以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
第1実施形態について説明する。本実施形態に係るアクチュエータ装置10は、赤外線センサ20の向きを変化させるための装置として構成されている。赤外線センサ20は、アクチュエータ装置10と共に、不図示の車両の車室内に設置される。赤外線センサ20は、車室内の温度分布(例えば乗員の体温等)を検知することにより、快適な空調を行うために必要な情報を取得するためのものである。アクチュエータ装置10によって赤外線センサ20の向きを変化させることで、車室内の温度分布を広範囲に亘って取得することができる。
図1に示されるように、アクチュエータ装置10は、取付板11と、被駆動部100と、ベース200と、第1アクチュエータ部510と、第2アクチュエータ部520と、チャック610、620と、を備えている。
取付板11は、後述のベース200、チャック610、及びチャック620の各部材が取り付けられる板状の部材である。アクチュエータ装置10は、この取付板11によって全体が一体化されたユニットとなっており、取付板11を介して車室内の一部(例えばインストルメントパネル)に対し締結固定される。このような態様に替えて、上記のベース200等の各部材が、取付板11を介することなく車室内の一部に直接固定されるような態様であってもよい。
被駆動部100は、後述の第1アクチュエータ部510及び第2アクチュエータ部520によって駆動される部分である。被駆動部100のうち取付板11とは反対側の面には、板状のカバー150を介して、先に述べた赤外線センサ20が取り付けられている。
図1において符号「AX1」が付されている一点鎖線は、被駆動部100が駆動され回転する際における回転中心軸を示している。この回転中心軸のことを、以下では「回転中心軸AX1」とも称する。被駆動部100は、第1アクチュエータ部510等で駆動されることにより、回転中心軸AX1の周りを、矢印AR1及び矢印AR2のそれぞれで示される方向に回転する。
ベース200は、被駆動部100を、回転中心軸AX1の周りに回転自在に支持するための部材である。支持のための具体的な構造については後に説明する。
第1アクチュエータ部510は、被駆動部100を駆動するためのアクチュエータの一つである。第1アクチュエータ部510は、例えばポリアミドのような高分子材料からなる繊維、すなわちポリマー繊維であって、その全体が細長い紐状に形成されている。紐状の第1アクチュエータ部510は、高温になるほど収縮して短くなる。つまり、第1アクチュエータ部510は熱エネルギーを与えられることによって変形し収縮する。このような第1アクチュエータ部510としては、例えば特開2016-42783号公報に記載されているものを用いることができる。
第1アクチュエータ部510に熱エネルギーが与えられ、第1アクチュエータ部510が収縮すると、被駆動部100は第1アクチュエータ部510から力を受けて、矢印AR1で示される方向に駆動される。これを実現するための具体的な構成については後述する。矢印AR1で示される方向は、本実施形態における「第1方向」に該当する。
第2アクチュエータ部520は、上記の第1アクチュエータ部510と共に、被駆動部100を駆動するためのアクチュエータの一つである。第2アクチュエータ部520は、第1アクチュエータ部510と同一のポリマー繊維となっている。このため、第2アクチュエータ部520も、熱エネルギーを与えられることによって変形し収縮する。
第2アクチュエータ部520は、被駆動部100を挟んで、第1アクチュエータ部510とは反対側となる位置に配置されている。第2アクチュエータ部520に熱エネルギーが与えられ、第2アクチュエータ部520が収縮すると、被駆動部100は第2アクチュエータ部520から力を受けて、矢印AR2で示される方向に駆動される。当該方向は、矢印AR1で示される方向とは反対の方向である。これを実現するための具体的な構成については後述する。矢印AR2で示される方向は、本実施形態における「第2方向」に該当する。
チャック610は、後述のエネルギー付与部材400(図3を参照)の一端を支持するための部材である。チャック610は、第1アクチュエータ部510を間に挟んで、被駆動部100とは反対側となる位置に配置されている。先に述べた第1アクチュエータ部510は、エネルギー付与部材400に対して螺旋状に巻きつけられており、その端部がチャック610に対して固定されている。
