以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態である露光装置の概略的構成図である。図2は、露光装置の一部を模式的に示した斜視図である。図3は、露光装置の概略的ブロック図である。
露光装置10は、ロール状に巻かれた長尺基板Wを搬送しながら露光動作を行うRtoR搬送系を備えた露光装置であり、基板供給装置20、基板巻取装置30、露光部40を備える。長尺基板Wは、ここでは長尺フィルムに銅薄膜層を形成した上にフォトレジストなどの感光材料を塗布した(あるいは貼り付けた)長尺シート状の基板が巻回されてロール状に形成されている。図2に示すように、長尺基板Wは、幅同一の2条(一対)の基板W1、W2から構成されている。
露光ステージ(テーブル)15は、長尺基板Wの裏面を吸着して平坦に保持するとともに、裏面吸着位置と裏面から離れた所定の離間位置との間でZ方向に昇降可能であり、図示しない昇降機構によって昇降する。露光ステージ15は、後述するようにステージ移動機構50に支持され、X方向に沿って移動可能である。なお、以下では、長尺基板Wの搬送方向(搬送ライン)Mに沿った方向を“X”、搬送方向Mに垂直な方向(基板幅方向)を“Y”、そして、X、Yに垂直な方向(鉛直方向)を“Z”で表す。
露光部40は、長尺基板W1、W2からZ方向に所定距離離れた場所に配置され、不図示のフレームを介してベース(基台)10Bに固定されている。図3に示すように、露光部40は、半導体レーザなどの光源41と、照明光学系42と、複数のマイクロミラーをマトリクス配列させたDMD(Digital Micro-mirror Device)43と、結像光学系44などをそれぞれ備えた複数の露光ヘッドから構成され、各露光ヘッドには、搬送方向Mに沿った露光領域が規定されている。光源41は光源制御部110によって駆動される。
各露光ヘッドのDMDは、露光制御部120から送られてくる露光エリア位置に応じた描画データ(ラスタデータ)に基づいてマイクロミラーの姿勢を位置決めし、これによってパターン光が長尺基板W1、W2に投影される。露光部40に対する長尺基板W1、W2の相対移動に応じてマイクロミラーの姿勢を切り替えることにより、長尺基板W1、W2の感光材料に対する露光(多重露光など)が行われ、これによってパターンが形成される。コントローラ100(図3参照)は、露光装置10の露光動作全体を制御する。なお、マスクを用いた露光部によって構成することも可能である。
基板供給装置20は、露光ステージ15の上流側に配置される供給リール22A、22Bと、支持ローラ24と、供給リール22A、22Bをそれぞれ軸回転させる駆動機構(図示せず)を備えている。駆動機構は、例えばステッピングモータなどで構成される。基板供給装置20によって片持ち支持される供給リール22A、22Bは、それぞれ長尺基板W1、W2の未露光部分をロール状に巻いた状態で保持、固定し、また、軸回転することによって下流側に向けて長尺基板Wを送り出すことができる。なお、露光ステージ15から見て供給リール22A、22B側を“上流側”、巻取リール32A、32B側を“下流側”とする。
基板巻取装置30は、露光ステージ15の下流側に配置される巻取リール32A、32B、支持ローラ34と、巻取リール32A、32Bをそれぞれ軸回転させる駆動機構(図示せず)を備えている。巻取リール32A、32Bは、それぞれ長尺基板W1、W2の露光済み部分をロール状に巻いた状態で保持、固定し、また、軸回転することによって長尺基板W1、W2を巻き取ることができる。基板供給装置20、基板巻取装置30による長尺基板W1、W2の巻き取り処理などは、搬送制御部130(図3参照)によって制御されている。
