JP2024027875A - ゴルフボール - Google Patents

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JP2024027875A JP2022131046A JP2022131046A JP2024027875A JP 2024027875 A JP2024027875 A JP 2024027875A JP 2022131046 A JP2022131046 A JP 2022131046A JP 2022131046 A JP2022131046 A JP 2022131046A JP 2024027875 A JP2024027875 A JP 2024027875A
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泰雄 内藤
Yasuo Naito
雅之 大西
Masayuki Onishi
一喜 志賀
Kazuyoshi Shiga
貴司 梶川
Takashi Kajikawa
俊之 多羅尾
Toshiyuki Tarao
英高 井上
Hidetaka Inoue
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Abstract

【課題】アプローチショットのスピン性能(特にラフからの(芝を噛んだ条件での)アプローチスピン性能)に優れて生産性が良好なゴルフボールを提供する。【解決手段】本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の最外層が、基材樹脂として、ポリイソシアネート組成物と、ポリオール成分として、ヒドロキシ基を少なくとも2つ有するポリロタキサンを含有するポリオール組成物とを反応させてなるポリウレタンを含有し、前記塗膜の最外層の動的粘弾性を特定条件で測定して得られる-20℃での損失弾性率(E”-20)が、1.1×108Pa以上であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、塗膜を有するゴルフボールに関する。
従来、ゴルフボールには、ゴルフボール本体の表面に塗膜が形成されている。この塗膜を改良することで、アプローチショットのスピン性能を改良することが検討されている。
例えば、特許文献1には、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜は、シクロデキストリンと前記シクロデキストリンの環状構造を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され、前記シクロデキストリンの脱離を防止する封鎖基とを有するポリロタキサンであり、当該シクロデキストリンの水酸基の少なくとも一部が、-O-C-O-基を介して、カプロラクトン鎖によって変性されたポリロタキサンを含有する主剤と、ポリイソシアネートを含有する硬化剤とからなる硬化型塗料組成物から形成されたものであることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
特許文献2には、ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体を被覆する塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の動的粘弾性を測定して得られる損失正接tanδのピーク温度が50℃以下であり、ピーク高さが0.8未満であることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
<測定条件>
測定モード:引張
測定温度範囲:-100℃~150℃
昇温速度:4℃/分
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.1%
特許文献3には、カバーを有するゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体を被覆する塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の10%モジュラスは、75kgf/cm以下であり、前記塗膜の動的粘弾性を測定して得られる150℃の貯蔵弾性率(E’150)が1.0×10Pa以上であり、ゴルフボール本体表面に設けられた状態で、ナノインデンターを用いて測定した塗膜の押し込み深さが、1250nm以上であり、前記カバーの材料硬度が、ショアD硬度で50未満であることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
特許文献4には、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の最外層を構成する基材樹脂は、(A)ポリオール組成物と、(B)ポリイソシアネート組成物とを反応させてなるポリウレタンであり、前記ポリウレタンの動的粘弾性を下記条件で測定して得られる-50℃での損失弾性率(E”)が、1.00×10Pa以上であることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
<測定条件>
測定モード:正弦波引張
測定温度範囲:-120℃~100℃
昇温速度:3℃/分
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.05%
特許文献5には、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の少なくとも一層が、基材樹脂として、ポリイソシアネート組成物と、ポリオール成分としてヒドロキシ基を少なくとも2つ有するポリロタキサンとウレタンポリオールとを含有するポリオール組成物とを反応させてなるポリウレタンを含有し、前記ポリオール成分中のヒドロキシ基を少なくとも2つ有するポリロタキサンの含有率は、0質量%超、10質量%未満であることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
特開2016-093386号公報 特開2017-209298号公報 特開2019-097713号公報 特開2020-099669号公報 特開2021-137298号公報
アプローチスピン性能を向上させるために、様々な検討がされている。しかしながら、従来のゴルフボールは、必ずしもアプローチスピン性能が満足できるものではなく、さらなる改善の余地がある。また、アプローチショットでのスピン量を高めるには、塗膜を軟らかくして摩擦係数を高くすることが有効である。しかしながら、塗膜を軟らかくするとスピン性能は向上するが、ゴルフボール表面がべたつき、製造ラインを転がりにくくなる。そのため、生産性が低下したり、ゴルフボール表面が汚れやすくなるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、アプローチショットのスピン性能(特にラフからの(芝を噛んだ条件での)アプローチスピン性能)に優れ、かつ、生産性が良好なゴルフボールを提供することを目的とする。
上記課題を解決することができた本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の最外層が、基材樹脂として、ポリイソシアネート組成物と、ポリオール成分として、ヒドロキシ基を少なくとも2つ有するポリロタキサンを含有するポリオール組成物とを反応させてなるポリウレタンを含有し、前記塗膜の最外層の動的粘弾性を下記条件で測定して得られる-20℃での損失弾性率(E”-20)が、1.1×10Pa以上であることを特徴とする。
<測定条件>
測定モード:引張
測定温度範囲:-100℃~100℃
昇温速度:3℃/分
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.05%
本発明によれば、アプローチショットのスピン性能(特にラフからの(芝を噛んだ条件での)アプローチスピン性能)に優れ、かつ生産性が良好なゴルフボールを提供することができる。
本発明で使用するポリロタキサンの一例の分子構造を示す説明図。 本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図。 塗膜の膜厚の測定箇所を説明する模式断面図。 塗膜の膜厚の測定箇所を説明する模式断面図。 塗膜の損失弾性率と温度との関係を示すグラフ。
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の最外層(以下、「最外層塗膜」と呼ばれることがある。)が、基材樹脂として、ポリイソシアネート組成物と、ポリオール成分として、ヒドロキシ基を少なくとも2つ有するポリロタキサンを含有するポリオール組成物とを反応させてなるポリウレタンを含有し、前記塗膜の最外層の動的粘弾性を下記条件で測定して得られる-20℃での損失弾性率(E”-20)が、1.1×10Pa以上であることを特徴とする。
<測定条件>
測定モード:引張
測定温度範囲:-100℃~100℃
昇温速度:3℃/分
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.05%
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜を有する。塗膜が多層構造の場合、最も外側に位置する塗膜層が最外層塗膜である。塗膜が単層の場合、単層の塗膜が最外層塗膜である。
[塗膜の動的粘弾性]
本発明のゴルフボールの塗膜は、最外層の動的粘弾性を上記条件で測定して得られる-20℃での損失弾性率(E”-20)は、1.1×10Pa以上である。損失弾性率(E”-20)が1.1×10Pa以上であれば、アプローチショットのスピン性能(特にラフからの(芝を噛んだ条件での)アプローチスピン性能)が向上する。アプローチショットのスピン性能をより高めるという観点から、前記損失弾性率(E”-20)は、1.15×10Pa以上であることが好ましく、1.20×10Pa以上であることがより好ましく、1.25×10Pa以上であることがさらに好ましい。前記損失弾性率(E”-20)の上限は、特に限定されないが、1.0×10Pa以下であることが好ましく、8.0×10Pa以下であることがより好ましく、6.0×10Pa以下であることがさらに好ましく、2.0×10Pa以下であることが特に好ましい。
