以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、以下の各実施形態に記載されている構成はあくまで例示に過ぎず、本発明の範囲は各実施の形態に記載されている構成によって限定されることはない。
図1は、本実施形態の光量調節装置100の分解斜視図を示す。光量調節装置100は、カメラ等の光学機器の絞りを調整するための機構として、当該光学機器に組み込まれる。光量調節装置100により光通過開口の大きさが調節されることで、カメラ(光学機器)の撮像面に取り込まれる光の光量や被写界深度が調節される。図1に示されるように、光量調節装置100は、アクチュエータ101、ベース部材102、複数の光量調節羽根103、駆動リング104およびケース部材105を有する。アクチュエータ101は、複数の光量調節羽根103を回動させる駆動部であり、アクチュエータ101の回転軸に、ピニオン111が取り付けられている。また、アクチュエータ101は、固定部材112により、ベース部材102に固定される。
ベース部材102は、リング状の部材であり、中心が円状に開口している形状となっている。ベース部材102は、複数の軸受け121、複数の貫通溝122およびピニオン挿通孔124を有する。各軸受け121には、光量調節羽根103に設けられる回転中心ピン201が回動可能に挿入される。また、各貫通溝122には、光量調節羽根103に設けられる後述のバネ掛け止め部が挿入され、バネ掛け止め部は、貫通溝122に案内されて所定範囲を移動する。軸受け121および貫通溝122の数は、光量調節羽根103の枚数と同じである。各軸受け121および各貫通溝122は、ベース部材102の開口領域の周囲に、所定回転角度ごとに設けられる。光量調節羽根103にバネ掛け止め部が設けられない場合、ベース部材102に貫通溝122は形成されない。ピニオン挿通孔124は、アクチュエータ101の回転軸に取り付けられたピニオン111を挿入するための孔である。なお、図1では、1枚の光量調節羽根103に回転中心ピン201が設けられている例を示しているが、後述するように、各光量調節羽根103のそれぞれに、回転中心ピン201が設けられている。
各光量調節羽根103は、環状に配置された構成となっている。環状に配置された各光量調節羽根103の内側により開口部300の縁部が形成される。図1の例では、9枚の光量調節羽根103が円環状に配置されており、各光量調節羽根103は、隣接した光量調節羽根103(他の光量調節羽根103)と相互に重なり合うように構成されている。各光量調節羽根103は、ベース部材102と対向する面に、後述する回転中心ピン201を有しており、回転中心ピン201は、ベース部材102に回動可能に挿入される。回転中心ピン201は、回転中心部に対応する。各光量調節羽根103は、駆動リング104と対向する面に駆動ピン202を有しており、駆動ピン202は、駆動リング104のカム溝131に挿入される。各光量調節羽根103のうち、回転中心ピン201および駆動ピン202を含む部位は基部(羽根基部)を構成しており、当該基部から先端までの部位は羽根部203を構成する。本実施形態の各光量調節羽根103は、合成樹脂による一体成型品である。各光量調節羽根103は、同一形状をしており、同じ金型を用いた射出成型による一体成型により生成されるものとする。本実施形態では、9枚の光量調整羽根103が用いられる例を示すが、光量調整羽根103の枚数は任意の枚数であってよい。
駆動リング104は、中心が円状に開口しているリング状の部材であり、複数のカム溝131およびギア部132を有している。カム溝131は、光量調節羽根103の駆動ピン202を案内する溝である。被駆動部としてのギア部132は、アクチュエータ101に取り付けられたピニオン111と噛み合っている。アクチュエータ101の駆動力がピニオン111からギア部132に伝達されることで、駆動リング104が回転する。
ケース部材105は、中心が円状に開口しているリング状の部材であり、各光量調節羽根103および駆動リング104を挟み込んだ状態で、ベース部材102とケース部材105とをビス止めすること等により、光量調節装置100が組み立てられる。