上記のエネルギー付与部材400は、回転中心軸AX1に沿って、被駆動部100やベース200を貫くように配置されている。チャック620は、エネルギー付与部材400のうち、チャック610側とは反対側の端部を支持するための部材である。チャック620は、第2アクチュエータ部520を間に挟んで、被駆動部100とは反対側となる位置に配置されている。このため、図1に示されるように、チャック610とチャック620との間となる位置に被駆動部100が配置されている。先に述べた第2アクチュエータ部520は、エネルギー付与部材400に対して螺旋状に巻きつけられており、その端部がチャック620に対して固定されている。
尚、図1においては、回転中心軸AX1に沿ってチャック610からチャック620に向かう方向をx方向としており、当方向に沿ってx軸を設定している。また、x方向に対して垂直な方向であって、取付板11から赤外線センサ20に向かう方向をz方向としており、同方向に沿ってz軸を設定している。更に、x方向及びz方向のいずれに対しても垂直な方向であって、図1における奥側に向かう方向をy方向としており、同方向に沿ってy軸を設定している。以降においては、このように定義されたそれぞれの方向や軸を適宜用いながら、アクチュエータ装置10の更に具体的な構成について説明する。
図2では、カバー150及び赤外線センサ20が取り外された状態における、被駆動部100及びその近傍の構成が拡大して示されている。本実施形態では、第1アクチュエータ部510及び第2アクチュエータ部520のそれぞれが、単一のポリマー繊維であるアクチュエータ部材500の一部となっている。つまり、第1アクチュエータ部510及び第2アクチュエータ部520は、単一のアクチュエータ部材500における互いに異なる部分として構成されている。
アクチュエータ部材500のうち、第1アクチュエータ部510と第2アクチュエータ部520との間を繋いでいる部分は、図2に示されるように被駆動部100のうちz方向側の面(カバー150により覆われている面)に沿って配置されている。当該部分は、エネルギー付与部材400に対して巻き付けられてはおらず、後に説明するようにエネルギー付与部材400から熱エネルギーが与えられない部分となっている。このため、当該部分のことを以下では「非付与部530」とも称する。
被駆動部100のうちz方向側の面には、直線状の溝111が形成されている。非付与部530は溝111の内側に収容されている。z軸に沿って見た場合において、溝111はx軸に沿って伸びるようには形成されておらず、x軸に対して僅かに傾斜した方向に沿って伸びるように形成されている。具体的には、溝111は、x方向側に行くほど-y方向側に向かうように傾斜している。
図2においては、被駆動部100のうち溝111の-x方向側の端部が、端部111Aとして示されている。また、被駆動部100のうち溝111のx方向側の端部が、端部111Bとして示されている。
z軸に沿って見た場合においては、-x方向側の端部111Aの位置は、回転中心軸AX1よりもy方向側の位置となっている。このため、第1アクチュエータ部510に熱エネルギーが加えられ、第1アクチュエータ部510が収縮すると、被駆動部100の端部111Aに対しては概ね-z方向に向かう力が加えられ、その結果として被駆動部100は矢印AR1の方向(第1方向)に駆動される。
z軸に沿って見た場合においては、x方向側の端部111Bの位置は、回転中心軸AX1よりも-y方向側の位置となっている。このため、第2アクチュエータ部520に熱エネルギーが加えられ、第2アクチュエータ部520が収縮すると、被駆動部100の端部111Bに対しては概ね-z方向に向かう力が加えられ、その結果として被駆動部100は矢印AR2の方向(第2方向)に駆動される。
尚、ポリマー繊維によってアクチュエータ部材500を形成するにあたっては、紐状のポリマー繊維を、その長手方向に沿った軸の周りにおいて予め撚られた状態としておくことも考えられる。つまり、予め撚られた状態のポリマー繊維をエネルギー付与部材400に巻き付けて、これをアクチュエータ部材500として用いることも考えられる。しかしながら、本発明者らが行った実験等によれば、撚られたポリマー繊維によってアクチュエータ部材500を形成した場合には、時間の経過とともに繊維の内部において空隙が成長することにより、アクチュエータ部材500が早期に劣化してしまうという知見が得られている。これを考慮し、本実施形態では、撚られていないポリマー繊維によってアクチュエータ部材500を形成し、これをエネルギー付与部材400に巻き付けることとしている。これにより、時間の経過に伴うアクチュエータ部材500の劣化を抑制している。