本発明のゴルフボールの塗膜は、最外層の動的粘弾性を上記条件で測定して得られる損失弾性率(E”)は、-50℃~0℃の測定温度範囲に少なくとも1つのピークを有することが好ましい。前記損失弾性率(E”)のピークは、特にマイナス温度領域にあることが好ましい。前記損失弾性率(E”)のピーク温度は、-50℃以上が好ましく、-40℃以上がより好ましく、-30℃以上がさらに好ましく、0℃以下が好ましく、-5℃以下がより好ましく、-10℃以下がさらに好ましい。損失弾性率(E”)のピーク温度が前記範囲内であれば、アプローチスピン性能が高くなるからである。
本発明のゴルフボールの塗膜は、最外層の動的粘弾性を上記条件で測定して得られる0℃での貯蔵弾性率(E’)は、0.5×10Pa以上であることが好ましく、2.0×10Pa以上であることがより好ましく、5.0×10Pa以上であることがさらに好ましく、15×10Pa以下であることが好ましく、14×10Pa以下であることがより好ましく、12×10Pa以下であることがさらに好ましい。貯蔵弾性率(E’)が前記範囲内であれば、アプローチショットのスピン性能がさらに向上するからである。
本発明のゴルフボールの塗膜は、最外層の動的粘弾性を上記条件で測定して得られる50℃での貯蔵弾性率(E’50)は、0.1×10Pa以上であることが好ましく、0.15×10Pa以上であることがより好ましく、0.2×10Pa以上であることがさらに好ましく、1.0×10Pa以下であることが好ましく、0.8×10Pa以下であることがより好ましく、0.5×10Pa以下であることがさらに好ましい。貯蔵弾性率(E’50)が前記範囲内であれば、アプローチショットのスピン性能がさらに向上するからである。
[塗膜の10%モジュラス]
前記塗膜の最外層の10%モジュラスは、5kgf/cm(0.49MPa)以上が好ましく、より好ましくは10kgf/cm(0.98MPa)以上、さらに好ましくは15kgf/cm(1.47MPa)以上であり、50kgf/cm(4.90MPa)以下が好ましく、より好ましくは40kgf/cm(3.92MPa)以下、さらに好ましくは30kgf/cm(2.94MPa)以下である。塗膜の最外層の10%モジュラスが5kgf/cm以上であれば、塗膜の粘着性が低く、汚れにくくなり、50kgf/cm以下であれば、塗膜の静摩擦力が大きくなり、ラフからの(芝を噛んだ条件での)アプローチショットのスピン量が増加する。
前記塗膜の動的粘弾性及び10%モジュラスは、塗膜を形成する塗料組成物から所定の条件にて測定用フィルムを作製し、この測定用フィルムの動的粘弾性及び10%モジュラスを測定する。測定用フィルムの作製方法および測定方法については、後述する。
[塗膜の厚み]
前記塗膜の最外層の厚さは、5μm以上が好ましく、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは9μm以上であり、40μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。前記塗膜の最外層の厚さが上記範囲内であれば、外観が良好であり、ゴルフボールの耐擦過傷性が優れ、かつ、アプローチ性能が良好となる。
本発明のゴルフボールの塗膜が多層構造を有する場合は、塗膜全体の厚さは、5μm以上が好ましく、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは9μm以上であり、50μm以下が好ましく、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。前記厚さが5μm以上であればアプローチショットでのスピン量が増加し、50μm以下であればドライバーショットでのスピン量を抑えることができる。
前記塗膜の動的粘弾性及び10%モジュラスなどは、塗膜の樹脂成分、配合量などによって制御できる。
[塗膜の基材樹脂]
本発明のゴルフボールにおいて、塗膜の最外層は、基材樹脂として、ポリイソシアネート組成物とポリオール組成物とを反応させてなるポリウレタンを含有する。ポリウレタンは、主鎖にウレタン結合を複数有するポリマーであることが好ましい。前記基材樹脂中の前記ポリウレタンの含有率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。基材樹脂が実質的に前記ポリウレタンのみからなることも好ましい態様である。
前記最外層塗膜は、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを含有する塗料から形成されることが好ましい。前記塗料としては、ポリオール組成物を主剤とし、ポリイソシアネート組成物を硬化剤とするいわゆる硬化型ウレタン塗料を例示することができる。
<ポリオール組成物>
本発明で使用するポリオール組成物は、ポリオール成分として、ヒドロキシ基を少なくとも2つ有するポリロタキサンを含有することが好ましい。ここで、ポリオールとは、例えば、分子中にヒドロキシ基を2つ以上有する化合物である。
(ヒドロキシ基を少なくとも2つ有するポリロタキサン)
本発明において、「ロタキサン」とは、少なくとも1個の環状分子と、前記環状分子の空洞部を貫通している軸分子とを有する構造を有する分子を意味する。軸分子に、前記環状分子が軸分子から脱離するのを封鎖する構造の有無を問わないものとする。軸分子が貫通している環状分子が2個以上の「ロタキサン」を「ポリロタキサン」と称する場合がある。軸分子が貫通している環状分子が2個以上である「ポリロタキサン」は、軸分子が貫通している環状分子が少なくとも1個以上である「ロタキサン」に含まれる。
本発明で使用するポリロタキサンは、ヒドロキシ基を少なくとも2つ有するものが好ましい。ポリイソシネートと反応してポリウレタンを形成することができるからである。
前記ヒドロキシ基を少なくとも2つ有するポリロタキサンは、シクロデキストリンと前記シクロデキストリンの環状構造を串刺し状にする直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され、前記シクロデキストリンの脱離を防止する封鎖基とを有し、前記シクロデキストリンのヒドロキシ基の少なくとも一部が、-O-C-O-基を介して、-(CO(CHO)nH(nは、10~100の自然数)で表されるカプロラクトン鎖によって変性されているものが好ましい。前記ポリロタキサンのシクロデキストリンが有するヒドロキシ基と、ポリイソシアネートのイソシアネート基とが反応してポリウレタンを形成する。
前記ポリロタキサンは、直鎖状分子に串刺し状に貫通されているシクロデキストリン分子が直鎖状分子に沿って移動可能(滑車効果)なために粘弾性を有し、張力が加わっても、この滑車効果によって当該張力を均一に分散させることができるので、従来の架橋ポリマーとは異なり、クラックや傷が極めて生じ難いという優れた性質を有している。
前記シクロデキストリンは、環状構造を有するオリゴ糖の総称である。シクロデキストリンは、例えば、6~8個のD-グルコピラノース残基がα-1,4-グルコシド結合により環状に結合したものである。シクロデキストリンとしては、α-シクロデキストリン(グルコース数:6個)、β-シクロデキストリン(グルコース数:7個)、γ―シクロデキストリン(グルコース数:8個)などが挙げられ、α-シクロデキストリンが好ましい。前記シクロデキストリンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記直鎖状分子としては、シクロデキストリンの環状構造を串刺し状に、滑動可能および回動可能に保持する直鎖状の分子であれば特に限定されない。前記直鎖状分子としては、ポリアルキレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリルなどが挙げられ、これらのなかでもポリエーテルが好ましく、ポリエチレングリコールが特に好ましい。ポリエチレングリコールは、立体障害が小さく、シクロデキストリンの環状構造を串刺し状に保持することができる。
前記直鎖状分子の重量平均分子量は、5,000以上が好ましく、6,000以上がより好ましく、100,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましい。
前記直鎖状分子は、その両末端に官能基を有することが好ましい。官能基を有することで、前記封鎖基と容易に反応させることができる。前記官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基などが挙げられる。
前記封鎖基は、直鎖状分子の両末端に配置され、シクロデキストリンが直鎖状分子から脱離することを防止できるものであれば特に限定されない。脱離を防止する方法としては、嵩高い封鎖基を用いて物理的に脱離を防止する方法、イオン性の封鎖基を用いて静電気的に脱離を防止する方法が挙げられる。前記嵩高い封鎖基としては、シクロデキストリン、アダマンチル基などが挙げられる。直鎖状分子に保持されるシクロデキストリンの個数(保持量)は、その最大保持量を1とすると、0.06~0.61が好ましく、0.11~0.48がより好ましく、0.24~0.41がさらに好ましい。0.06以上であれば、滑車効果が発現しやすくなり、0.61以下であれば、シクロデキストリンが密に配置されないので、シクロデキストリンの可動性が高くなる。
前記ポリロタキサンとしては、シクロデキストリンが有するヒドロキシ基の少なくとも一部が、-(CO(CHO)nH(nは、10~100の自然数)で表されるカプロラクトン鎖によって変性されているものが好ましい。カプロラクトン変性することにより、ポリロタキサンとポリイソシアネートとの立体障害が緩和され、ポリイソシアネートに対する反応効率が高まる。
前記変性としては、例えば、シクロデキストリンのヒドロキシ基をプロピレンオキシドで処理して、ヒドロキシプロピル化する。続いて、ε-カプロラクトンを加えて開環重合を行う。この変性により、シクロデキストリンの環状構造の外側に、-(CO(CHO)nH(nは、10~100の自然数)で表されるカプロラクトン鎖が、-O-C-O-基を介して、結合する。nは、重合度を表し、10以上であることが好ましく、11以上であることがより好ましく、12以上であることがさらに好ましく、100以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましく、40以下であることがさらに好ましい。nが前記範囲内であれば、生産性がより良好となると共に、打撃時の振動に相当する損失弾性率(E”-20)の値が最適化されやすくなり、アプローチスピン性能がより向上するからである。カプロラクトン鎖の他方の末端には、開環重合によりヒドロキシ基が形成される。カプロラクトン鎖の末端ヒドロキシ基は、ポリイソシアネートと反応することができる。
