版、1990年、McGraw-Hill, Inc.(Health Professions Division)の導入部、1202~1263頁(これらの内容は参照することにより本明細書に組み込まれる)に開示されているものが挙げられる。
本明細書に記載される一部の実施形態によるリポソームに含めるために好適な治療活性剤(例えば、分子としてまたは剤の部分として)の例としては、アムホテリシンB、シスプラチン、シタラビン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、インフルエンザヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼ、モルヒネ、サーファクタントプロテインB、サーファクタントプロテインC、ベルテポルフィンおよびビンクリスチンが挙げられるがこれらに限定されない。
アムホテリシンB(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるアムホテリシンB含有リポソームの注射および/または注入を介して)により治療可能な医学的状態の例としては、原生動物感染症(例えば、リーシュマニア症)および真菌感染症、例えば、アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ症、コクシジオイデス症およびクリプトコックス症が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるリポソーム中にアムホテリシンBを含めることは、任意選択で、毒性の低減(例えば、腎臓毒性の低減)および/または薬物動態の改善(例えば、中枢神経系の感染症の治療において)を結果としてもたらすことがある。
シタラビン(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるシタラビン含有リポソームの注射および/または注入を介して)により治療可能な医学的状態の例としては、がん、例えば、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病)、およびリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫性髄膜炎)が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるリポソーム中にシタラビンを含めることは、任意選択で、有効性の増進(例えば、リンパ腫性髄膜炎の治療において)を結果としてもたらすことがある。
シスプラチン(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるシスプラチン含有リポソームの注射および/または注入を介して)により治療可能な医学的状態の例としては、がん、例えば、膀胱がん、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、食道がん、生殖細胞腫瘍、頭頸部がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、中皮腫、神経芽腫、卵巣がん、膵臓がん、精巣がん、および肉腫が挙げられるがこれらに限定されない。
ダウノルビシン(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるダウノルビシン含有リポソームの注射および/または注入を介して)により治療可能な医学的状態の例としては、がん、例えば、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)、神経芽腫、およびカポジ肉腫(例えば、AIDS関連カポジ肉腫)が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるリポソーム中にダウノルビシンを含めることは、任意選択で、病変(例えば、カポジ肉腫病変)の部位において薬物動態プロファイルの改善(例えば、濃度の増加)を結果としてもたらすことがある。
ドキソルビシン(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるドキソルビシン含有リポソームの注射および/または注入を介して)により治療可能な医学的状態の例としては、がん、例えば、乳がん(例えば、シクロホスファミドと組み合わせて)、膀胱がん、カポジ肉腫(例えば、AIDS関連カポジ肉腫)、白血病(例えば、急性リンパ性白血病)、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫)、肺がん、卵巣がん、軟組織肉腫、胃がん、および甲状腺がんが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるリポソーム中にドキソルビシンを含めることは、任意選択で、毒性(例えば、心毒性)の低減および/または病変(例えば、カポジ肉腫病変)の部位において薬物動態プロファイルの改善(例えば、濃度の増加)を結果としてもたらすことがある。
エストラジオール(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるエストラジオール含有リポソームの局所投与を介して)により治療可能な医学的状態の例としては、閉経、性機能不全、性別違和、不妊症、乳汁分泌、過度の身長(例えば、思春期の少女において)、およびホルモン感受性がん(例えば、乳がん、前立腺がん)が挙げられるがこれらに限定されない。
インフルエンザヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼは、任意選択で、インフルエンザを治療するために(例えば、予防するために)、例えばインフルエンザワクチンとして、使用され得る。ワクチンは、任意選択で、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼを含むリポソーム(任意選択でビロソームの形態)の注射および/または注入を介して投与するためのものであってもよい。
モルヒネ(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるモルヒネ含有リポソームの注射および/または注入を介して)により治療可能な医学的状態の例としては、急性および慢性疼痛(例えば、手術、心筋梗塞および/または労働に伴う痛み)ならびに息切れが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるリポソーム中にモルヒネを含めることは、任意選択で、治療的に効果的なレベルのモルヒネが対象の血液中に存在する期間の延長(例えば、少なくとも48時間)を結果としてもたらすことがある。
呼吸窮迫症候群(例えば、未熟児において)は、例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるサーファクタントプロテインBおよび/またはC含有リポソームの肺(例えば、気管内)投与を介して、サーファクタントプロテインBおよび/またはサーファクタントプロテインCにより治療可能な医学的状態の非限定的な例である。
ベルテポルフィン(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるベルテポルフィン含有リポソームの注射および/または注入を介して)により治療可能な医学的状態の例としては、眼障害、例えば、目における異常な血管(例えば、滲出型および/または加齢黄斑変性症に伴う)、病的近視、眼ヒストプラズマ症、および中心性漿液性網膜症、例えば、光線力学的療法(例えば、ベルテポルフィンがレーザー処置の前に投与される)に伴うものが挙げられるがこれらに限定されない。
