JP7099388B2 - 制御装置、材料試験機、制御装置の制御方法、及び制御プログラム - Google Patents
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Description
特許文献1は、クロスヘッドを移動させて試験対象に負荷を付与する負荷機構を、負荷を制御対象の測定値としてフィードバック制御する引張試験機を開示している。
例えば、引張試験機では、各種クリアランスが存在するため、引張試験の開始時において、制御対象の測定値が変化しない領域があった。
例えば、不感帯において目標値と制御対象の測定値との差が過大にならないように目標値を規制する。よって、材料試験機の不感帯においても、適正な制御を実行できる。したがって、材料試験機の制御精度を向上できる。
よって、材料試験機の不感帯においても、適正な制御を実行できる。したがって、材料試験機の制御精度を向上できる。
例えば、不感帯において目標値と制御対象の測定値との差が過大にならないように目標値を規制する。よって、材料試験機の不感帯においても、適正な制御を実行できる。したがって、材料試験機の制御精度を向上できる。
例えば、不感帯において目標値と制御対象の測定値との差が過大にならないように目標値を規制する。よって、材料試験機の不感帯においても、適正な制御を実行できる。したがって、材料試験機の制御精度を向上できる。
図1は、本実施形態に係る引張試験機1の構成の一例を示す図である。
本実施形態の引張試験機1は、試験対象TPに試験力Fを与えて、試料の引張強度、降伏点、伸び、絞りなどの機械的性質を測定する材料試験を行う。試験力Fは、引張力である。試験力Fは、「負荷」の一例に対応する。
引張試験機1は、試験対象の材料である試験対象TPに試験力Fを与えて引張試験を行う引張試験機本体2と、当該引張試験機本体2による引張試験動作を制御する制御ユニット4と、を備える。
なお、引張試験機1は、「材料試験機」の一例に対応する。
負荷機構12は、各ねじ棹8、9の下端部に連結されるウォーム減速機16、17と、各ウォーム減速機16、17に連結されるサーボモータ18と、ロータリエンコーダ20と、を備える。ロータリエンコーダ20は、サーボモータ18の回転量を測定し、回転量に応じたパルス数の回転測定信号SG2を制御ユニット4に出力するセンサである。
そして負荷機構12は、ウォーム減速機16、17を介して、一対のねじ棹8、9にサーボモータ18の回転を伝達し、各ねじ棹8、9が同期して回転することにより、クロスヘッド10がねじ棹8、9に沿って昇降する。
統括制御装置30は、当該試験機本体2を中枢的に制御する装置であり、試験機本体2との間で信号を送受信可能に接続される。試験機本体2から受信する信号は、ロードセル14が出力する試験力測定信号SG1、ロータリエンコーダ20が出力する回転測定信号SG2、変位センサ15が出力する伸び測定信号SG3、及び制御や試験に要する適宜の信号などである。
表示装置32は、統括制御装置30から入力される信号に基づいて各種情報を表示する装置であり、例えば、統括制御装置30は、引張試験の間、伸び測定信号SG3に基づいて試験対象TPの伸びの測定値である伸び計測値EDを表示装置32に表示する。また、例えば、統括制御装置30は、引張試験の間、回転測定信号SG2に基づくクロスヘッド10の変位を示す変位計測値XDを表示装置32に表示する。
本実施形態の引張試験プログラム実行装置34はコンピュータを備え、このコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリデバイスと、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ装置と、統括制御装置30や各種の周辺機器などを接続するためのインターフェース回路と、を備える。そして、プロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶されたコンピュータプログラムである引張試験プログラムを実行することで、上述の各種の機能を実現する。
統括制御装置30は、図1に示すように、信号入出力ユニット40と、制御回路ユニット50と、を備える。
