JP7089817B1 - 加熱調理用でんぷん含有組成物の製造方法 - Google Patents

加熱調理用でんぷん含有組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

液中で加熱調理中に形状が崩壊しにくく、且つ、マット感が高く、外観に優れた加熱調理用のでんぷん含有組成物の製造方法を提供する。斯かる製造方法は、モーターによって回転するスクリューと、前記スクリューの外周を包囲するバレルと、前記バレルの基部側に取付けられた、食品素材を投入するためのフィーダと、前記バレルの先端側に取付けられた、混練後の食品素材を成形しながら排出するダイ部とを備え、前記スクリューが、基部側から先端側にかけて、第1フライト部、混練部、及び第2フライト部を有し、前記バレルが、前記スクリューの前記第2フライト部の前半部に対応する位置にベント部を有する押出機を用いると共に、下記(i)~(iv)の段階を含む。(i)不溶性食物繊維の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、でんぷんの含有量が湿潤質量換算で10.0質量%以上、タンパク質の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、乾量基準含水率が25質量%以上の組成物を調製する段階、(ii)段階(i)の組成物を、前記第1フライト部から前記混練部にかけて10℃以上加温させ、前記混練部において与圧条件下で温度100℃以上200℃以下とし、SME値350kJ/kg以上で混練する段階、(iii)段階(ii)の混練後の組成物を、前記混練部における与圧状態から、前記ベント部において大気圧以下まで減圧する段階、及び(iv)段階(ii)の混練後の組成物の糊化度を混練部以降で6質量%以上低下させる段階。

Description

本発明は、でんぷんを含有する加熱調理用の組成物に関する。
昨今、食品には美味しさのみならず、外観の美しさを兼ね備えることが求められてきた。特に、写真撮影時に自然な印象を与えるよう、マット感の高い食品が求められてきた。
しかし、従来の加熱調理用組成物においては、加熱調理中の形状崩壊をしにくく、マット感の高い外観を兼ね備えたものは存在しなかった。
また、従来、野菜の煮込み調理時に、野菜の組織が崩壊し、形状が崩れることを防止する方法として、固形分全量に対してマルトトリオースを35質量%以上含有する糖組成物からなる煮崩れ防止剤などを使用する方法が知られていた(特許文献1)。
しかし、特許文献1に記載の煮崩れ防止剤は、マルトトリオースの独特な風味や食感が食品に付与されてしまうという課題があった。また、糖を高含有しているために、マット感が損なわれ、外観が劣る組成物となってしまうという課題があった。
特開2015-181417号公報
本発明の課題は、液中で加熱調理中に形状が崩壊しにくく、且つ、マット感が高く、外観に優れた加熱調理用のでんぷん含有組成物の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記の事情に鑑みて鋭意研究した結果、でんぷん及び水分をそれぞれ一定以上含有する組成物を加圧加温及び混練した後、急速に減圧冷却することが可能な押出機を用い、原料中のでんぷん粒を崩壊させ、さらに急冷することで、組成物内部に強固なでんぷんのマトリクス構造を作りつつ、組成物外周部に老化澱粉層を形成させることで、マットな外観と加熱調理時における崩壊しにくさを兼ね備えた組成物を製造する方法を新規に知見した。そして、本発明者らは上記の知見に基づいて更に鋭意研究を進めることにより、下記の発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の趣旨は、例えば以下に関する。
[項1]押出機を用いて加熱調理用でんぷん含有組成物を製造する方法であって、前記押出機が、
モーターによって回転するスクリューと、
前記スクリューの外周を包囲するバレルと、
前記バレルの基部側に取付けられた、食品素材を投入するためのフィーダと、
前記バレルの先端側に取付けられた、混練後の食品素材を成形しながら排出するダイ部とを備え、
前記スクリューが、基部側から先端側にかけて、第1フライト部及び混練部を少なくとも有し、
前記バレルが、前記スクリューの前記混練部の先端側の位置にベント部を有する、押出機であると共に、
前記方法が、下記(i)~(iv)の段階を含む製造方法。
(i)不溶性食物繊維の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、でんぷんの含有量が湿潤質量換算で10.0質量%以上、タンパク質の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、乾量基準含水率が25質量%超の組成物を調製する段階、
(ii)段階(i)の調製後の組成物を、前記第1フライト部から前記混練部にかけて加温させ、前記混練部において与圧条件下で温度100℃以上200℃以下とし、SME値350kJ/kg以上で混練する段階、
(iii)段階(ii)の混練後の組成物を、前記混練部における与圧状態から、前記ベント部において大気圧以下まで減圧する段階、及び
(iv)段階(ii)の混練後の組成物の糊化度を混練部以降で6質量%以上低下させる段階。
[項2]前記ベント部と前記ダイ部が一体的に設けられる、項1に記載の製造方法。
[項3]前記スクリューが、前記混練部の先端側に第2フライト部を更に有し、前記ベント部が前記第2フライト部の前半部に対応する前記バレル上の位置に設けられる、項1に記載の製造方法。
[項4]段階(ii)の混練後の組成物を、前記混練部から前記ダイ部にかけて20℃以上降温させる、項1~3の何れか一項に記載の製造方法。
[項5]前記第2フライト部先端側終点とダイ部との間にフロー遅滞構造を有する、項3又は4に記載の製造方法。
[項6]前記混練部における前記バレル内壁に溝状構造が形成された領域が、前記混練部全長の30%以下である、項1~5の何れか一項に記載の製造方法。
[項7]前記混練部から前記第2フライト部及び/又は前記ダイ部にかけての何れかの位置に、冷却設備が設けられてなる、項3~6の何れか一項に記載の製造方法。
[項8]前記第1フライト部の基部側起点から前記第1フライト部全長に対して20%までの領域における平均ねじ溝深さよりも、前記第1フライト部の残り80%の平均ねじ溝深さの方が浅い、項1~7の何れか一項に記載の製造方法。
[項9]前記第2フライト部の基部側起点から前記第2フライト部全長に対して20%までの領域における平均ねじ溝深さよりも、前記第2フライト部の残り80%の平均ねじ溝深さの方が浅い、項3~8の何れか一項に記載の製造方法。
[項10]前記第2フライト部の基部側起点から第2フライト部全長に対して20%までの領域における平均ねじ溝ピッチよりも、前記第2フライト部の残り80%の平均ねじ溝ピッチの方が大きい、項3~9の何れか一項に記載の製造方法。
[項11]段階(i)の組成物に含まれるでんぷんが、乾量基準含水率25質量%以上の含水条件下で80℃以上で加熱された食用植物に由来するでんぷんである、項1~10の何れか一項に記載の製造方法。
[項12]前記製造方法により得られる加熱調理用でんぷん含有組成物に対して下記処理Aを加えた後に超音波処理をした場合の粒子径分布d90が450μm以下である、項1~11の何れか一項に記載の製造方法。
[処理A]
組成物6質量%の水懸濁液を、0.4容量%のプロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼによって、20℃で3日間処理する。
[項13]段階(i)の組成物の調製が、押出機投入前の原材料に予め加水することを含む、項1~12の何れか一項に記載の製造方法。
[項14]段階(i)の組成物の調製が、押出機に原材料を投入後、押出機内の原材料に加水することを含む、項1~12の何れか一項に記載の製造方法。
[項15]段階(i)において、押出機内の原材料が乾量基準含水率25質量%以下の状態で90℃以上の高温に曝露されない、項14に記載の製造方法。
[項16]段階(ii)の混練後における組成物のでんぷん糊化度が30質量%以上である、項1~15の何れか一項に記載の製造方法。
[項17]段階(iii)の減圧を前記ベント部からの強制排気により行う、項1~16の何れか一項に記載の製造方法。
[項18]段階(ii)の混練後又は段階(iii)の減圧後における組成物が下記(a)及び/又は(b)を充足する、項1~17の何れか一項に記載の製造方法。
(a)組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、300個/mm2以下である。
(b)ラピッドビスコアナライザを用いて14質量%の組成物粉砕物水スラリーを50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が120℃未満である。
[項19]段階(iv)の糊化度低下後における組成物のでんぷん糊化度が90質量%以下である、項1~18の何れか一項に記載の製造方法。
[項20]前記組成物が食用植物を含有する、項1~19の何れか一項に記載の製造方法。
[項21]前記組成物中の総でんぷん含量に対する、食用植物に含有された状態のでんぷん含量の比率が、30質量%以上である、項20に記載の製造方法。
[項22]前記食用植物が豆類である、項20又は21に記載の製造方法。
[項23]豆類が、エンドウ属、インゲンマメ属、キマメ属、ササゲ属、ソラマメ属、ヒヨコマメ属、ダイズ属及びヒラマメ属から選ばれる1種以上の豆類である、項22に記載の製造方法。
[項24]豆類を乾燥質量換算で50質量%以上含有する、項22又は23に記載の製造方法。
[項25]前記組成物が膨化物ではない、項1~24の何れか一項に記載の製造方法。
[項26](v)前記段階(iii)又は(iv)の後、得られた組成物を粉砕し、粉砕組成物とする段階を更に含む、項1~25の何れか一項に記載の製造方法。
[項27](vi)前記段階(v)の後、得られた粉砕組成物を凝集し、粉砕組成物凝集体とする段階を更に含む、項26に記載の製造方法。
[項28]前記段階(v)で得られた粉砕組成物及び/又は段階(vi)で得られた粉砕組成物凝集体を、乾燥質量換算で5質量%以上含むように段階(i)の組成物に配合することを更に含む、項26又は27に記載の製造方法。
本発明によれば、液中で加熱調理中に形状が崩壊しにくく、且つマット感が高く、外観に優れた加熱調理用のでんぷん含有組成物を製造することが可能になる。
図1は、本発明の製造方法に使用される第1の態様の押出機の構成例を模式的に示す断面図である。 図2は、図1の態様の押出機に使用されるスクリューの構成例を模式的に示す側面図である。 図3は、本発明の製造方法に使用される第2の態様の押出機の構成例を模式的に示す断面図である。 図4は、図3の態様の押出機に使用されるスクリューの構成例を模式的に示す側面図である。 図5A及び5Bは何れも、(第1及び第2の態様を含む)本発明の製造方法に使用される押出機のダイ部の変形例を模式的に示す断面図である。
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
本発明の一態様は、特定の押出機を用いて、特定の性質を有する加熱調理用でんぷん含有組成物(以下「本発明のでんぷん含有組成物」又は「本発明の組成物」と称する場合もある。)を製造する方法(以下「本発明の製造方法」と称する場合もある。)に関する。以下、まずは本発明の製造方法に使用される特定の押出機(以下「本発明の押出機」と称する場合もある。)の特徴について説明した上で、斯かる本発明の押出機を用いて実施される本発明の製造方法の特徴について説明する。
[I.押出機]
(押出機の構成)
押出機(エクストルーダー)としては、代表的には一軸押出機と二軸押出機とが挙げられるが、本発明の製造方法では、一軸押出機を使用することが好ましい。また、一般に押出機と称される装置(特に海外で「extruder」又は「single screw extruder」等と称される装置)には、単なるミキサーやニーダー機能を有するに過ぎない押出装置も含まれるが、斯かる押出装置は、本発明の製造方法の特徴の一つとなる強混練を得られないため、本発明の製造方法によって得られるはずの特徴的な組成物構造を形成することが困難となってしまい、好ましくない。
本発明の押出機は、モーターによって回転するスクリューと、前記スクリューの外周を包囲するバレルと、前記バレルの基部側に取付けられた、食品素材を投入するためのフィーダと、前記バレルの先端側に取付けられたダイ部とを備える押出機である。一態様によれば、本発明の押出機のスクリューは、基部側から先端側にかけて(即ち、押し出し方向又は押し出し側に向かって)、第1フライト部及び混練部を有し、バレルが、スクリューの混練部の先端側に対応する位置にベント部を有する構成を取る。一態様によれば、ベント部と前記ダイ部が一体的に設けられた構成を取る。一態様によれば、本発明の押出機のスクリューが、前記態様の構成に加えて、更に混練部の先端側に第2フライト部を有し、バレルが、スクリューの第2フライト部の基部側起点に対応する位置にベント部を有する構成を取る。更にバレルが、第1フライト部及び混練部に対応する領域にヒーターを有すると共に、第2フライト部に対応する領域にはクーラーを有することが好ましい。
なお、後述するように、斯かる押出機を用いた本発明の製造方法は、その段階の多くが高温及び/又は高圧下で実施される。従って、本発明の押出機を構成する前記各要素についても、その機能及び使用される段階に必要とされる温度及び圧力に応じて、十分な温度及び圧力耐性を有する必要があることは、言うまでもない。
以下、本発明の製造方法に使用される押出機の構成例について、模式図を用いて詳細に説明する。但し、これらの図はあくまでも本発明の理解を容易とする観点から、本発明の製造方法に使用可能な押出機を例示するものに過ぎず、本発明の製造方法に使用される押出機は、何らこれらの図によって限定されるものではない。
図1は、本発明の第1の態様に係る押出機の構成例を模式的に示す断面図である。図1に示す押出機100は、長尺の円筒形状を有するバレル200と、バレル200内に配置された長尺状の一軸のスクリュー300とを有すると共に、バレル200の各所定位置に配置されたフィーダ400、ダイ部500(破線で表されるのは、ダイ部に設けられたバレル内部から外部にかけて貫通する流路)、ベント部600、ヒーター700、及びクーラー800を備える。
図2は、図1に示すスクリュー300の構成例を模式的に示す側面図である。スクリュー300は基部側端部と先端側端部とを有し、基部側端部がモーター(図示せず)の回転軸に連結されて回転駆動されるように構成されると共に、その基部側(モーター側)から先端側(反対側)にかけて(即ち、図中白抜き矢印で示す押し出し方向に向かって)順に、第1フライト部300A、混練部300B、及び第2フライト部300Cを有する。第1フライト部300A及び第2フライト部300Cの円周側面には螺旋状の凸部(フライト又はフライト構造)が設けられ、混練部300Bの円周側面には公知の混練用の構造(例えば凹凸部)が設けられる。
なお、図1に示すように、スクリュー300をバレル200内に配置した状態では、スクリュー300の第1フライト部300A、混練部300B、及び第2フライト部300Cに応じて、バレル200も対応する3つの領域200A、200B、及び200Cに分けることが可能である。本開示では、バレル200のこれら3つの領域200A、200B、及び200Cを、対応するスクリュー300の領域の名前を流用して、第1フライト部200A、混練部200B、及び第2フライト部200Cと呼ぶ場合がある。また、バレル200及びスクリュー30の対応する領域を区別せずに総称する場合、第1フライト部200A,300A、混練部200B,300B、及び第2フライト部200C,300Cのように呼ぶ場合もある。
フィーダ400は、バレル200の第1フライト部200Aの基部側付近(具体的には第1フライト部の前半部、即ち、第1フライト部の基部側起点から第1フライト部全長の50%以内に相当するバレル上の位置に設置されることが好ましく、第1フライト部の起点から第1フライト部全長の20%以内に相当するバレル上の位置に設置されることがさらに好ましく、第1フライト部の起点から第1フライト部全長の5%以内に相当するバレル上の位置に設置されることがさらに好ましく、基部側端部に相当するバレル上の位置に設置されることが最も好ましい)に取付けられ、フィーダ400を通じてバレル200内(バレル200とスクリュー300との間の空間)に混練対象の食品素材を投入できるように構成される。
ダイ部500は、バレル200の第2フライト部200Cの先端側端部に取り付けられ、スクリュー300により混練された組成物を成形しながら排出できるように構成される。
ベント部600は、バレル200の第2フライト部200Cの基部側付近(詳細な位置については後述する。)に取り付けられ、バレル200とスクリュー300との間の空間に存在する気体を排気してその圧力を調整できるように構成される。
ヒーター(加熱設備)700は、バレル200の第1フライト部200A及び/又は混練部200Bの周囲に取り付けられ、バレル20を加熱することにより、バレル200内(バレル200とスクリュー300との間の空間)の組成物の温度を部位ごとに調整できるように構成される。本発明の効果奏功の観点から、少なくとも混練部200Bの全長に相当するバレル周囲にヒーター700が取り付けられていることが好ましく、さらに混練部200B周囲に加えて第1フライト部200Aの後半部即ち、第1フライト部200A全長の中間点から第1フライト部200A端部側終点に相当するバレル200周囲にヒーター700が設置されることが好ましく、混練部200Bの全長と第1フライト部200Aの全長に相当するバレル200A周囲にヒーター700が設置されることが特に好ましい。
クーラー(冷却設備)800は、バレル200の第2フライト部200Cの周囲又はダイ部に取り付けられ、バレル200又はダイ部500を冷却することにより、第2フライト部200C,300Cにおけるバレル200内(バレル200とスクリュー300との間の空間)の組成物又はダイ部から押し出される組成物の温度を調整できるように構成される。本発明の効果奏功の観点から、バレル200C全長に相当するバレル周囲の所定範囲以上及び/又はダイ部にクーラーが取り付けられていることが好ましい。具体的には、少なくともバレル200C全長の30%以上に相当するバレル周囲にクーラー700が取り付けられていることが好ましく、バレル200C全長の50%以上に相当するバレル周囲にクーラー700が取り付けられていることが好ましく、バレル200C全長の90%以上に相当するバレル周囲にクーラー700が取り付けられていることが好ましく、バレル200C全長の30%以上に相当するバレル周囲にクーラー70が取り付けられていることが好ましく、バレル200C全長の100%に相当するバレル周囲にクーラー700が取り付けられていることが特に好ましい。
斯かる第1の態様の押出機100の使用時には、組成物の各原料を基部側のフィーダ400からバレル200内(バレル200とスクリュー300との間の空間)に投入すると共に、スクリュー300をバレル200内で所定の方向に回転駆動する。これにより、当該原料からなる生地組成物が、スクリュー300の回転に伴って基部側から先端側に向かって搬送されながら混練され、混練後の組成物はダイ部500において成形されながら排出される。特に、第1フライト部200A、300Aによる搬送中及び混練部200B、300Bによる混練中の組成物はヒーター700によって加熱される一方、混練部200B、300Bによる混練終了後の組成物は、ベント部600による排気によって減圧された後、第2フライト部200C、300Cによって搬送されながらクーラー800によって冷却され、最終的にダイ部500によって押し出し成形されることになる。
図3は、本発明の第2の態様に係る押出機の構成例を模式的に示す断面図である。図3に示す押出機102は、長尺の円筒形状を有するバレル202と、バレル202内に配置された長尺状の一軸のスクリュー302とを有すると共に、バレル202の各所定位置に配置されたフィーダ402、ダイ部兼ベント部502/602(破線で表されるのは、ダイ部に設けられたバレル内部から外部にかけて貫通する流路)、及びヒーター702を備える。
図4は、図3に示すスクリュー302の構成例を模式的に示す側面図である。スクリュー302は基部側端部と先端側端部とを有し、その基部側(モーター側)から先端側(反対側)にかけて(即ち、図中白抜き矢印で示す押し出し方向に向かって)順に、第1フライト部302A及び混練部302Bを有するが、第2フライト部は存在しない。また、これに対応して、図のバレル202も、その基部側から先端側にかけて順に、第1フライト部202A及び混練部202Bを有するが、第2フライト部は存在しない。
斯かる第2の態様の押出機102は、バレル202及びスクリュー302が第2フライト部を有さず、バレル202の混練部202B先端部側にベント部を兼ねるダイ部502/602が設けられる点のみが、第1の態様の押出機100と異なる。その他の点(例えば後述するように、混練部202B先端側終点とダイ部502/602との間の位置に、フロー遅滞構造を設置することが好ましい、ダイ部502/602にクーラー802を設置することが好ましいなど)は、第1の態様の押出機100と同一であるので、詳細は省略する。
斯かる第2の態様の押出機102の使用時には、組成物の各原料を基部側のフィーダ402からバレル202内(バレル202とスクリュー302との間の空間)に投入すると共に、スクリュー302をバレル202内で所定の方向に回転駆動する。これにより、当該原料からなる生地組成物が、スクリュー302の回転に伴って基部側から先端側に向かって搬送されながら混練され、混練後の組成物はダイ部502において成形されながら排出される。特に、第1フライト部202A、302Aによる搬送中及び混練部202B、302Bによる混練中の組成物はヒーター700によって加熱される一方、混練部202B、302Bによる混練終了後の組成物は、クーラー802によって冷却されたダイ部兼ベント部502/602によって、排気・減圧されると共に押し出し成形されることになる。
なお、以上の各態様の押出機には、種々の変形を加えてもよい。例えば、ダイ部500、502の流路の一部を延長すると共に、延長された流路の周囲にクーラー802を設けてもよい。図5A及びBは何れも、斯かる構成としたダイ部の変形例を模式的に示す断面図である。なお、以下に説明する図5A及び図5Bに示すダイ部の変形例は飽くまでも例であり、ダイ部の構成はこれらに限定されるものではない。また、以下に説明する図5A及び/又は図5Bに示すダイ部の変形例と、前記の第1の態様及び/又は第2の態様との組み合わせも任意であり、可能なあらゆる組み合わせが本発明に包含される。
図5Aに示す変形例に係るダイ部500A(破線で表されるのは、ダイ部に設けられたバレル内部から外部にかけて貫通する流路)は、各々その先端部に押し出し口を有する複数の分岐流路を有すると共に、各分岐流路が長尺状に延長して形成され、斯かる長尺状の分岐流路の周囲にクーラー800A/802Aが設けられる。斯かる変形例のダイ部500Aでは、前段のスクリュー及びバレルによって混練され、搬送されてきた組成物が複数の分岐流路に分岐して侵入すると共に、分岐流路通過時にクーラーで冷却された上で、各分岐流路の先端部の押し出し口から押し出されて成形されることになる。クーラーの設置数又は設置範囲も特に限定されず、任意の数又は範囲に設置することができる。また、その際に設置されるクーラーは適切な冷却能力を有するものであればどのようなものであっても使用することができるが、例えば前述するクーラー設置領域に該当する箇所表面に冷却水配管等のクーラーを設置して間接的に作用させるジャケット方式(例えば水を冷媒として冷却するウォータージャケット方式)のものを採用することが好ましく、その場合は長尺状の各分岐流路に配管を巻き付けるような状態で設置することもできる。斯かる長尺状の分岐流路は、ダイ部に設けられたバレル内部から外部にかけて貫通するような1以上の流路の数に応じて任意の数で形成することができる。また、ダイ部に設けられたバレル内部から外部にかけて貫通する流路に対して、複数本の長尺状の分岐流路を形成することができる。この場合、例えば、当該流路先端側を起点として複数本の長尺状の分岐流路を、ダイ部に設けられたバレル内部から外部にかけて貫通する流路先端側終点を起点とした仮想平面上に複数の分岐流路が放射状に拡がるように(あたかも扇の骨が広がるように)形成した態様であってもよく、押出方向に向かって円錐状に拡がるように形成する態様(すなわち、ダイ部に設けられたバレル内部から外部にかけて貫通する流路に対して、図5Bのような幹流路を介さずに、複数の分岐流路を直接連結する態様)とすることができる。
