JP7095867B2 - 金属または金属塩の溶解用溶液およびその利用 - Google Patents

金属または金属塩の溶解用溶液およびその利用 Download PDF

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Description

本発明は、金属または金属塩の溶解用溶液、前記溶液と金属または金属塩とを含むめっき液、ならびに前記めっき液を用いためっき物の製造方法に関する。
めっき技術は、美術工芸品、宝飾品、食器等の装飾分野、コネクタ、スイッチ、ICリードフレーム等の電子部品分野、半導体分野等、表面加工に関する多くの分野で使用されている。
めっき技術で使用されるめっき液(「めっき浴」とも呼ばれる。)は、めっき金属の溶解度、析出速度、めっき物の品質等に影響を及ぼす。したがって、めっき液は、めっき技術において重要な要素の一つであり、適当なめっき液の使用が高品質のめっき物を得るために重要である。
しかし、従来のめっき液には、強酸、強アルカリ液等の危険物・劇薬、シアン化物等の毒物、高コストな有機化合物等が含まれており、工業上取扱いが困難なものが多いという問題があった。
また、従来のめっき液は、めっき液中における金属の十分な溶解度を得るために、錯形成剤の添加が行われることが多い。その結果、錯形成剤の添加自体による影響、例えば、窒素、炭素、硫黄等の混入による、生産性の低下およびめっき物の品質の低下が生じたり、めっき液の管理が困難になったりするという問題があった。
さらに、従来のめっき液は、それを用いてめっき処理を行った際に、水素生成等の副反応が生じることがある。その結果、主反応であるめっき物の生成に使われる電気量(電流効率)が低下するために、めっき物の生産性が低下するという問題があった。特に、クロムめっき等の場合には、吸蔵水素がクラック発生の直接原因となるために、得られためっき物のめっき皮膜の品質に影響が生じるという問題があった。
このような状況下、従来のめっき液に代わる代替のめっき液の研究が盛んに行われている。
代替のめっき液として、例えば、毒性のあるシアン化物を含まないめっき液(非特許文献1)、イオン液体(非特許文献2)等が報告されている。
縄舟秀美ら、表面技術、52巻、11号、768~772頁、2001年 Sherif Zein El Abedin et al., Electrochimica Acta 54, 5673-5677, 2009
しかしながら、上記の代替めっき液は、なお、上記の課題を克服するのには十分ではなく、さらなる代替のめっき液の開発が望まれている。
本発明の一態様は、改善された新規の金属または金属塩の溶解用溶液、前記溶液を含むめっき液等を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(1)特定の性質を有する溶質が溶解した、高濃度のアニオン(例えば、ハロゲン化物イオン)を含む溶液が、金属または金属塩の高い溶解度を示すこと、および(2)前記溶液に金属または金属塩を溶解させためっき液を用いて、めっき処理が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の一態様は以下の構成を包含する。
〔1〕(a)酸化側の分解電位が+1.23V vs.SHE以上である、および(b)還元側の分解電位が0V vs.SHE以下である、の少なくとも一つの性質を有する溶質が溶解した金属または金属塩の溶解用溶液であり、前記溶質に由来するアニオンを1mol/kg以上含むことを特徴とする、溶液。
〔2〕前記溶質の飽和水溶液の相対湿度が純水に対して90%以下であることを特徴とする、〔1〕に記載の溶液。
〔3〕前記アニオンの濃度が、2mol/kg以上、20mol/kgより低い濃度であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の溶液。
〔4〕前記アニオンが、ハロゲン化物イオンであることを特徴とする、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の溶液。
〔5〕前記ハロゲン化物が、ハロゲン化カルシウムであることを特徴とする、〔4〕に記載の溶液。
〔6〕前記ハロゲン化カルシウムが、4水和物より大きく36水和物以下のハロゲン化カルシウムであることを特徴とする、〔5〕に記載の溶液。
〔7〕〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の溶液と、前記溶液に溶解した金属または金属塩とを含むことを特徴とする、めっき液。
〔8〕前記金属が、難溶性の塩を形成する金属、標準水素電極電位を基準として活量1のプロトンが分解する電位(0V)もしくはそれよりも低い電位でめっきが可能な金属、および標準水素電極電位を基準として+1.2V以下の電位でめっきが可能な金属の少なくとも1つであることを特徴とする、〔7〕に記載のめっき液。
〔9〕前記金属が、Ag、Pb、Bi、Cu、Hg、Tl、Al、As、Ba、Be、B、Ca、Cd、Ce、Co、Cr、Cs、Eu、Fe、Ga、Gd、Ge、Hf、In、K、La、Li、Lu、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、P、Pb、Rb、S、Sb、Sc、Se、Si、Sm、Sn、Sr、Ta、Ti、V、W、Y、Yb、Zn、Zr、Au、PtおよびPdからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、〔7〕または〔8〕に記載のめっき液。
〔10〕〔7〕~〔9〕のいずれかに記載のめっき液に、めっき処理対象物を浸漬する工程を含むことを特徴とする、めっき物の製造方法。
本発明の一態様によれば、改善されためっき液を提供することができる。また、前記めっき液を用いて、めっき処理対象物のめっき処理を行うことができる。
図1(a)は、AgおよびPbの溶解度と、純水および無水塩化カルシウムの混合比との相関を示す図である。図1(b)は、AgClの溶解度と、無水塩化カルシウム、無水塩化カリウム、無水塩化ナトリウムまたは無水塩化リチウムの水溶液におけるClのモル数との相関を示す図である。換言すれば、純水、および無水塩化カルシウム、無水塩化カリウム、無水塩化ナトリウムまたは無水塩化リチウムの混合比(すなわち水和数)を、各水溶液におけるClのモル数に計算し直したものを横軸にして示した図である。図1(b)中、nは、CaCl・nHOの水和数を示す。 図2(a)は、Cr電析試験後の写真を示す図である。図2(b)は、電析試験時の電位の経時変化を示す図である。図2(c)は、Cr電析試験後のXRD解析の結果を示す図である。 図3(a)は、Ag置換めっき後の写真を示す図である。図3(b)は、Ag置換めっき後のXRD解析の結果を示す図である。図3(c)は、Ag製膜速度とめっき液のCaCl濃度との関係を解析した結果を示す図である。図3(d)は、Ag置換めっき後の走査型電子顕微鏡(SEM)による画像およびその画像範囲でのAgに関する元素マッピングをEDXにより行った結果を示す図である。 図4(a)は、Ag電気めっき試験後の写真を示す図である。図4(b)は、Ag電気めっき試験時の電位の経時変化を示す図である。図4(c)は、Ag電気めっき試験後のXRD解析の結果を示す図である。 図5(a)は、Ni電析試験後の写真を示す図である。図5(b)は、Ni電析試験時の電流密度の経時変化を示す図である。図5(c)は、Ni電析試験後のXRD解析の結果を示す図である。 図6(a)は、Sn電析試験後の写真を示す図である。図6(b)は、Sn電析試験時の電流密度の経時変化を示す図である。図6(c)は、Sn電析試験後のXRD解析の結果を示す図である。 図7(a)は、Bi電析試験後の写真を示す図である。図7(b)は、Bi電析試験後のXRD解析の結果を示す図である。 図8(a)は、Cu電析試験後の写真を示す図である。図8(b)は、Cu電析試験後のXRD解析の結果を示す図である。 図9(a)は、Mn電析試験後の写真を示す図である。図9(b)は、Mn電析試験後の走査型電子顕微鏡(SEM)による画像を示す図である。図9(c)は、図9(b)における画像範囲でのMnに関する元素マッピングをEDXにより行った結果を示す図である。 図10(a)は、Au電析試験後の写真を示す図である。図10(b)は、Au電析試験後のXRD解析の結果を示す図である。 図11(a)は、Pt電析試験後の写真を示す図である。図11(b)は、Pt電析試験後のXRD解析の結果を示す図である。 図12は、Pd置換めっき後の写真を示す図である。 図13(a)は、Pd電気めっき試験後の写真を示す図である。図13(b)は、Pd電気めっき試験後のXRD解析の結果を示す図である。 図14は、Ag置換めっきの局所アノード反応および局所カソード反応を解析するための電気化学測定試験によって得られた分極曲線を示す図である。得られた電流密度から初期めっき速度を見積ることができる。 図15は、Pt電極を用いて測定した高濃度のCaCl溶液(CaCl・6HO、CaCl・8HO、CaCl・10HO、CaCl・12HO)の電位窓(電気化学的安定性)を示す図である。 図16は、Pt電極を用いて測定した高濃度のKOAc水溶液の酸化側の電位窓およびNi電極を用いて測定した高濃度のKOAc水溶液の還元側の電位窓を示す図である。 図17(a)は、Pt電極を用いて測定したNaSO・10HOの還元側の電位窓を示す図である。図17(b)は、真鍮(Brass)電極を用いて測定したNaSO・10HOの還元側の電位窓を示す図である。 図18は、Pt電極を用いて測定した高濃度のCaCl、KOAc水溶液における酸化側の電位窓を示す図である。 図19は、Ni電極または真鍮(Brass)電極を用いて測定した高濃度のCaCl、NaSO、LiBr、KOAc、LiCl水溶液における還元側の電位窓を示す図である。