光量調節装置100が組み立てられた状態で、アクチュエータ101が駆動すると、駆動力がピニオン111に伝達され、駆動リング104が回転する。駆動リング104が回転すると、各光量調節羽根103の駆動ピン202がカム溝131に沿って移動することで、各光量調節羽根103は、回転中心ピン201を中心として回動する。各光量調節羽根103は、駆動リング104の回転により、連動して回動する。各光量調節羽根103が連動して回動することにより、各光量調節羽根103により形成される円形の開口部300の面積が変化する。各光量調節羽根103は、アクチュエータ101の駆動力が作用すると、開口部300の面積を最も広くする位置から最も狭くする位置まで回動する。開口部300の面積が最も広くなっている場合、光量調節装置100による調節された絞りは、最も広い開放状態となる。開口部300の面積が最も狭くなっている場合、光量調節装置100により調節された絞りは、最も狭い最小絞りとなる。最小絞りのときに、開口部300(光通過開口)が、最小絞り開口となる。当該最小絞りは、小絞りとも呼ばれる。絞りが開放状態となっている場合、光学機器の撮像面に取り込まれる光量が最も多くなり、被写界深度が最も浅くなる。絞りが最小絞り状態となっている場合、光学機器の撮像面に取り込まれる光の光量が最も少なくなり、被写界深度が最も深くなる。絞りの範囲は任意に設定されてよく、設定された絞りの範囲に応じて各光量調節羽根103の回動量が決まる。
図2は、第1のパターンにおける3種類の光量調節羽根103の平面図を示す。第1のパターンは、光量調節羽根103の先端に向かう方向と所定角度以上で交差する線状の部分接触部205が、光量調節羽根103に形成されているパターンである。部分接触部205は、凹凸部に対応する。図2(A)は、部分接触部205が最も広い場合の光量調節羽根103を示す。光量調節羽根103は、回転中心ピン201および駆動ピン202を含む基部204と、開口部300の縁部を形成する羽根部203とを有して構成される。基部204は厚肉となっており、羽根部203は基部204より薄肉となっている(羽根部203の厚みは、基部204の厚みよりも薄い)。例えば、射出ゲートを有する金型およびイジェクタピンがセットされた射出成型装置を用いて、光量調節羽根103を合成樹脂により一体成型する場合、射出ゲートおよびイジェクタピンを、基部204側に配置する。これにより、基部204側を厚肉とすることができる。一方、樹脂は、射出ゲートおよびイジェクタピンが配置された基部204側から流れ込むため、羽根部203を、基部204より薄肉とすることができる。図2(A)に示されるように、羽根部203は、部分接触部205が形成された領域と、部分接触部205が形成されていない領域とにより構成される。部分接触部205が形成されていない領域(羽根部203のうち部分接触部205が形成されている領域以外の領域)は平面形状をしており、当該領域は平面部206となる。羽根部203において、部分接触部205は先端部207の側に形成され、平面部206は基部204の側に形成される。羽根部203は、開口部300(光通過開口)の縁部が湾曲部210を形成しており、当該湾曲部210は、始点211から先端部207まで湾曲した形状となっている。図2(A)~(C)に示されるように、部分接触部205と平面部206との境界は第1の境界212となっている。また、図2(B)および(C)に示されるように、部分接触部205から先端部207までの領域は平面部となっており、当該平面部と部分接触部205との境界が第2の境界213となっている。
図3(A)は、図2(A)の光量調節羽根103が2枚重なり合っている状態の平面図を示し、図3(B)は、図3(A)のA-A断面図を示す。図3(B)に示されるように、部分接触部205は、断面が山状の起伏部205Aを、羽根部203の先端部207に向かう方向と所定角度以上で交差する方向に並列に配列した形で形成される。各起伏部205Aの頂点は、羽根部203の先端部207に向かう方向と交差する方向に直線状に延在する。従って、各起伏部205Aの頂点が直線状に延在することで、複数の線状の線接触部を有する部分接触部205が形成される。複数の線状の線接触部により、部分接触部205は、全体として縞模様の形状となる。この場合、部分接触部205の縞模様の縞の方向は、羽根部203の先端部207に向かう方向と交差する方向である。各光量調節羽根103の一面は、部分接触部205が形成される面であり、反対面は、部分接触部205が形成されない平面形状である。そして、各光量調節羽根103は、それぞれ、部分接触部205が形成されている面が、他の光量調節羽根103の部分接触部205が形成されていない面(平面)と重なり合うように、組み合わせられる。
