JP7089451B2 - 接合構造及びその接合構造を備えた高圧燃料供給ポンプ - Google Patents

接合構造及びその接合構造を備えた高圧燃料供給ポンプ Download PDF

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Description

本発明は、2部材の接合構造、及び内燃機関の燃料噴射弁に燃料を圧送する高圧燃料供給ポンプに関する。
自動車等の内燃機関の内、燃料を直接、燃焼室内部へ噴射する直接噴射タイプの内燃機関において、燃料を高圧化して所望の燃料流量を吐出する、電磁吸入弁を備えた高圧燃料供給ポンプが広く用いられている。
このような高圧燃料供給ポンプとして、特開2017-18969号公報(特許文献1)に記載された高圧燃料供給ポンプが知られている。特許文献1の高圧燃料供給ポンプは、ポンプ本体、吸入ジョイント、吐出ジョイント、ダンパカバー、及び取付けフランジ等の構成部品を有し、吸入ジョイントはダンパカバーにレーザー溶接により固定され、吐出ジョイントはポンプ本体にレーザー溶接により固定され、ダンパカバーはポンプ本体にレーザー溶接により固定され、取付けフランジはポンプ本体にレーザー溶接により固定されている(段落0094-0097参照)。このような高圧燃料供給ポンプにあっては、ポンプ本体はステンレス製で、ダンパカバー及び取付けフランジにはプレス成型品が良く使われている。さらに、これらの構成部品の組付けには圧入による嵌合が行われることが多い。
特開2017-18969号公報
しかしながら、上記従来技術においては、次のような課題がある。
オーステナイト系ステンレスのプレス成型品は応力腐食割れ防止を考慮して焼鈍し、プレス成型による残留応力を除去するのが一般的である。しかし、プレス成型品を焼鈍することにより、プレス成型品は内部組織が変化して変形する可能性がある。プレス成型品が圧入部品の場合、変形は圧入不良の原因となる。そのため、プレス成型品を焼鈍したのち、仕上げ加工を行って形状を整える必要があった。
オーステナイト系ステンレスにおける変形量は材料に含まれるNi量(質量パーセント)の影響を受け、Ni量を多くすると焼鈍等の熱処理による変形を抑制することができる。しかし、Ni量を多くすることは溶接時の高温割れ(溶接高温割れ)を発生し易くする。
本発明の目的は、熱処理による変形を抑制することができるようにする、或いは溶接高温割れを生じ難いようにして信頼性を高めた接合構造又は高圧燃料供給ポンプを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の接合構造は、
オーステナイト系ステンレスの接合部材被接合部材がレーザー溶接によって接合される接合構造において、
前記接合部材前記被接合部材とは、熱処理を施される部材であると共に、相互に圧入される部材であり、Md30が-20℃≦Md30≦-2.0℃の条件を満たす。
本発明によれば、熱処理による変形を抑制することができる、或いは溶接高温割れを生じ難くすることができ、信頼性の高い接合構造又は高圧燃料供給ポンプを提供することができる。その結果、溶接割れに起因する燃料漏れに対して安全性を向上することができ、熱処理後の仕上げ加工を不要にし、又は仕上げ加工を微細な加工に止めることで組立て性を向上することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の一実施例に係る高圧燃料供給ポンプを含む燃料供給システムの一例を示す図である。 本発明の一実施例に係る高圧燃料供給ポンプの縦断面図である。 ステンレス組織の分類を示したシェフラーの組織図である。 本発明の一実施例に係るダンパカバーとポンプボディとの接合部の部分断面図である。 本発明の一実施例に係る吸入ジョイントとダンパカバーとの接合部の部分断面図である。 本発明の一実施例に係る取付けフランジとポンプボディとの接合部の部分断面図である。 溶接割れ及び熱処理変形が発生するMd30の範囲を評価した結果を示す図である。
