JP7090905B2 - 透明結晶化ガラス、及び透明結晶化ガラスの製造方法 - Google Patents

透明結晶化ガラス、及び透明結晶化ガラスの製造方法 Download PDF

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本発明は、透明結晶化ガラス、及び透明結晶化ガラスの製造方法に関する。
水銀フリーで高出力且つ長寿命の青色LEDが開発されて以降、蛍光灯などの照明装置は、白色LEDに転換されつつある。しかしながら、これまで長く使用されてきた白熱電球に相当する特性を有するLEDデバイスというものは、未だ開発されていない。白熱電球は、発光波長域が400nm~1200nmとブロードであり、また、おおよそ1000nmに発光ピークが観測される。今のところ、上述した波長域でブロードな発光特性は、LEDのみでは実現不可能である。
このような現状において、例えば、400nm付近の波長の光を発するLED(青色LEDを含む)と、当該LEDから発せられる光で励起して少なくとも深赤及び近赤外の領域(約680~800nmの波長域)でブロードな発光を示す蛍光体とを組み合わせ、概ね上述したような発光特性を有する発光デバイスを製造することができれば、白熱電球の発光特性に近似され、また、医療分野におけるバイオイメージング、植物の促成栽培などへの応用が期待できる。
ここで、比較的ブロードな発光を示す白色LED用蛍光体に関しては、現状、Eu2+、Ce3+又はYb2+を含む結晶の研究開発が多く報告されている。しかしながら、これらの蛍光体は、発光波長域が十分ではない。そして、これらの蛍光体の母体結晶の調整をすることで、発光波長域が深赤及び近赤外の領域に及ぶようになるといった研究例は、未だ報告されていない。また、上述したEu、Ce及びYb以外の希土類元素を含む蛍光体は、発光がシャープとなる傾向にあるため、応用が難しい。
一方、可視光で励起し、近赤外光を発するデバイスの開発を可能にし得る蛍光体として、遷移金属を添加した蛍光体が挙げられる。例えば、Fe3+を添加した、LiAlO2及びLi(AlGa)O2(特許文献1,2)は、650~800nmの波長域での発光を示し、また、Cr3+を添加したZn2TiO4(特許文献3)は、500~1400nmの波長域での発光を示す。
特開昭57-170979号公報 特開平01-215885号公報 特開2017-052875号公報
しかしながら、これらの遷移金属を添加した蛍光体は、発光効率が非常に低いため、蛍光体粉末そのものでは十分な発光強度を発現することができず、依然として改善の余地があった。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、深赤及び近赤外の領域でブロードな発光を高い強度で示す、透明結晶化ガラスを提供することを目的とする。また、本発明は、上述した透明結晶化ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた。そして、まず、透明な蛍光体をガラス中に結晶として析出させることで、単結晶の加工の困難さを回避しつつ、当該蛍光体の発光強度を高めることができることに着想した。次いで、本発明者は、ガラスの成分組成と、熱処理後に得られる結晶化ガラスの発光特性との関係について更に検討を重ねた。その結果、Feを添加した所定組成のフツホウケイ酸塩ガラスに熱処理を施すことにより、結晶が析出し、また、当該結晶が、深赤及び近赤外の領域でブロードな発光を示す蛍光体としての作用を有することを見出した。
即ち、本発明の透明結晶化ガラスは、Fe3+ドープKZnF3結晶、及び、K3FeF6結晶の少なくともいずれかを含み、且つ、1000nmの光の透過率が80%以上である、ことを特徴とする。かかる透明結晶化ガラスは、深赤及び近赤外の領域でブロードな発光を高い強度で示す。
また、本発明の透明結晶化ガラスの製造方法は、原料を熔解し、モル%で、
KF:20.0~24.0%、
NaF:0~2.0%、
LiF:0~1.0%、
(但し、KF+NaF+LiF:20.0~26.0%)
2O:1.5~4.0%、
Na2O:0~2.0%、
Li2O:0~0.25%、
(但し、K2O+Na2O+Li2O:1.5~6.0%)
ZnF2:21.0~24.0%、
MgF2:0~2.0%、
AlF3:0~1.0%、
(但し、ZnF2+MgF2+AlF3:21.0~26.0%)
SiO2:40.0~45.0%、
23:3.0~9.0%、
25:0~5.0%、
Ga23:0~2.0%、及び
Al23:0~3.0%、
(但し、SiO2+B23+P25+Ga23+Al23:43.0~54.0%)
の組成を有し、且つ、
全フッ化物中のフッ素に対する全酸化物中の酸素のモル比(O/F)が、1.22~2.19であり、
(K2O+Na2O+Li2O)/(SiO2+B23+P25+Ga23+Al23)で表されるモル比が0.035~0.13である、基礎ガラス成分と、
前記基礎ガラス成分100質量部に対し、外割りで、
Fe23:0.5~3.0質量部、及び
Sb23:0.2~1.0質量部、
の組成を有する調整成分と、を含有するガラスを作製するガラス化工程と、
前記ガラスを熱処理し、前記ガラスの少なくとも一部を結晶化させて、透明結晶化ガラスを得る熱処理工程と、
を備え、
前記ガラス化工程における原料熔解時の加熱温度を1200℃以上1400℃以下とする、ことを特徴とする。かかる製造方法によれば、上述した透明結晶化ガラスを製造することができる。
また、本発明の透明結晶化ガラスの製造方法においては、前記調整成分が、更に、前記基礎ガラス成分100質量部に対し、外割りで、
RE23(REは、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択される1種以上の元素を指す):1.0質量部以下、及び
SnO2:1.0質量部以下、
の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
