JP7096576B2 - ポリシラン-パラジウム/(リン酸カルシウム-活性炭)触媒 - Google Patents
ポリシラン-パラジウム/(リン酸カルシウム-活性炭)触媒 Download PDFInfo
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Description
即ち、骨炭そのものは吸着剤等の目的で従来から産業用途で使用されてきた化合物であるが、BSE問題や、供給元等で成分・性質が異なるなどの扱いにくさから、化学物質として扱うには問題があった。そこで、本発明者らは骨炭がリン酸カルシウムと活性炭を主原料としていることから、これらを混合することで、骨炭類似、あるいはそれ以上の機能の発現が期待できると考え、本発明を完成するに至った。
[1]ポリシラン、パラジウム、活性炭及びリン酸カルシウムを含有し、該パラジウムが活性炭及びリン酸カルシウムに担持された、固定化パラジウム触媒。
[2]パラジウム坦持量が0.05~0.15mmol/gであり、活性炭/リン酸カルシウムの質量比が1.0~6.0の範囲にある、[1]に記載の固定化パラジウム触媒。
[3]ポリシランがポリジメチルシランである、[1]又は[2]に記載の固定化パラジウム触媒。
[4]前記パラジウムは、還元剤により還元処理された、[1]~[3]のいずれか1項に記載の固定化パラジウム触媒。
[5][1]~[4]に記載の固定化パラジウム触媒を、ニトロ化合物の水素化反応に用いる方法。
[6]以下の工程からなる固定化パラジウム触媒の調製方法。
(1)0~20℃で、活性炭、パラジウム塩又はパラジウム錯体、リン酸カルシウム、及び場合により還元剤を含む溶液又は分散液を調製する工程
(2)前記(1)で得られる溶液又は分散液に、ポリシランを添加する工程、及び
(3)前記(2)で得られる溶液又は分散液から不溶物を分離する工程。
[7]前記工程(1)において、パラジウム塩又はパラジウム錯体を溶解させる溶媒を用いる、[6]に記載の調製方法。
[8]前記工程(2)において、ポリシランを添加後に、アルコールを添加し、50~80℃で加熱撹拌することを含む、[6]又は[7]に記載の調製方法。
を提供するものである。
この微粒子のサイズは2~10nm程度であり、電子顕微鏡により観察可能である。
リン酸カルシウムと総称される化合物は、複数あり、Caイオンと、PO4イオンの比率が異なる。本発明においては、リン酸カルシウムとして、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2)(MCPA)、リン酸二水素カルシウム-水和物(Ca(H2PO4)2H2O)(MCPM)、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)(DCPA)、リン酸水素カルシウム二水和物(CaHPO4)(H2O)(DCPD)、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)(TCP:構造の違いにより、複数の相が存在する)、リン酸八カルシウム(Ca8(PO4)4(HPO4)2(OH)2(OCP)、水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)(HAP、HAp、OHAPなどと呼称される)、フッ素アパタイト(Ca10(PO4)6F2)、塩素アパタイト(Ca10(PO4)6Cl2)、炭酸アパタイト(炭酸含有水酸アパタイト)(Ca10-a(PO4)6-b(CO3)c(OH)2-d)等の化合物も使用することができる。
また、本発明のもう1つの好ましい側面においては、パラジウム坦持量が0.08~0.10mmol/gであり、触媒中の活性炭/リン酸カルシウムの質量比が2.0~4.0の範囲にある。
パラジウム坦持量と触媒中の活性炭/リン酸カルシウムの質量比が上記の範囲にあると、触媒活性が高まり、高い目的化合物の収率を得ることができる。
本発明の検討において、その混合比や貴金属担持濃度、担持法等を詳細かつ広範囲に検討した結果、固定化パラジウム触媒の最適な調製法を見出すに至った。具体的には、活性炭を一次担体としてパラジウム溶液と混合し、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤で還元処理を行うことで微粒子化するとともに活性炭への吸着を行い、さらに二次担体としてリン酸カルシウムを添加した後、ポリシランを添加して固定化パラジウム触媒を得る調製法である。