図3には、アクチュエータ装置10を、z軸に対して垂直であり且つ回転中心軸AX1を含む面で切断した場合の断面が、模式的に示されている。ただし、エネルギー付与部材400及びアクチュエータ部材500については、断面ではなくその外観が示されている。更に、図3においては、後述の電源12やスイッチ13等が模式的に示されている。図4においては、上記のように切断されたアクチュエータ装置10の実際の構成が斜視図として示されている。ただし、図4ではアクチュエータ部材500の図示が省略されている。
図3に示されるように、被駆動部100は、天壁部110と、一対の側壁部120、130とを有している。天壁部110は、先に述べた溝111が形成されている部分であって、取付板11に対して平行な概ね平板状の部分である。
側壁部120は、天壁部110のうち-x方向側の端部から、-z方向側に向かって伸びるように形成された概ね平板状の部分である。側壁部120には、これをx軸に沿って貫くように円形の貫通穴121が形成されている。貫通穴121の中心軸は、回転中心軸AX1と一致している。
側壁部130は、天壁部110のうちx方向側の端部から、-z方向側に向かって伸びるように形成された概ね平板状の部分である。側壁部130には、これをx軸に沿って貫くように円形の貫通穴131が形成されている。貫通穴131の中心軸は、回転中心軸AX1と一致している。また、貫通穴131の内径は、先に述べた貫通穴121の内径と等しい。
ベース200は、平板部210と、突出部220とを有している。平板部210は、取付板11に対して平行な概ね平板状の部分である。平板部210は、取付板11に対して締結固定される部分である。
突出部220は、x方向に沿って平板部210の略中央となる位置から、z方向に沿って伸びるように形成された部分である。突出部220は、その大部分が、互いに対向する側壁部120と側壁部130との間の空間内に収容されている。突出部220のうちz方向側の部分は、第1突出部230と第2突出部240の二つに分かれている。第1突出部230及び第2突出部240は、x方向に沿って並ぶように配置されており、両者の間には隙間が形成されている。第1突出部230は-x方向側に形成された部分であり、第2突出部240はx方向側に形成された部分である。
第1突出部230には、これをx軸に沿って貫くように円形の貫通穴231が形成されている。貫通穴231の中心軸は、回転中心軸AX1と一致している。また、貫通穴231の内径は貫通穴121の内径と等しい。
第2突出部240には、これをx軸に沿って貫くように円形の貫通穴241が形成されている。貫通穴241の中心軸は、回転中心軸AX1と一致している。また、貫通穴241の内径は貫通穴131の内径と等しい。
被駆動部100には、シャフト310、320が固定されている。これはいずれも円筒形状の部材であって、その形状は互いに同一である。
シャフト310の外径は、貫通穴121や貫通穴231の内径と概ね等しい。シャフト310は、その中心軸を回転中心軸AX1に一致させた状態で、貫通穴121及び貫通穴231の両方に対して挿通されている。シャフト310の外周面と、貫通穴121の内周面との間は、例えば圧入によって互いに固定されている。一方、シャフト310の外周面と、貫通穴231の内周面との間は、互いに固定されておらず、シャフト310が第1突出部230に対して摺動し得る状態となっている。
シャフト320の外径は、貫通穴131や貫通穴241の内径と概ね等しい。シャフト320は、その中心軸を回転中心軸AX1に一致させた状態で、貫通穴131及び貫通穴241の両方に対して挿通されている。シャフト320の外周面と、貫通穴131の内周面との間は、例えば圧入によって互いに固定されている。一方、シャフト320の外周面と、貫通穴241の内周面との間は、互いに固定されておらず、シャフト320が第2突出部240に対して摺動し得る状態となっている。
以上のような構成により、被駆動部100は、シャフト310及びシャフト320と一体となった状態で、これらと共に、回転中心軸AX1の周りにおいて回転自在な状態で支持されている。