信号入出力ユニット40は、試験機本体2との間で信号を送受する入出力インターフェース回路を構成するものであり、本実施形態では、第1センサアンプ42と、第2センサアンプ45と、カウンタ回路43と、サーボアンプ44とを有する。
第1センサアンプ42は、ロードセル14が出力する試験力測定信号SG1を増幅して制御回路ユニット50に出力する増幅器である。
第2センサアンプ45は、変位センサ15が出力する伸び測定信号SG3を増幅して制御回路ユニット50に出力する増幅器である。
カウンタ回路43は、ロータリエンコーダ20が出力する回転測定信号SG2のパルス数を計数し、サーボモータ18の回転量、すなわちサーボモータ18の回転によって昇降するクロスヘッド10の変位計測値XDを示す変位測定信号A3を制御回路ユニット50にデジタル信号で出力する。
サーボアンプ44は、制御回路ユニット50の制御に従って、サーボモータ18を制御する装置である。
図2は、制御回路ユニット50の機能的構成を示すブロック図である。
制御回路ユニット50は、通信部51と、フィードバック制御部52と、フィルタ処理部53と、第1決定部54と、第2決定部55と、第3決定部56とを備える。制御回路ユニット50は、「制御装置」の一例に対応する。
制御回路ユニット50は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスと、HDDやSSDなどのストレージ装置と、信号入出力ユニット40とのインターフェース回路と、引張試験プログラム実行装置34と通信する通信装置と、表示装置32を制御する表示制御回路と、各種の電子回路と、を備えたコンピュータを備える。また、制御回路ユニット50のプロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶された制御プログラムを実行することで、図2に示す各機能部を実現する。
制御回路ユニット50のプロセッサは、「コンピュータ」の一例に対応する。
また、信号入出力ユニット40のインターフェース回路にはA/D変換器が設けられており、アナログ信号の試験力測定信号SG1及び伸び測定信号SG3がA/D変換器によってデジタル信号に変換される。
なお、制御回路ユニット50は、コンピュータに限らず、ICチップやLSIなどの集積回路といった1又は複数の適宜の回路によって構成されてもよい。
フィードバック制御部52は、試験機本体2のサーボモータ18をフィードバック制御して引張試験を実行する。フィードバック制御部52は、サーボモータ18のフィードバック制御を実行する回路である。
フィードバック制御部52が位置制御を実行する場合には、フィードバック制御部52は、例えば、ロードセル14が出力する試験力計測値FDについて位置制御を実行する。この場合には、フィードバック制御部52は、試験力計測値FDを試験力目標値FTに一致させるように変位計測値XDの指令値dXを演算し、当該指令値dXを示す指令信号A4(図1)をサーボアンプ44に出力する。なお、試験力目標値FTは、試験力計測値FDの目標値を示す。指令値dXは、「指示信号」の一例に対応する。
なお、本実施形態において、「位置制御」とは、センサ等によって測定された検出値を、その目標値に一致させるように制御することを示す。
また、変位センサ15によって測定された伸び計測値EDについて位置制御を実行してもよい。この場合には、フィードバック制御部52は、変位センサ15によって測定された伸び計測値EDを伸び目標値ETに一致させるように変位計測値XDの指令値dXを演算し、当該指令値dXを示す指令信号A4(図1)をサーボアンプ44に出力する。なお、伸び目標値ETは、伸び計測値EDの目標値を示す。
なお、本実施形態において、「速度制御」とは、センサ等によって測定された検出値の単位時間当たりの変化量を、その目標値に一致させるように制御することを示す。
また、変位センサ15によって測定された伸び計測値EDについて速度制御を実行してもよい。この場合には、フィードバック制御部52は、伸び計測値速度VEを伸び速度目標値VETに一致させるように変位計測値XDの指令値dXを演算し、当該指令値dXを示す指令信号A4(図1)をサーボアンプ44に出力する。伸び計測値速度VEは、変位センサ15によって測定された伸び計測値EDの単位時間当たりの変化量を示し、伸び速度目標値VETは、伸び計測値速度VEの目標値を示す。
