JP7088315B2 - 検査システム、検査方法、およびプログラム - Google Patents
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Description
(着想)
まず、本発明の実施形態の実現に際し、本発明者らが得た着想について説明する。
図1は、鉄道車両の概略の一例を示す図である。尚、図1において、鉄道車両は、x軸の正の方向に進むものとする(x軸は、鉄道車両の走行方向に沿う軸である)。また、z軸は、軌道16(地面)に対し垂直方向(鉄道車両の高さ方向)であるものとする。y軸は、鉄道車両の走行方向に対して垂直な水平方向(鉄道車両の走行方向と高さ方向との双方に垂直な方向)であるものとする。また、鉄道車両は、営業車両であるものとする。尚、各図において、○の中に●が付されているものは、紙面の奥側から手前側に向かう方向を示し、○の中に×が付されているものは、紙面の手前側から奥側に向かう方向を示す。
特許文献1に記載の技術では、輪軸13a、13b、13c、13dの左右方向における加速度yw1・・、yw2・・、yw3・・、yw4・・と、台車12a、12bの左右方向における加速度yt1・・、yt2・・と、必要に応じて更に車体11の左右方向における加速度yb・・を観測変数として用いて、データ同化を行うフィルタ(カルマンフィルタ)によるフィルタリングを行うことにより状態変数を導出する。
特許文献1に記載のように、本発明者らは、輪軸13a~13b(13c~13d)と、当該輪軸13a~13b(13c~13d)が設けられる台車12a(12b)との間に配置される部材に生じる前後方向の力の測定値を用いて、通り狂い量を算出する方法に想到した。以下の説明では、この部材に生じる前後方向の力を、必要に応じて前後方向力と称する。
曲線軌道を走行する鉄道車両の運動を記述する運動方程式では、走行時に鉄道車両が受ける遠心力等を考慮する必要がある。従って、曲線軌道を走行する鉄道車両の運動を記述する運動方程式には、軌条(レール)の曲率半径を含む項が含まれる。よって、鉄道車両が曲線軌道を走行しているときに、直線軌道を走行する鉄道車両の運動を記述する運動方程式を用いて構成したデータ同化を行うフィルタ(カルマンフィルタ)を用いて状態変数を導出すると、状態変数を高精度に導出することができなくなる虞がある。
次に、鉄道車両の運動を記述する運動方程式の一例を説明する。本実施形態では、特許文献1に記載の運動方程式を例に挙げ、鉄道車両が21自由度を有する場合を例に挙げて説明する。即ち、輪軸13a~13dが、左右方向における運動(横振動)とヨーイング方向における運動(ヨーイング)とを行うものとする(2×4セット=8自由度)。また、台車12a、12bが、左右方向における運動(横振動)とヨーイング方向における運動(ヨーイング)とローリング方向における運動(ローリング)とを行うものとする(3×2セット=6自由度)。また、車体11が、左右方向における運動(横振動)とヨーイング方向における運動(ヨーイング)とローリング方向における運動(ローリング)とを行うものとする(3×1セット=3自由度)。また、台車12a、12bに対してそれぞれ設けられている空気バネ(枕バネ)が、ローリング方向における運動(ローリング)を行うものとする(1×2セット=2自由度)。また、台車12a、12bに対してそれぞれ設けられているヨーダンパが、ヨーイング方向における運動(ヨーイング)を行うものとする(1×2セット=2自由度)。
添え字t、Tは、台車12a、12bを表す。添え字t、T(のみ)が付されている変数は、台車12a、12bで共通であることを表す。添え字t1、t2はそれぞれ、台車12a、12bを表す。
添え字b、Bは、車体11であることを表す。
また、変数の上に付している「・・」、「・」はそれぞれ、2階時間微分、1階時間微分を表す。
尚、以下の運動方程式の説明に際し、必要に応じて、既出の変数の説明を省略する。また、運動方程式自体は、特許文献1に記載されているものと同じである。
輪軸13a~13dの横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式は、以下の(1)式~(4)式で表される。
輪軸13a~13dのヨーイングを記述する運動方程式は、以下の(5)式~(8)式で表される。
台車12a、12bの横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式は、以下の(9)式、(10)式で表される。
台車12a、12bのヨーイングを記述する運動方程式は、以下の(11)式、(12)式で表される。
台車12a、12bのローリングを記述する運動方程式は、以下の(13)式、(14)式で表される。
車体11の横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式は、以下の(15)式で表される。
車体11のヨーイングを記述する運動方程式は、以下の(16)式で表される。
車体11のローリングを記述する運動方程式は、以下の(17)式で表される。
台車12aに配置されたヨーダンパ、台車12bに配置されたヨーダンパのヨーイングを記述する運動方程式は、それぞれ以下の(18)式、(19)式で表される。
台車12aに配置された空気バネ(枕バネ)、台車12bに配置された空気バネ(枕バネ)のローリングを記述する運動方程式は、それぞれ以下の(20)式、(21)式で表される。
次に、前後方向力について説明する。尚、前後方向力自体は、特許文献1に記載されているものと同じである。
1つの輪軸における左右の車輪のうち一方の車輪における縦クリープ力と他方の車輪における縦クリープ力との同相の成分は、ブレーキ力や駆動力に対応する成分である。従って、縦クリープ力の逆相成分に対応するように前後方向力を定めるのが好ましい。縦クリープ力の逆相成分とは、1つの輪軸における左右の車輪のうち一方の車輪における縦クリープ力と他方の車輪における縦クリープ力との相互に逆位相となる成分である。即ち、縦クリープ力の逆相成分とは、縦クリープ力の、車軸をねじる方向の成分である。この場合、前後方向力は、1つの輪軸の左右方向の両側に取り付けられた2つの前記部材に生じる力の前後方向の成分のうち、相互に逆位相となる成分となる。