以上の構成により、各光量調節羽根103は、他の光量調節羽根103と、部分接触部205において線接触を行う。上述したように、各光量調節羽根103は、アクチュエータ101の駆動力により、連動して回動する。各光量調節羽根103は、他の光量調節羽根103と接触しながら回動するため、摺動摩擦が生じる。そこで、各光量調節羽根103の羽根部203の一部の領域に部分接触部205を形成することで、各光量調節羽根103は、他の光量調節羽根103と線接触を行いながら回動するため、面接触しながら回動するよりも、摺動摩擦が少なくなる。これにより、各光量調節羽根103が回動した際の摺動性が高くなり、各光量調節羽根103は円滑に回動する。
ここで、図2(A)および図3(A)に示されるように、部分接触部205は、光量調節羽根103の羽根部203のうち一部の領域に形成されている。本実施形態の光量調節羽根103は、隣接する他の光量調節羽根103と接触しない領域に部分接触部205を形成していない。つまり、羽根部203には、部分接触部205の他に、平面部206が形成されている。光量調節羽根103の羽根部203のうち、隣接する他の光量調節羽根103と接触しない領域(非接触領域)に部分接触部205を形成したとしても、摺動性が向上することはなく、当該非接触領域に部分接触部205を形成する必要性がない。そこで、本実施形態の光量調節羽根103は、羽根部203のうち、他の光量調節羽根103と接触する領域に部分接触部205を形成し、当該領域以外の領域を平面部206としている。
上述したように、光量調節羽根103は、合成樹脂による一体成型品である。射出ゲートを有する金型およびイジェクタピンがセットされた射出成型装置を用いて、光量調節羽根103を一体成型する場合、基部204の側から、樹脂が先端部207に向かって流れ込む。ここで、光量調節羽根103に形成される部分接触部205は、直線状に延在する複数の起伏部205Aを並列に配列した縞模様のパターンが形成されている。射出成型装置を用いて射出成型を行う際に、部分接触部205の領域には、上記のパターンが形成されているため、樹脂の流れが悪くなる。特に、図2(A)の部分接触部205の縞模様のパターンは、羽根部203の先端部207に向かう方向と交差する方向に向かうパターンであり、当該パターンの方向は、樹脂の流れの方向に抗する方向である。従って、部分接触部205が形成される領域では、射出成型時において樹脂の流れが悪くなる。その結果、部分接触部205の領域における成型の精度が低下する。本実施形態の光量調節羽根103は、羽根部203のうち一部の領域に部分接触部205が形成され、他の領域(非接触領域)は平面部206となっている。平面部206の領域では、樹脂が安定的に流れるため、羽根部203の一部に部分接触部205を形成する場合でも、羽根部203の全面に部分接触部205を形成する場合と比較して、光量調節羽根103の成型の精度が向上する。
各光量調節羽根103は、絞りが開放状態のときに、他の光量調節羽根103と最も広い範囲で接触する。図2(A)に示される光量調節羽根103は、絞りが開放状態のときに、他の光量調節羽根103と接触する両雨域に部分接触部205が形成されている。一方、図2(B)および図2(C)に示される部分接触部205の領域は、図2(A)に示される部分接触部205の領域よりも狭い。図2(B)は、絞りが開放状態から最小絞り状態に至るまでの状態(以下、中間絞り状態とする)のときに、光量調節羽根103が他の光量調節羽根103と接触する領域に部分接触部205を形成した例を示す。図2(C)は、最小絞り状態のときに、光量調節羽根103が他の光量調節羽根103と接触する領域に部分接触部205を形成した例を示す。