(1)0~20℃で、活性炭、パラジウム塩又はパラジウム錯体、リン酸カルシウム、及び場合により還元剤を含む溶液又は分散液を調製する工程
(2)前記工程(1)で得られる溶液又は分散液に、ポリシランを添加する工程、及び
(3)前記工程(2)で得られる溶液又は分散液から不溶物を分離する工程。
この際用いる溶媒は、パラジウム源を溶解させる溶媒が好ましい。しかし、パラジウム源を単に分散させる溶媒を使用してもよい。また、ポリシランと活性炭は、溶媒に溶解しないので、溶媒中に分散させる。さらに、テトラヒドロフランやジオキサンなどの水と混和する有機溶媒を用いた場合は、パラジウム塩を水溶液として添加してもよい。
このような溶媒として、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、アルコールなどが利用でき、中でもトルエン、テトラヒドロフランなどが好適である。また、低分子量のアルコールを溶媒に共存させることでパラジウムの還元反応を促進及び完結させることができる。低分子量のアルコールとしては炭素数3以下のアルコールが好ましく、中でもメタノールが好適であり、アルコールを添加するタイミングとしては溶媒中にあらかじめ加えておいても、又は混合の途中で添加してもよい。添加するアルコールの量は、主溶媒に対して1~100%(V/V)である。
還元反応終了後、上記溶液又は分散液から不溶物を分離する。この分離方法としては、ろ過や遠心操作が行われる。通常、溶媒から分離した不溶物をその後十分に洗浄後、乾燥する。このろ過や洗浄工程により、固定されなかったパラジウムや還元剤由来の不純物等は除去される。洗浄溶媒としては反応に使用した溶媒、メタノール、水などが好適である。乾燥方法に制約は無いが、減圧下で加熱乾燥するのが簡便である。
還元剤を用いる場合には、還元剤の使用量はパラジウム源に対して当量から5当量程度である。
ジメチルポリシラン-パラジウム/(活性炭・リン酸カルシウム)触媒(1a)の調製
以下のスキームにより、ジメチルポリシラン-パラジウム/(活性炭・リン酸カルシウム)触媒を調製した。
全ての操作は大気下で行った。水素化ホウ素ナトリウム(19.0mg、0.5mmol)のジグリム(1.5mL)溶液が入ったナス型フラスコ(50mL)に、活性炭(0.675g、和光純薬工業株式会社製)、トルエン(15mL)を加えた。これに氷浴下で酢酸パラジウム(23.5mg、0.10mmol、アルドリッチ)のTHF(4mL)溶液を10分間(約1滴/秒)で滴下した。滴下終了後に氷浴を撤去し30分間室温で攪拌後、リン酸カルシウム(0.225g、和光純薬工業株式会社製)を加えた。30分間攪拌後、ポリジメチルシラン(0.10g、日本曹逹株式会社製、篩(300μm)処理)を加え、さらに30分間攪拌した。その後メタノール(5mL)を一気に加え、75oC(オイルバス)で加熱攪拌した。30分後攪拌を止め、オイルバスを除去した。内容物が冷えた後、固形物を桐山ロート(Φ40)で濾集し、アセトン(20mL×4回)、精製水(20mL×4回)、アセトン(20mL×1回)で洗浄した。得られた粉末を80oCで15時間減圧乾燥し、1aを黒色粉末として得た(0.98g)。
表1に示すように、酢酸パラジウム、ポリジメチルシラン、活性炭、リン酸カルシウムの比率を変えて、実施例1と同様にして、ジメチルポリシラン-パラジウム/(活性炭・リン酸カルシウム)触媒を合成した。得られた触媒をそれぞれ「触媒1b~1c」と呼ぶ。
パラジウム触媒1aを用いた、ロリプラム原料中間体である1,4付加体2の還元反応
以下のスキーム2により、パラジウム触媒1aを用いて1,4付加体2の還元反応を行った。
化合物2(202.3mg、0.511mmol)、パラジウム触媒1(101.8mg、0.010mmol)が入ったガラス製反応管(10mL)にトルエン(1mL)を加えた。反応容器内の減圧脱気、水素置換を3回繰り返した後、水素を充填した風船を備え、反応容器内を1気圧の水素雰囲気下とした。
100oC加熱条件下で24時間攪拌を行った。反応溶液を室温に戻した後、反応混合物に酢酸エチルを加え、セライト濾過で触媒を除去した。得られた濾液の溶媒を減圧留去し、生成物3を含む固体を得た。得られた固体、および内部標準物質としてフェノールを溶解させたメタノール溶液を調製し、この溶液のHPLC測定を行うことで、各生成物の収率を決定した。HPLC測定条件は下記の通りである。
HPLC Column: YMC-Pack ODS-A (4.6 x 250 mm), eluent: Methanol/H2O = 7/3, flow rate: 0.5 mL/min, Detection: 220 nm.