本発明によれば、深赤及び近赤外の領域でブロードな発光を高い強度で示す、透明結晶化ガラスを提供することができる。また、本発明によれば、上述した透明結晶化ガラスの製造方法を提供することができる。
一実施例及び一比較例における、熱処理後のガラスブロックの透過スペクトルを模式的に示す図である。 一実施例及び一比較例における、熱処理後のガラスブロックのX線回折パターンを模式的に示す図である。 一実施例における、熱処理前のガラス及び熱処理後のガラスブロックの透過スペクトルを模式的に示す図である。 一比較例における、熱処理前のガラス及び熱処理後のガラスブロックの透過スペクトルを模式的に示す図である。 一実施例及び一比較例における、熱処理後のガラスブロックの励起スペクトル及び発光スペクトルを模式的に示す図である。
(透明結晶化ガラス)
本発明の一実施形態の透明結晶化ガラス(以下、「本実施形態の結晶化ガラス」と称することがある。)を具体的に説明する。本実施形態の結晶化ガラスは、Fe3+ドープKZnF3結晶、及び、K3FeF6結晶の少なくともいずれかを含み、且つ、1000nmの光の透過率が80%以上である、ことを特徴とする。
なお、ガラスがFe3+ドープKZnF3結晶又はK3FeF6結晶を含むか否かの判断は、X線回折により求めることができる。
本発明者による検討の結果、上述したFe3+ドープKZnF3結晶、及びK3FeF6結晶(以下、これらを「Fe3+含有結晶」と総称することがある。)が、深赤及び近赤外の領域(約680~800nmの波長域)でブロードな発光を示すことが見出された。なお、例えば、Fe3+ではなくFe2+でドープされているKZnF3や、Fe3+ではなくFe2+がK(カリウム)及びF(フッ素)と結合してなる化合物では、深赤及び近赤外の領域でブロードな発光を示さない。
上記のFe3+含有結晶は、波長380~450nmの光で励起することができる。そのため、これらの結晶を例えば青色LEDと組み合わせることで、青色LEDから発せられる光で効率的に励起することができる。
また、本実施形態の結晶化ガラスは、1000nmの光の透過率が80%以上である。ここで、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶におけるFeは、3価である。しかし、結晶化ガラスの製造時に、ガラス中にFe3+ドープKZnF3結晶又はK3FeF6結晶を形成する際には、2価のFe(Fe2+)が最終的にガラス部分又は結晶部分に残存することがある。このFe2+は、近赤外域(約700~2500nm)でのブロードな吸収を示し、且つ、吸収ピーク波長が1000nm付近にある(発光はしない)。そのため、結晶化ガラス中にFe2+がある程度含まれている場合には、所望する深赤及び近赤外の領域の発光強度が低下する上、1000nmの光の透過率が80%未満となり得る。即ち、結晶化ガラスがFe3+ドープKZnF3結晶又はK3FeF6結晶を含み、且つ、1000nmの光の透過率が80%以上であるということは、当該結晶化ガラスにおいて不所望なFe2+の量が十分に少ないこと、ひいては、深赤及び近赤外の領域の発光強度が十分に高いことを意味する。また、ガラス中にFe3+が十分に存在する際には、ガラスは黄色に着色する。
なお、ガラスの透過率は、厚み2.0mmに加工したガラスを用いて測定されるものとする。
本実施形態の結晶化ガラスは、透明である。結晶化ガラスが透明であることにより、Fe3+ドープKZnF3結晶及び/又はK3FeF6結晶の発光強度を高く維持することができる。
本明細書において、ガラスに関して「透明」とは、厚み2.0mmの当該ガラスにおける、700nmの光の透過率が50%以上であることを指すものとする。
本実施形態の結晶化ガラスは、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶のいずれか一方のみを含んでいてもよく、その両方を含んでいてもよい。
また、本実施形態の結晶化ガラスは、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶以外の結晶を含まないことが好ましい。この場合、他の結晶の混在による透明性の悪化を回避することができる。
本実施形態の結晶化ガラスは、上述した要件を満足すればよく、その製造方法については、特に限定されることなく、任意の製造方法に従って製造することができる。特に、本実施形態の結晶化ガラスは、後述する本発明の一実施形態の透明結晶化ガラスの製造方法により、製造することができる。
また、本実施形態の結晶化ガラスにおける各成分の好適な割合は、後述する透明結晶化ガラスの製造方法における、ガラス化工程で作製するガラスにおける各成分の割合の範囲と概ね同様である(特に、Na2O、Li2O、SiO2、B23、P25、Ga23、Al23)。
(透明結晶化ガラスの製造方法)
本発明の一実施形態の透明結晶化ガラスの製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」と称することがある。)は、原料を熔解し、モル%で、
KF:20.0~24.0%、
NaF:0~2.0%、
LiF:0~1.0%、
(但し、KF+NaF+LiF:20.0~26.0%)
2O:1.5~4.0%、
Na2O:0~2.0%、
Li2O:0~0.25%、
(但し、K2O+Na2O+Li2O:1.5~6.0%)
ZnF2:21.0~24.0%、
MgF2:0~2.0%、
AlF3:0~1.0%、
(但し、ZnF2+MgF2+AlF3:21.0~26.0%)
SiO2:40.0~45.0%、
23:3.0~9.0%、
25:0~5.0%、
Ga23:0~2.0%、及び
Al23:0~3.0%、
(但し、SiO2+B23+P25+Ga23+Al23:43.0~54.0%)
の組成を有し、且つ、
全フッ化物中のフッ素に対する全酸化物中の酸素のモル比(O/F)が、1.22~2.19であり、