ビンクリスチン(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるビンクリスチン含有リポソームの注射および/または注入を介して)により治療可能な医学的状態の例としては、血小板減少性紫斑病(例えば、血栓性血小板減少性紫斑病または特発性血小板減少性紫斑病)ならびにがん、例えば、神経芽腫、腎芽腫、黒色腫、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病)、およびリンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫)が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによるリポソーム中にビンクリスチンを含めることは、任意選択で、有効性の増進、細胞へのビンクリスチンの進入の増進、ビンクリスチンの血漿濃度および/もしくは循環寿命の増進、ならびに/または毒性の減少(例えば、神経毒性の減少)を結果としてもたらすことがある。
当業者は、いずれの医学的状態が所与の治療活性剤により治療可能であり得るかの他に、いずれの治療活性剤が所与の医学的状態を治療するために好適であり得るかを容易に決定することができる。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、リポソームは、増殖性疾患または障害(例えば、がん)の治療において使用するためのものであり、かつ、治療活性剤は、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる抗増殖剤である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、リポソームは、炎症性疾患または障害(例えば、がん)の治療において使用するためのものであり、かつ、治療活性剤は、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる鎮痛剤および/または抗炎症剤である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、リポソームは、滑膜関節障害(例えば、全身投与および/または関節内投与を介して)、任意選択で炎症性滑膜関節障害の治療において使用するためのものである。本発明の実施形態にしたがって治療可能な滑膜関節障害の例としては、関節炎(例えば、変形性関節症、関節リウマチおよび/または乾癬性関節炎)、滑液包炎、手根管症候群、線維筋炎、痛風、固着関節(例えば、離断性骨軟骨炎および/または滑膜骨軟骨腫症に伴う固着関節)、腱炎、外傷性関節損傷、および手術に伴う関節損傷が挙げられるがこれらに限定されない。
手術に伴う関節損傷は、任意選択で、(例えば、切開により)関節表面に直接的に損傷を与える手術、および/または間接的にのみ関節表面を損傷する手術に伴うものであってもよい。例えば、関節の近くにある組織(例えば、靭帯および/または半月板)を修復するまたはそれ以外に影響する手術は、関節における力学の変化による関節損傷を伴うことがある。
外傷性関節損傷は、任意選択で、外傷により直接的に引き起こされた損傷(例えば、外傷の時点にもたらされる)および/または以前の外傷により引き起こされた損傷(例えば、外傷後のある時点に発症した外傷後損傷)であってもよい。
配合物および投与:
本明細書に記載されるいずれかの実施形態によるリポソームは、それ自体で、または医薬組成物の部分として対象に投与されてもよい。
本明細書において使用される場合、「医薬組成物」は、薬学的に許容される担体および賦形剤などの他の化学成分との1つまたは複数の本明細書に記載される活性成分の調製物を指す。医薬組成物の目的は、対象への活性成分(例えば、本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかによる、リポソームを伴うまたは伴わない、治療活性剤)の投与を促進することである。
本明細書の全体を通じて、「薬学的に許容される担体」という用語は、意図した様式で投与された時に対象に重大な刺激を引き起こさず、かつ組成物中のリポソームの活性および特性(例えば、各々の実施形態のいずれか1つにおいて本明細書に記載される、表面の摩擦係数を低減させる能力)を妨げない、担体または希釈剤を指す。担体の例としては、非限定的に、プロピレングリコール、生理食塩水、エマルション、および水との有機溶媒の混合物の他に、固体状(例えば、粉末状)および気体状の担体である。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、組成物は、例えば、組成物が溶液である場合、薬学的に許容される担体である水性担体を含む。
本明細書において、「賦形剤」という用語は、本発明の活性成分の投与をさらに促進するためまたは貯蔵寿命安定性を増加させるために医薬組成物に加えられる不活性物質を指す。賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖および塩および種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、EDTA、EGTA、ポリ-L-リシン、ポリエチレンイミン、臭化ヘキサジメトリン、ポリエチレングリコールおよび他のポリアニオンまたは単一のアニオンが挙げられるがこれらに限定されない。医薬組成物は、有利には、フォーム、エアロゾルまたはゲルの形態をとることができる。
本明細書に記載される各々の実施形態のいずれかの一部の実施形態では、医薬組成物は、水溶性バイオポリマー、例えばポリペプチドおよび/または多糖をさらに含む。ポリマーはイオン性または非イオン性であってもよい。
本明細書において使用される場合、「水溶性バイオポリマー」という語句は、pH7(25℃)の水性(例えば、水)環境中で少なくとも1グラム/リットルの溶解度を有するバイオポリマーを包含する。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、水溶性ポリマーは、少なくとも2グラム/リットルの溶解度(上記の条件下)を有する。一部の実施形態では、溶解度は少なくとも5グラム/リットルである。一部の実施形態では、溶解度は少なくとも10グラム/リットルである。一部の実施形態では、溶解度は少なくとも20グラム/リットルである。一部の実施形態では、溶解度は少なくとも50グラム/リットルである。一部の実施形態では、溶解度は少なくとも100グラム/リットルである。
好適な非イオン性の水溶性ポリマーの例としては、ポリビニルピロリドン(本明細書において交換可能にポビドンおよび/またはPVPとも称される)およびポリエチレンオキシド(本明細書において交換可能にPEO、PEGおよび/またはポリエチレングリコールとも称される)が挙げられるがこれらに限定されない。
ヒアルロン酸(イオン性多糖)は例示的なバイオポリマーである。
本明細書において例示されるように、水溶性ポリマーは、本明細書に記載される一部の実施形態によるリポソームのin vivoでの保持を増進させることがある。
本発明にしたがって使用するための医薬組成物(例えば、リポソーム溶液)は、薬学的に使用され得る調製物へのリポソーム(および任意選択で本明細書に記載される水溶性ポリマー)の加工を促進する賦形剤および助剤を任意選択で含む、1つまたは複数の薬学的に許容される担体を使用して従来の方法により(例えば、例えば、従来の混合または溶解処理により)配合されてもよい。適切な配合物は、選択された投与経路に依存する。