変性前のシクロデキストリンが有する全ヒドロキシ基(100モル%)に対して、カプロラクトン鎖で変性されるヒドロキシ基の割合は、2モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましい。カプロラクトン鎖で変性されるヒドロキシ基の割合が、前記範囲であれば、ポリロタキサンの疎水性が高くなり、ポリイソシアネートとの反応性が高くなる。
図1は、本発明で使用するポリロタキサンの分子構造の一例を示す説明図である。ポリロタキサン200は、シクロデキストリン212と、このシクロデキストリン212の環状構造を串刺し状にする直鎖状分子214と、この直鎖状分子214の両末端に配置され、前記環状分子の脱離を防止する封鎖基216とを有する。シクロデキストリン212の環状構造の外側には、カプロラクトン鎖218が、-O-C-O-基(図示せず)を介して結合している。
前記ポリロタキサンの水酸基価は、10mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以上、さらに好ましくは20mgKOH/g以上であり、400mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは300mgKOH/g以下、さらに好ましくは220mgKOH/g以下、特に好ましくは180mgKOH/g以下である。ポリロタキサンの水酸基価が上記範囲内であれば、ポリイソシアネートとの反応性が高くなり、塗膜の耐久性が良好となる。
前記ポリロタキサンの全体分子量は、重量平均分子量で、30,000以上が好ましく、より好ましくは40,000以上、さらに好ましくは50,000以上であり、3,000,000以下が好ましく、より好ましくは2,500,000以下、さらに好ましくは2,000,000以下である。重量平均分子量が30,000以上であれば塗膜が十分な強度をもつものとなり、3,000,000以下であれば塗膜が十分な軟らかさを有し、ゴルフボールのアプローチ性能が向上する。なお、ポリロタキサンの重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして有機溶媒系GPC用カラム(例えば、昭和電工社製「Shodex(登録商標)KFシリーズ」など)を用いて測定すればよい。
ポリカプロラクトンで変性されたポリロタキサンの具体例としては、アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製のセルムスーパーポリマーSH3800Pなどを挙げることができる。
(その他のポリオール)
本発明で使用するポリオール組成物は、ポリオール成分として、上記したポリロタキサンに加えて、さらにその他のポリオール(以下、「ポリロタキサン以外のポリオール」という場合がある。)を含有してもよい。前記ポリロタキサン以外のポリオールとしては、分子量が500未満の低分子量ポリオールや数平均分子量が500以上の高分子量ポリオールを挙げることができる。
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。前記高分子量のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ウレタンポリオールなどが挙げられる。前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)などが挙げられる。前記ポリエステルポリオールとしては、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などが挙げられる。前記ポリカプロラクトンポリオールとしては、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)などが挙げられる。前記ポリカーボネートポリオールとしては、ポリヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。
前記ウレタンポリオールとは、分子内にウレタン結合を複数有し、一分子中にヒドロキシ基を2以上有する化合物である。ウレタンポリオールとしては、例えば、第一ポリオール成分と第一ポリイソシアネート成分とを、第一ポリオール成分のヒドロキシ基が、第一ポリイソシアネート成分のイソシアネート基に対して過剰になるような条件で反応させて得られるウレタンプレポリマーを挙げることができる。
前記ウレタンポリオールを構成する第一ポリオール成分としては、分子量が500未満の低分子量ポリオールや数平均分子量が500以上の高分子量ポリオールを挙げることができる。
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。前記高分子量ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)などが挙げられる。前記ポリエステルポリオールとしては、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などが挙げられる。前記ポリカプロラクトンポリオールとしては、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)などが挙げられる。前記ポリカーボネートポリオールとしては、ポリヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。これらのポリオール成分は、単独で、あるいは、2種以上を混合して使用しても良い。
ウレタンポリオールを構成する第一ポリオール成分は、ジオールを含有することが好ましく、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、および、ポリカーボネートジオールよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。
本発明では、ウレタンポリオールを構成する第1ポリオール成分が、ポリカーボネートジオールを含有することが特に好ましい。ポリカーボネートジオールを含有するウレタンポリオールを使用することで、ラフからのアプローチスピン性能を向上しつつ、汚れが落としやすくなった。
前記ポリカーボネートジオールは、液状ポリカーボネートジオールまたはワックス状のポリカーボネートジオールであることが好ましい。ここで、液状とは、25℃で粘性液体であること意味する。ワックス状とは、結晶化により固形化(25℃)はしているが、剛体ではない状態であることを意味する。ワックス状の材料は、低融点の材料であり、例えば、30℃~70℃程度の融点を有する。液状ポリカーボネートジオールまたはワックス状ポリカーボネートジオールを使用することにより、塗膜が柔らかくなり、スピン性能が一層高くなるからである。前記ポリカーボネートジオールの粘度は、50mPa・s/50℃~100,000mPa・s/50℃、30mPa・s/60℃~50,000mPa・s/60℃、あるいは、10mPa・s/70℃~20,000mPa・s/70℃であることが好ましい。前記粘度は、例えば、B型粘度計、ロータHM2を用いて測定することができる。
前記ポリカーボネートジオールの粘度は、50mPa・s以上/50℃、100,000mPa・s以下/50℃であることが好ましく、100mPa・s以上/50℃、5,000mPa・s以下/50℃であることがより好ましく、200mPa・s以上/50℃、3,500mPa・s以下/50℃であることがさらに好ましい。
前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、400以上が好ましく、より好ましくは450以上であり、さらに好ましくは、500以上であり、1200以下が好ましく、より好ましくは1,000以下、さらに好ましくは900以下である。ポリカーボネートジオールの数平均分子量が400以上であれば、塗膜における架橋点間の距離が長くなり、塗膜が柔らかくなるため、スピン性能が向上する。前記数平均分子量が1,200以下であれば、塗膜における架橋点間の距離が長くなりすぎず、塗膜の耐汚染性が良好となる。なお、第一ポリオール成分の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして有機溶媒系GPC用カラム(例えば、昭和電工社製「Shodex(登録商標) KFシリーズ」など)を用いて測定すればよい。
前記ウレタンポリオールは、第一ポリオール成分として、トリオール成分とジオール成分とを含有するものが好ましい。前記トリオール成分としては、トリメチロールプロパンが好ましい。前記ジオール成分としては、上記したポリカーボネートジオールが好ましい。前記トリオール成分とジオール成分の混合比率(トリオール成分/ジオール成分)は、OH基のモル比で、1.0以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、2.6以下が好ましく、2.4以下がより好ましい。
前記ウレタンポリオールを構成し得る第一ポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ウレタンポリオールは、ポリイソシアネート成分として、脂環式ジイソシアネートを含有することが好ましい。
前記ウレタンポリオールにおけるジオール成分の含有率は、20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、90質量%以下が好ましく、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
前記ウレタンポリオールは、重量平均分子量が、5,000以上が好ましく、より好ましくは5,300以上、さらに好ましくは5,500以上であり、20,000以下が好ましく、より好ましくは18,000以下、さらに好ましくは16,000以下である。ウレタンポリオールの重量平均分子量が5,000以上であれば、塗膜における架橋点間の距離が長くなり、塗膜が柔らかくなるため、スピン性能が向上する。前記重量平均分子量が20,000以下であれば、塗膜における架橋点間の距離が長くなりすぎず、塗膜の耐汚染性が良好となる。なお、ウレタンポリオールの重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリエチレングリコール、溶離液としてジメチルホルムアミド(DMF)、カラムとして有機溶媒系GPC用カラム(例えば、昭和電工社製「Shodex(登録商標)KFシリーズ」など)を用いて測定すればよい。
