JP7091534B2 - 表面処理鋼板 - Google Patents
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Description
このような溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板としては、例えば特許文献1に、めっき皮膜中にMgを含むAl-Zn-Si合金を含み、該Al-Zn-Si合金が、45~60重量%の元素アルミニウム、37~46重量%の元素亜鉛及び1.2~2.3重量%のSiを含有する合金であり、該Mgの濃度が1~5重量%である、溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板が開示されている。
また、特許文献2には、めっき皮膜中に2~10%のMg、0.01~10%のCaの1種以上を含有させることで耐食性の向上を図るとともに、下地鋼板が露出した後の保護作用を高めることを目的とした溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板が開示されている。
さらに、特許文献3には、質量%で、Mg:1~15%、Si:2~15%、Zn:11~25%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる被覆層を形成し、めっき皮膜中に存在するMg2Si相やMgZn2相などの金属間化合物の大きさを10μm以下とすることで、平板及び端面の耐食性の改善を図った溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板が開示されている。
例えば特許文献4には、めっき皮膜中に0.01~10%のSrを含有させることで、しわ状の凹凸欠陥を抑制した溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板が開示されている。
さらに、特許文献5にも、めっき皮膜中に500~3000ppmのSrを含有させることで、まだら欠陥を抑制した溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板が開示されている。
また、特許文献6には、めっき皮膜中に0.001~1.0%のSrを含有させることで、表面外観性と耐食性を両立させた溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板が開示されている。
さらに、特許文献7にも、めっき皮膜中に0.001~1.0%のSrを含有させることで、表面外観性と平板部と加工部の耐食性を両立させた溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板が開示されている。
さらにまた、特許文献8にも、めっき皮膜中に0.01~0.2%のSrを含有させることで、表面外観性と耐食性を両立させた溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板が開示されている。
また、特許文献9には、めっき皮膜中のSiとMg濃度を特定の比率で制御することで、耐食性を向上させた溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板が開示されている。
例えば特許文献10には、加工部の耐白錆性を改善させることを目的として、Si-Mg相中のMgの、めっき層中のMg全量に対する質量比率を適正化した溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板が開示されている。
また、特許文献11には、溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板のめっき皮膜上にウレタン樹脂を含有する化成皮膜を形成することで、耐黒変性や耐白錆性の改善を図った技術が開示されている。
特許文献1~3に開示された溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板では、めっき成分にMgを含有させることのみで耐食性の向上を図っているが、めっき皮膜を構成する金属相・金属間化合物相の特徴については考慮されておらず、耐食性の優劣について一律に語ることができなかった。そのため、同じめっき浴組成を用いて溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板を製造した場合でも、腐食促進試験を実施するとその耐食性にばらつきが存在し、Mgを添加しないAl-Zn系めっき鋼板に対して必ずしも優位にはならない、という問題があった。