軸箱支持装置が、モノリンク式の軸箱支持装置である場合、軸箱支持装置は、リンクを備えており、軸箱と台車枠とがリンクにより連結されている。このリンクの両端にはゴムブッシュが取り付けられる。この場合、前後方向力は、1つの輪軸の左右方向の端にそれぞれ1つずつ取り付けられる2つのリンクのそれぞれが受ける荷重の前後方向の成分のうち、相互に逆位相となる成分になる。また、リンクの配置および構成により、リンクは、前後方向、左右方向、上下方向の荷重のうち主に前後方向の荷重を受ける。従って、例えば、各リンクに歪ゲージを1つ取り付ければよい。この歪ゲージの測定値を用いて、当該リンクが受ける荷重の前後方向の成分を導出することにより、前後方向力の測定値を得る。また、このようにすることに替えて、リンクに取り付けられたゴムブッシュの前後方向の変位を変位計で測定してもよい。この場合、測定した変位と当該ゴムブッシュのバネ定数との積を、前後方向力の測定値とする。軸箱支持装置が、モノリンク式の軸箱支持装置である場合、前述した、軸箱を支持するための部材は、リンクまたはゴムブッシュになる。
また、ここでは、軸箱支持装置の方式が、モノリンク式、軸はり式、および板バネ式である場合を例に挙げて、前後方向力を説明した。しかしながら、軸箱支持装置の方式は、モノリンク式、軸はり式、および板バネ式に限定されない。軸箱支持装置の方式に合わせて、モノリンク式、軸はり式、および板バネ式と同様に、前後方向力を定めることができる。
また、以下では、説明を簡単にするために、1つの輪軸について1つの前後方向力の測定値が得られる場合を例に挙げて説明する。即ち、図1に示す鉄道車両は、4つの輪軸13a~13dを有する。従って、4つの前後方向力T1~T4の測定値が得られる。
次に、本発明の第1の実施形態を説明する。
図5は、検査装置500の機能的な構成の一例を示す図である。図6は、検査装置500のハードウェアの構成の一例を示す図である。図7は、検査装置500における処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態では、図1に示すように、検査装置500が、鉄道車両に搭載される場合を例に挙げて示す。
ユーザインターフェース608は、オペレータが検査装置500に対して指示を行う部分である。ユーザインターフェース608は、例えば、ボタン、スイッチ、およびダイヤル等を有する。また、ユーザインターフェース608は、ディスプレイ609を用いたグラフィカルユーザインターフェースを有していてもよい。
出力部507は、例えば、通信回路604および信号処理回路605と、画像処理回路606、I/F回路607、およびディスプレイ609との少なくとも何れか一方を用いることにより実現される。
記憶部501は、後述する状態変数導出部504が状態変数を導出する際に用いる方程式を記憶する。
本実施形態では、記憶部501は、状態方程式と観測方程式とを記憶する。
本実施形態では、特許文献1に記載の状態方程式および観測方程式を用いる場合を例に挙げて説明する。
本実施形態では、(5)式~(8)式(輪軸13a~13dのヨーイングを記述する運動方程式)を状態方程式に含めずに、以下のようにして状態方程式を構成する。
まず、(9)式、(10)式(台車12a、12bの横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式)と、(13)式、(14)式(台車12a、12bのローリングを記述する運動方程式)と、(15)式(車体11の横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式)と、(16)式(車体11のヨーイングを記述する運動方程式)と、(17)式(車体11のローリングを記述する運動方程式)と、(18)式、(19)式(台車12aに配置されたヨーダンパ、台車12bに配置されたヨーダンパのヨーイングを記述する運動方程式)と、(20)式、(21)式(台車12aに配置された空気バネ(枕バネ)、台車12bに配置された空気バネ(枕バネ)のローリングを記述する運動方程式)については、これらをそのまま用いて状態方程式を構成する。
本実施形態では、車体11の左右方向における加速度、台車12a、12bの左右方向における加速度、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度を観測変数とする。この観測変数は、後述するカルマンフィルタによるフィルタリングの観測変数である。本実施形態では、(34)式~(37)式、(9)式、(10)式、および(15)式(横振動を記述する運動方程式)を用いて観測方程式を構成する。
記憶部501は、例えば、このようにして構成される観測方程式を、オペレータによるユーザインターフェース608の操作に基づいて入力し、記憶する。
データ取得部502は、前後方向力の測定値の時系列データを取得する。前後方向力の測定の方法は、前述した通りである。データ取得部502は、例えば、前後方向力を測定するための歪ゲージの測定値を用いて前後方向力を演算する演算装置との通信を行うことにより、前後方向力の測定値の時系列データを取得することができる。尚、データ取得部502は、車体11の左右方向における加速度の測定値の時系列データ、台車12a、12bの左右方向における加速度の測定値の時系列データ、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の測定値の時系列データを取得しない。
第1の周波数調整部503は、データ取得部502により取得された前後方向力の測定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度を低減(好ましくは除去)する。この低周波成分の信号は、鉄道車両が、曲率が0(ゼロ)の直線軌道を走行している場合には計測されないが、鉄道車両が、曲線軌道を走行している場合に計測される信号である。即ち、鉄道車両が曲線軌道を走行している場合に計測される信号は、鉄道車両が曲率が0(ゼロ)の直線軌道を走行している場合に計測される信号に、この低周波成分の信号が重畳された信号と見なすことができる。
自己相関行列Rを特異値分解する。自己相関行列Rの要素は、対称である。従って、自己相関行列Rを特異値分解すると以下の(52)式のように、直交行列Uと、対角行列Σと、直交行列Uの転置行列との積となる。
行列Σsおよび行列Usを行列要素で表現すれば、以下の(55)式のようになる。