供給リール22A、22B、巻取リール32A、32Bと露光ステージ15との間にそれぞれ配置される支持ローラ24、34は、長尺基板W1、W2を支持し、長尺基板W1、W2が搬送されるときに軸回転するフリーローラとして構成されている。支持ローラ24、34は、長尺基板W1、W2が露光面高さもしくは露光面高さより僅かに低い位置で下流側へ移動するようにその高さが調整されており、それぞれ基板供給装置20、基板巻取装置30によって片持ち支持されている。長尺基板W1、W2には、支持ローラ24、34の区間T(図1参照)の架け渡し部分に適度なテンションがかかっており、長尺基板W1、W2は皺や伸びがない状態で搬送されていく。
供給リール22A、22Bおよび巻取リール32A、32Bは、長尺基板W1、W2のロール状巻回部分を基板装着時に固定する周知の駆動機構26A、26B、および36A、36Bを備える。また、基板供給装置20、基板巻取装置30それぞれの駆動機構は、供給リール22Aと巻取リール32A、供給リール22Bと巻取リール32Bとをそれぞれ同期回転させ、長尺基板W1、W2を所定長さだけ間欠的に搬送させる。
ステージ移動機構50は、露光ステージ15を片持ち支持する昇降機構(図示しない)を装備した移動部材52と、ベース10Bに設置された一対のガイドレール54A、54Bおよびアクチュエータ55を備えている。一対のガイドレール54A、54Bは、X方向に沿って延び、移動部材52はガイドレール54A、54Bに沿ってX方向およびその逆方向に移動可能である。アクチュエータ55は、例えばボールネジによって構成される。
搬送部移動機構60は、プレート状の移動部材62と、ベース10Bに設置された一対のガイドレール64A、64Bおよびアクチュエータ65を備えている。基板供給装置20と基板巻取装置30は、移動部材62の上に搭載されており、一体となって移動する(連動する)。一対のガイドレール64A、64Bは、X方向に沿って延び、移動部材62はガイドレール64A、64Bに沿ってX方向およびその逆方向に移動可能である。
ベース10Bに設けられた移動制御部70は、アクチュエータ55、65の駆動を制御し、搬送系(基板供給装置20および基板巻取装置30)と露光ステージ15との相対的位置関係を維持する、すなわち相対的距離間隔が一定となるように、露光ステージ15と基板供給装置20、基板巻取装置30の移動をフィードバック制御する。
露光ステージ15と基板供給装置20(基板巻取装置30)との搬送方向Mに沿った相対的距離間隔は、アクチュエータ55,65に内蔵されるサーボモータの同期制御によって保たれている。また、この相対距離間隔を監視するため、位置検出用フォトセンサ90が、基板供給装置20の露光ステージ15と対向する側面に配置されている(図2参照)。位置検出用フォトセンサ90はLEDなどの光源を内蔵し、露光ステージ15の側面を照射する。露光ステージ15側面は、光の照射位置が基準位置とそれ以外の位置との間で光量差が生じるように形成されている。移動制御部70は、露光ステージ15と基板供給装置20の移動中、検出光量によって適正な相対的距離間隔が保たれているか監視する。
露光ステージ15の支持ローラ24側には、長尺基板W1、W2それぞれの端面位置を検出する位置センサ80が設けられている。位置センサ80は、例えばラインセンサなどの透過型フォトセンサによって構成することが可能である。基板供給措置20と基板巻取装置30は、それぞれ供給リール22A、22Bと巻取リール32A、32Bの軸方向位置を制御する機構(図示せず)を備えており、検出された端面位置に応じてリール軸方向位置を調整し、蛇行走行を補正することが可能である。
図4は、露光開始時と露光完了時の露光ステージおよび搬送系の位置を示した図である。
露光開始前、露光ステージ15は長尺基板W1、W2を吸着保持し、供給リール22A、22Bと巻取リール32A、32Bは、駆動されないため静止状態となっている。露光開始に伴い、露光ステージ15はX方向に沿って所定速度で移動していく。このとき、基板供給装置20および基板巻取装置30は、露光ステージ15の移動に合わせて移動する。
