JP6939540B2 - 接触角推定システム、接触角推定方法、およびプログラム - Google Patents
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Description
(概要)
まず、本発明の実施形態の概要を説明する。
図1は、鉄道車両の概略の一例を示す図である。尚、図1において、鉄道車両は、x軸の正の方向に進むものとする(x軸は、鉄道車両の走行方向に沿う軸である)。また、z軸は、軌道16(地面)に対し垂直方向(鉄道車両の高さ方向)であるものとする。y軸は、鉄道車両の走行方向に対して垂直な水平方向(鉄道車両の走行方向と高さ方向との双方に垂直な方向)であるものとする。また、鉄道車両は、営業車両であるものとする。尚、各図において、○の中に●が付されているものは、紙面の奥側から手前側に向かう方向を示し、○の中に×が付されているものは、紙面の手前側から奥側に向かう方向を示す。す。
曲線軌道を走行する鉄道車両の運動を記述する運動方程式では、走行時に鉄道車両が受ける遠心力等を考慮する必要がある。従って、曲線軌道を走行する鉄道車両の運動を記述する運動方程式には、軌条の曲率半径を含む項が含まれる。よって、鉄道車両が曲線軌道を走行しているときに、直線軌道を走行する鉄道車両の運動を記述する運動方程式を用いて構成したデータ同化を行うフィルタ(カルマンフィルタ)を用いて状態変数を導出すると、状態変数を高精度に導出することができなくなる虞がある。
次に、鉄道車両の直線軌道の走行時における運動を記述する運動方程式の一例を説明する。本実施形態では、特許文献2に記載の運動方程式を例に挙げ、鉄道車両が21自由度を有する場合を例に挙げて説明する。即ち、輪軸13a〜13dが、左右方向における運動(横振動)とヨーイング方向における運動(ヨーイング)とを行うものとする(2×4セット=8自由度)。また、台車12a、12bが、左右方向における運動(横振動)とヨーイング方向における運動(ヨーイング)とローリング方向における運動(ローリング)とを行うものとする(3×2セット=6自由度)。また、車体11が、左右方向における運動(横振動)とヨーイング方向における運動(ヨーイング)とローリング方向における運動(ローリング)とを行うものとする(3×1セット=3自由度)。また、台車12a、12bに対してそれぞれ設けられている空気バネ(枕バネ)が、ローリング方向における運動(ローリング)を行うものとする(1×2セット=2自由度)。また、台車12a、12bに対してそれぞれ設けられているヨーダンパが、ヨーイング方向における運動(ヨーイング)を行うものとする(1×2セット=2自由度)。
添え字t、Tは、台車12a、12bを表す。添え字t、T(のみ)が付されている変数は、台車12a、12bで共通であることを表す。添え字t1、t2はそれぞれ、台車12a、12bを表す。
添え字b、Bは、車体11であることを表す。
また、変数の上に付している「・・」、「・」はそれぞれ、2階時間微分、1階時間微分を表す。
尚、以下の運動方程式の説明に際し、必要に応じて、既出の変数の説明を省略する。また、運動方程式自体は、特許文献2に記載されているものと同じである。
輪軸13a〜13dの横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式は、以下の(1)式〜(4)式で表される。
輪軸13a〜13dのヨーイングを記述する運動方程式は、以下の(5)式〜(8)式で表される。
台車12a、12bの横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式は、以下の(9)式、(10)式で表される。
台車12a、12bのヨーイングを記述する運動方程式は、以下の(11)式、(12)式で表される。
台車12a、12bのローリングを記述する運動方程式は、以下の(13)式、(14)式で表される。
車体11の横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式は、以下の(15)式で表される。
車体11のヨーイングを記述する運動方程式は、以下の(16)式で表される。
車体11のローリングを記述する運動方程式は、以下の(17)式で表される。