図5Bに示す変形例に係るダイ部500B(破線で表されるのは、ダイ部に設けられたバレル内部から外部にかけて貫通する流路)は、スクリュー及びバレル側から組成物が流入する幹流路と、当該幹流路から分岐し、各々その先端部に押し出し口を有する複数の分岐流路とを有すると共に、幹流路及び/又は各分岐流路が長尺状に延長して形成され、斯かる長尺状の幹流路及び/又は各分岐流路の周囲にクーラー800B/802Bが設けられる。斯かる変形例のダイ部500Bでは、前段のスクリュー及びバレルによって混練され、搬送されてきた組成物が幹流路で受容され、複数の分岐流路に分岐して侵入し、幹流路及び/又は各分岐流路においてクーラーで冷却されつつ、各分岐流路の先端の押し出し口から押し出されて成形されることになる。本例の場合、クーラーの設置部位は、幹流路のみであってもよく、各分岐流路のみであってもよく、幹流路及び各分岐流路の両方であってもよいが、幹流路の周囲の少なくとも1箇所にクーラーを設置することで効率よく生地全体が冷却できるため好ましく、幹流路と各分岐流路の両方に少なくとも各1箇所以上クーラーを設置することがさらに好ましい。クーラーの設置数又は設置範囲も特に限定されず、任意の数又は範囲に設置することができる。また、その際に設置されるクーラーは適切な冷却能力を有するものであればどのようなものであっても使用することができるが、例えば前述するクーラー設置領域に該当する箇所表面に冷却水配管等のクーラーを設置して間接的に作用させるジャケット方式(例えば水を冷媒として冷却するウォータージャケット方式)のものを採用することが好ましく、その場合は幹流路及び/又は各分岐流路に配管を巻き付けるような状態で設置することもできる。斯かる幹流路及び複数の分岐流路を有するダイ部態様において、1本の幹流路に連結される分岐流路の数は限定されず、任意の数で形成することができる。さらに、幹流路断面が押出方向に対して横長(例えば略矩形または略楕円形)となるように変形させ、その先端に任意の数の分岐流路を連結してもよく、幹流路断面積が押出方向に比例して末広がりに大きくなる形状であってもよい。また、幹流路と複数の分岐流路との連結部位や複数の分岐流路の形状・向き等も制限されない。例としては、(a)幹流路の先端側を起点として複数の分岐流路を連結し、仮想平面上に複数の分岐流路が放射状に拡がるように(あたかも幹流路の先端から扇の骨が広がるように分岐流路が形成される)形成した態様、(b)幹流路の一箇所を起点として、複数の分岐流路が押出方向に向かって円錐状に拡がるように形成した態様、(c)幹流路の異なる箇所を起点として、複数の分岐流路が押出方向に向かって円錐状に拡がるように形成した態様、等とすることができるが、これらに限定されるものではない。
なお、以上の各変形例のダイ部500A、500B及びクーラー800A、800Bを設ける押出機の態様は限定されない。即ち、前記第1の態様の押出機100に設けてもよく、前記第2の態様の押出機102にクーラー802A、802Bとして設けてもよく、はたまた別の任意の態様の押出機に設けてもよい。
以下、本発明の押出機の構成及び動作について、より詳細に説明する。
(スクリュー)
本発明の押出機に使用されるスクリューは、前述のように、長尺状のスクリューであって、基部側端部と先端側端部とを有し、基部側端部がモーターの回転軸に連結されて回転駆動されるように構成される。
本発明の押出機に使用されるスクリューの形状は、限定されるものではないが、フライトスクリュー又はこれをベースにしたスクリューであることが好ましい。本開示において「フライトスクリュー」とは、略円柱状の基軸の周表面の一部又は全部に螺旋状の山状突起構造(フライト)が形成された構造を有し、当該山状突起構造の部分がねじ山を規定すると共に、当該山状突起構造以外の部分が相対的に谷状構造となってねじ溝を規定するような構成のスクリューを意味する。また、溝底の形状に凹凸を有する構造であってもよく、具体的にはフライトの溝底を溝巾方向で凹凸状にしたウェーブ型であってもよい。また主フライト以外にサブフライトを設けたサブフライト型の形状を採用することができる。
具体的に、本発明で使用される前記第1の態様の押出機のスクリューは、その基部側(モーター側)から先端側(反対側)にかけて順に、第1フライト部、混練部、及び第2フライト部を有すると共に、第1フライト部及び第2フライト部のそれぞれにスクリューフライトが形成された構成を有する。また、前記第2の態様の押出機のスクリューは、第2フライト部を有さず、その基部側から先端側にかけて順に、第1フライト部及び混練部を有すると共に、第1フライト部にスクリューフライトが形成された構成を有する。
本発明で使用されるスクリューの直径(D)は、制限されるものではないが、通常25mm以上、中でも30mm以上、又は35mm以上、又は40mm以上、とりわけ45mm以上とすることが好ましく、また、通常300mm以下、中でも200mm以下、又は150mm以下とすることが好ましい。なお、スクリューの直径とは、スクリューをその回転軸に垂直に切断して得られる仮想切断面において、スクリュー外周上の任意の2点を繋いで得られる最長の線分の長さ(最大線分長)を指し、ねじ山を含んで測定されたスクリュー全長における当該測定値の算術平均値を表す。なお、本発明における平均値(単に平均又は算術平均値と称する場合もある。)とは、特に指定が無い限り相加平均値を指す。
本発明で使用されるスクリューの長さ(L)は、制限されるものではないが、通常1000mm以上、中でも1100mm以上、又は1200mm以上、又は1300mm以上、とりわけ1400mm以上とすることが好ましい。また、その上限も特に制限されないが、通常5000mm以下、中でも4000mm以下、又は3000mm以下とすることが好ましい。
本発明で使用されるスクリューのL/D比は、制限されるものではないが、通常20以上とすることが好ましく、中でも25以上、更には30以上、とりわけ35以上とすることが好ましい。スクリューのL/D比を前記下限値以上とすることで、喫食時の粉っぽさが改善しつつ、表面が滑らかな組成物を安定的に生産できる傾向がある。一方、スクリューのL/D比の上限は特に規定されないが、通常300以下とすることが好ましく、中でも200以下、更には100以下とすることが好ましい。特に、L/D比がこのような好適範囲内にあるスクリューを用いると共に、後述する原料(微細化された状態の豆類)の超音波処理後d50及び押出機の内容量に対する総質量流量(フロー量とも称する場合がある)の比率を所定範囲内に調節した条件下で製造を行うことで、得られる組成物の喫食時の粉っぽさを改善しつつ、表面が滑らかな組成物を安定的に生産できる傾向がさらに高まるため、より好ましい。なお、本開示におけるスクリューの「L/D比」とは、スクリューの直径(D)に対する長さ(L)との比として定義される。
(第1フライト部)
本発明で使用される前記第1の態様の押出機のスクリューにおいて、第1フライト部とは、大部分の混練部(望ましくは全部の混練部)及び全部の第2フライト部に対して基部側(モーター側)に存在する、周表面にスクリューフライトが形成された領域を指す。また、前記第2の態様の押出機のスクリューにおいて、第1フライト部とは、大部分の混練部(望ましくは全部の混練部)に対して基部側(モーター側)に存在する、周表面にスクリューフライトが形成された領域を指す。本発明の製造方法において、第1フライト部は、スクリューの回転に伴って組成物を先端側に搬送しつつ、任意でヒーターを用いて組成物を加温することにより、組成物中のでんぷん粒を加温によって加水膨潤させる機能を有する。
なお、本発明において、このようなスクリュー回転に伴い組成物が先端側に搬送されるフライト構造を「フォワードフライト」と称し、逆に組成物が基部側に搬送されるフライト構造を「リバースフライト」と称する場合がある。また、第1フライト部及び(前記第1の態様の押出機のスクリューの場合は)第2フライト部の各々において、フォワードフライトが設けられた領域を「フォワードフライト部」、リバースフライトが設けられた領域を「リバースフライト部」と称する場合がある。
第1フライト部の長さは、限定されるものではないが、スクリュー全長に対して一定以上の比率を有することで、でんぷん粒が加温によって加水膨潤されやすくなるので好ましい。具体的には、スクリュー全長に対する第1フライト部の長さの割合が、通常20%以上、中でも25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、又は45%以上、又は50%以上であることが好ましい。一方、スクリュー全長に対する第1フライト部の長さの比率の上限は、制限されるものではないが、他の部位との兼ね合いから、通常80%以下、又は70%以下、又は60%以下とすることが好ましい。
第1フライト部全長に対するフライトスクリュー部の長さの割合は、通常90%以上、中でも95%以上、特に100%であることが好ましい。一方、第1フライト部全長に対するリバースフライト部の長さの割合は、通常10%以下、中でも5%以下、特に0%であることが好ましい。
(混練部)
本発明で使用される前記第1の態様の押出機のスクリューにおいて、混練部は、その大部分(好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは100%)が第1フライト部と第2フライト部との中間に存在する、公知の混練用の構造(具体例としては、マドック混合部、イーガン混合部、ブリスターリング混合部、ピン混合部、ダルメージ混合部、サクソン混合部、パイナップル形混合部、溝穴付きスクリュー混合部(後述)、キャビティ移動型混合部、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。)を指す。また、前記第2の態様の押出機のスクリューにおいて、混練部は、その大部分(好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは100%)が第1フライト部に対して先端側に存在する、公知の混練用の構造を指す。本発明で使用されるスクリューにおいて、混練部は、ヒーターを用いて組成物を加温することにより、与圧下における高温強混練によってでんぷん粒を損傷できるように、組成物流を分断して混練する機能を有する。
混練部の形状は特に限定されるものではないが、組成物の焦げを防止する観点からは、多数の溝を持つダルメージスクリュー構造又はバリヤ型スクリュー構造が混練部の周表面に形成されていないか、形成されていてもその斯かる構造の領域の比率が限定されていることが好ましい。具体的には、混練部の全長に対する、ダルメージスクリュー構造又はバリヤ型スクリュー構造が形成された領域の長さの比率が、通常10%以下、中でも5%以下、特に実質的に0%(すなわち当該形状を有さない)であることが好ましい。
混練部の長さは、限定されるものではないが、スクリュー全長に対して一定以上の長さであることで、与圧下における高温強混練によってでんぷん粒を損傷することが容易となるので好ましい。具体的には、スクリュー全長に対する混練部の長さの比率が、通常20%以上、中でも25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、又は45%以上、又は50%以上であることが好ましい。一方、スクリュー全長に対する混練部の長さの比率の上限は、制限されるものではないが、他の部位との兼ね合いから、通常80%以下、又は70%以下、又は60%以下とすることが好ましい。
(第2フライト部)
本発明で使用される前記第1の態様の押出機のスクリューにおいて、第2フライト部とは、全部の第1フライト部及び大部分の混練部(望ましくは全部の混練部)に対して先端側(押出側)に任意で存在する、周表面にスクリューフライトが形成された領域を指す。本発明の製造方法において、第2フライト部は、混練部から搬送される組成物を、ベント部により急激に圧力低下した状態で、スクリューの回転に伴って先端側のダイ部に向かって搬送しながら、でんぷん粒構造が崩壊した組成物を発熱しにくいように均質化してでんぷんのマトリクス構造を形成させつつ、任意でクーラーを用いて組成物温度を低下させることにより、急速な冷却を行うことで組成物表面付近のでんぷんを局所的に老化させる機能を有する。
第2フライト部の長さは、限定されるものではないが、第2フライト部が長すぎると、組成物のでんぷん老化が進みすぎて排出しにくくなるため、スクリュー全長に対して一定以下の長さであることが好ましい。具体的には、スクリュー全長に対する第2フライト部の長さの比率が、通常50%以下、中でも45%以下、又は40%以下、又は35%以下、又は30%以下であることが好ましい。一方、スクリュー全長に対する第2フライト部の長さ比率の下限は、制限されるものではないが、でんぷん粒構造が崩壊した組成物を発熱しにくいように均質化してでんぷんのマトリクス構造を形成させつつ、急速な冷却を行うことで組成物表面付近のでんぷんを局所的に老化させる観点から、通常5%以上、中でも10%以上、又は15%以上、又は20%以上であることが好ましい。
第2フライト部全長に対するフライトスクリュー部の長さの割合は、通常90%以上、中でも95%以上、特に100%であることが好ましい。一方、第2フライト部全長に対するリバースフライト部の長さの割合は、通常10%以下、中でも5%以下、特に0%であることが好ましい。
また、第1フライト部の長さに対する第2フライト部の長さの比率{(第2フライト部の長さ/第1フライト部の長さ)×100%}は、制限されるものではないが、通常120%以下、中でも115%以下、又は110%以下、又は105%以下、又は100%以下、又は95%以下、又は90%以下、又は85%以下、又は80%以下、又は70%以下、又は60%以下であることが好ましく、また、通常5%以上、中でも10%以上、又は15%以上、又は20%以上であることが好ましい。
なお、前記第2の態様の押出機のように、スクリューに第2フライト部を設けず、ダイ部及び/又は押し出し後の組成物に対して冷却を行うことで、組成物表面付近のでんぷんを局所的に老化させる態様であってもよい。
(フロー遅滞構造)
また、本発明においては、前記第1の態様の押出機の場合は第2フライト部先端側終点とダイ部との間の位置、前記第2の態様の押出機の場合は混練部先端側終点とダイ部との間の位置に、フロー遅滞構造を設けることが好ましい。特に前記第1の態様の押出機では、フロー遅滞構造を設けることで、第2フライト部において老化して粘性が向上した組成物を安定的に排出することができ、好ましい。また、第2フライト部を有さない第2の態様の押出機でも、フロー遅滞構造を設けることで、押し出しが安定するという効果が得られる場合があるため、好ましい。また、第1の態様、第2の態様のいずれにおいても、混練部先端側終点付近(好ましくは混練部先端側終点直後)にフロー遅滞構造を設けることで、混練部における圧力が高まり、混練効率が向上するため好ましい。本発明において「フロー遅滞構造」とは、当該構造より前のフライト部における内容物の平均フロー速度に対して、内容物のフロー速度を低くする構造である。例えば第1の態様においては第2フライト部における内容物のフロー速度に対して、内容物のフロー速度を低くする構造であり、第2の態様においては第1フライト部における内容物のフロー速度に対して、内容物のフロー速度を低くする構造である。例えば、第2フライト部先端側終点付近のスクリュー溝深やピッチ幅を相対的に大きくすることでフロー速度を低くする構造や、第2フライト部先端側終点付近のバレル内径をそれ以前より相対的に大きくすることでフロー速度を低くする構造や、第2フライト部とは独立した構造として、第1の態様における第2フライト部先端側終点又は第2の態様における混練部先端側終点とダイ部との間の位置に、フロー遅滞構造を配置しフライト構造形成部位のうちフォワードフライト部の一部に穴を開けたり、フォワードフライト部の一部を欠損又は変形させたりする構造(溝穴付きスクリュー構造と称する場合もある)や、フォワードフライト構造と比して相対的にフロー速度が低減されるリバースフライト構造や、成形材料に送りを与えるねじれ角を持たないトーピード構造(例えばスクリュー表面に形成された、スクリューの回転中心とバレル内壁との間の距離の80%以上の半径を有するリング状突起構造)を採用することで、フォワードフライト構造と比してスクリュー回転によって生じるフロー流量を低減させフロー速度を低くする構造を採用することができるが、第1の態様における第2フライト部先端側終点又は第2の態様における混練部先端側終点とダイ部との間の位置にフロー遅滞構造として溝穴付きスクリュー構造またはリバースフライト構造またはトーピード構造を配置することが好ましい。また、スクリュー表面に形成された、スクリューの回転中心とバレル内壁との間の距離の80%以上の半径を有するリング状突起構造であるトーピード構造を採用する場合、2以上の突起構造を連続して配置することでフロー遅滞構造におけるフロー速度を簡単に調整することができるため好ましい。
フロー遅滞構造におけるフロー遅滞割合(すなわち、当該構造より前のフライト部におけるフロー流量に対する、フロー遅滞構造におけるフロー流量の割合)は100%未満であれば良いが、通常97%以下が好ましく、中でも95%以下、さらには93%以下、又は90%以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、通常10%以上、又は20%以上である。
さらに、フロー遅滞構造を採用する場合、そのサイズが大きすぎると混練部や第2フライト部構造等の大きさが相対的に小さくなるため、フロー遅滞構造のサイズが一定以下であることが本発明の効果奏功の観点から好ましい。具体的には、スクリュー全長に対するフロー遅滞構造の長さ比率が、通常20%以下が好ましく、中でも15%以下、更には10%以下、又は8%以下、又は5%以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、通常0%以上、又は1%以上である。
(平均ねじ溝深さ)
本発明では、スクリューの第1フライト部及び/又は(前記第1の態様の押出機の場合)第2フライト部に形成されているスクリューフライトの平均ねじ溝深さが、特定の条件を満たすことが好ましい。なお、本発明において「平均ねじ溝深さ」とは、スクリューの回転軸に対する回転中心を含む仮想平行断面(スクリューを長手方向に沿って割断したと想定した仮想断面)における、隣接するねじ山をつないだ仮想線分に対するねじ溝の最深部(回転軸に最も近い軸表面)までの距離を平均した値を意味する。斯かる平均ねじ溝深さは、例えばスクリューの回転軸に沿って45°間隔で回転軸に対する平行断面を複数想定し、各平行断面におけるねじ溝深さを測定し、得られた値を平均することで求めることができる。
本発明に使用されるスクリューは、でんぷん粒をより効率的に損傷すると共に、組成物表面付近のでんぷんを局所的に老化させる観点から、前記第1の態様の押出機の第2フライト部の平均ねじ溝深さが第1フライト部の平均ねじ溝深さよりも浅いことが好ましい。具体的には、第1フライト部の平均ねじ溝深さに対する第2フライトの平均ねじ溝深さの比率が、通常98%以下、中でも95%以下、又は93%以下、又は90%以下、又は87%以下、又は85%以下、又は83%以下、又は80%以下であることが好ましく、また下限も制限されるものではないが、通常10%以上、又は20%以上、又は30%以上、又は40%以上、又は50%以上、又は60%以上であることが好ましい。
第1フライト部の平均ねじ溝深さは、制限されるものではないが、通常30mm以下、中でも25mm以下、又は20mm以下、又は10mm以下であることが好ましい。その下限も制限されるものではないが、通常5mm以上であることが好ましい。
第1フライト部の平均ねじ溝深さのスクリュー直径に対する比率は、制限されるものではないが、通常30%以下、中でも25%以下、又は20%以下、又は15%以下、又は10%以下、又は5%以下であることが好ましい。当該比率の下限も、制限されるものではないが、通常3%以上、又は6%以上、又は9%以上、又は12%以上であることが好ましい。
第1フライト部のねじ溝深さは、第1フライト部全長に沿って均一でもよく、不均一であってもよい。但し、でんぷん粒をより効率的に損傷すると共に、組成物表面付近のでんぷんを局所的に老化させる観点からは、第1フライト部の基部側ではねじ溝深さが比較的大きく、基部側から先端側にかけて(即ち、押し出し方向に向かって)ねじ溝深さが徐々に小さくなることが好ましい。
より具体的には、本発明に使用されるスクリューは第1フライト部の基部側起点から第1フライト部全長に対して20%までの領域(前方20%と称する場合もある)における平均ねじ溝深さが、第1フライト部の残り80%の領域(後方80%と称する場合もある)における平均ねじ溝深さよりも深いほうが好ましい。さらに具体的には、第1フライト部の基部側起点から第1フライト部全長に対して20%の平均ねじ溝深さの、第1フライト部の残り80%の平均ねじ溝深さに対する比率{(第1フライト部前方20%の平均溝深さ)/(後方80%の平均ねじ溝深さ)}が、100%超、又は102%以上、104%以上、又は106%以上、又は108%以上、又は110%以上であることが好ましい。また、その上限も制限されるものではないが、通常200%以下、又は195%以下、又は190%以下、又は185%以下、又は180%以下であることが好ましい。
また、第1フライト部の基部側起点から第1フライト部全長に対して20%までの領域における平均ねじ溝深さが、スクリュー直径に対して通常35%以下、中でも30%以下、又は25%以下、又は20%以下、又は15%以下、又は10%以下であることが好ましい。斯かる値の下限は特に規定されないが、通常5%以上であることが好ましい。
前記第1の態様の押出機の第2フライト部の平均ねじ溝深さは、制限されるものではないが、通常30mm以下、中でも25mm以下、又は20mm以下、又は10mm以下であることが好ましい。その下限も制限されるものではないが、通常5mm以上であることが好ましい。
前記第1の態様の押出機の第2フライト部の平均ねじ溝深さのスクリュー直径に対する比率は、制限されるものではないが、通常30%以下、中でも25%以下、又は20%以下、又は15%以下、又は10%以下、又は5%以下であることが好ましい。当該比率の下限も、制限されるものではないが、通常3%以上、又は6%以上、又は9%以上、又は12%以上であることが好ましい。
前記第1の態様の押出機の第2フライト部のねじ溝深さは、第2フライト部全長に沿って均一でもよく、不均一であってもよい。但し、混練後の組成物の冷却(老化)効率を上げると共に、冷却(老化)後の排出をスムーズにする観点からは、第2フライト部の基部側ではねじ溝深さが比較的大きく、基部側から先端側にかけて(即ち、押し出し方向に向かって)ねじ溝深さが徐々に小さくなることが好ましい。
本発明に使用されるスクリューは、でんぷん粒をより効率的に損傷すると共に、組成物表面付近のでんぷんを局所的に老化させる観点から、前記第1の態様の押出機の第2フライト部の基部側起点から第2フライト部全長に対して20%までの領域(前方20%と称する場合もある)における平均ねじ溝深さが、第2フライト部の残り80%の領域(後方80%と称する場合もある)における平均ねじ溝深さよりも深いほうが好ましい。具体的には、第2フライト部の基部側起点から第2フライト部全長に対して20%の平均ねじ溝深さの、第2フライト部の残り80%の平均ねじ溝深さに対する比率{(第2フライト部前方20%の平均溝深さ)/(後方80%の平均ねじ溝深さ)}が、100%超、又は102%以上、104%以上、又は106%以上、又は108%以上、又は110%以上であることが好ましい。また、その上限も制限されるものではないが、通常200%以下、又は195%以下、又は190%以下、又は185%以下、又は180%以下であることが好ましい。
(平均ピッチ)
本開示では、スクリューの回転軸に対する回転中心を含む仮想平行断面(スクリューを長手方向に沿って割断したと想定した仮想断面)における、隣り合う2つのねじ山同士の間隔をスクリューの「ピッチ」と称する。平均ピッチとは、スクリューのある領域におけるピッチを平均した値を表する。斯かるピッチは、例えばスクリューの回転軸に沿って45°間隔で回転軸に対する平行断面を複数想定し、各平行断面におけるねじ山間のピッチを複数測定し、得られた値を平均することで求めることができる。
第1フライト部の平均ピッチは、スクリュー直径に対して通常200%以下、中でも150%以下、中でも120%以下、中でも105%以下、であることが好ましい。下限は特に規定されないが、通常40%以上、又は50%以上、又は60%以上であることが好ましい。
第1フライト部のピッチは、第1フライト部全長に沿って均一でもよく、不均一であってもよい。但し、食材のフィードをスムーズにする観点からは、第1フライト部の基部側ではピッチが比較的大きく、基部側から先端側にかけて(即ち、押し出し方向に向かって)ピッチが徐々に小さくなることが好ましい。
より具体的には、第1フライト部の基部側起点から第1フライト部全長に対して20%までの領域における平均ピッチが、第1フライト部の残り80%の領域における平均ピッチよりも小さいほうが好ましい。さらに具体的には、第1フライト部の基部側起点から第1フライト部全長に対して20%の平均ピッチの、第1フライト部の残り80%の平均ピッチに対する比率{(第1フライト部前方20%の平均ピッチ)/(後方80%の平均ピッチ)}が、通常100%未満、又は95%未満、又は90%未満、又は85%未満、又は80%未満、又は75%未満であることが好ましく、また下限も制限されるものではないが、通常40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上であることが好ましい。
また、第1フライト部の基部側起点から第1フライト部全長に対して20%までの領域における平均ピッチが、スクリュー直径に対して通常180%以下、中でも150%以下、中でも120%以下、中でも105%以下、であることが好ましい。下限は特に規定されないが、通常40%以上、又は50%以上、又は60%以上であることが好ましい。
一方、前記第1の態様の押出機の場合、第2フライト部の平均ピッチは、スクリュー直径に対して99%以下、中でも90%以下、又は80%以下、又は70%以下、又は60%以下、又は50%以下であることが好ましい。下限は特に規定されないが、通常20%以上、又は30%以上、又は40%以上であることが好ましい。
前記第1の態様の押出機の第2フライト部のピッチは、第2フライト部全長に沿って均一でもよく、不均一であってもよい。但し、混練後の組成物の冷却(老化)効率を上げると共に、冷却(老化)後の排出をスムーズにする観点からは、第2フライト部の基部側ではピッチが比較的小さく、基部側から先端側にかけて(即ち、押し出し方向に向かって)ピッチが徐々に大きくなることが好ましい。
より具体的には、第2フライト部の基部側起点から第2フライト部全長に対して20%までの領域における平均ピッチが、第2フライト部の残り80%の領域における平均ピッチよりも小さいほうが好ましい。さらに具体的には、第2フライト部の基部側起点から第2フライト部全長に対して20%の平均ピッチの、第2フライト部の残り80%の平均ピッチに対する比率{(第2フライト部前方20%の平均ピッチ)/(後方80%の平均ピッチ)}が、100%未満、又は95%未満、又は90%未満、又は85%未満、又は80%未満、又は75%未満であることが好ましく、また下限も制限されるものではないが、通常40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上であることが好ましい。