化合物の配合および投与のための技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.,Easton、PA、最新版(参照することにより本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。
本明細書に記載されるリポソーム(任意選択で本明細書に記載される水溶性ポリマーを有する)は、それ自体で水溶液として配合されてもよい。さらに、溶液は、例えば、配合物の粘性を増加させるために、懸濁液および/またはエマルション(例えば、懸濁液の水相または油中水、水中油もしくは油中油中水エマルション)の形態であってもよい。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含有してもよい。任意選択で、懸濁液はまた、例えば、高度に濃縮された溶液の調製を可能とするために、本明細書に記載されるリポソーム(および/または本明細書に記載される任意選択の水溶性ポリマー)の溶解性を増加させる好適な安定化剤または剤を含有してもよい。
一部の実施形態では、本明細書に記載されるリポソーム(任意選択で本明細書に記載される水溶性ポリマーを有する)は、使用前に好適なビヒクル、例えば無菌性の発熱物質非含有水を用いて構成するための粉末形態であってもよい。
好適な投与経路としては、様々な好適な全身および/または局所投与経路のいずれかが挙げられる。
好適な投与経路は、例えば、吸入、経口、頬側、直腸、経粘膜、局所、経皮、皮内、経鼻、腸および/もしくは非経口経路;筋肉内、皮下および/もしくは髄内注射経路;髄腔内、直接的に心室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、および/もしくは眼内注入経路、血管バルーンを伴うもしくは伴わないカテーテル法;ならびに/または対象の組織領域への直接注射の経路を含み得る。
本明細書に記載されるいずれかの実施形態による非経口投与は、任意選択で全身性(例えば、静脈内)および/または局所的(例えば、関節内)であってもよい。本明細書に記載されるリポソーム(任意選択で本明細書に記載される水溶性ポリマーを有する)は、非経口投与、例えばボーラス注射または連続的な注入による非経口投与のために配合されてもよい。組成物は、懸濁液、溶液(例えば、水溶性形態の活性成分の水溶液)または油性もしくは水性ビヒクル中のエマルションであってもよく、また懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの配合用の剤を含有してもよい。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油、例えばゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル、トリグリセリドまたはリポソームが挙げられる。
注射のために、本明細書に記載されるリポソーム(任意選択で本明細書に記載される水溶性ポリマーを有する)は、水溶液中、好ましくは生理学的に適合性の緩衝液中、例えば、ハンクス溶液、リンガー溶液、ヒスチジン緩衝液、またはプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの有機溶媒を含むもしくは含まない生理食塩緩衝液中に配合されてもよい。
注射用の配合物は、任意選択で防腐剤を加えた、例えば、アンプル中または複数用量容器中の、単位投与量形態で提供されてもよい。
経粘膜投与のために、障壁を透過するために適切な浸透剤が配合物中に使用される。そのような浸透剤は当該技術分野において一般に公知である。
経口投与のために、医薬組成物は、当該技術分野において周知の薬学的に許容される担体と活性成分を合わせることにより容易に配合することができる。そのような担体は、患者による経口摂取のために錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして医薬組成物を配合することを可能とする。経口使用のための薬理学的調製物は、固体賦形剤を使用して、任意選択で、結果として得られた混合物を粉砕し、所望の場合、錠剤または糖衣錠コアを得るために好適な助剤を加えた後に、顆粒の混合物を加工することで調製することができる。好適な賦形剤は、特に、充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールなどの糖;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム;および/または生理学的に許容されるポリマー、例えばポリビニルピロリドン(PVP)である。所望の場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤を加えてもよい。
糖衣錠コアは好適なコーティングと共に提供される。この目的のために、任意選択でアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶剤混合物を含有してもよい濃縮糖溶液が使用され得る。同定のためまたは活性成分用量の異なる組合せを特徴付けるために染料または色素を錠剤または糖衣錠コーティングに加えてもよい。
経口的に使用することができる医薬組成物としては、ゼラチンで作られた押しばめカプセルの他に、ゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤で作られた密閉されたソフトカプセルが挙げられる。押しばめカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および任意選択で安定化剤との混合で活性成分を含有し得る。ソフトカプセル中で、活性成分は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解または懸濁されていてもよい。加えて、安定化剤を加えることができる。
頬側投与のために、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはロゼンジ剤の形態をとることができる。
吸入経路を介する投与のために、本発明にしたがって使用するための活性成分は、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタンなどのフルオロクロロハイドロカーボン;二酸化炭素;またはブタン、プロパン、イソブタン、もしくはこれらの混合物などの揮発性炭化水素の使用と共に加圧パックまたはネブライザーからエアロゾル/スプレーの形態で送達することができる。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、定量を送達するためのバルブを提供することにより決定されてもよい。ディスペンサーにおいて使用するために、活性成分およびラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤の粉末混合物を含有する例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジが配合されてもよい。
医薬組成物はまた、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用して、坐剤または停留浣腸などの直腸用組成物に配合されてもよい。
意図する目的を達成するために効果的な量、例えば、治療されている対象において障害の症状を予防し、軽減しまたは改善するために効果的な量でリポソームが含有される組成物が配合されてもよい。
投与量は、用いられる投薬形態、利用される投与経路、および投与の部位(例えば、リポソームと接触させる領域の体積および/または表面)に応じて異なり得る。