すなわち、露光ステージ15と同期して移動開始し、基板供給装置20および基板巻取装置30と露光ステージ15との相対的位置関係を保つように、露光ステージ15と同一速度でX方向に移動していく(並走する)。したがって、長尺基板W1、W2は、露光ステージ15の移動前および露光ステージ15の移動中の間、下流側へ送り出されず、露光ステージ15に対して静止している。露光ステージ15の移動中、各露光ヘッドの露光エリア位置に応じたパターン光が、露光部40から投影される。
露光ステージ15と、基板供給装置20および基板巻取装置30が露光完了位置に到達すると、露光ステージ15は長尺基板W1、W2の吸着支持を解除し、降下する。そして、供給リール22A、22Bおよび巻取リール32A、32Bが同期回転し、長尺基板W1、W2は所定長さ分だけ巻取リール32A、32Bに巻き取られる。
巻取リール32A、32B側への巻き取りが終了すると、露光ステージ15と基板供給装置20および基板巻取装置30が同期移動し、露光開始位置へ戻る。この間、供給リール22A、22Bと巻取リール32A、32Bは、駆動されないために静止状態となっている。上述した露光動作を繰り返すことによって、長尺基板W1、W2全体に対してパターンが形成されていく。
このように本実施形態によれば、長尺基板W1、W2を搬送するRtoR搬送系を備えた露光装置10において、露光ステージ15の上流側に設けられた供給リール22A、22Bを保持する基板供給装置20と、下流側に設けられた巻取リール32A、32Bを保持する基板巻取装置30が設けられている。露光動作のとき、露光ステージ15はステージ移動機構50によってX方向に移動し、同時に、基板供給装置20および基板巻取装置30が、搬送部移動機構60によってX方向へともに移動する。
基板搬送系(基板供給装置20、基板巻取装置30)が露光ステージ15と一緒に移動するため、長尺基板W1、W2が露光ステージ15の移動開始前および移動中に下流側へ送り出されない。そのため、従来の搬送系のような露光中の蛇行走行が抑制され、蛇行走行に起因する露光位置ずれ、あるいは基板の皺より、反りなどが生じない。また、このような基板搬送系を構成することによって、ダンサーローラなどの機構を設ける必要がなく、簡易な構成で基板搬送系を構築することが可能となる。
基板供給装置20と基板巻取装置30は、露光中、長尺基板Wを下流側の一方向のみ送り出せばよく、巻き戻しを行う必要がない。そのため、長尺基板Wの蛇行を抑えたパターン露光を実現することができる。特に、蛇行調整が困難な2条の長尺基板W1、W2を搬送する露光装置に好適である。
基板搬送系が移動するため、基板搬送長(供給リール22A、22Bと巻取リール32A、32B間の基板長さ)を短く構成することができる。基板搬送長が短くなることで、長尺基板W1、W2の皺、伸びなどが生じにくく、精度よくパターンを形成することができる。特に、1つの支持ローラ24、34を設けるだけで長尺基板W1、W2を送り出す搬送系を構成することができる。
また、露光動作完了後、露光ステージ15が長尺基板W1、W2を吸着支持していない間に長尺基板W1、W2を下流側に送り出して巻き取るため、巻き取りをスムーズに行うことができる。このとき基板搬送長が短いため、短時間での巻き取りが可能となる。
本実施形態では、露光ステージ15と基板搬送系(基板供給装置20、基板巻取装置30)は、それぞれステージ移動機構50、搬送部移動機構60によって別々に駆動されている。長尺基板W1、W2に関して言うと、供給リール22A、22Bのロール状部分、巻取リール32A、32Bのロール状部分の巻径は、長尺基板W1、W2が基板巻取装置30に巻取られていく過程で逐次変化し、重量バランスが一定とならない。
しかしながら、ステージ移動機構50とは異なる搬送部移動機構60を設けることにより、長尺基板W1、W2の重量バランス変化があっても露光ステージ15の移動制御に影響が出るのを防いでいる。また、従来のステージ移動機構を利用したまま搬送系を構築することが可能となる。
一方、基板供給装置20と基板巻取装置30は、同じ移動部材62に固定支持されており、一体となって移動する。基板供給装置20と基板巻取装置30が連動するため、基板供給装置20と基板巻取装置30との間で相対的位置関係に変化が生じず、露光ステージ15との相対的維持関係を維持させることが容易となる。また、搬送部移動機構60を1つの駆動系でまとめることができる。