台車12aに配置されたヨーダンパ、台車12bに配置されたヨーダンパのヨーイングを記述する運動方程式は、それぞれ以下の(18)式、(19)式で表される。
台車12aに配置された空気バネ(枕バネ)、台車12bに配置された空気バネ(枕バネ)のローリングを記述する運動方程式は、それぞれ以下の(20)式、(21)式で表される。
次に、前後方向力について説明する。尚、前後方向力自体は、特許文献2に記載されているものと同じである。
1つの輪軸における左右の車輪のうち一方の車輪における縦クリープ力と他方の車輪における縦クリープ力との同相の成分は、ブレーキ力や駆動力に対応する成分である。従って、縦クリープ力の逆相成分に対応するように前後方向力を定めるのが好ましい。縦クリープ力の逆相成分とは、1つの輪軸における左右の車輪のうち一方の車輪における縦クリープ力と他方の車輪における縦クリープ力との相互に逆位相となる成分である。即ち、縦クリープ力の逆相成分とは、縦クリープ力の、車軸をねじる方向の成分である。この場合、前後方向力は、1つの輪軸の左右方向の両側に取り付けられた2つの前記部材に生じる力の前後方向の成分のうち、相互に逆位相となる成分となる。
軸箱支持装置が、モノリンク式の軸箱支持装置である場合、軸箱支持装置は、リンクを備えており、軸箱と台車枠とがリンクにより連結されている。このリンクの両端にはゴムブッシュが取り付けられる。この場合、前後方向力は、1つの輪軸の左右方向の端にそれぞれ1つずつ取り付けられる2つのリンクのそれぞれが受ける荷重の前後方向の成分のうち、相互に逆位相となる成分になる。また、リンクの配置および構成により、リンクは、前後方向、左右方向、前後方向の荷重のうち主に前後方向の荷重を受ける。従って、例えば、各リンクに歪ゲージを1つ取り付ければよい。この歪ゲージの測定値を用いて、当該リンクが受ける荷重の前後方向の成分を導出することにより、前後方向力の測定値を得る。また、このようにすることに替えて、リンクに取り付けられたゴムブッシュの前後方向の変位を変位計で測定してもよい。この場合、測定した変位と当該ゴムブッシュのバネ定数との積を、前後方向力の測定値とする。軸箱支持装置が、モノリンク式の軸箱支持装置である場合、前述した、軸箱を支持するための部材は、リンクまたはゴムブッシュになる。
また、ここでは、軸箱支持装置の方式が、モノリンク式、軸はり式、および板バネ式である場合を例に挙げて、前後方向力を説明した。しかしながら、軸箱支持装置の方式は、モノリンク式、軸はり式、および板バネ式に限定されない。軸箱支持装置の方式に合わせて、モノリンク式、軸はり式、および板バネ式と同様に、前後方向力を定めることができる。
また、以下では、説明を簡単にするために、1つの輪軸について1つの前後方向力の測定値が得られる場合を例に挙げて説明する。即ち、図1に示す鉄道車両は、4つの輪軸13a〜13dを有する。従って、4つの前後方向力T1〜T4の測定値が得られる。
次に、本発明の第1の実施形態を説明する。
図4は、接触角推定装置400の機能的な構成の一例を示す図である。図5は、接触角推定装置400のハードウェアの構成の一例を示す図である。図6は、接触角推定装置400における事前処理の一例を示すフローチャートである。図7は、接触角推定装置400における本処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態では、図1に示すように、接触角推定装置400が、鉄道車両に搭載される場合を例に挙げて示す。
ユーザインターフェース508は、オペレータが接触角推定装置400に対して指示を行う部分である。ユーザインターフェース508は、例えば、ボタン、スイッチ、およびダイヤル等を有する。また、ユーザインターフェース508は、ディスプレイ509を用いたグラフィカルユーザインターフェースを有していてもよい。
出力部408は、例えば、通信回路504および信号処理回路505と、画像処理回路506、I/F回路507、およびディスプレイ509との少なくとも何れか一方を用いることにより実現される。
状態方程式記憶部401は、状態方程式を記憶する。本実施形態では、特許文献2に記載の状態方程式を用いる場合を例に挙げて説明する。前述したように、本実施形態では、(5)式〜(8)式の輪軸13a〜13dのヨーイングを記述する運動方程式を状態方程式に含めずに、以下のようにして状態方程式を構成する。