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
〔1.金属または金属塩の溶解用溶液〕
本発明の一実施形態において、(a)酸化側の分解電位が+1.23V vs.SHE以上である、および(b)還元側の分解電位が0V vs.SHE以下である、の少なくとも一つの性質を有する溶質が溶解し、かつ、高濃度の、前記溶質に由来するアニオンを含む、金属または金属塩の溶解用溶液(本明細書において、適宜「本発明の溶液」と呼ぶ。)を提供する。
本願の発明者は、めっき液に使用される溶液について詳細に検討を行った結果、以下の知見を得ることに成功した。
・特定の性質を有する溶質が溶解した、高濃度の、前記溶質に由来するアニオン(例えば、ハロゲン化物イオン)を含む溶液が、金属または金属塩の高い溶解度を示すこと。
・特定の性質を有する溶質が溶解した、高濃度の、前記溶質に由来するアニオン(例えば、ハロゲン化物イオン)を含む溶液を用いれば、溶液中に、強酸、強アルカリ液等の危険物・劇薬、シアン化物等の毒物、高コストな有機化合物、および/または錯形成剤を添加する必要がないこと。
・特定の性質を有する溶質が溶解した、高濃度の、前記溶質に由来するアニオン(例えば、ハロゲン化物イオン)を含む溶液を含むめっき液により、めっき処理対象物のめっき処理が可能であること。
本発明の溶液は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、以下に示す効果を奏する。
・本発明の溶液は、金属または金属塩を、めっき液として使用できる程度まで十分な量を溶解できる。特に、難溶性の金属塩、例えば、AgCl、PbCl、CuCl、CrCl、BiCl、TlCl等を、添加剤を加えることなく、十分量溶解できる。
・本発明の溶液を含むめっき液は、毒性がなく、比較的安価である。
・本発明の溶液は、錯形成剤を含む必要がないため、窒素、炭素、硫黄等の不純物の混入による生産性の低下および/またはめっき物の品質の低下を回避もしくは低減できる。
・本発明の溶液として高濃度のハロゲン化カルシウムを溶解させた溶液を用いた場合、これを含むめっき液は、溶媒分子がカルシウムイオンに配位し、安定化するため、めっき処理を行った際に、水素生成等の副反応が抑制され、その結果、めっき物の生産性が向上し、得られためっき物のめっき皮膜の品質への影響が低減される。
本発明の一実施形態において、本発明の溶液には、(a)酸化側の分解電位が+1.23V vs.SHE以上である、および(b)還元側の分解電位が0V vs.SHE以下である、の少なくとも一つの性質を有する溶質が溶解している。
本明細書において「酸化側の分解電位が+1.23V vs.SHE以上である、性質を有する溶質」とは、電位窓の測定において正の電流密度が顕著になる電位が+1.23V vs.SHE以上であるような溶液の性質を示す溶質を意味する。そのような溶質としては、例えば、CaCl、KOAc(酢酸カリウム)等が挙げられる。また、本明細書において「還元側の分解電位が0V vs.SHE以下である、性質を有する溶質」とは、電位窓の測定において負の電流密度が顕著になる(例えば、電流密度i=-0.1mA cm-2となる)電位が0V vs.SHE以下であるような溶液の性質を示す溶質を意味する。そのような溶質としては、例えば、CaCl、NaSO、LiBr、KOAc、LiCl等が挙げられる。さらに、上記の両方の性質を有する溶質としては、例えば、CaCl、KOAc等が挙げられる。
本発明の溶液は、上記(a)および/または(b)の性質を有する溶質が溶解していることにより、本発明の溶液が、ガス発生等の電気分解を起こしにくくなり、その結果、めっき処理対象物の電析にかかる電流効率が上昇する。
本明細書において「高濃度」とは、目的の金属または金属塩が十分に溶解できる程度に濃度が高いことを意味し、通常、1mol/kg以上の濃度である。したがって、本明細書において「高濃度のアニオン」と記載する場合は、溶液中のアニオンの濃度が、目的の金属または金属塩が十分に溶解できる程度に高いこと、すなわち、1mol/kg以上の濃度のアニオンを意味する。
本発明の溶液に含まれるアニオンは、(a)酸化側の分解電位が+1.23V vs.SHE以上である、および(b)還元側の分解電位が0V vs.SHE以下である、の少なくとも一つの性質を有する溶質に由来するものである。したがって、本発明の溶液に含まれるアニオンは、上記(a)および/または(b)の性質を有する溶質に由来するものであれば、特に限定されない。アニオンとしては、例えば、水酸化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、ハロゲン化物イオン等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、本発明の溶液は、前記溶質の飽和水溶液の相対湿度が純水に対して90%以下である。
本明細書において「溶質の飽和水溶液の相対湿度」は、純水と平衡する空気中に含み得る最大限の水分量(飽和水蒸気量)に対する、溶質の飽和水溶液と平衡する空気中に含み得る最大限の水分量(飽和水蒸気量)の割合を意味する。「溶質の飽和水溶液の相対湿度」は、当該技術分野において一般に知られたものであり、例えば、[Greenspan, Lewis. "Humidity fixed points of binary saturated aqueous solutions." Journal of research of the national bureau of standards 81.1 (1977): 89-96.]、[Guendouzi, M. EL, A. Mounir, and A. Dinane. "Water activity, osmotic and activity coefficients of aqueous solutions of Li2SO4, Na2SO4, K2SO4,(NH4)2SO4, MgSO4, MnSO4, NiSO4, CuSO4, and ZnSO4 at T= 298.15 K." The Journal of Chemical Thermodynamics 35.2 (2003): 209-220.]、[Rard, Joseph A., and Simon L. Clegg. "Critical Evaluation of the Thermodynamic Properties of Aqueous Calcium Chloride. 1. Osmotic and Activity Coefficients of 0 - 10.77 mol kg-1 Aqueous Calcium Chloride Solutions at 298.15 K and Correlation with Extended Pitzer Ion-Interaction Models." Journal of Chemical & Engineering Data 42.5 (1997): 819-849.]、[Lide, David R. "CRC handbook of physics and chemistry." CRC Press, Boca Raton, USA 76 (2001): 1995-1996.]等を参照することができる。
本発明の一実施形態において、溶質の飽和水溶液の相対湿度は、純水に対して90%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、50%以下であることが特に好ましく、30%以下であることがとりわけ好ましい。上記の範囲であると、本発明の一実施形態における効果を奏することができる。また、下限は特に限定されないが、例えば、3%以上である。