治療有効量の決定は、特に、本明細書で提供される詳細な開示に照らして、(例えば、任意の所与の治療活性剤について当該技術分野において公知の事項に基づいて)充分に当業者の能力の範囲内である。
本発明の方法において使用される任意の調製物のために、治療有効量または用量は最初に、in vitroおよび細胞培養およびin vivoアッセイから推定することができる。例えば、所望の濃度または力価を達成するための用量が動物モデルにおいて定式化され得る。そのような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより的確に決定するために使用することができる。
本明細書に記載される活性成分の毒性および/または治療効果は、in vitro、細胞培養物または実験動物において、標準的な薬学的手順により決定することができる。これらのin vitroおよび細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトにおいて使用するための投与量の範囲の定式化において使用することができる。投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に応じて異なり得る。正確な配合物、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選択され得る。(例えば、Finglら、1975年、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第1章第1頁を参照)。
投与の量および間隔は、所望の治療効果を達成するために充分な活性成分の血漿または脳レベル(最小有効濃度、MEC)を提供するために個々に調整されてもよい。MECは各調製物について異なるが、in vitroのデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投与量は、個体の特徴および投与経路に依存する。血漿濃度を決定するために検出アッセイを使用することができる。
投与される組成物の量は、当然、治療されている対象、病気の重篤度、投与の様式、処方医師の判断などに依存する。
治療すべき状態の重篤度および奏功に応じて、投薬は単回または複数回の投与であってもよく、治療の過程は、数日から数週間または治癒の効果がもたらされるまでもしくは病態の減少が達成されるまで続けられてもよい。
本発明の実施形態による組成物(例えば、リポソーム溶液)は、所望の場合、活性成分(例えば、本明細書に記載されるリポソーム)を含有する1つまたは複数の単位投与量形態を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス、例えばFDA(米国食品医薬品局)承認のキットであってもよい。パックは、例えば、金属またはプラスチック箔、例えば、以下に限定されないがブリスターパックを含んでもよい。パックまたはディスペンサーデバイスは、投与のための使用説明書を伴ってもよい。パックまたはディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用または販売を統制する政府機関により規定された形態の容器に付随した注意書きを伴ってもよく、該注意書きは、ヒトまたは動物への投与用組成物の形態の機関による承認を反映したものである。そのような注意書きは、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局により承認されたラベルまたは承認された製品挿入物の注意書きであってもよい。薬学的に許容される担体中に配合された、各々の実施形態のいずれか1つにおいて本明細書に記載される、リポソーム(任意選択で本明細書に記載される水溶性ポリマーを有する)を含む組成物はまた、調製され、適切な容器中に入れられ、本明細書に詳述される通り、指し示される状態または診断の治療のためにラベルされてもよい。
追加の定義:
本明細書において、「炭化水素」という用語は、その基本骨格として、主に水素原子により置換された、炭素原子の鎖を含む有機部分を表す。炭化水素は、飽和または不飽和であってもよく、脂肪族、脂環式または芳香族部分を含んでもよく、かつ任意選択で、1つまたは複数の置換基(水素以外)により置換されていてもよい。置換された炭化水素は1つまたは複数の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、オキソ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボキシ、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、カルバメート、アミド、およびヒドラジンであり得る。炭化水素は末端基または連結基であってもよく、これらの用語は本明細書において定義されている。炭化水素部分は、任意選択で、1つまたは複数の酸素、窒素および/または硫黄原子が挙げられるがこれらに限定されない1つまたは複数のヘテロ原子により割り込まれている。炭化水素に関する本明細書に記載されるいずれかの実施形態の一部の実施形態では、炭化水素はいかなるヘテロ原子によっても割り込まれていない。
好ましくは、炭化水素部分は1~20個の炭素原子を有する。例えば「1~20」といった数値範囲が本明細書において記載される場合は常に、その基、この場合アルキル基は、1つの炭素原子、2つの炭素原子、3つの炭素原子など、20個を含めて最大20個の炭素原子を含有することができる。
本明細書において、「アルキル」という用語は、直鎖および分岐鎖の基などの、本明細書において定義される飽和脂肪族炭化水素末端基を表す。好ましくは、アルキル基は1~20個の炭素原子を有する。より好ましくは、アルキルは、1~10個の炭素原子を有する中型サイズのアルキルである。最も好ましくは、別に指し示さない限り、アルキルは、1~4個の炭素原子を有する低級アルキルである。アルキル基は置換されていてもよく、または非置換であってもよい。置換アルキルは1つまたは複数の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボキシ、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、カルバメート、アミド、およびヒドラジンであり得る。
「アルキレン」という用語は、アルキレンは末端基ではなく連結基であるという点でのみ本明細書において定義されるアルキル基とは異なる、飽和脂肪族炭化水素連結基を表し、該用語は本明細書において定義されている。
本明細書において、「アルケニル」という用語は、直鎖および分岐鎖の基などの、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素末端基を表す。好ましくは、アルケニル基は2~20個の炭素原子を有する。より好ましくは、アルケニルは、2~10個の炭素原子を有する中型サイズのアルケニルである。最も好ましくは、別に指し示さない限り、アルケニルは、2~4個の炭素原子を有する低級アルケニルである。アルケニル基は置換されていてもよく、または非置換であってもよい。置換アルケニルは1つまたは複数の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、シクロアルキル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボキシ、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、カルバメート、アミド、およびヒドラジンであり得る。