円筒状のシャフト310の内側には、これを回転中心軸AX1に沿って貫く貫通穴311が形成されている。同様に、円筒状のシャフト320の内側には、これを回転中心軸AX1に沿って貫く貫通穴321が形成されている。先に述べたエネルギー付与部材400は、これら貫通穴311、321の両方に対して挿通されている。
エネルギー付与部材400は、電流が流れることによって発熱する電熱線である。本実施形態におけるエネルギー付与部材400は、断面が円形であり且つ直線状に伸びる電熱線となっている。エネルギー付与部材400の中心軸は、回転中心軸AX1に一致している。尚、図3においてはチャック610、620の図示が省略されているのであるが、先に述べたように、エネルギー付与部材400のうち-x方向側の端部はチャック610によって支持されている。また、エネルギー付与部材400のうちx方向側の端部はチャック620によって支持されている。
シャフト310とシャフト320との間には隙間が形成されている。当該隙間のx方向に沿った大きさは、第1突出部230と第2突出部240との間に形成された隙間の、同方向に沿った大きさと同じである。エネルギー付与部材400のうち、シャフト310とシャフト320との間の隙間に配置された部分には、図1,2,4,5のそれぞれに示される接地部材700が接続されている。接地部材700のうち、エネルギー付与部材400に接続されている方とは反対側の端部は、図1等に示されるようにベース200の外側に向けて突出しており、不図示のバスバーによって電気的に接地されている。これにより、エネルギー付与部材400のうち接地部材700が接続されている部分も電気的に接地されている。エネルギー付与部材400のうち、接地部材700が接続され電気的に接地されている部分のことを、以下では「接地部401」とも称する。
エネルギー付与部材400のうち-x方向側の端部には、スイッチ13を介して電源12が接続されている。スイッチ13が閉じられると、エネルギー付与部材400の端部には電源12からの電圧が印可される。エネルギー付与部材400のうち、電源12が接続されている端部のことを、以下では「電圧印可部402」とも称する。
電圧印可部402に電源12からの電圧が印可されると、電圧印可部402と接地部401との間には電流が流れる。このため、エネルギー付与部材400のうち電圧印可部402と接地部401との間の部分ではジュール熱が生じて、当該部分に巻かれている第1アクチュエータ部510が加熱される。その結果、第1アクチュエータ部510は収縮し、被駆動部100が第1方向(図1の矢印AR1)に駆動される。
尚、接地部401は接地部材700を介して電気的に接地されているので、上記のような発熱は、エネルギー付与部材400のうち電圧印可部402と接地部401との間の部分においてのみ生じる。エネルギー付与部材400のうち電圧印可部402と接地部401との間の部分は、第1アクチュエータ部510に熱エネルギーを与える部分、ということができる。当該部分のことを以下では「第1付与部410」とも称する。
エネルギー付与部材400のうちx方向側の端部には、スイッチ15を介して電源14が接続されている。スイッチ15が閉じられると、エネルギー付与部材400の端部には電源14からの電圧が印可される。エネルギー付与部材400のうち、電源14が接続されている端部のことを、以下では「電圧印可部403」とも称する。
電圧印可部403に電源14からの電圧が印可されると、電圧印可部403と接地部401との間には電流が流れる。このため、エネルギー付与部材400のうち電圧印可部403と接地部401との間の部分ではジュール熱が生じて、当該部分に巻かれている第2アクチュエータ部520が加熱される。その結果、第2アクチュエータ部520は収縮し、被駆動部100が第2方向(図1の矢印AR2)に駆動される。
尚、接地部401は接地部材700を介して電気的に接地されているので、上記のような発熱は、エネルギー付与部材400のうち電圧印可部403と接地部401との間の部分においてのみ生じる。エネルギー付与部材400のうち電圧印可部403と接地部401との間の部分は、第2アクチュエータ部520に熱エネルギーを与える部分、ということができる。当該部分のことを以下では「第2付与部420」とも称する。