前記ウレタンポリオールの水酸基価は、10mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以上、さらに好ましくは20mgKOH/g以上であり、200mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは190mgKOH/g以下、さらに好ましくは180mgKOH/g以下である。水酸基価は、JIS K 1557-1に準じて、例えば、アセチル化法によって測定することができる。
前記ポリロタキサン以外のポリオールとしては、さらにヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を挙げることができる。前記ヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体は、塗膜の耐傷付き性を維持しつつ粘着性を調整できる。前記ヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体は、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニルおよびヒドロキシ基を有する単量体(例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルアクリレート)を共重合する方法、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を部分ケン化あるいは完全ケン化する方法により得られる。
前記ヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体において、塩化ビニル成分の含有率は、1質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。ヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体の具体例としては、日信化学工業社製のソルバイン(登録商標)A、ソルバインAL、ソルバインTA3などが挙げられる。
前記ポリロタキサン以外のポリオールは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明では、前記ポリロタキサン以外のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ウレタンポリオール、およびヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
本発明の好ましい態様において、ポリオール組成物は、ポリオール成分として、ポリロタキサンとポリカプロラクトンポリオールと、ヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とを含有する、あるいは、ポリロタキサンとポリカプロラクトンポリオールと、ヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体と、ウレタンポリオールとを含有する。
本発明で使用するポリオール組成物が含有するポリオール成分中の前記ヒドロキシ基を少なくとも2つ有するポリロタキサンの含有率は、0質量%超が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましく、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
前記ポリオール組成物が、ポリオール成分としてウレタンポリオールを含有する場合、ポリオール成分中のウレタンポリオールの含有率は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、28質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
前記ポリオール組成物が、ポリオール成分としてポリカプロラクトンポリオールを含有する場合、ポリオール成分中のポリカプロラクトンポリオールの含有率は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、28質量%以下がより好ましく、26質量%以下がさらに好ましい。
前記ポリオール組成物が、ポリオール成分としてヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を含有する場合、ポリオール成分中のヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体の含有率は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、28質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
前記ポリオール組成物が、ポリオール成分として、ポリカプロラクトンポリオールとヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とを含有する場合、ポリカプロラクトンポリオールとヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体との質量比(ポリカプロラクトンポリオール/ヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体)は、0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、1.0以上がさらに好ましく、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましい。
なお、ポリオールとして含有する各成分の含有率は、これらの各成分の合計含有率が100質量%となるように、各成分の含有率の範囲から適宜選択される。
<ポリイソシアネート組成物>
本発明で使用するポリイソシアネート組成物のポリイソシアネート成分としては、例えば、イソシアネート基を少なくとも2つ有する化合物を挙げることができる。前記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネート;およびこれらのポリイソシアネートの誘導体が挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、ジイソシアネートと多価アルコールとを反応させて得られるアダクト変性体;ジイソシアネートのイソシアヌレート変性体;ビュレット変性体;アロハネート変性体などが挙げられ、遊離ジイソシアネートが除去されているものが好ましい。前記ポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネート成分として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット変性体、および、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記ビュレット変性体としては、例えば、ジイソシアネートが三量化されたビュレット変性体(下記式(1))が挙げられる。式(1)中、Rは、ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基を表す。前記ビュレット変性体としては、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体が好ましい。
Figure 2024027875000001
前記イソシアヌレート変性体としては、例えば、下記式(2)で表されるジイソシアネートの3量体が挙げられる。式(2)中、Rは、ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基を表す。前記イソシアヌレート変性体としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、または、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体が挙げられ、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、または、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートの3量体が好ましい。
Figure 2024027875000002
前記アダクト変性体とは、ジイソシアネートと多価アルコールとを反応させて得られるポリイソシアネートである。前記多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの低分子量トリオールが好ましい。前記アダクト変性体としては、例えば、ジイソシアネートとトリメチロールプロパンとを反応させて得られるトリイソシアネート(下記式(3));ジイソシアネートとグリセリンとを反応させて得られるトリイソシアネート(下記式(4))が好ましい。式(3)、および、式(4)中、Rは、ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基を表す。
Figure 2024027875000003
Figure 2024027875000004
前記アダクト変性体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとを反応させて得られるトリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネートとグリセリンとを反応させて得られるトリイソシアネートが好ましい。
前記アロハネート変性体とは、例えば、ジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させて形成されるウレタン結合にさらにジイソシアネートが反応して得られるトリイソシアネートである。
前記ポリイソシアネート成分のイソシアネート基量(NCO%)は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましく、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。なお、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基量(NCO%)は、100×[ポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル数×42(NCOの分子量)]/ポリイソシアネートの総質量(g)で表わすことができる。