上述したように、各光量調節羽根103が回動されると、絞りは、開放状態から最小絞り状態まで変化する。ここで、絞りが開放状態から最小絞り状態に変化する従って、各光量調節羽根103が回動した際に生じる摺動摩擦が大きくなることがある。本実施形態の各光量調節羽根103には、少なくとも、絞りが最小絞り状態のとき(光通過開口が最小絞り口径のとき)に他の光量調節羽根103と重なり合う領域に部分接触部205が形成されるようにする。図2(C)の場合、羽根部203のうち、部分接触部205が形成される領域が最も狭くなり、部分接触部205を形成する起伏部205Aは断続的に形成される。従って、図2(C)の場合、部分接触部205が形成されていない平面部206の領域が広くなるため、光量調節羽根103の一体成型時の樹脂の流れが安定する。このため、光量調節羽根103の成型の精度が向上する。また、図2(C)の光量調節羽根103の場合、摺動摩擦が最も大きくなる最小絞り状態のときに、他の光量調節羽根103と重なり合う領域に部分接触部205を形成している。従って、光量調節羽根103のうち、摺動摩擦が最も大きく作用する領域が他の光量調節羽根103と部分的に線接触を行うため、摺動摩擦を低下させることができ、摺動性が向上する。
図2(B)の光量調節羽根103の羽根部203に形成される部分接触部205の領域は、図2(A)の光量調節羽根103より狭く、図2(C)の光量調節羽根103より広い。図2(B)の光量調節羽根103の羽根部203には、中間絞り状態のときに、他の光量調節羽根103と接触する領域に部分接触部205が形成されている。中間絞り状態における光量調節羽根103は、開放状態のときよりも、他の光量調節羽根103との接触による摺動摩擦が大きくなることがある。このため、光量調節羽根103の羽根部203に、中間絞り状態のときに、他の光量調節羽根103と接触する領域に部分接触部205を形成することで、摺動摩擦の低減を図ることができる。また、図2(B)の光量調節羽根103に形成される部分接触部205は、図2(A)の光量調節羽根103に形成される部分接触部205より狭いため、樹脂の流れの悪さに起因する光量調節羽根103の成型の精度低下を抑制できる。
図2(B)の中間絞り状態においては、第2の境界213から先端部207までには、部分接触部205が形成されておらず、第2の境界213から先端部207までの領域は平面部となっている。当該平面部の領域は、中間絞り状態において、他の光量調節羽根103と接触しない領域である。図2(B)に示されるように、第1の境界212から第2の境界213までの領域に限定して部分接触部205を形成することで、摺動摩擦の低減を図るための部分接触部205を必要最小限の領域とすることができる。図2(C)の最小絞り状態の場合も同様であり、第2の境界213から先端部207までの領域には、部分接触部205が形成されていない平面部となっている。従って、第1の境界212から第2の境界213までの領域に限定して部分接触部205を形成することで、摺動摩擦の低減を図るための部分接触部205を必要最小限の領域とすることができる。
また、図2(B)に示されるように、開口部300の縁部を形成する湾曲部210の外側には外縁部221が形成されており、当該外縁部221には部分接触部205が形成されておらず、平面部となっている。当該外縁部221の領域は、中間絞り状態において、他の光量調節羽根103と接触しない領域であり、外縁部221に部分接触部205を形成する必要はない。そこで、外縁部221の領域を部分接触部205としないことで、摺動摩擦の低減を図るための部分接触部205を必要最小限の領域とすることができる。また、外縁部221は、羽根部203の他の領域より肉厚になっていてもよい。羽根部203の外縁部221の領域が、他の領域より肉厚となっていることにより、光量調節羽根103の全体の剛性が向上するという効果がある。図2(C)の最小絞り状態の場合も同様であり、開口部300の縁部を形成する湾曲部210の外側には外縁部222が形成されており、当該外縁部222には部分接触部205が形成されておらず、平面部となっている。これにより、摺動摩擦の低減を図るための部分接触部205を必要最小限の領域とすることができる。また、外縁部222を、羽根部203の他の領域より肉厚な構成とすることにより、光量調節羽根103の全体の剛性が向上する。以下、第2のパターンおよび第3のパターンにおいて、第1の境界212や第2の境界213、外縁部221、222等は、特に図示されないが、第2のパターンおよび第3のパターンも、第1のパターンと同様であるとする。