本発明の一実施形態において、溶質の飽和水溶液の相対湿度が純水に対して90%以下である、溶質としては、例えば、CsF(3.4%)、LiBr(6.4%)、ZnBr(7.8%)、KOH(8.2%)、NaOH(8.2%)、LiCl(11.3%)、CaBr(16.5%)、LiI(17.6%)、KCHCOO(22.5%)、CaCl(29.0%)、KF(30.9%)、MgCl(32.8%)、NaI(38.2%)、KCO(43.2%)、MgNO(52.9%)、NaBr(57.6%)、CoCl(64.9%)、KI(68.9%)、SrCl(70.9%)、NaNO(74.3%)、NaCl(75.3%)、NHCl(78.6%)、KBr(80.9%)、(NH)SO(81.0%)、KCl(84.3%)、Sr(NO(85.1%)、LiSO(85.3%)、NaSO(89.9%)等が挙げられる。また、本発明の一実施形態において、溶質の飽和水溶液の相対湿度が純水に対して70%以下である、溶質としては、例えば、CsF、LiBr、ZnBr、KOH、NaOH、LiCl、CaBr、LiI、KCHCOO、CaCl、KF、MgCl、NaI、KCO、MgNO、NaBr、CoCl、KI等が挙げられる。さらに、本発明の一実施形態において、溶質の飽和水溶液の相対湿度が純水に対して50%以下である、溶質としては、例えば、CsF、LiBr、ZnBr、KOH、NaOH、LiCl、CaBr、LiI、KCHCOO、CaCl、KF、MgCl、NaI、KCO等が挙げられる。また、本発明の一実施形態において、溶質の飽和水溶液の相対湿度が純水に対して30%以下である、溶質としては、例えば、CsF、LiBr、ZnBr、KOH、NaOH、LiCl、CaBr、LiI、KCHCOO、CaCl等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、アニオンの濃度は、2mol/kg以上、20mol/kgより低い濃度である。
本発明の一実施形態において、高濃度のアニオンは、濃度が、例えば、1mol/kg以上、20mol/kgより低い濃度であり、好ましくは、2mol/kg以上、20mol/kgより低い濃度である。アニオンの濃度が、1mol/kg未満であると、金属または金属塩の溶解度が減少する。また、アニオンの濃度が、20mol/kg以上であると、アニオンを含む溶液が常温で固体となり、めっき液の溶媒として適さない。
本発明の一実施形態において、上記アニオンは、ハロゲン化物イオンである。
本明細書において「ハロゲン化物」は、ハロゲンとそれより電気陰性度の低い元素とがイオン結合により結合した化合物(塩)を意味する。ハロゲン化物としては、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、アスタチン化物等が挙げられる。
また、本明細書において「ハロゲン化物イオン」は、負電荷を帯びたハロゲン原子のイオンを意味する。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン(F)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)、アスタチン化物イオン(At)等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、上記のハロゲン化物イオンを高濃度で含む溶液が使用される。
本明細書において「高濃度のハロゲン化物イオン」と記載する場合は、溶液中のハロゲン化物イオンの濃度が、目的の金属または金属塩が十分に溶解できる程度に高いこと、すなわち、1mol/kg以上の濃度のハロゲン化物イオンを意味する。
本発明の一実施形態において、高濃度のハロゲン化物イオンは、濃度が、例えば、1mol/kg以上、20mol/kgより低い濃度であり、好ましくは、2mol/kg以上、20mol/kgより低い濃度である。また、本発明の別の実施形態において、高濃度のハロゲン化物イオンは、濃度が、例えば、1mol/kg以上、18mol/kgより低い濃度であり、好ましくは、2mol/kg以上、18mol/kgより低い濃度であり、より好ましくは、7.2mol/L~12mol/Lの濃度であり、特に好ましくは、8mol/Lの濃度である。ハロゲン化物イオンの濃度が、上記範囲未満であると、金属または金属塩の溶解度が減少する。また、ハロゲン化物イオンの濃度が、上記範囲以上であると、ハロゲン化物イオンを含む溶液が常温で固体となり、めっき液の溶媒として適さない。
本発明の一実施形態において、高濃度のハロゲン化物イオンの濃度の範囲は、ハロゲン化物イオンの由来するハロゲン化物に応じて、変わり得る。例えば、ハロゲン化物イオンの由来がCaClである場合、高濃度のハロゲン化物イオンの濃度は、例えば、1mol/kg以上、20mol/kgより低い濃度であり、好ましくは、1mol/kg以上、18mol/kgより低い濃度であり、より好ましくは、2mol/kg以上、18mol/kgより低い濃度であり、特に好ましくは、7.2mol/kg~12mol/kgの濃度であり、とりわけ好ましくは、8mol/kgの濃度である。また、例えば、ハロゲン化物イオンの由来がKClである場合、高濃度のハロゲン化物イオンの濃度は、例えば、1mol/kg以上、20mol/kgより低い濃度であり、好ましくは、2mol/kg以上、10mol/kgより低い濃度であり、より好ましくは、6mol/kgの濃度である。また、例えば、ハロゲン化物イオンの由来がNaClである場合、高濃度のハロゲン化物イオンの濃度は、例えば、1mol/kg以上、20mol/kgより低い濃度であり、好ましくは、2mol/kg以上、10mol/kgより低い濃度であり、より好ましくは、5mol/kgの濃度である。また、例えば、ハロゲン化物イオンの由来がLiClである場合、高濃度のハロゲン化物イオンの濃度は、例えば、1mol/kg以上、20mol/kgより低い濃度であり、好ましくは、4mol/kg以上、20mol/kgより低い濃度であり、より好ましくは、10mol/kg以上、20mol/kgより低い濃度であり、特に好ましくは、17.5mol/kgの濃度である。
本発明の一実施形態において、本発明の溶液に含まれるハロゲン化物は、本発明の溶液に使用される溶媒(例えば、水)に対する溶解度の高いハロゲン化物であり、例えば、ハロゲン化カルシウム、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化バリウム等が挙げられる。すなわち、本発明の一実施形態において、本発明の溶液は、水和イオン状態の、高濃度のハロゲン化カルシウム、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化バリウム等を含む。本発明の溶液に含まれるハロゲン化物は、コストの観点から、ハロゲン化カルシウムであることが好ましい。
本明細書において「ハロゲン化カルシウム」は、ハロゲン化物イオンとカルシウムインとがイオン結合により結合した化合物(塩)を意味する。本発明の一実施形態において、ハロゲン化カルシウムは、CaF、CaCl、CaBr、CaI、CaAt等であり得る。
本発明の一実施形態において、ハロゲン化カルシウムは、例えば、4水和物より大きく72水和物以下のハロゲン化カルシウムであり、好ましくは、4水和物より大きく36水和物以下のハロゲン化カルシウムであり、より好ましくは、6水和物~10水和物のハロゲン化カルシウムであり、特に好ましくは、9水和物のハロゲン化カルシウムである。ハロゲン化カルシウムが、4水和物以下であると、ハロゲン化物イオンを含む溶液が常温で固体となり、めっき液の溶媒として適さない。また、ハロゲン化カルシウムが、72水和物より大きいと、金属または金属塩の溶解度が減少する。
本発明の一実施形態において、本発明の溶液は、金属または金属塩の溶解を促進するための補助剤を含んでいてもよい。補助剤としては、例えば、尿素、有機ハロゲン化物(例えば、ハロゲン化コリン、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化イミダゾリウム、ハロゲン化ピリジニウム、ハロゲン化ピロリジニウム、ハロゲン化ホスホニウム)等が挙げられる。また、本発明の溶液において許容される範囲内(すなわち、本発明の効果を奏する範囲内)で、酸、アルカリ等も補助剤として添加され得る。補助剤の濃度は、当分野で使用される通常の濃度であれば、特に限定されない。補助剤の濃度は、例えば、0.0001mol/kg~1mol/kg、好ましくは、0.001mol/kg~0.1mol/kgであり得る。
本発明の一実施形態において、本発明の溶液に使用される溶媒は、例えば、分子内に酸素原子を有する分子からなる溶媒であり、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、カルボン酸等が挙げられる。好ましくは、材料コスト、ハンドリングの容易さの観点から、水である。
本発明の一実施形態において、本発明の溶液は、例えば、めっき液、工業電解製錬、電池電解液等に使用され、好ましくは、後述するめっき液として使用される。
本発明の溶液において、溶液中に溶解した金属の濃度は、当分野において使用される任意の方法を用いて測定することができる。溶液中の金属濃度の測定は、例えば、誘導結合高周波プラズマ発光分光分析(ICP-AES)等を用いて行われる。ICP-AESは、当分野において使用される一般的な手法であり、例えば、実施例に記載の手順により行われる。
本発明の溶液において、該溶液に溶解する金属または金属塩は、以下の〔2.めっき液〕の項で説明する。
〔2.めっき液〕
本発明の一実施形態において、〔1.金属または金属塩の溶解用溶液〕の項に記載のいずれかの溶液と、前記溶液に溶解した金属または金属塩とを含む、めっき液(本明細書において、適宜「本発明のめっき液」と呼ぶ。)を提供する。