また、前記第1の態様の押出機の第2フライト部の基部側起点から第2フライト部全長に対して20%までの領域における平均ピッチが、スクリュー直径に対して通常99%以下、中でも90%以下、又は80%以下、又は70%以下、又は60%以下、又は50%以下であることが好ましい。下限は特に規定されないが、通常5%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は40%以上であることが好ましい。
本発明に使用される前記第1の態様の押出機のスクリューは、組成物表面付近のでんぷんを局所的に老化させる観点から、第2フライト部における平均ピッチが第1フライト部における平均ピッチより小さいほうが好ましい。具体的には、第1フライト部の平均ピッチに対する第2フライト部の平均ピッチの比率が、通常98%以下、中でも95%以下、又は93%以下、又は90%以下、又は87%以下、又は85%以下、又は83%以下、又は80%以下であることが好ましい。当該比率の下限は、制限されるものではないが、通常10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は40%以上、又は50%以上、又は60%以上であることが好ましい。
(バレル)
バレルは、スクリューの外周を包囲する円筒状の構造体である。本発明に使用されるバレルの構造は、限定されるものではないが、押出し方向に向かうに従って内径が小さくなるテーパ状のバレルよりも、入口の内径と出口の内径が概ね同一径(より好ましくは同一径)であるバレルの方が、洗浄が容易で且つ食品の製造に適した品質となるため好ましい。
また、バレルの中には、その内壁に溝状構造を有するものがあり、こうしたバレルを使用することも可能ではある。但し、でんぷんに由来する焦げが生じる好ましくないことから、少なくとも混練部の内壁に溝状構造を有さない、又は溝状構造を有する領域ができるだけ少ないバレルが好ましく、バレルの内壁全体に溝状構造が存在しない、又は溝状構造を有する領域ができるだけ少ないバレルがさらに好ましい。具体的には、バレルの混練部全長に対する溝状構造を有する領域の比率が、通常30%以下、中でも25%以下、又は20%以下、又は15%以下、又は10%以下、又は5%以下、特に実質的に0%(すなわち溝状構造を有さない)であることが好ましい。さらにバレル全長に対する溝状構造を有する領域の比率が、通常15%以下、中でも10%以下、又は9%以下、又は8%以下、又は7%以下、又は6%以下、又は5%以下、又は4%以下、又は3%以下、又は2%以下、又は1%以下、特に実質的に0%(すなわち溝状構造を有さない)であることが好ましい。
また、溝状構造が所定の割合以下のバレルを採用する場合は、スクリューの混練部として、溝穴付きスクリュー構造を採用することが好ましく、フォワードフライト部の一部を欠損させた溝穴付きスクリュー構造を採用することがより好ましい。溝穴付きスクリュー構造を採用する場合、当該構造におけるフォワードフライト部の変形部及び/又は欠損部の形状が、フォワードフライト部を連通する通路状構造を形成することが好ましい。斯かる通路状構造の断面は、U字状又はV字状の形状を有することが望ましい。また、フォワードフライト構造のねじ山頂点を連結した曲線がスクリューの回転軸に対して形成する角度(螺旋角)よりも、フォワードフライト部を連通する通路状構造がスクリューの回転軸に対して形成する角度(平均連通角度)の方がより小さいことが好ましい。具体的に、フォワードフライト構造の「螺旋角」は、スクリュー表面におけるねじ山頂点を繋いだ方向とスクリューにおける回転軸方向とが形成する鋭角の算術平均値を意味する。斯かるフォワードフライト構造の螺旋角は、例えば、スクリューが30°回転する毎にスクリュー表面におけるフォワードフライト構造と回転軸との角度を測定し、スクリューを360°回転させた場合の全測定値から算術平均値を算出することにより求めることができる。また、通路状構造の「平均連通角度」は、斯かる通路状構造の最深部を繋いだ方向と回転軸方向とが形成する鋭角の算術平均値として求めることが出来る。中でも、フォワードフライト部を連通する通路状構造が、フォワードフライト構造に対して斜め方向に連通された構造であることが好ましく、より具体的には、前記通路状構造が前記螺旋角の通常20%以上、中でも30%以上、また、通常80%以下、中でも70%以下であることが好ましい。また、溝穴付きスクリュー構造におけるフォワードフライトの稜線部全長に対する、変形部及び/又は欠損部が形成された部分の合計長さの比率が、50%以下であることが特に好ましい。また、混練部における生地の流れを遮るような凸状構造を設けることが好ましい。具体的には、混練部におけるスクリュー表面にバレル内壁付近(具体的にはスクリュー中心からバレル内壁までの距離の80%以上)まで隆起した凸状構造を設け、スクリューとバレル内壁との間の空間を当該凸状構造によって基部側と先端側における空間に略画分し、基部側における空間内部に生地が充満するように凸状構造を設けることで、凸状構造を乗り越えて流れる生地に伸張流が生じて良好に混練されるため好ましい。また、当該凸状構造を有する混練部は、混練部より前のフライト部における内容物のフロー速度に対して、内容物のフロー速度を低くする構造であることが好ましい。
(フィーダ)
フィーダは、バレルの第1フライト部の前半部に取付けられ、このフィーダを通じて、バレル内(バレルとスクリューとの間の空間)に混練対象の食品素材を投入できるように構成される。フィーダについては特に限定されるものではないが、フィーダの内部にスクリュー等を有し、組成物原料を強制排出する機構を有した強制押出型でも、組成物原料を自然落下で供給する自然落下式などを用いる。
(ダイ部)
ダイ部は、バレルの押出し方向の先端側に取付けられた、押出出口の組成物を連続的に賦形するための金型であり、典型的にはバレル内部から外部にかけて貫通するような1以上の流路を有する。本発明に使用されるダイ部の構造や形状は、特に制限されず任意である。例えば、丸型、四角型、三角型、星型、楕円型、三日月型、半月型、十字型、卍型やそれらの組み合わせ(例えば十字型の交差点に円の中心点を配置したギリシャ十字型と円型を組み合わせたケルト十字状ダイ穴であって、円の直径が十字型の中心点から先端までの距離の3分2以下の半径を有する形状)等が挙げられるが、何れでもよい。また、第2フライト部を設けた前記第1の態様か、第2フライト部を設けずベント部をダイ部と一体化させた前記第2の態様か、或いは更に他の態様かによらず、ダイ部にクーラーを設置することで、組成物を冷却しながら押出成形することができ、組成物中のでんぷんが老化され強固なでんぷんマトリクス構造ができるため好ましい。特にベント部とダイ部が一体的に設けられる前記第2の態様においては、混練部において高温混練された組成物の膨化を防ぐため、ダイ部にクーラーを設置する態様が好ましい。
但し、本発明に使用されるダイ部は、ダイ部を押出方向に垂直に切断した場合における各流路断面の平均凹凸度が、所定値以上であることが好ましい。ここで流路断面凹凸度とは、ダイ部を押出方向に垂直に切断した場合の仮想切断面(ダイ部流路が輪切りになるように割断したと想定した仮想断面)上における流路断面(空洞の外縁部に相当)形状の凹凸の度合いを表す値であって、{(流路断面における角度180℃未満の凸部頂点を最短の距離をもって結んだときの周囲の長さ)/(流路断面の輪郭長)}によって求められ、凹凸が大きい断面の方が断面凹凸度が小さくなる。平均凹凸度を測定する場合には、例えばスクリューの回転軸に沿って1mm間隔で回転軸に対するダイ部の垂直断面を複数想定し、各垂直断面における流路凹凸度(複数の流路を有する場合にはすべての流路における値を測定する)を複数測定し、得られた値の算術平均値を算出することで求めることができる。
具体的に、ダイ部の流路断面の凹凸度は、通常0.6以上、中でも0.65以上、又は0.7以上、又は0.75以上、又は0.8以上、又は0.85以上、又は0.9以上、又は0.95以上であることが好ましい。ダイ部の流路断面凹凸度が前記下限値以上となることで、加熱調理後の食感の良さとマット感の高さを兼ね備えた組成物になるため好ましい。即ち、通常はダイ部の断面凹凸度が大きいと、得られる組成物は表面が滑らかになり成型性がよい組成物になるため好ましい。その上限は特に制限されないが通常1.0以下である。
また、本発明に使用されるダイ部の流路断面における平均円形度が、所定値以下であることが好ましい。ここで円形度とは、流路断面の形状が真円から離れるほど小さくなっていく値であって、{(流路断面の面積と等しい面積を有する真円の周囲長)/(流路断面の輪郭長)}によって求められ、形状が複雑な断面の方が小さい値が得られる。
ダイ部における組成物の押出方向も、特に制限されず任意である。例えば、水平方向でもよいし、鉛直方向でもよいし、その中間方向でもよい。
(ベント部)
ベント部は、バレルの混練部先端側の位置、例えば前記第1の態様の押出機の場合は第2フライト部の基部側付近(混練部との境界付近)に取り付けられ、又は、前記第2の態様の押出機の場合はダイ部と一体に設けられ、組成物を大気圧以下の圧力下に曝露する構造を意味する。本発明の製造方法において、特に第2フライト部を設ける前記第1の態様の押出機では、このように混練部から第2フライト部に移動する部位で、ベント部により急激に圧力を低下させることにより、でんぷん粒構造が崩壊した状態の組成物を発熱しにくいように均質化することででんぷんのマトリクス構造を形成させつつ、その直後に第2フライト部で急速な冷却を行うことで、組成物表面付近のでんぷんを局所的に老化させることが可能となる。また、特に第2フライト部を設けない前記第2の態様の押出機では、ベント部とダイ部が一体的に設けられる態様(すなわちダイ部において組成物を大気圧下に開放することでベント部としての役割を兼ね備える構造を採用する場合)では、ベント部の役割を有するダイ部において組成物を大気圧下に開放することで急激に圧力を低下させることにより、でんぷん粒構造が崩壊した状態の組成物とすることができ、その後に押し出し後の組成物に対して急速な冷却(例えばミスト状の水分噴霧によって少量の水分を添加してから揮発させることで、その気化熱によって急速に組成物温度を低下させる方法など)を行うことで、組成物表面付近のでんぷんを局所的に老化させることが可能となる。
具体的に、ベント部は、バレル内にスクリューを配置した稼動状態において、混練部先端側に設置されていればよい。本発明の製造方法において、特に第2フライト部を設ける前記第1の態様の押出機ではスクリューの第2フライト部の前半部、即ち、第2フライト部の基部側起点から第2フライト部全長の50%以内に相当するバレル上の位置に設置されることが好ましく、第2フライト部の起点から第2フライト部全長の20%以内に相当するバレル上の位置に設置されることがさらに好ましく、基部側起点(すなわち、第2フライト部と混練部との境界付近又は最も先端側に配置された混練部終点付近)に相当するバレル上の位置に設置されることが最も好ましい。その理由は定かではないが、当該ベント部において急激な圧力低下が起こることで、組成物中のでんぷん粒構造が崩壊し、内部のでんぷんが流出することで均質なマトリクス構造が形成されることによるものと推測される。また、特に第2フライト部を設けない前記第2の態様の押出機では、ベント部とダイ部が一体的に設けられる前記第2の態様(すなわちダイ部において組成物を大気圧下に開放することでベント部としての役割を兼ね備える構造を採用する場合)では、ベント部(兼ダイ部)はスクリューの最も先端側に配置された混練部終点からスクリュー全長の30%以内に相当するバレル上の位置に設置されることが好ましく、20%以内に相当するバレル上の位置に設置されることが好ましく、10%以内に相当するバレル上の位置に設置されることが好ましく、最も先端側に配置された混練部終点の直後に設置されること(すなわち当該混練部の直後にベント部としての機能を有するダイ部が設置されること)が好ましい。また、スクリューの最も先端側に配置された混練部終点とダイ部との間にフロー遅滞構造を設置することが好ましい。
また、ベント部は、大気圧下に開放されることでバレル内部を大気圧まで減圧する構造であってもよいが、当該ベント部に強制排気機構を有することで、組成物における水分の一部を強制的に揮発させ、組成物を速やかに降温させつつ、マトリクス構造中の気泡を除去することでより強固なマトリクス構造を形成することができるためより好ましく、特にその機構上組成物内部に気泡を取り込みやすい一軸押出機を押出機として採用した場合には、マトリクス構造中に気泡が取り込まれやすいため、当該機構はより有用である。強制排気に際しては、公知の真空ポンプなどを採用することができるが、例えば液封式ポンプ(水封式ポンプ)を採用することができる。強制排気のための機構(例えば真空ポンプ等)は、ベント部における組成物温度が一定程度低下する程度に組成物中の一部水分を強制的に揮発させられる程度の能力があれるものであれば、任意の機構を採用することができるが、例えばベント部において1℃以上温度が低下する能力を有することが好ましく、2℃以上温度が低下する能力を有することがさらに好ましい。また、採用される機構(例えば真空ポンプ等)は、上記性能が達成できる程度のものであればどのようなものでもよいが、例えば吸込能力(吸込圧力又は吸込気体圧力と称する場合もある)が0.04MPa以上で強制排気する機構を採用することができる。中でも0.06MPa以上、更には0.08MPa以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、強力すぎるポンプを採用すると生地を吸引することがあるため通常0.1MPa以下、又は0.09MPa以下であることが好ましい。なお、膨化物を製造する押出機においては、原理的にその内圧を少なくとも大気圧以上に高めつつ組成物温度を100℃以上に保持した状態で押し出す必要があるため、本発明のような構成は採用することは困難である。
(ヒーター)
バレルの第1フライト部及び混練部にはヒーター(加熱設備)が設けられ、第1フライト部及び混練部においてバレルを加熱して、バレル内部(バレルとスクリューとの間の空間)の温度を調整できるように構成される。ヒーターの構成や配置は限定されないが、バレルの第1フライト部と混練部とを個別に加熱し、所定の温度に調整できるように構成・配置されることが好ましく、バレルの第1フライト部及び混練部の各々について、軸方向に沿った複数の領域を個別に加熱し、所定の温度に調整できるように構成・配置されることが好ましい。また、ヒーターの加熱温度条件についても制限されるものではなく、後述する製造方法の説明において詳述する各部位の温度条件が達成できるように構成されたものであればよい。斯かる押出機用の種々のヒーターは当業者には周知であるが、例えば前述するヒーター設置領域に該当するバレル周表面に電熱線やスチーム配管等のヒーターを設置して間接的に作用させるジャケット方式やダイレクトヒート方式(エアージャケット方式)、バレル内における組成物に加熱水蒸気等を吹き込んで直接的に作用させるスチーム加熱方式等を採用することができるが、組成物中のマトリクス構造保持の観点から間接的に作用させる方式(ジャケット方式等)が好ましい。また、ジャケット方式を採用する場合、速やかに温度の調整ができ、マトリクス構造形成に有利な電熱線を採用することが好ましい。
(クーラー)
第2フライト部を設ける前記第1の態様の押出機では、バレルの第2フライト部及び/又はダイ部にはクーラー(冷却設備)が設けられ、第2フライト部及び/又はダイ部においてバレルを冷却して、バレル内部(バレルとスクリューとの間の空間)を通過する組成物温度を調整できるように構成されることが好ましい。本発明ではこうしたクーラーをバレルの第2フライト部及び/又はダイ部に有する押出機を用いることで、組成物中のでんぷんが老化され強固なでんぷんマトリクス構造ができるため好ましい。
バレルの第2フライト部及び/又はダイ部に設けられるクーラーは、組成物の最高到達温度を混練部の起点からダイ部の流路出口にかけて所定温度以上低下させる能力を有することが好ましい。本発明の製造方法によれば、バレルの第2フライト部にこうしたクーラーを設けることで、組成物中のでんぷんが老化され強固なでんぷんマトリクス構造を形成することが可能となる。具体的には、組成物の最高到達温度を混練部の起点からダイ部の出口にかけて一定以上低下させる能力を有することが好ましい。より具体的には当該組成物温度低下能力が、通常20℃以上、中でも25℃以上、又は30℃以上、又は35℃以上、又は40℃以上、又は45℃以上、又は50℃以上、又は55℃以上、又は60℃以上、又は65℃以上、又は70℃以上、又は75℃以上、又は80℃以上低下させることが可能であることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常200℃以下、又は150℃以下、又は100℃以下とすることができる。
また、バレルの第2フライト部からダイ部(すなわち第2フライト部及び/又はダイ部)にかけて設けられるクーラーは、ダイ部の流路出口における組成物の温度を所定温度まで低下させる能力を有することが好ましい。本発明の製造方法によれば、バレルの第2フライト部及び/又はダイ部にこうしたクーラーを設けることで、特に組成物表面のでんぷんがより効果的に老化してその後の組成物同士の結着しやすさなどが改善されるため好ましい。さらに、ダイ部として図5A又は図5Bに表された長尺上の構造を採用することで、より温度組成物温度が低下しやすくなるため好ましい。前記第2の態様(すなわちダイ部において組成物を大気圧下に開放することでベント部としての役割を兼ね備える構造)を採用する場合において、このような長尺上のダイ部を採用することで、組成物の膨化が抑制できるためが好ましい。全体的には、ダイ部の出口における組成物の温度を、通常85℃以下、中でも80℃以下、又は75℃以下、又は70℃以下、特には65℃以下とすることが可能であることが好ましい。下限は特に限定されないが、通常0℃以上、中でも5℃以上、又は10℃以上、又は15℃以上、更には20℃以上、特に25℃以上とすることが、工業上の便宜から好ましい。
斯かる押出機用の種々のクーラーは当業者には周知であるが、例えば前述するクーラー設置領域に該当するバレル周表面に冷却水配管等のクーラーを設置して間接的に作用させるジャケット方式や、バレル内やダイ部流路内における組成物やダイ部から押し出された組成物に気体や液体を直接的に作用させる方式(液体状態の水を投入する方式や、霧状の水を投入する方式や、常温の空気を投入する方式や、冷却された空気を投入する方式や、液体窒素などの不活性化ガスを投入する方式等)などを採用することができるが、組成物中のマトリクス構造保持の観点から間接的に作用させる方式(ジャケット方式等)が好ましい。また、ジャケット方式を採用する場合、速やかに温度の調整ができ、マトリクス構造形成に有利な冷却水配管を採用することが好ましい。
[II.加熱調理用でんぷん含有組成物]
本発明の製造方法により製造される加熱調理用でんぷん含有組成物の組成及び特性は以下のとおりである。
(1)組成物の概要:
・用語の定義:
本発明において「加熱調理」とは、一般的に、火やマイクロ波を用いて直接的に、又は、水や空気等の媒体を通じて間接的に、食品に熱を加えることで、食品の温度を上げる調理方法をいう。一般的には、約70℃以上、典型的には80℃~180℃程度の加熱温度で、例えば1分以上60分以内の時間に亘って調理することを表す。斯かる加熱調理の方法として、例えば、焼く、煮る、炒める、蒸す等を挙げることができるが、本発明における組成物は液中で加熱調理を行った場合に形状が崩れにくいという特性を有する。本発明においては、加熱調理が特に水を主体(過半含有)とする液中で加熱調理する組成物であることが好ましく、ひいては本発明の組成物が液中加熱調理後に喫食する液中加熱調理用組成物であることが特に好ましい。
本発明において「ペースト組成物」とは、食用植物由来の食材を押出機(エクストルーダー)などで混練して製造した食品組成物を表し、練り物やパスタ(小麦を原料としないものも含まれる)が含まれる概念である。
・組成物の特徴:
本発明の組成物は、液中で加熱調理中に形状が崩壊しにくいと共に、マット感が高く、外観に優れていることを特徴の一つとする。なお、本発明において「マット感」とは、可視光線下でも組成物表面における光散乱(表面光散乱とも称する)が大きく、重厚感に溢れた外観を有することを意味する。すなわち、入射光が四方八方に反射され(光散乱)、表面におけるツヤが抑制されたマット感の高い質感となる。
従来のでんぷん含有組成物は、水中で加熱調理すると、組織が崩壊し、形状が崩れる場合があった。斯かる形状の崩壊を防止するために、マルトトリオース等の糖を含む煮崩れ防止剤を加えることも知られていたが、マルトトリオースの独特な風味や食感が食品に付与されてしまう上に、マット感が損なわれ、外観が劣る組成物となってしまうという課題があった。
一方、後述する本発明の製造方法にて製造される本発明の組成物は、液中で加熱調理中に形状が崩壊しにくいという性質と、マット感が高く、外観に優れているという性質とを兼ね備えている。後述する本発明の製造方法にて得られる本発明の組成物に、どうしてそのような優れた特性が付与されるのかは明らかではないが、従来の加熱調理用組成物は加熱調理中の形状崩壊を防ぐために主に小麦のグルテンネットワークを形成させるため、組成物内部はガラス状の糊化デンプン中にグルテンのハニカム状構造が形成され、入射光が反射しやすくマット感が失われることが通常であった。一方本発明の製造方法では、加熱調理中の形状崩壊を防ぐよう粉でんぷんのマトリクス状構造の周辺に光の乱反射を防ぐ老化でんぷん層が存在することで、可視光下でも組成物表面における光散乱が少ない組成部となるのではないかと予想される。
・組成物の態様:
本発明の組成物は、水中における成分溶出が抑制された性質を有することから、特に成分が溶出しやすい調理環境である液中(特に水中)での加熱調理に供されることが好ましい。例えば加熱調理用でんぷん含有組成物がペースト組成物、より具体的には麺やパスタ等の麺線又は麺帯状組成物であった場合、喫食のために水中における加熱調理(例えば90℃以上の水中で5分以上)された後においても、喫食が可能な形状が保持されるような性質を有するため、麺やパスタ等の麺線又は麺帯状組成物であることが好ましい。
本発明の組成物(例えばペースト組成物、特に固形状ペースト組成物)の例としては、これらに限定されるものではないが、パスタ、中華麺、うどん、稲庭うどん、きしめん、ほうとう、すいとん、ひやむぎ、素麺、蕎麦、蕎麦がき、ビーフン、フォー、冷麺の麺、春雨、オートミール、クスクス、きりたんぽ、トック、ぎょうざの皮等が挙げられる。
パスタの例としては、ロングパスタとショートパスタとが挙げられる。
ロングパスタとは、通常細長いパスタの総称であるが、本発明においては、うどんやそば等も包含する概念である。具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば、スパゲッティ(直径:1.6mm~1.7mm)、スパゲッティーニ(直径:1.4mm~1.5mm)、ヴァーミセリ(直径:2.0mm~2.2mm)、カッペリーニ(直径:0.8mm~1.0mm)、リングイネ(短径1mmほど、長径3mmほど)、タリアテッレ又はフェットチーネ(幅7mm~8mmほどの平麺)、パッパルデッレ(幅10mm~30mmほどの平麺)等が挙げられる。ロングパスタは加熱料理時に形状崩壊しやすい商品特性を有しやすいため、本発明の組成物とすることが有用であり好ましい。
ショートパスタとは、通常短いパスタの総称であるが、本発明においては、フレーゴラ(粒状のパスタ)やクスクス等の成型後更に小サイズに加工されたものも包含する概念である。具体例としては、これらに限定されるものではないが、マカロニ(直径が3mm~5mm前後の円筒状)、ペンネ(円筒状の両端をペン先のように斜めにカットしたもの)、ファルファーレ(蝶のような形状)、コンキリエ(貝殻のような形状)、オレッキエッテ(耳のような形状のドーム型)等が挙げられる。
・乾燥状態の組成物:
本発明の組成物は、乾燥状態の乾燥組成物とすることができる。特に、後述する保水処理を行いつつ乾燥状態の組成物とすることで、マットな外観を有しつつ喫食性に優れた組成物となるため有用である。
なお、本発明において「乾燥」状態とは、乾量基準含水率25%未満であり、且つ、水分活性値が0.85以下である状態を指す。なお、でんぷん含有組成物中の含水率は、乾燥粉末を後述の減圧加熱乾燥法に供して測定することが可能であり、また、水分活性値は、一般的な水分活性測定装置(例えば電気抵抗式(電解質式)湿度センサを用いたノバシーナ社製「LabMaster-aw NEO」)を用い、定法に従って測定することが可能である。また、乾燥処理方法としては、一般的に食品の乾燥に用いられる任意の方法を用いることができる。
・細長く成型された組成物:
従来の加熱調理用でんぷん含有組成物のうち、特にロングパスタ等の細長く成型された組成物とすることができる。
斯かる細長く成型された態様における本発明の組成物は、特に限定されるものではないが、通常20mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下、より更に好ましくは2mm以下の直径を有することが好ましい。なお、でんぷん含有組成物の「直径」とは、でんぷん含有組成物の長手方向に対して垂直に切断した際の切断面の長径(断面中の任意の2点を結ぶ線分の最大長)のことを意味する。ここで、当該切断面が円形であればその直径、楕円形であればその長軸、長方形(例えば板状に成型された組成物等の場合)であればその対角線が、それぞれでんぷん含有組成物の「直径」に該当する。
(2)組成物の組成:
本発明の組成物の組成は特に制限されないが、少なくとも1種の食用植物を含むことが好ましい。食用植物の種類は特に制限されないが、少なくとも1種の乾燥食用植物、即ち、乾量基準含水率が25%未満、好ましくは20%未満、更に好ましくは15%未満であり、且つ、水分活性値が0.85以下、好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.75以下である食用植物を含むことが好ましい。また、食用植物としては、微細化・粉末化したものを用いることが好ましい。また、具体的な食用植物としては、少なくとも1種の豆類を含むことが好ましい。豆類を原料とする場合については後に詳述する。但し、本発明の組成物の組成はこれに制限されるものではなく、後述する各種特性が満たされる限りにおいて、豆類以外の食用植物や、その他の原料を併用してもよい。本発明の組成物の原料となる豆類や食用植物等の詳細は別途説明する。