図4は、第2のパターンにおける光量調節羽根103の平面図を示す。第2のパターンは、光量調節羽根103の先端に向かう方向に沿った方向に線状の部分接触部205が、光量調節羽根103に形成されているパターンである。第2のパターンは、上述した第1のパターンと同様、断面が山状の起伏部205Aが並列に配列された形状となっており、各起伏部205Aの頂点が直線状に延在している。これにより、部分接触部205に、複数の線状の線接触部が形成される。第2のパターンの部分接触部205の各線接触部の方向は、第1のパターンの部分接触部205と異なる。図4(A)は、開放状態のときに、他の光量調節羽根103と重なり合う領域に、上記の部分接触部205が形成されている光量調節羽根103の例を示す。図4(B)は、中間絞り状態のときに、他の光量調節羽根103と重なり合う領域に、上記の部分接触部205が形成されている光量調節羽根103の例を示す。図4(C)は、最小絞り状態のときに、他の光量調節羽根103と重なり合う領域に、上記の部分接触部205が形成されている光量調節羽根103の例を示す。図5(A)は、図4(A)の光量調節羽根103が2枚重なり合っている状態の平面図であり、図5(B)は、図5(A)のB-B断面図である。図6(A)は、図4(A)の光量調節羽根103が2枚重なり合っている状態の平面図であり、図6(B)は、図6(A)のC-C断面図である。
図4(A)に示されるように、第2のパターンの光量調節羽根103における部分接触部205の各線接触部が延在する方向は、基部204から先端部207に向かう方向に沿っている。従って、第2のパターンの部分接触部205の縞模様の方向が、第1のパターンの部分接触部205の縞模様の方向と異なる。第1のパターンのうち図2(A)の光量調節羽根103の部分接触部205の各線接触部が延在する方向は、羽根部203の先端部207に向かう方向と交差する方向であるため、射出成型時における樹脂の流れを低下させる要因となる。一方、第2のパターンの光量調節羽根103の部分接触部205の各線接触部が延在する方向は、羽根部203の先端部207に向かう方向に沿っているため、第1のパターンの光量調節羽根103よりも、射出成型時における樹脂の流れが安定する。射出成型時における樹脂の流れが安定するため、第2のパターンの光量調節羽根103を一体成型する際の精度が向上する。そして、第2のパターンの光量調節羽根103においても、羽根部203のうち一部の領域に、開放状態、中間絞り状態または最小絞り状態の何れかに対応した部分接触部205を形成しているため、摺動摩擦を低減させることができる。
図7は、第3のパターンにおける光量調節羽根103の平面図を示す。第3のパターンは、複数の突起部205Bを有する部分接触部205が、光量調節羽根103に形成されているパターンである。図7(A)は、絞りが開放状態のときに、他の光量調節羽根103と重なり合う領域に、上記の部分接触部205が形成されている光量調節羽根103の例を示す。図7(B)は、絞りが中間絞り状態のときに、他の光量調節羽根103と重なり合う領域に、上記の部分接触部205が形成されている光量調節羽根103の例を示す。図7(C)は、絞りが最小絞り状態のときに、他の光量調節羽根103と重なり合う領域に、上記の部分接触部205が形成されている光量調節羽根103の例を示す。図8(A)は、図7(A)の光量調節羽根103が2枚重なり合っている状態の平面図であり、図8(B)は、図8(A)のD-D断面図である。