ここでは、前述した修正自己回帰モデルの説明における物理量は、前後方向力になる。前後方向力の値は、鉄道車両の状態等に応じて変動する。
そこで、まず、鉄道車両を軌道16上で走行させて、前後方向力の測定値についてのデータyを得る。得られたデータy毎に、(49)式と(51)式とを用いて自己相関行列Rを求める。この自己相関行列Rについて(52)式で表される特異値分解を行うことによって自己相関行列Rの固有値を求める。図8は、自己相関行列Rの固有値の分布の一例を示す図である。図8では、輪軸13aにおける前後方向力T1の測定値yの時系列データのそれぞれについての自己相関行列Rを特異値分解して得られた固有値σ11~σmmを昇順に並べ替えて、プロットしている。図8の横軸は、固有値のインデックスであり、縦軸は、固有値の値である。
まず、第1の周波数調整部503は、前後方向力の測定値yの時系列データと、予め設定されている数M、mと、に基づいて、(49)式と(51)式とを用いて自己相関行列Rを生成する。
次に、第1の周波数調整部503は、自己相関行列Rの複数の固有値σ11~σmmのうち、最大のものからs個の固有値σ11~σssを、修正自己回帰モデルの係数αを求めるのに利用する自己相関行列Rの固有値として選択する。
次に、第1の周波数調整部503は、前後方向力の測定値yの時系列データと、固有値σ11~σssと、自己相関行列Rの特異値分解により得られた直交行列Uと、に基づいて、(57)式を用いて、修正自己回帰モデルの係数αを決定する。
第1の周波数調整部503は、以上のようにして、前後方向力T1~T4の高周波成分の時系列データを導出する。
状態変数導出部504は、観測方程式を記憶部501により記憶された観測方程式とし、状態方程式を記憶部501により記憶された状態方程式として、カルマンフィルタにより、(44)式に示す状態変数の推定値を決定する。このとき、状態変数導出部504は、第1の周波数調整部503で生成された前後方向力T1~T4の高周波成分の時系列データを用いる。本実施形態では、状態変数の推定値を決定する際に、車体11の左右方向における加速度の測定値の時系列データ、台車12a、12bの左右方向における加速度の測定値の時系列データ、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の測定値の時系列データのうち、少なくとも前後方向力T1~T4の測定値が得られた期間における時系列データを用いない。
Y=HX+V ・・・(58)
X・=ΦX+W ・・・(59)
状態変数導出部504は、(44)式に示す状態変数の推定値を所定のサンプリング周期で決定することにより、(44)式に示す状態変数の推定値の時系列データを生成する。
第1の周波数調整部503により、前後方向力の測定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度が十分に除去されていないと、状態変数導出部504により生成される状態変数の推定値の時系列データに、鉄道車両が曲線軌道を走行することに起因する低周波成分の信号が残る虞がある。そこで、第2の周波数調整部505は、状態変数導出部504により生成された状態変数の推定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度を低減(好ましくは除去)する。尚、第1の周波数調整部503により、前後方向力の測定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度が十分に除去されるように、(53)式に示す自己相関行列Rから抽出する固有値の数sを定めることができる場合には、第2の周波数調整部505の処理は不要になる。
ここでは、前述した修正自己回帰モデルの説明における物理量は、状態変数になる。即ち、状態変数のデータyは、状態変数導出部504により生成された状態変数の推定値の時系列データになる。状態変数の推定値は、何れも鉄道車両の状態に応じて変動する。
まず、第2の周波数調整部505は、状態変数の推定値のデータyと、予め設定されている数M、mと、に基づいて、(49)式と(51)式とを用いて自己相関行列Rを生成する。
次に、第2の周波数調整部505は、自己相関行列Rの複数の固有値σ11~σmmのうち、最大のものからs個の固有値σ11~σssを、修正自己回帰モデルの係数αを求めるのに利用する自己相関行列Rの固有値として選択する。sは、状態変数毎に予め定められる。各状態変数の推定値のデータyは、例えば、鉄道車両を軌道16上で走行させた状態で、これまで説明してきたようにして得られる。そして、第2の周波数調整部505は、自己相関行列Rの固有値の分布を状態変数毎に個別に作成する。第2の周波数調整部505は、この自己相関行列Rの固有値の分布から、(53)式に示す自己相関行列Rから抽出する固有値の数sを状態変数のそれぞれについて決定する。
(5)式~(8)式の輪軸13a~13dのヨーイングを記述する運動方程式に、(22)式~(25)式を代入すると、以下の(60)式~(63)式が得られる。
軌道状態導出部506は、(30)式~(33)式より、輪軸13a~13dのヨーイング方向における回動量(角変位)ψw1~ψw4の推定値を算出する。そして、軌道状態導出部506は、輪軸13a~13dのヨーイング方向における回動量(角変位)ψw1~ψw4の推定値と、第2の周波数調整部505で生成された状態変数の高周波成分の値と、第1の周波数調整部503により生成された前後方向力T1~T4の高周波成分の値とを、(60)式~(63)式に与えることにより、輪軸13a~13dの位置での通り狂い量yR1~yR4を算出する。ここで使用される状態変数は、台車12a~12bの左右方向の変位yt1~yt2、台車12a~12bの左右方向の速度yt1・~yt2・、輪軸13a~13dの左右方向の変位yw1~yw4、および輪軸13a~13dの左右方向の速度yw1・~yw4・である。軌道状態導出部506は、以上のような通り狂い量yR1~yR4の算出を所定のサンプリング周期で行うことにより、通り狂い量yR1~yR4の時系列データを得る。
また、軌道状態導出部506は、位相を合わせた通り狂い量yR1~yR4の同じサンプリング時刻における値のうち、最大値と最小値を除く2つの値の算術平均値を最終的な通り狂い量yRとして算出してもよい。