・不溶性食物繊維:
本発明の組成物は、不溶性食物繊維を含有する。本発明において「不溶性食物繊維」とは、人の消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分のうち、水に不溶のものを指す。その定量には、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、プロスキー変法を用いて測定する。本発明の組成物は、不溶性食物繊維の含量が多い場合でも、ボソボソとした食感の組成物とならないため有用である。その原因は定かではないが、高温高圧高混練処理により、組成物中の食物繊維が、でんぷん、タンパク質と相互作用してネットワーク構造を形成することで、不溶性食物繊維の食感が改善されている可能性がある。
本発明の組成物における不溶性食物繊維の含有量の下限は、乾燥質量換算で通常2.0質量%以上であることが好ましい。中でも3質量%以上、更には4質量%以上、とりわけ5質量%以上、又は6質量%以上、又は7質量%以上、又は8質量%以上、又は9質量%以上、特に10質量%以上であることが好ましい。不溶性食物繊維の含有量を前記下限以上とすることで、本発明の組成物は、マトリクス状に広がったでんぷん中で不溶性食物繊維が適当なサイズで均質に分散し、でんぷんがマトリクス状に分布した構造を有しやすくなり、惹いては加熱調理時の形状崩壊性が改善されやすくなる。ここで、本発明において「乾燥質量」とは、下記の「水分含量(乾量基準含水率)」から算出される水分含有量を組成物等全体の質量から除いた残分の質量を表し、「乾燥質量換算」とは組成物の乾燥質量を分母、各成分の含有量を分子として算出される、各成分の含有割合を表す。
本発明の組成物における不溶性食物繊維の含有量の上限は、特に制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点からは、乾燥質量換算で、通常50質量%以下、中でも40質量%以下、更には30質量%以下であることが好ましい。
本発明の組成物に含まれる不溶性食物繊維の由来は、特に制限されるものではなく、不溶性食物繊維を含有する各種天然材料に由来するものでもよく、合成されたものでもよい。天然材料に由来する場合、各種材料に含有される不溶性食物繊維を単離、精製して用いてもよいが、斯かる不溶性食物繊維を含有する材料をそのまま用いてもよい。例えば穀類由来のもの、豆類由来のもの、芋類由来のもの、野菜類由来のもの、種実類由来のもの、果実類由来のものなどを用いることができるが、穀類由来のもの、豆類由来のものが組成物のテクスチャの観点からより好ましく、豆類由来のものが更に好ましく、特にエンドウ由来のものが好ましく、黄色エンドウ由来のものが最も好ましい。また、豆類由来である場合、種皮ありの状態で使用しても、皮なしの状態で使用してもよいが、種皮付きの豆類を用いる方が食物繊維を多く含有できるため好ましい。
また、本発明の組成物中の不溶性食物繊維は、単離精製された純品として組成物に配合されたものであってもよいが、食用植物に含有された状態で組成物に配合されていることが好ましい。具体的には、組成物全体の総不溶性食物繊維含有量に対する、食用植物(特に豆類)に含有された状態で配合されている不溶性食物繊維含有量の比率が、通常50質量%以上、中でも60質量%以上、更には70質量%以上、とりわけ80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。
本発明の組成物に含まれる不溶性食物繊維の組成は、特に制限されるものではない。但し、不溶性食物繊維全体に占めるリグニン(中でも酸可溶性リグニン)の比率が一定値以上であると、食感改善効果がより顕著に得られやすくなる。具体的には、不溶性食物繊維全体に占めるリグニン(中でも酸可溶性リグニン)の比率は、乾燥質量換算で、通常5質量%以上、中でも10質量%以上、更には30質量%以上であることが好ましい。
本発明の組成物は、そこに含まれる不溶性食物繊維の粒子径が、一定以下の大きさであることが好ましい。不溶性食物繊維の粒子径が大きすぎると、組成物がボソボソとした好ましくない食感となる場合がある。この理由は定かではないが、粗大な不溶性食物繊維がでんぷん等のマトリクス構造形成を阻害し、本発明の効果が奏されにくくなるためと考えられる。ここで、通常漫然と破砕された豆類粉末における不溶性食物繊維サイズは450μm超となる蓋然性が高い(豆類に含有される不溶性食物繊維の形状は通常棒状であり、本発明のレーザー回折式粒度分布測定では大きめの値が得られるため。)。特に原料に種皮付きの豆類など、硬質組織を含有する食材を用いる場合、その種皮部分の不溶性食物繊維は粗大であり、さらに可食部に比べて破砕されにくいため、このような食材を本発明に用いる場合、斯かる食材に含まれる不溶性食物繊維は、あらかじめ特定の破砕処理を行い、そのサイズが特定範囲となっているものを用いることが好ましい。
本発明において、組成物中の不溶性食物繊維の粒子径を評価するためには、組成物の水懸濁液をプロテアーゼ及びアミラーゼ処理し、でんぷんとタンパク質を酵素によって分解したでんぷん・タンパク質分解処理後組成物について、超音波処理を加えた後の粒子径分布を測定する方法を用いる。具体的には、組成物の6質量%の水懸濁液を、0.4容量%のプロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼにより20℃で3日間処理する(これを適宜「[手順b]」とする。)ことによりでんぷん・タンパク質分解処理を実施した後、処理後の組成物に超音波処理を加えてから粒子径分布を測定すればよい。
具体的に、本発明の組成物は、上記手順により測定される不溶性食物繊維の粒子径分布における粒子径d90が、450μm未満であることが好ましく、400μm以下であることが更に好ましく、350μm以下であることが更に好ましく、300μm以下であることが更に好ましく、250μm以下であることが更に好ましく、200μm以下であることが更に好ましく、150μm以下であることが更に好ましく、100μm以下であることが更に好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、60μm以下であることが更に好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。一方、斯かる不溶性食物繊維の粒子径d90の下限は、特に制限されるものではないが、通常1μm以上、より好ましくは3μm以上であることが好ましい。
同様に、本発明の組成物は、上記手順により測定される不溶性食物繊維の粒子径分布における粒子径d50が、450μm未満であることが好ましく、400μm以下であることが更に好ましく、350μm以下であることが更に好ましく、300μm以下であることが更に好ましく、250μm以下であることが更に好ましく、200μm以下であることが更に好ましく、150μm以下であることが更に好ましく、100μm以下であることが更に好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、60μm以下であることが更に好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。一方、斯かる不溶性食物繊維の粒子径d50の下限は、特に制限されるものではないが、通常1μm以上、より好ましくは3μm以上であることが好ましい。
組成物中の不溶性食物繊維の粒子径分布を測定するためのより具体的な手順としては、例えば以下のとおりである。組成物300mgを5mLの水と共にプラスチックチューブに入れ、20℃で1時間程度膨潤させた後、小型ヒスコトロン(マイクロテックニチオン社製ホモジナイザーNS-310E3)を用いて粥状の物性となるまで処理する(10000rpmで15秒程度)。その後、処理後サンプル2.5mLを分取し、プロテアーゼ(タカラバイオ社製、Proteinase K)10μL、αアミラーゼ(Sigma社製、α-Amylase from Bacillus subtilis)0.5mgを加え、20℃にて3日反応させる。反応終了後、得られたプロテアーゼ、アミラーゼ処理組成物に対して、超音波処理を加えてから、その粒子径分布を測定すればよい。
プロテアーゼ、アミラーゼ処理組成物の超音波処理後の粒子径分布の測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、以下の条件に従って行うものとする。まず、測定時の溶媒は、組成物中の構造に影響を与え難いエタノールを用いる。測定に使用されるレーザー回折式粒度分布測定装置としては、特に制限されるものではないが、例えばマイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EXIIシステムを使用することができる。測定アプリケーションソフトウェアとしては、特に制限されるものではないが、例えばDMS2(Data Management System version2、マイクロトラック・ベル株式会社)を使用することができる。前記の測定装置及びソフトウェアを使用する場合、測定に際しては、同ソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトウェアのSet zeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングでサンプルの濃度が適正範囲内に入るまでサンプルを直接投入すればよい。測定試料は、予め超音波処理を行ったサンプルを投入してもよく、サンプル投入後に前記の測定装置を用いて超音波処理を行い、続いて測定を行ってもよい。後者の場合、超音波処理を行っていないサンプルを投入し、サンプルローディングにて濃度を適正範囲内に調整した後、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して超音波処理を行う。その後、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、濃度が依然として適正範囲であることを確認した後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とする。測定時のパラメーターとしては、例えば分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.36、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μmとする。
なお、本発明において「粒子径d90」(あるいは「粒子径d50」)とは、測定対象の粒子径分布を体積基準で測定し、ある粒子径から2つに分けたとき、大きい側の粒子頻度%の累積値の割合と、小さい側の粒子頻度%の累積値の割合との比が、10:90(あるいは50:50)となる粒子径として定義される。また、本発明において「超音波処理」とは、特に断りがない限り、周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間の処理をすることを意味する。
・でんぷん:
本発明の組成物は、でんぷんを含有する。特に、本発明の組成物は、でんぷんを所定割合以上含有することで、加熱調理後の吸水に伴って弾性が感じられるという効果が得られやすくなる。その原因は定かではないが、高温高圧高混練処理により、組成物中のでんぷんのうち、比較的分子量の大きい画分がネットワーク構造を形成することで、その結果として前記効果を奏している可能性がある。
具体的に、本発明の組成物中のでんぷん含有量の下限は、乾燥質量換算で通常20質量%以上である。中でも25質量%以上、とりわけ30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、特に50質量%以上であることが好ましい。一方、本発明の組成物中のでんぷん含有量の上限は、特に制限されるものではないが、例えば乾燥質量換算で85質量%以下、中でも80質量%以下、又は70質量%以下、又は60質量%以下とすることができる。
本発明の組成物中のでんぷんの由来は特に制限されない。例としては、植物由来のものや動物由来のものが挙げられるが、豆類由来でんぷんが好ましい。具体的には、組成物全体の総でんぷん含有量に対する、豆類由来でんぷん含有量の比率が、通常30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。その上限は特に制限されず、通常100質量%以下である。豆類由来でんぷんとしては、特にエンドウ由来のものが好ましく、黄色エンドウ由来のものが最も好ましい。豆類については後述する。
本発明の組成物中のでんぷんは、単離された純品として組成物に配合されたものであってもよいが、豆類に含有された状態で組成物に配合されていることが好ましい。具体的には、組成物全体の総でんぷん含有量に対する、豆類に含有された状態で配合されているでんぷん含有量の比率が、通常30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。その上限は特に制限されず、通常100質量%以下である。
なお、本発明において、固形状組成物中のでんぷん含有量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、AOAC996.11の方法に従い、80%エタノール抽出処理により、測定値に影響する可溶性炭水化物(ぶどう糖、麦芽糖、マルトデキストリン等)を除去した方法で測定する。
本発明の組成物は、特定の条件下で観察されるでんぷん粒構造の数が所定値以下であることが好ましい。その原理は不明であるが、でんぷん粒構造が破壊された状態で、後述する高温高圧強混練条件下で組成物を加工することで、でんぷんがマトリクス状に組成物全体に拡散し、でんぷん中のアミロペクチンが保水時弾性を発現しやすい構造となると考えられる。
でんぷん粒構造とは、平面画像中で直径1~50μm程度の円状の形状を有する、よう素染色性を有する構造であり、例えば、組成物の粉砕物を水に懸濁してなる6%の水懸濁液を調製し、拡大視野の下で観察することができる。具体的には、組成物の粉砕物を目開き150μmの篩で分級し、150μmパスの組成物粉末3mgを水50μLに懸濁することにより、組成物粉末の6%懸濁液を調製する。本懸濁液を載置したプレパラートを作製し、位相差顕微鏡にて偏光観察するか、又はよう素染色したものを光学顕微鏡にて観察すればよい。拡大率は制限されないが、例えば拡大倍率100倍又は200倍とすることができる。プレパラートにおけるでんぷん粒構造の分布が一様である場合は、代表視野を観察することでプレパラート全体のでんぷん粒構造の割合を推定することができるが、その分布に偏りが認められる場合は、有限の(例えば2箇所以上、例えば5箇所又は10箇所の)視野を観察し、観察結果を合算することで、プレパラート全体の測定値とすることができる。
具体的に、本発明の組成物は、前記条件下で観察されたでんぷん粒構造の数が、通常300個/mm2以下、中でも250個/mm2以下、更には200個/mm2以下、とりわけ150個/mm2以下、又は100個/mm2以下、又は50個/mm2以下、又は30個/mm2以下、又は10個/mm2以下、特に0個/mm2であることが好ましい。
なお、本発明において「組成物の粉砕物」、「組成物粉砕物」又は「粉砕組成物」とは、特に断りがない限り、超音波処理後の粒子径d50及び/又はd90(好ましくは粒子径d50及びd90の双方)が1000μm以下程度となるように粉砕した組成物を意味する。なお、超音波処理後の粒子径d50及び/又はd90(好ましくは粒子径d50及びd90の双方)の下限は特に限定されないが、通常1μm以上であることが好ましい。
・でんぷんの糊化度:
本発明の組成物中のでんぷん糊化度は、所定値以上であることが、組成物の成型性の観点から好ましい。具体的に、本発明の組成物中のでんぷん糊化度は、通常30質量%以上、中でも40質量%以上、更には50質量%以上、とりわけ60質量%以上、特に70質量%以上であることが好ましい。糊化度の上限は特に制限されないが、あまりに高すぎるとでんぷんが分解し、組成物がべたべたした好ましくない品質となる場合がある。よって、糊化度の上限は99質量%以下、中でも95質量%以下、更には90質量%以下であることが好ましい。
なお、本発明において組成物の糊化度は、関税中央分析所報を一部改変したグルコアミラーゼ第2法(Japan Food Research Laboratories社メソッドに従う:https://web.archive.org/web/20200611054551/https://www.jfrl.or.jp/storage/file/221.pdf又はhttps://www.jfrl.or.jp/storage/file/221.pdf)を用いて測定する。
・タンパク質:
本発明の組成物は、タンパク質を含有する。特に、本発明の組成物は、タンパク質を所定割合以上含有することで、加熱調理後の歯ごたえが向上すると共に、ゴムのような食感が抑えられ、歯通りが良い食感になるという効果が得られやすくなる。その原因は定かではないが、高温高圧高混練処理により、組成物中にでんぷんがマトリクス状に広がり、その構造中で主にタンパク質から構成されると考えられる凝集構造が好ましい形状、大きさに発達し、食物繊維がその形状、大きさの発達を助けるといった相互作用によって従来知られたグルテンをはじめとするタンパク質ネットワークとは全く異なる構造を形成することで、その結果として本発明の効果を奏している可能性がある。
具体的に、本発明の組成物におけるタンパク質含有量の下限は、湿潤質量換算で通常3.0質量%以上である。中でも4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、又は10質量%以上、又は11質量%以上、又は12質量%以上、又は13質量%以上、又は14質量%以上、又は15質量%以上、又は16質量%以上、又は17質量%以上、又は18質量%以上、又は19質量%以上、又は20質量%以上、又は21質量%以上、特に22質量%以上であることが好ましい。一方、本発明の組成物におけるタンパク質含有量の上限は、特に制限されるものではないが、湿潤質量換算で通常85質量%以下、好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
本発明の組成物中のタンパク質の由来は特に制限されない。例としては、植物由来のものや動物由来のものが挙げられるが、植物(特に豆類)由来のタンパク質が好ましい。具体的には、組成物全体の総タンパク質含有量に対する、植物由来タンパク質含有量の比率が、通常50質量%以上、中でも60質量%以上、更には70質量%以上、とりわけ80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。植物由来タンパク質の例としては、穀類由来のもの、豆類由来のもの、芋類由来のもの、野菜類由来のもの、種実類由来のもの、果実類由来のもの等が挙げられるが、豆類由来のものを用いることがより好ましく、特にエンドウ由来のものが好ましく、黄色エンドウ由来のものが最も好ましい。
本発明の組成物中のタンパク質は、単離精製された純品として組成物に配合されたものであってもよいが、食用植物に含有された状態で組成物に配合されていることが好ましい。具体的には、組成物全体の総タンパク質含有量に対する、食用植物(特に豆類)に含有された状態で配合されているタンパク質含有量の比率が、通常50質量%以上、中でも60質量%以上、更には70質量%以上、とりわけ80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。
なお、本発明の組成物中のタンパク質及びでんぷんの、それぞれ通常50質量%以上、中でも60質量%以上、更には70質量%以上、とりわけ80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%が、共に豆類に由来することが好ましく、同一種の豆類に由来することが更に好ましく、同一個体の豆類に由来することが更に好ましい。また、本発明の組成物中のタンパク質及びでんぷんの、それぞれ通常50質量%以上、中でも60質量%以上、更には70質量%以上、とりわけ80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%が、共に食用植物に含有された状態で配合されることが好ましい。
なお、本発明において、でんぷん含有組成物中のタンパク質含有量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、品表示法(「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号))に規定された燃焼法(改良デュマ法)を用いて定量した窒素量に、「窒素-タンパク質換算係数」を乗じて算出する方法で測定する。
・全油脂分含量:
本発明の組成物中の全油脂分含量は、制限されるものではないが、乾燥質量換算で、通常17質量%未満、中でも15質量%未満、更には13質量%未満、とりわけ10質量%未満、又は8質量%未満、又は7質量%未満、又は6質量%未満、又は5質量%未満、又は4質量%未満、又は3質量%未満、又は2質量%未満、又は1質量%未満、特に0.8質量%未満とすることが好ましい。一方、斯かる全油脂分含量の下限は、特に制限されるものではないが、乾燥質量換算で、通常0.01質量%以上であることが好ましい。なお、本発明において、組成物中の全油脂分含量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、ジエチルエーテルによるソックスレー抽出法で測定する。
本発明の組成物中の油脂分の由来は特に制限されない。例としては、植物由来のものや動物由来のものが挙げられるが、植物由来の油脂分が好ましい。具体的には、組成物全体の総油脂分含有量に対する、植物由来(特に豆類)油脂分含有量の比率が、通常50質量%以上、中でも60質量%以上、更には70質量%以上、とりわけ80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。植物由来油脂分の例としては、穀類由来のもの、豆類由来のもの、芋類由来のもの、野菜類由来のもの、種実類由来のもの、果実類由来のもの等が挙げられるが、豆類由来のものを用いることがより好ましく、特にエンドウ由来のものが好ましく、黄色エンドウ由来のものが最も好ましい。
本発明の組成物中の油脂分は、単離された純品として組成物に配合されたものであってもよいが、食用植物(特に豆類)に含有された状態で組成物に配合されていることが好ましい。具体的には、組成物全体の総油脂分含有量に対する、食用植物に含有された状態で配合されている油脂分含有量の比率が、通常50質量%以上、中でも60質量%以上、更には70質量%以上、とりわけ80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。
なお、本発明の組成物中の油脂分の、通常50質量%以上、中でも60質量%以上、更には70質量%以上、とりわけ80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%が、何れも豆類に由来することが好ましく、同一種の豆類に由来することが更に好ましく、同一個体の豆類に由来することが更に好ましい。また、本発明の組成物中の油脂分の、通常50質量%以上、中でも60質量%以上、更には70質量%以上、とりわけ80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%が、何れも食用植物に含有された状態で配合されることが好ましい。
・乾量基準含水率:
本発明の組成物は、乾量基準含水率が所定値以下であることが好ましい。具体的に、本発明の組成物中の乾量基準含水率は、制限されるものではないが、例えば60質量%以下、又は55質量%以下、中でも50質量%以下、又は45質量%以下、又は40質量%以下、又は35質量%以下、又は30質量%以下、又は25質量%以下、又は20質量%以下、又は15質量%以下であってもよい。一方、本発明の組成物中の乾量基準含水率の下限は、制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、例えば0.5質量%以上、或いは1質量%以上、或いは2質量%以上とすることができる。なお、本発明の組成物中の乾量基準含水率は、組成物の各種成分に由来するものであってもよいが、更に添加された水に由来するものであってもよい。また、加工前の生地組成物中に含有される乾量基準含水率が高い場合に、乾燥処理などを採用することで前述の数値に調整する工程を採用することができる。
本発明において「乾量基準含水率」とは、本発明の組成物の原料に由来する水分量と別途添加した水分量の合計量の、固形分の合計量に対する割合を意味する。その数値は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、減圧加熱乾燥法で90℃に加温することで測定する。具体的には、あらかじめ恒量になったはかり容器(W0)に適量の試料を採取して秤量し(W1)、常圧において、所定の温度(より詳しくは90℃)に調節した減圧電気定温乾燥器中に、はかり容器の蓋をとるか、口を開けた状態で入れ、扉を閉じ、真空ポンプを作動させて、所定の減圧度において一定時間乾燥し、真空ポンプを止め、乾燥空気を送って常圧に戻し、はかり容器を取り出し、蓋をしてデシケーター中で放冷後、質量をはかる。そのようにして恒量になるまで乾燥、放冷、秤量する(W2)ことを繰り返し、次の計算式で水分含量(乾量基準含水率)(質量%)を求める。
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・原料:
本発明の組成物の原料は、本発明において規定する各種の成分組成及び物性を達成しうる限り、特に制限されるものではない。しかし、原料としては、1種又は2種以上の食用植物を用いることが好ましく、食用植物として少なくとも豆類を含有することが好ましい。
・豆類:
本発明の組成物に豆類を用いる場合、使用する豆類の種類は、限定されるものではないが、例としては、エンドウ属、インゲンマメ属、キマメ属、ササゲ属、ソラマメ属、ヒヨコマメ属、ダイズ属、及びヒラマメ属から選ばれる1種以上の豆類であることが好ましい。具体例としては、これらに限定されるものではないが、エンドウ(特に黄色エンドウ、白エンドウ等。)、インゲン(隠元)、キドニー・ビーン、赤インゲン、白インゲン、ブラック・ビーン、うずら豆、とら豆、ライマメ、ベニバナインゲン、キマメ、緑豆、ササゲ、アズキ、ソラマメ、ダイズ、ヒヨコマメ、レンズマメ、ヒラ豆、ブルーピー、紫花豆、レンティル、ラッカセイ、ルピナス豆、グラスピー、イナゴマメ(キャロブ)、ネジレフサマメノキ、ヒロハフサマメノキ、コーヒー豆、カカオ豆、メキシコトビマメ等が挙げられる。その他例示されていない食材の分類は、その食材や食材の加工品を取り扱う当業者であれば、当然に理解することが可能である。具体的には、一般家庭における日常生活面においても広く利用されている日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載の食品群分類(249頁、表1)を参照することで明確に理解することができる。なお、これらの豆類は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組合せで用いてもよい。
なお、本発明の組成物に豆類を用いる場合、組成物に含有されるでんぷんのうち未熟種子(例えばエンドウ未熟種子であるグリーンピースや、大豆の未熟種子であるエダマメ)ではなく成熟した豆類を用いることが好ましい。また、同様の理由により、成熟に伴って乾量基準含水率が所定値以下となっている状態の豆類であることが好ましい。具体的に、本発明の組成物に使用する豆類の乾量基準含水率は、通常15質量%未満、中でも13質量%未満、更には11質量%未満、又は10質量%未満であることが好ましい。一方、斯かる豆類の乾量基準含水率の下限は、特に制限されるものではないが、通常0.01質量%以上であることが好ましい。
本発明の組成物に豆類を用いる場合、本発明の組成物における豆類の含有率は、制限されるものではないが、乾燥質量換算で通常50質量%以上、中でも55質量%以上、更には60質量%以上、又は65質量%以上、又は70質量%以上、又は75質量%以上、又は80質量%以上、又は85質量%以上、又は90質量%以上、特に95質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常100質量%以下である。
本発明の組成物に豆類を用いる場合、粉末状の豆類を用いることが好ましく、具体的には、超音波処理後の粒子径d90及び/又はd50がそれぞれ所定値以下の豆類粉末を用いることが好ましい。即ち、豆類粉末の超音波処理後の粒子径d90は、500μm未満が好ましく、450μm以下が更に好ましく、中でも400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下がより好ましい。また、同様に、豆類粉末の超音波処理後の粒子径d50は、500μm未満が好ましく、450μm以下が更に好ましく、中でも400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下がより好ましい。超音波処理後の粒子径d90及びd50の下限は特に制限されないが、通常0.3μm以上、又は1μm以上、又は5μm以上、又は10μm以上である。特に押出成形時に組成物が一定以上の大きさであると、成型に際して組成物が脈動しやすくなり生産性が悪化するとともに、組成物表面が不均一になる場合があるため、一定以下の大きさの粉末状の豆類を使用することが好ましい。
・その他の食材:
本発明の組成物は、任意の1又は2以上のその他の食材を含んでいてもよい。斯かる食材の例としては、植物性食材(野菜類、芋類、きのこ類、果実類、藻類、穀類、種実類等)、動物性食材(魚介類、肉類、卵類、乳類等)、微生物性食品等が挙げられる。これら食材の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
・調味料、食品添加物等:
本発明の組成物は、任意の1又は2以上の調味料、食品添加物等を含んでいてもよい。調味料、食品添加物等の例としては、醤油、味噌、アルコール類、糖類(例えばブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)、糖アルコール(例えばキシリトール、エリスリトール、マルチトール等)、人工甘味料(例えばスクラロース、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK等)、ミネラル(例えばカルシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの塩類等)、香料、pH調整剤(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸等)、シクロデキストリン、酸化防止剤(例えばビタミンE、ビタミンC、茶抽出物、生コーヒー豆抽出物、クロロゲン酸、香辛料抽出物、カフェ酸、ローズマリー抽出物、ビタミンCパルミテート、ルチン、ケルセチン、ヤマモモ抽出物、ゴマ抽出物等)、乳化剤(例としてはグリセリン脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リノシール酸エステル、キラヤ抽出物、ダイズサポニン、チャ種子サポニン、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等)、着色料、増粘安定剤等が挙げられる。
但し、昨今の自然志向の高まりからは、本発明の組成物は、いわゆる乳化剤、着色料、増粘安定剤(例えば、食品添加物表示ポケットブック(平成23年版)の「表示のための食品添加物物質名表」に「着色料」、「増粘安定剤」、「乳化剤」として記載されているもの)から選ばれる何れか1つを含有しないことが好ましく、何れか2つを含有しないことがより好ましく、3つ全てを含有しないことが更に好ましい。
特に、本発明の組成物は、ゲル化剤を含有しなくても組成物に弾性を付与でき、また過度の弾力付与を防止するため、ゲル化剤を含有しないことが好ましい。また、素材の味が感じられやすい品質とする観点からは、本発明の組成物は、乳化剤を含有しないことが好ましい。更には、本発明の組成物は、食品添加物(例えば、食品添加物表示ポケットブック(平成23年版)中の「表示のための食品添加物物質名表」に記載されている物質を食品添加物用途に用いたもの)を含有しないことがとりわけ望ましい。また、食品そのものの甘みが感じられやすくなるという観点からは、本発明の組成物は、糖類(ブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)を添加しない方が好ましい。
また、本発明の組成物は、塩化ナトリウムの含有量が少なく、或いは塩化ナトリウムを配合しないことが好ましい。従来の加熱調理用でんぷん含有組成物(特にネットワーク構造のグルテンを含有する組成物)は、塩化ナトリウムを含有させることで組成物弾性を保持しているが、味に影響を与えたり、塩分の過剰摂取の観点から問題があった。特に乾燥状態の組成物(乾燥うどん、乾燥ひやむぎ等)においては、組成物弾性の保持のため、通常3質量%以上の塩化ナトリウムが使用されるため、こうした課題が顕著であった。一方、本発明の組成物では、塩化ナトリウムの使用量が極微量であるか、或いは塩化ナトリウムを添加しなくても、弾性低下が抑制された組成物とすることができ、良好な品質の組成物となるため好ましい。また、通常はネットワーク構造のグルテンと塩化ナトリウムによって粘着力や弾力を有する、パスタ、うどん、パン等の加熱調理用でんぷん含有組成物についても、本発明を適用することで、塩化ナトリウムを添加することなく良好な品質の組成物とすることができるため好ましい。具体的に、本発明の組成物中の塩化ナトリウムの含有量は、湿潤質量換算で、通常3質量%以下、中でも2質量%以下、更には1質量%以下、更には0.7質量%以下、特に0.5質量%以下であることが好ましい。本発明の組成物中の塩化ナトリウムの含有量の下限は特に限定されず、0質量%であっても構わない。なお、本発明において、でんぷん含有組成物中の塩化ナトリウムの定量法としては、例えば日本食品標準成分表2015年版(七訂)の「食塩相当量」に準じ、原子吸光法を用いて測定したナトリウム量に2.54を乗じて算出する手法を用いる。
・組成物の凍結切片の平滑部:
本発明の一態様によれば、本発明の組成物は、前記手順で凍結切片化して得られる凍結切片を観察した場合に、切断面における組成物外周の所定割合に沿って、所定値以上の平均厚みを有する平滑部が認められることも好ましい。こうした物性を有する場合、本発明の組成物は、加熱調理時に組成物から成分流出しにくい組成物となる。その理由は定かではないが、組成物の外周付近に組成物の内部と比べて比較的スムースに切断可能な特性を有する構造が存在すると、組成物を凍結切片化する際に平滑部となって観察されるものと考えられる。
なお、本発明において「平滑部」とは、組成物凍結切片画像の外周部に観察される、所定値以上の平均厚みを有し、非平滑部と比較して色が薄く凹凸が少ない外観を有する層状構造を意味する。なお、平滑部の「平均厚み」とは、切断面における組成物の外周と直交する方向における平滑部の幅を、組成物の外周に沿って測定した場合における平均値を意味する。
具体的に、本発明の組成物は、切断面における組成物の外周の通常30%以上、又は40%以上、又は50%以上、中でも60%以上、更には70%以上、とりわけ80%以上、又は90%以上、特に100%(すなわち切断面における組成物の外周全て)に、斯かる平滑部が形成されていることが好ましい。また、斯かる平滑部の平均厚みは、通常20μm以上、中でも25μm以上、更には30μm以上であることが好ましい。
なお、平滑部の測定に当たっては、組成物を(加熱水中処理することなく)-25℃で凍結した組成物凍結物について、特定の切断面に沿って厚さ30μmに切断した凍結切片を作製し、これを観察する。斯かる組成物の凍結切片の作製及び観察は、制限されるものではないが、例えば以下の手順で行うことが好ましい。すなわち、組成物を、Kawamoto, "Use of a new adhesive film for the preparation of multi-purpose fresh-frozen sections from hard tissues, whole-animals, insects and plants", Arch. Histol. Cytol., (2003), 66[2]:123-43に記載の川本法に従って、-25℃で厚さ30μmに切断することにより、凍結切片を作製する。こうして得られた組成物の凍結切片を、例えば倍率200倍の顕微鏡の視野下に配置し、例えば画素数1360×1024のカラー写真を撮影して解析に供する。
・非膨化:
本発明の組成物は、膨化食品(特に膨化により密度比重が1.0未満となる膨化食品)ではないことが好ましい。なお、本発明の組成物の製造に際しては、高温高圧化で混練後、通常は圧力を印加したまま膨化を防止しつつ降温してから、圧力を大気圧程度まで減圧することにより、本発明の組成物を得ることができる。
[III:加熱調理用でんぷん含有組成物の製造方法]
(1)概要:
本発明の製造方法は、前述した本発明の押出機を用いて、前述した本発明の組成物を製造する方法である。
本発明の組成物を調製する方法は、特に制限されるものではなく、前記の各種要件を充足する組成物が得られる限りにおいて、任意の手法を用いることができる。具体的には、本発明の組成物の前記の材料、例えば豆類などの食用植物と、任意により用いられるその他の食材、調味料、及びその他の成分とを混合すればよい。必要に応じて加熱や成型等の処理を加えてもよい。中でも、前記の材料を前記の組成を満たすように混合した組成物を、所定の高温加圧条件下で混練した後、膨化しないように降温させる特定の方法(以下適宜「本発明の製造方法」と称する。)を用いることで、本発明の組成物を効率的に製造することが可能である。
具体的には、本発明の製造方法は、下記の段階(i)から(iv)を含む。
(i)不溶性食物繊維の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、でんぷんの含有量が湿潤質量換算で10.0質量%以上、タンパク質の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、乾量基準含水率が25%超の組成物を調製する段階、
(ii)段階(i)の組成物を、前記第1フライト部から前記混練部にかけて加温させ、前記混練部において与圧条件下で温度100℃以上200℃以下とし、SME値350kJ/kg以上で混練する段階、
(iii)段階(ii)の混練後の組成物を、前記混練部における与圧状態から、前記ベント部において大気圧以下まで減圧する段階
(iv)段階(ii)の混練後の組成物の糊化度を、前記混練部以降で6質量%以上低下させる段階。
以下、斯かる本発明の製造方法について詳細に説明する。
(2)段階(i):生地組成物の調製
本段階(i)では、本発明の組成物の原料となる食材、例えば豆類と、任意により用いられるその他の食材とを混合することにより、本発明の組成物の元となる組成物(これを適宜「生地組成物」と称する。)を調製する。なお、生地組成物(単に「生地」又は「ペースト生地組成物」と称する場合がある)の性状は食材が水によって一部又は全部が一体化した性状であれば良く、液体状であってもよく、ゾル状であってもよく、ゲル状であってもよく、固体状であってもよい。また、パン生地のような可塑性を有する性状であってもよく、そぼろ状のような可塑性を有さない性状であってもよい。斯かる生地組成物の調製法は特に制限されないが、前述した本発明の組成物の原料、例えば1種又は2種以上の食用植物(好ましくは少なくとも1種又は2種以上の豆類と、任意によりその他の1種又は2種以上の食用植物)と、任意により1種又は2種以上のその他の原料とを混合し、これを生地組成物として用いることができる。また、生地組成物の調製は、押出機投入前にあらかじめ原材料に加水する方法で段階(i)の組成物が調製される方法(すなわち、あらかじめ段階(i)の生地組成物を調製した後にフィーダに投入する態様)であってもよく、押出機内で原材料に加水する方法で段階(i)の組成物が調製される方法(すなわち、フィーダに原材料(豆類など)を乾量基準含水率が25質量%以下の状態(例えば粉末状態)で投入し、第1フライト部において搬送しながら水分を投入することで段階(i)の生地組成物を調製する態様)であってもよく、これらを組み合わせた方法であってもよい。また、押出機内で原材料に加水する方法で段階(i)の組成物を調製する方法において、押出機内の原材料が乾量基準含水率が25質量%未満(又は30質量%未満、又は35質量%未満、又は40質量%未満)の状態で90℃以上(又は95℃、又は100℃)の高温に曝露されていないことで、でんぷんが熱分解しにくくなるため好ましい。
・生地組成物の成分組成:
ここで、生地組成物は、以下に説明する種々の成分組成を満たすように調製することが好ましい。
生地組成物のでんぷん含有量は、湿潤質量基準で、通常10.0質量%以上、中でも15質量%以上、更には20質量%以上、とりわけ25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、特に50質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常80質量%以下、又は75質量%以下、又は70質量%以下とすることができる。
生地組成物の乾量基準含水率は、通常25質量%超、中でも30質量%超、更には35質量%超、とりわけ40質量%超、又は45質量%超、又は50質量%超、又は55質量%超、又は60質量%超、又は65質量%超、又は70質量%超、又は75質量%超、特に80質量%超とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常200質量%以下、又は175質量%以下、又は150質量%以下とすることができる。
生地組成物の不溶性食物繊維の湿潤質量基準割合は、通常3.0質量%以上、とりわけ4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、特に10質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常40質量%以下、又は30質量%以下とすることができる。
生地組成物のタンパク質の湿潤質量基準割合は、通常3.0質量%以上、中でも4.0質量%以上、更には5.0質量%以上、とりわけ6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、又は10質量%以上、又は11質量%以上、又は12質量%以上、又は13質量%以上、又は14質量%以上、又は15質量%以上、又は16質量%以上、又は17質量%以上、又は18質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常40質量%以下、又は30質量%以下とすることができる。
ここで、生地組成物における不溶性食物繊維、でんぷん、及びタンパク質の含有量とは、水を含んだ状態の生地組成物全体の質量を分母、各成分の含有量を分子として算出される湿潤質量基準割合であり、原料となる食用植物(例えば豆類)等に由来する各成分が規定の値以上となるように調整することができる。
また、生地組成物の原料として、食用植物(例えば豆類)を用いる場合、斯かる食用植物(例えば豆類)の湿潤質量基準割合は、30質量%以上、中でも40質量%以上、更には50質量%以上、とりわけ60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、又は100質量%とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常100質量%以下とすることができる。
また、生地組成物の原料として食用植物(例えば豆類)を用いる場合、生地組成物の総でんぷん含量及び/又は総タンパク質含量に対する、食用植物(例えば豆類)に由来するでんぷん含量及び/又はタンパク質含量の比率が、所定値以上であることが好ましい。具体的には、生地組成物の総でんぷん含量に対する、食用植物(例えば豆類)に由来するでんぷん含量の比率が、30質量%以上、中でも40質量%以上、更には50質量%以上、とりわけ60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、又は100質量%とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常100質量%以下とすることができる。また、生地組成物の総タンパク質含量に対する、食用植物(例えば豆類)に由来するタンパク質含量の比率が、通常10質量%以上、中でも20質量%以上、更には30質量%以上、とりわけ40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。豆類由来タンパク質としては、特にエンドウ由来のものが好ましく、黄色エンドウ由来のものが最も好ましい。
・でんぷんの糊化度:
生地組成物の原料となるでんぷんとしては、あらかじめ糊化されたでんぷんを使用することで、糊化工程(後述する段階(ii))が容易になるため好ましい。具体的には、糊化工程前の段階(段階(i))における組成物中のでんぷん糊化度が一定以上であることが好ましい。具体的には10質量%以上、中でも20質量%以上、更には30質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが通常100質量%以下である。
また、同様の理由で、糊化工程前の段階(段階(i))における組成物中のでんぷんが、予め一定以上の温度で加熱されたでんぷんであることが好ましい。具体的には80℃以上、中でも90℃以上、更には100℃以上、又は110℃以上、又は120℃以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常200℃以下、更には180℃以下である。また、当該加熱に際して乾量基準含水率が一定未満の状態で高温加熱されたでんぷんは熱分解によって加工性の低い特性を有するため、一定以上の乾量基準含水率下で加熱されたでんぷんであることが更に好ましい。具体的には乾量基準含水率25質量%超、中でも30質量%超、更には35質量%超、とりわけ40質量%超、又は45質量%超、又は50質量%超、又は55質量%超、又は60質量%超、又は65質量%超、又は70質量%超、又は75質量%超、特に80質量%超において所定温度以上(80℃以上、中でも90℃以上、更には100℃以上、又は110℃以上、又は120℃以上。上限は特に制限されないが、通常200℃以下、更には180℃以下。)で加熱処理された加熱処理でんぷんであることが好ましい。加熱処理時の乾量基準含水率の上限は特に制限されないが通常200質量%以下、又は175質量%以下又は150質量%以下である。
・原料のでんぷん分解酵素活性:
また、本発明の組成物として、前述したでんぷん分解酵素活性が所定値以下の組成物を得るためには、本段階(i)における生地組成物の原料として、でんぷん分解酵素活性が所定値より低くなるように加工されたでんぷん又はこれを含む食用植物(例えば豆類)を用いることが好ましい。具体的には、でんぷん又はこれを含む食用植物(例えば豆類)を含有する生地組成物のでんぷん分解酵素活性が、乾燥質量換算で60.0U/g以下となるようにそれら原料を使用することができる。中でも50.0U/g以下、又は40.0U/g以下、又は30.0U/g以下を使用することができる。一方、斯かる割合の下限は、特に制限されるものではないが、通常0.0U/g以上である。食用植物(例えば豆類)におけるでんぷん分解酵素は耐熱性が非常に強いため、でんぷん分解酵素活性が低い食用植物を得るための加工方法としては、乾燥基準含水率50質量%以上の環境下において所定の温度以上で加熱処理を行うことが好ましい。具体的には、100℃以上であることが好ましい。中でも110℃以上、特に120℃以上であることが望ましい。一方、斯かる温度の上限は、特に制限されるものではないが、通常200℃未満である。加熱時間については、でんぷん分解酵素活性が所定値に調整されるまで任意で設定できるが、通常0.1分以上である。
また、本発明において、前述したでんぷん分解酵素活性(U/g)が、段階(ii)の前後で20%以上低下する(すなわち、「{(段階(ii)前の組成物におけるでんぷん分解酵素活性(U/g))-(段階(ii)後のでんぷん分解酵素活性(U/g))}/(段階(ii)前の組成物におけるでんぷん分解酵素活性(U/g))」で規定される低下割合が一定以上の数値となる)ことで本発明の効果が好ましく奏されるため好ましい。中でも25%以上、更には30%以上、とりわけ35%以上、又は40%以上、又は45%以上、又は50%以上、又は55%以上、又は60%以上、特に65%以上とすることが好ましい。当該割合が一定以上であるとの用語には、段階(ii)前の組成物におけるでんぷん分解酵素活性(U/g)が0.0U/gであり、当該割合が無限大に発散する場合が含まれてもよい。また、段階(ii)前の組成物におけるでんぷん分解酵素活性(U/g)が0.0超の値の場合において、当該割合の上限は特に制限されず、例えば通常100%以下、又は95%以下とすることができる。
・原料のPDI:
また、本発明の組成物として、本段階(i)における生地組成物の原料として、PDI値が所定値より低くなるように加工されたタンパク質又はこれを含む食用植物(例えば豆類)を用いることが好ましい。具体的には、生地組成物の原料として用いられるタンパク質又はこれを含む食用植物(例えば豆類)のPDI値が、90質量%未満であることが好ましい。中でも85質量%未満、更には80質量%未満、とりわけ75質量%未満、又は70質量%未満、又は65質量%未満、又は60質量%未満、又は55質量%未満、又は50質量%未満、又は45質量%未満、又は40質量%未満、又は35質量%未満、又は30質量%未満、又は25質量%未満、又20質量%未満、又15質量%未満、特には10質量%未満であることが望ましい。一方、斯かる割合の下限は、特に制限されるものではないが、通常0質量%以上、更には2質量%以上、中でも4質量%以上である。
なお、PDI(protein dispersibility index)値とは、タンパク質の溶解性を表す指標であり、定法に従い組成物全体の全窒素割合に対する水溶性窒素割合の百分率(水溶性窒素割合/組成物全体の全窒素割合×100(%))として求めることができる。具体的には、測定試料に20倍量の水を加え、粉砕処理(マイクロテックニチオン社製ホモジナイザーNS-310E3を用いて8500rpmで10分間破砕処理する)し、得られた破砕処理液の全窒素割合に20を乗じた値を組成物全体の全窒素割合として測定する。次に破砕処理液を遠心分離(3000Gで10分間)し、得られた上清の全窒素割合に20を乗じた値を水溶性窒素割合として測定することで、組成物におけるPDI値を算出することができる。全窒素割合の測定方法は、食品表示法(「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号))に規定された燃焼法(改良デュマ法)を用いて測定する。
また、前述された組成物中の総タンパク質含量に対する、食用植物(例えば豆類)に含有された状態で配合されたタンパク質含量の比率が所定値以上であり、かつPDI値が所定値以下であることで、組成物の食感改善効果が更に顕著に奏されるため、より好ましい。PDI値が低いタンパク質、食用植物(例えば豆類)に含有された状態のタンパク質を得るための加工方法としては、乾燥基準含水率30質量%以上の環境下において所定の温度以上で加熱処理を行うことが好ましい。具体的には、80℃以上であることが好ましい。中でも90℃以上、更には100℃以上、特に110℃以上であることが望ましい。一方、斯かる温度の上限は、特に制限されるものではないが、通常200℃未満である。加熱時間についてはPDI値が所定値に調整されるまで任意で設定できるが、通常0.1分以上である。