Retention time: 8.4 min (PhOH), 12.5 min (3), 16.6 min (2)
表2に示すように、実施例2、3で合成したパラジウム触媒1b、1cを用いて、実施例4と同様に、化合物2の還元反応を行った。
メタノール加温処理を用いないジメチルポリシラン-パラジウム/(活性炭・リン酸カルシウム)触媒の調製
全ての操作は大気下で行った。水素化ホウ素ナトリウム(19.0mg、0.5mmol)のジグリム(1.5mL)溶液が入ったナス型フラスコ(50mL)に、活性炭(0.675g、和光純薬工業株式会社製)、トルエン(15mL)を加えた。これに氷浴下で酢酸パラジウム(23.5mg、0.10mmol、アルドリッチ)のTHF(4mL)溶液を10分間(約1滴/秒)で滴下した。滴下終了後に氷浴を撤去し30分間室温で攪拌後、リン酸カルシウム(0.225g、和光純薬工業株式会社製)を加えた。30分間攪拌後、ポリジメチルシラン(0.10g、日本曹逹株式会社製、篩(300μm)処理)を加え、さらに30分間攪拌し、その後75oC(オイルバス)で加熱攪拌した。30分後攪拌を止め、オイルバスを除去した。内容物が冷えた後、固形物を桐山ロート(Φ40)で濾集し、アセトン(20mL×4回)、精製水(20mL×4回)、アセトン(20mL×1回)で洗浄した。得られた粉末を80oCで15時間減圧乾燥し、4kを黒色粉末として得た(0.98g)。
表3に示すように、酢酸パラジウム、ポリジメチルシラン、活性炭、リン酸カルシウムの比率を変えて、実施例17と同様にして、ジメチルポリシラン-パラジウム/(活性炭・リン酸カルシウム)触媒を合成した。得られた触媒をそれぞれ「触媒4a~4x」と呼ぶ。
表4に示すように、実施例4と同様の手順により、パラジウム触媒4a~4xを用いて1,4付加体2の還元反応を行った。
骨炭を用いたジメチルポリシラン-パラジウム/(活性炭・リン酸カルシウム)触媒の調製
全ての操作は大気下で行った。水素化ホウ素ナトリウム(95.1mg、2.5mmol)のジグリム(7.5mL)溶液が入ったナス型フラスコ(200mL)に、骨炭(4.5g)、トルエン(75mL)を加えた。これに氷浴下で酢酸パラジウム(117.7mg、0.52mmol、アルドリッチ)のTHF(20mL)溶液を10分間(約1滴/秒)で滴下した。滴下終了後に氷浴を撤去し30分間室温で攪拌後、ポリジメチルシラン(0.51g、日本曹逹株式会社製、篩(300μm)処理)を加え、75oC(オイルバス)で加熱攪拌した。30分後攪拌を止め、オイルバスを除去した。内容物が冷えた後、固形物を桐山ロート(Φ40)で濾集し、アセトン(20mL×4回)、精製水(20mL×4回)、アセトン(20mL×1回)で洗浄した。得られた粉末を80oCで15時間減圧乾燥し、5を黒色粉末として得た(4.92g)。
全ての操作は大気下で行った。水素化ホウ素ナトリウム(95.1mg、2.5mmol)のジグリム(7.5mL)溶液が入ったナス型フラスコ(200mL)に、活性炭(4.5g、和光純薬工業株式会社製)、トルエン(75mL)を加えた。これに氷浴下で酢酸パラジウム(117.7mg、0.52mmol、アルドリッチ)のTHF(20mL)溶液を10分間(約1滴/秒)で滴下した。滴下終了後に氷浴を撤去し30分間室温で攪拌後、ポリジメチルシラン(0.51g、日本曹逹株式会社製、篩(300μm)処理)を加え、75oC(オイルバス)で加熱攪拌した。30分後攪拌を止め、オイルバスを除去した。内容物が冷えた後、固形物を桐山ロート(Φ40)で濾集し、アセトン(20mL×4回)、精製水(20mL×4回)、アセトン(20mL×1回)で洗浄した。得られた粉末を80oCで15時間減圧乾燥し、6を黒色粉末として得た(4.92g)。