本実施形態では、フィードバック制御にはPID(Proportional-Integral-Differential)制御が用いられており、フィードバック制御部52は、比例器523、積分器524、及び微分器525を備える。
また、フィードバック制御部52は、減算器521、乗算器522、加算器526を備える。
乗算器522は、第1偏差E1に制御剛性CPを乗じて、第2偏差E2を算出する。
制御剛性CPは、次の式(1)によって算出される。制御剛性CPは、「調整係数」の一例に対応する。
CP(t)=ΔX(t)/ΔF(t) (1)
式(1)において、時間tは制御周期の実行タイミングを示す。また、制御剛性CP(t)は各制御周期における制御剛性CPを示す。また、移動量ΔX(t)は各制御周期におけるクロスヘッド10の移動量ΔXを示す。また、試験力変化量ΔF(t)は各制御周期における試験力変化量ΔFを示し、例えば今回の制御周期における試験力計測値FDと前回の制御周期における試験力計測値FDと差である。
比例器523は、第1操作量U1を出力し、積分器524は、第2操作量U2を出力し、微分器525は、第3操作量U3を出力する。
加算器526は、第1操作量U1と、第2操作量U2と、第3操作量U3とを加算して、操作量Uを算出する。
操作量Uは、試験機本体2に入力される。操作量Uは、例えば、サーボモータ18の回転量を示す。
具体的には、変位計測値XDの検出信号をハイパスフィルタとローパスフィルタとを通過させることによって、変位計測値XDの検出信号に含まれる引張試験機1の固有振動数FAに対応する成分を低減する。ハイパスフィルタは、固有振動数FAより周波数ΔFAだけ高い周波数、すなわち周波数(FA+ΔFA)以上の周波数を通過させる。ローパスフィルタは、固有振動数FAより周波数ΔFBだけ低い周波数、すなわち周波数(FA-ΔFB)以下の周波数を通過させる。固有振動数FAは、例えば17.55kHzであり、周波数ΔFA及び周波数ΔFBの各々は、例えば、1kHzである。
図4は、ボールねじ11の構成の一例を示す図である。図4の右側の図は、ボールねじ11の全体構成図であり、図4の左側の図は、ボール113周辺の拡大図である。
図4の右側の図に示すように、ボールねじ11は、ナット111と、ボール113と、リターンチューブ114とを備える。
また、ねじ棹8、9の各々には、ねじ山91とねじ溝92とが形成されている。
ボール113は、ねじ棹8、9に形成されているねじ溝92と、ナット111の溝112との間に配置される。また、例えば、ねじ棹8、9が軸中心を中心に右回りDRに回転すると、ボール113は、回転しながら右上方向MDに向けて移動する。そして、ボール113は、リターンチューブ114に入る。
リターンチューブ114は、上端に到達したボール113を、下端に移動させて、ボール113を循環させる。
このようにして、ボールねじ11は、ねじ棹8、9を回転自在に支持する玉軸受けとして機能する。
このように、ボールねじ11には、軸方向すきまSP1及び軸方向すきまSP2があるため、ねじ棹8、9が回転を開始したときには、ナット111が移動を開始するまでに時間遅れが発生する。すなわち、ねじ棹8、9が回転を開始してからナット111が移動を開始するまでの期間が「不感帯」に対応する。
また、例えば、試験対象TPを把持する治具、及びサンプルの特性によっても「不感帯」が発生する。具体的には、CT(Compact Tension)試験片では、試験片に形成された穴にピンを挿通して引張試験、又は圧縮試験を行う。この場合には、穴とピンとの間にクリアランスがあるため、試験開始時に「不感帯」が発生する。
このようにして、「不感帯」は、試験開始時と、目標値の変化の方向が逆になるときと、において発生する。
図2に戻って、制御回路ユニット50の機能的構成について説明する。
第1決定部54は、目標値及び負荷機構12に与える指示信号の少なくとも一方を制限する規制期間PDの長さを決定する。具体的には、第1決定部54は、試験力目標値FT及び制御剛性CPの少なくとも一方を制限する規制期間PDの長さを決定する。
試験機本体2のバックラッシュ量は、実測値又は計算値によって求められる。試験機本体2のバックラッシュ量は、例えば20μmである。
試験力変化量ΔFCは、試験力計測値FDが試験力速度目標値VFTと一致する速度で変化する場合に、試験力計測値FDが所定時間において変化する変化量を示す。所定時間は、例えば0.5秒である。