本発明のめっき液は、〔1.金属または金属塩の溶解用溶液〕に記載の効果を奏する。特に、本発明のめっき液は、強酸、強アルカリ液等の危険物・劇薬、シアン化物等の毒物、高コストな有機化合物、錯形成剤を含む必要がないため、毒性や不純物の混入がなく、比較的安価であるという効果を奏する。
本発明の一実施形態において、金属または金属塩は、本発明の溶液に溶解可能な金属または金属塩であれば、特に限定されない。
本発明の一実施形態において、金属は、難溶性の塩を形成する金属、標準水素電極電位を基準として活量1のプロトンが分解する電位(0V)もしくはそれよりも低い電位でめっきが可能な金属、および標準水素電極電位を基準として+1.2V以下の電位でめっきが可能な金属の少なくとも一つであってもよい。本明細書において「難溶性の塩を形成する金属」は、塩を形成した状態でその塩を水溶液に投入した際に、電離する金属イオン(陽イオン)モル濃度とアニオン(例えば、ハロゲン化物イオン)モル濃度との積で表される溶解度積が1×10-2以下となる金属である。そのような金属としては、例えば、Ag、Pb、Bi、Cu、Hg、Tl等が挙げられる。また、本明細書において「標準水素電極電位を基準として活量1のプロトンが分解する電位(0V)もしくはそれよりも低い電位でめっきが可能な金属」としては、例えば、Al、As、Ba、Be、B、Ca、Cd、Ce、Co、Cr、Cs、Eu、Fe、Ga、Gd、Ge、Hf、In、K、La、Li、Lu、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、P、Pb、Rb、S、Sb、Sc、Se、Si、Sm、Sn、Sr、Ta、Ti、V、W、Y、Yb、Zn、Zr等が挙げられる。このような金属は、めっき反応時に副反応として溶液の還元分解(例えば、水素発生)を伴うという性質を有する。Crに関して、6価Crは毒性があるため、3価Crが本発明の一実施形態において好適である。さらに、本明細書において「標準水素電極電位を基準として+1.2V以下の電位でめっきが可能な金属」として、例えば、Au、Pt、Pd等が挙げられる。このような金属は、めっき反応時に副反応として溶液の酸化分解(例えば、酸素発生)を伴うという性質を有する。
したがって、本発明の別の実施形態において、金属は、Ag、Pb、Bi、Cu、Hg、Tl、Al、As、Ba、Be、B、Ca、Cd、Ce、Co、Cr、Cs、Eu、Fe、Ga、Gd、Ge、Hf、In、K、La、Li、Lu、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、P、Pb、Rb、S、Sb、Sc、Se、Si、Sm、Sn、Sr、Ta、Ti、V、W、Y、Yb、Zn、Zr、Au、PtおよびPdからなる群より選択される少なくとも1つであり得る。
本発明の一実施形態において、金属塩は、上記の金属を含む金属塩であり得る。
本発明の一実施形態において、金属塩は、上記の金属を含むハロゲン化金属であり得るが、これらに限定されない。ハロゲン化金属としては、例えば、CrCl(CrCl・6HO)、CuCl、CuCl、SnCl、BiCl、MnCl、NaAuCl(NaAuCl・2HO)、KPtCl、AgCl、AgBr、AgI、CuBr、CrBr、NaAuBr、KPtBr等が挙げられる。とりわけ、AgBr、AgI、CuBr、CrBr、NaAuBr、KPtBr等のClよりもイオンサイズが大きいハロゲンは、金属カチオンとの電離度が高くなるために塩としての溶解度が大きくなるという利点があり、好適である。
本発明の一実施形態において、本発明のめっき液に含まれる金属は、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。本発明のめっき液に複数種類の金属が含まれる場合、例えば、2種類、3種類、4種類、5種類以上の金属を含んでもよい。また、本発明のめっき液に複数種類の金属が含まれる場合、その金属の組み合わせは特に限定されず、めっきの目的に応じて適宜設定し得る。
本発明のめっき液に含まれる金属の濃度は、めっき液として使用するのに一般的な濃度であれば、特に限定されない。本発明のめっき液に含まれる金属の濃度は、銀の場合、例えば、1g/kgHO~8g/kgHOであり、好ましくは、4g/kgHOである。
本発明のめっき液に含まれる溶液は、〔1.金属または金属塩の溶解用溶液〕の項に記載の溶液が使用される。
本発明の一実施形態において、本発明のめっき液は、さらに添加剤として、光沢剤、平滑剤、液pHを安定化するpH緩衝剤、無電解めっき用の還元剤・触媒、めっき液の導電性を向上する支持電解質を含み得る。これらの添加剤を含むことにより、Cr-P-C、Co-P、Ni-P、Ni-B等の新たな合金を形成し得る。
上述の通り、本発明の溶液として、高濃度のハロゲン化カルシウムを溶解させた溶液を用いた場合には、めっき処理時に水素生成等の副反応が抑制される。ここで、一般に、硬質クロムをめっきする場合には、めっき処理時に、一定量の水素生成や、一定量の炭素源および硫黄源の添加が必要とされる。したがって、本発明の一実施形態において、硬質クロムをめっきする場合には、本発明の溶液を直接用いるのみならず、本発明の溶液として、めっき処理時に一定量の水素、炭素、硫黄を生成できるような追加の薬剤を添加した溶液を用いることもできる。そのような薬剤としては、例えば、水素源としては塩酸、硫酸、酢酸等が、炭素・硫黄源としてはサッカリン、チオール、ジスルフィド、チオ尿素、エチレンチオ尿素等が挙げられる。
本発明のめっき液は、〔1.金属または金属塩の溶解用溶液〕の項に記載の溶液に、金属または金属塩を添加して混合することにより、作製することができる。本発明のめっき液は、例えば、後述する実施例に記載の方法により作製することができるが、これらに限定されない。
本発明のめっき液中の金属濃度の測定は、〔1.金属または金属塩の溶解用溶液〕の項に記載の溶液の測定方法と同様の方法により行うことができる。
〔3.めっき物の製造方法〕
本発明の一実施形態において、〔2.めっき液〕の項に記載のめっき液に、めっき処理対象物を浸漬する工程を含む、めっき物の製造方法(本明細書において、適宜「本発明の製造方法」と呼ぶ。)を提供する。
本発明の製造方法は、〔1.金属または金属塩の溶解用溶液〕に記載の効果を奏する。特に、本発明の製造方法は、錯形成剤を含む従来のめっき液を用いる場合と比較して、高い生産性を有し、品質が向上しためっき物が得られるという効果を奏する。
本発明の製造方法におけるめっきは、当分野で使用される任意の方法を用いて行うことができる。例えば、表面技術 Vol.41, No12, 1990 p.1265-1338に記載の方法が用いられる。めっき方法は、電気めっきであってもよいし、無電解めっき(置換型めっき、自己触媒型めっき等)であってもよい。また、めっき方法は、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、グラフェン等の炭素材料、WC、MoS、Al、TiN等の硬質材料、PTFE等の潤滑材料等との複合めっきであってもよい。
本発明の一実施形態において、めっき液は、〔2.めっき液〕の項で記載されたものが使用される。
本発明の一実施形態において、めっき処理対象物は、めっき処理が可能な基材であれば、特に限定されない。めっき処理対象物としては、例えば、Cu、Pt、真鍮、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鋼、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、プリント配線板、粉体、樹脂(例えば、エンジニアリングプラスチック)、ガラス、シリコン、セラミックス、繊維状物質等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、めっき処理対象物の浸漬は、当分野における任意の方法により行われ得る。
本発明の一実施形態において、浸漬しためっき処理対象物を、めっき液から取り出すことにより、めっき処理対象物の表面にめっき処理が施されためっき物を得ることができる。
本発明の一実施形態において、得られためっき物を、さらに後処理することができる。めっき物の後処理としては、例えば、変色防止剤のコーティング処理、熱処理、潤滑油塗布処理、水素チャージ処理等が挙げられる。これらの後処理を行うことにより、めっき物の表面に追加の機能が付与され、品質が向上する等のさらなる効果を奏する。
本発明の製造方法により得られためっき物は、エックス線回折(XRD)、蛍光エックス線分光(XRF)、エックス線光電子分光(XPS、ESCAとも呼ばれる)、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、エネルギー分散型エックス線(EDX)分析、目視等により確認することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))
イオン交換により得られたポリ容器中の純水に、純度95%の無水塩化カルシウム(和光純薬製)を加えた。純水と無水塩化カルシウムとの混合比は、物質量比で純水/無水塩化カルシウムをnとして、4≦n≦36の範囲とした。続いて、300rpmで10分間撹拌し、無水塩化カルシウムを溶解させ、高濃度のCaCl液を得た。その後、使用まで密封して保管した。
