JP7095527B2 - ゴルフボール - Google Patents
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Description
R=PL/CL/1000 …(1)
<測定条件>
測定モード:引張
測定温度:-50℃~150℃
昇温速度:4℃/分
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.1%
ナノインデンターを用いて測定した塗膜の押し込み深さの上限は、特に限定されないが、4000nm以下が好ましく、3000nm以下がより好ましく、2800nm以下がさらに好ましい。ナノインデンターを用いて測定した押し込み深さは、ゴルフボール本体に設けられた塗膜の物性を直接指標する。ナノインデンターを用いて測定した塗膜の押し込み深さが、1250nmより小さいとアプローチ(I#8含め)の打球感が悪くなる。また、4000nmより大きいと変形が大きくなりすぎ、タック感がのこりすぎてしまうからである。
なお、式(1)、(2)中、Rは、ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基を表わす。
本発明のゴルフボールの塗膜は、(B)ポリロタキサンを含有するポリオール組成物からなる主剤と、(A)ポリイソシアネート成分を含有するポリイソシアネート組成物からなる硬化剤とを含有する硬化型塗料組成物から形成されることが好ましい。本発明では、ポリロタキサンを含有するポリオール組成物と、ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート組成物とを区別するために、便宜上、それぞれ主剤および硬化剤と称している。しかし、主剤と硬化剤をそれぞれ、A剤、B剤と称してもよい。また、(B)ポリロタキサンを含有するポリオール組成物を硬化剤と称し、(A)ポリイソシアネート成分を含有するポリイソシアネート組成物を主剤と称することも任意である。
前記硬化型塗料組成物は、有機溶剤を分散媒とする溶剤系塗料であることが好ましい。ポリロタキサンが水に難溶であるために、有機溶剤を使用することが好ましいからである。好ましい溶剤としては、トルエン、イソプロピルアルコール、キシレン、メチルエチルケトン、メチルエチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブチルアルコール、酢酸エチルなどを挙げることができる。なお、溶剤は、主剤および硬化剤のいずれに配合してもよいが、均一に硬化反応をさせる観点から、主剤および硬化剤のそれぞれに配合することが好ましい。
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体を被覆する塗膜とを有するゴルフボールであれば、特に限定されない。ゴルフボール本体の構造は、特に限定されず、ツーピースゴルフボール、スリーピースゴルフボール、フォーピースゴルフボール以上のマルチピースゴルフボール、あるいは、糸巻きゴルフボールであってもよい。いずれの場合であっても、本発明を好適に適用できるからである。
本発明のゴルフボールが、スリーピース、フォーピースゴルフボール以上のマルチピースゴルフボールである場合には、コアと最外層カバーとの間に設ける中間層に使用する材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂;スチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ゴム組成物の硬化物などが挙げられる。ここで、アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンとα,β-不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものが挙げられる。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステンなどの重量調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。なお、中間層は、ゴルフボールの構成に応じて、内側カバー層や、外層コアと称される場合がある。
カバー用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore D」または「Shore A」を用いた。
塗膜の貯蔵弾性率E’(Pa)、損失弾性率E” (Pa)および損失正接(tan δ)を以下の条件で測定した。
装置:ユービーエム社製動的粘弾性測定装置Rheogel-E4000
測定サンプル:主剤および硬化剤を配合した塗料を40℃で4時間乾燥及び硬化をさせて、厚み0.11-0.14mmの塗膜フィルムを作製した。この塗膜フィルムから、幅4mm、クランプ間距離20mmになるように試料片を切り出した。
測定モード:引張
測定温度:-100℃~150℃
昇温速度:4℃/分
測定データ取り込み間隔:4℃
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.1%
押し込み深さの測定では、ゴルフボールを切断して、半球が得られる。この半球には 、ゴルフボールの中心を通過する断面が露出する。この断面は、塗膜の断面を含んでいる。クライオミクロトームにより、この半球の断面が水平とされる。この塗膜断面に、ナノインデンターの圧子が当てられ、断面に対して垂直な方向に押圧される。押圧により、圧子は進行する。圧子の荷重と進行距離とが計測される。測定時の条件は、以下の通りである。
・ナノインデンター:株式会社エリオニクスの「ENT-2100」
・温度:30℃
・圧子:バーコビッチ圧子(65.03° As(h)=26.43h2)
・分割数:500ステップ ステップインターバル:20msec (100mgf)
圧子の荷重は、50mgfに到達するまで、徐々に高められる。荷重が30mgfである ときの圧子の進行距離(nm)が、押し込み深さとして計測される。