第2決定部55は、規制期間PDにおいて負荷機構12に与える指示信号を調整する調整係数を、試験対象の材料特性に基づいて決定する。具体的には、第2決定部55は、制御剛性CPAを、試験対象の材料特性に基づいて決定する。
フィードバック制御部52は、第1決定部54によって決定された規制期間PDにおいて、制御剛性CPを第2決定部55によって決定された制御剛性CPAに規制する。
試験対象TPの材料特性が判明している場合とは、例えば、試験対象TPのヤング率EYが制御回路ユニット50のメモリデバイス又はストレージ装置に記憶されていることを示す。具体的には、試験対象TPの識別情報と、試験対象TPのヤング率EYを示す情報とが、制御回路ユニット50のメモリデバイス又はストレージ装置に記憶されていることを示す。
CPA=SA×EY/DC (2)
ここで、断面積SAは、試験対象TPの断面積を示す。ヤング率EYは、試験対象TPのヤング率を示す。チャク間距離DCは、上つかみ具21によって把持された試験対象TPの上端部と、下つかみ具22によって把持された試験対象TPの下端部との間の距離を示す。
σ=EY×ε (3)
ここで、応力σは、試験対象TPに作用する応力を示す。歪みεは、応力σを試験対象TPに作用されたときの試験対象TPの歪みを示す。
σ=ΔF/SA (4)
ここで、試験力変化量ΔFは、試験力計測値FDの変化量を示す。
ε=ΔX/DC (5)
ここで、移動量ΔXは、クロスヘッド10の移動量を示す。
式(4)及び式(5)を式(3)に代入し、制御剛性CPAを(ΔX/ΔF)として算出することによって、式(2)が求められる。
CPA=1/CPα (6)
ただし、本体剛性CPαは、引張試験機本体2の剛性を示す。
CPA=DC/DG (7)
ここで、標点間距離DGは、変位センサ15が伸び計測値EDを測定するために、試験対象TPに設定された2つの標点間の距離を示す。
第3決定部56は、規制期間PDにおける目標値を決定する。具体的には、第3決定部56は、規制期間PDにおける試験力目標値FTを決定する。
フィードバック制御部52は、第1決定部54によって決定された規制期間PDにおいて、試験力目標値FTを、第3決定部56によって決定された試験力目標値FTAに規制する。
以下の説明では、試験力目標値FTの変化の方向が逆になる場合について説明する。具体的には、試験力目標値FTが、試験力速度目標値VFTが一定で増加して、その後、試験力目標値FTが、試験力速度目標値VFTが一定で減少する場合について説明する。
EG=E10/FV1/ΔF2×FV2×ΔF2 (8)
ここで、偏差E10は、試験力目標値FTの変化の方向が逆になる直前の第1偏差E1を示す。目標速度FV1は、試験力目標値FTの変化の方向が逆になる前の試験力速度目標値VFTを示す。変化量ΔF1は、試験力目標値FTの変化の方向が逆になる前の単位時間当たりの試験力計測値FDの変化量を示す。目標速度FV2は、試験力目標値FTの変化の方向が逆になった後の試験力速度目標値VFTを示す。変化量ΔF2は、試験力目標値FTの変化の方向が逆になった後の単位時間当たりの試験力計測値FDの変化量の推定値を示す。
[3-1.比較例における実験結果]
図5~図8を参照して、試験力目標値FTを一定速度で増加させて、試験開始時に発生する不感帯の影響を確認する実験結果について説明する。
図5は、比較例における試験力目標値FT、試験力計測値FD及びストロークSTの変化の一例を示すグラフである。
比較例では、フィードバック制御部52が、規制期間PDにおいても、制御剛性CP及び目標値(試験力目標値FT)を規制していないで、本実施形態に係る制御回路ユニット50と相違している。換言すれば、比較例に係る制御回路ユニット50は、第1決定部54、第2決定部55、及び第3決定部56を備えていない点において、本実施形態に係る制御回路ユニット50と相違している。
図5のグラフG11は、試験力目標値FTの変化を示す。グラフG11に示すように、試験力目標値FTは、試験開始時である時間Tが零の位置から直線状に増加した。すなわち、試験力速度目標値VFTは一定であった。
そして、時間TA以降においては、試験力計測値FDは、傾きが周期的に変化した。
グラフG12及びグラフG13に示すように、比較例では、引張試験機1の制御は不安定であり、良好な制御ができなかった。