表5に示すように、実施例4と同様の手順により、パラジウム触媒5、6を用いて1,4付加体2の還元反応を行った。
点の右上の数字は収率であり、()内の値はMeOH加温処理した触媒(実施例1~3)を用いた場合の化合物3の収率である。
点線で示してあるのは、原点を通過する傾きAC/CPの直線、Pd/AC、Pd/CPを同一のパラジウム坦持量で繋いだ曲線である。
パラジウム坦持量、およびAC/CP比が下記の範囲の場合、PDMSi-Pd/AC-CPの触媒活性は極大となり得ることが分かる。
0.08<(パラジウム坦持量(mmol/g))<0.1、2.0<(AC/CP比)<4.0
Claims (7)
- ポリシラン、パラジウム、活性炭及びリン酸カルシウムを含有し、該パラジウムが活性炭及びリン酸カルシウムに担持された、ニトロ化合物の水素化反応に用いられる固定化パラジウム触媒であって、
パラジウム坦持量が0.05~0.15mmol/gであり、活性炭/リン酸カルシウムの質量比が1.0~6.0の範囲にある、該固定化パラジウム触媒。 - ポリシランがポリジメチルシランである、請求項1に記載の固定化パラジウム触媒。
- 前記パラジウムは、還元剤により還元処理された、請求項1又は2に記載の固定化パラジウム触媒。
- 請求項1~3に記載の固定化パラジウム触媒を、ニトロ化合物の水素化反応に用いる方法。
- 以下の工程からなる、ニトロ化合物の水素化反応に用いられる固定化パラジウム触媒の調製方法。
(1)0~20℃で、活性炭、パラジウム塩又はパラジウム錯体、リン酸カルシウム、及び場合により還元剤を含む溶液又は分散液を調製する工程
(2)前記(1)で得られる溶液又は分散液に、ポリシランを添加する工程、及び
(3)前記(2)で得られる溶液又は分散液から不溶物を分離する工程。 - 前記工程(1)において、パラジウム塩又はパラジウム錯体を溶解させる溶媒を用いる、請求項5に記載の調製方法。
- 前記工程(2)において、ポリシランを添加後に、アルコールを添加し、50~80℃で加熱撹拌することを含む、請求項5又は6に記載の調製方法。
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SAITO, Y. et al.,Asian Journal of Organic Chemistry,2016年07月29日,Vol.5,pp.1124-1127,<DOI:10.1002/ajoc.201600279> |
化学大辞典 3,縮刷版,共立出版,p.656 |
石谷暖郎 ほか,ポリシラン-白金系触媒上でのニトロ基選択的水素化反応に及ぼす複合担体の効果,日本化学会第97春季大会(2017)講演予稿集(DVD),2017年03月03日,3F4-44 |
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