図8(B)の断面図に示されるように、光量調節羽根103の部分接触部205に形成された各突起部205Bの先端(凹凸部の凸部分の先端)は、それぞれ、他の光量調節羽根103と点接触を行う。従って、光量調節羽根103の部分接触部205が、他の光量調節羽根103と線接触する第1のパターンおよび第2のパターンと比較して、第3のパターンの部分接触部205は、他の光量調節羽根103と点接触するため、接触面積を低減できる。このため、各光量調節羽根103が回動する際の摺動性をさらに向上させることができる。また、図7(A)~(C)に示されるように、各光量調節羽根103の羽根部203には、他の光量調節羽根103と接触する一部の領域に部分接触部205が形成されており、羽根部203のうち部分接触部205が形成されていない領域は平面部206となる。従って、射出成型により光量調節羽根103を一体成型する際に、平面部206の領域では、樹脂の流れ性が低下しないことから、光量調節羽根103の成型の精度を高くすることができる。
次に、光量調節羽根103にバネ掛け部208が設けられている例について説明する。図9(A)は、バネ掛け部208が設けられた光量調節羽根103の斜視図である。図9(B)は、図9(A)の平面図である。当該光量調節羽根103は、図2(A)の光量調整羽根103に対応しているが、第1のパターンの他の光量調節羽根103(図2(B)または図2(C)の光量調節羽根103)にバネ掛け部208が設けられていてもよい。また、図4(A)~(C)の光量調節羽根103にバネ掛け部208が設けられてもよいし、後述するように、図7(A)~(C)の光量調節羽根103にバネ掛け部208が設けられてもよい。
バネ掛け部208は、後述するトーションバネを掛け止めるための部材であり、ベース部材102と対向する面に設けられる。射出成型により、光量調節羽根103が一体成型される場合、バネ掛け部208が設けられた光量調節羽根103が一体成型品として生成される。図10(A)は、上述した第3のパターン(複数の突起部205Bを有する部分接触部205が形成されているパターン)に対応した光量調節羽根103の斜視図である。図10(B)は、図10(A)の平面図である。図10(A)および(B)に示されるように、第3のパターンにおける光量調節羽根103のベース部材102と対向する面に、バネ掛け部208が設けられている。当該バネ掛け部208が設けられた光量調節羽根103は、合成樹脂による一体成型品である。
図11は、各部品が組み合わされた状態の光量調節装置100の裏側の面(ベース部材102のうち、各光量調節羽根103が対向する面の反対面)の斜視図である。また、図12は、図11の一部を拡大した図である。各光量調節羽根103がベース部材102に組み合わせられると、各光量調節羽根103に設けられたバネ掛け部208は、貫通溝122から、ベース部材102の裏面(各光量調節羽根103が対向する面の反対面)から突出する。ベース部材102の裏面には、各バネ掛け部208のそれぞれに対応して、ベース側バネ掛け部301およびバネ軸302が設けられている。バネ掛け部208は、9枚の光量調節羽根103のそれぞれに設けられている。従って、9つのベース側バネ掛け部301およびバネ軸302が、ベース部材102の裏面の開口領域の中心近傍に、所定回転角度ごとに、環状に設けられる。バネ軸302には、弾性部材としてのトーションバネ303が取り付けられている。トーションバネ303の一端の近傍には、ベース側バネ掛け部301に掛けられており、他端の近傍には、ベース部材102から突出したバネ掛け部208に掛けられている。各光量調節羽根103に設けられたバネ掛け部208は、貫通溝122により案内されて、内周方向または外周方向に変位する。アクチュエータ101の駆動力が作用していない状態では、トーションバネ303の付勢力により、バネ掛け部208は、貫通溝122のうち、光量調節装置100の絞りが開放状態となる位置に規制される。これにより、光量調節装置100の絞りは、開放状態となる。
光量調節装置100を組み込んだ光学機器(カメラ等)は、絞りの開閉制御を繰り返し行う。絞りの開閉制御が繰り返し行われると、各光量調節羽根103の往復差等に起因して、絞りの調節精度が低下することがある。トーションバネ303は、各光量調節羽根103のガタ寄せバネとして機能し、開放状態における各光量調節羽根103の姿勢が所定位置で規制されるように付勢力を作用させる。なお、各光量調節羽根103に付勢力を作用させる弾性部材としては、トーションバネ303以外の弾性を有する部材が適用されてもよい。