図6は、本実施形態おける試験力目標値FT、試験力計測値FD及びストロークSTの変化の一例を示すグラフである。
図6の横軸は、時間Tを示し、縦軸は、試験力目標値FT、試験力計測値FD及びストロークSTを示す。
図6のグラフG21は、試験力目標値FTの変化を示す。グラフG21に示すように、試験力目標値FTは、試験開始時である時間Tが零の位置から直線状に増加した。すなわち、試験力速度目標値VFTは一定であった。
時間Tが時間TB以降においては、試験力計測値FDはなめらかに増加し、時間Tの経過と共に、試験力目標値FTとの偏差が減少した。
グラフG22及びグラフG23に示すように、本実施形態では、引張試験機1の制御は安定しており、良好な制御が実行できた。
図7は、比較例及び本実施形態における制御剛性CPの変化の一例を示すグラフである。
図7の横軸は、時間Tを示し、縦軸は、制御剛性CPを示す。
図7のグラフG31は、比較例における制御剛性CPの変化を示す。グラフG31に示すように、時間Tが零から時間Tが時間T11までの期間において、制御剛性CPが大きく変動した。
図8の横軸は、時間Tを示し、縦軸は、試験力偏差ΔFEを示す。試験力偏差ΔFEは、第1偏差E1に対応する。すなわち、試験力偏差ΔFEは、試験力目標値FTと試験力計測値FDとの差を示す。
グラフG41に示すように、試験力偏差ΔFEは、大きな振幅で振動した。このように、比較例では、引張試験機1の制御は不安定であり、良好な制御ができなかった。
グラフG42に示すように、試験力偏差ΔFEは、時間T1までは、大きな変化を示したが、時間T1以降は、変化が小さくなり、且つその絶対値もグラフG41に示す比較例における試験力偏差ΔFEの振幅と比較して小さくなった。時間Tが零から時間T1までの期間P1は、規制期間PDに対応した。
本実施形態では、第3決定部56が、第1偏差E1が想定偏差EGと最大加速倍率MAとの積以下になるように、試験力目標値FTAを決定する。そして、フィードバック制御部52は、規制期間PDにおいて、第3決定部56によって決定された試験力目標値FTAに試験力目標値FTを規制する。
[4-1.比較例における実験結果]
図9~図12を参照して、試験力目標値FTの変化の方向を増加方向から減少方向に変化させて、試験力目標値FTの変化の方向が逆になるときに発生する不感帯の影響を確認する実験結果について説明する。
図9は、比較例における試験力計測値FD及びストロークSTの変化の一例を示すグラフである。
比較例では、フィードバック制御部52が、規制期間PDにおいても、制御剛性CP及び目標値(試験力目標値FT)を規制していないで、本実施形態に係る制御回路ユニット50と相違している。換言すれば、比較例に係る制御回路ユニット50は、第1決定部54、第2決定部55、及び第3決定部56を備えていない点において、本実施形態に係る制御回路ユニット50と相違している。
グラフG61及びグラフG62に示すように、時間T2Aから時間T3Aまでの期間において、制御が不安定になった。時間T2Aでは、試験力目標値FTの方向が逆になった。すなわち、時間T2Aの前の期間では、試験力目標値FTが増加したのに対して、時間T2Aの後の期間では、試験力目標値FTが減少した。
図10の横軸は、時間Tを示し、左側の縦軸は、ストローク速度指示値STVを示し、右側の縦軸は、ストロークSTを示す。図10のグラフG71は、ストローク速度指示値STVの変化を示す。グラフG72は、ストロークSTの変化を示す。
グラフG71に示すように、時間T2Aから時間T3Aまでの期間において、ストローク速度指示値STVが不安定に変化した。すなわち、比較例では、引張試験機1の制御は不安定であり、良好な制御ができなかった。
図11は、本実施形態における試験力目標値FT、試験力計測値FD及びストロークSTの変化の一例を示すグラフである。なお、図11及び図12では、最大加速倍率MAは「1」であった。
図11の横軸は、時間Tを示し、左側の縦軸は、試験力目標値FT及び試験力計測値FDを示し、右側の縦軸は、ストロークSTを示す。
グラフG81に示すように、時間T2から時間T3までの期間P2において、試験力目標値FTは殆ど変化なかった。期間P2は、規制期間PDに対応する。すなわち、期間P2においては、試験力目標値FTを、第3決定部56が決定した試験力目標値FTAに規制したため、試験力目標値FTは殆ど変化なかった。