オーステナイト(γ)系ステンレスの内部組織変化の安定度を表す指標としてMd30(℃)という評価指標がある。この値が高温であるほどγが不安定であり熱処理により変形が大きくなる。Md30はNi量に影響を受けやすく、Ni量が多いほど低温となって安定傾向となり、オーステナイト系ステンレスは変形しづらくなるが、レーザー溶接時の高温割れ(溶接高温割れ)のポテンシャルは高まる傾向となる。
本実施例では上記課題を解決するために、Md30の下限値及び上限値を規定した。これにより、溶接時のクラック発生を防止するとともに熱処理変形を抑えることができる。
以下図面に示す実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
図1を用いて、燃料供給システムの構成と動作を説明する。図1は、本発明の一実施例に係る高圧燃料供給ポンプを含む燃料供給システムの一例を示す図である。
破線で囲まれた部分が高圧燃料供給ポンプ(以下、高圧ポンプと呼ぶ)本体1を示し、この破線の中に示されている機構及び部品は高圧ポンプ本体1に一体に組み込まれていることを示す。
燃料タンク20の燃料は、エンジンコントロールユニット(以下ECUと称す)27からの信号に基づきフィードポンプ21によって汲み上げられ、適切なフィード圧力に加圧されて、吸入配管28を通して高圧ポンプの低圧燃料吸入口10aに送られる。
吸入口10aを通過した燃料は圧力脈動低減機構9及び吸入通路10dを介して、容量可変機構を構成する電磁吸入弁200の吸入ポート200bに至る。
電磁吸入弁200に流入した燃料は、吸入弁203を通過して加圧室11に流入する。エンジンのカム機構93(図2参照)によりプランジャ2に往復運動する動力が与えられる。高圧ポンプは、プランジャ2の往復運動により、プランジャ2の下降行程には吸入弁203部から燃料を吸入し、上昇行程には燃料を加圧し、吐出弁8及び吐出口12を介してコモンレール23へ向けて燃料を吐出する。コモンレール23には圧力センサ26が装着されており、燃料圧力が所定の範囲内に収まるよう、高圧ポンプからの燃料吐出量が調整される。コモンレール23へ圧送された燃料はインジェクタ24に供給され、ECU27からの信号に基づきインジェクタ24がエンジンへ燃料を噴射する。
高圧ポンプは、ECU27から電磁吸入弁200へ送られる信号により、所望の供給燃料(燃料圧力)となるように、燃料流量を吐出する。
高圧ポンプ本体1にはリリーフ弁機構100が設けられており、リリーフ弁機構100は、コモンレール23側の燃料圧力が設定値を超えて異常高圧になった場合に、コモンレール23側の燃料を低圧流路側に戻す。
図2を用いて、高圧ポンプの構成及び動作について述べる。図2は、本発明の一実施例に係る高圧燃料供給ポンプの縦断面図である。
一般に高圧ポンプは、ポンプ本体1に設けられた取付けフランジ1eを用いて、内燃機関のシリンダヘッド90の平面に密着するように、複数のボルト70で固定される。取付けフランジ1eは溶接部1fにてポンプ本体1に全周を溶接結合されて環状固定部を形成している。本実施例では、レーザー溶接を用いている。
シリンダヘッド90とポンプ本体1との間のシールのために、Oリング61がポンプ本体1の溝に嵌め込まれ、エンジンオイルが外部に漏れるのを防止する。
ポンプ本体1には、プランジャ2の往復運動をガイドし、かつ内部に加圧室11を形成するように、端部が有底筒型状に形成されたシリンダ6が取り付けられている。さらに加圧室11は、燃料を供給するための電磁吸入弁200と加圧室11から吐出通路に燃料を吐出するための吐出弁機構8とに連通するよう、加圧室11と電磁吸入弁200及び吐出弁機構8とを連通する連通穴6aが設けられている。
シリンダ6はその外周がシリンダホルダ7で保持され、シリンダホルダ7をポンプ本体1にねじ締結することによってポンプ本体1に固定される。
プランジャ2の下端には、内燃機関のカムシャフトに取り付けられたカム93の回転運動を上下運動に変換し、プランジャ2に伝達するタペット92が設けられている。プランジャ2はリテーナ15を介してばね4にてタペット92に圧着されている。これによりカム93の回転運動に伴い、プランジャ2を上下に往復運動させることができる。