塗膜の10%モジュラスは、JIS K7161(2014)に準じて測定した。具体的には、主剤(ポリオール組成物)および硬化剤(ポリイソシアネート組成物)を配合した塗料を40℃で4時間乾燥及び硬化をさせて塗膜(厚さ0.05mm)を作製した。この塗膜を、JIS K7127(1999)で規定された試験片タイプ2(平行部の幅10mm、標線間距離50mm)に打ち抜いて試験片を作製した。この試験片について、精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフ(登録商標))を用いて引張試験を行った。試験条件は、つかみ具間距離100mm、引張速度50mm/min、試験温度23℃とした。
ゴルフボールを半球状に切断し、半球上の塗膜断面をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-1000)を用いて観察し、塗膜の膜厚を求めた。
アマチュアゴルファー(上級者)10人により、サンドウエッジ(クリーブランドゴルフ社製CG15フォージドウエッジ(58°))を用いた実打テストを行った。フィーリング良好(フェースに乗っている感じがして良い、ひっかかる感じがして良い、スピンがきく感じがして良い、くっつく感じがして良い等)と答えた人数に基づいて、以下のように評価した。
◎:8人以上
○:5人~7人
△:3~4人
×:2人以下
ゴルフボールを、ヨードチンキ(ヨウ素を6質量%、ヨウ化カリウムを4質量%含有するエタノール溶液)を40倍に希釈したヨードチンキ水に30秒間浸漬して、取り出した。ゴルフボール表面に付着している余分なヨードチンキ水を拭きとった後、色差計(コニカミノルタ社製CM3500D)を用いて、浸漬前後のゴルフボールの色調(L,a,b)を測定し、色差(ΔE)を次式にて算出した。なお、色差(ΔE)の値が大きいほど、変色の度合いが大きいことを意味する。
ΔE=[(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2]1/2
評価基準
◎:ΔEが15以下
○:ΔEが15超20以下
×:ΔEが20超
サンドウェッジのクラブフェースの表面に、スリットを設けた濡れ紙を貼り付けて、ラフからのアプローチショットのコントロール性を評価した。この試験方法によりスピン量が高いゴルフボールは、ラフからのアプローチショットのコントロール性に優れる。具体的には、ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、サンドウェッジ(クリーブランドゴルフ社製の商品名「CG15フォードウェッジ」、ロフト角:52°)を装着した。図3に示すように、デュポン社製ソンタラ メンテナンスクロス 厚手(サイズ:56mm×56mm)に5mm間隔でスリットを設けて、水に浸漬した後、スリットがクラブフェースの溝に対して垂直になるように、クラブフェースの表面に濡れ紙を貼り付けた。この状態で、ヘッド速度16m/sでゴルフボールを打撃して、ス ピン量(rpm)を測定した。スピン量の測定は、打撃されたゴルフボールの連続写真を撮影することによって行った。各ゴルフボールについて 、各10回測定して得られたデータの平均値をそれぞれ算出した。
コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアまたはゴルフボールが縮む量)を測定した。
アマチュアゴルファー(上級者)10人により、ドライバー(ダンロップスポーツ社製、スリクソンZ-765)を用いた実打テストを行った。フィーリング良好(ソフトな感じがして良い、はじく感じがちょうど良い、手にくる振動がちょうど良い、ボールに負けずにしっかり打ててる感じがして良い、等)と答えた人数に基づいて、以下のように評価した。
◎:8人以上
○:5人~7人
△:3~4人
×:2人以下
(1)球状コアの作製
表1に示す配合のコア用ゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより直径39.7mmの球状コアを得た。
アクリル酸亜鉛:日本蒸留工業社製ZN-DA90S(10%ステアリン酸亜鉛コーティング)
酸化亜鉛:東邦亜鉛製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジフェニルジスルフィド:住友精化製
ジクミルパーオキサイド:日本油脂製、「パークミル(登録商標)D」
表2に示した配合の材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で200~260℃に加熱された。
ハイミラン1605:三井デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミランAM7329:三井デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミランAM7327:三井デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸-アクリル酸ブチル共重合体アイオノマー樹脂
上記で得たカバー用組成物を、前述のようにして得た球状コア上に直接射出成形することにより、カバーを形成した。成形用上下型は、半球状キャビティと、球状コアを支持する進退可能なホールドピンとを有している。カバー成形時には、上記ホールドピンを突き出し、球状コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に260℃に加熱したカバー用組成物を0.3秒で注入し、30秒間冷却してカバー(厚み1.45mm)を成形した。
表3に示した材料を配合して、塗料組成物No.1~No.8を調製した。前記で得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、スプレーガンで塗料を塗布し、40℃のオーブンで24時間塗料を乾燥させ、直径42.7mm、質量45.3gのゴルフボールを得た。塗膜の厚さは、18μmとした。塗装は、図4に示した回転体にゴルフボール本体を載置し、回転体を300rpmで回転させ、ゴルフボール本体からエアーガンを吹き付け距離(7cm)だけ離間させて上下方向に移動させながら行った。重ね塗りの各回のインターバルを1.0秒とした。エアーガンの吹付条件は、吹付エアー圧;0.15MPa、圧送タンクエアー圧;0.10MPa、1回の塗布時間;1秒、雰囲気温度;20℃~27℃、雰囲気湿度;65%以下の条件で塗装とした。得られたゴルフボールのスピン性能について評価した結果を併せて表4に示した。なお、各塗料から塗膜を作製し、動的粘弾性を測定した結果を図5~図12に示した。