前記ポリイソシアネート成分の具体例としては、DIC社製バーノック(登録商標)D-800、バーノックDN-950、バーノックDN-955、住化バイエルウレタン社製デスモジュール(登録商標)N75MPA/X、デスモジュールN3300、デスモジュールN3390、デスモジュールL75(C)、スミジュール(登録商標)E21-1、東ソー社製コロネート(登録商標)HX、コロネートHK、コロネートHL、コロネートEH、旭化成ケミカルズ社製デュラネート(登録商標)24A-100、デュラネート21S-75E、デュラネートTPA-100、デュラネートTKA-100、デュラネート24A-90CX、デグサ社製VESTANAT(登録商標)T1890などを挙げることができる。
本発明では、前記ポリイソシアネート組成物のポリイソシアネート成分は、イソシアヌレート変性体を含有することが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(好ましくは3量体)および/またはイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(好ましくは3量体)を含有することがより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(好ましくは3量体)およびイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(好ましくは3量体)を含有することがさらに好ましい。併用する場合、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体とイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体との質量比(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体/イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体)は、1.0以上が好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上であり、5以下が好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。前記質量比が上記範囲であれば、本発明の効果がより発現できるからである。
前記ポリイソシアネート組成物のポリイソシアネート成分中のイソシアヌレート変性体の含有率は、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。ポリイソシアネート成分として、イソシアヌレート変性体のみを用いることも好ましい。
本発明のゴルフボールの塗膜は多層構造である場合、最外層以外の塗膜層を構成する基材樹脂としては、上記した最外層を構成する基材樹脂に使用されるポリウレタンを使用してもよいし、それ以外のポリウレタンや、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂などを使用してもよい。なお、最外層以外の塗膜層を構成する基材樹脂として、上記した最外層を構成する基材樹脂に使用されるポリウレタンを使用する場合、各層塗膜の基材樹脂の組成は、それぞれ同じでもよく、異なってもよい。
[塗料]
前記硬化型塗料組成物における硬化反応において、ポリオール組成物が有するヒドロキシ基(OH基)とポリイソシアネート組成物が有するイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO基/OH基)は、1.0以上が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上がさらに好ましい。前記モル比(NCO基/OH基)が、1.0以上であれば、硬化反応が十分となる。また、前記モル比(NCO基/OH基)は、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましい。前記モル比(NCO基/OH基)が2.0以下であれば、イソシアネート基量が過剰とならず、得られる塗膜が適度な硬度を有し、外観も良好となる。なお、塗料中のイソシアネート基量が過剰になると得られる塗膜の外観が悪くなる理由は、イソシアネート基量が過剰になると、空気中の水分とイソシアネート基との反応が多くなり、炭酸ガスが多量に発生するためと考えられる。
前記塗料としては、水を主たる分散媒とする水系塗料、有機溶剤を分散媒とする溶剤系塗料のいずれであってもよいが、溶剤系塗料が好ましい。溶剤系塗料の場合、好ましい溶剤としては、トルエン、イソプロピルアルコール、キシレン、メチルエチルケトン、メチルエチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブチルアルコール、酢酸エチルなどを挙げることができる。なお、溶剤は、ポリオール組成物およびポリイソシアネート組成物のいずれに配合してもよいが、均一に硬化反応をさせる観点から、ポリオール組成物およびポリイソシアネート組成物のそれぞれに配合することが好ましい。
前記塗料は、さらに変性シリコーンを含有してもよい。レベリング剤として、変性シリコーンを含有することにより、塗布面の凹凸を軽減し、ゴルフボール表面に平滑な塗布面を形成することができる。前記変性シリコーンとしては、ポリシロキサン骨格の側鎖又は末端に有機基を導入したもの、ポリシロキサンブロックにポリエーテルブロックおよび/またはポリカプロラクトンブロックなどを共重合したポリシロキサンブロック共重合体、または、前記ポリシロキサンブロック共重合体の側鎖又は末端に有機基を導入したものなどを挙げることができる。前記ポリシロキサン骨格またはポリシロキサンブロックとしては、直鎖状であることが好ましく、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどを挙げることができる。前記有機基としては、例えば、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルビノール基などを挙げることができる。前記変性シリコーンの具体例としては、Gelest社製のDBL-C31、DBE-224、DCE-7521などが挙げられる。
硬化反応には、公知の触媒を使用することができる。前記触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンなどのモノアミン類;N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミンなどのポリアミン類;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、トリエチレンジアミンなどの環状ジアミン類;ジブチルチンジラウリレート、ジブチルチンジアセテートなどの錫系触媒などが挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジブチルチンジラウリレート、ジブチルチンジアセテートなどの錫系触媒が好ましく、特に、ジブチルチンジラウリレートが好適に使用される。
前記塗料は、さらに必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、スリップ剤、粘度調整剤などの、一般にゴルフボール用塗料に含有され得る添加剤を含有してもよい。
[塗膜の形成]
本発明のゴルフボールの塗膜は、ゴルフボール本体表面に塗料を塗布することで形成できる。塗料の塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができ、例えば、スプレー塗装、静電塗装などを挙げることができる。
エアーガンを用いたスプレー塗装の場合には、ポリイソシアネート組成物とポリオール組成物とをそれぞれのポンプで供給して、エアーガン直前に配置されたラインミキサーで連続的に混合し、得られた混合物をスプレー塗装してもよいし、混合比制御機構を備えたエアースプレーシステムを用いて、ポリオールとポリイソシアネートとを別々にスプレー塗装してもよい。塗装は、1回でスプレー塗布しても良いし、複数回重ね塗りをしても良い。
ゴルフボール本体に塗布された塗料は、例えば、30℃~70℃の温度で1時間~24時間乾燥することにより塗膜を形成することができる。
[ゴルフボール]
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも1層の塗膜とを有するゴルフボールであれば、特に限定されない。ゴルフボール本体の構造は、特に限定されず、ワンピースゴルフボール、ツーピースゴルフボール、スリーピースゴルフボール以上のマルチピースゴルフボールであってもよい。いずれの場合であっても、本発明を好適に適用できる。
<コア>
前記ワンピースゴルフボール本体、ツーピースゴルフボールおよびマルチピースゴルフボールに用いられるコアについて説明する。
前記ワンピースゴルフボール本体およびコアには、公知のゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を用いることができ、例えば、基材ゴム、共架橋剤および架橋開始剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
前記基材ゴムとしては、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。前記共架橋剤としては、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸またはその金属塩が好ましく、アクリル酸の金属塩またはメタクリル酸の金属塩がより好ましい。金属塩の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムが好ましく、より好ましくは亜鉛である。共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。前記共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を使用する場合、金属化合物を配合することが好ましい。架橋開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、3質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下である。