また、シリンダホルダ7の内周下端部に保持されたプランジャシール13がシリンダ6の図中下方部においてプランジャ2の外周に摺動可能に接触する状態で設置されており、プランジャ2が摺動したとき、副室7aの燃料をシールし内燃機関内部へ流入するのを防ぐ。なおプランジャ2は、大径部2aと小径部2bとを有し、プランジャシール13はプランジャ2の小径部2bに摺接する。同時に内燃機関内の摺動部を潤滑する潤滑油(エンジンオイルも含む)がポンプ本体1の内部に流入するのを防止する。
ダンパカバー14には吸入ジョイント51が取り付けられている。吸入ジョイント51は、車両の燃料タンク20からの燃料を供給する低圧配管に接続されており、燃料はここから高圧ポンプ内部に供給される。吸入ジョイント51内の吸入フィルタ52は、燃料タンク20から低圧燃料吸入口10aまでの間に存在する異物が燃料の流れによって高圧燃料供給ポンプ内に侵入するのを防ぐ。
低圧燃料吸入口10aを通過した燃料は、圧力脈動低減機構9及び低圧燃料流路10dを介して電磁吸入弁200の吸入ポート200bに至る。
加圧室11の出口には吐出弁機構8が設けられている。吐出弁機構8の吐出側には燃料吐出口12を形成する吐出ジョイント41が設けられている。吐出弁機構8は吐出弁シート8a,吐出弁シート8aと接離する吐出弁8b,吐出弁8bを吐出弁シート8aに向かって付勢する吐出弁ばね8c,吐出弁8bと吐出弁シート8aとを収容する吐出弁ホルダ8dから構成され、吐出弁シート8aと吐出弁ホルダ8dとは当接部8eで溶接により接合されて一体の吐出弁機構8を形成している。
なお、吐出弁ホルダ8dの内部には、吐出弁8bのストロークを規制するスットパーを形成する段付部8fが設けられている。
加圧室11と燃料吐出口12に燃料差圧が無い状態では、吐出弁8bは吐出弁ばね8cによる付勢力で吐出弁シート8aに圧着され閉弁状態となっている。加圧室11の燃料圧力が、燃料吐出口12の燃料圧力よりも大きくなった時に始めて、吐出弁8bは吐出弁ばね8cに逆らって開弁し、加圧室11内の燃料は燃料吐出口12を経てコモンレール23へと高い圧力で吐出される。吐出弁8bは開弁した際、吐出弁ストッパ8fと接触し、ストロークが制限される。したがって、吐出弁8bのストロークは吐出弁ストッパ8dによって適切に決定される。これによりストロークが大きすぎて、吐出弁8bの閉じ遅れにより、燃料吐出口12へ吐出された燃料が、再び加圧室11内に逆流してしまうのを防止でき、高圧ポンプの効率低下が抑制できる。また、吐出弁8bが開弁および閉弁運動を繰り返す時に、吐出弁8bがストローク方向にのみ運動するように、吐出弁ホルダ8dの内周面にてガイドしている。以上のようにすることで、吐出弁機構8は燃料の流通方向を制限する逆止弁となる。
これらの構成により、加圧室11は、ポンプ本体1、電磁吸入弁200、プランジャ2、シリンダ6及び吐出弁機構8にて構成される。
吸入弁203は、プランジャ2が上死点位置から下死点位置に向かうとき、加圧室11の圧力が吸入弁203の上流側に位置する低圧通路の圧力より低くなって、その差圧がばね202の力より大きくなったときに開弁する。
通常の動作においては、加圧室11の圧力が吸入弁203の上流側に位置する低圧通路の圧力より低くなって、その差圧がばね202の力より大きくなったときにこの差圧によってプランジャロッド201は図面右側に押し出され、吸入弁203と弁シート203Sが分離され開弁する。この状態において電磁コイル204に通電すれば、弱い電流でプランジャロッド201の図面右側方向への移動を維持あるいは助成できる。しかし、電磁駆動型吸入弁機構200が通電されれば、ばね202の付勢力以上の電磁力が発生するよう構成されているので、吸入弁203の前後の差圧がばね202の力より大きくならなくとも電磁駆動型吸入弁機構200が通電されれば、プランジャロッド201は図面右側に押し出され、吸入弁203と弁シート203Sとが分離され、開弁状態にすることができる。
電磁駆動型吸入弁機構200が無通電状態(非通電状態と呼ぶこともある)のときは、ばね202の付勢力により、プランジャロッド201は弁シート203Sに押し付けられ、閉弁状態にある。電磁駆動型吸入弁機構200はプランジャ2の吸入行程で通電され、加圧室12に燃料を送り込み、圧縮行程で無通電とされ、加圧室11の容積減少分の燃料をコモンレール23へ圧送させる。