まず、(9)式、(10)式の台車12a、12bの横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式と、(13)式、(14)式の台車12a、12bのローリングを記述する運動方程式と、(15)式の車体11の横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式と、(16)式の車体11のヨーイングを記述する運動方程式と、(17)式の車体11のローリングを記述する運動方程式と、(18)式、(19)式の台車12aに配置されたヨーダンパ、台車12bに配置されたヨーダンパのヨーイングを記述する運動方程式と、(20)式、(21)式の台車12aに配置された空気バネ(枕バネ)、台車12bに配置された空気バネ(枕バネ)のローリングを記述する運動方程式については、これらをそのまま用いて状態方程式を構成する。
観測方程式記憶部402は、観測方程式を記憶する。本実施形態では、車体11の左右方向における加速度、台車12a、12bの左右方向における加速度、および輪軸13a〜13dの左右方向における加速度を観測変数とする。この観測変数は、後述するカルマンフィルタによるフィルタリングの観測変数である。本実施形態では、(34)式〜(37)式、(9)式、(10)式、および(15)式の横振動を記述する運動方程式を用いて観測方程式を構成する。観測方程式記憶部402は、例えば、このようにして構成される観測方程式を、オペレータによるユーザインターフェース508の操作に基づいて入力し、記憶する。
データ取得部403は、計測データを所定のサンプリング周期で取得する。
本実施形態では、データ取得部403は、計測データとして、車体11の左右方向における加速度の測定値の時系列データ、台車12a、12bの左右方向における加速度の測定値の時系列データ、輪軸13a〜13dの左右方向における加速度の測定値の時系列データ、鉄道車両の走行速度vの時系列データ、車輪14a〜14dにおける輪重の測定値の時系列データ、および車輪14a〜14dにおける横圧の測定値の時系列データを取得する。
各加速度は、例えば、車体11、台車12a、12b、および輪軸13a〜13dにそれぞれ取り付けられた歪ゲージと、当該歪ゲージの測定値を用いて加速度を演算する演算装置とを用いることにより測定される。また、輪重および横圧は、例えば、車輪14a〜14dに取り付けられた歪ゲージと、当該歪ゲージの測定値を用いて輪重および横圧を演算する演算装置とを用いることにより測定される。尚、加速度、輪重、および横圧の測定は、公知の技術で実現することができるので、その詳細な説明を省略する。
データ取得部403は、例えば、前述した演算装置との通信を行うことにより、計測データを取得することができる。
第1の周波数調整部404は、データ取得部403により取得された計測データのうち、前後方向力の測定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度を低減(好ましくは除去)する。この低周波成分の信号は、鉄道車両が直線軌道を走行している場合には計測されないが、鉄道車両が曲線軌道を走行している場合に計測される信号である。即ち、鉄道車両が曲線軌道を走行している場合に計測される信号は、鉄道車両が直線軌道を走行している場合に計測される信号に、この低周波成分の信号が重畳された信号と見なすことができる。
自己相関行列Rを特異値分解する。自己相関行列Rの要素は、対称である。従って、自己相関行列Rを特異値分解すると以下の(52)式のように、直交行列Uと、対角行列Σと、直交行列Uの転置行列との積となる。
行列Σsおよび行列Usを行列要素で表現すれば、以下の(55)式のようになる。
ここでは、前述した修正自己回帰モデルの説明における物理量は、前後方向力になる。前後方向力の値は、鉄道車両の状態に応じて変動する。