同様に、めっき外観性の改善においても、めっき皮膜中にSrを添加したのみでは、必ずしもシワ状の凹凸欠陥を消滅させることができる訳ではなく、特許文献4~8に開示された溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板についても、耐食性と外観を両立できていない場合があった。加えて、Mgが酸化しやすい元素であるため、めっき浴中に含有されるMgが浴面近傍に酸化物(トップドロス)を発生させたり、溶融めっきの場合、時間の経過とともにめっき浴の浴中又は底部に偏在する鉄を含んだFeAl系化合物(ボトムドロス)が発生することがあり、これらのドロスが、めっき皮膜の表面に付着して凸形状の欠陥を引き起こし、めっき皮膜表面の外観を損ねるおそれもあった。
特許文献9に開示された溶融Al-Zn-Si-Mg系めっき鋼板では、SiとMgの濃度を特定の比率で管理し、めっき皮膜中のSi相の析出を無くすことで耐食性の改善を図っているが、必ずしもSi相の抑制ができるとは言えず、めっき皮膜中におけるSi相の形成を抑制できた場合においても優れた耐食性が得られない場合がある等、技術的に不完全なものであった。
ただし、これらのMg2Si相、MgZn2相およびSi相については、一般的な手法、例えば走査型電子顕微鏡を活用し、めっき皮膜を表面または断面から二次電子像あるいは反射電子像などの観察を実施しても相の違いを判別することは非常に困難であることが知られている。より詳細な解析ができる手法として、透過型電子顕微鏡を用いて観察を行うことでミクロな情報を得ることは可能であるが、耐食性や外観といったマクロな情報を左右するMg2Si、MgZn2及びSi相の存在比率まで把握することはできなかった。
そのため、本発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、X線回折法に着目し、Mg2Si相、MgZn2相およびSi相の特定の回折ピークの強度比を利用することによって、相の存在比率を定量的に規定できること、さらに、めっき皮膜中にMg2Si相とMgZn2相が特定の存在比率を満足すると、安定的に優れた耐食性を実現できることに加え、ドロスの発生を抑えて良好な表面外観性も確保できることを見出した。
また、本発明者らは、上述したMg2Si相、MgZn2相、Si相等の存在比率を制御した上で、浴中のSr濃度を制御することで、シワ状の凹凸欠陥の発生を確実に抑え、表面外観性に優れためっき鋼板が得られることも知見した。
1.めっき皮膜と、該めっき皮膜上に形成された化成皮膜と、を備える表面処理鋼板であって、
前記めっき皮膜は、Al:45~65質量%、Si:1.0~4.0質量%及びMg:1.0~10.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有し、
前記めっき皮膜中のMg2Si及びMgZn2のX線回折法による回折強度が、以下の関係(1)を満足し、
Mg2Si (111)/MgZn2(100)≦2.0 ・・・(1)
Mg2Si (111):Mg2Siの(111)面(面間隔d=0.3668nm)の回折強度、
MgZn2 (100):MgZn2の(100)面(面間隔d=0.4510nm)の回折強度
前記化成皮膜は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアルキレン樹脂、アミノ樹脂及びフッ素樹脂のうちから選択される少なくとも一種の樹脂と、P化合物、Si化合物、Co化合物、Ni化合物、Zn化合物、Al化合物、Mg化合物、V化合物、Mo化合物、Zr化合物、Ti化合物及びCa化合物のうちから選択される少なくとも一種の金属化合物と、を含有することを特徴とする、表面処理鋼板。
Si (111)=0 ・・・(2)
Si (111):Siの(111)面(面間隔d=0.3135nm)の回折強度
本発明の表面処理鋼板では、前記めっき皮膜が、Al:45~65質量%、Si:1.0~4.0質量%及びMg:1.0~10.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有する。