(2.高濃度CaCl溶液の調製(2))
イオン交換により得られたポリ容器中の純水に、純度95%の無水塩化カルシウム(和光純薬製)を加えた。純水と無水塩化カルシウムとの混合比は、物質量比で純水/無水塩化カルシウムをnとして、4≦n≦18の範囲とした。続いて、300rpmで72時間撹拌し、無水塩化カルシウムを溶解させ、高濃度のCaCl溶液を得た。その後、使用まで密封して保管した。
(3.高濃度KCl溶液の調製)
イオン交換により得られたポリ容器中の純水に、純度99.5%の無水塩化カリウム(和光純薬製)を加えた。純水と無水塩化カリウムとの混合比は、物質量比で純水/無水塩化カリウムをnとして、0≦n≦5の範囲とした。続いて、300rpmで72時間撹拌し、無水塩化カリウムを溶解させ、高濃度のKCl溶液を得た。その後、使用まで密封して保管した。
(4.高濃度NaCl溶液の調製)
イオン交換により得られたポリ容器中の純水に、純度99.5%の無水塩化ナトリウム(和光純薬製)を加えた。純水と無水塩化ナトリウムとの混合比は、物質量比で純水/無水塩化ナトリウムをnとして、0≦n≦5の範囲とした。続いて、300rpmで72時間撹拌し、無水塩化ナトリウムを溶解させ、高濃度のNaCl溶液を得た。その後、使用まで密封して保管した。
(5.高濃度LiCl溶液の調製)
イオン交換により得られたポリ容器中の純水に、純度99.5%の無水塩化リチウム(和光純薬製)を加えた。純水と無水塩化リチウムとの混合比は、物質量比で純水/無水塩化リチウムをnとして、4≦n≦20の範囲とした。続いて、300rpmで72時間撹拌し、無水塩化リチウムを溶解させ、高濃度のLiCl溶液を得た。その後、使用まで密封して保管した。
(6.高濃度NaSO溶液の調製)
イオン交換により得られたポリ容器中の純水100mLに、純度99.5%の無水硫酸ナトリウム(和光純薬製)を78.9g加えた。続いて、300rpmで72時間撹拌し、無水硫酸ナトリウムを溶解させ、高濃度のNaSO溶液を得た。その後、使用まで密封して保管した。
(7.高濃度LiBr溶液の調製)
イオン交換により得られたポリ容器中の純水50mLに、純度99.5%の臭化リチウム一水和物(和光純薬製)を174.8g加えた。続いて、300rpmで72時間撹拌し、臭化リチウム一水和物を溶解させ、高濃度のLiBr溶液を得た。その後、使用まで密封して保管した。
(8.高濃度KOAc溶液の調製)
イオン交換により得られたポリ容器中の純水50mLに、純度99.5%の無水酢酸カリウム(和光純薬製)を128.0g加えた。続いて、300rpmで72時間撹拌し、無水酢酸カリウムを溶解させ、高濃度のKOAc溶液を得た。その後、使用まで密封して保管した。
(9.溶液中の金属濃度の測定方法)
誘導結合高周波プラズマ発光分光分析(ICP-AES)により、溶液中の金属濃度を測定した。具体的には、0.1mlの溶液を100mlメスフラスコに取り、60%硝酸1mlとチオ尿素2.5gを添加した。続いて、純水で定容して、濃度を1000倍に希釈した溶液を得た。この溶液中のAgおよびPbの濃度を求めて、得られた濃度より、希釈前の溶液のAgおよびPbの各濃度を求めた。濃度の測定には、エスアイアイ・ナノテクノロジー製のSPS3500(ICP発光分析装置)を用いた。
(10.置換めっき)
ハルセル銅板を1cm×5cmに切り、前処理として脱脂および酸活性処理を行った。この銅板を、常温のめっき液約20mLに浸漬し、置換めっきを行った。浸漬時間は、3分間であった。浸漬後、CaCl・10HO溶液で洗浄してめっき液を除去した後、水洗した。
(11.電気めっき)
作用極、対極および参照極を用いた3電極法により電圧を印加し、電気めっきを行った。作用極として、ハルセル銅板(Cu)または光沢Niめっきを施したハルセル真鍮板(Niめっき電極)または鉄板(Fe)を1cm×5cmに切り、前処理として脱脂および酸活性処理を施したものを用いた。対極として、Sn、Ni、Cr、CrおよびNiのめっきの場合にはIrO-Taをコーティングしたチタン板を、Ag、Bi、Cu、Mn、Pd、Au、Ptのめっきの場合には1cm×2cm×0.3cmの炭素電極(東洋炭素製)を用いた。参照極として、銀-塩化銀電極を用いた。これらを、40℃のめっき液約20mLに浸漬し、電気めっきを行った。
(12.CV測定)
3電極法によるサイクリック・ボルタンメトリー(CV)により、電位窓の測定を行なった。作用極として、3mmφのPtディスク電極またはハルセル真鍮板に前処理として脱脂および酸活性処理を施したのち光沢Niめっきを施した7.5mmφのNi電極または7.5mmφの真鍮(Brass)電極を用いた。対極として、1cm×2cm×0.3cmの炭素電極(東洋炭素製)を用いた。参照極として、銀-塩化銀(Ag/AgCl、3.3M KCl水溶液中)電極を用いた。電解液として、常温のCaCl・6HO、CaCl・8HO、CaCl・10HO、CaCl・12HOをそれぞれ約10mL用いた。電解装置は、バイオロジック製SP-50を用いた。電解条件は、掃引範囲-1V~+1.5V vs 3.3M KCl水溶液中のAg/AgClとし、掃引速度を1mV・sec-1、サイクル数を3とした。電極を電解液に浸漬し、CV測定を行った。標準水素電極基準への換算は、銀塩化銀電極で得られた値に、220mVを加えることにより行なった。
(13.XRD)
X線回折法を用いた結晶構造解析により試料相の同定を行った。X線回折装置としては、リガク製RINT2200HFを用いた。線源をCuとし、管電圧40kV、管電流30mAにてCuKα特性エックス線を発生させ、2θ-θ法により測定した。スキャンスピードは、1°min-1とした。
(14.走査型電子顕微鏡(SEM))
電析物の表面形状は、走査型電子顕微鏡(SEM、VE-8800型、キーエンス製)によって観察した。
(15.EDXマッピング)
電析物の構成元素の組成分布は、エネルギー分散型X線分光法(EDX、VE-9800型、AMETEK製)により解析した。
〔実施例1〕
(金属塩化物溶解試験(1))
高濃度CaCl溶液および高濃度KOAc溶液に各種金属塩化物を加え、各金属の溶解度を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))および(8.高濃度KOAc溶液の調製)に記載の方法により得られた100mLのCaCl溶液および100mLの高濃度KOAc溶液に、0.7g~20gの試験金属塩化物を加えて、300rpmで30分間撹拌した。試験は、空気雰囲気下、室温で行った。試験金属塩化物とその重量は、CrCl・6HO(20.0g)、CuCl(4.2g)、SnCl(3.2g)、BiCl(3.0g)、MnCl・4HO(7.2g)、PbCl(12.6g)、AgCl(0.7g)、CuCl(1.56g)、PdCl(0.83g)、NaAuCl・2HO(2.02g)、KPtCl(2.13g)、CrCl・6HO(20.0g)であり、これらを使用した(それぞれ、試験番号1~12とした)。
上記操作後に沈殿が確認された場合(試験番号2、6、7、8)は、フィルター濾過により、沈殿を除去して得られたろ液について、その液中の金属濃度を、(9.溶液中の金属濃度の測定方法)に記載の方法を用いて測定した。一方、上記操作後に沈殿が確認されなかった場合(試験番号1、3、4、5、9、10、11、12)は、フィルター濾過は行わずに、液中の金属濃度を(9.溶液中の金属濃度の測定方法)に記載の方法を用いて測定した(このとき、溶解度は、上記試験金属塩化物の添加量以上の値となった。)。結果を表1に示す。また、CaCl溶液としては、表1に記載のように、CaCl・6HOおよびCaCl・10HOを使用した。
Figure 0007095867000001
(結果)
溶液中の金属濃度は、試験番号1~5のいずれにおいても、20g/kgHOを超える高い濃度であった。また、試験番号6~8について、通常は難溶性とされるAg、CuおよびPbにおいても、それぞれ5g/kgHO、>10.1g/kgHOおよび93.7g/kgHOと高い濃度であった。さらに、試験番号9~12においても、10.1g/kgHOを超える高い濃度であった。これらは、めっき液として使用するのに十分な濃度であった。
〔実施例2〕
(金属塩化物溶解試験(2))
各種濃度のCaCl溶液に各種金属塩化物を加え、各金属の溶解度を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl溶液に、表4に記載の金属濃度相当の試験金属塩化物を加えて、30℃、300rpmで12時間撹拌した。試験は、空気雰囲気下、室温で行った。試験金属塩化物には、AgClおよびPbClを使用した。CaCl溶液としては、AgClの場合には、CaCl・6HO、CaCl・8HO、CaCl・9HO、CaCl・10HO、CaCl・12HO、CaCl・18HO、CaCl・20HO、CaCl・22HO、CaCl・24HO、CaCl・36HOを使用した。また、PbClの場合には、CaCl・6HO、CaCl・8HO、CaCl・9HO、CaCl・10HO、CaCl・12HO、CaCl・14HOを使用した。上記操作後に沈殿が確認された場合は、フィルター濾過により、沈殿を除去した。
