JP7097204B2 - 制振システム - Google Patents

制振システム Download PDF

Info

Publication number
JP7097204B2
JP7097204B2 JP2018053501A JP2018053501A JP7097204B2 JP 7097204 B2 JP7097204 B2 JP 7097204B2 JP 2018053501 A JP2018053501 A JP 2018053501A JP 2018053501 A JP2018053501 A JP 2018053501A JP 7097204 B2 JP7097204 B2 JP 7097204B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer portion
layer
constructed
vibration damping
vibration
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018053501A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019163678A (ja
Inventor
伸也 牛坂
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shimizu Corp
Original Assignee
Shimizu Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shimizu Corp filed Critical Shimizu Corp
Priority to JP2018053501A priority Critical patent/JP7097204B2/ja
Publication of JP2019163678A publication Critical patent/JP2019163678A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7097204B2 publication Critical patent/JP7097204B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Buildings Adapted To Withstand Abnormal External Influences (AREA)
  • Vibration Prevention Devices (AREA)

Description

本発明は、高層建築物に構築される制振システムに関する。
近年、東北太平洋沖地震(2011年)や熊本地震(2016年)のように、これまでの想定を超える大地震が頻発しており、特に高さが200mを超えるような超々高層建築物は、民間建築物であっても社会的な公共性を有し、通常の建築物以上に耐震安全性や災害時の建築物としての機能の継続性が求められる。一方、超々高層建築物特有の問題として、台風などの暴風時における揺れ、または遠隔地で起こった長周期地震での揺れがある。このため、超々高層建築物では、これらの問題に対して居住性を確保するニーズが高まっている。
高層建築物では、地震に対して以前から、オイルダンパーなどの制振装置を層間に付加することで応答低減を図る技術が広く採用されている。しかしながら、そうした層間にダンパーを設置して応答低減を図る設計方法では、建築計画上の設置台数の制約やダンパーそのものの最大減衰力といった性能の頭打ちによって、それら大地震に対して無被害や無損傷といったレベルまで応答性能を向上させることは困難であった。
また、地震による応答加速度は上階ほど大きくなる傾向があり、高層建築物の最上階といった一般に付加価値の高い居室ほど応答加速度が大きくなるといった課題があった。それらの問題を解決する方法として、高層建築物の重量をマスダンパーとして利用することにより、大きな制振効果を得る方法がある。以下に、従来技術の事例を挙げる。
(連結制振)
連結制振は、それぞれ異なる周期で揺れる2棟(または複数)の高層建築物をオイルダンパーなどの減衰機構で継ぎ、互いの揺れを干渉(同調)させることで揺れを打ち消し合って高層建築物の応答を低減する方法である。高層建築物が揺れる際の慣性力を利用するため、層間にダンパーを設置してエネルギーを吸収する方法と比べて、大きな減衰力が得られ応答低減効果が著しく大きい。
(中間階に免震層を配置した制振構造)
高層建築物の頂部からおよそ全高さの1/3程度に中間階免震層を設けて、高層建築物における免震層よりも上側の部分の重量をマスダンパーとして同調させて制振する設計方法がある。既に実際の高層建築物で実施された例もあり、連結制振同様に高層建築物の重量を利用するため制振効果は極めて高い。
(慣性質量ダンパーの周期伸長効果を利用して上側の部分と下側の部分とで同調させる制振構造)
1つの高層建築物を上側の部分と下側の部分とに区分けして、上側の部分のみに慣性質量ダンパーを付与することで、その付与したことによる周期の伸長効果を利用して、区分けした上側の部分と下側の部分とを同調させる制振構造の設計方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法では、高層建築物の本体の静的な水平剛性を変えることなく慣性質量ダンパーの付加のみで同調させることができる。
特許第5238701号公報
しかしながら、連結制振では、2棟以上隣接して同規模程度の高層建築物が必要であること、互いの高層建築物の周期がちょうど同調するような異なる周期であることなど、実現するには条件が多く汎用性が低いといった問題がある。
また、中間階に免震層を配置した制振構造では、免震層に地震時または暴風時の応答変形が集中するため、数十cmから1m以上の変形がその層に生じる可能性がある。よって、エレベーター・設備配管といった縦シャフトは免震層の動きに追従できる必要があり、それら設備機器には大掛かりな免震エキスパンションが必要である。また、万が一、免震層の変形が限界変形を超えるような場合の対処としてフェールセーフを検討しておく必要があるといった課題がある。
また、慣性質量ダンパーの周期伸長効果を利用して、高層建築物の上側の部分と下側の部分とを同調させる制振構造では、周期を同調させるのに必要な慣性質量が現実的な値に対し非常に大きく(例えば、1層あたりの慣性質量が数十万tonから数百万ton必要となる)、実在する慣性質量ダンパーを用いて必要なだけの質量を、実際の高層建築物の限られたフロアエリアに設置するのは極めて困難であった(例えば、1層あたりの設置台数が数十台から数百台となる)。ゆえに、未だこの設計方法が広く普及するに至っていない。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、1つの高層建築物に対して簡便な構造で振動を低減させることができる制振システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る制振システムは、高層建築物に構築される制振システムにおいて、前記高層建築物における高さ方向の中間部から上側に位置する層の少なくとも一部に構築された柔層部を有し、前記柔層部は、前記柔層部が構築されていない層よりも水平剛性が小さくなるように設定され、前記高層建築物における前記柔層部が構築された層から上側に位置する層全体の振動周期と、前記柔層部が構築された層よりも下側に位置する層全体の振動周期とが同調するように構成され、前記柔層部は、前記高層建築物における高さ方向の上側に位置する複数層全体に構築されていることを特徴とする。
本発明では、高層建築物の中間部から上側の層に柔層部を構築し、柔層部から上側の層前端の振動周期と、柔層部よりも下側の層全体の振動周期とが同調するように構成されている。これにより、1つの高層建築物において、地震や風による振動が生じた際に、柔層部から上側の層と、柔層部よりも下側の層とが互いに振動を打ち消すような振動系を形成することができ、高層建築物の重量の一部をマスダンパーとして利用することができる。
これにより、中小地震から大地震まで幅広い範囲での加速度応答および変形応答の大幅な低減を実現することができるとともに、季節風から極めてまれに発生する風まで幅広い範囲での加速度応答および変形応答の大幅な低減を実現することができる。