・原料の不溶性食物繊維の粒子径:
また、生地組成物の原料として食用植物(例えば豆類)を用いる場合、混練処理では不溶性食物繊維の形状は大きく変化しないため、斯かる食用植物(例えば豆類)に由来する不溶性食物繊維は、所定のサイズを有することが好ましい。ここで、通常漫然と破砕された豆類粉末における不溶性食物繊維サイズは450μm超となる蓋然性が高い(豆類に含有される不溶性食物繊維の形状は通常棒状であり、本発明のレーザー回折式粒度分布測定では大きめの値が得られるため。)。従って、本発明に用いる食材(特に種皮付きの豆類など、硬質組織を含有する食材)に含まれる不溶性食物繊維は、予め特定の破砕処理を行い、そのサイズが特定範囲となっているものを用いることが好ましい。具体的には、組成物に含まれる不溶性食物繊維について前述したのと同様、食用植物(例えば豆類)の水懸濁液をプロテアーゼ及びアミラーゼ処理し、でんぷんとタンパク質を酵素によって分解したでんぷん・タンパク質分解処理後組成物について、超音波処理を加えた後の粒子径分布を測定する方法を用いる。具体的には、食用植物の粉末の6質量%の水懸濁液を、0.4容量%のプロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼにより20℃で3日間処理する(前記[手順b])ことによりでんぷん・タンパク質分解処理を実施した後、得られた処理物に超音波処理を加えてから粒子径分布を測定し、粒子径(d90及び/又はd50)すればよい。こうした処理によって、食用植物の構成成分のうちでんぷん及びタンパク質が分解され、得られる分解物の粒子径分布は、不溶性食物繊維を主体とする構造の粒子径分布を反映しているものと考えられる。
具体的に、前記手順で得られた食用植物(例えば豆類)中の不溶性食物繊維の粒子径d90は、450μm以下であることが好ましく、400μm以下であることが更に好ましく、350μm以下であることが更に好ましく、300μm以下であることが更に好ましく、250μm以下であることが更に好ましく、200μm以下であることが更に好ましく、150μm以下であることが更に好ましく、100μm以下であることが更に好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、60μm以下であることが更に好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。また同様に、前記手順で得られた食用植物(例えば豆類)中の不溶性食物繊維の粒子径d50は、450μm以下であることが好ましく、400μm以下であることが更に好ましく、350μm以下であることが更に好ましく、300μm以下であることが更に好ましく、250μm以下であることが更に好ましく、200μm以下であることが更に好ましく、150μm以下であることが更に好ましく、100μm以下であることが更に好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、60μm以下であることが更に好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。食用植物に含まれる不溶性食物繊維の粒子径d90及び/又は粒子径d50が前記範囲を超えると、本発明の効果が奏されにくくなる場合がある。この理由は定かではないが、粗大な不溶性食物繊維がでんぷん等のマトリクス構造形成を阻害し、本発明の効果が奏されにくくなるためと考えられる。一方、食用植物に含まれる不溶性食物繊維の斯かる粒子径d90及び/又は粒子径d50の下限は、特に制限されるものではないが、通常1μm以上、より好ましくは3μm以上であることが好ましい。
・原料のCFW被染色部位:
また、生地組成物の原料として食用植物(例えば豆類)を用いる場合、混練処理では食物繊維形状は大きく変化しないため、斯かる食用植物(例えば豆類)に含まれる不溶性食物繊維は、所定の形状を有することが好ましい。具体的には、組成物に含まれる不溶性食物繊維について前述したのと同様、食用植物(例えば豆類)の水懸濁液をプロテアーゼ及びアミラーゼ処理し、でんぷん及びタンパク質を酵素分解したでんぷん・タンパク質分解処理物(具体的には、前記[手順b]によりでんぷん・タンパク質分解処理を施した処理物)をCFW(Calcofluor White)染色し、蛍光顕微鏡観察した場合に、CFW被染色部位の最長径平均値及び/又はアスペクト比平均値が、それぞれ所定値以下であることが好ましい。こうして得られたCFW被染色部位は、不溶性食物繊維主体の構造を有しているものと考えられる。具体的に、上記手順で測定された食用植物(例えば豆類)中のCFW被染色部位の最長径の算術平均値は、通常450μm以下、中でも400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は80μm以下、更には60μm以下、特に50μm以下であることが好ましい。斯かるCFW被染色部位の最長径の平均値が前記範囲を超えると、本発明の効果が奏されにくくなる場合がある。その理由は定かではないが、大きな最長径を有する不溶性食物繊維がでんぷん等のマトリクス構造形成を阻害し、本発明の効果が奏されにくくなるためと考えられる。一方、斯かるCFW被染色部位最長径の算術平均値の下限は、特に制限されるものではないが、通常2μm以上、より好ましくは3μm以上であることが好ましい。
また、後の段階(ii)の混練処理では食物繊維の形状は大きく変化しないため、不溶性食物繊維を含む食用植物(例えば豆類)としては、そこに含まれる不溶性食物繊維が一定以下のアスペクト比となるように加工された、粉末状のものを用いることが好ましい。ここで、通常漫然と破砕された食用植物(例えば豆類)粉末における不溶性食物繊維の前記CFW被染色部位のアスペクト比は5.0超の数値になる蓋然性が高い(特に、豆類に含有される不溶性食物繊維の形状は通常棒状であるため。)。また、食用植物(例えば豆類)粉末の風力選別などを行うと、特定形状の食用植物粉末が除去され、不溶性食物繊維のCFW被染色部位のアスペクト比が高すぎるか低すぎる蓋然性が高い。従って、食用植物(例えば豆類)粉末としては、予め特定の破砕処理を行い、不溶性食物繊維を表すCFW被染色部位のアスペクト比の算術平均値が特定範囲となっているものを用いることが好ましい。具体的には、上記手順で測定された食用植物(例えば豆類)粉末中のCFW被染色部位のアスペクト比の算術平均値が、通常5.0以下、中でも4.5以下、又は4.0以下、又は3.5以下、又は3.0以下、又は2.5以下、特に2.0以下であることが好ましい。斯かるCFW被染色部位のアスペクト比の平均値が前記範囲を超えると、本発明の効果が奏されにくくなる場合がある。その理由は定かではないが、大きなアスペクト比を有する不溶性食物繊維がでんぷん等のマトリクス構造形成を阻害し、本発明の効果が奏されにくくなるためと考えられる。一方、斯かるCFW被染色部位アスペクト比の算術平均値の下限は、特に制限されるものではないが、通常1.1以上であることが好ましく、1.3以上であることが更に好ましい。
なお、生地組成物の原料となる食用植物(例えば豆類)中の不溶性食物繊維に関する各種パラメーターの測定方法、即ち、アミラーゼ及びプロテアーゼ処理、超音波処理、粒子径分布(粒子径d90及びd50)測定、CFW染色、蛍光顕微鏡観察等の具体的な条件及び手順については、前述した組成物中の不溶性食物繊維に関する各種パラメーターの測定方法に準じて測定するものとする。
・原料の微細化・粉末化:
本発明において、生地組成物の原料として食用植物(例えば豆類)を用いる場合、斯かる食用植物は微細化・粉末化したものを用いることが好ましい。微細化・粉末化処理の手段や条件は特に限定されない。具体的に、微細化・粉末化処理時の温度は特に制限されないが、粉末が高温に曝されると、本発明の組成物の弾性が低下しやすくなるため、例えば200℃以下の温度で乾燥されることが好ましい。但し、食用植物として豆類を用いる場合、豆類の状態で加温した後に粉砕を行う方法であれば、熱負荷が軽減されるため、その温度は特に制限されない。また、微細化・粉末化処理時の圧力も制限されず、高圧粉砕、常圧粉砕、低圧粉砕の何れであってもよい。斯かる微細化処理のための装置の例としては、ブレンダー、ミキサー、ミル機、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機等の機器類が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、例えば、乾式ビーズミル、ボールミル(転動式、振動式等)等の媒体攪拌ミル、ジェットミル、高速回転型衝撃式ミル(ピンミル等)、ロールミル、ハンマーミル等を用いることができる。
・原料の加熱加水処理:
本発明において、生地組成物の原料として、でんぷん及び/又はタンパク質を含む食用植物(例えば豆類)を用いる場合、斯かる食用植物は、前処理として予め、水を含む条件で加熱されたものを用いてもよい。特に、乾量基準含水率が一定値以上の環境下で加熱(湿潤加熱)されたものを用いると、最終的な加熱調理用組成物中の構造が形成されやすくなる場合があるため好ましい。
具体的には、食用植物の加熱時の乾量基準含水率は、制限されるものではないが、通常25質量%以上、中でも30質量%以上、又は40質量%以上、特に50質量%以上とすることが好ましい。乾量基準含水率の上限は特に制限されないが、例えば通常は200質量%以下、中でも175質量%以下とすることができる。食用植物の加熱温度は、制限されるものではないが、通常80℃以上、中でも90℃以上、更には100℃以上とすることが好ましく、また、通常200℃以下、中でも190℃以下とすることが好ましい。
なお、本願発明では、でんぷんを含む食用植物及びタンパク質を含む食用植物を共に予め加水加熱してから用いることがより好ましく、でんぷん及びタンパク質を共に含む食用植物を加水加熱してから用いることが更に好ましい。なお、食用植物の加水加熱は、例えばスチーム加熱などによって加熱することができる)。
一方、特に粉末化(例えばd90及び/又はd50≦1000μm)されたでんぷん含有食用植物(例えば豆類)を予め加熱して用いる場合、乾量基準含水率が25%未満の乾燥環境下で加熱(例えば90℃以上)されたものを用いると、でんぷんが局所的に加熱されることで過加熱となり、その構造中のデンプンの熱分解が促進され、その構造中のアミロースが可溶化し、組成物がべたべたした品質となり好ましくない場合がある。
・生地組成物の粒子径
生地組成物全体の粒子径は、原料として好ましく用いられる前述の食用植物(例えば豆類)粉末と同様の大きさであることが好ましい。具体的には、生地組成物全体の粒子径を測定する場合には、組成物試料1cm四方程度の塊を80℃の粒子径分布時測定溶媒(例えばエタノール)50mlに浸漬し、5分程度静置し、その後、スパーテルで押しつぶしながらよく攪拌し、液中に懸濁させ、目開き2.36mm、線径(Wire Dia.)1.0mm8メッシュの篩を通過した溶液(単に懸濁液と称する場合がある)を測定に用い、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて超音波処理後の粒子径を測定する。超音波処理後の粒子径d90は、通常500μm以下が好ましく、中でも450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下がより好ましい。また、超音波処理後の粒子径d50は、通常500μm以下が好ましく、中でも450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下がより好ましい。d90及びd50の下限は特に制限されないが、何れも通常0.3μm以上、又は1μm以上である。
なお、本発明における「メッシュ」とは金網・篩・フィルター等の目の密度を表す単位であり、1インチあたりの網目の数を表す。すなわち、例えば「8メッシュパス」とは、目開き2.36ミリメートルの篩を通過する画分を意味する。具体的には、メッシュオンの針金の太さと目の間隔は、特に指定がない限りU.S.A. Standard Testing Sieves ASTM Specifications E 11-04にて規定されている数値(例えば8メッシュは、同文献中のNominal Dimensions, Permissible Variation for Wire Cloth of Standard Testing Sieves (U.S.A.) Standard Seriesにおける「Alternative」に規定された「No.8」と対応する)又はそれに準じた数値を採用することができる。
(3)段階(ii):高温条件での混練処理
前記段階(i)で得られた生地組成物を与圧条件下、所定の高温条件下で一定以上の強さで混練する。このように高温条件で強混練することで、組成物中の澱粉粒構造が適切に加水膨潤することで破壊されやすくなり、本発明の効果が奏される。特に、一定の高温加圧条件下で混練を行うことがより好ましい。
混練時の具体的な条件は、以下式Iで求められるSME(specific mechanical energy)値が所定値以上であることで、でんぷん粒が十分に破壊され、マトリクスとしての性質を発現するため好ましい。具体的には、当該SME値が通常350kJ/kg以上となる条件で混練を行う。中でも400kJ/kg以上、又は450kJ/kg以上、又は500kJ/kg以上、又は550kJ/kg以上、又は600kJ/kg以上、又は700kJ/kg以上、又は800kJ/kg以上となる条件で混練することが好ましい。また、押出機のスクリュー回転数を、通常150rpm超、中でも200rpm超、更には250rpm超とすることが好ましい。
Figure 0007089817000002
N:混練時スクリュー回転数(rpm)
max:最大スクリュー回転数(rpm)
τ:混練時トルク/最大トルク(%)
τempty:空回し時トルク/最大トルク(%)
Q:総質量流量(kg/時間)
max:撹拌機(例えば押出機)最大パワー(kW)
さらに、前述の混練を通常100℃以上、中でも110℃以上、更には120℃以上の高温下で行うことで、でんぷん粒構造が破壊されやすくなるため、さらに好ましい。ここで、押出機による前記高温且つ高SME値における処理が、バレル全長の3%以上(より好ましくは5%以上、さらに好ましくは8%以上、さらに好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上)で行われることが好ましい。特に、豆類及び種実類に由来するでんぷん粒構造はその構造がより強固であるため、前記した高温かつ高SME値における処理はより有用である。また、本段階における温度の上限は、通常200℃以下である。中でも190℃以下、又は180℃以下、又は170℃以下が好ましい。本段階における温度が前記上限を超えると、押出機のダイ部からの組成物の押出時の温度が十分に低下しない虞がある。
さらに、上記混練を与圧条件下、即ち、大気圧に対する加圧条件下で行う。混練を通常よりも高い圧力を印加する条件で行うことで、本発明の被染色部位構造が発達しやすくなるため、より好ましい。混練時圧力は、押出機の出口圧力を測定することで測定することができる。混練時に大気圧に対して印加すべき圧力の下限は、通常0.01MPa以上、好ましくは0.03MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、更に好ましくは0.1MPa以上、更に好ましくは0.2MPa以上、更に好ましくは0.3MPa以上、0.5MPa以上、更に好ましくは1.0MPa以上、更に好ましくは2.0MPa以上、更に好ましくは3.0MPa以上である。一方、混練時に大気圧に対して印加される圧力の上限は、特に制限はないが、例えば50MPa以下とすることができる。また、混練部先端側終点付近(好ましくは混練部先端側終点直後)にフロー遅滞構造を設置することで、混練部における圧力を高めることができるため好ましい。
混練の時間は、混練の温度及び圧力、混練容器の大きさ等から適宜定めればよい。特に、組成物に印加される熱量は、主に用いられる装置の特性によって大きく異なることから、処理前後の組成物の物性が所定の範囲に調整されるように加工することが好ましい。但し、一般的には、混練時間の下限は例えば通常0.1分間以上、中でも0.2分間以上、更には0.3分間以上、又は0.4分間以上、又は0.5分間以上、又は0.8分以上、又は1分間以上、特に2分間以上とすることが好ましい。混練時間の上限は、制限されるものではないが、効率の観点からは、例えば通常60分間以内、中でも30分間以内、更には15分間以内とすることが好ましい。
生地組成物をこのような過酷な高温高圧条件下で混練処理することにより、タンパク質、でんぷん、不溶性食物繊維等が複合構造を形成することや、組成物の食感が改善されること、更には組成物の不溶性成分や可溶性成分の流出が抑えられることは、従来は全く知られていなかった驚くべき知見である。
段階(ii)の混練処理は、組成物中のでんぷん粒構造の数が所定値以下となるまで実施することが好ましい。その原理は不明であるが、でんぷん粒構造が破壊された状態で、後述する高温高圧強混練条件下で組成物を加工することで、でんぷんがマトリクス状に組成物全体に拡散し、でんぷん中のアミロペクチンが保水時弾性を発現しやすい構造となると考えられる。具体的には、組成物は下記(a)及び/又は(b)を充足するまで混練処理を実施することが好ましく、(a)と(b)を共に充足するまで混練処理を実施することがさらに好ましい。また、段階(iii)の減圧後における組成物が下記(a)及び/又は(b)を充足することが好ましく、(a)と(b)を共に充足することがさらに好ましい。
(a)組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、300個/mm2以下となる。
(b)ラピッドビスコアナライザを用いて14質量%の組成物粉砕物水スラリーを50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が120℃未満となる。
前記(a)については、段階(ii)の混練処理により、前記条件下で観察された組成物中のでんぷん粒構造の数が、通常300個/mm2以下、中でも250個/mm2以下、更には200個/mm2以下、とりわけ150個/mm2以下、又は100個/mm2以下、又は50個/mm2以下、又は30個/mm2以下、又は10個/mm2以下、特に0個/mm2となることが好ましい。なお、当該でんぷん粒構造の詳細は、本発明の組成物との関連で先に詳述したとおりである。
前記(b)については、段階(ii)の混練処理により、前記条件下で測定された組成物の糊化ピーク温度が、通常120℃未満、中でも115℃未満となることが好ましい。なお、当該糊化ピーク温度の詳細は、本発明の組成物との関連で先に詳述したとおりである。
段階(ii)の混練後の組成物中のでんぷん糊化度は、所定値以上であることが、加熱調理時の形状崩壊を抑制する観点から好ましい。具体的に、段階(ii)の混練後の組成物中のでんぷん糊化度は、通常30質量%以上、中でも40質量%以上、更には50質量%以上、とりわけ60質量%以上、特に70質量%以上であることが好ましい。糊化度の上限は特に制限されないが、あまりに高すぎるとでんぷんが分解し、組成物がべたべたした好ましくない品質となる場合がある。よって、糊化度の上限は99質量%以下、中でも95質量%以下、更には90質量%以下であることが好ましい。
(4)段階(iii):減圧処理
本段階では、前記段階(ii)の混練後の組成物を、前記混練部における与圧状態から、ベント部において大気圧以下まで減圧する。このように、ベント部により急激に圧力を低下させることにより、でんぷん粒構造が崩壊した状態の組成物を発熱しにくいように均質化することで、でんぷんのマトリクス構造を形成させつつ、その直後に第2フライト部及び/又はダイ部(前記第1の態様の押出機の場合)やダイ部・ベント部(前記第2の態様の押出機の場合)で急速な冷却を行うことで、組成物表面付近のでんぷんを局所的に老化させることが可能となる。また、ベント部は、大気圧下に開放されることでバレル内部を大気圧まで減圧する構造であってもよいが、当該ベント部に強制排気機構を有することで、組成物における水分の一部を強制的に揮発させ、組成物を速やかに降温させつつ、マトリクス構造中の気泡を除去することでより強固なマトリクス構造を形成することができるためより好ましい。強制排気に際して採用することができる機構については前述と同様である。
また、混練部において高温となった組成物をそのまま降温せずにベント部において減圧すると、組成物中の水分が急激に蒸発して組成物が膨化し、でんぷんマトリクス構造が崩れるため好ましくない。従って、高温条件での混練処理後、組成物が膨化しないように、組成物温度を通常110℃未満、中でも105℃未満、更には102℃未満、特に100℃未満まで降温させてからベント部にて減圧することが好ましい。その下限は特に制限されないが、組成物温度が低すぎると組成物が硬化する場合があるため、組成物温度が10℃以上、又は15℃以上、又は20℃以上であることが好ましい。また、ベント部とダイ部が一体的に設けられる態様(すなわちダイ部において組成物を大気圧下に開放することでベント部としての役割を兼ね備える構造を採用する場合)においては、そのダイ部(兼ベント部)における組成物温度が低すぎると組成物が硬化して生産性が低下する場合があるため、組成物温度が一定温度以上であることが好ましい。具体的にはその温度下限は通常30℃以上、中でも35℃以上、更には40℃以上、特に45℃以上、又は50℃以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが95℃未満、又は90℃未満である。
また、前記降温処理を一定の加圧条件下で行うことが好ましい。この場合、降温時の加圧条件は、組成物の膨化を防止できれば特に制限されないが、混練処理時の圧力と同様であることが好ましい。具体的には、降温時に印加すべき圧力(大気圧に加えて更に印加される圧力)の下限は、通常0.01MPa以上、好ましくは0.03MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、更に好ましくは0.1MPa以上、更に好ましくは0.2MPa以上、更に好ましくは0.3MPa以上である。一方、降温時に印加すべき圧力の上限は、限定されるものではないが、例えば50MPa以下とすることができる。
また、ベント部とダイ部が一体的に設けられる前記第2の態様(すなわちダイ部において組成物を大気圧下に開放することでベント部としての役割を兼ね備える構造)を採用する場合においては、ベント部における組成物漏出などを想定する必要がなくその内圧を相対的に高めることができるため、相対的にベント部における圧力を低下幅が増大し、でんぷん粒構造が崩壊する効果が得られやすくなるため好ましい。具体的にはそのダイ部における印加すべき圧力(大気圧に加えて更に印加される圧力)の下限は、通常0.1MPa以上、好ましくは0.15MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上、更に好ましくは0.25MPa以上、更に好ましくは0.3MPa以上、更に好ましくは0.4MPa以上である。一方、その圧力の上限は、限定されるものではないが、例えば50MPa以下とすることができる。
また、段階(iii)以降の組成物を、コンベアに載置して搬送してもよい。この場合、コンベアの種類としては制限されないが、載置面の一部又は全部が通風性(好ましくは通風性及び通水・通液性)を有するメッシュ状のコンベアであることが好ましい。斯かるメッシュ状のコンベアを採用することにより、搬送中の組成物に対して、後述の保水処理、水分量調整処理、乾燥処理等の種々の処理を施すことが容易になる。なお、メッシュ状コンベアを使用する場合のこれらの処理の詳細については後述する。
(5)段階(iv):老化処理
また、前記段階(iii)と並行して、又は前記段階(iii)の後に、前記段階(ii)の混練後の組成物の糊化度を一定以上低下させる段階を有することで、組成物表面付近のでんぷんを局所的に老化させることが可能となり、よりマット感が強い組成物となるため好ましい。本発明ではこの段階を「老化処理」の段階という場合がある。
具体的には、本段階(iv)における組成物の糊化度の低下差分は、段階(ii)の混練後の組成物の糊化度に対して通常6質量%以上である(すなわち、糊化度が6質量%以上低下するまで老化処理を実施する)。中でも7質量%以上、又は8質量%以上、又は9質量%以上、中でも10質量%以上低下させることが好ましい。一方、本段階(iv)における組成物の糊化度の低下率の上限は特に制限されないが、通常50質量%以下である。
段階(iv)の糊化度低下後の組成物中のでんぷん糊化度は、所定値以下であることが、組成物表面付近のでんぷんが局所的に老化した、よりマット感が強い組成物であることを反映しているので好ましい。具体的に、段階(iv)の糊化度低下後の組成物中のでんぷん糊化度は、通常90質量%以下、中でも85質量%以下、更には80質量%以下、又は75質量%以下、又は70質量%以下であることが好ましい。下限は特に規定されないが、通常10質量%以上、中でも20質量%以上、更には30質量%以上、とりわけ40質量%以上、特に50質量%以上であることが好ましい。
斯かる段階(iv)の老化を達成する手段は特に限定されないが、例えば、押出機の混練部以降の構成、即ちベント部、第2フライト部(前記第1の態様の場合)、及びダイ部における処理に伴って、或いは押出機による処理の完了後に後処理として、後述する保水処理を行うことで、組成物表面付近のでんぷんを老化させ、段階(iv)の老化を達成することができる。具体的には、前記段階(ii)以降で、組成物温度が90℃未満(当該温度下限は特に制限されないが、通常0℃超、又は4℃超である。)に低下してから、乾量基準含水率25質量%以上の状態で通常0.1時間以上、中でも0.2時間以上、更には0.3時間以上、又は0.4時間以上、又は0.5時間以上、又は0.6時間以上、又は0.7時間以上、又は0.8時間以上、又は0.9時間以上、特に1.0時間以上に調節することができる。斯かる時間の上限は特に限定されないが、例えば通常20時間以下、更には15時間以下とすることができる。