また、前記コア用ゴム組成物は、さらに、有機硫黄化合物を含有してもよい。前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類(例えば、ジフェニルジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド)、チオフェノール類、チオナフトール類(例えば、2-チオナフトール)を好適に使用することができる。有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。前記コア用ゴム組成物は、さらにカルボン酸および/またはその塩を含有してもよい。カルボン酸および/またはその塩としては、炭素数が1~30のカルボン酸および/またはその塩が好ましい。前記カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸(安息香酸など)のいずれも使用できる。カルボン酸および/またはその塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上、40質量部以下である。
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、有機硫黄化合物に加えて、さらに、酸化亜鉛や硫酸バリウムなどの重量調整剤、老化防止剤、色粉などを適宜配合することができる。前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成型条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130℃~200℃で10分間~60分間加熱するか、あるいは130℃~150℃で20分間~40分間加熱した後、160℃~180℃で5分間~15分間と2段階加熱することが好ましい。
<カバー>
前記カバーを構成するカバー用組成物の材料硬度は、所望のゴルフボールの性能に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、飛距離を重視するディスタンス系のゴルフボールの場合、カバー用組成物の材料硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、55以上がより好ましく、60以上がさらに好ましく、80以下が好ましく、70以下がより好ましく、68以下がさらに好ましい。カバー用組成物の材料硬度を50以上にすることにより、ドライバーショットおよびアイアンショットにおいて、高打出角で低スピンのゴルフボールが得られ、飛距離が向上する。また、カバー用組成物の材料硬度を80以下とすることにより、耐久性に優れたゴルフボールが得られる。また、コントロール性を重視するスピン系のゴルフボールの場合、カバー用組成物の材料硬度は、ショアD硬度で、50未満が好ましく、20以上が好ましく、25以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。カバー用組成物の材料硬度が、ショアD硬度で50未満であれば、アプローチショットのスピン量が高くなり、グリーン上で止まりやすいゴルフボールが得られる。また、材料硬度を20以上とすることにより、耐擦過傷性が向上する。なお、前記カバーの材料硬度は、カバーを形成するカバー用組成物をシート状に成形して測定したスラブ硬度である。
前記カバーの厚みは、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。カバーの厚みが4.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、さらに好ましくは0.5mm以上である。カバーの厚みが0.3mm以上とすることにより、カバーの耐久性や耐摩耗性が良好になる。
前記カバーを構成する樹脂成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などの各種樹脂、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY82A」、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱ケミカル(株)から商品名「テファブロック」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーや熱可塑性ポリエステル系エラストマーなどを挙げることができる。前記カバー材料は、単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
これらの中でもカバーを構成する樹脂成分としては、ポリウレタン、アイオノマー樹脂が好ましく、特にポリウレタンが好ましい。前記カバーを構成する樹脂成分にポリウレタンを使用する場合、樹脂成分中のポリウレタンの含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。前記カバーを構成する樹脂成分にアイオノマー樹脂を使用する場合、樹脂成分中のアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
前記ポリウレタンは、いわゆる熱可塑性ポリウレタンや熱硬化性ポリウレタンのいずれの態様であってもよい。熱可塑性ポリウレタンとは、加熱により可塑性を示すポリウレタンであり、一般に、ある程度高分子量化された直鎖構造を有するポリウレタンを意味する。一方、熱硬化性ポリウレタン(二液硬化型ポリウレタン)は、カバーを成形する際に、低分子量のウレタンプレポリマーと硬化剤(鎖長延長剤)とを反応させて高分子量化することにより得られるポリウレタンである。熱硬化性ポリウレタンには、使用するプレポリマーや硬化剤(鎖長延長剤)の官能基の数を制御することによって、直鎖構造のポリウレタンや3次元架橋構造を有するポリウレタンが含まれる。前記ポリウレタンとしては、熱可塑性エラストマーが好ましい。
前記カバーは、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
カバー用組成物を用いてカバーを成形する態様は、特に限定されないが、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する態様、あるいは、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する態様(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)を挙げることができる。
カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、マークを形成することもできる。
カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個以上であれば、ディンプルの効果が得られやすくなる。また、ディンプルの総数が500個以下であれば、個々のディンプルのサイズが小さくなり過ぎず、ディンプルの効果が得られやすい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
<中間層>
前記ゴルフボール本体は、コアとカバーの間に、さらに少なくとも1層以上の中間層を有してもよい。なお、中間層は、ゴルフボールの構成に応じて、内側カバー層や、外層コアと称される場合がある。
前記中間層の硬度は、特に限定されないが、ショアD硬度で、30以上が好ましく、35以上がより好ましく、40以上がさらに好ましく、75以下が好ましく、72以下がより好ましく、70以下がさらに好ましい。中間層硬度は、中間層を形成する中間層用組成物をシート状に成形して測定したスラブ硬度である。
前記中間層の厚さは、特に限定されないが、0.5mm以上が好ましく、より好ましくは0.6mm以上、さらに好ましくは0.8mm以上であり、2.5mm以下が好ましく、より好ましくは2.0mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下である。
前記中間層を構成する樹脂成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリウレタン、アイオノマー樹脂、ポリアミド、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂;スチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ゴム組成物の硬化物などが挙げられる。ここで、アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンとα,β-不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものが挙げられる。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステンなどの重量調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。
中間層用組成物を用いて中間層を成形する態様は、特に限定されないが、前記カバーを形成する態様を挙げることができる。
本発明のゴルフボールの直径は、40mm~45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は、42.67mm以上が好ましい。空気抵抗の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下がより好ましい。ゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44.00g以上が好ましく、45.00g以上がより好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が好ましい。
本発明のゴルフボールは、直径40mm~45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.2mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
図2は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール1は、球状コア2と、球状コア2を被覆するカバー3と、このカバー3の表面に設けられた塗膜4を有する。前記カバー3の表面には、多数のディンプル31が形成されている。このカバー3の表面のうち、ディンプル31以外の部分は、ランド32である。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)スラブ硬度(ショアD硬度)
中間層用組成物、カバー用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「ShoreD」を用いた。