このとき、圧縮行程で電磁駆動型吸入弁機構200の通電状態を維持すると吸入弁203は開いたままとなり、加圧室11の圧力は吸入弁203の上流の低圧通路の圧力とほぼ同等の低圧状態を保つため、加圧室11の容積減少分の燃料は吸入弁203の上流側へ戻される。これを溢流行程と呼ぶこともある。
従って、圧縮行程の途中で電磁コイル204を通電状態から非通電状態に切替えれば、このときからコモンレール23へ燃料が圧送され始めるので、コモンレール23への吐出量を制御することができる。
かくして、プランジャ2の往復運動に伴い、燃料が吸入ジョイント51から加圧室11へ吸入される吸入行程、加圧室11からコモンレール23へ吐出される吐出行程、及び加圧室11から吸入通路へ戻される溢流行程の3つの行程が繰り返される。
ここで、加圧室11から吸入通路へ燃料が戻されると、吸入通路の燃料圧力に脈動が発生する。この低圧通路の脈動を吸収するために、吸入ジョイント51から低圧燃料流路10dまでの通路の途中にはダンパ室10(10b,10c)が形成されており、この中に二枚式金属ダイヤフラムダンパ(脈動吸収ダンパ)9が外周をダンパホルダ81,82に挟持された状態でダンパカバー14とポンプ本体1に挟持されて収納されている。このような構造にあって、ダンパカバー14は二枚式金属ダイヤフラムダンパ9を収容したダンパ室10を覆うカバー部材である。
ダンパカバー14の外周は筒状に構成され、ポンプ本体1の筒状部に嵌合され溶接接合により固定されている。
二枚式金属ダイヤフラムダンパ9は、上下一対の金属ダイアフラム9Aと9Bとを突合せ、その際外周部を全周に亘って溶接して内部をシールしている。
二枚の金属ダイアフラム9Aと9Bとによって形成された中空部にはアルゴンのような不活性ガスが封入されており、外部の圧力変化に応じてこの中空部が体積変化を起こすことによって、金属ダイアフラム9は脈動減衰機能を発揮する。
高圧燃料供給ポンプはポンプ本体1に接合された取付けフランジ1eをエンジンの所定の位置にネジ70によりねじ止めすることで固定されている。
取付けフランジ1eには、プランジャ2の圧縮行程で発生する筒内圧力の反力と、スプリング4の圧縮反力と、充填された燃料の重量を含むポンプ総重量(エンジン振動による振動加速度分も含む)による外力が作用するため、これらに対し充分な強度が必要とされる。
図3は、ステンレス組織の分類を示したシェフラーの組織図である。シェフラーの組織図は、Ni等量とCr等量の領域における組織を分類しており、ステンレス溶接における溶接性を検討する場合に良く利用されている。
Cr等量、Ni等量はそれぞれ以下の式で表される。
Cr等量=%Cr+%Mo+1.5×%Si+0.5×%Nb
Ni等量=%Ni+30×%C+0.5×%Mn
高圧ポンプに使用されるオーステナイト系ステンレスのSUS304はNi量が9~13wt%、Cr量が18~20wt%であり、Cr等量が19前後であるので、シェフラーの組織図から安全域にするためには、Ni等量を10程度にしなければならない。
一方、ステンレスのプレス部品は応力腐食割れ防止の観点から成形後の残留応力を除去するために焼鈍を行うのが一般的であるが、内部組織の変化により変形する可能性がある。この場合、圧入部品で変形が発生すると組立て時の圧入不良の原因となる。
オーステナイト(γ)系ステンレスの内部組織変化を表す指標として、Md30(℃)という評価指標がある。Md30とは、γ単相の試料に0.30の引張真ひずみを与えた時に組織の50%がマルテンサイトに変態する温度(℃)であり、以下の式で表される。
Md30=551-462×(%C+%N)-9.2×%Si-8.1×%Mn
-13.7×%Cr-29×(%Ni+%Cu)-18.5×%Mo
-68×%Nb-1.42×(ν-8.0)
ν:ASTM粒度番号
Md30の値は高温ほど、γが不安定となり、焼き戻しでマルテンサイトに変態する量が増え変形量も増える傾向がある。Md30は含有量の多いNi量に影響を受けやすく、低くするにはNiを増やすのが効果的である。本実施例では、焼鈍や焼き戻し等をまとめて熱処理と呼ぶ場合がある。