或いは、押出機内部の段階(iii)以降の工程で段階(iv)が充足されてもよく、押出機から押し出された以降の工程で段階(iv)が充足されてもよく、押出機内部と外部における処理とが合わさった一連の工程で段階(iv)が充足されてもよい。
斯かる段階(iv)における組成物の温度は、限定されるものではないが、通常90℃以下、中でも80℃以下、更には70℃以下、特に60℃以下とすることが好ましい。下限は特に限定されないが0℃超、又は4℃超である。また、段階(iv)における圧力も特に限定されないが、例えば常圧下で行うことができる。
(6)組成物の水分量の調整について
なお、前記の老化を促進するための手段の一例として、前記(i)~(iii)の何れかの段階において水分を添加し、加工前の生地組成物の乾量基準含水率を所定割合以上に調整する方法を用いることができる。具体的には、組成物の乾量基準含水率を、通常25質量%超、中でも30質量%超、又は35質量%超、又は40質量%超、又は45質量%超、又は50質量%超、又は55質量%超、又は60質量%超、又は65質量%超、又は70質量%超、又は75質量%超、特に80質量%超とすることが好ましい。組成物の乾量基準含水率の上限は、特に制限されないが、例えば通常200質量%以下、又は175質量%以下、又は150質量%以下とすることができる。
具体的には、(i)又は(ii)の段階で加水を行う方法が好ましく、より好ましくは段階(i)で一定以上の乾量基準含水率(具体的には25質量%超、中でも30質量%超、更には35質量%超、とりわけ40質量%超、又は45質量%超、又は50質量%超、又は55質量%超、又は60質量%超、又は65質量%超、又は70質量%超、又は75質量%超、特に80質量%超。上限は特に制限されないが通常200質量%以下、又は175質量%以下、又は150質量%以下)となった生地組成物に対して、段階(i)以降、より具体的には段階(ii)及び/又は段階(iii)でさらにその製造中に配合する水分の残部を加水する態様が好ましく、前記段階(i)の生地組成物の調製時にその製造中に配合する水分の所定割合以上について加水を行う方法が好ましい。
より具体的には、製造中に配合する水分のうち通常50%以上、中でも60%以上、更には70%以上、又は80%以上、又は90%以上、特に100%を他原料と混合することが好ましい。加水は水の状態でもスチームの状態でも行うことができるが、水の状態で添加することが好ましい。更に、斯かる加水を行う態様には、フィーダから投入された原材料に第1フライト部で加水を行うことで段階(i)の組成物を押出機内で調製し、その後段階(ii)を行う態様も含まれるが、前記段階(i)の生地組成物の調製時にその製造中に配合する水分の所定割合以上(例えば60%以上、更には70%以上、又は80%以上、又は90%以上、特に100%。上限は特に制限されないが100%以下)について加水を行う方法が好ましい。さらに、フィーダから投入される原材料が乾量基準含水率25質量%未満となる程度に任意で加水を行い、その後バレルに設けられた注水機構からその製造中に配合する水分の残部(又は全部)を注水することで段階(i)の組成物を押出機内で調製し 、その後連続的に段階(ii)を行う態様を採用することもできる。なお、そのような態様を採用する場合、組成物が気泡を含有しやすくなる場合があるため、ダイ部以前のいずれかの段階で脱気を行うことが好ましく、具体的にはフィーダ部の脱気機構において脱気を行う及び/又は前記ベント部において脱気を行うことが好ましい。また、押出機のバレルに設けられた注水機構からその製造中に配合する水分を注水する機構を採用する場合、二軸押出機を使用することが好ましい。
さらに、その製造中に配合する水分の所定割合以上を、押出機内温度が所定温度以上となる前に他原料と混合することで、でんぷんが過加熱によってその特性が変化することを抑制できる場合があるため好ましい。具体的には所定割合以上の水分を他原料と混合する際の温度が90℃以上となる前であることが好ましく、85℃以上となる前であることがさらに好ましく、80℃以上となる前であることがより好ましい。押出機内が所定温度以上となる前に他原料と混合する水分の割合は、製造中に配合する水分のうち通常50%以上、中でも60%以上、更には70%以上、又は80%以上、又は90%以上、特に100%を他原料と混合することが好ましい。水分を他原料と混合する場合、原料を押出機に投入する前に、予め前記割合の水分を混合しておくことが好ましい。特に押出機内が80℃以上となる前に、製造中に配合する水分の60%以上を他原料と混合することが好ましい。さらに、押出機内が外気温から20℃以上加温される前に、製造中に配合する水分(特に段階(i)及び段階(ii)において配合される水分)の60質量%以上を他原料と混合することが好ましい。
一般に、単にでんぷんの糊化を行う目的のみであれば、生地組成物における乾量基準含水率は、40質量%以下程度で十分である。その後の乾燥工程を考慮すると、それ以上の加水を行うことは、動機が存在しないどころか、むしろ阻害的な要因が存在すると言える。よって本段階(iv)のように、いったん糊化させたでんぷんを老化させるという思想を有さなければ、生地組成物における乾量基準含水率を高めるという着想は困難である。更に、単に生地組成物における乾量基準含水率を高めた場合であっても、その後に組成物中の水分を乾燥させるという思想とは逆の、本段階(iv)のような水分を保持するという思想が無ければ、前述したような、特に段階(iii)以降で、組成物の温度が80℃未満に低下してから、組成物の乾量基準含水率が25%未満となるまでに要する時間を所定値以上確保するという構成を採用することはできないと考えられる。
このように組成物の水分量を調整するための具体的な手段としては、制限されるものではないが、前記段階(i)の生地組成物の調製時に加水を行う方法が好ましい。加水は水の状態でもスチームの状態でも行うことができるが、水の状態で添加することが好ましい。更に、押出機を用いる場合は、その製造中に配合する水分の所定割合以上を、押出機内が20℃以上加温される前に他原料と混合することで、でんぷんが過加熱によってその特性が変化することを抑制できる場合があるため好ましい。具体的に、押出機内が20℃以上加温される前の段階で、製造中に配合する水分のうち通常50%以上、中でも60%以上、更には70%以上、又は80%以上、又は90%以上、特に100%を他原料と混合することが好ましい。水分を他原料と混合する場合、原料を押出機に投入する前に、予め前記割合の水分を混合しておくことが好ましい。
また、前記段階(iii)以降の段階で、第2フライト部及び/又は押出後の組成物に対して加水を行い、組成物が乾量基準含水率25質量%に到達するまでの時間を所定時間より長くする方法も用いることができる。加水は、水の状態でもスチームの状態でも行うことができるが、水の状態で添加することが好ましく、例えばミスト状態の水分を噴霧する方法で添加することで、製造工程における水分使用量を低減しつつ品質の良い組成物とできるため好ましい。また、組成物を直接水中に投入することで、組成物の吸水によって加水する方法でも行うことができる。
更に、段階(iii)以降の段階で(特にエクストルーダーを採用する場合は、押出後の組成物に対して)加水を行った組成物に対して、当該水分を加水後速やかに揮発させる方法を採用することで、気化熱によって組成物温度を速やかに低下させることができるため好ましい。特に揮発後の組成物における乾量基準含水率が25質量%を下回らないように調製しながら当該処理を行うことが好ましい。より具体的には、例えば前述のように、載置面の一部又は全部が通風性(好ましくは通風性及び通水・通液性)を有するメッシュ状のコンベアを用いて段階(iii)以降の組成物を搬送すると共に、コンベア上に載置される前後(すなわち搬送前又は搬送中)の組成物に対して加水を行う工程を有することによって、保水処理を施す態様が挙げられる。これにより、組成物の搬送と前記処理を同時に行うことができるため好ましい。またコンベア搬送後の組成物に対してミスト上の水分を噴霧するなどの方法で保水処理を行う態様であってもよい。
斯かる保水処理の一態様としては、エクストルーダーによる押出後の組成物をコンベア上に載置し、コンベアごと組成物を水に浸漬させ(即ち、コンベアの搬送過程において一時的に水槽に浸入する工程を設ける)、その後は任意でコンベア搬送しながら組成物に送風する態様が挙げられる。また、保水処理の別態様としては、コンベア上に載置される前後いずれかの段階でエクストルーダーによる押出後の組成物に対してミスト状態の水分を噴霧し、コンベア上に組成物を載置し、任意でコンベア搬送しながら組成物に送風する態様が挙げられる。いずれの場合であっても、当該コンベア載置面の一部又は全部を通風性(例えばメッシュに垂直方向から送風した場合に、送風量の1%以上、又は3%以上が透過する)を有するメッシュ状構造とすることにより、加水された水分が搬送中に揮発しやすくなり、気化熱によって効率的に組成物温度を低下させることができ、乾量基準含水率25質量%に到達するまでの時間を調整できるため好ましく、特にコンベア搬送しながら組成物に送風する態様においては、メッシュ状コンベアの上部及び/又は下部から送風することが好ましい。メッシュ状構造の目開きは特に限定されないが、具体的には、例えば平均目開き面積が1mm2以上(具体的には1mm×1mm以上)、又は3mm2以上(具体的には3mm×1mm以上)、又は10mm2以上(具体的には5mm×2mm以上)であることが好ましい。一方、平均目開き面積の上限は特に制限されないが、例えば2500mm2以下(具体的には50mm×50mm以下)、又は1500mm2以下(具体的には50mm×30mm以下)、又は500mm2以下(具体的には20mm×25mm以下)とすることができる。
また、メッシュ状コンベアの上部及び/又は下部から送風する送風処理前後において、糊化度が所定割合以上低下する(すなわち、「処理前の組成物糊化度-処理後の組成物糊化度」によって算出される糊化度低下差分が一定以上である)ことが好ましい。具体的にはその糊化度低下差分が1質量%以上、中でも2質量%以上、更には3質量%以上、とりわけ4質量%以上、又は5質量%以上、特に6質量%以上低下するまで保水処理を行う(すなわちメッシュ状コンベアにて段階(iv)を行う)ことが好ましい。上限は特に制限されないが通常50質量%以下である。
さらに、組成物の乾量基準含水率がいったん25質量%未満となった場合であっても、乾燥組成物に再加水して乾量基準含水率を高めることで、乾量基準含水率25%以上の時間の合計が所定の時間以上となるように調整することで保水処理を行うことができる。乾燥組成物に再加水する場合には、その後の保持時間の過半の温度が60℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがさらに好ましく、40℃以下であることがより好ましい。
また、前記段階(iii)以降の段階で、押出機による押出後の組成物に対して周辺湿度を高め、乾量基準含水率25質量%に到達するまでの時間を所定時間より長くする方法も用いることで、特に通常すみやかに水分が失われ組成物内部と比較して老化しにくい組成物表面付近のでんぷんが局所的に老化し、麺をはじめとする複数の組成物をまとめて喫食する組成物とした場合に、組成物同士が結着しにくく食べやすい組成物となるため好ましい。具体的にはダイ部から押し出された後の組成物を高湿度環境(例えば50RH%超)に保管したり、霧状の水を噴霧したりするなどの処理(湿潤処理とも称する)を施して、所定の糊化度低下を達成する方法を採用することができる。
湿潤処理は、湿度を一定にした密閉装置内で処理を行っても、湿度を一定にした雰囲気を供給する装置で処理を行ってもよく、また組成物中から蒸発する水蒸気を組成物周辺に保持することによって相対湿度を保つことで湿潤処理を行う方法を用いてもよく、これらの方法を組み合わせて用いてもよい。
また、組成物の水分含量を低下させる場合、水分含量の低下前に湿潤処理を行ってもよく、水分含量の低下とともに湿潤処理を行ってもよく、水分含量の低下後に湿潤処理を行ってもよい。なお、水分含量低下前に湿潤処理を行う方が本発明の効果がより顕著に奏されるため好ましい。
前記段階(iii)後の組成物に対する湿潤処理は、組成物中の乾量基準含水率水分含量が、例えば通常25質量%以上、中でも25質量%超、更には30質量%以上、又は30質量%超、又は35質量%超、又は40質量%超となるような条件下で行うことが好ましい。上限は特に制限されないが、通常200質量%以下、又は175質量%以下、又は150質量%以下である。
また、前記段階(iii)後の組成物に対する湿潤処理は、パラメーターA×T(RH%・hr)が所定下限値以上となるような条件下で湿潤処理を行うことが好ましい。ここでAは、雰囲気の相対湿度(RH%)を示し、Tは、湿潤処理時間(hr)を示す。但し、A>50RH%である。例えば、雰囲気の相対湿度が95RH%(A)、湿潤処理時間が1時間(T)で湿潤処理を行った場合、パラメーターA×T=95(RH%・hr)となる。斯かるパラメーターA×T(RH%・hr)は、通常40以上、中でも50以上、更には60以上、又は70以上、又は80以上、特に90以上であることが更に好ましい。
湿潤処理時の温度は特に限定されないが、通常組成物の老化を促進する観点から一定以下の温度で処理を行うことが好ましい。具体的には50℃以下が好ましく、中でも40℃以下、又は30℃以下、又は20℃以下、又は10℃以下で行うことが好ましい。当該温度下限は特に限定されないが、通常0℃以上、又は4℃以上で処理を行うことが好ましい。
特に、段階(iii)において、押出機(より具体的には第2フライト部)の内部温度を所定温度未満に低下させることで、押出機内部から押し出した後の組成物が乾量基準含水率25%未満となるまでの時間を所定時間以上に保持するという方法を用いることもできる。この場合、押出機(より具体的には第2フライト部)の内部温度を、通常100℃未満、中でも95℃未満、更には90℃未満、又は85℃未満、又は80℃未満、又は75℃未満、又は70℃未満、又は65℃未満、又は60℃未満、又は55℃未満、又は50℃未満、又は45℃未満、又は40℃未満に低減することが好ましい。当該温度の下限は特に限定されないが、例えば0℃超、又は4℃超とすることができる。これにより、押出機内部から押し出した後の組成物が乾量基準含水率25%未満となるまでの時間を、好ましくは通常0.1時間以上、中でも0.2時間以上、更には0.3時間以上、又は0.4時間以上、又は0.5時間以上、又は0.6時間以上、又は0.7時間以上、又は0.8時間以上、又は0.9時間以上、特に1.0時間以上に調節することができる。斯かる時間の上限は特に限定されないが、例えば通常20時間以下、更には15時間以下とすることができる。
(7)押出機
本発明の製造方法では、以上の段階のうち少なくとも段階(ii)及び(iii)、更に任意により段階(i)及び/又は段階(iv)の一部又は全部を、前述した本発明の特定の押出機(より好ましくは一軸押出機)を用いて行うことが好ましい。
即ち、本発明の押出機に対して、フィーダを介して本発明の組成物の原料を供給し、混合することにより、不溶性食物繊維の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、でんぷんの含有量が湿潤質量換算で10.0質量%以上、タンパク質の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、乾量基準含水率が25%以上の組成物が調製される(段階(i))。但し、斯かる原料の混合による組成物の調製を、本発明の押出機の外部で行った上で、調製された組成物をフィーダを介して本発明の押出機に供給し、段階(ii)及び(iii)のみを本発明の製造方法で実施してもよい。
次いで、前記の組成物を、スクリューを回転させることにより第1フライト部から混練部へと搬送しつつ、バレルをヒーターで加熱することにより所定の温度に調製しながら混練する。これにより、前記の組成物が、第1フライト部から混練部にかけて10℃以上加温されると共に、混練部において与圧条件下、温度100℃以上200℃以下の条件下で、SME値350kJ/kg以上で混練される(段階(ii))。
次いで、特に前記第1の態様の押出機を用いる場合は、前記の組成物を、スクリューを回転させることにより混練部から第2フライト部へと搬送しつつ、第2フライト部の基部側のベント部で強制排気することで圧力を大気圧以下まで減圧し、老化を進めて組成物の糊化度を低下させる。これにより、前記の組成物が、混練部における与圧状態から、第2フライト部において大気圧以下まで減圧される(段階(iii))。さらに、前記組成物の糊化度が、混練部以降で所定比率以上低下される(段階(iv))。ここで、段階(iii)と段階(iv)はともに押出機内部で完了してもよく、段階(iii)以降の押出機内部における降温処理と、押出機外部における保水処理とを合わせて実施することで段階(iv)が完了してもよい。また、ベント部における強制排気及び/又はダイ部や(前記第1の態様の押出機の場合)第2フライト部のクーラーを起動させることで、ダイ部から排出される組成物温度を前記の所定の温度まで降温させることが好ましい。
(8)その他の条件設定について
本発明の製造方法では、押出機の総質量流量を一定以上に保ちつつ、押出機のダイ部の出口温度設定を低下させることで、組成物の糊化が促進されるためより好ましい。それらの条件は、押出機の出口圧力が一定以上となるように適宜調整すればよいが、具体例としては以下の通りである。
総質量流量(フロー量とも称する場合がある)は、限定されるものではないが、通常0.5kg/時間以上、中でも0.7kg/時間以上、更には1.0kg/時間以上となるように、維持することが好ましい。総質量流量の上限は特に制限されないが、通常100kg/時間以下、又は50kg/時間以下である。
押出機の出口温度設定は、限定されるものではないが、通常80℃未満、中でも75℃未満、更には70℃未満、又は65℃未満、又は60℃未満、又は55℃未満、又は50℃未満、又は45℃未満、特に40℃未満であることが好ましい。下限は特に制限されないが、通常0℃以上、又は4℃以上とすることができる。
また、段階(ii)における混練時の最高加熱温度と、ダイ部から排出される組成物の押出時温度との差分が、所定値以上であることが好ましい。具体的には、段階(ii)における混練時の最高加熱温度(押出機の混練部における最高加熱部位の温度)と、ダイ部から排出される組成物押出時温度との差分が、20℃以上であることが好ましく、中でも25℃以上、更には30℃以上であることがより好ましい。当該温度差分の上限は特に制限されないが、過度な冷却を行うと押出機内部で組成物が閉塞する可能性があるため、通常110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
なお、押出機は従来、パフを始めとする膨化物を製造するために用いられることが多かったが、それらの製造条件は、通常はダイ部から排出される組成物の押出時温度が、組成物の膨化温度を超える条件として設定されるため、本発明のような膨化を伴わない組成物の製造方法に適用することはできなかった。なぜなら、押出機の内部温度推移は連続的に起こるため、例えば混練時の昇温条件のみ採用して出口温度設定は適宜低温に調整しようとすると、出口温度設定を下げた影響で混練時の温度を始めとして内部温度全体が下がり、全く別の条件になってしまい、当業者が適宜なしうる調整ではなかったためである。また、パフをはじめとする膨化物の製造時には、減圧時に速やかに膨化をさせるためにその総質量流量中に占める水分の割合を低くすることが当業者の技術常識であり、本発明のような膨化を伴わない組成物のように総質量流量中に占める水分含量を高める動機は存在しなかった。
さらに、段階(iii)又は(iv)の段階の後に、組成物の乾量基準含水率を一定以下とする段階を更に含むことで、組成物中のでんぷん老化の進行が遅くなるか進行しなくなり、品質が良い組成物となるため好ましい。具体的に、最終的な組成物中の乾量基準含水率を60質量%未満、又は55質量%未満、中でも50質量%未満、又は45質量%未満、又は40質量%未満、又は35質量%未満、又は30質量%未満、又は25質量%未満、又は20質量%未満、又は15質量%未満とすることが好ましい。一方、本発明の組成物中の乾量基準含水率の下限は、制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、例えば0.5質量%以上、或いは1質量%以上、或いは2質量%以上とすることができる。
なお、本発明の組成物中の乾量基準含水率は、組成物の各種成分に由来するものであってもよいが、更に添加された水に由来するものであってもよい。特に、段階(iv)の段階の後に乾量基準含水率を25質量%未満とする段階を更に含むことで、段階(ii)で糊化したでんぷんのうち、表面付近のでんぷんが局所的に老化した組成物となり、麺をはじめとする複数の組成物をまとめて喫食する組成物とした場合に、組成物同士が結着しにくく食べやすい組成物となるため好ましい。
(9)後処理
以上の段階を経ることにより、本発明の組成物を得ることができるが、更に後処理を加えてもよい。後処理としては、例えば成型処理、乾燥処理等が挙げられる。乾燥処理については後述する。
成型処理としては、本発明の組成物(例えばでんぷん含有ペースト組成物)を所望の形態(例えば前述のパスタ、中華麺、うどん、稲庭うどん、きしめん、ほうとう、すいとん、ひやむぎ、素麺、蕎麦、蕎麦がき、ビーフン、フォー、冷麺の麺、春雨、オートミール、クスクス、きりたんぽ、トック、ぎょうざの皮等)に成型する処理等が挙げられる。斯かる成型処理は、当該技術分野において通常知られている方法を適宜採用することができる。例えば、パスタや中華麺等の麺のような細長状組成物とする場合、前述の押出機等の装置を用いて、組成物を細長形状に押し出し成形すればよい。一方、平板状の組成物とする場合、組成物を平板形状に成形すればよい。更には、組成物をプレス成型したり、平板形状に成形した組成物を切断又は型抜きしたりすることで、細長状、粒状、薄片状等の任意の形状の組成物を得ることもできる。また、混練後に、前述される流路断面の平均凹凸度が所定値以上のダイを用いて押出成形することで、断面凹凸度が所定地以上の組成物を成形してもよい。具体的には組成物断面の形状が円型、四角型、三角型、星型、楕円型、三日月型、半月型等、十字型、卍型やそれらの組み合わせ(例えば十字型の交差点に円の中心点を配置したギリシャ十字型と円型を組み合わせたケルト十字型の形状であって、円の直径が十字型の中心点から先端までの距離の3分2以下の半径を有する形状)が挙げられる。
(10)乾燥処理
さらに、段階(iv)の後に、組成物の乾量基準含水率を一定以下とする段階(乾燥処理段階)を更に含むことで、組成物中の品質変化が抑制され、品質が保持された組成物となるため好ましい。本発明ではこの段階を「乾燥処理」の段階という場合がある。具体的には、乾燥処理段階の前後で乾量基準含水率が5%以上低下する(すなわち、「(乾燥処理前の組成物における当該比率-乾燥処理後組成物における当該比率)/乾燥処理前の組成物における当該比率」で規定される低下割合が一定以上の数値となる)ことが好ましい。中でも10%以上、更には15%以上、とりわけ20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、又は45%以上、特に50%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下、又は95%以下とすることができる。特に、段階(iv)の老化処理段階の後に乾燥処理段階を更に含むことで、段階(iv)で形成された表面付近の老化でんぷんが乾燥処理時の組成物同士の結着が抑制し、生産性が高い組成物となるため好ましい。
また、乾燥処理後の最終的な組成物中の乾量基準含水率を60質量%未満、又は55質量%未満、中でも50質量%未満、又は45質量%未満、又は40質量%未満、又は35質量%未満、又は30質量%未満、又は25質量%未満、又は20質量%未満、又は15質量%未満とすることが好ましい。一方、本発明の組成物中の乾量基準含水率の下限は、制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、例えば0.5質量%以上、或いは1質量%以上、或いは2質量%以上とすることができる。なお、本発明の組成物中の乾量基準含水率は、組成物の各種成分に由来するものであってもよいが、更に添加された水に由来するものであってもよい。
斯かる乾燥処理中の組成物の温度は、限定されるものではないが、常圧下で処理を行う場合は通常50℃超、中でも60℃超、又は70℃超、特に80℃超とすることが好ましい。上限は特に限定されないが100℃未満、又は98℃未満である。
また、乾燥処理中における組成物温度を調整しながら緩慢に乾燥処理を行うことで、比較的短時間で組成物の乾量基準含水率を10質量%以下まで低下させつつ、乾燥処理後の組成物(組成物の乾量基準含水率が10質量%以下)にひび割れが起こりにくい品質の良い組成物となるため好ましい。具体的には、乾燥処理中における組成物温度から「乾燥時の任意の時点における組成物温度から求められる雰囲気相対湿度」を算出し、乾燥処理時間における平均相対湿度が一定割合以上となるように組成物温度調整することが好ましい。すなわち、組成物の乾量基準含水率が10質量%以下となるまでの乾燥処理中において組成物中の水分が比較的多い(例えば乾量基準含水率25質量%以上)場合において、飽和水蒸気量が上がりすぎない範囲で組成物温度を比較的高い温度に調整することで組成物水分の蒸発によって雰囲気中の絶対湿度を上げ、平均相対湿度を一定割合以上に調整することができる。また、組成物中の水分が比較的少ない(例えば乾量基準含水率25質量%未満)場合は、組成物温度を比較的低い温度に調整することで雰囲気の飽和水蒸気量を下げ、平均相対湿度を一定割合以上に調整することができる。より具体的には、組成物の乾量基準含水率が10質量%以下となるまでの乾燥処理中における平均相対湿度が通常50RH%以上、中でも55RH%以上、更には60RH%以上、又は65RH%以上、又は70RH%以上、又は75RH%以上、又は80RH%以上となるように乾燥処理を行うことが好ましい。また、組成物の乾量基準含水率25質量%以上の状態における平均相対湿度及び/又は組成物の乾量基準含水率25質量%未満10質量%以上における平均相対湿度のいずれか一方が一定割合以上(50RH%以上、中でも55RH%以上、更には60RH%以上、又は65RH%以上、又は70RH%以上、又は75RH%以上、又は80RH%以上)であることが好ましく、少なくとも組成物の乾量基準含水率25質量%以上の状態における平均相対湿度が一定割合以上であることが好ましく、ともに一定割合以上であることが特に好ましい。