(K2O+Na2O+Li2O)/(SiO2+B23+P25+Ga23+Al23)で表されるモル比が0.035~0.13である、基礎ガラス成分と、
前記基礎ガラス成分100質量部に対し、外割りで、
Fe23:0.5~3.0質量部、及び
Sb23:0.2~1.0質量部、
の組成を有する調整成分と、を含有するガラスを作製するガラス化工程と、
前記ガラスを熱処理し、前記ガラスの少なくとも一部を結晶化させて、透明結晶化ガラスを得る熱処理工程と、
を備えることを一特徴とする。また、本実施形態の製造方法は、前記ガラス化工程における熔解時の加熱温度を1200℃以上1400℃以下とすることを一特徴とする。この製造方法によれば、Feイオン価数を3価(Fe3+)に制御し、且つ、熱処理により、Fe3+をKZnF3析出結晶に固溶させる又はK3FeF6結晶を析出させることができるため、上述した本実施形態の結晶化ガラスを製造することができる。
<ガラス化工程>
上述の通り、ガラス化工程では、原料を熔解し、所定の組成を有する基礎ガラス成分と、所定の組成を有する調整成分とを含有するガラスを作製する。原料としては、基礎ガラス成分及び調整成分に相当する酸化物、フッ化物、炭酸塩、硝酸塩などを用いることができる。なお、炭酸塩及び硝酸塩は、相当する酸化物を得るのに用いることができる。また、「基礎ガラス成分」及び「調整成分」は、便宜上分類されているにすぎず、ガラスの作製の際には、これらを区別せずにまとめて熔解することができる。
以下、ガラス化工程で作製するガラスにおいて、各基礎ガラス成分の割合を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、各基礎ガラス成分に関する「%」表示は、特に断らない限り、モル%を意味するものとする。
[KF]
KFは、基礎ガラス成分の一つであり、Fe3+含有結晶(Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶)の形成に寄与する重要な成分である。但し、KFの割合が24.0%を超えると、熱処理後にFe3+含有結晶以外の結晶が析出し、透明性が失われる。一方、KFの割合が20.0%未満であると、ガラスの最低熔解温度が高くなり、熔解時にFe3+がFe2+に還元されるため、当該Fe2+の吸収作用により、所望の波長域での発光が生じなくなる。そのため、KFの割合は20.0~24.0%とした。同様の観点から、KFの割合は、21.0%以上であることが好ましく、22.0%以上であることがより好ましく、また、23.0%以下であることが好ましい。
[NaF]
NaFは、基礎ガラス成分の一つであり、KFとの一部代替によりFe3+含有結晶の形成に寄与し、また、ガラス融液の安定性を高める成分である。但し、NaFの割合が2.0%を超えると、熱処理後にFe3+含有結晶以外の結晶(例えば、Naを含む結晶)が析出し、透明性が失われる。そのため、NaFの割合は、0~2.0%とした。同様の観点から、NaFの割合は、1.8%以下であることが好ましく、1.6%以下であることがより好ましい。また、NaFの割合は、ガラス融液の安定性をより高める観点から、1.0%以上であることが好ましく、1.2%以上であることがより好ましく、1.4%以上であることが更に好ましい。
[LiF]
LiFは、基礎ガラス成分の一つであり、KFとの一部代替によりFe3+含有結晶の形成に寄与し、また、ガラス融液の安定性を高める成分である。但し、LiFの割合が1.0%を超えると、熱処理後にFe3+含有結晶以外の結晶(例えば、Liを含む結晶)が析出し、透明性が失われる。そのため、LiFの割合は、0~1.0%とした。同様の観点から、LiFの割合は、0.7%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。また、LiFの割合は、ガラス融液の安定性をより高める観点から、0.1%以上であることが好ましく、0.3%以上であることがより好ましい。
[KF+NaF+LiF]
基礎ガラス成分において、KF、NaF及びLiFの合計の割合が20.0%未満であると、ガラスの最低熔解温度が高くなり、熔解時にFe3+がFe2+に還元されるため、当該Fe2+の吸収作用により、所望の波長域での発光が生じなくなる。一方、KF、NaF及びLiFの合計の割合が26.0%を超えると、熱処理後にFe3+含有結晶以外の結晶が析出し、透明性が失われる。そのため、KF、NaF及びLiFの合計の割合は、20.0~26.0%とした。同様の観点から、KF、NaF及びLiFの合計の割合は、22.0%以上であることが好ましく、また、24.0%以下であることが好ましい。
[K2O]
2Oは、基礎ガラス成分の一つであり、Fe3+含有結晶の形成に寄与し、また、ガラス融液の安定性を高める重要な成分である。但し、K2Oの割合が4.0%を超えると、熱処理後に結晶化が生じない。一方、K2Oの割合が1.5%未満であると、ガラス融液の安定性が悪化し、急冷後にガラスが形成されない。そのため、K2Oの割合は、1.5~4.0%とした。同様の観点から、K2Oは、1.6%以上であることが好ましく、2.0%以上であることがより好ましく、また、3.5%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましい。
[Na2O]
Na2Oは、基礎ガラス成分の一つであり、K2Oとの一部代替によりFe3+含有結晶の形成に寄与し、また、ガラス融液の安定性を高める重要な成分である。但し、Na2Oの割合が2.0%を超えると、熱処理後に結晶化が生じない。そのため、Na2Oの割合は、0~2.0%とした。同様の観点から、Na2Oの割合は、1.6%以下であることが好ましく、1.4%以下であることがより好ましい。また、Na2Oの割合は、ガラス融液の安定性をより高める観点から、0.5%以上であることが好ましく、0.7%以上であることがより好ましく、1.0%以上であることが更に好ましい。
[Li2O]