しかし、Ni量を増やすとNi等量が増えて溶接高温割れが起きやすくなるので、溶接割れ防止の観点からNi量を決める目安としてMd30≧-20(℃)とし下限値を規定する。
図4は本発明の一実施例に係るダンパカバー14とポンプボディ1との接合部の部分断面図である。
ダンパカバー14はポンプ本体1の筒状部1aに嵌合され、外周をレーザー溶接されている。この溶接部は図4においてW1で示されている。また図4において、LAはレーザーの照射方向を示している(図5及び図6も同様である)。レーザーによる溶融部はダンパカバー14を貫通し、ポンプ本体1の一部を溶融することで、ダンパカバー14とポンプ本体1とを接合し、溶接部W1の強度及び気密性を確保している。接合されるダンパカバー14及びポンプ本体1の材料は、Md30≧-20(℃)のオーステナイト系ステンレスが使用される。
図5は、本発明の一実施例に係る吸入ジョイント51とダンパカバー14との接合部の部分断面図である。
吸入ジョイント51はダンパカバー14の筒状部14aに嵌合され、外周をレーザー溶接されている。この溶接部は図5においてW2で示されている。レーザーはダンパカバー14を貫通して吸入ジョイント51の一部を溶融することで、ダンパカバー14と吸入ジョイント51とを接合し、溶接部W2の強度と気密性を確保している。接合されるダンパカバー14及び吸入ジョイント51の材料は、Md30≧-20(℃)のオーステナイト系ステンレスが使用される。
図6は、本発明の一実施例に係る取付けフランジ1eとポンプボディ1との接合部の部分断面図である。
取付けフランジ1eはポンプ本体1の筒状部1bに嵌合され、嵌合面に沿う方向にレーザー照射され、筒状部1bに溶接されている。この溶接部は図6においてW3で示されている。レーザーは取付けフランジ1eとポンプ本体1との接触部全域を溶融することで、取付けフランジ1eとポンプ本体1とを、接合し、溶接部W3の強度を確保している。接合される取付けフランジ1e及びポンプ本体1の材料は、Md30≧-20(℃)のオーステナイト系ステンレスが使用される。
図7は、溶接割れ及び熱処理変形が発生するMd30の範囲を評価した結果を示す図である。
本実施例では、溶接高温割れ(溶接割れ)及び熱処理に伴う変形(熱処理変形)の観点から、Md30の適正な範囲を設定した。図7に示すように、Md30=-55℃では溶接割れが生じ、Md30≧-20.9℃では溶接割れが生じないことを確認した。そこで、Md30の下限値を-20℃に設定した。また、Md30=-1.9℃では熱処理変形が生じ、Md30≦-1.9℃では熱処理変形が生じないことを確認した。そこで、Md30の上限値を-2.0℃に設定した。すなわち、Md30を-20℃≦Md30≦-2.0℃の範囲に設定することにより、溶接割れ及び熱処理変形が生じない高圧燃料供給ポンプを提供することができる。
本実施例の特徴を整理すると以下のようになる。
(1)オーステナイト系ステンレスの接合部材及び被接合部材がレーザー溶接によって接合される接合構造において、
前記接合部材及び前記被接合部材の材料のMd30が-20℃≦Md30の条件を満たす。
(2)接合部材と被接合部材と有し、前記接合部材及び前記被接合部材のうち少なくともいずれか一方の部材がオーステナイト系ステンレス製の熱処理を施される部材である接合構造において、
少なくとも熱処理を施される前記部材の材料のMd30がMd30≦-2.0℃の条件を満たす。
(3)(1)において、
前記接合部材及び前記被接合部材のうち少なくともいずれか一方の部材が熱処理を施される部材であり、
前記接合部材及び前記被接合部材の材料のMd30が-20℃≦Md30≦-2.0℃の条件を満たす。
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載の接合構造を備える高圧燃料供給ポンプにおいて、
流体の吸入通路から加圧室へ繋がる通路の途中に脈動吸収ダンパ9を収めたダンパ室10を有するポンプ本体1と、ダンパ室10を覆うダンパカバー14と、を備え、
前記接合構造は、前記接合部材又は前記被接合部材の一方がダンパカバー14により構成され、前記接合部材又は前記被接合部材の他方がポンプ本体1により構成され、