このように、本発明では、1つの高層建築物に対して簡便な構造で生じた振動を低減させることができる。
また、地震や風による変形を柔層部の複数層全体に分散させることができるため、柔層部が1つの層に構築されている場合と比べて、柔層部が構築された各層の層間変形を小さく設定することができる。
上記目的を達成するため、本発明に係る制振システムは、高層建築物に構築される制振システムにおいて、前記高層建築物における高さ方向の中間部から上側に位置する層の少なくとも一部に構築された柔層部を有し、前記柔層部は、前記柔層部が構築されていない層よりも水平剛性が小さくなるように設定され、前記高層建築物における前記柔層部が構築された層から上側に位置する層全体の振動周期と、前記柔層部が構築された層よりも下側に位置する層全体の振動周期とが同調するように構成され、前記柔層部は、複数の層に構築され、前記柔層部が構築される複数の層は、それぞれ免震層であることを特徴とする。
本発明では、高層建築物の中間部から上側の層に柔層部を構築し、柔層部から上側の層前端の振動周期と、柔層部よりも下側の層全体の振動周期とが同調するように構成されている。これにより、1つの高層建築物において、地震や風による振動が生じた際に、柔層部から上側の層と、柔層部よりも下側の層とが互いに振動を打ち消すような振動系を形成することができ、高層建築物の重量の一部をマスダンパーとして利用することができる。
これにより、中小地震から大地震まで幅広い範囲での加速度応答および変形応答の大幅な低減を実現することができるとともに、季節風から極めてまれに発生する風まで幅広い範囲での加速度応答および変形応答の大幅な低減を実現することができる。
このように、本発明では、1つの高層建築物に対して簡便な構造で生じた振動を低減させることができる。
また、柔層部の水平剛性を低下させることができる。
また、免震層が複数の層に構築されることにより、免震層の変形を分散できて1つの免震層あたりの変形を抑えることができる。このため、免震層の免震装置に過大な変形が生じることを防止することができる。
上記目的を達成するため、本発明に係る制振システムは、高層建築物に構築される制振システムにおいて、前記高層建築物における高さ方向の中間部から上側に位置する層の少なくとも一部に構築された柔層部を有し、前記柔層部は、前記柔層部が構築されていない層よりも水平剛性が小さくなるように設定され、前記高層建築物における前記柔層部が構築された層から上側に位置する層全体の振動周期と、前記柔層部が構築された層よりも下側に位置する層全体の振動周期とが同調するように構成され、前記柔層部は、複数の層に構築され、前記柔層部が構築される複数の層は、1つの層が免震層で、その他の層が免震層以外で構成されていることを特徴とする。
本発明では、高層建築物の中間部から上側の層に柔層部を構築し、柔層部から上側の層前端の振動周期と、柔層部よりも下側の層全体の振動周期とが同調するように構成されている。これにより、1つの高層建築物において、地震や風による振動が生じた際に、柔層部から上側の層と、柔層部よりも下側の層とが互いに振動を打ち消すような振動系を形成することができ、高層建築物の重量の一部をマスダンパーとして利用することができる。
これにより、中小地震から大地震まで幅広い範囲での加速度応答および変形応答の大幅な低減を実現することができるとともに、季節風から極めてまれに発生する風まで幅広い範囲での加速度応答および変形応答の大幅な低減を実現することができる。
このように、本発明では、1つの高層建築物に対して簡便な構造で生じた振動を低減させることができる。
また、柔層部のうちの免震層となる層とその他の層とを異なる挙動となるように構成することができる。例えば、柔層部のうちの免震層となる層の変形をその他の層よりも大きく設定することにより、免震層以外の層の変形を抑えることができ、居住性を高めることができる。
また、本発明に係る制振システムでは、前記柔層部は、前記高層建築物における高さ方向の中間部に構築されていてもよい。
このような構成とすることにより、前記柔層部が構築された中間部の層よりも上側の層は、その水平剛性を柔層部の水平剛性よりも大きく設定することができるため、中間層よりも上側の層における層間変形を小さく設定することができる。
また、本発明に係る制振システムでは、前記柔層部が構築される層は、躯体の接合部の少なくとも一部がピン接合されていてもよい。
このような構成とすることにより、柔層部の水平剛性を低下させることができる。また、各接合部をピン接合とするかどうかを設定することで、所望の水平剛性を有する柔層部を容易に設計することができる。
また、本発明に係る制振システムでは、前記柔層部には、制振装置が設けられていてもよい。
このような構成とすることにより、柔層部において集中的に振動エネルギーを吸収することができ、さらに同調効果によって通常建物よりも大きな減衰が得られ、建物全体の振動を低減させることができる。特に、大きな応答加速度が生じる最上階付近の振動を低減させることができる。
また、本発明に係る制振システムでは、前記柔層部は、変形量が所定値以上となる場合に変形を抑制する変形抑制機構を有してもよい。
このような構成とすることにより、柔層部が過大変形することを防止することができる。
本発明によれば、1つの高層建築物に対して簡便な構造で振動を低減させることができる。
(a)は本発明の第1実施形態による制振システムが構築された高層建築物を示す正面図、(b)は(a)のA部分拡大図である。 (a)は柔層部の大梁と柱との端部接合部の第1例を示す図、(b)は柔層部の大梁と柱との端部接合部の第2例を示す図、(c)は柔層部の大梁と柱との端部接合部の第3例を示す図、(d)は柔層部の大梁と柱との端部接合部の第4例を示す図である。 TMDの振動モデルを示す図である。 (a)は多質点系モデルを示す図、(b)は1次縮約質点系モデルを示す図である。 2質点系固定ベクトルを示す図である。 第1実施形態における略算に基づく中間層柔層剛性を有する系の応答倍率曲線(20層を示すグラフである。 本実施形態における有効質量比と同調剛性係数の適用範囲を示すグラフである。 本発明の第2実施形態による制振システムが構築された高層建築物を示す正面図である。 (a)は同調剛性係数と有効質量比との関係を示すグラフ、(b)は同調剛性係数と有効質量比との関係を示すグラフである。 第2実施形態における略算に基づく中間層柔層剛性を有する系の応答倍率曲線(20層を示すグラフである。 質量比と最適減衰定数の関係を示すグラフである。 第3実施形態による制振システムが構築された高層建築物の柔層部示す図である。 各階に制振装置を設置した柔層部を示す図である。 (a)は制振装置を複数並列配置した柔層部を示す図、(b)は制振装置の配列の第1例を示す図で(a)のB-B線断面に対応する図、(c)は制振装置の配列の第2例を示す図で(a)のB-B線断面に対応する図、(d)は制振装置の配列の第3例を示す図で(a)のB-B線断面に対応する図、(e)は制振装置の配列の第4例を示す図で(a)のB-B線断面に対応する図である。 (a)は第4実施形態による制振システムが構築された高層建築物を示す正面図、(b)は(a)のC部分拡大図、(c)は(b)のD-D線断面図である。 (a)は変形前のフェールセーフ機構を示す図、(b)は変形後のフェールセーフ機構を示す図である。 フェールセーフ機構が設けられたシアリンクの要素モデルを示す図である。 (a)は検討用入力地震動の告示八戸NSLv2を示す図、(b)は検討用入力地震動の相模トラフ地震模擬波を示す図、(c)は検討用入力地震動の都心南部直下地震模擬波を示す図である。 (a)は第1モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(告示八戸NSLv2)に対する最大応答値を示すグラフ、(b)は第1モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(相模トラフ地震模擬波)に対する最大応答値を示すグラフ、(c)は第1モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(都心南部直下地震模擬波)に対する最大応答値を示すグラフである。 (a)は第1モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(告示八戸NSLv2)に対する層変形を示すグラフ、(b)は第1モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(相模トラフ地震模擬波)に対する層変形を示すグラフ、(c)は第1モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(都心南部直下地震模擬波)に対する層変形を示すグラフである。 (a)は第1モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(告示八戸NSLv2)に対する層間変形角を示すグラフ、(b)は第1モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(相模トラフ地震模擬波)に対する層間変形角を示すグラフ、(c)は第1モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(都心南部直下地震模擬波)に対する層間変形角を示すグラフである。 (a)は第2モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(告示八戸NSLv2)に対する最大応答値を示すグラフ、(b)は第2モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(相模トラフ地震模擬波)に対する最大応答値を示すグラフ、(c)は第2モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(都心南部直下地震模擬波)に対する最大応答値を示すグラフである。 (a)は第2モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(告示八戸NSLv2)に対する層変形を示すグラフ、(b)は第2モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(相模トラフ地震模擬波)に対する層変形を示すグラフ、(c)は第2モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(都心南部直下地震模擬波)に対する層変形を示すグラフである。 (a)は第2モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(告示八戸NSLv2)に対する層間変形角を示すグラフ、(b)は第2モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(相模トラフ地震模擬波)に対する層間変形角を示すグラフ、(c)は第2モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(都心南部直下地震模擬波)に対する層間変形角を示すグラフである。 (a)は第3モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(告示八戸NSLv2)に対する最大応答値を示すグラフ、(b)は第3モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(相模トラフ地震模擬波)に対する最大応答値を示すグラフ、(c)は第3モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(都心南部直下地震模擬波)に対する最大応答値を示すグラフある。 (a)は第3モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(告示八戸NSLv2)に対する層変形を示すグラフ、(b)は第3モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(相模トラフ地震模擬波)に対する層変形を示すグラフ、(c)は第3モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(都心南部直下地震模擬波)に対する層変形を示すグラフである。 (a)は第3モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(告示八戸NSLv2)に対する層間変形角を示すグラフ、(b)は第3モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(相模トラフ地震模擬波)に対する層間変形角を示すグラフ、(c)は第3モデルおよび従来の制振システムの入力地震動(都心南部直下地震模擬波)に対する層間変形角を示すグラフである。 上層部分(50F)の風応答時刻歴の例(再現期間500年風荷重)を示すグラフである。 下層部分(30F)の風応答時刻歴の例(再現期間500年風荷重)を示すグラフである。 上層部分(50F)の応答倍率曲線を示すグラフである。 下層部分(20F)の応答倍率曲線を示すグラフである。 (a)は相模トラフ地震模擬波が生じた際の階と絶対加速度応答との関係を示すグラフ、(b)は相模トラフ地震模擬波が生じた際の階と層変位応答との関係を示すグラフ、(c)は相模トラフ地震模擬波が生じた際の階と層間変形角との関係を示すグラフである。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による制振システムについて、図1乃至図7に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、第1実施形態による制振システム1は、例えば200mを超えるような高層建築物(超々高層建築物)2に構築されている。高層建築物2における高さ方向の中間部分の連続する複数の階(層)を中間層部分21、中間層部分21よりも上側の連続する複数の階全体を上層部分22、中間層部分21よりも下側の連続する複数の階全体を下層部分23とする。図1(a)では、高層建築物2の30-45階が中間層部分21、46-65階が上層部分22、1-29階が下層部分23となっている。
本実施形態による制振システム1は、高層建築物2の中間層部分21を上層部分22および下層部分23よりも水平剛性の小さい柔層部3とし、上層部分22の振動周期と下層部分23の振動周期とが同調するように構成されている。
柔層部3は、例えば、以下(a)~(e)のような方法で上層部分22および下層部分23と比べて水平剛性が小さくなるように柔層化されている。
(a)柔層部3の各階の階高を上層部分22および下層部分23の各階の階高よりも大きくする。
(b)柔層部3の各階の大梁31や柱32の端部接合部33の少なくとも一部をピン接合とする(例えば図1(b)および図2参照)。
(c)柔層部3では水平剛性を高めるために用いられる耐震間柱や耐震ブレースなどを省略、または上層部分22および下層部分23よりも少なく配置し、柔層部3の水平剛性を上層部分22および下層部分23の水平剛性よりも相対的に小さくする。
(d)上層部分22および下層部分23に耐震間柱や耐震ブレースを追加して、上層部分22および下層部分23の水平剛性を柔層部3の水平剛性よりも相対的に大きくする。
(e)柔層部3の各階の大梁31の梁せいを上層部分22および下層部分23の各階の大梁31の梁せいよりも小さくし、柔層部3の水平剛性を上層部分22および下層部分23の水平剛性よりも相対的に小さくする。
本実施形態による制振システム1では、中間層部分21を上層部分22および下層部分23よりも水平剛性の小さい柔層部3とすることによって、上層部分22と下層部分23とが同調するような振動系を形成するように構成されている。
一般に、建築物(高層建築物)の制振デバイスとしては、例えば、TMD(チューンドマスダンパー)などと呼ばれるマスダンパーが知られている。通常、マスダンパーは、質量比(μ:TMD質量と建築物の有効質量の比)が大きいほど制振効果が増加する性質がある。主に風揺れ用のTMDでは建築物の頂部などに質量比1%程度以下が付加される。
近年では、1000tonを超えるような地震対策用の大型TMDが開発され、実用化されてはいるが、付加した質量比(μ)の実積としては5%程度が最大である。