出力部507は、軌道状態導出部506により算出された最終的な通り狂い量yRの情報を出力する。このとき出力部507は、最終的な通り狂い量yRが、予め設定された値よりも大きい場合には、軌道16が異常であることを示す情報を出力してもよい。出力の形態としては、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、外部装置への送信、およびの内部または外部の記憶媒体への記憶の少なくとも何れか1つを採用することができる。
以上のように本実施形態では、検査装置500は、前後方向力T1~T4の測定値と、変換変数e1~e4の実績値と、をカルマンフィルタに与えて、状態変数(yw1・~yw4・、yw1~yw4、yt1・~yt2・、yt1~yt2、ψt1・~ψt2・、ψt1~ψt2、φt1・~φt2・、φt1~φt2、yb・、yb、ψb・、ψb、φb・、φb、ψy1、ψy2、φa1、φa2)を導出する。このとき、データ同化の際に本来は観測変数の測定値として与えられる値(車体11、台車12a、12b、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度)として予め設定された一定値(例えば0(ゼロ))が用いられる。次に、検査装置500は、前記状態変数に含まれる台車12a、12bのヨーイング方向における回動量(角変位)ψt1~ψt2と、変換変数e1~e4の実績値と、を用いて、輪軸13a~13dのヨーイング方向における回動量(角変位)ψw1~ψw4を導出する。次に、検査装置500は、輪軸13a~13dのヨーイングを記述する運動方程式に、輪軸13a~13dのヨーイング方向における回動量(角変位)ψw1~ψw4と、前記状態変数と、前後方向力T1~T4の測定値と、を代入して、輪軸13a~13dの位置での通り狂い量yR1~yR4を導出する。そして、検査装置500は、通り狂い量yR1~yR4から、最終的な通り狂い量yRを導出する。従って、車体11、台車12a、12b、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の測定値を用いずに、通り狂い量yR1~yR4(最終的な通り狂い量yR)を、精度を大きく落とすことなく導出することができる。従って、通り狂い量yR1~yR4(最終的な通り狂い量yR)を導出する際に用いるセンサの数を低減することができる。
本実施形態では、データ同化の際に本来は観測変数の測定値として与えられる値として、予め設定された一定値を与える。この一定値は、0(ゼロ)に限定されない。例えば、検査装置500を搭載した鉄道車両または当該鉄道車両と同等の鉄道車両(当該鉄道車両と構造が同じ鉄道車両)が、通り狂い量yR1~yR4(最終的な通り狂い量yR)の導出対象の軌道16を走行しているときの、車体11の左右方向における加速度の測定値の時系列データ、台車12a、12bの左右方向における加速度の測定値の時系列データ、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の測定値の時系列データを得て、各々の時系列データの平均値を、一定値として用いてもよい。また、これらの測定値を用いて、前述した修正自己回帰モデルにより、車体11の左右方向における加速度y^kの予測値の時系列データ、台車12a、12bの左右方向における加速度y^kの予測値の時系列データ、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の予測値y^kの時系列データを導出する。そして、それらの平均値を、一定値として用いてもよい。このようにする場合、加速度の測定を行うが、当該測定は、鉄道車両および軌道16毎に、それぞれ1回行えばよく、輪軸13a~13dにおける前後方向力T1~T4の測定値が得られた期間における加速度の測定値は、状態変数の導出の際には用いられない。
また、本実施形態では、カルマンフィルタを用いる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、観測変数の推定値の、一定値に対する誤差が最小または当該誤差の期待値が最小になるように状態変数の推定値を導出するフィルタ(即ち、データ同化を行うフィルタ)を用いていれば、必ずしもカルマンフィルタを用いる必要はない。例えば、粒子フィルタを用いてもよい。尚、観測変数の推定値の、一定値に対する誤差としては、例えば、観測変数の推定値と一定値との二乗誤差が挙げられる。
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、データ同化の際に本来は観測変数の測定値として与えられる値(車体11の左右方向における加速度、台車12a、12bの左右方向における加速度、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度)を一定値(0(ゼロ))として、データ同化を行うフィルタ(カルマンフィルタ)を用いて状態変数を導出する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、データ同化を行わずに状態変数を導出する場合について説明する。このように本実施形態と第1の実施形態とは、状態変数を導出する手法(状態変数導出部504が有する機能)が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1~図10に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
X・=cΦX ・・・(68)
(68)式は、(9)式、(10)式、(13)式~(21)式、(34)式~(39)式の運動方程式を(44)式に示す状態変数を用いて表現した式((68)式においてcを1とした式)を、当該式よりも状態変数の時間変化が小さくなるように変更した式の一例である。具体的に、(68)式は、(9)式、(10)式、(13)式~(21)式、(34)式~(39)式の運動方程式を(44)式に示す状態変数を用いて表現した式において、状態変数の一階時間微分(X・)の項と等号で結ばれる項に忘却係数(forgetting factor)cを乗算したものである。即ち、(68)式は、(59)式の状態方程式において、忘却係数cを導入することによってシステムノイズWを0(ゼロ)としたものである。