また、前記めっき皮膜中にMgを含有すると、めっき皮膜中に金属間化合物であるMgZn2相も形成され、より耐食性を向上させる効果が得られる。前記めっき皮膜中のMg含有量が1.0質量%未満の場合、前記金属間化合物(Mg2Si、MgZn2)の生成よりも、主要相であるα-Al相への固溶にMgが使用されるため、十分な耐食性が確保できない。一方、前記めっき皮膜中のMg含有量が多くなると、耐食性の向上効果が飽和することに加え、α-Al相の脆弱化に伴い加工性が低下するため、含有量は10.0%以下とする。さらに、前記めっき皮膜中のMg含有量は、めっき形成時のドロス発生を抑制し、めっき浴管理を容易にする観点から、5.0質量%以下とすることが好ましい。なお、前記Siの含有量との関係で、後述の(1)の関係式を満たしやすい観点からは、前記Mgの含有量を3.0質量%とすることが好ましく、ドロス抑制との両立性を考慮すると、前記Mgの含有量を3.0~5.0質量%とすることがより好ましい。
Mg2Si (111)/MgZn2(100)≦2.0 ・・・(1)
Mg2Si (111):Mg2Siの(111)面(面間隔d=0.3668nm)の回折強度、MgZn2 (100):MgZn2の(100)面(面間隔d=0.4510nm)の回折強度
なお、前記めっき皮膜中のMg2SiとMgZn2との存在比率については、仮にめっき皮膜の組成が本発明の範囲を満たす(Al:45~65質量%、Si:1.0~4.0質量%及びMg:1.0~10.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる)場合であっても、Mg2Si及びMgZn2の存在比率が関係(1)を満たさない場合には、本発明によるめっき皮膜の保護作用向上効果を十分に得ることができない。
前記X線回折によりMg2Si (111)及びMgZn2 (100)を測定する方法としては、前記めっき皮膜の一部を機械的に削り出し、粉末にした状態でX線回折を行うこと(粉末X線回折測定法)で算出することができる。回折強度の測定については、面間隔d=0.3668nmに相当するMg2Siの回折ピーク強度、面間隔d=0.4510nmに相当するMgZn2の回折ピーク強度を測定し、これらの比率を算出することでMg2Si (111)/MgZn2 (100)を得ることができる。
なお、粉末X線回折測定を実施する際に必要なめっき皮膜の量(めっき皮膜を削り出す量)は、精度良くMg2Si (111)及びMgZn2 (100)を測定する観点から、0.1g以上あればよく、0.3g以上あることが好ましい。また、前記めっき皮膜を削り出す際に、めっき皮膜以外の鋼板成分が粉末に含まれる場合もあるが、これらの金属間化合物相はめっき皮膜のみに含まれるものであり、また前述したピーク強度に影響することはない。さらに、前記めっき皮膜を粉末にしてX線回折を行うのは、めっき鋼板に形成されためっき皮膜に対してX線回折を行うと、めっき皮膜凝固組織の面方位の影響を受け正しい相比率の計算を行うことが困難なためである。
Si (111)=0 ・・・(2)
Si (111):Siの(111)面(面間隔d=0.3135nm)の回折強度
一般的に、Al合金の水溶液中への溶解反応においては、Si相がカソードサイトとして存在することで周辺のα-Al相の溶解を促進することが知られていることから、Si相を少なくすることはα-Al相の溶解を抑制する観点でも有効であり、その中でも関係(2)のようにSi相が存在しない皮膜とすること(前記Si(111)の回折ピーク強度をゼロとすること)が耐食性の安定化のために最も優れている。
なお、X線回折によりSiの(111)面の回折ピーク強度の測定方法は、上述したMg2Si (111)及びMgZn2 (100)を測定する方法と同様の方法を用いることができる。
また、前記めっき皮膜中のSiの含有量、Mgの含有量及びAlの含有量のバランスを調整する他にも、めっき皮膜形成時の条件(例えば、めっき後の冷却条件)を調整することによって、関係(1)や関係(2)を満たすように、Mg2Si (111)、MgZn2 (100)及びSi (111)の回折強度を制御できる。
このうち、前記不可避的不純物はFeを含有する。このFeは、鋼板や浴中機器がめっき浴中に溶出することで不可避的に含まれるものと界面合金層の形成時に下地鋼板からの拡散によって供給される結果、前記めっき皮膜中に不可避的に含まれることとなる。前記めっき皮膜中のFe含有量は、通常0.3~2.0質量%程度である。その他の不可避的不純物としては、Cr、Ni、Cu等が挙げられる。前記不可避的不純物の総含有量については、特に限定はされないが、過剰に含有した場合、めっき鋼板の各種特性に影響を及ぼす可能性があるため、合計で5.0質量%以下であることが好ましい。
なお、前記シワ状欠陥とは、前記めっき皮膜の表面に形成されたシワ状の凹凸になった欠陥であり、前記めっき皮膜表面において白っぽい筋として観察される。このようなシワ状欠陥は、前記めっき皮膜中にMgを多く添加した場合に、発生しやすくなる。そのため、前記溶融めっき鋼板では、前記めっき皮膜中にSrを含有させることによって、前記めっき皮膜表層においてSrをMgよりも優先的に酸化させ、Mgの酸化反応を抑制することで、前記シワ状欠陥の発生を抑えることが可能となる。