本明細書において、「アルキニル」という用語は、直鎖および分岐鎖の基などの、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素末端基を表す。好ましくは、アルキニル基は2~20個の炭素原子を有する。より好ましくは、アルキニルは、2~10個の炭素原子を有する中型サイズのアルキニルである。最も好ましくは、別に指し示さない限り、アルキニルは、2~4個の炭素原子を有する低級アルキニルである。アルキニル基は置換されていてもよく、または非置換であってもよい。置換アルキニルは1つまたは複数の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボキシ、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、カルバメート、アミド、およびヒドラジンであり得る。
「シクロアルキル」という用語は、環の1つまたは複数が完全に共役したパイ電子系を有しない、全て炭素の単環式または縮合環式(すなわち、炭素原子の隣接するペアを共有する環)の基を表す。シクロアルキル基は置換されていてもよく、または非置換であってもよい。置換シクロアルキルは1つまたは複数の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボキシ、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、カルバメート、アミド、およびヒドラジンであり得る。シクロアルキル基は末端基であってよく(この語句は本明細書において定義されている)、単一の隣接する原子、または2つもしくはそれより多くの部分を接続する連結基(この語句は本明細書において定義されている)に結合している。
「アリール」という用語は、完全に共役したパイ電子系を有する、全て炭素の単環式または縮合環多環式(すなわち、炭素原子の隣接するペアを共有する環)の末端基(この用語は本明細書において定義されている)を表す。アリール基は置換されていてもよく、または非置換であってもよい。置換アリールは1つまたは複数の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボキシ、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、カルバメート、アミド、およびヒドラジンであり得る。フェニルおよびナフチルは代表的なアリール末端基である。
「ヘテロアリール」という用語は、環中に例えば、窒素、酸素および硫黄などの1つまたは複数の原子を有し、これに加えて、完全に共役したパイ電子系を有する、単環式または縮合環式(すなわち、原子の隣接するペアを共有する環)の基を表す。ヘテロアリール基の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが挙げられるがこれらに限定されない。ヘテロアリール基は置換されていてもよく、または非置換であってもよい。置換ヘテロアリールは1つまたは複数の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボキシ、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、カルバメート、アミド、およびヒドラジンであり得る。ヘテロアリール基は末端基であってよく(この語句は本明細書において定義されている)、単一の隣接する原子、または2つもしくはそれより多くの部分を接続する連結基(この語句は本明細書において定義されている)に結合している。代表的な例は、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンなどである。
「アリーレン」という用語は、単環式または縮合環多環式の連結基(この用語は本明細書において定義されている)を表し、アリーレンは末端基ではなく連結基であるという点においてのみアリールまたはヘテロアリール基(これらの基は本明細書において定義されている)とは異なる連結基を包含する。
「ヘテロ脂環式基」という用語は、環中に窒素、酸素および硫黄などの1つまたは複数の原子を有する、単環式または縮合環式の基を表す。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有してもよい。しかしながら、環は、完全に共役したパイ電子系を有しない。ヘテロ脂環式基は置換されていてもよく、または非置換であってもよい。置換ヘテロ脂環式基は1つまたは複数の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、アジド、スルホンアミド、カルボキシ、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、カルバメート、アミド、およびヒドラジンであり得る。ヘテロ脂環式基は末端基であってよく(この語句は本明細書において定義されている)、単一の隣接する原子、または2つもしくはそれより多くの部分を接続する連結基(この語句は本明細書において定義されている)に結合している。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリンなどである。
本明細書において使用される場合、「アミン」および「アミノ」という用語は、-NRxRy末端基および-NRx-連結基の両方を表し、RxおよびRyは、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロ脂環式基(これらの用語は本明細書において定義されている)である。RxまたはRyがヘテロアリールまたはヘテロ脂環式基である場合、アミンの窒素原子は、ヘテロアリールまたはヘテロ脂環式基の環の炭素原子に結合している。アミンの窒素原子に結合している炭素原子は、=Oおよび=Sのいずれによっても置換されておらず、一部の実施形態では、いかなるヘテロ原子によっても置換されていない。
したがって、アミン基は、RxおよびRyの両方が水素である第一級アミン、Rxが水素であり、かつ、Ryが、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはヘテロ脂環式基である第二級アミン、または、RxおよびRyのそれぞれが、独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはヘテロ脂環式基である第三級アミンであり得る。
「ヒドロキシ」および「ヒドロキシル」という用語は-OH基を表す。
「アルコキシ」という用語は、本明細書において定義される通り、-O-アルキルおよび-O-シクロアルキル末端基、または-O-アルキレンまたは-O-シクロアルキル連結基の両方を表す。
「アリールオキシ」という用語は、本明細書において定義される通り、-O-アリールおよび-O-ヘテロアリール末端基、または-O-アリーレン-連結基の両方を表す。
「チオヒドロキシ」という用語は-SH基を表す。
「チオアルコキシ」という用語は、本明細書において定義される通り、-S-アルキルおよび-S-シクロアルキル末端基、または-S-アルキレンもしくは-S-シクロアルキル連結基の両方を表す。
「チオアリールオキシ」という用語は、本明細書において定義される通り、-S-アリールおよび-S-ヘテロアリール末端基、または-S-アリーレン-連結基の両方を表す。
「シアノ」および「ニトリル」という用語は-C≡N基を表す。
「ニトロ」という用語は-NO2基を表す。
「オキソ」という用語は=O基を表す。
「アジド」という用語は-N=N+=N-基を表す。
「アゾ」という用語は、-N=N-Rx末端基または-N=N=連結基を表し、Rxは本明細書において定義される通りである。
「ハロゲン化物」および「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