このような観点から、忘却係数cの上限値を1.0未満として、忘却係数cの選択を行ってもよい。即ち、忘却係数cの値は、例えば、0.0超1.0未満(0.0<c<1.0)の値、好ましくは0.90以上1.0未満(0.90≦c<1.0)の値、より好ましくは0.95以上1.0未満(0.95≦c<1.0)の値、さらに好ましくは0.99以上1.0未満(0.99≦c<1.0)の値の中から選択することができる。
尚、忘却係数cの値が1.0である場合、(68)式は、(9)式、(10)式、(13)式~(21)式、(34)式~(39)式の運動方程式そのもの(当該運動方程式を、状態変数を用いて表現しただけのもの)となる。
本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。状態方程式Xに依存しない外力等が運動方程式に含まれる場合、(68)式は、以下の(69)式のように表される。
X・=c(ΦX+Gf) ・・・(69)
Gは、運動方程式において、状態方程式に依存しない項を格納するベクトルである。fは、ベクトルGに対応する行列である。
次に、第3の実施形態を説明する。
第1、第2の実施形態では、鉄道車両に搭載した検査装置500が最終的な通り狂い量yRを算出する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、検査装置500の一部の機能が実装されたデータ処理装置が、指令所に配置される。このデータ処理装置は、鉄道車両から送信される計測データを受信し、受信した計測データを用いて最終的な通り狂い量yRを算出する。このように、本実施形態では、第1、第2の実施形態の検査装置500が有する機能を、鉄道車両と指令所とで分担して実行する。本実施形態と第1、第2の実施形態とは、このことによる構成および処理が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1、第2の実施形態と同一の部分については、図1~図10に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。尚、本実施形態は、第1、第2の実施形態の何れにも適用することができる。
データ収集装置1110a、1110bは、同じもので実現することができる。データ収集装置1110a、1110bは、データ取得部1111a、1111bと、データ送信部1112a、1112bとを有する。
データ取得部1111a、1111bは、データ取得部502と同じ機能を有する。即ち、データ取得部1111a、1111bは、データ取得部502と同様に、前後方向力の測定値の時系列データを取得する。前後方向力の測定値を得るための構成は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
データ送信部1112a、1112bは、データ取得部1111a、1111bで取得された前後方向力の測定値の時系列データを、データ処理装置1120に送信する。本実施形態では、データ送信部1112a、1112bは、データ取得部1111a、1111bで取得された前後方向力の測定値の時系列データを、無線通信により、データ処理装置1120に送信する。このとき、データ送信部1112a、1112bは、データ収集装置1110a、1110bが搭載されている鉄道車両の識別番号を、データ取得部1111a、1111bで取得された前後方向力の測定値の時系列データに付加する。このようにデータ送信部1112a、1112bは、鉄道車両の識別番号が付加された前後方向力の測定値の時系列データを送信する。
[データ受信部1121]
データ受信部1121は、データ送信部1112a、1112bにより送信された前後方向力の測定値の時系列データを受信する。この前後方向力の測定値の時系列データには、当該前後方向力の測定値の時系列データの送信元である鉄道車両の識別番号が付加されている。
データ記憶部1122は、データ受信部1121で受信された前後方向力の測定値の時系列データを記憶する。データ記憶部1122は、鉄道車両の識別番号ごとに前後方向力の測定値の時系列データを記憶する。データ記憶部1122は、鉄道車両の現在の運行状況と、前後方向力の測定値の時系列データの受信時刻とに基づいて、当該前後方向力の測定値の時系列データの受信時刻における鉄道車両の位置を特定し、特定した位置の情報と当該前後方向力の測定値の時系列データとを相互に関連付けて記憶する。尚、データ収集装置1110a、1110bが、鉄道車両の現在の位置の情報を収集し、取集した情報を前後方向力の測定値の時系列データに含めてもよい。
データ読み出し部1123は、データ記憶部1122により記憶された前後方向力の測定値の時系列データを読み出す。データ読み出し部1123は、データ記憶部1122により記憶された前後方向力の測定値の時系列データのうち、オペレータにより指定されたデータを読み出すことができる。また、データ読み出し部1123は、予め定められたタイミングで、予め定められた条件に合致する前後方向力の測定値の時系列データを読み出すこともできる。本実施形態では、データ読み出し部1123により読み出される前後方向力の測定値の時系列データは、例えば、鉄道車両の識別番号および位置の少なくとも何れか1つに基づいて決定される。
以上のように本実施形態では、鉄道車両に搭載されたデータ収集装置1110a、1110bは、前後方向力の測定値の時系列データを収集してデータ処理装置1120に送信する。指令所に配置されたデータ処理装置1120は、データ収集装置1110a、1110bから受信した前後方向力の測定値の時系列データを記憶し、記憶した前後方向力の測定値の時系列データタを用いて、最終的な通り狂い量yRを算出する。従って、第1、第2の実施形態で説明した効果に加え、例えば、以下の効果を奏する。即ち、データ処理装置1120は、計測データを任意のタイミングで読み出すことにより、任意のタイミングで最終的な通り狂い量yRを算出することができる。また、データ処理装置1120は、同じ位置における最終的な通り狂い量yRの時系列的な変化を出力することができる。また、データ処理装置1120は、複数の路線における最終的な通り狂い量yRを路線ごとに出力することができる。