前記浴温の下限を、融点+20℃としたのは、溶融めっき処理を行うためには、前記浴温を凝固点以上にすることが必要であり、融点+20℃とすることで、前記めっき浴の局所的な浴温低下による凝固を防止するためである。一方、前記浴温の上限を650℃としたのは、650℃を超えると、前記めっき皮膜の急速冷却が難しくなり,めっき皮膜と鋼板との間に形成する界面合金層が厚くなるおそれがあるためである。
本発明の表面処理鋼板は、上述しためっき皮膜上に化成皮膜が形成されている。
なお、前記化成皮膜は、表面処理鋼板の少なくとも片面に形成されればよく、用途や要求される性能に応じて、表面処理鋼板の両面に形成することもできる。
上述した化成皮膜をめっき皮膜上に形成することよって、めっき皮膜との親和性を高め、前記めっき皮膜上に化成皮膜を均一に形成することが可能になることに加え、化成皮膜の防錆効果やバリア効果を高めることができる。その結果、本発明の表面処理鋼板の安定的な耐食性及び耐白錆性の実現が可能となる。
なお、前記P化合物が塩である場合、当該塩は、周期表における第1族~第13族元素の塩であることが好ましく、金属塩であることがより好ましく、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩のうちから選択される1つ以上であることが好ましい。
前記化成処理液中のP化合物の濃度は、特に限定はされないが、0.25質量%~5質量%とすることができる。前記P化合物の濃度が0.25質量%未満では、エッチング効果が不足してめっき界面との密着力が低下し、平面部耐食性が低下するだけでなく、欠陥部、切断端面部、加工などで生じるめっきや皮膜の損傷部の耐食性、耐汗性も低下するおそれがある。同様の観点から、P化合物の濃度は、好ましくは0.35質量%以上、より好ましくは0.50質量%以上である。一方、前記P化合物の濃度が5質量%を超えると化成処理液の寿命が短くなるだけでなく、皮膜を形成した際の外観が不均一になりやすく、また、化成皮膜からのPの溶出量が多くなり、耐黒変性が低下するおそれもある。同様の観点から、P化合物の濃度は、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下である。前記化成皮膜中のP化合物の含有量については、例えば、P化合物の濃度を0.25質量%~5質量%とした化成処理液を、塗布、乾燥することにより、乾燥後の化成皮膜におけるPの付着量を5~100mg/m2とすることができる。
また、前記Ni化合物を含む化成処理液を用いることにより、Niを、前記化成皮膜中に含有させ、前記濃化層中に取り込ませることができる。前記Ni化合物としては、ニッケル塩を用いることが好ましい。前記ニッケル塩としては、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル及び塩化ニッケルのうちから選択される1又は2以上を用いることがより好ましい。
なお、前記Al化合物、前記Zn化合物及び前記Mg化合物は、それぞれ、Al、Zn及びMgを含有する化合物のことであれば、特に限定されないが、無機化合物であることが好ましく、塩、塩化物、酸化物又は水酸化物であることが好ましい。
前記Zn化合物としては、例えば、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛のうちから選択される1つ以上が挙げられる。
前記Mg化合物としては、例えば、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムのうちから選択される1つ以上が挙げられる。
なお、前記モリブデン酸塩としては、例えば、モリブテン酸ナトリウム、モリブテン酸カリウム、モリブテン酸マグネシウム及びモリブテン酸亜鉛のうちから選択される1つ以上が挙げられる。
前記化成皮膜付着量は、皮膜を蛍光X 線分析して予め皮膜中の含有量が分かっている元素の存在量を測定する方法のような、既存の手法から適切に選択した方法で求めればよい。
(1)常法で製造した板厚0.8mmの冷延鋼板を下地鋼板として用い、(株)レスカ製の溶融めっきシミュレーターで、焼鈍処理、めっき処理を行うことで、表2及び3に示すめっき皮膜条件の溶融めっき鋼板のサンプルを作製した。