ダンパカバー14とポンプ本体1とが圧入されて溶接接合されている。
(5)(1)乃至(3)のいずれかに記載の接合構造を備える高圧燃料供給ポンプにおいて、
流体の吸入通路10aから加圧室11へ繋がる通路の途中に脈動吸収ダンパ9を収めたダンパ室10を有するポンプ本体1と、ダンパ室10を覆うダンパカバー14と、ポンプ本体1に流体を導入する吸入ジョイント51と、を有し、
前記接合構造は、前記接合部材又は前記被接合部材の一方がダンパカバー14により構成され、前記接合部材又は前記被接合部材の他方が吸入ジョイント51により構成され、
ダンパカバー14と吸入ジョイント51とが圧入されて溶接接合されている。
(6)(1)乃至(3)のいずれかに記載の接合構造を備える高圧燃料供給ポンプにおいて、
流体の吸入通路10aから加圧室11へ繋がる通路の途中に脈動吸収ダンパ9を収めたダンパ室10を有するポンプ本体1と、ポンプ本体1を設置部材90に取付けるための取付けフランジ1eと、を有し、
前記接合構造は、前記接合部材又は前記被接合部材の一方がポンプ本体1により構成され、前記接合部材又は前記被接合部材の他方が取付けフランジ1eにより構成され、
ポンプ本体1と取付けフランジ1eとが圧入されて溶接接合されている。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1…ポンプ本体、1e…取付けフランジ、2…プランジャ、6…シリンダ、7…シールホルダ、8…吐出弁機構、9…圧力脈動低減機構、10a…低圧燃料吸入口、11…加圧室、12…燃料吐出口、13…プランジャシール、14…ダンパカバー、41…吐出ジョイント、51…吸入ジョイント、200…電磁吸入弁、202…ロッド付勢ばね、203…吸入弁、204…電磁コイル、W1,W2,W3…溶接部。

Claims (4)

  1. オーステナイト系ステンレスの接合部材被接合部材がレーザー溶接によって接合される接合構造において、
    前記接合部材前記被接合部材とは、熱処理を施される部材であると共に、相互に圧入される部材であり、材料のMd30が-20℃≦Md30≦-2.0℃の条件を満たすことを特徴とする接合構造。
  2. 請求項1に記載の接合構造を備える高圧燃料供給ポンプにおいて、
    流体の吸入通路から加圧室へ繋がる通路の途中に脈動吸収ダンパを収めたダンパ室を有するポンプ本体と、前記ダンパ室を覆うダンパカバーと、を備え、
    前記接合構造は、前記接合部材又は前記被接合部材の一方が前記ダンパカバーにより構成され、前記接合部材又は前記被接合部材の他方が前記ポンプ本体により構成されることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
  3. 請求項1に記載の接合構造を備える高圧燃料供給ポンプにおいて、
    流体の吸入通路から加圧室へ繋がる通路の途中に脈動吸収ダンパを収めたダンパ室を有するポンプ本体と、前記ダンパ室を覆うダンパカバーと、前記ポンプ本体に流体を導入する吸入ジョイントと、を有し、
    前記接合構造は、前記接合部材又は前記被接合部材の一方が前記ダンパカバーにより構成され、前記接合部材又は前記被接合部材の他方が前記吸入ジョイントにより構成されることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
  4. 請求項1に記載の接合構造を備える高圧燃料供給ポンプにおいて、
    流体の吸入通路から加圧室へ繋がる通路の途中に脈動吸収ダンパを収めたダンパ室を有するポンプ本体と、前記ポンプ本体を設置部材に取付けるための取付けフランジと、を有し、
    前記接合構造は、前記接合部材又は前記被接合部材の一方が前記ポンプ本体により構成され、前記接合部材又は前記被接合部材の他方が前記取付けフランジにより構成されることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
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