換言すれば、第3決定部56が決定した試験力目標値FTAに試験力目標値FTを規制したため、試験力計測値FDは、試験力目標値FTに概ね一致した。
図12の横軸は、時間Tを示し、左側の縦軸は、ストローク速度指示値STVを示し、右側の縦軸は、ストロークSTを示す。図12のグラフG91は、ストローク速度指示値STVの変化を示す。グラフG92は、ストロークSTの変化を示す。
グラフG91に示すように、時間T2において、ストローク速度指示値STVが負から正に変化し、時間T2から時間T3までの期間P2においてストローク速度指示値STVは殆ど変化なかった。
図13の横軸は、時間Tを示し、左側の縦軸は、試験力目標値FT及び試験力計測値FDを示し、右側の縦軸は、ストロークSTを示す。
グラフG81Aに示すように、時間T4から時間T5までの期間P3において、試験力目標値FTの変化は小さかった。期間P3は、規制期間PDに対応する。すなわち、期間P3においては、試験力目標値FTを、第3決定部56が決定した試験力目標値FTAに規制したため、試験力目標値FTの変化は小さかった。
換言すれば、第3決定部56が決定した試験力目標値FTAに試験力目標値FTを規制したため、試験力計測値FDは、試験力目標値FTとの差は小さかった。
なお、図11では最大加速倍率MAは「1」であり、図13では最大加速倍率MAは「6」であった。そのため、図11に示すグラフG81及びグラフG82と比較して、図13では、試験力計測値FDと試験力目標値FTとの差は大きくなった。また、図11に示す期間P2と比較して、期間P3は短かった。すなわち、最大加速倍率MAを「1」から「6」に変更することによって、規制期間PDが短くなった。
図14の横軸は、時間Tを示し、左側の縦軸は、ストローク速度指示値STVを示し、右側の縦軸は、ストロークSTを示す。図14のグラフG91Aは、ストローク速度指示値STVの変化を示す。グラフG92Aは、ストロークSTの変化を示す。
グラフG91Aに示すように、時間T4において、ストローク速度指示値STVが負から正に変化し、時間T4から時間T5までの期間P3においてストローク速度指示値STVが急激に増加して一定値となり、その後、減少した。
次に、図15及び図16を参照して、制御回路ユニット50の処理について説明する。
図15及び図16の各々は、本実施形態の制御回路ユニット50の処理の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS101において、制御回路ユニット50は、材料試験が開始されたか否かを判定する。
材料試験が開始されていないと制御回路ユニット50が判定した場合(ステップS101;NO)には、処理が待機状態になる。材料試験が開始されたと制御回路ユニット50が判定した場合(ステップS101;YES)には、処理がステップS103に進む。
そして、ステップS103において、第1決定部54が規制期間PDの長さを決定する。
試験対象TPの材料特性が判明していると第2決定部55が判定した場合(ステップS105;YES)には、処理がステップS109に進む。試験対象TPの材料特性が判明していないと第2決定部55が判定した場合(ステップS105;NO)には、処理がステップS107に進む。
そして、ステップS107において、第2決定部55は、試験対象TPの材料が金属であるか否かを判定する。
そして、ステップS109において、第2決定部55は、試験対象TPの材料特性に基づいて、制御剛性CPAを算出する。その後、処理がステップS113に進む。
試験対象TPの材料が金属ではないと第2決定部55が判定した場合(ステップS107;NO)には、処理がステップS111に進む。
そして、ステップS111において、第2決定部55は、制御剛性CPAを所定値に決定する。例えば、第2決定部55は、制御剛性CPAを本体剛性CPαに基づいて決定する。その後、処理がステップS113に進む。
そして、ステップS113において、フィードバック制御部52は、制御剛性CPを制御剛性CPAに規制する。
次に、ステップS117において、第3決定部56が、最大加速倍率MAを設定する。
次に、ステップS119において、第3決定部56が、想定偏差EGと最大加速倍率MAとを用いて試験力目標値FTAを決定し、フィードバック制御部52は、試験力目標値FTを試験力目標値FTAに規制する。