本実施形態では、データ収集装置1110a、1110bからデータ処理装置1120に計測データを直接送信する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、クラウドコンピューティングを利用して検査システムを構築してもよい。
その他、本実施形態においても、第1の実施形態および第2の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
次に、計算例を説明する。本計算例では、第1の実施形態の手法により最終的な通り狂い量yRを導出することと、第2の実施形態の手法により、最終的な通り狂い量yRを導出することと、を行った。第1の実施形態の手法では、データ同化の際に本来は観測変数の測定値として与えられる値(一定値)を0(ゼロ)とした。また、第2の実施形態の手法では、忘却係数cを0.9987とした。
また、第1の実施形態の手法に対し、観測変数の測定値として与えられる値(車体11、台車12a、12b、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の測定値)として予め設定された一定値ではなく、そのまま測定値を与えること(即ち、特許文献1に記載の手法)により最終的な通り狂い量yRを導出することを行った。
図13Aおよび図13Bは、本計算例を示し、自己相関行列Rの固有値の分布を示す図である。図13Aは、輪軸13aにおける前後方向力T1に対する自己相関行列Rの固有値の分布を示し、図13Bは、輪軸13bにおける前後方向力T2に対する自己相関行列Rの固有値の分布を示す。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
尚、特許文献1の明細書および図面の内容を全てここに援用することができる。
Claims (16)
- 車体と台車と輪軸とを有する鉄道車両を軌道上で走行させることにより測定される測定値のデータとして、前後方向力の測定値のデータを取得するデータ取得手段と、
前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を用いて構成される状態方程式で決定すべき変数である状態変数を、前記前後方向力の測定値を用いて導出する状態変数導出手段と、
前記軌道の状態を反映する情報を導出する軌道状態導出手段と、を有し、
前記前後方向力は、前記輪軸と、当該輪軸が設けられる前記台車との間に配置される部材に生じる前後方向の力であって、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と、当該輪軸が設けられる前記台車のヨーイング方向の角変位との差に応じて定まる力であり、
前記部材は、軸箱を支持するための部材であり、
前記前後方向は、前記鉄道車両の走行方向に沿う方向であり、
前記ヨーイング方向は、前記軌道に対し垂直な方向である上下方向を回動軸とする回動方向であり、
前記状態方程式は、前記状態変数と、前記前後方向力と、変換変数と、を用いて記述される方程式であり、
前記状態変数は、前記台車の左右方向の変位および速度と、前記台車のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記台車のローリング方向の角変位および角速度と、前記輪軸の左右方向の変位および速度と、前記鉄道車両に取り付けられている空気バネのローリング方向の角変位と、を含み、前記輪軸のヨーイング方向の角変位および角速度を含まず、
前記ローリング方向は、前記前後方向を回動軸とする回動方向であり、
前記変換変数は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と前記台車のヨーイング方向の角変位とを相互に変換する変数であり、
前記軌道状態導出手段は、前記状態変数導出手段により導出された前記状態変数の一つである前記台車のヨーイング方向の角変位と、前記変換変数の実績値と、を用いて、前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を導出し、導出した前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を用いて前記軌道の状態を反映する情報を導出し、
前記変換変数の実績値は、前記前後方向力の測定値を用いて導出され、
前記状態変数導出手段は、前記前後方向力の測定値が得られた期間における、前記台車、前記輪軸、および前記車体の左右方向の加速度の測定値を用いずに、前記状態変数を導出することを特徴とする検査システム。 - 前記状態変数導出手段は、前記状態方程式と、観測方程式と、を用いて、データ同化を行うフィルタを用いた演算を行うことにより、前記状態変数を導出し、
前記観測方程式は、観測変数と、前記変換変数と、を用いて記述される方程式であり、
前記観測変数は、前記台車および前記輪軸の左右方向の加速度を含み、
前記状態変数導出手段は、データ同化の際に本来は前記観測変数の測定値として与えられる値を予め定められた一定値として、前記前後方向力の測定値および前記変換変数の実績値を代入した前記状態方程式と、前記変換変数の実績値を代入した前記観測方程式と、を用いて、前記観測変数の計算値の、前記一定値に対する誤差または当該誤差の期待値が最小になるときの前記状態変数を導出することを特徴とする請求項1に記載の検査システム。 - 前記一定値は、0であることを特徴とする請求項2に記載の検査システム。
- 前記状態方程式は、前記輪軸の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車のローリング方向の運動を記述した運動方程式と、前記空気バネのローリング方向の運動を記述した運動方程式と、を用いて構成され、
前記台車のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位および角速度に代えて、前記前後方向力を用いて記述された運動方程式であり、
前記観測方程式は、前記輪軸の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車の左右方向の運動を記述した運動方程式と、を用いて構成され、
前記輪軸の左右方向の運動を記述した運動方程式は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位に代えて、前記変換変数を用いて記述された運動方程式であり、