これに対し、本実施形態による制振システム1では、単一の高層建築物2における高層建築物2そのものの質量を利用するため、50%を超えるような質量比(μ)を実現することが可能である。したがって、従来のTMDよりもはるかに大きい制振効果(減衰力)を得ることができる。
次に、高層建築物2の上層部分22をマスダンパーとして下層部分23に同調させるために、柔層部3をどの程度柔層化させれば良いかについて説明する。
通常、柔層部3をどの程度柔層化させれば良いかについては、TMDの設計に用いられる「定点理論」を利用して設定する。ただし、本実施形態においては、柔層部3の水平剛性を利用して、上層部分22をマスダンパーとして下層部分23に同調させるため、柔層部3の複数層の水平剛性を以下のように設定する。
図3に示すように、一般に、TMDの設計においては、高層建築物2全体の1次有効質量からなる質点に、TMDの質量を付加した2質点系で構成したうえで定点理論を適用し、TMDの周期(剛性)を決定している。例えば、振り子形式のTMDにおいては、その吊り長さを利用して同調させている。レール形式や支承材で錘を支持する形式のTMDにおいては、コイルバネや積層ゴムといった復元材の剛性を利用して同調させている。
本実施形態では、図4(a)に示すように、柔層部3の各層の水平剛性を直列するバネと見なすことによって、同調剛性を実現させる。また、定点理論を基にした水平剛性の最適同調条件を求めるため、中間層部分21(柔層部3)および上層部分22を合わせた領域における1次有効質量および1次有効剛性を求めるとともに、下層部分23における1次有効質量および1次有効剛性を求め、図4(b)に示すような1次縮約の2質点系を構成して有効質量比を算出する。
1次縮約の2質点系の有効質量比は、まず、中間層部分21および上層部分22を合わせた領域における1次有効質量を下式(1)から求め、下層部分23における1次有効質量を下式(2)から求める。そして、下式(3)から1次縮約の2質点系の有効質量比を算出する。
Figure 0007097204000001
この1次縮約の2質点系に対してTMDと同様に定点理論における最適値を導出し、マスダンパー化する中間層部分21および上層部分22からなる質点の周期が最適同調周期を満足するように中間層部分21(柔層部3)の水平剛性を決定する。
実際の高層建築物2においては、決定した柔層部3の水平剛性に近づくように架構の部材断面や端部接合条件、またはブレースなどの耐震要素の追加または省略で調整する。
すなわち、柔層部3の各階に設定すべき水平剛性は、最適同調となる縮約した2質点系と同様の周期または有効水平剛性となるようにすれば良い。ただし、具体的な値については、トライ&エラーで複数回、固有値解析を行って見つけ出す必要がある。
本実施形態では、そういった煩雑な作業を回避するために、略算的に設計パラメータを求めることが可能である。以下に、その柔層部3の水平剛性を決定するための略算手法を示す。
(ステップ1-1)
Ai分布を想定した高層建築物2の水平剛性として、上層部分22と中間層部分21(柔層部3)の層数を決定し、下式(4)を用いて1次有効質量を求める。
Figure 0007097204000002
(ステップ1-2)
下式(5)を用いて下層部分23の1次有効質量を求める。
Figure 0007097204000003
(ステップ1-3)
下式(6)を用いて1次の有効質量比を求める。
Figure 0007097204000004
(ステップ1-4)
下式(7)を用いて最適振動数比λoptを求める。
Figure 0007097204000005
(ステップ1-5)
下式(8)を用いて下層部分23の1次周期を略算する。
ここで、は高層建築物2全体の1次周期、nは全層数、kは下層部分23の層数を示す。
Figure 0007097204000006
(ステップ1-6)
下式(9)を用いて上層部分22の1次周期を略算する。
ここで、β=(h/n)^0.25、hは上層部分22の層数(h=n-k)を示す。
Figure 0007097204000007
(ステップ1-7)
下式(10)を用いて最適(1次)有効剛性Ku,оptを求め、下式(11)を用いて上層部分22の最適(1次)周期Tu,optを求める。
Figure 0007097204000008
(ステップ1-8)
下式(12)を用いてτ(=/u,opt)を求め、下式(13)-(17)を用いて中間層部分21のみを柔層化する場合の同調剛性係数ζを求める。
図5に示すような2質点系の固有ベクトルの比r=r/rを定義する。
Figure 0007097204000009
(ステップ1-9)
式(17)で求めた中間層部分21の同調剛性係数ζを中間層部分21の各層に乗じて、略算的に中間層部分21の各層の水平剛性を求める。
このようにして柔層部3(中間層部分21)の各層の水平剛性が求められる。
次に、上記ステップ1-1~9に基づく柔層部3の水平剛性を決定するための略算手法で求めた柔層部3の水平剛性を付与した検討例を以下に示す。対象となる高層建築物2は、全体が50層の高層建築物2とし、中間層部分21が10層、上層部分22が10層、下層部分23が30層とする。
(ステップ1-1)
Ai分布を想定した高層建築物2の水平剛性として、上層部分22と中間層部分21の層数を決定し、上記の式(4)を用いて1次有効質量を求める。
Figure 0007097204000010
(ステップ1-2)
上記の式(5)を用いて下層部分23の1次有効質量を求める。
Figure 0007097204000011
(ステップ1-3)
式(6)を用いて1次の有効質量比を求める。
Figure 0007097204000012
(ステップ1-4)
上記の式(7)を用いて最適振動数比λoptを求める。
Figure 0007097204000013
(ステップ1-5)
上記の式(8)を用いて下層部分23の1次周期を略算する。
Figure 0007097204000014
(ステップ1-6)
上記の式(9)を用いて上層部分22の1次周期を略算する。
Figure 0007097204000015
(ステップ1-7)
上記の式(10)を用いて最適(1次)有効剛性Ku,оptを求め、上記の式(11)を用いて上層部分22の最適(1次)周期Tu,optを求める。
Figure 0007097204000016
(ステップ1-8)
上記の式(12)を用いてτ(=/u,opt)を求め、上記の式(13)-(17)を用いて中間層部分21のみを柔層化する場合の同調剛性係数ζを求める。
Figure 0007097204000017
(ステップ1-9)
中間層部分21の各層の水平剛性kを0.157倍し、最適同調剛性に近似する柔層部3の水平剛性を求める。
図6に上記の略算に基づき決定した柔層部3が水平剛性を有する50質点系について、20層における周波数応答倍率を示す。これより、略算で求めた柔層部3の水平剛性によって同調していることが確認できる。
本実施形態における柔層部3の設計範囲は、下記の通り定義することができる。図7には、本実施形態における有効質量比と同調剛性係数の適用範囲を示す。
Figure 0007097204000018
次に、上述した第1実施形態による制振システム1の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した第1実施形態による制振システム1では、高層建築物2の上層部分22に柔層部3を設け、柔層部3から上側の上側部分の振動周期と、柔層部3の下側の下側部分の振動周期とが同調するように構成されている。これにより、1つの高層建築物2において、地震や風による振動が生じた際に、柔層部3から上層部分22と、柔層部3の下層部分23とが互いに振動を打ち消すような振動系を形成することができ、高層建築物2の重量の一部をマスダンパーとして利用することができる。
これにより、中小地震から大地震まで幅広い範囲での加速度応答および変形応答の大幅な低減を実現することができるとともに、季節風から極めてまれに発生する風まで幅広い範囲での加速度応答および変形応答の大幅な低減を実現することができる。
このように、1つの高層建築物2に対して簡便な構造で生じた振動を低減させることができる。