Li2Oは、基礎ガラス成分の一つであり、K2Oとの一部代替によりFe3+含有結晶の形成に寄与し、また、ガラス融液の安定性を高める重要な成分である。但し、Li2Oの割合が0.25%を超えると、熱処理後に結晶化が生じない。そのため、Li2Oの割合は、0~0.25%とした。同様の観点から、Li2Oの割合は、0.15%以下であることが好ましい。また、Li2Oの割合は、ガラス融液の安定性をより高める観点から、0.1%以上であることが好ましい。
[K2O+Na2O+Li2O]
基礎ガラス成分において、K2O、Na2O及びLi2Oの合計の割合が1.5%未満であると、ガラス融液の安定性が悪化し、急冷後にガラスが形成されない。一方、K2O、Na2O及びLi2Oの合計の割合が6.0%を超えると、熱処理後に結晶化が生じない。そのため、K2O、Na2O及びLi2Oの合計の割合は、1.5~6.0%とした。同様の観点から、K2O、Na2O及びLi2Oの合計の割合は、1.8%以上であることが好ましく、また、5.8%以下であることが好ましい。
なお、K2O、Na2O及びLi2Oは、相当する炭酸塩又は硝酸塩を原料として用いて得ることができる。
[ZnF2
ZnF2は、基礎ガラス成分の一つであり、Fe3+含有結晶の形成に寄与する重要な成分である。但し、ZnF2の割合が24.0%を超えると、熱処理後にFe3+含有結晶以外の結晶が析出し、透明性が失われる。一方、ZnF2の割合が21.0%未満であると、ガラスの最低熔解温度が高くなり、熔解時にFe3+がFe2+に還元されるため、当該Fe2+の吸収作用により、所望の波長域での発光が生じなくなる。そのため、ZnF2の割合は、21.0~24.0%とした。同様の観点から、ZnF2の割合は、22.0%以上であることが好ましく、また、23.0%以下であることが好ましい。
[MgF2
MgF2は、基礎ガラス成分の一つであり、ZnF2との一部代替によりFe3+含有結晶の形成に寄与し、また、ガラス融液の安定性を高める成分である。但し、MgF2の割合が2.0%を超えると、熱処理後にFe3+含有結晶以外の結晶(例えば、Mgを含む結晶)が析出し、透明性が失われる。そのため、MgF2の割合は、0~2.0%とした。同様の観点から、MgF2の割合は、1.8%以下であることが好ましく、1.6%以下であることがより好ましい。また、MgF2の割合は、ガラス融液の安定性をより高める観点から、1.0%以上であることが好ましく、1.2%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることが更に好ましい。
[AlF3
AlF3は、基礎ガラス成分の一つであり、ZnF2との一部代替によりFe3+含有結晶の形成に寄与し、また、ガラス融液の安定性を高める成分である。但し、AlF3の割合が1.0%を超えると、熱処理後にFe3+含有結晶以外の結晶(例えば、Alを含む結晶)が析出し、透明性が失われる。そのため、AlF3の割合は、0~1.0%とした。同様の観点から、AlF3の割合は、0.7%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。また、AlF3の割合は、ガラス融液の安定性をより高める観点から、0.2%以上であることが好ましく、0.3%以上であることがより好ましい。
[ZnF2+MgF2+AlF3
基礎ガラス成分において、ZnF2、MgF2及びAlF3の合計の割合が21.0%未満であると、ガラスの最低熔解温度が高くなり、熔解時にFe3+がFe2+に還元されるため、当該Fe2+の吸収作用により、所望の波長域での発光が生じなくなる。一方、ZnF2、MgF2及びAlF3の合計の割合が26.0%を超えると、熱処理後にFe3+含有結晶以外の結晶が析出し、透明性が失われる。そのため、ZnF2、MgF2及びAlF3の合計の割合は、21.0~26.0%とした。同様の観点から、ZnF2、MgF2及びAlF3の合計の割合は、22.0%以上であることが好ましく、23.0%以上であることがより好ましく、また、24.0%以下であることが好ましい。
[SiO2
SiO2は、基礎ガラス成分の一つであり、ガラス融液の安定性を高める重要な成分である。但し、SiO2の割合が45.0%を超えると、熱処理後に結晶化が生じない。一方、SiO2の割合が40.0%未満であると、ガラス融液の安定性が悪化し、急冷後にガラスが形成されない。そのため、SiO2の割合は、40.0~45.0%とした。同様の観点から、SiO2の割合は、42.0%以上であることが好ましく、43.0%以上であることがより好ましく、また、44.0%以下であることが好ましく、43.5%以下であることがより好ましい。
[B23
23は、基礎ガラス成分の一つであり、ガラス融液の安定性を高め、且つ最低熔解温度を低下させる重要な成分である。但し、B23の割合が9.0%を超えると、熱処理後に結晶化が生じない。一方、B23の割合が3.0%未満であると、ガラス融液の安定性が悪化し、急冷後にガラスが形成されない。そのため、B23の割合は、3.0~9.0%とした。同様の観点から、B23の割合は、4.0%以上であることが好ましく、5.0%以上であることがより好ましく、また、8.0%以下であることが好ましく、6.5%以下であることがより好ましい。
[P25
25は、基礎ガラス成分の一つであり、最低熔解温度を低下させる成分である。但し、P25の割合が5.0%を超えると、熱処理後にFe3+含有結晶以外の結晶が析出し、透明性が失われる。そのため、P25の割合は、0~5.0%とした。同様の観点から、P25の割合は、4.5%以下であることが好ましく、4.0%以下であることがより好ましい。また、P25の割合は、最低熔解温度を低下させる観点から、1.0%以上であることが好ましく、1.5%以上であることがより好ましい。
[Ga23
Ga23は、基礎ガラス成分の一つであり、ガラス融液の安定性を高める成分である。但し、Ga23の割合が2.0%を超えると、熱処理後にFe3+含有結晶以外の結晶が析出し、透明性が失われる。そのため、Ga23の割合は、0~2.0%とした。同様の観点から、Ga23の割合は、1.7%以下であることが好ましく、1.2%以下であることがより好ましい。また、Ga23の割合は、ガラス融液の安定性をより高める観点から、0.3%以上であることが好ましく、0.5%以上であることがより好ましい。