アクチュエータ装置10では、スイッチ13が閉じられると、被駆動部100は第1アクチュエータ部510によって第1方向に駆動され、スイッチ15が閉じられると、被駆動部100は第2アクチュエータ部520によって第2方向に駆動される。スイッチ13及びスイッチ15のそれぞれの動作は、不図示の制御装置によって制御される。制御装置は、第1アクチュエータ部510及び第2アクチュエータ部520の動作を個別に調整することで、被駆動部100の位置決め等を正確に行うことができる。
以上に説明したように、本実施形態に係るアクチュエータ装置10では、第1アクチュエータ部510に熱エネルギーを与えるための第1付与部410と、第2アクチュエータ部520に熱エネルギーを与えるための第2付与部420とが、単一のエネルギー付与部材400における互いに異なる部分として構成されている。このような構成としたことの利点を説明するために、図9に示される比較例について説明する。
この比較例に係るアクチュエータ装置10Aでは、被駆動部100に形成された貫通穴121、131のそれぞれに対し、シャフト800が挿通された状態で固定されている。シャフト800は円柱形状の部材であって、その中心軸は回転中心軸AX1に一致している。
アクチュエータ装置10Aが備えるベース200の突出部220には、これをx軸に沿って貫くように円形の貫通穴221が形成されている。貫通穴221の中心軸は、回転中心軸AX1と一致している。また、貫通穴221の内径は、シャフト800の外径と概ね等しい。シャフト800の外周面と、貫通穴221の内周面との間は、互いに固定されておらず、シャフト800が突出部220に対して摺動し得る状態となっている。
以上のような構成により、この比較例における被駆動部100は、シャフト800と一体となった状態で、回転中心軸AX1の周りにおいて回転自在な状態で支持されている。
この比較例においては、第1付与部410と第2付与部420とが互いに分離されている。図9に示されるように、第1付与部410のうちx方向側の端部は、被駆動部100の側壁部120よりも僅かに-x方向側となる位置まで伸びている。当該端部は、不図示のバスバーによって電気的に接地されている。
第1付与部410のうち-x方向側の端部は、第1実施形態と同様にチャック610によって支持されている。当該端部は、第1実施形態と同様に電圧印可部402となっており、図示は省略するがスイッチ13を介して電源12が接続されている。
第2付与部420のうち-x方向側の端部は、被駆動部100の側壁部130よりも僅かにx方向側となる位置まで伸びている。当該端部は、不図示のバスバーによって電気的に接地されている。
第2付与部420のうちx方向側の端部は、第1実施形態と同様にチャック620によって支持されている。当該端部は、第1実施形態と同様に電圧印可部403となっており、図示は省略するがスイッチ15を介して電源14が接続されている。
第1アクチュエータ部510は、本実施形態でも第1付与部410に対して螺旋状に巻き付けられており、その一端がチャック610に対して固定されている。第1アクチュエータ部510の他端は、被駆動部100のうち-x方向側の側面100Aに対して、不図示のチャック機構により固定されている。
被駆動部100のうち、第1アクチュエータ部510の端部が接続されている部分(図9において符号108が付されている部分)の位置は、z軸に沿って見た場合において回転中心軸AX1よりもy方向側の位置となっている。このため、第1付与部410によって第1アクチュエータ部510が加熱されて収縮すると、被駆動部100は回転中心軸AX1の周りを回転するように駆動される。その回転方向は、図1において矢印AR1で示される方向(つまり第1方向)と同じである。
第2アクチュエータ部520は、本実施形態でも第2付与部420に対して螺旋状に巻き付けられており、その一端がチャック620に対して固定されている。第2アクチュエータ部520の他端は、被駆動部100のうちx方向側の側面100Bに対して、不図示のチャック機構により固定されている。
被駆動部100のうち、第2アクチュエータ部520の端部が接続されている部分(図9において符号109が付されている部分)の位置は、z軸に沿って見た場合において回転中心軸AX1よりも-y方向側の位置となっている。このため、第2付与部420によって第2アクチュエータ部520が加熱されて収縮すると、被駆動部100は回転中心軸AX1の周りを回転するように駆動される。その回転方向は、図1において矢印AR2で示される方向(つまり第2方向)と同じである。