次に、ステップS121において、制御回路ユニット50は、規制期間PDが終了したか否かを判定する。
そして、ステップS123において、制御回路ユニット50は、材料試験が終了したか否かを判定する。
材料試験が終了したと制御回路ユニット50が判定した場合(ステップS123;YES)には、処理が終了する。材料試験が終了していないと制御回路ユニット50が判定した場合(ステップS123;NO)には、処理がステップS125に進む。
そして、ステップS125において、制御回路ユニット50は、試験力目標値FTの変化の方向が逆になったか否かを判定する。
試験力目標値FTの変化の方向が逆になったと制御回路ユニット50が判定した場合(ステップS125;YES)には、処理が図15に示すステップS103に戻る。試験力目標値FTの変化の方向が逆になっていないと制御回路ユニット50が判定した場合(ステップS125;NO)には、処理がステップS123に戻る。
上述した実施形態及び変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
一態様に関わる制御装置は、試験対象に負荷を付与する負荷機構を備え、前記試験対象を変形させて材料試験を行う材料試験機を制御する制御装置であって、制御対象の測定値と目標値との差を示す偏差が零になるようにフィードバック制御を実行するフィードバック制御部を備え、前記フィードバック制御部は、前記材料試験機の不感帯において、前記目標値及び前記負荷機構に与える指示信号の少なくとも一方を制限する。
第1項に記載の制御装置において、前記目標値及び前記指示信号の少なくとも一方を制限する規制期間の長さを決定する第1決定部を備える。
第2項に記載の制御装置において、前記不感帯は、前記材料試験を開始するときに発生する不感帯を含み、前記第1決定部は、前記制御対象の測定値が予め設定された第1変化量だけ変化するまでの期間に基づいて、前記規制期間の長さを決定する。
第3項に記載の制御装置において、前記規制期間において前記指示信号を調整する調整係数を、前記試験対象の材料特性に基づいて決定する第2決定部を備える。
第2項から第4項のいずれか1項に記載の制御装置において、前記不感帯は、前記目標値の変化の方向が逆になるときに発生する不感帯を含み、前記第1決定部は、前記制御対象の測定値が予め設定された第2変化量だけ変化するまでの期間に基づいて、前記規制期間の長さを決定する。
第5項に記載の制御装置において、前記目標値の変化の方向が逆になる前の期間における前記偏差の実績値に基づいて、前記目標値の変化の方向が逆になった後の期間における前記偏差の想定値を算出し、前記想定値に基づいて、前記規制期間における前記目標値を決定する第3決定部を備える。
第6項に記載の制御装置において、前記第3決定部は、前記偏差が、前記想定値の所定倍以下になるように、前記目標値を決定する。
一態様に関わる材料試験機は、第1項から第7項のいずれか1項に記載の制御装置を備える。
一態様に関わる制御装置の制御方法は、試験対象に負荷を付与する負荷機構を備え、前記試験対象を変形させて材料試験を行う材料試験機を制御する制御装置の制御方法であって、制御対象の測定値と目標値との差を示す偏差が零になるようにフィードバック制御を実行するフィードバック制御ステップを含み、前記フィードバック制御ステップでは、前記材料試験機の不感帯において、前記目標値及び前記負荷機構に与える指示信号の少なくとも一方を制限する。
一態様に関わる制御プログラムは、試験対象に負荷を付与する負荷機構を備え、前記試験対象を変形させて材料試験を行う材料試験機を、コンピュータを用いて、制御する制御装置の制御プログラムであって、前記コンピュータを、制御対象の測定値と目標値との差を示す偏差が零になるようにフィードバック制御を実行するフィードバック制御部として機能させ、前記フィードバック制御部は、前記材料試験機の不感帯において、前記目標値及び前記負荷機構に与える指示信号の少なくとも一方を制限する。
本実施形態では、材料試験機が引張試験機1である場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。材料試験機が試験対象TPに負荷を付与する負荷機構を備え、試験対象TPを変形させて材料試験を行えばよい。例えば、材料試験機が、圧縮試験機、曲げ試験機、又はねじり試験機でもよい。