一方で、移動制御部70が、露光ステージ15の移動中、露光ステージ15と基板供給装置20および基板巻取装置30との相対的位置関係を保つように、アクチュエータ55、65を駆動制御している。これによって、供給リール22A、22B、巻取リール32A、32Bが露光ステージ15に近づき、長尺基板W1、W2の伸び、反りなどが生じるのを抑え、また、露光位置ずれを防ぐことができる。
なお、移動制御部70は、距離間隔が閾値以上となったときに移動速度、加速度を制御するようにしてもよい。あるいは、供給リール22A、22Bおよび/または巻取リール32A、32Bを軸回転制御して、長尺基板W1、W2に適切なテンションがかかるように調整してもよい。
2条の長尺基板W1、W2だけでなく、より多くの複数の長尺基板を並列させて同時搬送させることも可能であり、また、1つの長尺基板で構成することも可能である。基板供給装置20と基板巻取装置30については、機械的に連結させず、別々の移動機構で移動させるようにしてもよい。また、露光ステージ15と基板供給装置20、基板巻取装置30とを同じ移動機構で移動させるようにしてもよい。
以上の実施形態では、露光ステージ15の上流側に基板供給装置20と下流側に基板巻取装置30を設けて、長尺基板W1、W2を同方向に移動させように供給リール22A、22Bと巻取リール32A、32Bを駆動していたが、長尺基板W1とW2とがお互いに逆方向に移動するようにしてもよい。
すなわち、露光ステージ15の両側に2対のリールを設け、一方のリール対をX方向に向けて巻き取るように供給リール、巻取リールを設置する一方、他方のリール対を-X方向に向けて巻き取るように供給リール、巻取リールを設けることが可能である。この場合、基板供給装置と基板巻取装置の機能を組み合わせた一対の搬送装置を露光ステージに対して移動させる。このように長尺基板W1とW2とがお互いに逆方向に移動するように構成すると、露光ステージの上流側と下流側における長尺基板の重量バランスの変化を軽減することが可能となる。
また、以上の実施形態では露光ステージ15が移動することで長尺基板W1、W2と露光部40との相対移動を実現し露光を行っていたが、露光ステージ15がベース10Bに固定され、露光部40が不図示の移動装置によって基板搬送方向に移動することで相対移動するようにしてもよい。その場合、基板供給装置20と基板巻取装置30とが、露光ステージ15と相対的位置関係を維持するようにベース10Bに固定される。
次に、図5、6を用いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、RtoR搬送系が、露光ステージの露光面以下に配置されている。また、露光ステージ、基板供給装置、基板巻取装置が移動しているときの長尺基板にテンションをかけるテンションローラが設けられている。なお、第1の実施形態においても、RtoR搬送系が露光ステージの露光面以下に配置されている。
図5は、第2の実施形態である露光装置の概略的斜視図である。図6は、露光装置の概略的平面図である。なお、第2の実施形態の基板搬送方向は、第1の実施形態の搬送方向と逆向きであり、基板供給装置、基板巻取装置の配置箇所も、第1の実施形態と逆になっている。同一の構成要素に関し、第1の実施形態と同じ符号を用いている。
露光装置10’は、第1の実施形態と同様、基板供給装置20、基板巻取装置30を備え、それぞれ供給リール22A、22B、巻取リール32A、32Bを備える。一方、フリーローラとして構成され、露光ステージ15の両端傍に配置される支持ローラ24、34は、基板供給装置20と基板巻取装置30との間に設けられたローラ支持装置55によって支持されている。