[Al23
Al23は、基礎ガラス成分の一つであり、少量の添加によりガラス融液の安定性を高める成分である。但し、Al23の割合が3.0%を超えると、ガラス融液の安定性が悪化し、急冷後にガラスが形成されない。そのため、Al23の割合は、0~3.0%とした。同様の観点から、Al23の割合は、2.5%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。また、Al23の割合は、ガラス融液の安定性をより高める観点から、0.2%以上であることが好ましく、0.9%以上であることがより好ましい。
[SiO2+B23+P25+Ga23+Al23
基礎ガラス成分において、SiO2、B23、P25、Ga23及びAl23の合計の割合が43.0%未満であると、ガラス融液の安定性が悪化し、急冷後にガラスが形成されない。一方、上記合計の割合が54.0%を超えると、熱処理後に結晶化が生じない。そのため、上記合計の割合は、43.0~54.0%とした。同様の観点から、上記合計の割合は、45.0%以上であることが好ましく、また、48.0%以下であることが好ましい。
[O/F]
基礎ガラス成分においては、全フッ化物中のフッ素に対する全酸化物中の酸素のモル比(O/F)が、1.22~2.19である。上記モル比が1.22未満であると、ガラス融液の安定性が悪化し、急冷後にガラスが形成されない。また、上記モル比が2.19を超えると、熱処理後に結晶化が生じない。
[(K2O+Na2O+Li2O)/(SiO2+B23+P25+Ga23+Al23)]
基礎ガラス成分においては、(K2O+Na2O+Li2O)/(SiO2+B23+P25+Ga23+Al23)で表されるモル比が0.035~0.13である。上記モル比が0.035未満であると、熱処理後に結晶化が生じない。また、上記モル比が0.13を超えると、熱処理後にFe3+含有結晶以外の結晶が析出し、透明性が失われる。
次に、ガラス化工程で作製するガラスにおいて、各調整成分の割合を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、各調整成分に関する「質量部」表示は、特に断らない限り、基礎ガラス成分100質量部に対する質量部を意味するものとする。
[Fe23
Fe23は、調整成分の一つであり、深赤及び近赤外の領域でブロードな発光を得るために重要な成分である。また、Fe23におけるFeは、発光中心となる元素である。Fe23の量が0.5質量部未満であると、Fe3+の量が少ないため、深赤及び近赤外の領域でブロードな発光を十分に得ることができない。また、Fe23の量が3.0質量部を超えると、ガラス融液の安定性が悪化し、急冷後にガラスが形成されない。そのため、Fe23の量は、0.5~3.0質量部とした。同様の観点から、Fe23の量は、1.0質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、また、2.5質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であることがより好ましい。
[Sb23
Sb23は、調整成分の一つであり、Fe3+による発光強度を増大させる重要な成分である。Sb23の量が0.2質量部未満であると、Fe3+による発光強度を十分に増大させることができない。また、Sb23の量が1.0質量部を超えると、ガラス融液の安定性が悪化し、急冷後にガラスが形成されない。そのため、Sb23の量は、0.2~1.0質量部とした。同様の観点から、Sb23の量は、0.3質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましく、また、0.8質量部以下であることが好ましく、0.6質量部以下であることがより好ましい。
[RE23
RE23(REは、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択される1種以上の元素を指す)は、調整成分の一つであり、Fe3+による発光強度を増大させる任意成分である。RE23を用いる場合、その量は、0.2質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましい。また、RE23の量は、ガラス融液の安定性をより良好に保持する観点から、1.0質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以下であることがより好ましく、0.6質量部以下であることが更に好ましい。
なお、REは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[SnO2
SnO2は、調整成分の一つであり、Fe3+による発光強度を増大させる任意成分である。SnO2を用いる場合、その量は、0.2質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましい。また、SnO2の量は、ガラス融液の安定性をより良好に保持する観点から、1.0質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以下であることがより好ましく、0.6質量部以下であることが更に好ましい。
そして、ガラス化工程においては、原料熔解時の加熱温度を1200℃以上1400℃以下とすることを要する。加熱温度が1200℃未満であると、熱処理工程後に析出する結晶が急速に成長することにより、透明性が失われる。一方、加熱温度が1400℃超であると、原料中に存在するFe3+の多くが還元されてFe2+となる。そのため、かかるFe2+の吸収作用により、最終的に得られる結晶化ガラスが、深赤及び近赤外の領域での十分な発光をもたらすことができない。