2 引張試験機本体
4 制御ユニット
10 クロスヘッド
12 負荷機構
14 ロードセル
15 変位センサ
18 サーボモータ
20 ロータリエンコーダ
21 上つかみ具
22 下つかみ具
30 統括制御装置
32 表示装置
34 引張試験プログラム実行装置
40 信号入出力ユニット
42 第1センサアンプ
43 カウンタ回路
44 サーボアンプ
45 第2センサアンプ
50 制御回路ユニット(制御装置)
51 通信部
52 フィードバック制御部
53 フィルタ処理部
54 第1決定部
55 第2決定部
56 第3決定部
521 減算器
522 乗算器
523 比例器
524 積分器
525 微分器
526 加算器
CP、CPA 制御剛性(調整係数)
dX 指令値(指示信号)
E1 偏差
E2 偏差
F 試験力(負荷)
FD 試験力計測値
FT、FTA 試験力目標値
MA 最大加速倍率(所定倍)
SG1 試験力測定信号
SG2 回転測定信号
SG3 伸び測定信号
U 操作量
U1 第1操作量
U2 第2操作量
U3 第3操作量
TP 試験対象
XD 変位計測値
XT 変位目標値
ΔF 試験力変化量
ΔFC 試験力変化量(第1変化量、第2変化量)
ΔX 移動量
Claims (10)
- 試験対象に負荷を付与する負荷機構を備え、前記試験対象を変形させて材料試験を行う材料試験機を制御する制御装置であって、
制御対象の測定値と目標値との差を示す偏差が零になるようにフィードバック制御を実行するフィードバック制御部を備え、
前記フィードバック制御部は、前記材料試験機の不感帯において、前記目標値及び前記負荷機構に与える指示信号の少なくとも一方を制限する、制御装置。 - 前記目標値及び前記指示信号の少なくとも一方を制限する規制期間の長さを決定する第1決定部を備える、請求項1に記載の制御装置。
- 前記不感帯は、前記材料試験を開始するときに発生する不感帯を含み、
前記第1決定部は、前記制御対象の測定値が予め設定された第1変化量だけ変化するまでの期間に基づいて、前記規制期間の長さを決定する、請求項2に記載の制御装置。 - 前記規制期間において前記指示信号を調整する調整係数を、前記試験対象の材料特性に基づいて決定する第2決定部を備える、請求項3に記載の制御装置。
- 前記不感帯は、前記目標値の変化の方向が逆になるときに発生する不感帯を含み、
前記第1決定部は、前記制御対象の測定値が予め設定された第2変化量だけ変化するまでの期間に基づいて、前記規制期間の長さを決定する、請求項2から4のいずれか1項に記載の制御装置。 - 前記目標値の変化の方向が逆になる前の期間における前記偏差の実績値に基づいて、前記目標値の変化の方向が逆になった後の期間における前記偏差の想定値を算出し、前記想定値に基づいて、前記規制期間における前記目標値を決定する第3決定部を備える、請求項5に記載の制御装置。
- 前記第3決定部は、前記偏差が、前記想定値の所定倍以下になるように、前記目標値を決定する、請求項6に記載の制御装置。
- 試験対象に負荷を付与する負荷機構を備え、前記試験対象を変形させて材料試験を行う材料試験機であって、
請求項1から7のいずれか1項に記載の制御装置を備える、材料試験機。 - 試験対象に負荷を付与する負荷機構を備え、前記試験対象を変形させて材料試験を行う材料試験機を制御する制御装置の制御方法であって、
制御対象の測定値と目標値との差を示す偏差が零になるようにフィードバック制御を実行するフィードバック制御ステップを含み、
前記フィードバック制御ステップでは、前記材料試験機の不感帯において、前記目標値及び前記負荷機構に与える指示信号の少なくとも一方を制限する、制御装置の制御方法。 - 試験対象に負荷を付与する負荷機構を備え、前記試験対象を変形させて材料試験を行う材料試験機を、コンピュータを用いて制御する制御装置の制御プログラムであって、
前記コンピュータを、
制御対象の測定値と目標値との差を示す偏差が零になるようにフィードバック制御を実行するフィードバック制御部として機能させ、
前記フィードバック制御部は、前記材料試験機の不感帯において、前記目標値及び前記負荷機構に与える指示信号の少なくとも一方を制限する、制御プログラム。
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