そこで、まず、鉄道車両を軌道16上で走行させて、前後方向力の測定値についてのデータyを得る。得られたデータy毎に、(49)式と(51)式とを用いて自己相関行列Rを求める。この自己相関行列Rについて(52)式で表される特異値分解を行うことによって自己相関行列Rの固有値を求める。図8は、自己相関行列Rの固有値の分布の一例を示す図である。図8では、輪軸13aにおける前後方向力T1の測定値のデータyのそれぞれについての自己相関行列Rを特異値分解して得られた固有値σ11〜σmmを昇順に並べ替えて、プロットしている。図8の横軸は、固有値のインデックスであり、縦軸は、固有値の値である。
まず、第1の周波数調整部404は、前後方向力の測定値のデータyと、予め設定されている数M、mと、に基づいて、(49)式と(51)式とを用いて自己相関行列Rを生成する。
次に、第1の周波数調整部404は、自己相関行列Rの複数の固有値σ11〜σmmのうち、最大のものからs個の固有値σ11〜σssを、修正自己回帰モデルの係数αを求めるのに利用する自己相関行列Rの固有値として選択する。
次に、第1の周波数調整部404は、前後方向力の測定値のデータyと、固有値σ11〜σssと、自己相関行列Rの特異値分解により得られた直交行列Uと、に基づいて、(57)式を用いて、修正自己回帰モデルの係数αを決定する。
第1の周波数調整部404は、以上のようにして、前後方向力T1〜T4の高周波成分の時系列データを導出する。
フィルタ演算部405は、観測方程式を観測方程式記憶部402により記憶された観測方程式とし、状態方程式を状態方程式記憶部401により記憶された状態方程式として、カルマンフィルタにより、(44)式に示す状態変数の推定値を決定する。このとき、フィルタ演算部405は、データ取得部403で取得された計測データのうち、前後方向力T1〜T4を除く計測データと、第1の周波数調整部404で生成された前後方向力T1〜T4の高周波成分の時系列データとを用いる。前述したように本実施形態では、計測データには、車体11の左右方向における加速度の測定値、台車12a、12bの左右方向における加速度の測定値、および輪軸13a〜13dの左右方向における加速度の測定値が含まれる。輪軸13a〜13dにおける前後方向力T1〜T4については、データ取得部403で取得された計測データ(測定値)を用いずに、第1の周波数調整部404で生成された前後方向力T1〜T4の高周波成分の時系列データを用いる。
Y=HX+V ・・・(58)
X・=ΦX+W ・・・(59)
フィルタ演算部405は、(44)式に示す状態変数の推定値を所定のサンプリング周期で決定することにより、(44)式に示す状態変数の推定値の時系列データを生成する。
第1の周波数調整部404により、前後方向力の測定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度が十分に除去されていないと、フィルタ演算部405により生成される状態変数の推定値の時系列データに、鉄道車両が曲線軌道を走行することに起因する低周波成分の信号が残る虞がある。そこで、第2の周波数調整部406は、フィルタ演算部405により生成された状態変数の推定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度を低減(好ましくは除去)する。尚、第1の周波数調整部404により、前後方向力の測定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度が十分に除去されるように、(53)式に示す自己相関行列Rから抽出する固有値の数sを定めることができる場合には、第2の周波数調整部406の処理は不要になる。
ここでは、前述した修正自己回帰モデルの説明における物理量は、状態変数になる。即ち、状態変数のデータyは、フィルタ演算部405により生成された状態変数の推定値の時系列データになる。状態変数の推定値は、何れも鉄道車両の状態に応じて変動する。
まず、第2の周波数調整部406は、状態変数の推定値のデータyと、予め設定されている数M、mと、に基づいて、(49)式と(51)式とを用いて自己相関行列Rを生成する。
次に、第2の周波数調整部406は、自己相関行列Rの複数の固有値σ11〜σmmのうち、最大のものからs個の固有値σ11〜σssを、修正自己回帰モデルの係数αを求めるのに利用する自己相関行列Rの固有値として選択する。sは、状態変数毎に予め定められる。例えば、鉄道車両を軌道16上で走行させて、これまで説明してきたようにして各状態変数の推定値のデータyを得る。そして、自己相関行列Rの固有値の分布を状態変数毎に個別に作成する。この自己相関行列Rの固有値の分布から、(53)式に示す自己相関行列Rから抽出する固有値の数sを状態変数のそれぞれについて決定する。