なお、通常の大気雰囲気での熔解においては、熔解温度が高くなると、不所望なFe2+が生成する。そのため、ガラス化工程における原料の熔解は、Feイオン価数を3価(Fe3+)に制御するため、酸化雰囲気で行うことが好ましい。
<熱処理工程>
そして、熱処理工程では、ガラス化工程で作製したガラスを熱処理し、上記ガラスの少なくとも一部を結晶化させて、透明結晶化ガラスを得る。この熱処理工程では、ガラス中に存在し得るFe2+の少なくとも一部を、Fe3+に変化させることができる。また、この熱処理工程では、上述した基礎ガラス成分及び調整成分を含有するガラスを熱処理するため、Fe3+をKZnF3析出結晶に固溶させるか、又は、K3FeF6結晶を析出させることができる。そして、熱処理工程を経て、本実施形態の結晶化ガラスを製造することができる。
なお、熱処理の温度としては、特に限定されないが、例えば450℃以下とすることができる。
また、ガラス中のFeの量が多いほど、KZnF3結晶ではなくK3FeF6結晶が析出する傾向にあると考えられている。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の透明結晶化ガラスを具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(ガラス化)
各成分の原料として、各々相当する酸化物、フッ化物、炭酸塩、硝酸塩を準備し、ガラス化した後の組成(基礎ガラス成分及び調整成分)が表1~4に示す通りとなるように秤量し、混合し、調合原料を得た。この調合原料を白金坩堝に投入し、電気炉にて、表1~4に示す加熱温度にて数時間熔解した。そして、白金坩堝ごと炉外へ出し、融液を撹拌することにより均質化及び清澄を行った後、金型に流し込み、除歪することにより、均質なガラスを得た。このとき、最低熔解温度の測定及び安定性の評価を、以下の手順により行った。結果を表1~4に示す。
<最低熔解温度>
電気炉にて調合原料を加温していく際、均一な液面(析出結晶及び膜が存在しない状態)が観察されたときの温度を、最低熔解温度として測定した。
<安定性>
白金坩堝を炉外へ出し、融液を撹拌し始めてから失透が生じるまでの時間を測定した。そして、以下の基準に従い、安定性を評価した。
○:3分以上
△:2分以上、3分未満
×:1分未満(ガラス化しない)
(熱処理)
次に、熔解後のガラスを450℃で熱処理し、ガラスブロックを得た。得られたガラスブロックを、縦15mm×横15mm×厚み2.0mmに加工し、両面を光学研磨して、サンプルを得た。得られたサンプルを用い、透明性の評価、析出結晶及び1000nmの光の透過率の測定、並びに着色の評価を、以下の手順により行った。また、結果を表1~4に示す。
<透明性>
分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、紫外可視近赤外分光光度計、「U-4100」)を用い、各サンプルの透過スペクトルを得た。そして、得られたスペクトルから、700nmの光の透過率を求めた。表1~4では、700nmの光の透過率が50%以上である場合には、「○」と表記し、50%未満である場合には、「×」と表記した。
なお、後述のX線回折パターンにおいて、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶以外の結晶の析出が確認されたサンプルにおいては、いずれも透過率の測定が不能であったため、「×」と表記している。
参考までに、図1に、実施例10並びに比較例2及び14における熱処理後のガラスブロックの透過スペクトルを示す。図1より、実施例10及び比較例2では、熱処理後においても700nmの光の透過率が50%以上であり、透明性は「○」である。一方、比較例14では、700nmの光の透過率が50%未満であり、透明性は「×」である。これは、比較例14においては、熱処理によりFe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶以外の結晶がガラス中に析出したため、可視光領域(400~700nm)の光の透過量が少なくなったことを示している。
<析出結晶>
X線回折装置(株式会社リガク製、試料水平型多目的X線回折装置「Ultima IV」)を用い、各サンプルのX線回折パターンを得た。そして、得られたX線回折パターンから、析出した結晶を確認した。表1~4では、Fe3+ドープKZnF3結晶の析出が確認された場合には「K」と表記し、K3FeF6結晶の析出が確認された場合には「Fe」と表記した。また、結晶の析出が確認されなかった場合には「n」と表記し、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶とともに、それ以外の結晶の析出が確認された場合には「m」と表記した。
なお、Fe3+ドープKZnF3結晶の同定は、KZnF3結晶のX線回折パターンを参照して行った。
また、参考までに、図2に、実施例16、20及び比較例4、16のX線回折パターンを模式的に示す。図2より、実施例16では、Fe3+ドープKZnF3結晶の析出を確認でき、実施例20では、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶の両方の析出を確認でき、比較例4では、結晶の析出を確認できず、比較例16では、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶とともに、それ以外の結晶の析出が確認できる。
<1000nmの光の透過率>
分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、紫外可視近赤外分光光度計、「U-4100」)を用い、各サンプルの透過スペクトルを得た。そして、得られた透過スペクトルから、1000nmの光の透過率を求めた。表1~4では、1000nmの光の透過率が80%以上である場合には、「80以上」と表記し、80%未満である場合には、「80未満」と表記した。