アクチュエータ101の駆動力が駆動リング104に伝達されると、駆動リング104が回転し、駆動ピン202がカム溝121に案内されて、絞りは最小絞り状態まで変化する。絞りが閉じられるに応じて、各光量調節羽根103に設けられたバネ掛け部208は、貫通溝122の内側に向かって移動する。バネ掛け部208には、トーションバネ303が掛けられているため、バネ掛け部208が貫通溝122の内側に移動すると(絞りが閉じられると)、バネ掛け部208に作用する付勢力が強くなる。光量調節装置100の絞りが閉じられる際には、バネ掛け部208に作用する付勢力に抗して、アクチュエータ101の駆動力により、各光量調節羽根103は回動する。各光量調節羽根103の基部204側に設けられたバネ掛け部208に強い付勢力が作用し、当該付勢力に抗して各光量調節羽根103を回動させると、各光量調節羽根103の先端部207近傍が光軸方向(スラスト方向)に反るようになる。光量調節羽根103の先端部207近傍がスラスト方向に反ると、他の光量調節羽根103との接触により生じる摺動摩擦が大きくなる。
図13は、絞りが最小絞り状態のときの光量調節装置100の例を示す図である。絞りが最小絞り状態のときに、各光量調節羽根103は、先端部207の近傍部位の反りが大きくなり、各光量調節羽根103の回動時における他の光量調節羽根103との接触による摺動摩擦が大きくなる。そこで、各光量調節羽根103のうち、部分接触部205は、少なくとも、絞りが最小絞り状態のときに、他の光量調節羽根103と接触する領域に形成される。なお、図13では、理解を容易にするために、1つの光量調節羽根103に部分接触部205が形成されている例を示しているが、他の光量調節羽根103にも、同様に、部分接触部205が形成されている。他の光量調節羽根103の部分接触部205は、図13において、透過的に示されている。図13において、部分接触部205の線接触部は、最小絞り状態に移行するときの摺動負荷を低減するように各光量調節羽根103の摺動する方向に沿って設けられている。
各光量調節羽根103の先端部207の近傍に部分接触部205が形成されることで、トーションバネ303の付勢力により、光量調節羽根103の先端部207が大きく反ったとしても、他の光量調節羽根103との接触による摺動摩擦を低減することができる。そして、絞りが最小絞り状態のときには、光量調節羽根103のうち他の光量調節羽根103と接触する領域は最も狭くなる。光量調節羽根103に形成される部分接触部205の領域が狭くなると、平面部206の領域が広くなり、射出成型時における樹脂の流れが安定する。これにより、合成樹脂による一体成型品である光量調節羽根103の成型の精度を向上させることができる。
図14は、絞りが開放状態における各光量調節羽根103の例を示す。絞りが開放状態の場合、開口部300の面積が最も広くなる。各光量調節羽根103の羽根部203には、絞りが開放状態のときに他の光量調節羽根103と接触する領域に部分接触部205が形成されている。また、各光量調節羽根103には、バネ掛け部208が設けられており、絞りの開閉制御が繰り返し行われたとしても、トーションバネ303の付勢力により、絞りが開閉上における各光量調節羽根103の姿勢は一定になる。このため、絞りの調節精度が低下することが抑制される。
図15は、図14の状態から最小絞り状態まで絞った各光量調節羽根103の例を示す。絞りが最小絞り状態の場合、開口部300の面積が最も狭くなる。絞りが最小絞り状態のときには、トーションバネ303の付勢力により、各光量調節羽根103の先端部207は大きく反るが、先端部207の近傍には部分接触部205が形成されているため、他の光量調節羽根103との接触による摺動摩擦が低減する。各光量調節羽根103の羽根部203のうち、絞りが開放状態のときに他の光量調節羽根103と接触する領域に部分接触部205を形成することで、絞りが開放状態から最小絞り状態までの全ての状態で、上記の摺動摩擦を低減できる。また、部分接触部205は、羽根部203のうち一部の領域に形成されているため、樹脂の流れが悪くなることに起因して、射出成型時の光量調節羽根103の成型の精度が低下することが抑制される。