その後、溶液中のAgおよびPbの濃度を、(9.溶液中の金属濃度の測定方法)に記載の方法を用いて測定した。結果を表2および3、ならびに図1(a)に示す。
Figure 0007095867000002
Figure 0007095867000003
(結果)
Agは、6HO~36HOの高濃度のCaClの水和物溶液に溶解することが分かった。また、Agは、CaCl・9HOのときに最大の溶解度を示すことが分かった。一方、Pbは、CaCl・6HOのときに最大の溶解度を示すことが分かった。
なお、CaClを含まない水溶液におけるAgおよびPbの溶解度は、表1に記載していないが、例えば、CRC Handbook of Chemistry and Physics, David R. Lide Editors-In-Chief, 84th edition 2003-2004, CRC Pressに記載の溶解度積から算出すると、AgおよびPbの溶解度は、それぞれ1.4×10-3g/kgHOおよび5.3g/kgHOとなる。したがって、本発明の一態様における高濃度のCaClの効果によって、AgおよびPbの溶解度が少なくとも17倍、多い場合には3900倍にも向上することが分かった。
〔実施例3〕
(金属塩化物溶解試験(3))
各種濃度のCaCl溶液、KCl溶液、NaCl溶液およびLiCl溶液に、AgClを加え、Agの溶解度を検討した。
具体的には、(2.高濃度CaCl溶液の調製(2))、(3.高濃度KCl溶液の調製)、(4.高濃度NaCl溶液の調製)および(5.高濃度LiCl溶液の調製)に記載の方法により得られた100mLの各溶液(それぞれ、CaCl溶液、KCl溶液、NaCl溶液およびLiCl溶液)に、表4に記載の金属濃度相当のAgClを加えて、30℃、300rpmで72時間撹拌した。試験は、空気雰囲気下、室温で行った。CaCl溶液としては、CaCl・4HO、CaCl・4.5HO、CaCl・5HO、CaCl・5.5HO、CaCl・6HO、CaCl・9HO、CaCl・11HO、CaCl・12HO、CaCl・14HO、CaCl・18HOを使用した。KCl溶液としては、KCl・10HO、KCl・20HOを使用した。NaCl溶液としては、NaCl・10HO、NaCl・20HOを使用した。
LiCl溶液としては、LiCl・4HO、LiCl・8HO、LiCl・12HO、LiCl・17.5HO、CaCl・20HOを使用した。
上記操作後に沈殿が確認された場合は、フィルター濾過により、沈殿を除去した。
その後、溶液中のAgの濃度を、(9.溶液中の金属濃度の測定方法)に記載の方法を用いて測定した。結果を図1(b)に示す。
(結果)
Agは、高濃度のCaCl溶液、KCl溶液、NaCl溶液およびLiCl溶液のいずれにおいても溶解することが分かった。また、KCl溶液は、他の溶液よりも低い濃度で、Agの高い溶解度を示すことが分かった。それ故、KCl溶液は、溶液中に高濃度の塩化物イオンが含まれないことが好ましい合金等のめっき液として、利用され得ることが見込まれる。
〔実施例4〕
(金属めっき試験(1))
高濃度のCaCl溶液に各種金属が溶解しためっき液を用いてめっき試験を行い、その結果を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl溶液に、表4に記載の金属濃度相当の試験金属塩化物を加えて、30℃、300rpmで、12時間撹拌した。試験金属塩化物には、AgCl、SnCl、NiCl、CrCl・6HO、CrCl・6HOとNiCl、BiCl、CuCl、MnCl、PdCl、NaAuCl・2HO、KPtCl、を使用した。また、CaCl溶液としては、表4に記載のように、CaCl・6HOおよびCaCl・10HOを使用した。
続いて、5Aろ紙(Whatman製)を用いた吸引ろ過により、上記で得られた溶液から残渣を除去し、めっき液とした。
めっき基板の前処理として、脱脂および酸活性処理を行った。脱脂処理として、エースクリーン850(奥野製薬工業製)水溶液50g/Lを用いて、55℃で10分間、浸漬を行った。浸漬後、純水洗浄を行った。続いて、酸活性処理として、トップサン(奥野製薬工業製)水溶液50g/Lを用いて、室温(約25℃)で1分間、浸漬を行った。浸漬後、純水洗浄を行った。
前処理後のめっき基板を上記のめっき液に浸漬し、置換めっきまたは電気めっきを行った。置換めっきおよび電気めっきは、それぞれ、(10.置換めっき)および(11.電気めっき)に記載の方法により行った。
その後、目視により、得られためっき物表面の外観を評価した。結果を表4に示す。
Figure 0007095867000004
(結果)
試験を行ったすべてのめっき液は、めっき対象物(基板)をめっきする能力を有することが分かった。
〔実施例5〕
(金属めっき試験(2))
高濃度のCaCl溶液にCrが溶解しためっき液を用いてめっき試験を行い、その結果を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl・6HO溶液に、20gのCrCl・6HOを加えて、40℃、300rpmで、24時間撹拌したものを、めっき液とした。
めっき基板の前処理として、脱脂および酸活性処理を行った。脱脂および酸活性処理は、実施例4と同様の方法で行った。前処理後のめっき基板および上記のめっき液を用いて、(11.電気めっき)に記載の方法により、Cr電析試験を行った。試験後のめっき物について、(13.XRD)に記載の方法により解析を行った。結果を図2に示す。
(結果)
本発明の一態様におけるCrめっき液は、良好なめっき能力を有することが分かった。特に、XRDの結果(図2(c))、めっきされたCrは良好な結晶性を有することが分かった。
〔実施例6〕
(金属めっき試験(3))
<置換めっき>
高濃度のCaCl溶液にAgが溶解しためっき液を用いてめっき試験を行い、その結果を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl・6HO溶液に、0.4gのAgClを加えて、40℃、300rpmで、24時間撹拌したものを、めっき液とした。
めっき基板の前処理として、脱脂および酸活性処理を行った。脱脂および酸活性処理は、実施例4と同様の方法で行った。前処理後のめっき基板および上記のめっき液を用いて、(10.置換めっき)に記載の方法により、表4に記載の条件の下で、Ag置換めっき試験を行った。試験後のめっき物について、(13.XRD)および(14.走査型電子顕微鏡(SEM))に記載の方法により解析を行った。また、結果を図3に示す。
また、上記Ag置換めっきにおいて、置換めっきによるAgめっき膜の製膜速度を測定した。製膜速度の測定は、置換めっき中の基板の重量変化を水晶振動子マイクロバランス法(QCM法)により測定することにより行った。QCM法測定装置は、セイコーイージーアンドジー製のQuartz Crystal Analyzer QCA922を用いた。また、QCM電極は、Cu薄膜が水晶振動子上に形成されたQA-A9M-CU(M)(セイコーイージーアンドジー製)を用いた。
具体的には、実施例2で得られた、高濃度のCaCl溶液にAgが飽和溶解しためっき液を、QCM電極上に0.5mL滴下し、時間ごとの電極重量をモニターした。電極重量変化が一定になった時点で、時間あたりの電極重量変化からAg製膜速度を算出した。さらに、Ag製膜速度とめっき液のCaCl濃度との関係を解析した。結果を図3(c)に示す。
<電気めっき>
高濃度のCaCl溶液にAgが溶解しためっき液を用いてめっき試験を行い、その結果を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl・6HO溶液に、0.4gのAgClを加えて、40℃、300rpmで、24時間撹拌したものを、めっき液とした。
めっき基板の前処理として、脱脂および酸活性処理を行った。脱脂および酸活性処理は、実施例4と同様の方法で行った。前処理後のめっき基板および上記のめっき液を用いて、(11.電気めっき)に記載の方法により、表4に記載の電解条件の下で、Ag電気めっき試験を行った。結果を図4に示す。
(結果)
本発明の一態様におけるAgめっき液は、置換めっきおよび電気めっきの両方において、良好なめっき能力を有することが分かった。これは、本発明の一態様におけるAgめっき液が、めっき方法に関わらず、良好なめっき能力を有することを示唆する。
また、置換めっき試験の結果から、本発明の一態様におけるAgめっき液は、従来技術と遜色のないめっき速度を有することが分かった。
〔実施例7〕
(金属めっき試験(4))
高濃度のCaCl溶液にNiが溶解しためっき液を用いてめっき試験を行い、その結果を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl・6HO溶液に、1.1gのNiClを加えて、40℃、300rpmで、24時間撹拌した。続いて、5Aろ紙(Whatman製)を用いた吸引ろ過により、上記で得られた溶液から残渣を除去し、めっき液とした。