また、第1実施形態では、柔層部3は、高層建築物2の高さ方向の中間部に位置する中間層部分21に設けられている。これにより、柔層部3が設けられた中間層部分21以外の上層部分22および下層部分23は、その水平剛性を中間層部分21(柔層部3)の水平剛性よりも大きく設定することができるため、中間層部分21よりも層間変形を小さく設定することができる。
(第2実施形態)
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図8に示すように、第2実施形態による制振システム1Bでは、高層建築物2Bにおける高さ方向の上側の連続する複数の階全体を上層部分22B、上層部分22Bよりも下側の連続する複数の階全体を下層部分23Bとしている。
第2実施形態による制振システム1Bは、高層建築物2の上層部分22B全体を下層部分23Bよりも水平剛性の小さい柔層部3Bとし、上層部分22Bの振動周期と下層部分23Bの振動周期とが同調するように構成されている。
第2実施形態における上層部分22Bの水平剛性は、第1実施形態において、中間層部分21の水平剛性を上層部分22および下層部分23の水平剛性と比べて小さくなるようにするのと同様の方法で、下層部分23Bの水平剛性と比べて小さくなるように設定されている。
以下に、第2実施形態における柔層部3Bの水平剛性を決定するための略算手法を示す。
(ステップ2-1)
Ai分布を想定した高層建築物2の水平剛性として、上層部分22Bの層数を決定し、式(18)を用いて1次有効質量を求める。
Figure 0007097204000019
(ステップ2-2)
同様に式(19)を用いて、下層部分23の1次有効質量を求める。ただし、下層部分23においては下式による係数を乗じた値を採用する。
Figure 0007097204000020
(ステップ2-3)
式(20)を用いて1次の有効質量比を求める。
Figure 0007097204000021
(ステップ2-4)
式(21)を用いて最適振動数比λoptを求める。
Figure 0007097204000022
(ステップ2-5)
式(22)を用いて下層部分23の1次周期を略算する。
Figure 0007097204000023
(ステップ2-6)
式(23)を用いて上層部分22Bの1次周期を略算する。
Figure 0007097204000024
(ステップ2-7)
式(24)を用いて最適(1次)有効剛性を求め、式(25)を用いて上層部分22Bの最適(1次)周期Tu,optを求める。
Figure 0007097204000025
(ステップ2-8)
式(23)で求めた上層部分22Bの1次周期と、式(25)で求めた上層部分22Bの最適(1次)周期Tu,optと、の比:τを求め(式(26)参照)、その2乗を柔層化する層の各層に乗じる(式(27)参照)ことで、最適同調を満足するような柔層化後の各層剛性k´を求めることができる。
ここで、kは上層部分22の任意の層iの水平剛性と定義し、τを同調剛性係数ζ(ゼータ)と定義する(式(28)参照)。
Figure 0007097204000026
図9(a)に略算で求めた同調剛性係数ζと有効質量比との関係を示し、図9(b)に略算で求めた同調剛性係数ζと層数との関係を示す。
次に、上記ステップ2-1~8に基づく柔層部3Bの水平剛性を決定するための略算手法で求めた柔層部3Bの水平剛性を付与した検討例を以下に示す。対象となる高層建築物2は、全体が50層の高層建築物2とし、上層部分22Bが20層、下層部分23が30層とする。
(ステップ2-1)
Ai分布を想定した高層建築物2の水平剛性として、上層部分22Bの層数を決定し、上記の式(18)を用いて1次有効質量を求める。
Figure 0007097204000027
(ステップ2-2)
上記の式(19)を用いて、下層部分23の1次有効質量を求める。
Figure 0007097204000028
(ステップ2-3)
上記の式(20)を用いて1次の有効質量比を求める。
Figure 0007097204000029
(ステップ2-4)
上記の式(21)を用いて最適振動数比λoptを求める。
Figure 0007097204000030
(ステップ2-5)
式(22)を用いて下層部分23の1次周期を略算する。
Figure 0007097204000031
(ステップ2-6)
上記の式(23)を用いて上層部分22Bの1次周期を略算する。
Figure 0007097204000032
(ステップ2-7)
上記の式(24)を用いて最適(1次)有効剛性を求め、上記の式(25)を用いて上層部分22Bの最適(1次)周期Tu,optを求める。
Figure 0007097204000033
(ステップ2-8)
上記の式(26)~(28)を用いて上層部分22Bの最適(1次)周期Tu,optと、の比:τ、および同調剛性係数ζを求める。
Figure 0007097204000034
したがって、上層部分22Bの各層の水平剛性kを0.266倍すれば最適同調を満足する柔層部3Bの水平剛性が得られる。
ここで、略算と固有値解析で求めたおよびU,optを比較する。
・固有値解析
=3.488秒、=3.023秒、U,opt=5.675秒→ζ=τ=0.284
・略算
=3.614秒、=3.031秒、U,opt=5.876秒→ζ=τ=0.266
このように、固有値解析による清算と略算の比は、0.266/0.284=0.937であり、7%以下の誤差程度と軽微であるため実用上は問題なく略算法を使用できるといえる。
図10に略算に基づき決定した柔層部3Bの水平剛性を有する50質点系について、20層における周波数応答倍率を示す。3.8秒および6.5秒付近を通る減衰に依らない定点の高さが、ほぼ等しいことから同調していることが確認できる。
なお、最適減衰は定点理論より下式(29)で求められる。
Figure 0007097204000035
この例においてμ=0.627より、hopt=0.380で38%となる。
図11に質量比と最適減衰定数との関係を示す。
第2実施形態による制振システム1Bでは、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、第2実施形態による制振システム1Bでは、柔層部3Bは、高層建築物2の高さ方向の中間部から上側となる上層部分22Bの全体に構築されている。これにより、地震や風による変形を柔層部3Bの上層部分22Bの全体に分散させることができるため、柔層部3Bの各層の層間変形を小さく設定することができる。
(第3実施形態)
図12に示す第3実施形態による制振システム1Cでは、第1実施形態と同様に、中間層部分21に柔層部3Cが構築されている。第3実施形態による制振システム1Cでは、柔層部3Cに制振装置4が設けられている。
制振装置4としては、例えば、オイルダンパーなどの粘性系の制振装置4 や、履歴性、質量系の制振装置4などが採用されている。
柔層部3は上層部分22や下層部分23(図1参照)よりも変形しやすいため、制振装置4は、柔層部3に設置されたほうが上層部分22や下層部分23に設置された場合よりも効率的にエネルギー吸収が可能となる。また、図11に示すように、定点理論における最適減衰は、質量比が大きいほど最適減衰定数も増加するため、柔層部3に制振装置4を設置することにより、減衰量を増加することができる。
したがって、第3実施形態では、大きな質量比を実現できることによって、一般的な各層に制振装置を配置するような制振構造よりも大きな減衰を付与することが出来る。なお、柔層部3に付与する減衰は必ずしも最適減衰が上限ではなく、柔層部3の変形を抑制するためには、最適減衰よりも大きな減衰を付与した方が良い場合がある。このため、柔層部3には、最適減衰より大きな減衰を付与してもよい。
第3実施形態では、制振装置4を以下のように配置している。
まず、制振装置4を複数の層にわたって層跨ぎ配置する場合について説明する。
図12に示すように、制振装置4を層跨ぎ配置すると、通常の設計では各層間に配置する制振装置4を、2層もしくは3層などの複数層に渡って配置することにより、制振装置4への入力変形を2倍もしくは3倍等に大きくすることができる。このため、制振装置4を層跨ぎ配置したほうが、図13に示すような同数の層それぞれに制振装置4を配置するよりも、大きな減衰係数を得ることができる。これにより、柔層部3における最適な減衰定数(大きな減衰係数)を付与することが可能である。