基板供給装置20(20A、20B)、基板巻取装置30(30A、30B)、ローラ支持装置55は、搬送部移動機構60によって搬送方向M(X方向)およびその逆方向に移動可能である。また、露光ステージ15はステージ移動機構50によって搬送方向Mおよびその逆方向に移動可能であり、基板供給装置20、基板巻取装置30、ローラ支持装置55は、第1の実施形態と同様、露光ステージ15と同期して移動することができる。
第2の実施形態では、長尺基板W1、W2に接するローラとして、支持ローラ24、34に加え、テンションローラ36、テンション測定ローラ37、テンション測定ローラ39が設けられている。テンションローラ36は、フリーローラであって、ローラ支持装置55に支持されている。
テンション測定ローラ39は、ローラ支持装置30Cによって支持され、2つのフリーローラ39A,39Bによって構成されている。長尺基板W2は、2つのフリーローラ39A,39Bの間に挟まれた状態で巻かれる。テンション測定ローラ37はフリーローラであり、ローラ支持装置55によって支持されている。テンション測定ローラ37、39は、ロードセルなどの既知のテンション計測手法によって長尺基板W1、W2のテンションを計測する。
図6に示すように、露光部40は、4本の脚46A~46Dを備えた架台45の上に設定されている。ただし、図5には架台45を図示していない。架台45の脚46A、46C(脚46B、46D)の距離間隔は、長尺基板W1、W2およびRtoR搬送系が架台45の内部空間SJを通過できるように定められている。
一方、露光光学系のワークディスタンス(WD)が非常に短い距離間隔(例えば数十ミリ程度)に設定されるため、架台45の高さは、露光ステージ15の高さを大きく超えるように設定することができない。したがって、露光ステージ15は、架台45の内面のすぐ傍を通過していく。
本実施形態では、RtoR搬送系を構成する支持ローラ24、34およびテンション測定ローラ37、39、そして供給リール22A,22B、巻取リール32A、32Bが、いずれも露光ステージ15の露光面EH以下(すなわち露光面EHを基準として露光部40と反対側)のスペースに配置されている。言い換えると、RtoR搬送系を構成する部材が、露光面EHを(一部分でも)実質的に超えていない。
これは、長尺基板W1、W2の搬送に関与するRoR搬送系の上面がフラットであることを示す。そのため、支持ローラ24,34、テンション測定ローラ37、39は、架台45に当たることなく内部空間SJへ移動することができる。基板供給装置20、基板巻取装置30、ローラ支持装置55も同様である。
RtoR搬送系が露光面EH以下に配置されるため、供給リール22A、22Bは、長尺基板W1、W2に適度なテンションがかかるように、架台45の近くに配置される。巻取リール32A、32Bも、テンションローラ36、テンション測定ローラ37、39を間に含め、できる限り架台45の近くに配置される。
一方、長尺基板W1、W2にそれぞれ適切なテンションをかけるため、供給リール22A、22Bおよび巻取リール32A、32Bは、それぞれ独立して駆動される。一方、搬送部移動機構60は、長尺基板W1、W2の片方の側面側だけに配置され、供給リール22A、22Bおよび巻取リール32A、32Bは片持ち支持されている。
そのため、供給リール22A、22Bおよび巻取リール32A、32Bは、それぞれ基板搬送方向Mに関し、異なった位置に配置される。その一方で、長尺基板W1、W2に同じテンションをかけやすく、また、RtoR搬送系の鉛直方向幅を抑えるなどの理由により、供給リール22A、巻取リール32Aの鉛直方向高さと、供給リール22B、巻取リール32Bの鉛直方向高さが等しくなるように、配置設定されている。
長尺基板W2は、長尺基板W1よりも基板供給装置20、基板巻取装置30から離れ、供給リール22B、巻取リール32Bの長さが供給リール22A、巻取リール32Aの長さよりも長く、ロール状の長尺基板W2は基板供給装置20、基板巻取装置30から離れた位置で支持される。そのため、供給リール22B、巻取リール32Bの間で長尺基板W2が蛇行しやすい。