前記変換変数は、前記台車のヨーイング方向の角変位と前記輪軸のヨーイング方向の角変位との差で表されることを特徴とする請求項2または3に記載の検査システム。 - 前記状態方程式は、前記車体の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記車体のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、前記車体のローリング方向の運動を記述した運動方程式と、前記鉄道車両に取り付けられるヨーダンパのヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、を更に用いて構成され、
前記観測方程式は、前記車体の左右方向の運動を記述した運動方程式を更に用いて構成され、
前記観測変数は、前記車体の左右方向の加速度を更に含み、
前記状態変数は、前記車体の左右方向の変位および速度と、前記車体のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記車体のローリング方向の角変位および角速度と、前記ヨーダンパのヨーイング方向の角変位と、を更に含むことを特徴とする請求項4に記載の検査システム。 - 前記フィルタは、カルマンフィルタであることを特徴とする請求項2~5の何れか1項に記載の検査システム。
- 前記状態変数導出手段は、前記状態方程式を解かずに、前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を、前記状態変数と、前記前後方向力と、前記変換変数とを用いて表現した式であって、前記前後方向力の測定値および前記変換変数の実績値を代入した式を解くことにより、前記状態変数を導出することを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
- 前記状態変数導出手段は、前記状態方程式を用いずに、前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を、前記状態変数と、前記前後方向力と、前記変換変数とを用いて表現した式を、当該式よりも前記状態変数の時間変化が小さくなるように変更した式であって、前記前後方向力の測定値および前記変換変数の実績値を代入した式を用いて、前記状態変数を導出することを特徴とする請求項7に記載の検査システム。
- 前記状態変数導出手段は、前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を、前記状態変数と、前記前後方向力と、前記変換変数とを用いて表現した式において、前記状態変数の1階時間微分の項と等号で結ばれる項のそれぞれに、忘却係数を乗算した式を解くことにより、前記状態変数を導出し、
前記忘却係数は、予め定められる0.95以上1未満の値であることを特徴とする請求項8に記載の検査システム。 - 前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式は、前記輪軸の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車のローリング方向の運動を記述した運動方程式と、前記空気バネのローリング方向の運動を記述した運動方程式と、を含み、
前記輪軸の左右方向の運動を記述した運動方程式は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位に代えて、前記変換変数を用いて記述された運動方程式であり、
前記台車のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位および角速度に代えて、前記前後方向力を用いて記述された運動方程式であり、
前記変換変数は、前記台車のヨーイング方向の角変位と前記輪軸のヨーイング方向の角変位との差で表されることを特徴とする請求項7~9の何れか1項に記載の検査システム。 - 前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式は、前記車体の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記車体のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、前記車体のローリング方向の運動を記述した運動方程式と、前記鉄道車両に取り付けられるヨーダンパのヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、を更に含み、
前記状態変数は、前記車体の左右方向の変位および速度と、前記車体のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記車体のローリング方向の角変位および角速度と、前記ヨーダンパのヨーイング方向の角変位と、を更に有することを特徴とすることを特徴とする請求項10に記載の検査システム。 - 前記軌道状態導出手段は、前記状態変数導出手段により導出された前記状態変数の一つである前記台車の左右方向の変位および速度と、前記状態変数導出手段により導出された前記状態変数の一つである前記輪軸の左右方向の変位および速度と、前記輪軸のヨーイング方向の角変位の前記推定値と、前記前後方向力の測定値と、前記輪軸のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、に基づいて、前記軌道の通り狂い量を、前記軌道の状態を反映する情報として導出し、
前記輪軸のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式は、前記前後方向力および前記軌道の通り狂い量を変数として含むことを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の検査システム。 - 前記軌道状態導出手段は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と、前記状態変数の一つである前記輪軸の左右方向の速度と、に基づいて、前記輪軸に設けられた車輪と前記軌道との間における左右方向の応力である横圧を、前記軌道の状態を反映する情報として導出することを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の検査システム。