接触角算出部407は、データ取得部403で取得された、車輪14a〜14dにおける輪重の測定値の時系列データ、車輪14a〜14dにおける横圧の測定値の時系列データ、前後方向力T1〜T4の時系列データ、および鉄道車両の走行速度vの時系列データと、第2の周波数調整部406により導出された状態変数の高周波成分の時系列データのうち、輪軸13a〜13dの左右方向の速度yw1・〜yw4・および台車12a、12bのヨーイング方向における回動量(角変位)ψt1〜ψt2と、横クリープ係数f2と、軸箱支持装置の前後方向のバネ定数Kwxと、軸箱支持装置の左右方向における間隔の1/2の長さb1とに基づいて、各輪軸13a〜13dの各車輪14a〜14dにおける接触角αL 1〜αL 4、αR 1〜αR 4を導出する。
図11(a)において、法線荷重Nは、車輪14Rが軌条から受ける荷重の、車輪14Rと軌条との接触位置での接平面に対する法線方向の成分である。横クリープ力Fyは、クリープ力の、鉄道車両の走行方向(x軸方向)に垂直な方向のうち車輪14Rと軌条との接触位置での接平面に沿う方向の成分である。尚、縦クリープ力は、クリープ力の、鉄道車両の走行方向(x軸方向)の成分である。法線荷重Nと横クリープ力Fyの合力が、車輪14Rと軌条との接触位置で軌条から車輪14に作用する力である。即ち、輪重P、横圧Qは、それぞれ、車輪14と軌条との接触位置で軌条から車輪14Rに作用する力の、高さ方向(z軸方向)の成分、左右方向(y軸方向)の成分である。接触角αは、車輪14Rと軌条との接触位置での接平面と水平面(左右方向(y軸方向)の面)とのなす角度のうち小さい方の角度(鋭角)である。図11(b)において、フランジ角aは、車輪のフランジの踏面側(軌条側)の領域と水平面(左右方向(y軸方向)の面)とのなす角度のうち小さい方の角度(鋭角)である。尚、フランジ角は、フランジ角度とも称される。
本実施形態では、鉄道車両が21自由度を有する。この場合、各輪軸13a、13b、13c、13dにおける横圧Qiは、当該輪軸に属する左右の車輪14L、14Rにおける横圧QL i、QR iの和として表現できるので、以下の(64)式が成り立つ。
まず、横クリープ力Fy L i、Fy R iに関しては、近似的に以下の(65)式で表されることが知られている。
(72)式において、横クリープ係数f2、軸箱支持装置の前後方向のバネ定数Kwxおよび軸箱支持装置の左右方向における間隔の1/2の長さb1は定数である。尚、前述したように、横クリープ係数f2は、輪軸13a〜13d毎に与えられるものとしてもよい。そうすると、(72)式において、未知数は、接触角αL i、αR iになる。従って、未知数が2つになり、(72)式だけでは、接触角αL i、αR iを算出することはできない。そこで、本発明者らは、車輪14a〜14dが軌条に対しフランジ接触している場合とフランジ接触していない場合とに分けて、以下のようにして接触角αL i、αR iの算出式を定めることを見出した。
鉄道車両が直線軌道や緩やかな曲線軌道を走行しており、車輪14a〜14dが軌条に対しフランジ接触していない場合、(概要)の項で説明したように、同一の輪軸13a〜13dに属する左右の車輪における接触角αL i、αR iの和は一定値cとみなす。一定値cは、例えば、3°程度の小さな正値に定めればよい。
まず、鉄道車両が右方向に曲がりながら走行している場合の接触角αL iの算出式を説明する。
(概要)の項で説明したように、鉄道車両が急な曲線軌道(急カーブ)を走行しており、車輪14a〜14dが軌条に対しフランジ接触している場合、左右方向のうち、軌道16の曲線部の曲がっている方向の車輪14a〜14dにおける接触角αL iまたはαR iは下限値(0(ゼロ)または0(ゼロ)に近い定数値)とみなす。従って、鉄道車両が右方向に曲がりながら走行している場合には、以下の(80)式を満たすものとする。