続いて、制振装置4を並列配置する場合について説明する。
図14に示すように、制振装置4を並列配置すると、層跨ぎ配置の場合は、ダンパー1台あたりの見かけの減衰係数を大きくすることができる。また、同じ減衰係数を付与した場合には、ダンパー台数を削減することができる。
ただし、層跨ぎ配置の場合に、各層配置した場合よりもより大きな減衰係数を付与するためには、ダンパー台数は削減せずに同程度の台数を配置することが望ましい。そこで、図12に示すように、層跨ぎしたシアリンク型に、通常左右1台ずつ配置するダンパーを左右2~4台程度ずつ並列に集約配置することが望ましい。
これらの方法を組み合わせることによって例えば、通常の各層配置の場合と比べ制振装置4 を配置する架構面数を増やすことなしに、同じダンパー台数であっても、2層跨ぎで2台並列集約配置した場合には2倍の減衰効果を発揮させることが可能である。
第3実施形態による制振システム1Cによれば、柔層部3に制振装置4が設けられていることにより、大きな減衰を付与することができる。
また、制振装置4を層跨ぎ配置したり、並列配置したりすることによって、少ない制振装置4(オイルダンパー)の台数で大きな減衰が得ることができる。これにより、各層に一般的なオイルダンパーを配置して定点理論における最適減衰に近い減衰を与えようとすると、通常の建築平面計画では設置箇所数が不足し必要な減衰係数が不足してしまうことに対処することができる。
(第4実施形態)
図15に示すように、第4実施形態による制振システム1Dでは、第1実施形態と同様に、中間層部分21に柔層部3Dが構築されている。
中間階免震に限らず一般的な高層建築物2におけるピロティー構造の様に、特定の層が柔層(または弱層)となる場合、変形が集中して、想定を超えるような外力に対しては、脆性的な損傷をする可能性がある。そこで、第4実施形態による制振システム1Dでは、柔層部3Dの変形量が所定値以上となる場合に変形を抑制するフェールセーフ機能(変形抑制機構)5を有している。
図15および図16に示すように、フェールセーフ機能5は、オイルダンパー等の制振装置4を配置するシアリンク機構(ブレース)に設けられ、ある限界変形を超えた場合、ロックまたは層の水平剛性を付加するような機能(可変剛性)を有している。フェールセーフ機能5は、具体的には、ギャップのある弾塑性ダンパーをオイルダンパー等の制振装置4と並列に配置し、所定の変形以上ではそのギャップが消失し弾塑性ダンパーとして作用するように構成されている。したがって、弾塑性ダンパーとシアリンクブレースとの直列剛性が層の水平剛性に付加されることとなる。そのときの要素モデルを図17に示す。
また、変形に依存する通常の弾塑性ダンパーと同様にエネルギー吸収も同時に行う。すなわち、これは、一種の可変剛性架構システムを形成することとなり、過大な変形に対しては変形を抑制するような働きをする。ゆえに、提案するフェールセーフ付きシアリンクにより、想定を超えるような外力に対しても、柔層部3における変形集中を抑制し、想定外に対してもロバスト性のあるレジリエンスの高い架構が形成可能となる。よって、第4実施形態では、柔層部3の弱点が克服されている。
第4実施形態による制振システム1Dによれば、第1実施形態の制振システムと同様の効果を奏する。また、柔層部3が過大変形することを防止することができる。
次に、本発明による制振システムの効果を検証するための地震応答解析について説明する。
地震応答解析は、本発明による制振システム1の3つのモデル(第1~第3モデル)を対象に行い、従来の制振システム1と応答加速度、層変形および層間変形角について比較した。
第1モデルは、50質点系の上層部分22の20層が柔層部3となる等価せん断バネモデルである。第2モデルは、0質点系の中間層部分21の10層が柔層部3となる等価せん断バネモデルである。第3モデルは、65質点系で等価せん断バネモデルである。
従来の制振システム1には、本発明の制振システム1の柔層部3に配置する粘性ダンパーと同じ台数のダンパーが各層均等に分配して配置されている。
図18に検討に使用した入力地震動を示す。また、表1に入力地震動の最大加速度を示す。
Figure 0007097204000036
それぞれの入力地震動に対し最大応答値を、第1モデルについては図19~図21に、第2モデルについては図22~図24に、第3モデルについて図25~図27に示す。
第3モデルにおいては、頂部における最大応答加速度が従来の制振システム1と比べて約1/4以下に低減している。これは、従来の制振システム1では上層階になるほど応答加速度が増加する性質があるが、本発明の制振システム1では、同調効果による大きな減衰力により上層階であっても応答加速度が増加しにくい性質があるためである。
また、第1~第3モデルそれぞれにおける層間変形角の最大値は、柔層部3で比較しても同等程度で、層変形は従来の制振システム1と比べて半減しており、効果が示されている。なお、第2モデルの応答結果の通り、柔層部3の層数が少ないと、フェールセーフを設けたとしても柔層部3での変形が過大になる傾向がある。したがって、本解析においては、柔層部3の層数は20層を下限の目安とすることが好ましい。
図28には、本発明の制振システムおよび従来の制振システムの上層部分(50F)の風応答時刻歴の例を示し、図29には、本発明の制振システムおよび従来の制振システムの下層部分(30F)の風応答時刻歴の例を示す。本発明の制振システムでは、中間層に2層以上の免震層を設け、上層部分をマスダンパー化しており、2層以上の免震層に変形を分散することで、免震装置に性能を超える過大な変形を生じさせないようにしている。
図28および図29から、本発明の制振システムは、風揺れに対しても応答低減効果を有していることがわかる。
図29には、本発明の制振システムおよび従来の制振システムの上層部分(50F)の応答倍率曲線の例を示し、図30には、本発明の制振システムおよび従来の制振システムの下層部分(30F)の応答倍率曲線の例を示す。
図29および図30から、本発明の制振システム1では、従来の制振システム1と比較して、応答倍率のピークが大きく低減しており、上述した本発明の効果を奏していることがわかる。
図32(a)には、相模トラフ地震模擬波が生じた際の階と絶対加速度応答との関係を示し、図32(b)には、相模トラフ地震模擬波が生じた際の階と層変位応答との関係を示し、図32(c)には、相模トラフ地震模擬波が生じた際の階と層間変形角との関係を示している。
図21の第1モデルの層間変形角応答最大値に示した「相模トラフ地震模擬」の応答結果のように、地震動の入力が大きな場合には柔層部3に変形が集中して、応答クライテリアを満足できない場合がある。そこで、図32に、可変剛性システム(フェールセーフ機構)を導入した場合の応答結果を示す。図32からわかるように、フェールセーフ機構のモデル化は、層間変形角1/100を超えると非線形弾性として初期剛性の4倍になるような非線形剛性をバイリニアで与えた。
結果としてフェールセーフ機構により1/80以下に変形が抑制されている。一方、加速度は増加する傾向にあるがほぼ従来の制振システム1以下に抑えられている。
以上、本発明による制振システム1の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の第1実施形態による制振システム1では、柔層部3が中間層部分21の連続する複数の層全体で構成され、第2実施形態による制振システム1では、柔層部3が上層部分22の連続する複数の全体で構成されている。
これに対し、柔層部3は、中間層の連続する複数の層、または互いに離間する複数の層それぞれに構築された免震層で構成されていてもよい。免震層が複数の層に構築されることにより、免震層の変形を分散できて1つの免震層あたりの変形を抑えることができる。このため、免震層の免震装置に過大な変形が生じることを防止することができる。
また、柔層部3は、中間層の連続する複数の層、または互いに離間する複数の層それぞれに構築されて、そのうちの1つの層が免震層で、その他の層が免震層以外で構成されていてもよい。
1,1B~1D 制振システム
2 高層建築物
3 柔層部
4 制振装置
5 フェールセーフ機構(変形抑制機構)
21 中間層部分
22 上層部分
23 下層部分