主剤
ポリロタキサン:アドバンスト・ソフトマテリアル社製、「セルム(登録商標)スーパーポリマー SH3400P(シクロデキストリンの水酸基の少なくとも一部が、-O-C3H6-O-基を介して、カプロラクトン鎖によって変性されたポリロタキサン、直鎖状分子:ポリエチレングリコール、封鎖基:アダマンタン基、直鎖状分子の分子量:35,000、水酸基価:72mgKOH/g、全体分子量:重量平均分子量700,000)」
ポリカプロラクトンポリオール:ダイセル社製Placel 308
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体の変性物:日信化学工業社製、ソルバインAL(ヒドロキシル変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体)
変性シリコーン:Gelest社製、DBL-C31
溶剤:キシレン/メチルエチルケトン=70/30(質量比)の混合溶剤
ポリン#950:神東塗料社製、水酸基価128mgKOH/g、ポリオール成分(トリメチロールプロパン、ポリオキシテトラメチレングリコール)と、ポリイソシアネート成分(イソホロンジイソシアネート)とからなるウレタンポリオール
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体:旭化成ケミカルズ社製デュ
ラネートTKA-100(NCO含有率:21.7%)
ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット変性体:旭化成ケミカルズ社製デュラネート21S-75E(NCO含有率:15.5%)
イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体:デグサ社製VESTANAT T1890(NCO含有率:12.0%)
溶剤:メチルエチルケトン
Claims (14)
- ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体を被覆する塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の10%モジュラスは、75kgf/cm2以下であり、前記塗膜の動的粘弾性を測定して得られる150℃の貯蔵弾性率(E’150)が1.0×107Pa以上であり、ゴルフボール本体表面に設けられた状態で、ナノインデンターを用いて測定した塗膜の押し込み深さが、1250nm以上であり、前記ゴルフボールの直径は、40mm~45mmであり、ゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から、終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量が3.0mm超であることを特徴とするゴルフボール。
- 前記塗膜の動的粘弾性を測定して得られる損失正接のtanδのピーク温度が、60℃以下である請求項1に記載のゴルフボール。
- 前記塗膜の120℃での貯蔵弾性率(E’)が、1.0×107Pa以上である請求項1または2に記載のゴルフボール。
- 前記塗膜の10%モジュラスが、2kgf/cm2以上である請求項1~3のいずれか一項に記載のゴルフボール。
- 前記塗膜は、樹脂成分として、(A)ポリイソシアネート成分と、(B)ポリロタキサンを含有するポリオール成分とを構成成分として有するポリウレタンを含有するものである請求項1~4のいずれか一項に記載のゴルフボール。
- 前記ポリウレタンは、(B)ポリオール成分の水酸基(OH)に対する(A)ポリイソシアネート成分のイソシアネート基(NCO)のモル比が、0.95以上、2.0以下となるように反応させて得られるものである請求項5に記載のゴルフボール。
- 前記ポリロタキサンは、シクロデキストリンと前記シクロデキストリンの環状構造を串刺し状にする直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され、前記シクロデキストリンの脱離を防止する封鎖基とを有し、前記シクロデキストリンの水酸基の少なくとも一部が、-O-C3H6-O-基を介して、カプロラクトン鎖によって変性されているポリロタキサンである請求項5または6に記載のゴルフボール。
- 前記ポリロタキサンは、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、前記封鎖基がアダマンタン基である請求項7に記載のゴルフボール。
- (B)前記ポリオール成分は、さらにポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、アクリルポリオールよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項5~8のいずれか一項に記載のゴルフボール。
- (B)前記ポリオール成分中のポリロタキサンの含有率が、10質量%~100質量%である請求項5~9のいずれか一項に記載のゴルフボール。
- 前記塗膜は、樹脂成分として、さらに塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体および/またはその変性物を含有する請求項5~10のいずれか一項に記載のゴルフボール。
- 前記塗膜は、さらに変性シリコーンを含有する請求項5~11のいずれか一項に記載のゴルフボール。
- 前記塗膜の樹脂成分100質量部に対して、0.01質量部~10質量部の変性シリコーンを含有する請求項12に記載のゴルフボール。
- (A)前記ポリイソシアネート成分が、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体と、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体とを含有する請求項5~13のいずれか一項に記載のゴルフボール。
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