- 前記鉄道車両の状態に応じて値が変動する物理量の時系列データから、前記鉄道車両が前記軌道の曲線部を走行することに起因して生じる低周波成分の信号強度を低減する周波数調整手段を更に有し、
前記周波数調整手段は、前記物理量の一つである前記前後方向力の測定値の時系列データから、前記鉄道車両が前記軌道の曲線部を走行することに起因して生じる低周波成分の信号強度を低減する第1の周波数調整手段を有し、
前記状態変数導出手段は、前記第1の周波数調整手段により低周波成分の信号強度が低減された前記前後方向力の値を用いて、前記状態変数を導出することを特徴とする請求項1~13の何れか1項に記載の検査システム。 - 車体と台車と輪軸とを有する鉄道車両を軌道上で走行させることにより測定される測定値のデータとして、前後方向力の測定値のデータを取得するデータ取得工程と、
前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を用いて構成される状態方程式で決定すべき変数である状態変数を、前記前後方向力の測定値を用いて導出する状態変数導出工程と、
前記軌道の状態を反映する情報を導出する軌道状態導出工程と、を有し、
前記前後方向力は、前記輪軸と、当該輪軸が設けられる前記台車との間に配置される部材に生じる前後方向の力であって、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と、当該輪軸が設けられる前記台車のヨーイング方向の角変位との差に応じて定まる力であり、
前記部材は、軸箱を支持するための部材であり、
前記前後方向は、前記鉄道車両の走行方向に沿う方向であり、
前記ヨーイング方向は、前記軌道に対し垂直な方向である上下方向を回動軸とする回動方向であり、
前記状態方程式は、前記状態変数と、前記前後方向力と、変換変数と、を用いて記述される方程式であり、
前記状態変数は、前記台車の左右方向の変位および速度と、前記台車のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記台車のローリング方向の角変位および角速度と、前記輪軸の左右方向の変位および速度と、前記鉄道車両に取り付けられている空気バネのローリング方向の角変位と、を含み、前記輪軸のヨーイング方向の角変位および角速度を含まず、
前記ローリング方向は、前記前後方向を回動軸とする回動方向であり、
前記変換変数は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と前記台車のヨーイング方向の角変位とを相互に変換する変数であり、
前記軌道状態導出工程は、前記状態変数導出工程により導出された前記状態変数の一つである前記台車のヨーイング方向の角変位と、前記変換変数の実績値と、を用いて、前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を導出し、導出した前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を用いて前記軌道の状態を反映する情報を導出し、
前記変換変数の実績値は、前記前後方向力の測定値を用いて導出され、
前記状態変数導出工程は、前記前後方向力の測定値が得られた期間における、前記台車、前記輪軸、および前記車体の左右方向の加速度の測定値を用いずに、前記状態変数を導出することを特徴とする検査方法。 - 車体と台車と輪軸とを有する鉄道車両を軌道上で走行させることにより測定される測定値のデータとして、前後方向力の測定値のデータを取得するデータ取得工程と、
前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を用いて構成される状態方程式で決定すべき変数である状態変数を、前記前後方向力の測定値を用いて導出する状態変数導出工程と、
前記軌道の状態を反映する情報を導出する軌道状態導出工程と、をコンピュータに実行させ、
前記前後方向力は、前記輪軸と、当該輪軸が設けられる前記台車との間に配置される部材に生じる前後方向の力であって、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と、当該輪軸が設けられる前記台車のヨーイング方向の角変位との差に応じて定まる力であり、
前記部材は、軸箱を支持するための部材であり、
前記前後方向は、前記鉄道車両の走行方向に沿う方向であり、
前記ヨーイング方向は、前記軌道に対し垂直な方向である上下方向を回動軸とする回動方向であり、
前記状態方程式は、前記状態変数と、前記前後方向力と、変換変数と、を用いて記述される方程式であり、
前記状態変数は、前記台車の左右方向の変位および速度と、前記台車のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記台車のローリング方向の角変位および角速度と、前記輪軸の左右方向の変位および速度と、前記鉄道車両に取り付けられている空気バネのローリング方向の角変位と、を含み、前記輪軸のヨーイング方向の角変位および角速度を含まず、
前記ローリング方向は、前記前後方向を回動軸とする回動方向であり、
前記変換変数は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と前記台車のヨーイング方向の角変位とを相互に変換する変数であり、
前記軌道状態導出工程は、前記状態変数導出工程により導出された前記状態変数の一つである前記台車のヨーイング方向の角変位と、前記変換変数の実績値と、を用いて、前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を導出し、導出した前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を用いて前記軌道の状態を反映する情報を導出し、
前記変換変数の実績値は、前記前後方向力の測定値を用いて導出され、
前記状態変数導出工程は、前記前後方向力の測定値が得られた期間における、前記台車、前記輪軸、および前記車体の左右方向の加速度の測定値を用いずに、前記状態変数を導出することを特徴とするコンピュータプログラム。
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