Claims (7)

  1. 高層建築物に構築される制振システムにおいて、
    前記高層建築物における高さ方向の中間部から上側に位置する層の少なくとも一部に構築された柔層部を有し、
    前記柔層部は、前記柔層部が構築されていない層よりも水平剛性が小さくなるように設定され、
    前記高層建築物における前記柔層部が構築された層から上側に位置する層全体の振動周期と、前記柔層部が構築された層よりも下側に位置する層全体の振動周期とが同調するように構成され、
    前記柔層部は、前記高層建築物における高さ方向の上側に位置する複数層全体に構築されていることを特徴とする制振システム。
  2. 高層建築物に構築される制振システムにおいて、
    前記高層建築物における高さ方向の中間部から上側に位置する層の少なくとも一部に構築された柔層部を有し、
    前記柔層部は、前記柔層部が構築されていない層よりも水平剛性が小さくなるように設定され、
    前記高層建築物における前記柔層部が構築された層から上側に位置する層全体の振動周期と、前記柔層部が構築された層よりも下側に位置する層全体の振動周期とが同調するように構成され、
    前記柔層部は、複数の層に構築され、
    前記柔層部が構築される複数の層は、それぞれ免震層であることを特徴とする制振システム。
  3. 高層建築物に構築される制振システムにおいて、
    前記高層建築物における高さ方向の中間部から上側に位置する層の少なくとも一部に構築された柔層部を有し、
    前記柔層部は、前記柔層部が構築されていない層よりも水平剛性が小さくなるように設定され、
    前記高層建築物における前記柔層部が構築された層から上側に位置する層全体の振動周期と、前記柔層部が構築された層よりも下側に位置する層全体の振動周期とが同調するように構成され、
    前記柔層部は、複数の層に構築され、
    前記柔層部が構築される複数の層は、1つの層が免震層で、その他の層が免震層以外で構成されていることを特徴とする制振システム。
  4. 前記柔層部は、前記高層建築物における高さ方向の中間部に構築されていることを特徴とする請求項2または3に記載の制振システム。
  5. 前記柔層部が構築される層は、躯体の接合部の少なくとも一部がピン接合されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の制振システム。
  6. 前記柔層部には、制振装置が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の制振システム。
  7. 前記柔層部は、変形量が所定値以上となる場合に変形を抑制する変形抑制機構を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の制振システム。
JP2018053501A 2018-03-20 2018-03-20 制振システム Active JP7097204B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018053501A JP7097204B2 (ja) 2018-03-20 2018-03-20 制振システム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018053501A JP7097204B2 (ja) 2018-03-20 2018-03-20 制振システム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019163678A JP2019163678A (ja) 2019-09-26
JP7097204B2 true JP7097204B2 (ja) 2022-07-07