(2)塗膜の膜厚(μm)
ゴルフボールを半球状に切断し、半球上の塗膜断面をマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-1000)を用いて観察し、塗膜の膜厚を求めた。
膜厚の測定箇所について図3、4を参照して説明する。図3はゴルフボールの断面の模式図である。図3に示すように、ゴルフボール断面において、ボール中心といずれかのディンプルの底とを通る直線A、この直線Aと直交する直線B、直線Aとのなす角が45°である直線Cを作成し、これらの直線と塗膜表面との交点をそれぞれポールP、赤道部E、肩部Sとする。
図4はディンプル31の底Deおよびゴルフボール1の中心を通過する断面の模式図である。ディンプルの底Deとは、ディンプル31の最も深い箇所である。エッジEdは、ディンプル31の両側に共通の接線Tが画かれたときの、ディンプル31と接線Tとの接点である。斜面における測定箇所Yは、ディンプルの底DeとエッジEdとを結ぶ直線の中点から、ディンプル31に向けて垂線を下ろした際、該垂線とディンプルの斜面とが交わる点である。ランドにおける測定箇所Xは、隣接するディンプルのエッジ間の中点である。なお、隣接ディンプル同士が接している等ランド部が存在しないものや、ランド部が極めて狭く膜厚を測定することが困難な場合は、ディンプルの底、エッジ、斜面を測定点とする。
測定では、まず6個のボールについて、ポールPの存在するディンプルと、赤道部Eおよび肩部Sの近傍のディンプルの3カ所から試験片を作製する。次に、各試験片(ディンプル)において、ディンプルの底De、エッジEd、斜面Y、ランドXにおける塗膜の厚みを測定する。最後に、ボール6個についての測定値から平均値を求め、その平均値を塗膜の膜厚とした。
(3)塗膜の10%モジュラス
塗膜の引張特性は、JIS K7161(2014)に準じて測定した。具体的には、ポリイソシアネート組成物およびポリオール組成物を配合した塗料を40℃で4時間乾燥及び硬化をさせて塗膜(厚さ0.05mm)を作製した。この塗膜を、JIS K7127(1999)で規定された試験片タイプ2(平行部の幅10mm、標線間距離50mm)に打ち抜いて試験片を作製した。この試験片について、精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフ(登録商標))を用いて引張試験を行った。試験条件は、つかみ具間距離100mm、引張速度50mm/min、試験温度23℃とした。そして、10%ひずみ時の引張応力(10%モジュラス)を記録した。
(4)塗膜の動的粘弾性
塗膜の損失弾性率E”および貯蔵弾性率E’を以下の条件で測定した。
装置:ユービーエム社製動的粘弾性測定装置Rheogel-E4000
測定サンプル:ポリイソシアネート組成物およびポリオール組成物を配合した塗料を40℃で4時間乾燥及び硬化をさせて、厚み0.11-0.14mmの塗膜フィルムを作製した。この塗膜フィルムから、幅4mm、クランプ間距離20mmになるように試料片を切り出した。
測定モード:引張
測定温度範囲:-100℃~100℃
昇温速度:3℃/分
測定データ取り込み間隔:3℃
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.05%
(5)ゴルフボールのアプローチスピン性能
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、サンドウェッジ(クリーブランドゴルフ社製、商品名「CG15フォードウェッジ」、ロフト角:58°)を取り付け、ヘッドスピード16m/sで、ゴルフボールを打撃し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってドライスピン量Sd(rpm)を測定した。なお、ラフからの(芝を噛んだ条件での)アプローチスピン量Srを測定する場合には、測定対象となるゴルフボールには、野芝の葉(長さ約3cm)を2枚貼付け、打撃時にクラブフェースとゴルフボールとの間に野芝が位置するように打撃した以外、ドライスピン量Sdの測定と同様にしてラフスピン量Sr(rpm)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行い、その平均値をスピン量とした。また、前記ドライスピン量Sdとラフスピン量Srから、下記式によりスピン保持率を計算した。
スピン保持率(%)=Sr/Sd×100%
ドライスピン量Sd、ラフスピン量Srおよびスピン保持率について、以下の基準で評価した。
<ドライスピン量Sdの評価基準>
〇:5000rpm超
△:4900rpm超、5000rpm以下
×:4900rpm以下
<ラフスピン量Sdの評価基準>
〇:4000rpm超
△:3900rpm超、4000rpm以下
×:3900rpm以下
<スピン保持率の評価基準>
〇:80%超
△:75%超、80%以下
×:75%以下
ゴルフボールの総合的なアプローチスピン性能について、以下の基準で評価した。
<評価基準>
A:ドライスピン量、ラフスピン量およびスピン保持率の評価結果がいずれも〇である。
B:ドライスピン量、ラフスピン量およびスピン保持率の評価結果のうち△や×があるが、〇がある。
C:ドライスピン量、ラフスピン量およびスピン保持率の評価結果のうち〇がない。
1.球状コアの作製
表1に示す配合のゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で150℃、19分間加熱プレスすることにより直径39.7mmの球状コアを得た。なお、ボール質量が45.6gとなるように、硫酸バリウムの量を調整した。
Figure 2024027875000005
表1に使用する材料は、下記の通りである。
ポリブタジエンゴム:JSR(株)製、「BR730(ハイシスポリブタジエン)」
アクリル酸亜鉛:日触テクノファインケミカル社製、「ZN-DA90S」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジフェニルジスルフィド:住友精化製
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D」
2.中間層の作製
(1)中間層用組成物の調製
表2に示した配合の材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状の中間層用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160~230℃に加熱された。
Figure 2024027875000006
表2に使用する材料は、下記の通りである。
サーリン8945:デュポン社製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミラン(登録商標)AM7329:三井・ダウ・ポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
(2)中間層の成形
上記で得た中間層用組成物を、前述のようにして得た球状コア上に直接射出成形することにより、前記球状コアを被覆する中間層(厚さ:1.0mm)を形成した。
3.補強層の作製
二液硬化型エポキシ樹脂を基材樹脂とする補強層用組成物(神東塗料社製、商品名「ポリン(登録商標)750LE」)を調製した。主剤は、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を30質量部と、溶剤を70質量部含有する。硬化剤は、変性ポリアミドアミンを40質量部、二酸化チタンを5質量部、溶剤を55質量部含有する。主剤と硬化剤との質量比は、1/1とした。この補強層用組成物を中間層の表面にエアガンで塗布し、23℃雰囲気下で12時間保持して、補強層を形成した。補強層の厚みは、7μmであった。
4.カバーの作製
(1)カバー用組成物の調製
表3に示した配合の材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160~230℃に加熱された。
Figure 2024027875000007
表3に使用する材料は、下記の通りである。
エラストランXNY82A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
チヌビン770:BASFジャパン社製ヒンダードアミン系光安定剤
(2)カバーの成形
ペレット状のカバー用組成物をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに1つずつ投入し、加圧してハーフシェルを成形した。補強層を形成した球体を2枚のハーフシェルで同心円状に被覆した。この球体およびハーフシェルを、キャビティ面に多数のピンプルを備えたファイナル金型に投入した。圧縮成形によりカバー(厚さ:0.5mm)を成形し、ゴルフボール本体を得た。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状のディンプルが多数形成された。
5.塗膜の作製
(1)ウレタンポリオールの調製
表4に示した配合比になるように、第一ポリオール成分を溶剤(トルエン、メチルエチルケトン)に溶解した。ここに、触媒としてジブチル錫ジラウレートを、第一ポリオール成分100質量%に対して0.1質量%となるように添加した。このポリオール溶液を80℃に保持しながら第一ポリイソシアネート成分を滴下混合した。滴下後は、イソシアネートがなくなるまで撹拌を続け、その後常温で冷却し、ウレタンポリオール(固形分:60質量%)を調製した。得られたウレタンポリオールの組成等を表4に示した。
Figure 2024027875000008
表4に使用する材料は、下記の通りである。
PCD1000:ダイセル社製ポリカーボネートジオール(商品名:プラクセルCD210、数平均分子量:1000、水酸基価:107~117mgKOH/g)
PTMG650:三菱ケミカル社製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:650、水酸基価:160~187mgKOH/g)
TMP:東京化成工業社製トリメチロールプロパン
IPDI:住化コベストロウレタン社製イソホロンジイソシアネート
(2)ポリオール組成物およびポリイソシアネート組成物の調製