鉄道車両が左方向に曲がりながら走行している場合には、以下の(85)式を満たすものとする。従って、(82)式、(83)式、(84)式に対応する式として、それぞれ、以下の(86)式、(87)式、(88)式が得られる。
(79)式、(84)式、(88)式のようにして非線形方程式の解(ここではαL i、αR i)を求める手法は、ニュートン法と呼ばれている。(79)式を例に挙げて説明すると、ニュートン法では、αk(=(αL i,αR i)k)の初期値を(79)式に与えて、(79)式よりαk+1(=(αL i,αR i)k+1)を求め、求めたαk+1(=(αL i,αR i)k+1)を(79)式のαk(=(αL i,αR i)k)に与えて、(79)式よりαk+1(=(αL i,αR i)k+1)を求めることを、所定の収束条件を満たす(解が収束する)と判定されるまで繰り返す。
以上のことから、本実施形態では、(79)式、(84)式、(88)式をフィルタとして用いることとした。
図14に示すように、曲線軌道において、曲率1/Rの絶対値が大きくなるにつれて接触角αR 1はフランジ角に近づき、概ね485秒〜493秒において、車輪14aがフランジ接触の状態であることが推定される。その後、曲率1/Rの絶対値が小さくなるにつれて接触角αR 1は0(ゼロ)に近づく。また、直線軌道においては、接触角αL 1、αR 1は概ね一定の小さな値を示す。このように、本実施形態の手法によれば、軌条と軌道16の状態を反映するように接触角αL i、αR iをリアルタイムで算出することができることが分かる。これにより、脱線に至る予兆を接触角αL i、αR iはから判定できることや、車輪14a〜14dと軌道16の摩耗状態の履歴を時系列で監視できること等の効果を得ることが期待できる。
出力部408は、接触角算出部407により算出(採用)された接触角αL i、αR iの情報を出力する。出力の形態としては、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、外部装置への送信、およびの内部または外部の記憶媒体への記憶の少なくとも何れか1つを採用することができる。
以上のように本実施形態では、接触角推定装置400は、更新前の接触角αk(=(αL i、αR i)k)においてコスト関数J(α)を接触角αで微分した値の逆数J´-1(αk)と、更新前の接触角αkにおけるコスト関数の値J(αk)と、緩和係数βとの積を、更新前の接触角αkから減算した値で、更新後の接触角αk+1を表す式であるフィルタを用いて、接触角αL i、αR iを算出する。コスト関数J(α)は、横圧QL i、QR iの和と、(接触角αL i、αR iを用いて表現される)法線荷重NL i、NR iおよび横クリープ力Fy L i、Fy R iの左右方向の成分の和との差を含む関数である。また、横クリープ力Fy L i、Fy R iの左右方向の成分については、横クリープ力Fy L i、Fy R iを用いずに、輪軸13a〜13dの左右方向の速度ywi・、台車12a、12bのヨーイング方向における回動量(角変位)ψtj、前後方向力Ti、鉄道車両の走行速度vを用いて表現する。
本実施形態では、フィルタ演算部405においてカルマンフィルタを用いる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、観測変数の測定値と推定値との誤差が最小または当該誤差の期待値が最小になるように状態変数の推定値を導出するフィルタ(即ち、データ同化を行うフィルタ)を用いていれば、必ずしもカルマンフィルタを用いる必要はない。例えば、粒子フィルタを用いてもよい。尚、観測変数の測定値と推定値との誤差としては、例えば、観測変数の測定値と推定値との二乗誤差が挙げられる。
次に、第2の実施形態を説明する。
第1の実施形態では、鉄道車両に搭載した接触角推定装置400が接触角αL i、αR iを算出する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、接触角推定装置400の一部の機能が実装されたデータ処理装置が、指令所に配置される。このデータ処理装置は、鉄道車両から送信される計測データを受信し、受信した計測データを用いて接触角αL i、αR iを算出する。このように、本実施形態では、第1の実施形態の接触角推定装置400が有する機能を、鉄道車両と指令所とで分担して実行する。本実施形態と第1の実施形態とは、このことによる構成および処理が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図14に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