この比較例においても、不図示の制御装置は、被駆動部100を第1方向及び第2方向のそれぞれに駆動することができる。ただし、アクチュエータ装置10Aでは、被駆動部100を第1方向に駆動するための第1アクチュエータ部510と、被駆動部100を第2方向に駆動するための第2アクチュエータ部520とが、互いに別体の部材として設けられている。更に、第1アクチュエータ部510に熱エネルギーを加えるための第1付与部410と、第2アクチュエータ部520に熱エネルギーを加えるための第2付与部420とが、やはり互いに別体の部材として設けられている。
このような構成の比較例では、被駆動部100を駆動する方向の数(この例では2)だけ、アクチュエータ部材及びエネルギー付与部材を個別に用意して組み立てる必要がある。このため、アクチュエータ装置10Aの部品点数が増加してしまう。
これに対し、本実施形態では、第1アクチュエータ部510と第2アクチュエータ部520とが、単一のアクチュエータ部材500における互いに異なる部分として構成されている。また、第1付与部410と第2付与部420とが、単一のエネルギー付与部材400における互いに異なる部分として構成されている。これにより、第1アクチュエータ部510と第2アクチュエータ部520とが一部品によって構成され、第1付与部410と第2付与部420とも一部品によって構成されるので、アクチュエータ装置10の部品点数を抑制することができる。
また、比較例に係るアクチュエータ装置10Aを組み立てる際には、先ず第1アクチュエータ部510が螺旋状とされ、これに第1付与部410が通される。その後、第1アクチュエータ部510の一端がチャック610に固定され、他端が被駆動部100の側面100Aに固定される。更に、第2アクチュエータ部520が螺旋状とされ、これに第2付与部420が通される。その後、第2アクチュエータ部520の一端がチャック620に固定され、他端が被駆動部100の側面100Bに固定される。
これに対し、本実施形態に係るアクチュエータ装置10を組み立てる際には、単一の部材であるアクチュエータ部材500が螺旋状とされ、これに、単一の部材であるエネルギー付与部材400が通されると共に、非付与部530が被駆動部100の直線状の溝111に掛けられる。その後、アクチュエータ部材500の一端がチャック610に固定され、他端がチャック620に固定される。
以上のようであるから、アクチュエータ装置10を組み立てるために必要な工程の数は、アクチュエータ装置10Aを組み立てるために必要な工程の数に比べて、概ね半分にまで減らすことができる。
また、第1アクチュエータ部510と第2アクチュエータ部520とを、互いに別体のものとした場合に比べて、材料の違いに起因した両者間の動作特性の差異を抑制し得るという利点も得られる。同様に、第1付与部410と第2付与部420とを、互いに別体のものとした場合に比べて、材料の違いに起因した両者間の発熱特性の差異を抑制し得るという利点も得られる。
本実施形態に係るアクチュエータ装置10では、アクチュエータ部材500が、第1付与部410及び第2付与部420のいずれからも熱エネルギーが与えられない部分として、非付与部530を有している。非付与部530は、被駆動部100の溝111に収容されており、これにより非付与部530が被駆動部100に接続されている。その結果、アクチュエータ部材500の一部である非付与部530が、被駆動部100に力を加えるための部分として機能している。被駆動部100に対するアクチュエータ部材500の接続を容易に行うことができるので、アクチュエータ装置10の製造をより容易に行うことが可能となっている。
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
図6に示されるように、本実施形態に係るアクチュエータ装置10では、被駆動部100を回転自在に支持するためのベース200が設けられていない。本実施形態における被駆動部100は、エネルギー付与部材400によって、回転中心軸AX1の周りにおいて回転自在な状態で支持されている。
本実施形態では、被駆動部100を支持し得るように、エネルギー付与部材400が第1実施形態に比べて太く形成されている。被駆動部100には、これをx軸に沿って貫くように円形の貫通穴151が形成されている。貫通穴151の中心軸は、回転中心軸AX1と一致している。また、貫通穴151の内径は、エネルギー付与部材400の外径と等しい。