なお、溶融めっき鋼板製造に用いためっき浴の組成については、表1に示す各サンプルのめっき皮膜の組成となるように、めっき浴の組成をAl:30~75質量%、Si:0.5~4.5質量%、Mg:0~10質量%、Sr:0.00~0.15質量%の範囲で種々変化させた。また、めっき浴の浴温は、Al:30~60質量%の場合は590℃、Al:60質量%超の場合は630℃とし、下地鋼板のめっき浸入板温がめっき浴温と同温度となるように制御した。さらに、板温が520~500℃の温度域に3秒で冷却する条件でめっき処理を実施した。
また、めっき皮膜の付着量は、サンプル1~82、95~112では、片面あたり85±5g/m2、サンプル83~94では、片面あたり51~125g/m2となるように制御した。
(2)その後、作製した溶融めっき鋼板の各サンプルのめっき皮膜上に、バーコーターで化成処理液を塗布し、熱風炉で乾燥(昇温速度:60℃/s、PMT:120℃)させることで化成皮膜を形成し、表2及び3に示す表面処理鋼板の各サンプルを作製した。
なお、化成処理液は、各成分を溶媒としての水に溶解させた表面処理液A~Fを調製した。表面処理液に含有する各成分(樹脂、金属化合物)の種類については、以下のとおりである。
(樹脂)
ウレタン樹脂:スーパーフレックス130、スーパーフレックス126(第一工業製薬株式会社)
アクリル樹脂:ボンコートEC-740EF(DIC株式会社)
(金属化合物)
P化合物:トリポリリン酸二水素アルミニウム
Si化合物:シリカ
V化合物:メタバナジン酸ナトリウム
Mo化合物:モリブデン酸
Zr化合物:炭酸ジルコニルカリウム
調製した化成処理液A~Fの組成及び形成された化成皮膜の付着量を表1に示す。なお、本明細書の表1における各成分の濃度は、固形分の濃度(質量%)である。
上記のように得られた溶融めっき鋼板及び表面処理鋼板の各サンプルについて、以下の評価を行った。評価結果を表2及び3に示す。
溶融めっき鋼板の各サンプルについて、100mmφを打ち抜き、非測定面をテープでシーリングした後、JIS H 0401:2013に示される塩酸とヘキサメチレンテトラミンの混合液でめっきを溶解剥離し、剥離前後のサンプルの質量差から、めっき皮膜の付着量を算出した。算出の結果、得られためっき皮膜の付着量を表2及び3に示す。
その後、剥離液をろ過し、ろ液と固形分をそれぞれ分析した。具体的に、ろ液をICP発光分光分析することで、不溶Si以外の成分を定量化した。
また、固形分は650℃の加熱炉内で乾燥・灰化した後、炭酸ナトリウムと四ホウ酸ナトリウムを添加することで融解させた。さらに、塩酸で融解物を溶解し、溶解液をICP発光分光分析することで、不溶Siを定量化した。めっき皮膜中のSi濃度は、ろ液分析によって得た可溶Si濃度に、固形分分析によって得た不溶Si濃度を加算したものである。算出の結果、得られためっき皮膜の組成を表2及び3に示す。
さらに、各サンプルについて、100mm×100mmのサイズに剪断後、評価対称面のめっき皮膜を下地鋼板が現れるまで機械的に削り出し、得られた粉末をよく混ぜ合わせた後、0.3gを取出し、X線回折線装置(株式会社リガク製「SmartLab」)を用いて、使用X線:Cu-Kα(波長=1.54178Å)、Kβ線の除去:Niフィルター、管電圧:40kV、管電流:30mA、スキャニング・スピード:4°/min、サンプリング・インターバル:0.020°、発散スリット:2/3°、ソーラースリット:5°、検出器:高速一次元検出器(D/teX Ultra)の条件で、上記粉末の定性分析を行った。各ピーク強度からベース強度を差し引いた強度を各回折強度(cps)とし、Mg2Siの(111)面(面間隔d=0.3668nm)の回折強度、MgZn2の(100)面(面間隔d=0.4510nm)の回折強度、及び、Siの(111)面(面間隔d=0.3135nm)の回折強度を測定した。測定結果を、表2及び表3に示す。
溶融めっき鋼板及び表面処理鋼板の各サンプルについて、120mm×120mmのサイズに剪断後、評価対象面の各エッジから10mmの範囲、及び、サンプルの端面と評価非対象面をテープでシーリングし、評価対象面を100mm×100mmのサイズで露出させた状態のものを、評価用サンプルとして用いた。なお、該評価用サンプルは同じものを3つ作製した。
上記のように作製した3つの評価用サンプルに対して、いずれも図1に示すサイクルで腐食促進試験を実施した。腐食促進試験を湿潤からスタートし、300サイクル後まで行った後、各サンプルの腐食減量をJIS Z 2383及びISO8407に記載の方法で測定し、下記の基準で評価した。評価結果を表2及び3に示す。
◎:サンプル3個の腐食減量が全て30g/m2以下
○:サンプル3個の腐食減量が全て70g/m2以下
×:サンプル1個以上の腐食減量が70g/m2越え