表5に示した配合比になるように、各ポリオール成分を配合し、さらにポリオール成分総量100質量部に対して、溶剤(キシレン/メチルエチルケトン=70/30(質量比)の混合溶剤)100質量部を混合し、ポリオール組成物を調製した。なお、触媒としてジブチル錫ジラウレートを、ポリオール組成物のポリオール成分総量100質量%に対して0.1質量%となるように添加した。また、表5に示した配合比になるように、各ポリイソシアネート成分を配合して、ポリイソシアネート組成物を調製した。
Figure 2024027875000009
表5に使用する材料は、下記の通りである。
ポリロタキサンNo.1:アドバンスト・ソフトマテリアル社製変性ポリロタキサン(シクロデキストリンのヒドロキシ基の少なくとも一部が、-O-C-O-基を介して、カプロラクトン鎖によって変性されたポリロタキサン)(商品名:セルム(登録商標)スーパーポリマーSH3400P、カプロラクトン鎖の平均重合度n:8、直鎖状分子:ポリエチレングリコール、封鎖基:アダマンチル基、直鎖状分子の分子量:35,000、水酸基価:72mgKOH/g、全体の重量平均分子量:700,000)
ポリロタキサンNo.2:アドバンスト・ソフトマテリアル社製変性ポリロタキサン(シクロデキストリンのヒドロキシ基の少なくとも一部が、-O-C-O-基を介して、カプロラクトン鎖によって変性されたポリロタキサン)(商品名:セルム(登録商標)スーパーポリマーSH3800P、カプロラクトン鎖の平均重合度n:15、直鎖状分子:ポリエチレングリコール、封鎖基:アダマンチル基、直鎖状分子の分子量:35,000、水酸基価:43~49mgKOH/g、全体の重量平均分子量:950,000~1,200,000)
ポリカプロラクトンポリオール:ダイセル社製ポリカプロラクトントリオール(商品名:プラクセル308、数平均分子量:850、水酸基価:190~200mgKOH/g)
ヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体:日信化学工業社製塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール(商品名:ソルバインAL、塩化ビニル成分の含有率:93質量%、数平均分子量:27000、水酸基価:70mgKOH/g)
HDIイソシアヌレート変性体:旭化成ケミカルズ社製ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(商品名:デュラネートTKA-100、NCO含有率:21.7%)
IPDIイソシアヌレート変性体:デグサ社製イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(商品名:VESTANAT(登録商標)T1890、NCO含有率:12.0%)
HDIアダクト変性体:旭化成ケミカルズ社製ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体(商品名:デュラネートE402-80B、NCO含有率:7.3%)
(3)塗膜の形成
表5に示した配合比になるように、上記で調製したポリオール組成物およびポリイソシアネート組成物を配合して、硬化型塗料を調製した。前記で得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、スプレーガンで塗料を塗布し、40℃のオーブンで24時間塗料を乾燥させ、直径42.7mm、質量45.6gのゴルフボールを得た。塗膜の厚さは10±2μmであった。各硬化型塗料の塗膜物性を測定した結果を表5及び図5に示した。
塗装は、プロングを備えた回転体にゴルフボール本体を載置し、回転体を300rpmで回転させ、ゴルフボール本体からエアーガンを吹き付け距離(7cm)だけ離間させて上下方向に移動させながら行った。重ね塗りの各回のインターバルを1.0秒とした。エアーガンの吹付条件は、重ね塗り;2回、吹付エアー圧;0.15MPa、圧送タンクエアー圧;0.10MPa、1回の塗布時間;1秒、雰囲気温度;20℃~27℃、雰囲気湿度;65%以下の条件で塗装とした。得られたゴルフボールについて評価した結果を表5に示した。
表5から明らかなように、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の最外層が、基材樹脂として、ポリイソシアネート組成物と、ポリオール成分として、ヒドロキシ基を少なくとも2つ有するポリロタキサンを含有するポリオール組成物とを反応させてなるポリウレタンを含有し、前記塗膜の最外層の動的粘弾性を特定条件で測定して得られる-20℃での損失弾性率(E”-20)が1.1×10Pa以上である本発明のゴルフボールは、アプローチショットのスピン性能(特にラフからの(芝を噛んだ条件での)アプローチスピン性能)に優れて生産性が良好である。
1:ゴルフボール、2:球状コア、3:カバー、4:塗膜、31:ディンプル、32:ランド、200:ポリロタキサン、212:シクロデキストリン、214:直鎖状分子、216:封鎖基、218:カプロラクトン鎖
本発明(1)のゴルフボールは、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の最外層が、基材樹脂として、ポリイソシアネート組成物と、ポリオール成分として、ヒドロキシ基を少なくとも2つ有するポリロタキサンを含有するポリオール組成物とを反応させてなるポリウレタンを含有し、前記塗膜の最外層の動的粘弾性を下記条件で測定して得られる-20℃での損失弾性率(E”-20)が、1.1×10Pa以上であることを特徴とする。
<測定条件>
測定モード:引張
測定温度範囲:-100℃~100℃
昇温速度:3℃/分
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.05%
本発明(2)のゴルフボールは、前記塗膜の最外層の動的粘弾性を前記条件で測定して得られる損失弾性率(E”)が、-50℃~0℃の範囲に少なくとも1つのピークを有する本発明(1)に記載のゴルフボールである。
本発明(3)のゴルフボールは、前記ポリロタキサンが、シクロデキストリンと前記シクロデキストリンの環状構造を串刺し状にする直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され、前記シクロデキストリンの脱離を防止する封鎖基とを有し、前記シクロデキストリンのヒドロキシ基の少なくとも一部が、-O-C-O-基を介して、-(CO(CHO)nH(nは、10~100の自然数)で表されるカプロラクトン鎖によって変性されているポリロタキサンである本発明(1)または(2)に記載のゴルフボールである。
本発明(4)のゴルフボールは、前記ポリオール組成物のポリオール成分中のポリロタキサンの含有率が、0質量%超、90質量%以下である本発明(1)~(3)のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
本発明(5)のゴルフボールは、前記ポリオール組成物が、ポリオール成分として、さらに、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ウレタンポリオール、およびヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を含有し、前記ポリオール組成物のポリオール成分中のポリロタキサン以外のポリオールの含有率が、10質量%以上、100質量%未満である本発明(1)~(4)のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
本発明(6)のゴルフボールは、前記塗膜の最外層の動的粘弾性を前記条件で測定して得られる0℃での貯蔵弾性率(E’)が、0.5×10Pa以上、15×10Pa以下である本発明(1)~(5)のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
本発明(7)のゴルフボールは、前記塗膜の最外層の動的粘弾性を前記条件で測定して得られる50℃での貯蔵弾性率(E’50)が、0.1×10Pa以上、1.0×10Pa以下である本発明(1)~(6)のいずれか一項に記載のゴルフボールである。

Claims (7)

  1. ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、
    前記塗膜の最外層が、基材樹脂として、ポリイソシアネート組成物と、ポリオール成分として、ヒドロキシ基を少なくとも2つ有するポリロタキサンを含有するポリオール組成物とを反応させてなるポリウレタンを含有し、
    前記塗膜の最外層の動的粘弾性を下記条件で測定して得られる-20℃での損失弾性率(E”-20)が、1.1×10Pa以上であることを特徴とするゴルフボール。
    <測定条件>
    測定モード:引張
    測定温度範囲:-100℃~100℃
    昇温速度:3℃/分
    加振周波数:10Hz
    測定歪み:0.05%
  2. 前記塗膜の最外層の動的粘弾性を前記条件で測定して得られる損失弾性率(E”)が、-50℃~0℃の範囲に少なくとも1つのピークを有する請求項1に記載のゴルフボール。
  3. 前記ポリロタキサンが、シクロデキストリンと前記シクロデキストリンの環状構造を串刺し状にする直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され、前記シクロデキストリンの脱離を防止する封鎖基とを有し、前記シクロデキストリンのヒドロキシ基の少なくとも一部が、-O-C-O-基を介して、-(CO(CHO)nH(nは、10~100の自然数)で表されるカプロラクトン鎖によって変性されているポリロタキサンである請求項1または2に記載のゴルフボール。
  4. 前記ポリオール組成物のポリオール成分中のポリロタキサンの含有率が、0質量%超、90質量%以下である請求項1に記載のゴルフボール。
  5. 前記ポリオール組成物が、ポリオール成分として、さらに、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ウレタンポリオール、およびヒドロキシ基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1に記載のゴルフボール。
  6. 前記塗膜の最外層の動的粘弾性を前記条件で測定して得られる0℃での貯蔵弾性率(E’)が、0.5×10Pa以上、15×10Pa以下である請求項1に記載のゴルフボール。
  7. 前記塗膜の最外層の動的粘弾性を前記条件で測定して得られる50℃での貯蔵弾性率(E’50)が、0.1×10Pa以上、1.0×10Pa以下である請求項1に記載のゴルフボール。
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