めっき基板の前処理として、脱脂および酸活性処理を行った。脱脂および酸活性処理は、実施例4と同様の方法で行った。前処理後のめっき基板および上記のめっき液を用いて、(11.電気めっき)に記載の方法により、表4に記載の電解条件の下で、Ni電析試験を行った。試験後のめっき物について、(13.XRD)に記載の方法により解析を行った。結果を図5に示す。
(結果)
本発明の一態様におけるNiめっき液は、良好なめっき能力を有することが分かった。特に、XRDの結果(図5(c))、めっきされたNiは良好な結晶性を有することが分かった。
〔実施例8〕
(金属めっき試験(5))
高濃度のCaCl溶液にSnが溶解しためっき液を用いてめっき試験を行い、その結果を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl・6HO溶液に、1.6gのSnClを加えて、40℃、300rpmで、24時間撹拌した。続いて、5Aろ紙(Whatman製)を用いた吸引ろ過により、上記で得られた溶液から残渣を除去し、めっき液とした。
めっき基板の前処理として、脱脂および酸活性処理を行った。脱脂および酸活性処理は、実施例4と同様の方法で行った。前処理後のめっき基板および上記のめっき液を用いて、(11.電気めっき)に記載の方法により、表4に記載の電解条件の下で、Sn電析試験を行った。試験後のめっき物について、(13.XRD)に記載の方法により解析を行った。結果を図6に示す。
(結果)
本発明の一態様におけるSnめっき液は、良好なめっき能力を有することが分かった。特に、XRDの結果(図6(c))、めっきされたSnは良好な結晶性を有することが分かった。
〔実施例9〕
(金属めっき試験(6))
高濃度のCaCl溶液にBiが溶解しためっき液を用いてめっき試験を行い、その結果を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl・10HO溶液に、1.51gのBiClを加えて、40℃、300rpmで、24時間撹拌した。続いて、5Aろ紙(Whatman製)を用いた吸引ろ過により、上記で得られた溶液から残渣を除去し、めっき液とした。
めっき基板の前処理として、脱脂および酸活性処理を行った。脱脂および酸活性処理は、実施例4と同様の方法で行った。前処理後のめっき基板および上記のめっき液を用いて、(11.電気めっき)に記載の方法により、表4に記載の電解条件の下で、Bi電析試験を行った。試験後のめっき物について、(13.XRD)に記載の方法により解析を行った。結果を図7に示す。
(結果)
本発明の一態様におけるBiめっき液は、良好なめっき能力を有することが分かった。特に、XRDの結果(図7(b))、めっきされたBiは良好な結晶性を有することが分かった。
〔実施例10〕
(金属めっき試験(7))
高濃度のCaCl溶液にCuが溶解しためっき液を用いてめっき試験を行い、その結果を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl・10HO溶液に、1.56gのCuClを加えて、40℃、300rpmで、24時間撹拌した。続いて、5Aろ紙(Whatman製)を用いた吸引ろ過により、上記で得られた溶液から残渣を除去し、めっき液とした。
めっき基板の前処理として、脱脂および酸活性処理を行った。脱脂および酸活性処理は、実施例4と同様の方法で行った。前処理後のめっき基板および上記のめっき液を用いて、(11.電気めっき)に記載の方法により、表4に記載の電解条件の下で、Cu電析試験を行った。試験後のめっき物について、(13.XRD)に記載の方法により解析を行った。結果を図8に示す。
(結果)
本発明の一態様におけるCuめっき液は、良好なめっき能力を有することが分かった。特に、XRDの結果(図8(b))、めっきされたCuは良好な結晶性を有することが分かった。
〔実施例11〕
(金属めっき試験(8))
高濃度のCaCl溶液にMnが溶解しためっき液を用いてめっき試験を行い、その結果を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl・10HO溶液に、2.29gのMnClを加えて、40℃、300rpmで、24時間撹拌した。続いて、5Aろ紙(Whatman製)を用いた吸引ろ過により、上記で得られた溶液から残渣を除去し、めっき液とした。
めっき基板の前処理として、脱脂および酸活性処理を行った。脱脂および酸活性処理は、実施例4と同様の方法で行った。前処理後のめっき基板および上記のめっき液を用いて、(11.電気めっき)に記載の方法により、表4に記載の電解条件の下で、Mn電析試験を行った。試験後のめっき物について、(14.走査型電子顕微鏡(SEM))および(15.EDXマッピング)に記載の方法により解析を行った。結果を図9に示す。
(結果)
本発明の一態様におけるMnめっき液は、良好なめっき能力を有することが分かった。
〔実施例12〕
(金属めっき試験(9))
高濃度のCaCl溶液にAuが溶解しためっき液を用いてめっき試験を行い、その結果を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl・10HO溶液に、2.02gのNaAuCl・2HOを加えて、40℃、300rpmで、24時間撹拌した。続いて、5Aろ紙(Whatman製)を用いた吸引ろ過により、上記で得られた溶液から残渣を除去し、めっき液とした。
めっき基板の前処理として、脱脂および酸活性処理を行った。脱脂および酸活性処理は、実施例4と同様の方法で行った。前処理後のめっき基板および上記のめっき液を用いて、(11.電気めっき)に記載の方法により、表4に記載の電解条件の下で、Au電析試験を行った。試験後のめっき物について、(13.XRD)に記載の方法により解析を行った。結果を図10に示す。
(結果)
本発明の一態様におけるAuめっき液は、良好なめっき能力を有することが分かった。特に、XRDの結果(図10(b))、めっきされたAuは良好な結晶性を有することが分かった。
〔実施例13〕
(金属めっき試験(10))
高濃度のCaCl溶液にPtが溶解しためっき液を用いてめっき試験を行い、その結果を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl・10HO溶液に、2.13gのKPtClを加えて、40℃、300rpmで、24時間撹拌した。続いて、5Aろ紙(Whatman製)を用いた吸引ろ過により、上記で得られた溶液から残渣を除去し、めっき液とした。
めっき基板の前処理として、脱脂および酸活性処理を行った。脱脂および酸活性処理は、実施例4と同様の方法で行った。前処理後のめっき基板および上記のめっき液を用いて、(11.電気めっき)に記載の方法により、表4に記載の電解条件の下で、Pt電析試験を行った。試験後のめっき物について、(13.XRD)に記載の方法により解析を行った。結果を図11に示す。
(結果)
本発明の一態様におけるPtめっき液は、良好なめっき能力を有することが分かった。特に、XRDの結果(図11(b))、めっきされたPtは良好な結晶性を有することが分かった。
〔実施例14〕
(金属めっき試験(11))
<置換めっき>
高濃度のCaCl溶液にPdが溶解しためっき液を用いてめっき試験を行い、その結果を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl・10HO溶液に、1.67gのPdClを加えて、40℃、300rpmで、24時間撹拌したものを、めっき液とした。
めっき基板の前処理として、脱脂および酸活性処理を行った。脱脂および酸活性処理は、実施例4と同様の方法で行った。前処理後のめっき基板および上記のめっき液を用いて、(10.置換めっき)に記載の方法により、表4に記載の条件の下で、Pd置換めっき試験を行った。結果を図12に示す。
<電気めっき>
高濃度のCaCl溶液にPdが溶解しためっき液を用いてめっき試験を行い、その結果を検討した。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られた100mLのCaCl・10HO溶液に、1.67gのPdClを加えて、40℃、300rpmで、24時間撹拌したものを、めっき液とした。
めっき基板の前処理として、脱脂および酸活性処理を行った。脱脂および酸活性処理は、実施例4と同様の方法で行った。前処理後のめっき基板および上記のめっき液を用いて、(11.電気めっき)に記載の方法により、表4に記載の電解条件の下で、Pd電気めっき試験を行った。結果を図13に示す。
(結果)
本発明の一態様におけるPdめっき液は、置換めっきおよび電気めっきの両方において、良好なめっき能力を有することが分かった。これは、本発明の一態様におけるPdめっき液が、めっき方法に関わらず、良好なめっき能力を有することを示唆する。
〔実施例15〕
(金属めっき試験(12))
回転電極(DYNAMIC ELECTRODE HR-201、北斗電工製)を用いた電気化学測定により、撹拌の有無がAgめっき速度へ与える影響について調べた。作用極には、CuディスクまたはPtディスク(純度99.95%、厚さ0.1mm、直径10mm、ニラコ製)を用いた。対極として、炭素電極(東洋炭素製)を用いた。参照極として、銀-塩化銀(Ag/AgCl、3.3M KCl水溶液中)電極を用いた。めっき液として、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られたCaCl・9HO溶液、または100mLのCaCl・9HO溶液に、0.4gのAgClを加えて、40℃、300rpmで、24時間撹拌したものを用いた。また、回転条件は、無回転または回転速度2000rpmで試験した。