Family

ID=68066030

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018053501A Active JP7097204B2 (ja) 2018-03-20 2018-03-20 制振システム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7097204B2 (ja)

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007002455A (ja) 2005-06-22 2007-01-11 Fujita Corp 制振装置
US20100269424A1 (en) 2007-12-13 2010-10-28 Alga S.P.A. Tuned mass damper

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6429584A (en) * 1987-07-24 1989-01-31 Ohbayashi Corp Earthquakeproof housing

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007002455A (ja) 2005-06-22 2007-01-11 Fujita Corp 制振装置
US20100269424A1 (en) 2007-12-13 2010-10-28 Alga S.P.A. Tuned mass damper

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019163678A (ja) 2019-09-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6979805B2 (ja) 免震構造物
Xiang et al. Seismic vibration control of building structures with multiple tuned mass damper floors integrated
Elias et al. Dynamic response control of a wind-excited tall building with distributed multiple tuned mass dampers
Wang et al. Analytical and experimental studies on midstory isolated buildings with modal coupling effect
Pourzangbar et al. Effects of brace-viscous damper system on the dynamic response of steel frames
JP7097204B2 (ja) 制振システム
JP6622568B2 (ja) 建物の制振構造
JP2017071908A (ja) 多層免震構造物
JP7374694B2 (ja) 免震建物群の設計方法
Farghaly Optimization of viscous dampers with the influence of soil structure interaction on response of two adjacent 3-D buildings under seismic load
JP6190643B2 (ja) 制振装置
Kenarangi et al. Application of tuned mass dampers in controlling the nonlinear behavior of 3-D structural models, considering the soil-structure interaction
Sandoval et al. Study of structural control in coupled buildings
JP6108370B2 (ja) 粘性減衰を用いた低層集中制震システムの最適設計法
Taheri et al. Creation of innovative earthquake resistant steel buildings by dividing the structure into inner and outer parts having interaction by hysteretic dampers
JP2017071909A (ja) 多層免震構造物
JP2010242381A (ja) 建物の制振構造及びこれを備えた建物
Gattulli et al. Nonlinear viscous dampers interconnecting adjacent structures for seismic retrofitting
CN107780444A (zh) 一种带恢复功能的减隔震结构及其设计方法
JP7312343B2 (ja) 制振装置の諸元の設定方法
JP6994977B2 (ja) 免震構造物
JP7145669B2 (ja) 免震構造物
JP6298402B2 (ja) 部分免震構造
JP7370789B2 (ja) 制震構造物、制震構造物の制御方法及び制震構造物の設計方法
Siepe et al. Retrofitting of a hospital using a tuned mass control system

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210215

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220121

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220201

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220318

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220614

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220627

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7097204

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150