溶融めっき鋼板及び表面処理鋼板の各サンプルについて、120mm×120mmのサイズに剪断後、評価対象面の各エッジから10mmの範囲、及び、サンプルの端面と評価非対象面をテープでシーリングし、評価対象面を100mm×100mmのサイズで露出させた状態のものを、評価用サンプルとして用いた。
上記評価用サンプルを用いて、JIS Z 2371に記載の塩水噴霧試験を90時間実施し、下記の基準で評価した。評価結果を表2及び3に示す。
◎:平板部に白錆なし
○:平板部の白錆発生面積10%未満
×:平板部の白錆発生面積10%以上
溶融めっき鋼板の各サンプルについて、目視によって、めっき皮膜の表面を観察した。
そして、観察結果を、以下の基準に従って評価した。評価結果を表2及び3に示す。
◎:シワ状欠陥が全く観察されなかった
○:エッジから50mmの範囲のみにシワ状欠陥が観察された
×:エッジから50mmの範囲以外でシワ状欠陥が観察された
溶融めっき鋼板の各サンプルについて、70mm×150mmのサイズに剪断後、同板厚の板を内側に8枚挟んで180°曲げの加工(8T曲げ)を施した。折り曲げ後の曲げ部外面にセロテープを強く貼りつけた後、引き剥がした。曲げ部外面のめっき皮膜の表面状態、及び、使用したテープの表面におけるめっき皮膜の付着(剥離)の有無を目視で観察し、下記の基準で加工性を評価した。評価結果を表2及び3に示す。
〇:めっき皮膜にクラックと剥離が共に認められない
△:めっき皮膜にクラックがあるが、剥離が認められない
×:めっき皮膜にクラックと剥離が共に認められる
溶融めっき時、めっき浴の浴面の状態を目視で確認し、溶融Al-Zn系めっき鋼板を製造する際に用いるめっき浴の浴面(Mg含有酸化物のない浴面)と比較した。評価は、以下の基準で行い、評価結果を表2及び3に示す。
〇:溶融Al-Zn系めっき浴(55質量%Al-残部Zn-1.6質量%浴)と同程度
△:溶融Al-Zn系めっき浴(55質量%Al-残部Zn-1.6質量%浴)に比べて白色酸化物が多い
×:めっき浴中に黒色酸化物の形成が認められる
また、表3の結果から、化成処理A~Dを実施した各サンプルの耐白錆性が特に優れた結果を示すことがわかる。
Claims (6)
- めっき皮膜と、該めっき皮膜上に形成された化成皮膜と、を備える表面処理鋼板であって、
前記めっき皮膜は、Al:45~65質量%、Si:1.0~4.0質量%及びMg:1.0~10.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有し、
前記めっき皮膜中のMg2Si及びMgZn2の、前記めっき皮膜の一部を下地鋼板が現れるまで機械的に削り出して粉末にした状態で測定した、X線回折法による回折強度が、以下の関係(1)を満足し、
Mg2Si (111)/MgZn2 (100)≦2.0 ・・・(1)
Mg2Si (111):Mg2Siの(111)面(面間隔d=0.3668nm)の回折強度、
MgZn2 (100):MgZn2の(100)面(面間隔d=0.4510nm)の回折強度
前記化成皮膜は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアルキレン樹脂、アミノ樹脂及びフッ素樹脂のうちから選択される少なくとも一種の樹脂と、P化合物、Si化合物、Co化合物、Ni化合物、Zn化合物、Al化合物、Mg化合物、V化合物、Mo化合物、Zr化合物、Ti化合物及びCa化合物のうちから選択される少なくとも一種の金属化合物と、を含有することを特徴とする、表面処理鋼板。 - 前記めっき皮膜中のSiのX線回折法による回折強度が、以下の関係(2)を満足することを特徴とする、請求項1に記載の表面処理鋼板。
Si (111)=0 ・・・(2)
Si (111):Siの(111)面(面間隔d=0.3135nm)の回折強度 - 前記めっき皮膜が、さらにSr:0.01~1.0質量%を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の表面処理鋼板。
- 前記めっき皮膜中のAlの含有量が、50~60質量%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
- 前記めっき皮膜中のSiの含有量が、1.0~3.0質量%であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
- 前記めっき皮膜中のMgの含有量が、1.0~5.0質量%であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
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