エネルギー付与部材400の外周面と、貫通穴151の内周面との間は、互いに固定されておらず、被駆動部100がエネルギー付与部材400に対して摺動し得る状態となっている。このような構成により、被駆動部100は、エネルギー付与部材400によって、回転中心軸AX1の周りにおいて回転自在な状態で支持されている。
本実施形態では、エネルギー付与部材400のうち貫通穴151に挿通されている部分の一部が接地部401となっている。接地部401には、例えば柔軟な導電線の一端が接続されており、これにより接地部401が電気的に接地されている。
被駆動部100に形成された溝111の形状や、溝111に一部が収容されたアクチュエータ部材500の構成等については、第1実施形態と同じである。このため、不図示のスイッチ13が閉じられると、第1付与部410(エネルギー付与部材400のうち、接地部401よりも-x方向側の部分)に巻かれている第1アクチュエータ部510が加熱されて収縮し、被駆動部100が図1の矢印AR1で示される方向(第1方向)に駆動される。同様に、不図示のスイッチ15が閉じられると、第2付与部420(エネルギー付与部材400のうち、接地部401よりも-x方向側の部分)に巻かれている第2アクチュエータ部520が加熱されて収縮し、被駆動部100が図1の矢印AR2で示される方向(第2方向)に駆動される。このような態様であっても、第1実施形態において説明したものと同様の効果を奏する。
また、本実施形態では、被駆動部100を支持するためのベース200をなくすことができるので、アクチュエータ装置10の部品点数が更に抑制されるという利点も得られる。
第3実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
図7には、本実施形態に係るアクチュエータ装置10の全体構成が模式的に示されている。本実施形態においても、被駆動部100は、ベース200によって、回転中心軸AX1の周りに回転自在な状態で支持されている。そのための具体的な構成としては、第1実施形態や図9の比較例と同様の構成を採用することができる。
本実施形態では、エネルギー付与部材400の全体が、被駆動部100よりもx方向側となる位置に配置されている。このエネルギー付与部材400は一直線状に形成されているのではなく、図7に示されるような形状に形成されている。エネルギー付与部材400は、第1部分400Aと、第2部分400Bと、第3部分400Cと、を有している。尚、図7においては、エネルギー付与部材400に沿って配置されたアクチュエータ部材500の図示が省略されている。本実施形態におけるアクチュエータ部材500の配置については、後に図8を参照しながら説明する。
第1部分400Aは、x軸に沿って直線状に伸びるように形成された部分である。第1部分400Aは、回転中心軸AX1よりもz方向側であり、且つ-y方向側となる位置に配置されている。第1部分400Aのうち-x方向側の端部は、被駆動部100のうちx方向側の側面100Bの近傍となる位置まで伸びている。第1部分400Aのうち-x方向側の端部は、不図示のチャック610に固定されている。当該端部は、スイッチ13を介して電源12が接続されており、本実施形態における電圧印可部402となっている。
第2部分400Bは、第1部分400Aのうち-x方向側の端部から、y方向に直線状に伸びるように形成された部分である。第2部分400Bは側面100Bに沿って伸びているのであるが、第2部分400Bと側面100Bとの間には僅かな隙間が形成されている。第2部分400Bのうち、y方向に沿った中央となる部分は、不図示のバスバーによって電気的に接地されており、本実施形態における接地部401となっている。
第3部分400Cは、第2部分400Bのうちy方向側の端部から、x方向に直線状に伸びるように形成された部分である。第3部分400Cのうちx方向側の端部は、不図示のチャック620に固定されている。当該端部は、スイッチ15を介して電源14が接続されており、本実施形態における電圧印可部403となっている。
不図示の制御装置によってスイッチ13が閉じられると、エネルギー付与部材400のうち、電圧印可部402から接地部401までの部分が発熱する。当該部分は、本実施形態における第1付与部410に該当する。同様に、制御装置によってスイッチ15が閉じられると、エネルギー付与部材400のうち、電圧印可部403から接地部401までの部分が発熱する。当該部分は、本実施形態における第2付与部420に該当する。