これを防ぐため、供給リール22B、巻取リール32Bのリール間距離を、供給リール22A、巻取リール32Aのリール間距離よりも短くなるようにRtoR搬送系を構成している。すなわち、基板供給装置20、基板巻取装置30により近い場所でロール状の長尺基板W1を支持する供給リール22A、巻取リール32Aが、供給リール22B、巻取リール32Bよりも露光部40から離れた外側に位置している。
このように第2の実施形態によれば、RtoR搬送系を備えた露光装置10’において、RtoR搬送系を構成する支持ローラ24、34およびテンション測定ローラ37、39、そして供給リール22A,22B、巻取リール32A、32B、基板供給装置20、基板巻取装置30、ローラ支持装置55が、露光ステージ15の露光面EH以下のスペースに配置されている。
これにより、RtoR搬送系の基板搬送方向Mに沿った装置サイズを小さくすることができる。すなわち、設置スペースが露光面以下に配置するRtoR搬送系は、ニップローラ、ダンサーローラを必然的に省くことになり、基板搬送方向に沿った装置サイズをコンパクト化することができる。なお、RtoR搬送系が露光ステージ15と移動しない従来型RtoR搬送系に対しても、本実施形態は有効である。
そして、RtoR搬送系において、ローラ群の中で長尺基板W1、W2の表面と接するローラが従来の搬送系と比べて少ない。これにより、パターンの形成される基板表面が傷つくのを抑えることができる。特に、ソルダーレジスト露光には効果的である。
さらに第2の実施形態では、テンションローラ36を設けた構成により、移動期間中でも、長尺基板W1、W2に対して適度なテンションを掛け続けることができる。以下では、テンションローラ36の働き、そして供給リール22A、22B、巻取リール32A、32Bの駆動について説明する。
テンションローラ36は、長尺基板W1、W2にテンションを掛けるローラであり、長尺基板W1、W2の表面と接し、他のローラに対して位置変動可能な状態でローラ支持装置55に支持されている。また、テンションローラ36は、偏芯ローラであり、揺動運動できるように支持されている。
供給リール22A,22Bを駆動する駆動機構21A、21Bは、基板供給装置20A,20Bにそれぞれ設けられている。駆動機構21A、21Bは、ワンウェイクラッチ機構を備え、基板搬送方向Mの逆方向にのみトルクTを掛け続けるように動作する。トルクTは、露光ステージ15の長尺基板W1、W2に対する吸着力よりも弱い。例えば、駆動機構21A、21Bは、パウダークラッチを備えており、テンション測定ローラ37、39によって測定されるテンションに応じてパウダークラッチを制御する。
一方、基板巻取装置30A,30Bに設けられた巻取リール32A,32Bの駆動機構31A,31Bは、サーボモータ機構によって構成されている。なお、駆動機構31A,31Bが、テンション測定ローラ37、39によって測定されるテンションに応じて、巻取時などのトルク量を調整するようにしてもよい。
上述したように、搬送部移動機構60とステージ移動機構50が別々に構成され、RtoR搬送系は、露光ステージ15と同期して移動する。そのため、移動時の制御の問題などによって同期ずれが生じる。すなわち、露光ステージ15がRtoR搬送系より早く移動し、あるいは遅れる。同期ずれが生じると、長尺基板W1、W2が撓み、あるいは伸びにつながる。これを防ぐため、テンションローラ36がテンションを長尺基板W1、W2にかけるように位置変動する。
テンションローラ36は、図示しない規制部材と接することによって、鉛直上方向の移動が制限されている。露光ステージ15が長尺基板W1、W2を吸着していない状態では、供給リール22A、22Bに対して供給側と逆方向にトルクが掛かかっているため、長尺基板W1、W2の表面に接するテンションローラ36は、鉛直方向に付勢され、規制部材と接した状態を維持する。長尺基板W1、W2は、支持ローラ24、34の間で適度なテンションがかかる状態となる。露光ステージ15が長尺基板W1、W2を吸着し、移動する間、同様にテンションがかかる状態が維持される。