なお、参考までに、図3Aに、実施例5における熱処理前のガラス及び熱処理後のガラスブロックの透過スペクトルを模式的に示し、図3Bに、比較例8における熱処理前のガラス及び熱処理後のガラスブロックの透過スペクトルを模式的に示す。図3Aより、実施例5では、熱処理後に透過率が高くなっている。これは、熱処理により、Fe2+による吸収が弱まった、即ち、ガラス中に存在するFe2+がFe3+に変化したことを示す。一方、図3Bより、比較例8では、熱処理の前後で透過率に大きな変化がない。これは、熱処理後も依然としてある程度の量のFe2+がガラス中に存在していることを示す。
<着色>
各サンプルの着色を、目視により確認した。表1~4では、黄色の色味が強い場合には「黄」と表記し、青色の色味が強い場合には「青」と表記し、特に着色されていない場合には「無色」と表記した。
なお、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶の少なくともいずれかを含み、且つ黄色の色味が強い場合には、Fe2+の量が十分に少なく、深赤及び近赤外の領域の発光強度が十分に高いことを認めることができる。
また、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶の少なくともいずれかを含み、且つ、青色の色味が強い場合には、Fe2+の量が多く、Fe2+吸収作用により、深赤及び近赤外の領域の発光強度が低いことを認めることができる。
更に、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶の少なくともいずれかを含み、且つ特に着色されていない場合には、これらの結晶自体の量が少ないため、深赤及び近赤外の領域の発光強度が低いことを認めることができる。
<励起スペクトル及び発光スペクトル>
更に、実施例6及び比較例16のガラスブロックのサンプルについて、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、分光蛍光光度計、「F-4500」)を用い、発光波長を680nmで固定したときの励起スペクトル、及び、励起波長を380nmで固定したときの発光スペクトルを測定した。結果を図4に示す。図4より、実施例6のガラスは、波長約380~450nmの光で励起し、波長約600~800nmの光を発することが分かる。一方、比較例16のガラスは、可視光域での励起及び発光が特段生じていないことが分かる。
Figure 0007090905000001
Figure 0007090905000002
Figure 0007090905000003
Figure 0007090905000004
表1~表4から、実施例のガラスは、透明である上、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶の少なくともいずれかを含み、1000nmの光の透過率が80%以上であり、且つ、目視においても黄色の色味が強いものであった。即ち、実施例のガラスは、深赤及び近赤外の領域でブロードな発光を高い発光強度で示すことが分かる。
これに対し、比較例1のガラスは、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶以外の結晶以外の結晶が析出しており、透明性が失われていた。これは、KFの量が多すぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例2のガラスは、1000nmの光の透過率が低く、青色の色味が強かった。これは、KFの量が少なすぎるため、最低熔解温度が高くなって多くのFe3+がFe2+に還元されたこと等に因るものと考えられる。
また、比較例3のガラスは、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶以外の結晶以外の結晶が析出しており、透明性が失われていた。これは、NaFの量が多すぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例4のガラスは、結晶化が生じなかった。これは、K2Oの量が多すぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例5においては、ガラス融液の安定性が悪く、急冷後にガラスを形成しなかった。これは、K2Oの量が少なすぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例6のガラスは、結晶化が生じなかった。これは、Na2Oの量が多すぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例7のガラスは、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶以外の結晶以外の結晶が析出しており、透明性が失われていた。これは、ZnF2の量が多すぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例8のガラスは、1000nmの光の透過率が低く、青色の色味が強かった。これは、ZnF2の量が少なすぎるため、最低熔解温度が高くなって多くのFe3+がFe2+に還元されたこと等に因るものと考えられる。