CaCl・9HO中におけるCuディスクの溶解に相当する電流電位曲線と、Agを含むCaCl・9HO中におけるPtディスク上へのAgの析出に相当する電流電位曲線を比較し、それぞれの局所電流の大きさが一致する点から、めっき初期における置換めっき速度を推定できる。さらに、回転ありの条件は、基板へのAgイオン供給を増加させ、基板近傍のAgイオン濃度の回復を速めた状態に相当する。
(結果)
本発明の一態様におけるAgめっき液は、めっき初期において、めっき速度が速いことが分かった。また、基板へのAg供給を増加することにより、めっき速度が速まることが分かった。
〔実施例16〕
(溶液の物性試験(1))
高濃度CaCl溶液について、CV測定により、電位窓の測定を行った。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られたCaCl溶液を、(12.CV測定)に記載の方法を用いて、電位窓の測定を行った。CaCl溶液としては、CaCl・6HO、CaCl・8HO、CaCl・10HO、CaCl・12HOを含む溶液を用いた。結果を図15に示す。
(結果)
高濃度のCaCl溶液は、電位窓が広く、HOの活量が小さいことが分かった。これは、高濃度のCaCl溶液を用いてめっき処理を行った際に、酸素発生や水素発生等の副反応が抑制されることを示唆する。
〔実施例17〕
(溶液の物性試験(2))
高濃度KOAc溶液について、CV測定により、電位窓の測定を行った。
具体的には、(1.高濃度KOAc溶液の調製(7))に記載の方法により得られたKOAc溶液を、(12.CV測定)に記載の方法を用いて、電位窓の測定を行った。結果を図16に示す。
(結果)
高濃度のKOAc溶液は、電位窓が広く、HOの活量が小さいことが分かった。特に、高濃度において、還元側の電位窓が約0.2~0.3V広くなることが分かった。これは、高濃度のKOAc溶液を用いてめっき処理を行った際に、酸素発生や水素発生等の副反応が抑制されることを示唆する。
〔実施例18〕
(溶液の物性試験(3))
高濃度NaSO溶液について、CV測定により、電位窓の測定を行った。
具体的には、(6.高濃度NaSO溶液の調製)に記載の方法により得られたNaSO溶液を、(12.CV測定)に記載の方法を用いて、電位窓の測定を行った。NaSO溶液としては、NaSO・10HOを含む溶液を用いた。結果を図17に示す。
(結果)
高濃度のNaSO溶液は、電位窓が広く、HOの活量が小さいことが分かった。これは、高濃度のNaSO溶液を用いてめっき処理を行った際に、酸素発生や水素発生等の副反応が抑制されることを示唆する。
〔実施例19〕
(溶液の物性試験(4))
高濃度CaCl溶液、高濃度KOAc溶液、高濃度NaSO溶液、高濃度LiBr溶液、および高濃度LiCl溶液について、CV測定により、酸化側および還元側の電位窓の測定を行った。
具体的には、(1.高濃度CaCl溶液の調製(1))に記載の方法により得られたCaCl溶液、(8.高濃度KOAc溶液の調製)に記載の方法により得られたKOAc溶液、(6.高濃度NaSO溶液の調製)に記載の方法により得られたNaSO溶液、(7.高濃度LiBr溶液の調製)に記載の方法により得られたLiBr溶液、および(5.高濃度LiCl溶液の調製)に記載の方法により得られたLiCl溶液を、(12.CV測定)に記載の方法を用いて、電位窓の測定を行った。NaSO溶液としては、NaSO・10HOを含む溶液を用いた。LiBr溶液としては、LiBr・2.7HOを含む溶液を用いた。KOAc溶液としては、KOAc・2.1HOを含む溶液を用いた。LiCl溶液としては、LiCl・2.8HOを含む溶液を用いた。結果を図18および図19に示す。図18および図19には、実施例16の高濃度CaCl溶液および実施例17の高濃度KOAc溶液の結果についても、併せて記載した。
(結果)
高濃度のCaCl、KOAc、NaSO、LiBr、LiCl溶液は、電位窓が水の分解電位である±0~+1.23V vs.SHEよりも広く、HOの活量がより小さいことが分かった。これは、高濃度のCaCl、KOAc、NaSO、LiBr、LiCl溶液を用いてめっき処理を行った際に、酸素、塩素、臭素、水素発生等の副反応が、無添加の場合よりも抑制されることを示唆する。
本発明の一実施形態におけるめっき液は、改善された種々の特性を有するため、めっきを含む表面加工の分野において好適に利用することができる。

Claims (8)

  1. (a)酸化側の分解電位が+1.23V vs.SHE以上である、および(b)還元側の分解電位が0V vs.SHE以下である、の少なくとも一つの性質を有する溶質が溶解したハロゲン化金属塩の溶解用溶液であり、
    前記ハロゲン化金属塩を構成する金属が、以下の(1)~(2)のいずれかであり、
    (1)前記溶質が(a)酸化側の分解電位が+1.23V vs.SHE以上である場合、標準水素電極電位を基準として+1.2V以上の電位でめっきが可能な金属、
    (2)前記溶質が(b)還元側の分解電位が0V vs.SHE以下である場合、標準水素電極電位を基準として活量1のプロトンが分解する電位(0V)もしくはそれよりも低い電位でめっきが可能な金属、
    前記溶質に由来するアニオンを1mol/kg以上含み、
    前記アニオンが、ハロゲン化物イオンであり、
    前記溶液が、溶媒として水を含み、
    前記溶液は、電気めっきまたは無電解めっきに供されることを特徴とする、溶液。
    (但し、(i)前記溶質が塩化アンモニウムであり、かつ前記ハロゲン化金属塩が、塩化クロム、塩化アルミニウム、塩化スズ、塩化ニッケル、または塩化銅である場合、(ii)前記溶質がヨウ化カリウムであり、かつ前記ハロゲン化金属塩が、塩化スズ、塩化銀、またはヨウ化銀である場合、(iii)前記溶質が塩化カルシウムであり、かつ前記ハロゲン化金属塩が、塩化鉄である場合、(iv)前記溶質が塩化カルシウムであり、かつ前記ハロゲン化金属塩を構成する金属がコバルトである場合を除く。)
  2. 前記溶質の飽和水溶液の相対湿度が純水に対して90%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の溶液。
  3. 前記アニオンの濃度が、2mol/kg以上、20mol/kgより低い濃度であることを特徴とする、請求項1または2に記載の溶液。
  4. 前記溶質が、ハロゲン化カルシウムであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の溶液。
  5. 前記溶質が、4水和物より大きく36水和物以下のハロゲン化カルシウムであることを特徴とする、請求項4に記載の溶液。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の溶液と、前記溶液に溶解したハロゲン化金属塩とを含み、
    前記ハロゲン化金属塩を構成する金属が、以下の(1)~(2)のいずれかであり、
    (1)前記溶質が(a)酸化側の分解電位が+1.23V vs.SHE以上である場合、標準水素電極電位を基準として+1.2V以上の電位でめっきが可能な金属、
    (2)前記溶質が(b)還元側の分解電位が0V vs.SHE以下である場合、標準水素電極電位を基準として活量1のプロトンが分解する電位(0V)もしくはそれよりも低い電位でめっきが可能な金属であることを特徴とする、めっき液。
    (但し、(i)前記溶質が塩化アンモニウムであり、かつ前記ハロゲン化金属塩が、塩化クロム、塩化アルミニウム、塩化スズ、塩化ニッケル、または塩化銅である場合、(ii)前記溶質がヨウ化カリウムであり、かつ前記ハロゲン化金属塩が、塩化スズ、塩化銀、またはヨウ化銀である場合、(iii)前記溶質が塩化カルシウムであり、かつ前記ハロゲン化金属塩が、塩化鉄である場合、(iv)前記溶質が塩化カルシウムであり、かつ前記ハロゲン化金属塩を構成する金属がコバルトである場合を除く。)
  7. 前記金属が、Ag、Pb、Bi、Cu、Hg、Tl、Al、As、Ba、Be、B、Cd、Ce、Cr、Cs、Eu、Ga、Gd、Ge、Hf、In、K、La、Li、Lu、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、P、Rb、S、Sb、Sc、Se、Si、Sm、Sn、Sr、Ta、Ti、V、W、Y、Yb、Zn、Zr、Au、PtおよびPdからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項6に記載のめっき液。
  8. 請求項6または7に記載のめっき液に、めっき処理対象物を浸漬する工程を含むことを特徴とする、めっき物の製造方法。
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