データ収集装置1510a、1510bは、同じもので実現することができる。データ収集装置1510a、1510bは、データ取得部1511a、1511bと、データ送信部1512a、1512bとを有する。
データ取得部1511a、1511bは、データ取得部403と同じ機能を有する。即ち、データ取得部1511a、1511bは、データ取得部403で取得する計測データと同じ計測データを取得する。具体的にデータ取得部1511a、1511bは、計測データとして、車体11の左右方向における加速度の測定値の時系列データ、台車12a、12bの左右方向における加速度の測定値の時系列データ、輪軸13a〜13dの左右方向における加速度の測定値の時系列データ、鉄道車両の走行速度vの時系列データ、車輪14a〜14dにおける輪重の測定値の時系列データ、および車輪14a〜14dにおける横圧の測定値の時系列データを取得する。これらの測定値を得るための歪ゲージおよび演算装置は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
データ送信部1512a、1512bは、データ取得部1511a、1511bで取得された計測データを、データ処理装置1520に送信する。本実施形態では、データ送信部1512a、1512bは、データ取得部1511a、1511bで取得された計測データを、無線通信により、データ処理装置1520に送信する。このとき、データ送信部1512a、1512bは、データ収集装置1510a、1510bが搭載されている鉄道車両の識別番号を、データ取得部1511a、1511bで取得された計測データに付加する。このようにデータ送信部1512a、1512bは、鉄道車両の識別番号が付加された計測データを送信する。
[データ受信部1521]
データ受信部1521は、データ送信部1512a、1512bにより送信された計測データを受信する。この計測データには、当該計測データの送信元である鉄道車両の識別番号が付加されている。
データ記憶部1522は、データ受信部1521で受信された計測データを記憶する。データ記憶部1522は、鉄道車両の識別番号ごとに計測データを記憶する。データ記憶部1522は、鉄道車両の現在の運行状況と、計測データの受信時刻とに基づいて、当該計測データの受信時刻における鉄道車両の位置を特定し、特定した位置の情報と当該計測データとを相互に関連付けて記憶する。尚、データ収集装置1510a、1510bが、鉄道車両の現在の位置の情報を収集し、取集した情報を計測データに含めてもよい。
データ読み出し部1523は、データ記憶部1522により記憶された計測データを読み出す。データ読み出し部1523は、データ記憶部1522により記憶された計測データのうち、オペレータにより指定された計測データを読み出すことができる。また、データ読み出し部1523は、予め定められたタイミングで、予め定められた条件に合致する計測データを読み出すこともできる。本実施形態では、データ読み出し部1523により読み出される計測データは、例えば、鉄道車両の識別番号および位置の少なくとも何れか1つに基づいて決定される。
以上のように本実施形態では、鉄道車両に搭載されたデータ収集装置1510a、1510bは、計測データを収集してデータ処理装置1520に送信する。指令所に配置されたデータ処理装置1520は、データ収集装置1510a、1510bから受信した計測データを記憶し、記憶した計測データを用いて、接触角αL i、αR iを算出する。従って、第1の実施形態で説明した効果に加え、例えば、以下の効果を奏する。即ち、データ処理装置1520は、計測データを任意のタイミングで読み出すことにより、任意のタイミングで接触角αL i、αR iを算出することができる。また、データ処理装置1520は、同じ位置における接触角αL i、αR iの時系列的な変化を出力することができる。