また、比較例9のガラスは、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶以外の結晶以外の結晶が析出しており、透明性が失われていた。これは、MgF2の量が多すぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例10のガラスは、結晶化が生じなかった。これは、SiO2の量が多すぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例11のガラスは、ガラス融液の安定性が悪く、急冷後にガラスを形成しなかった。これは、SiO2の量が少なすぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例12のガラスは、結晶化が生じなかった。これは、B23の量が多すぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例13においては、ガラス融液の安定性が悪く、急冷後にガラスを形成しなかった。これは、B23の量が少なすぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例14においては、ガラス融液の安定性が悪く、急冷後にガラスを形成しなかった。これは、Fe23の量が多すぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例15のガラスは、特に着色されていなかった。これは、Fe23の量が少なすぎるため、結晶自体の量が少ないこと等に因るものと考えられる。そのため、比較例15のガラスは、深赤及び近赤外の領域の発光強度が低いものと推察される。
また、比較例16においては、ガラス融液の安定性が悪く、急冷後にガラスを形成しなかった。これは、Sb23が多すぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例17のガラスは、結晶化が生じなかった。これは、基礎ガラス成分における、全フッ化物中のフッ素に対する全酸化物中の酸素のモル比(O/F)の値が大きすぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例18のガラスは、ガラス融液の安定性が悪く、急冷後にガラスを形成しなかった。これは、全フッ化物中のフッ素に対する全酸化物中の酸素のモル比(O/F)の値が小さすぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例19のガラスは、Fe3+ドープKZnF3結晶及びK3FeF6結晶以外の結晶以外の結晶が析出しており、透明性が失われていた。これは、基礎ガラス成分における、(K2O+Na2O+Li2O)/(SiO2+B23+P25+Ga23+Al23)で表されるモル比が大きすぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例20のガラスは、結晶化が生じなかった。これは、基礎ガラス成分における、(K2O+Na2O+Li2O)/(SiO2+B23+P25+Ga23+Al23)で表されるモル比が小さすぎること等に因るものと考えられる。
また、比較例21,23,24においては、ガラス化工程で作製したガラスの成分の組成は所定範囲内であるものの、1000nmの光の透過率が低く、青色の色味が強かった。これは、加熱温度が高すぎるため、多くのFe3+がFe2+に還元されたこと等に因るものと考えられる。
また、比較例22のガラスは、ガラス化工程で作製したガラスの成分の組成は所定範囲内であるものの、透明性が失われていた。これは、加熱温度が低すぎるため、熱処理後に析出した結晶が急速に成長したこと等に因るものと考えられる。
そして、比較例25のガラスは、SrF2結晶を含んでいたが、1000nmの光の透過率が低く、青色の色味が強かった。
本発明によれば、深赤及び近赤外の領域でブロードな発光を高い強度で示す、透明結晶化ガラスを提供することができる。また、本発明によれば、上述した透明結晶化ガラスの製造方法を提供することができる。

Claims (3)

  1. Fe3+ドープKZnF3結晶、及び、K3FeF6結晶の少なくともいずれかを含み、且つ、1000nmの光の透過率が80%以上である、ことを特徴とする、透明結晶化ガラス。
  2. 原料を熔解し、モル%で、
    KF:20.0~24.0%、
    NaF:0~2.0%、
    LiF:0~1.0%、
    (但し、KF+NaF+LiF:20.0~26.0%)
    2O:1.5~4.0%、
    Na2O:0~2.0%、
    Li2O:0~0.25%、
    (但し、K2O+Na2O+Li2O:1.5~6.0%)
    ZnF2:21.0~24.0%、
    MgF2:0~2.0%、
    AlF3:0~1.0%、
    (但し、ZnF2+MgF2+AlF3:21.0~26.0%)
    SiO2:40.0~45.0%、
    23:3.0~9.0%、
    25:0~5.0%、
    Ga23:0~2.0%、及び
    Al23:0~3.0%、
    (但し、SiO2+B23+P25+Ga23+Al23:43.0~54.0%)
    の組成を有し、且つ、
    全フッ化物中のフッ素に対する全酸化物中の酸素のモル比(O/F)が、1.22~2.19であり、
    (K2O+Na2O+Li2O)/(SiO2+B23+P25+Ga23+Al23)で表されるモル比が0.035~0.13である、基礎ガラス成分と、
    前記基礎ガラス成分100質量部に対し、外割りで、
    Fe23:0.5~3.0質量部、及び
    Sb23:0.2~1.0質量部、
    の組成を有する調整成分と、を含有するガラスを作製するガラス化工程と、
    前記ガラスを熱処理し、前記ガラスの少なくとも一部を結晶化させて、透明結晶化ガラスを得る熱処理工程と、
    を備え、
    前記ガラス化工程における原料熔解時の加熱温度を1200℃以上1400℃以下とする、ことを特徴とする、透明結晶化ガラスの製造方法。
  3. 前記調整成分が、更に、前記基礎ガラス成分100質量部に対し、外割りで、
    RE23(REは、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択される1種以上の元素を指す):1.0質量部以下、及び
    SnO2:1.0質量部以下、
    の少なくともいずれかを含む、請求項2に記載の透明結晶化ガラスの製造方法。
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