「ホスフェート」という用語は、-O-P(=O)(ORx)-ORY末端基、または-O-P(=O)(ORx)-O-連結基を指し、RxおよびRYは本明細書において定義される通りである。
「ホスホニル」および「ホスホネート」という用語は、-P(=O)(ORx)-ORY末端基、または-P(=O)(ORx)-O-連結基を指し、RxおよびRYは本明細書において定義される通りである。「ホスフィニル」という用語は-PRxRY基を指し、RxおよびRYは本明細書において上記に定義される通りである。
「スルホキシド」または「スルフィニル」という用語は、-S(=O)-Rx末端基または-S(=O)-連結基を表し、Rxは本明細書において定義される通りである。
「スルホネート」および「スルホニル」という用語は、-S(=O)2-Rx末端基または-S(=O)2-連結基を表し、Rxは本明細書において定義される通りである。
「スルホンアミド」(sulfonamide)および「スルホンアミド」(sulfonamido)という用語は、本明細書において使用される場合、S-スルホンアミドおよびN-スルホンアミド末端基、ならびに-S(=O)2-NRx-連結基の両方を包含する。
「S-スルホンアミド」という用語は-S(=O)2-NRxRY末端基を表し、RxおよびRYは本明細書において定義される通りである。
「N-スルホンアミド」という用語はRxS(=O)2-NRY-末端基を表し、RxおよびRYは本明細書において定義される通りである。
「カルボニル」という用語は、本明細書において使用される場合、-C(=O)-Rx末端基または-C(=O)-連結基を表し、Rxは本明細書において定義される通りである。
「アシル」という用語は、本明細書において使用される場合、-C(=O)-Rx末端基を表し、Rxは本明細書において定義される通りである。
「チオカルボニル」という用語は、本明細書において使用される場合、-C(=S)-Rx末端基または-C(=S)-連結基を表し、Rxは本明細書において定義される通りである。
「カルボキシ」および「カルボキシル」という用語は、本明細書において使用される場合、C-カルボキシおよびO-カルボキシ末端基、ならびに-C(=O)-O-連結基の両方を包含する。
「C-カルボキシ」という用語は-C(=O)-ORx末端基を表し、Rxは本明細書において定義される通りである。
「O-カルボキシ」という用語は-OC(=O)-Rx末端基を表し、Rxは本明細書において定義される通りである。
「尿素」という用語は-NRxC(=O)-NRyRw末端基または-NRxC(=O)-NRy-連結基を表し、RxおよびRyは本明細書において定義される通りであり、かつ、RwはRxおよびRyについて本明細書において定義される通りである。
「チオ尿素」という用語は-NRx-C(=S)-NRyRw末端基または-NRx-C(=S)-NRy-連結基を表し、Rx、RyおよびRyは本明細書において定義される通りである。
「アミド」(amide)および「アミド」(amido)という用語は、本明細書において使用される場合、C-アミドおよびN-アミド末端基、ならびに-C(=O)-NRx-連結基の両方を包含する。
「C-アミド」という用語は-C(=O)-NRxRy末端基を表し、RxおよびRyは本明細書において定義される通りである。
「N-アミド」という用語はRxC(=O)-NRy-末端基を表し、RxおよびRyは本明細書において定義される通りである。
「カルバミル」または「カルバメート」という用語は、本明細書において使用される場合、N-カルバメートおよびO-カルバメート末端基、ならびに-OC(=O)-NRx-連結基を包含する。
「N-カルバメート」という用語はRyOC(=O)-NRx-末端基を表し、RxおよびRyは本明細書において定義される通りである。
「O-カルバメート」という用語は-OC(=O)-NRxRy末端基を表し、RxおよびRyは本明細書において定義される通りである。
「チオカルバミル」または「チオカルバメート」という用語は、本明細書において使用される場合、O-チオカルバメート、S-チオカルバメートおよびN-チオカルバメート末端基、ならびに-OC(=S)-NRx-または-SC(=O)-NRx-連結基を包含する。
「O-チオカルバメート」および「O-チオカルバミル」という用語は-OC(=S)-NRxRy末端基を表し、RxおよびRyは本明細書において定義される通りである。
「S-チオカルバメート」および「S-チオカルバミル」という用語は-SC(=O)-NRxRy末端基を表し、RxおよびRyは本明細書において定義される通りである。
「N-チオカルバメート」および「N-チオカルバミル」という用語はRyOC(=S)NRx-またはRySC(=O)NRx-末端基を表し、RxおよびRyは本明細書において定義される通りである。
「グアニジン」という用語は-RxNC(=N)-NRyRw末端基または-RxNC(=N)-NRy-連結基を表し、Rx、RyおよびRwは本明細書において定義される通りである。
「ヒドラジン」という用語は、本明細書において使用される場合、-NRx-NRyRw末端基または-NRx-NRy-連結基を表し、Rx、Ry、およびRwは本明細書において定義される通りである。
本明細書において使用される場合、「約」という用語は±10%、および任意選択で±5%を指す。
「含む」(comprises)、「含む」(comprising)、「含む」(includes)、「含む」(including)、「有する」(having)という用語およびこれらの同根語は、「含むがそれに限定されない」を意味する。
「からなる」という用語は「含みかつそれに限定される」を意味する。
「から本質的になる」という用語は、組成物、方法または構造が追加の成分、ステップおよび/または部分を含んでもよいが、但し、追加の成分、ステップおよび/または部分は請求項の組成物、方法または構造の基本的かつ新規の特徴を実質的に変化させないことを意味する。
本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを規定しない限り、複数への言及を含む。例えば、「化合物」(a compound)または「少なくとも1つの化合物」という用語は、これらの混合物などの、複数の化合物を含んでもよい。
本出願の全体を通じて、本発明の様々な実施形態が範囲の形式で提示され得る。範囲の形式での記載は単に簡便性および簡潔性のためであり、発明の範囲に対する確固とした限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、全ての可能な部分的範囲の他に、その範囲内の個々の数値を具体的に開示したものと考えられるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分的範囲の他に、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を具体的に開示したものと考えられるべきである。これは範囲の広さにかかわらず適用される。
数値範囲が本明細書において指し示される場合は常に、それは指し示した範囲内のあらゆる参照された数値(分数または整数)を含むことを意図する。第1の指し示す数と第2の指し示す数との間(between)に「及ぶ」(ranging/ranges)という語句および第1の指し示す数から(from)第2の指し示す数に(to)「及ぶ」という語句は本明細書において交換可能に使用され、第1および第2の指し示した数ならびにこれらの間の全ての分数および整数を含むことを意図する。