さらに、乾燥処理開始から組成物の乾量基準含水率が10質量%に到達するまでの所要時間の前半40%以内(比較的組成物水分が高い時間帯。より好ましくは当該時間帯において例えば乾量基準含水率25質量%以上の時間帯)における平均相対湿度及び/又は乾燥処理開始から組成物の乾量基準含水率が10質量%に到達するまでの所要時間の後半60%(比較的組成物水分が低い時間帯。より好ましくは当該時間帯において例えば乾量基準含水率25質量%未満の時間帯)における平均相対湿度を一定割合以上に調整することで、乾燥処理後の組成物(組成物の乾量基準含水率が10質量%以下)にひび割れが起こりにくい品質の良い組成物となるため好ましく、どちらの時間帯においても平均相対湿度が一定割合以上であることが特に好ましい。具体的には乾燥処理開始前半40%以内における平均相対湿度及び/又は乾燥処理開始後半60%以内における平均相対湿度が50RH%以上、中でも55RH%以上、更には60RH%以上、又は65RH%以上、又は70RH%以上、又は75RH%以上、又は80RH%以上となるように乾燥処理を行うことが好ましい。
また、当該条件で乾燥処理を行う際に組成物温度を調整するためには食品の乾燥に用いられる任意の方法を用いることができるが、例えばエアドライを用いて組成物温度及び/又は雰囲気温度を調整することが好ましい。
また、乾燥処理段階における圧力も特に限定されないが、例えば常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。減圧下(例えば0.1MPa未満)で処理を行う場合、組成物の温度は80℃以下、中でも70℃以下、又は60℃以下、特に50℃以下とすることが好ましい。下限は特に限定されないが、通常0℃超、又は4℃超である。
乾燥方法としては、一般的に食品の乾燥に用いられる任意の方法を用いることができる。例としては、フリーズドライ、エアドライ(例えば通風乾燥(熱風乾燥)、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥、天日乾燥、陰干し等)、加圧乾燥、減圧乾燥、マイクロウェーブドライ、油熱乾燥等が挙げられる。中でも、食材が本来有する色調や風味の変化の程度が小さく、食品以外の香り(こげ臭等)を制御できるという点から、マイクロウェーブドライが好ましく、減圧下におけるマイクロウェーブドライがさらに好ましい。また、大量の組成物を処理する観点からはエアドライ(例えば熱風乾燥、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥、天日乾燥、陰干し等)が好ましく、特に通風乾燥(特に雰囲気温度が一定超の熱風乾燥)が好ましい。
また乾燥処理段階において、雰囲気温度が一定超の環境下において組成物を一定時間以上処理することで、乾量基準含水率が所定割合以上低下するまでの時間が短くなるため好ましい。具体的には雰囲気温度の下限は通常50℃超、中でも60℃超、更には70℃超、又は80℃超の環境下で処理することが好ましい。その上限は特に制限されないが、通常100℃以下である。雰囲気温度が一定超の環境下とするために、ダイ部から押し出された後の組成物を高温環境に保管したり、高温で押し出された組成物温度を保持することによって雰囲気温度を高めたり、高温の空気によって通風乾燥したりするなどの処理を施して、所定の雰囲気温度を達成する方法を採用することができる。
また、当該雰囲気温度における処理時間は一定時間以上であれば良いが、通常0.1時間以上、中でも0.2時間以上、又は0.3時間以上、又は0.4時間以上、又は0.5時間以上、又は0.6時間以上、又は0.7時間以上、又は0.8時間以上、又は0.9時間以上、特に1.0時間以上に調節することができる。斯かる時間の上限は特に限定されないが、例えば通常20時間以下、又は15時間以下とすることができる。
[III:加熱調理用でんぷん含有組成物の粉砕物及びその凝集体]
なお、本発明の組成物は、これを粉砕して用いてもよい。即ち、前述の本発明の製造方法において、前記段階(iii)の降温後、更に(v)前記組成物を粉砕し、粉砕組成物とする段階を設けてもよい。こうして得られる本発明の組成物の粉砕物(これを適宜「本発明の粉砕組成物」という。)も、本発明の対象となる。本発明の組成物を粉砕して本発明の粉砕組成物とする場合、その粉砕条件は特に制限されず任意であるが、例えば粒子径d50及び/又はd90が50μm以上1000μm以下程度となるように粉砕することが好ましい。
なお、本発明の粉砕組成物を製造する場合、本発明の組成物を粉砕することで、乾燥基準含水率が高い状態でも保形性を有する凝集体を製造することができる場合があるため好ましい。具体的に、本発明の好ましい態様によれば、乾燥基準含水率が例えば通常50質量%以上、中でも60質量%以上、更には70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%以上等の乾燥基準含水率が高い粉砕組成物凝集体であっても、保形性を有する凝集体とすることができる。上限は特に限定されないが500質量%以下、400質量%以下とすることができる。加水した凝集組成物を焼成したり、混練したりすることで、保水性に優れた凝集組成物とすることができる。
また、本発明の粉砕組成物を原料として、前記の本発明の製造方法による高温強混練処理を再度実施したり、適当量の水を加えて混練したりすることで、凝集体を形成してもよい。即ち、前述の本発明の製造方法において、前記段階(v)の粉砕後、更に(vi)前記粉砕組成物を凝集させて、粉砕組成物凝集体とする段階を設けてもよい。また、水分を15質量%超含有する本発明の粉砕組成物(特に段階(iii)以降における乾量基準含水率低下差分が10質量%以下の粉砕組成物を用いることが好ましい)を原料としてパスタプレスすることで凝集体を形成しても良く、より好ましくは70℃以上(又は80℃以上)に加熱しながらパスタプレスすることが好ましい。こうして得られる本発明の粉砕組成物の凝集体(これを適宜「本発明の粉砕組成物凝集体」という。)は、本発明の組成物として利用したり、本発明の段階(i)における原料として好適に利用できる。斯かる本発明の粉砕組成物凝集体も、本発明の対象となる。本発明の組成物を粉砕して本発明の粉砕組成物とする場合、その製造条件については、前述したとおりである。
さらに、粉砕組成物及び/又は粉砕組成物凝集体を一定割合原料として本発明の段階(i)における原料として使用することで、あらかじめ熱処理された原料として用いることができ、組成物同士の結着性が改善するため好ましい。即ち、前記段階(v)で得られた粉砕組成物及び/又は段階(vi)で得られた粉砕組成物凝集体を、乾燥質量換算で一定割合含むように段階(i)の組成物に配合してもよい。その下限は特に制限されないが、乾燥質量換算で通常5質量%以上、中でも10質量%以上、更には15質量%以上、特に20質量%以上である。その上限は特に制限されないが、通常100質量%以下、または90質量%以下である。
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
[でんぷん含有組成物の調製方法]
各実施例及び比較例のでんぷん含有組成物の試料は、所定の組成で調製した組成物を、所定の一軸押出機を用い、所定の条件下で稼動させて混練することにより糊化させ、更に後処理を行って老化させることにより製造した。タンパク質、でんぷんはそれぞれの食材に含有された状態のものを用い、比重の違いなどを利用して分離されたでんぷん、タンパク質高含有画分含量を用いて含量を調整した。
各実施例及び比較例の製造に使用した押出機の構成及び運転条件、並びに斯かる押出機を用いた処理内容を、後述の表1及び2の各欄に記す。また、各実施例及び比較例の製造原料となる組成物の組成を、後述の表3の各欄に記す。また、各実施例及び比較例におけるでんぷん含有組成物の製造過程(糊化及び老化の各工程)における物性及び特性、後述の表4の各欄に記す。また、得られたでんぷん含有組成物の官能評価結果を、後述の表5の各欄に記す。
なお、ベント部を有するバレルを用いた各実施例及び比較例のうち、実施例64、65以外では、バレル内にスクリューを配置した稼働時の状態において、ベント部が第2フライト部に対応する位置であって、第2フライト部の起点から5%以内の位置に配置されたバレル(図1に示された第1の態様)を用い、実施例64、65においては図3に示された第2の態様のバレルを用い、ダイ部に図5Bで示された変形例を用いた。また、何れの実施例及び比較例に使用したスクリューも、第1フライト部全長に対するフォワードフライト構造の比率、及び、第2フライト部全長に対するフォワードフライト構造の比率は、共に100%であった。
また、フロー遅滞構造を有する試験区では、第2フライト部先端側終点とダイ部との間の位置にフロー遅滞構造を配置し、フロー遅滞構造として溝穴付きスクリュー構造(フォワードフライト構造に対して斜め方向に連通された通路状構造を有し、当該通路状構造の回転軸に対する角度が螺旋角の50%)を採用した。
得られた各実施例及び比較例の加熱調理用でんぷん含有組成物並びにその原料の各試料について、下記の分析及び官能評価を行った。
[酵素(アミラーゼ・プロテアーゼ)処理]
各実施例及び比較例の加工前の原料組成物試料及び加工後の組成物試料それぞれ300mgを、5mLの水と共にプラスチックチューブに入れ、20℃で1時間程度膨潤させた後、小型ヒスコトロンで粥状の物性となるまで処理した(10000rpm、15秒程度)。その後、処理後試料2.5mLを分取し、プロテアーゼ(タカラバイオ社製、proteinase K)10μL、α-アミラーゼ(Sigma社製、α-Amylase from Bacillus subtilis)0.5mgを加え、20℃にて3日間反応させることにより、アミラーゼ及びプロテアーゼ処理を行った。
[酵素処理・超音波処理後粒子径d 50 測定]
以上の手順でアミラーゼ及びプロテアーゼ処理を施した各実施例及び比較例の加工前の原料組成物試料及び加工後の組成物試料に対して、レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、以下の条件に従って超音波処理を行ってから粒子径分布を測定した。測定時の溶媒としてはエタノールを用いた。レーザー回折式粒度分布測定装置としてはマイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EXIIシステムを用い、測定アプリケーションソフトウェアとしてはDMS2(Data Management System version2、マイクロトラック・ベル株式会社)を用いた。測定に際しては、同ソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトウェアのSet zeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングで試料濃度が適正範囲内に入るまで試料を直接投入した。その後、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して超音波処理を行い、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、濃度が依然として適正範囲であることを確認した。その後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折測定を行い、粒子径分布を得た。測定時のパラメーターとしては、例えば分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.36、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μmとした。得られた粒子径分布から、粒子径d50を算出した。
[でんぷん、タンパク質、不溶性食物繊維、乾量基準含水率]
「でんぷん」については、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、AOAC996.11の方法に従い、80%エタノール抽出処理により、測定値に影響する可溶性炭水化物(ぶどう糖、麦芽糖、マルトデキストリン等)を除去した方法で測定し、「タンパク質」については、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、改良デュマ法によって定量した窒素量に、「窒素-タンパク質換算係数」を乗じて算出する方法で測定し、「不溶性食物繊維」については、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、プロスキー変法で測定し、「乾量基準含水率」については、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、減圧加熱乾燥法で90℃に加温することで測定した。
[視野中のでんぷん粒構造の数]
組成物をミルで粉砕した目開き150μmパスの組成物粉末3mgを、水50μLに懸濁した組成物粉末6%水懸濁液を作製した。その後、スライドグラスに懸濁液を滴下後、カバーガラスをかけ軽く押しつぶしてプレパラートを作製した。位相差顕微鏡(ECLIPSE80i、Nikon社製)にて、拡大倍率200倍でプレパラート中の代表的部位を偏光観察し、視野中のでんぷん粒構造の数を把握した。
[官能評価]
・官能評価手順の概要:
各実施例及び比較例で調製されたでんぷん含有組成物について、加熱調理前の各組成物と、各1質量部をそれぞれ9質量部の水中で90℃、5分間加熱調理した加熱料理後の組成物とを官能評価に供した。
具体的には、加熱調理後の各組成物を紙皿に静置し、常温(20℃)で10分間静置した。その後、訓練された官能検査員10名が、加熱調理前の各組成物の外観について「マットな外観」の観点から、加熱調理後の各組成物の試食前の外観、喫食時の食味について、「焦げ」「加熱調理時の形状崩壊性」の観点から、加熱調理前後の外観及び食味を総合して「総合評価」の観点から、下記の基準で評価を行った。そして、官能検査員10名の評点の平均値を算出し、小数第1位を四捨五入して最終評点とした。
・官能評価員:
なお、各官能試験を行う官能検査員としては、予め下記A)~C)の識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀で、商品開発経験があり、食品の味や食感といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜した。
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
C)メーカーA社醤油2つにメーカーB社醤油1つの計3つのサンプルからB社醤油を正確に識別する3点識別試験。
また、前記の何れの評価項目でも、事前に検査員全員で標準サンプルの評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、10名によって客観性のある官能検査を行った。各評価項目の評価は、各項目の5段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い数字をどれか一つ選択する方式で評価した。評価結果の集計は、10名のスコアの算術平均値から算出し、更にパネラー間のばらつきを評価するために標準偏差を算出した。
・「マットな外観」の評価基準:
各組成物について、加熱調理前の組成物の外観(マットな外観)を下記の5段階で評価した。マットな外観の度合いはアクリル樹脂製の厚さ2mmヘイズ標準板(ヘイズ値5%、10%、20%、30%。株式会社村上色彩技術研究所社製)を目安として、組成物表面における光散乱度合いを評価した。具体的には、ヘイズ値5%(曇り度が低く、入射光がほぼ直線的に反射され、マット感が比較的弱い)乃至ヘイズ値30%(曇り度が高く、入射光が四方八方に反射され、マット感が比較的強い)の標準板を指標として、可視光下(照度10000ルクス)における組成物表面における光散乱度合いを評価した。例えば、「表面光散乱がヘイズ値20%以上30%未満」とは、「組成物表面における光散乱度合いが標準板(ヘイズ値20%)と同等あるいはより大きく、標準板(ヘイズ値30%)より低い」と評価されたという意味である。
5:可視光下における表面光散乱がヘイズ値30%より大きく、マット感が強く認められる。
4:可視光下における表面光散乱がヘイズ値20%以上30%未満であり、マット感が認められる。
3:可視光下における表面光散乱がヘイズ値10%以上20%未満であり、マット感がやや認められる。
2:可視光下における表面光散乱がヘイズ値5%以上10%未満であり、マット感がほとんど認められない。
1:可視光下における表面光散乱がヘイズ値5%未満であり、マット感が認められない。
・「加熱調理時の形状崩壊性」の評価基準:
各組成物1質量部を9質量部の水中で90℃、5分間加熱調理したときの組成物の崩壊性を下記の5段階で評価した。
5:形状の崩壊がみられず、好ましい。
4:形状の崩壊がほとんどみられず、やや好ましい。
3:形状の崩壊が一部見られるものの、やや好ましい。
2:形状の崩壊がみられ、好ましくない。
1:形状の崩壊が著しくみられ、好ましくない。
・「焦げ」の評価基準:
各組成物について、加熱調理後の組成物の外観(焦げの度合い)を評価し、コメント欄に記載した。焦げの度合いはマンセル表色系(JISZ8721)において規定される明度を目安として、加工前の生地組成物に対する加工後組成物の明度減少差分が1以上の場合、「焦げに伴う変色が認められる」、加工前の生地組成物に対する加工後組成物の明度減少差分が0以上1未満の場合、「焦げに伴う変色がわずかに認められる。」と評価した。
[結果]
以下の表1~表5に各実施例及び比較例の加工条件、組成、物性、評価結果等を纏めて示す。
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本発明は、各種の加熱調理用食品の分野に広く適用でき、その利用価値は極めて大きい。
100、102 押出機
200、202 バレル
300、302 スクリュー
400、402 フィーダ
500 ダイ部(破線で表されるのは流路)
502/602 ダイ部兼ベント部(破線で表されるのは流路)
600 ベント部
700、702 ヒーター
800、800A、800B、802、802A、802B クーラー
200A、202A,300A,302A 第1フライト部
200B、202B,300B、302B 混練部
200C,300C 第2フライト部

Claims (26)

  1. 押出機を用いて少なくとも豆類を原料とする加熱調理用でんぷん含有組成物を製造する方法であって、
    前記押出機が、
    モーターによって回転するスクリューと、
    前記スクリューの外周を包囲するバレルと、
    前記バレルの基部側に取付けられた、食品素材を投入するためのフィーダと、
    前記バレルの先端側に取付けられた、混練後の食品素材を成形しながら排出するダイ部とを備え、
    前記スクリューが、基部側から先端側にかけて、第1フライト部及び混練部を少なくとも有し、
    前記バレルが、前記スクリューの前記混練部の先端側の位置にベント部を有する、押出機であると共に、
    前記方法が、下記(i)~(iv)の段階を含む製造方法。
    (i)不溶性食物繊維の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、豆類に由来するでんぷんの含有量が湿潤質量換算で10.0質量%以上、タンパク質の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、乾量基準含水率が25質量%超の組成物を調製する段階、
    (ii)段階(i)の調製後の組成物を、前記第1フライト部から前記混練部にかけて加温させ、前記混練部において与圧条件下で温度100℃以上200℃以下とし、SME値350kJ/kg以上で混練する段階、
    (iii)段階(ii)の混練後の組成物を、前記混練部における与圧状態から、前記ベント部において大気圧以下まで減圧する段階、及び
    (iv)段階(ii)の混練後の組成物の糊化度を混練部以降で6質量%以上低下させる段階。
  2. 前記ベント部と前記ダイ部が一体的に設けられる、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記スクリューが、前記混練部の先端側に第2フライト部を更に有し、前記ベント部が前記第2フライト部の前半部に対応する前記バレル上の位置に設けられる、請求項1に記載の製造方法。
  4. 段階(ii)の混練後の組成物を、前記混練部から前記ダイ部にかけて20℃以上降温させる、請求項1~3の何れか一項に記載の製造方法。
  5. 前記第2フライト部先端側終点とダイ部との間にフロー遅滞構造を有する、請求項3又は4に記載の製造方法。
  6. 前記混練部における前記バレル内壁に溝状構造が形成された領域が、前記混練部全長の30%以下である、請求項1~5の何れか一項に記載の製造方法。
  7. 前記混練部から前記第2フライト部及び/又は前記ダイ部にかけての何れかの位置に、冷却設備が設けられてなる、請求項3~6の何れか一項に記載の製造方法。
  8. 前記第1フライト部の基部側起点から前記第1フライト部全長に対して20%までの領域における平均ねじ溝深さよりも、前記第1フライト部の残り80%の平均ねじ溝深さの方が浅い、請求項1~7の何れか一項に記載の製造方法。
  9. 前記第2フライト部の基部側起点から前記第2フライト部全長に対して20%までの領域における平均ねじ溝深さよりも、前記第2フライト部の残り80%の平均ねじ溝深さの方が浅い、請求項3~8の何れか一項に記載の製造方法。
  10. 前記第2フライト部の基部側起点から第2フライト部全長に対して20%までの領域における平均ねじ溝ピッチよりも、前記第2フライト部の残り80%の平均ねじ溝ピッチの方が大きい、請求項3~9の何れか一項に記載の製造方法。
  11. 段階(i)の組成物に含まれる豆類由来でんぷんが、乾量基準含水率25質量%以上の含水条件下で80℃以上で加熱された豆類に由来するでんぷんである、請求項1~10の何れか一項に記載の製造方法。
  12. 前記製造方法により得られる加熱調理用でんぷん含有組成物に対して下記処理Aを加えた後に超音波処理をした場合の粒子径分布d90が450μm以下である、請求項1~11の何れか一項に記載の製造方法。
    [処理A]
    組成物6質量%の水懸濁液を、0.4容量%のプロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼによって、20℃で3日間処理する。
  13. 段階(i)の組成物の調製が、押出機投入前の原材料に予め加水することを含む、請求項1~12の何れか一項に記載の製造方法。
  14. 段階(i)の組成物の調製が、押出機に原材料を投入後、押出機内の原材料に加水することを含む、請求項1~12の何れか一項に記載の製造方法。
  15. 段階(i)において、押出機内の原材料が乾量基準含水率25質量%未満の状態で90℃以上の高温に曝露されない、請求項14に記載の製造方法。
  16. 段階(ii)の混練後における組成物のでんぷん糊化度が30質量%以上である、請求項1~15の何れか一項に記載の製造方法。
  17. 段階(iii)の減圧を前記ベント部からの強制排気により行う、請求項1~16の何れか一項に記載の製造方法。
  18. 段階(ii)の混練後又は段階(iii)の減圧後における組成物が下記(a)及び/又は(b)を充足する、請求項1~17の何れか一項に記載の製造方法。
    (a)組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、300個/mm2以下である。
    (b)ラピッドビスコアナライザを用いて14質量%の組成物粉砕物水スラリーを50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が120℃未満である。
  19. 段階(iv)の糊化度低下後における組成物のでんぷん糊化度が90質量%以下である、請求項1~18の何れか一項に記載の製造方法。
  20. 前記組成物中の総でんぷん含量に対する、豆類に含有された状態のでんぷん含量の比率が、30質量%以上である、請求項20に記載の製造方法。
  21. 豆類が、エンドウ属、インゲンマメ属、キマメ属、ササゲ属、ソラマメ属、ヒヨコマメ属、ダイズ属及びヒラマメ属から選ばれる1種以上の豆類である、請求項1~20の何れか一項に記載の製造方法。
  22. 豆類を乾燥質量換算で50質量%以上含有する、請求項1~21の何れか一項に記載の製造方法。
  23. 前記組成物が膨化物ではない、請求項1~22の何れか一項に記載の製造方法。
  24. (v)前記段階(iii)又は(iv)の後、得られた組成物を粉砕し、粉砕組成物とする段階を更に含む、請求項1~23の何れか一項に記載の製造方法。
  25. (vi)前記段階(v)の後、得られた粉砕組成物を凝集し、粉砕組成物凝集体とする段階を更に含む、請求項24に記載の製造方法。
  26. 前記段階(v)で得られた粉砕組成物及び/又は段階(vi)で得られた粉砕組成物凝集体を、乾燥質量換算で5質量%以上含むように段階(i)の組成物に配合することを更に含む、請求項24又は25に記載の製造方法。
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