一方、同期ずれによってRtoR搬送系が露光ステージ15より遅れた場合、すなわち、露光ステージ15がRtoR搬送系に近づく場合、露光ステージ15が長尺基板W1、W2を吸着しながら移動しているため、長尺基板W1、W2は撓もうとする。このとき、テンションローラ36が揺動し、上限位置から変動する。その結果、長尺基板W1、W2は撓むことなく適度なテンションがかかる。
逆に、同期ずれによってRtoR搬送系が露光ステージ15より進んだ場合、すなわち、露光ステージ15がRtoR搬送系から離れた場合、駆動機構21A、21Bが供給リール22A,22Bに対して長尺基板の送り出し方向とは逆方向にトルクTをかけているため、長尺基板W1、W2が支持ローラ24と供給リール22A、22Bとの間で撓むことがなく、適度なテンションが維持される。
一方、テンションローラ36を設けたことによって、テンションローラ36とテンション測定ローラ39との間の長尺基板W1、W2の傾斜が緩くなっている。そのため、ローラ39A,39Bの間に長尺基板W1、W2を挟むことによって角度を付け、正確なテンションを測れるように構成している。
このように第2の実施形態によれば、RtoR搬送系が露光ステージ15とともに基板搬送方向Mに沿って移動可能な露光装置10’において、テンションローラ36が露光ステージ15の下流側に設けられている。そしてRtoR搬送系の移動中、テンションローラ36は、他のローラに対して位置変動し、長尺基板W1、W2の撓みを抑えるようにテンションをかける。
多くの場合、RtoR搬送系を移動させる方が露光ステージ15を移動させるより駆動力が必要となる。したがって、露光ステージ15がRtoR搬送系に近づく同期ずれが生じやすい。したがって、テンションローラ36を露光ステージ15の下流側に配置されることにより、効果的にテンションを掛けることができる。
また、駆動機構21A,21Bが、供給リール22A、22Bに対して基板搬送方向とは逆の方向にのみトルクをかけ続けることによって、テンションローラを露光ステージ15の上流側に設けなくても、同期ずれの時にテンションを掛けることができる。
さらに、テンションローラ36が、偏芯ローラの構成によって揺動し、等時性をもった動きをする。これによって、テンションを適度にかけ続けることが容易となる。そして、このテンションローラ36は長尺基板W1、W2に跨るように配置されることにより、長尺基板W1、W2に対し、同等なテンションを掛けることができる。
なお、テンションローラ36を偏芯ローラで構成しなくてもよく、鉛直方向に沿って位置変動するようにしてもよい。また、上流側にテンションローラを設けるようにしてもよい、そして、ステージ移動機構50と搬送部移動機構60が一体となった移動機構に対して適用することも可能である。
次に、図7を用いて、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、搬送部移動機構が、露光部を支持する架台の外側に設けられている。
図7は、第3の実施形態である露光装置の概略的斜視図である。
露光装置10”は、供給リール22A,22Bを駆動し、対向配置される一対の基板供給装置120X、120Y、巻取リール32A、32Bを駆動し、対向配置される一対の基板巻取装置130X、130Yを備える。搬送部移動機構60は、露光部40の架台45の外側で基板搬送方向Mに並列する一対の搬送部移動機構60X、60Yによって構成されている。
一対の搬送部移動機構60X、60Yにそれぞれ配置された基板供給装置120A1、120A2は、供給リール22Aを両側から支持する。また、供給リール22Aの軸部は、基板供給装置120A1、120A2の距離間隔に応じた長さをもつ。供給リール22Bも、基板供給装置120B1、120B2によって両側から支持されている。
同様に、一対の搬送部移動機構60X、60Yにそれぞれ配置された基板巻取装置130B1、130B2は、巻取リール32Bを両側から支持し、搬送部移動機構60X、60Yにそれぞれ配置された基板巻取装置130A1、130A2は、巻取リール32Aを両側から支持する。搬送部移動機構60Xは、ガイドレール61Xに沿って基板搬送方向Mおよびその逆方向に移動可能であり、搬送部移動機構60Yは、ガイドレール61Yに沿って基板搬送方向Mおよびその逆方向に移動可能である。