本明細書において使用される場合、「方法」という用語は、所与のタスクを達成するための様式、手段、技術および手順を指し、化学、薬理学、生物学、生化学および医学分野の当業者に公知の、または該当業者により公知の様式、手段、技術および手順から容易に開発される様式、手段、技術および手順が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において使用される場合、「治療する」という用語は、状態を妨げ、実質的に阻害し、その進行を緩慢化もしくは後退させ、状態の臨床的もしくは美的症状を実質的に改善し、または状態の臨床的もしくは美的症状の出現を実質的に予防することを含む。
明瞭性のために別々の実施形態の文脈において記載される本発明のある特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。反対に、簡潔性のために単一の実施形態の文脈において記載される本発明の様々な特徴は、別々にまたは任意の好適な部分的組合せにおいてまたは本発明の任意の他の記載された実施形態において好適なように提供されてもよい。様々な実施形態の文脈において記載されるある特定の特徴は、該実施形態がそれらの構成要素なしでは機能しないものではない限り、それらの実施形態の必須の特徴と考えられるべきではない。
本明細書において上記で描写されたおよび以下の特許請求の範囲のセクションにおいて請求項に記載された本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的サポートを有する。
上記の記載と共に非限定的な様式で本発明の一部の実施形態を説明する以下の実施例をこれより参照する。
材料および方法
材料:
2-ブロモイソブチリルブロミドはSigma-Aldrichから入手した。
クロロホルムはSigma-Aldrichから入手した。
CuBrはSigma-Aldrichから入手した。
DiR(1,1’-ジオクタデシル-3,3,3’,3’-テトラメチルインドトリカルボシアニンヨージド)はMolecular Probesから入手した。
ジアステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)はAvanti Polar Lipidsから入手した。
ジアステアロイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DSPE-PEG、PEGのMwは2000Da(DSPE-PEG 2000)または550Da(DSPE-PEG 550))はAvantiから入手した。
ヒアルロン酸(2500had)はCreative PEGWorksから入手した。
水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)はLipoid GmbHから入手した。
メタノールはBio-Labから入手した。
N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)はSigma-Aldrichから入手した。
O-(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスホリルコリン(MPC)はBiocompatible Corporation(UK)から入手した。
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)はSigma-Aldrichから入手した。
水はBarnstead NanoPureシステムを使用して精製し、18.2MΩcmの抵抗、約1ppb未満の総有機含有量レベルとした。
DSPE-PMPCの合成:
重合したホスホコリン誘導体を有するリン脂質は、国際特許出願第IL2016/051372号に記載されている手順を使用して、スキーム1に図式的に描写する通り、リン脂質DSPE(ジアステアロイルホスファチジルエタノールアミン)およびホスホコリン誘導体MPC(O-(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスホリルコリン)から調製した。簡潔に述べれば、DSPEを2-ブロモイソブチリルブロミドと反応させてフリーラジカル開始剤(DSPE-Br)を得、次いでそれをCuBrおよびPMDETA(N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン)の存在下、60℃でのMPC(O-(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスホリルコリン)との原子移動ラジカル重合において使用した。得られたDSPE-PMPCを透析により精製したところ、
1H-NMR分光法による決定で約2kDaのMwを有するpMPC部分を有していた。
スキーム1
リポソームの調製:
リポソームを調製するために、DSPE-PMPC(本明細書において上記した通りに調製した)およびHSPCを2:98(DSPE-PMPC:HSPC)のモル比でメタノールおよびクロロホルム(2ml、1:1のv/v)中に溶解させた。次に、有機溶媒を窒素により終夜乾燥させてドライフィルムを形成させた。次に、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)中で脂質の融点より少なくとも5℃高い温度で脂質を水和させた後に超音波処理を行うことによりマルチラメラ小胞(MLV)を調製した。PEG化リポソームを調製するために、上述の手順を以下の混合物:DSPE-PEG 2000およびHSPCならびにDSPE-PEG 550およびHSPCに共に2:98のモル比で適用してMLVを形成させた。使用した有機溶媒はHSPCについてクロロホルム、DSPE-PMPCおよびDSPE-PEGについてメタノールであった。
Lipex 10ml押出しシステム(Northern Lipids、Canada)を使用してポリカーボネート膜を通した段階的な押出しにより、MLVを小型化して大ユニラメラ小胞(LUV)を形成させた。一部の場合には、Lipex 10ml押出しシステム(Northern Lipids、Canada)を使用して、最初に400nm、最後に50nmの孔サイズの膜を用いるポリカーボネート膜を通した段階的な押出しにより、MLVを小型化して小ユニラメラ小胞(SUV)を形成させた。
動的光散乱測定(DLS)によりLUVについて約170nm、SUVについて約80nmの平均直径が明らかとなった。
動物実験:
全ての動物実験は、イスラエルのWeizmann Institute of Scienceにおける動物実験委員会(IACUC)により承認されたプロトコールの下で動物研究用の国立衛生研究所(NIH)のガイドラインにしたがって行った。
pMPC含有リポソームの関節内注射の安全性
pMPC含有リポソームの安全性を評価するために、以下の研究において使用する濃度より3倍高い投与量(30mM対11mM)でpMPC含有リポソーム(上述の材料および方法セクションに記載される通りに調製した)の関節内(IA)注射をマウスに与えた。生理食塩水のIA注射を与えたマウスの群を陰性対照とし、ヒアルロン酸(HA)のIA注射を与えたマウスの群を陽性対照とした。各群は、右膝の関節腔に注射を与えた6匹のマウスを含有した。注射の14日後および28日後に、3匹のマウスを各時点において屠殺し、組織の全体的な病理学的評価およびH&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)組織構造の検査の両方によって専門の組織病理医(Weizmann Institute Veterinary Services Dept.)により調べた。注射された各膝を陰性対照および陽性対照の両方ならびに左膝(注射されなかった)と比較した。
全ての結果は正常範囲内(WNL)であり、pMPC含有リポソームは注射された時に安全であることを指し示した。