図9~図15では、各光量調節羽根103にバネ掛け部208が設けられている例を説明したが、各光量調節羽根103にバネ掛け部208が設けられなくてもよい。また、バネ掛け部208に付勢力を作用させるトーションバネ303の弾性力は、絞りが開放状態における各光量調節羽根103の姿勢を規制することができれば、その弾性力は所定以下であってよい。トーションバネ303の弾性力が強くなると、各光量調節羽根103を回動させた際にアクチュエータ101に加わる負荷が高くなるため、トーションバネ303には、弾性力が弱めのものが用いられることが好ましい。
上述した例では、羽根部203の部分接触部205は、射出成型により成型されるものとして説明したが、部分接触部205は、射出成型以外の手法により羽根部203に形成されてもよい。図16は、他の例における光量調節羽根103が2枚重なり合っている状態を示す平面図およびその断面図を示す。図16の光量調節羽根103は、部分接触部205(凹凸部)が、不図示の樹脂シートに対して別途形成されるものとする。この場合、例えば、不図示の樹脂シートにニッケルの無電解めっきを施す工程が行われる。そして、部分接触部205のパターンが形成されたドット打ち抜きパターン形状のレジストマスキング層を樹脂シートに部分的に形成する工程が行われる。上記のドット打ち抜き形状パターンとしては、隣接する突起部205B同士の間隔が20μmであって、当該突起部205Bの先端同士が25μmピッチのパターンが用いられてもよい。そして、電解めっき法により無電解めっき膜上のレジストマスキング層以外の面にニッケル合金めっきを製膜する工程が行われる。製膜時の膜厚は、10μm程度であってもよい。そして、ニッケル合金めっきが製膜された樹脂シートを、炭酸ナトリウム等の経アルカリ溶液中に浸漬して、レジストマスキング層を剥離する工程が行われる。これにより、レジストマスキング層が完全に融解し、羽根部203に部分接触部205が形成された光量調節装置100が生成される。めっき膜としては、ニッケル等が用いられることが好ましいが、金属材料であってあれば、任意のめっきが用いられてもよい。また、めっき膜のパターン(凹凸のパターン)が形成された樹脂シートを打ち抜き、黒色塗装が施されてもよい。なお、回転中心ピン201や駆動ピン202等は、アウトサート成型等により、光量調節羽根103の基部204に設けられてもよい。
上述した各例において、光量調節装置100において、部分接触部205の起伏部205Aの頂点(または突起部205Bの先端)は、平面部206より高い位置にあってもよいし、低い位置にあってもよい。この点、部分接触部205の起伏部205Aの頂点(または突起部205Bの先端)は、平面部206より低い位置にあることが好ましい。つまり、羽根部203の厚み方向において、部分接触部205における線接触部や突起部205Bの高さは、平面部206より低い位置にあることが好ましい。この場合、他の光量調節装置100との摺動摩擦が少なくなるとともに、光量調節装置100の反りが低減する。また、光量調節羽根103の2つの面のうち部分接触部205が形成される面は、他の光量調節羽根103と部分接触する面であり、且つ最小絞り状態のときに他の光量調節羽根103からの反り力を受ける領域に形成されることが好ましい。これにより、光量調節羽根103が最小絞り状態から回動される際の摺動摩擦を低減する効果が高くなる。
また、上述した例では、トーションバネ303がバネ掛け部208に作用させる付勢力の方向は、各光量調節羽根103が開放状態となる方向として説明したが、付勢力の方向は上記の方向には限定されず、閉じる方向に付勢してもよい。また、各光量調節羽根103に対して付勢力が作用されなくてもよい。この場合、トーションバネ303およびバネ掛け部208は設けられてなくもよい。また、光量調節羽根103の部分接触部205(凹凸部)および平面部206には、反射率を低減させるために、シボ加工や梨地加工等が施されていてもよい。
上述したように、各光量調節羽根103が合成樹脂による一体成型品である場合、使用される樹脂としては、摺動性を上げ、成形流動性を高める成分としてシリコンを含有した樹脂が用いられてもよい。シリコンを含有した樹脂の場合、摺動性が向上するため、例えば、光量調節羽根103のうち、部分接触部205(凹凸部)の部分の表面層にシリコンが集中していてもよい。