図8を参照しながら、本実施形態におけるアクチュエータ部材500の配置について説明する。本実施形態でも、アクチュエータ部材500はその全体が単一のポリマー繊維によって形成されている。図8に示されるように、アクチュエータ部材500はエネルギー付与部材400に沿って配置されている。第1部分400A及び第3部分400Cのそれぞれにおいては、アクチュエータ部材500がエネルギー付与部材400に対して螺旋状に巻き付けられている。一方、第2部分400Bにおいては、アクチュエータ部材500がエネルギー付与部材400に対して巻き付けられておらず、エネルギー付与部材400に沿って直線状に伸びている。
アクチュエータ部材500のうち、第2部分400Bに沿って直線状に伸びている部分の一部は、被駆動部100のうちx方向側の側面100Bに対して固定されている。具体的には、側面100Bのうち、y方向に沿った中央となる位置であり、且つ回転中心軸AX1よりもz方向側となる位置に、アクチュエータ部材500の一部である被固定部PTが固定されている。
スイッチ13が閉じられると第1付与部410が発熱する。このため、アクチュエータ部材500のうち被固定部PTよりも-y方向側の部分(特に第1部分400Aに巻き付けられている部分)が加熱されて収縮する。これに伴い、被固定部PTは、図8の矢印AR11に沿って-y方向側に移動する。その結果、被駆動部100は被固定部PTから力を受けて駆動され、回転中心軸AX1の周りを矢印AR21で示される方向に回転する。当該方向は、本実施形態における「第1方向」に該当する。
上記のように、アクチュエータ部材500のうち被固定部PTよりも-y方向側の部分は、第1付与部410から熱エネルギーを与えられることによって収縮し、被駆動部100を第1方向に駆動する部分となっている。このため、当該部分は、本実施形態における「第1アクチュエータ部510」に該当する。
尚、第1アクチュエータ部510が収縮した際には、第1アクチュエータ部510の一部がエネルギー付与部材400からずれてしまうことが懸念される。これを防止するためには、第1部分400Aと第2部分400Bとの境界部分(図8において符号CN1が付された部分)に、例えばリング状のガイド部材を配置し、これに第1アクチュエータ部510を通すこととすればよい。
スイッチ15が閉じられると第2付与部420が発熱する。このため、アクチュエータ部材500のうち被固定部PTよりもy方向側の部分(特に第3部分400Cに巻き付けられている部分)が加熱されて収縮する。これに伴い、被固定部PTは、図8の矢印AR12に沿ってy方向側に移動する。その結果、被駆動部100は被固定部PTから力を受けて駆動され、回転中心軸AX1の周りを矢印AR22で示される方向に回転する。当該方向は、本実施形態における「第2方向」に該当する。
上記のように、アクチュエータ部材500のうち被固定部PTよりもy方向側の部分は、第2付与部420から熱エネルギーを与えられることによって収縮し、被駆動部100を第2方向に駆動する部分となっている。このため、当該部分は、本実施形態における「第2アクチュエータ部520」に該当する。
尚、第2アクチュエータ部520が収縮した際には、第2アクチュエータ部520の一部がエネルギー付与部材400からずれてしまうことが懸念される。これを防止するためには、第3部分400Cと第2部分400Bとの境界部分(図8において符号CN2が付された部分)に、例えばリング状のガイド部材を配置し、これに第2アクチュエータ部520を通すこととすればよい。
以上に示した各実施形態においては、アクチュエータ部材500としてポリマー繊維が用いられている。このような態様に限定されず、アクチュエータ部材500として例えば形状記憶合金が用いられることとしてもよい。また、アクチュエータ部材500は、熱エネルギーを与えられて変形するものに限られず、他のエネルギーを与えられて変形するものであってもよい。例えば、電気エネルギーを受けて変形するピエゾ素子が、アクチュエータ部材500として用いられてもよい。この場合のエネルギー付与部材400は、アクチュエータ部材500に電気エネルギーを与えるものとして構成されることとなる。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。