関節内注射後のpMPC含有リポソームの保持
実施例1に記載の手順を使用してpMPC含有リポソーム(上述の材料および方法セクションに記載される通りに調製した)の関節内(IA)注射を与えたマウスを近赤外線カメラを使用してモニターした。生体組織中の注射された物質を検出するために、全ての注射した物質を親油性蛍光色素DiR(1,1’-ジオクタデシル-3,3,3’,3’-テトラメチルインドトリカルボシアニンヨージド)を用いて機能化して、約755nmの波長の蛍光を発するようにした。生体組織中の注射された物質の検出の代表的な例を図1に示す。
図2A~2Cに示すように、例示的なpMPC安定化リポソーム(直径170nm)は約95時間の半減期を呈し(図2Aおよび図2B)、これはヒアルロン酸の半減期(1時間未満;図2A)または同じサイズのPEG化リポソーム(2000DaのPEGを有する)の半減期(プロットされたデータの視覚的観察による決定で約12時間(図2A)、指数関数フィットによる決定で約22時間(図2C))よりかなり長かった。
約140~150nmから約170nmまでの範囲内の平均直径を有する例示的なpMPC安定化またはPEG化HSPCリポソームの保持半減期を決定することによりリポソームサイズの効果をさらに評価した。150nmより大きい平均直径を有するpMPC安定化リポソームは70~95時間の半減期を呈し、これは約140~150nmの平均直径を有するpMPC安定化リポソームの半減期の約2倍であったが、PEG化リポソームの半減期はそのようなサイズ依存性を呈さず、上記のサイズ範囲の全体にわたってpMPC安定化リポソームの半減期より短かった(データ示さず)。
図3に示すように、PEG化リポソーム(2000DaのPEGを有する)の半減期は、プロットしたデータの視覚的観察による決定で約20時間、指数関数フィットによる決定で約26時間であり、図2Aおよび図2Cに示した結果に類似した。
リポソームのpMPC安定化は、リポソーム保持を増進させるための最も効果的な技術であると当該技術分野においてこれまで考えられていたリポソームのPEG化よりもかなり大きい程度(例えば、約4倍~8倍;増進は少なくとも150nmの平均直径を有するリポソームについて最も強い)までin vivoで保持を増進させることをこれらの結果は指し示す。
図4に示すように、80nm(小ユニラメラ小胞)へのリポソーム直径の減少は、全てのリポソームタイプについて約20時間のかなり短い半減時間値を結果としてもたらす。しかしながら、本明細書においてさらに示す通り、80nmのpMPC安定化リポソームへの1mg/mlのHAの追加は保持時間の50%の増加を結果としてもたらした。
上記の結果は、2000Daの分子量を有するポリマー(pMPCまたはPEG)により安定化されたリポソームに関する。MPCモノマー単位はエチレングリコールより大きい分子量を有するので、pMPC鎖の全体の長さは同じ分子量のPEG鎖よりはるかに短い。pMPCに伴う増進された保持時間がそのより短い長さによるのかどうかを評価するために、わずか550Daの分子量(2000DaのpMPCの重合度に概ね等しい重合度を有する)を用いてPEG化リポソームを調製した。
図5に示すように、550DaのPEGを用いてPEG化したリポソームの半減期は約10時間であり、2000DaのPEGを用いてPEG化したリポソームで得られた半減期と類似した(図2を参照)。
これらの結果は、本明細書において観察されたpMPCによる170nmのリポソームのin vivo保持のかなりの増進(PEGと比較して)はPEGに対するpMPCの重合度と関連付けられるものではないことを指し示す。
図2A~2Dおよび図5に示す結果を下記の表1に要約する。
表1:マウス膝関節への関節内注射による関節内注射後のHSPC(水素添加大豆ホスファチジルコリン)リポソームシステムおよびヒアルロン酸(HA)の半減期(T
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加えて、リポソームに正電荷を付与するトリメチルアンモニウム-プロパン(TAP)基を含む1,2-ステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(塩化物塩)を組み込むことによりリポソームを修飾した。96:2:2のHSPC:pMPC:TAPのモル比を使用して162nmの直径を有するリポソームを調製し、IA注射時のそれらの保持を本明細書において上記した通りに評価した。
図2Aおよび図2Dに示すように、pMPCおよびTAPを含むリポソームは、TAPなしのpMPCを含む同様のサイズのリポソームと類似のin vivo保持特性を呈した。なお、pMPCを有しないHSPCおよびTAPを含むリポソームは数日後に凝集した。
以上を合わせると、上記の結果は、pMPC含有リポソームを使用してリポソームベースの薬物送達ビヒクルの保持を増進させ、それにより、PEG化リポソームを使用する最先端の薬物送達と比較して薬物の持続放出を向上させることができることを指し示す。
関節内注射後のさらなる修飾リポソームの保持
標的化部分(任意選択でペプチド)がpMPC部分に結合している(任意選択で本明細書において上記したDSPE-PMPC分子の末端に組み込まれている)以外は本明細書において上記した修飾リポソームの関節内(IA)注射をマウスに与える。リポソームを特定の種類の組織に方向付けるように標的化部分を選択する。一部の実験では、コラーゲンに富んだ組織(例えば、軟骨)へのリポソームの方向付けを促進するペプチド配列WYRGRL(配列番号2)(コラーゲン結合ペプチド)をpMPC部分に結合させる。
実施例2に記載されるように、近赤外線カメラおよびDiR蛍光標識を使用してリポソームの保持(および任意選択で位置)をモニターする。
加えて、様々な時点(例えば、注射の1、3、7および14日後)においてマウスを屠殺し、マウスの膝関節から組織断片試料を調製する。組織中の注射されたリポソームの精密な位置を蛍光顕微鏡を使用して調べる。
静脈内投与後の修飾リポソームの保持
(DiRの代わりに)ローダミン-ホスファチジルエタノールアミン(Avanti Polar Lipids)をリポソームに組み込んだ以外は本明細書において上記した通りに調製された修飾リポソームの静脈注射を対象(任意選択でマウス)に与える。注射後の時間の関数として血液中のリポソームの存在を評価するために、対象の血液中のローダミン蛍光を測定する。
結果は、静脈内に投与されたリポソームのかなりの保持を示し、関節内注射以外の投与経路を介した持続性薬物送達のためにリポソームが好適であることを指し示す。
本発明をその特定の実施形態との関連で記載したが、多くの代替、改変およびバリエーションが当業者に明らかとなることは自明である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広範な範囲内に入る全てのそのような代替、改変およびバリエーションを包含することが意図される。
本明細書において言及した全ての刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物、特許および特許出願が参照することにより本明細書に組み込まれることを具体的かつ個々的に指し示されたのと同じ程度まで、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。加えて、本出願における任意の参考文献の参照または同定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈してはならない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。