搬送部移動機構60X、60Yは、互いに同期しながら移動する。これによって、第1、第2の実施形態と同様、RtoR搬送系は露光ステージ15とともに基板搬送方向Mに移動することができる。ただし、ガイドレール61X、61Yが架台45の周囲に配置されているため、供給リール22B、巻取リール32Bが架台45と当たらないように移動範囲が制限されている。支持ローラ24、34は、ここでは露光ステージ15に取り付けられている。
搬送部移動機構60X、60Yが架台45の下を通らない構成にすることで、搬送部移動機構60X、60Yが動作するときに露光部40へ振動が伝わり、パターン露光に影響が出るのを抑制することができる。また、架台45の内部空間SJのスペースが確保され、3、4条といった多数の長尺基板を搬送することも可能となる。
一方、基板供給装置120A1、120A2は、それぞれアクチュエータ140A1、140A2によって移動可能であり、基板供給装置120B1、120B2は、それぞれアクチュエータ140B1、140B2に沿って移動可能である。同様に、基板巻取装置130A1、130A2は、それぞれアクチュエータ150A1、150A2に沿って移動可能であり、基板供給装置130B1、130B2は、それぞれアクチュエータ150B1、150B2に沿って移動可能である。
供給側のアクチュエータ140A1、140A2、140B1、140B2、そして巻取側のアクチュエータ150A1、150A2、150B1、150B2は、いずれも基板供給装置120X、120Yおよび基板巻取装置130X、130Yを、基板搬送方向Mに直交する方向(以下、基板搬送直交方向という)Nに沿って移動させることが可能である。また、いずれのアクチュエータも、ボールネジなどによって構成することができる。
基板供給装置120X,120Yおよび基板巻取装置130X,130Yは、同じ動きで基板搬送直交方向Nに沿って移動する。すなわち、始動タイミング、移動速度、停止タイミングが同じになって移動する。これにより、RtoR搬送系が、全体的に一体となって基板搬送直交方向Nに沿って移動することができる。
露光ステージ15は、ステージ移動機構50によって基板搬送垂直方向Nおよびその逆方向に沿って移動可能である。そして、基板供給装置120X,120Yおよび基板巻取装置130X,130Yは、移動制御部70によって露光ステージ15と同期して移動することができる。
RtoR搬送系が露光ステージ15とともに基板搬送方向Mおよび基板搬送直交方向Nに移動可能であることから、長尺基板W1、W2に対してもマルチパス露光を行うことが可能となる。すなわち、矩形状基板への露光と同様、基板搬送方向Mに沿ってある走査バンドを露光した後、露光ステージ15を基板搬送直交方向Nに移動させ、隣の走査バンドを露光することが可能となる。
露光時の照射エリア(露光エリア)サイズは、露光部40の光学系、露光特性(光強度、感光量など)に依存し、使用される長尺基板の幅に合わせたサイズを確保できない場合がある。露光エリアが長尺基板の幅全体をカバーできない場合、マルチパス露光を実行することによって長尺基板W1、W2の幅全体にパターンを形成することが可能となる。
このように第3の実施形態によれば、RtoR搬送系を備えた露光装置10”において、搬送部移動機構60X、60Yは、露光部40の架台45の外側に配置され、一対の基板供給装置120X、120Y、一対の基板巻取装置130X、130Yは、架台45の下を通過しない。また、基板供給装置120X、120Yおよび基板巻取装置130X,130Yが同期して基板搬送直交方向Nに移動し、RtoR搬送系を露光ステージ15とともに基板搬送直交方向Nに沿って移動させる。
第2の実施形態においても、搬送部移動機構60を架台45の外側に設けて移動させる構成にすることが可能である。