本実施形態では、データ収集装置1510a、1510bからデータ処理装置1520に計測データを直接送信する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、クラウドコンピューティングを利用して接触角推定システムを構築してもよい。
その他、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
以下に、請求項の記載と実施形態の記載との関係の一例を説明する。尚、請求項の記載が実施形態の記載に限定されないことは、変形例等に記載した通りである。
<請求項1、2>
接触角は、例えば、接触角αL i、αR i(αL 1〜αL 4、αR 1〜αR 4)を用いることにより実現される。
データ取得手段は、例えば、データ取得部403を用いることにより実現される。
接触角算出手段は、例えば、接触角算出部407を用いることにより実現される。
接触角を未知数とする方程式を含む式からなる第1のフィルタは、例えば、(79)式、(84)式、(88)式を用いることにより実現される。
前記左右方向の一方側および他方側の前記車輪のそれぞれにおける輪重および横圧は、輪重PL i、PR i(PL 1〜PL 4、PR 1〜PR 4)、横圧QL i、QR i(QL 1〜QL 4、QR 1〜QR 4)を用いることにより実現される。
前記鉄道車両の走行速度は、例えば、鉄道車両の走行速度vを用いることにより実現される。
前後方向力は、例えば、前後方向力Ti(T1〜T4)を用いることにより実現される。
前記接触角の関数であるコスト関数の更新前の前記接触角における微分値は、例えば、(79)式の右辺第2項の1つ目の行列((78)式のJ´(αk))、(84)式の右辺第2項のJ1´(αL i)k、(88)式の右辺第2項のJ1´(αR i)kを用いることにより実現される。
前記コスト関数の更新前の前記接触角における値は、例えば、(79)式の右辺第2項の2つ目の行列((78)式のJ(αk))、(84)式の右辺第2項のJ1(αL i)k、(88)式の右辺第2項のJ1´(αR i)kを用いることにより実現される。
緩和係数は、例えば、(79)式、(84)式、(88)式のβを用いることにより実現される。
更新前の前記接触角は、例えば、(79)式の右辺第1項の行列((78)式のαk)、(84)式の右辺第1項の(αL i)k、(88)式の右辺第1項の(αR i)kを用いることにより実現される。
更新後の前記接触角は、例えば、(79)式の左辺の行列((78)式のα)、(84)式の左辺の(αL i)k+1、(88)式の左辺の(αR i)k+1を用いることにより実現される。
第1のコスト関数は、例えば、(74)式、(82)式、(86)式を用いることにより実現される((64)式から(74)式、(82)式、(86)式が得られることも参照)。
前記車輪と前記軌条との接触位置での法線荷重の前記左右方向の成分の、前記左右方向の一方側および他方側の前記車輪のそれぞれにおける値は、例えば、(64)式の右辺第1項および第2項を用いることにより実現される。
前記車輪と前記軌条との接触位置での横クリープ力の前記左右方向の成分の、前記左右方向の一方側および他方側の前記車輪のそれぞれにおける値は、例えば、(64)式の右辺第3項および第4項を用いることにより実現される。
前記車輪と前記軌条との接触位置での前記左右方向の一方側および他方側の前記車輪のそれぞれにおける前記横圧を加算した値は、例えば、(64)式の左辺(=QL i+QR i)を用いることにより実現される。
第1の接触角および第2の接触角は、例えば、接触角αL i、αR i(αL 1〜αL 4、αR 1〜αR 4)を用いることにより実現される(例えば、第1の接触角が接触角αL iである場合、第2の接触角は接触角αR iである)。
前記第1のコスト関数における前記横クリープ力は、前記横クリープ力を用いずに、前記輪軸の前記左右方向の速度と、前記台車のヨーイング方向における角変位と、前記前後方向力と、前記鉄道車両の走行速度と、を用いて表現されることは、例えば、(69)式を用いることにより実現される。ここで、前記輪軸の前記左右方向の速度は、例えば、輪軸13a〜13dの左右方向の速度ywi・(yw1・〜yw4・)を用いることにより実現され、前記台車のヨーイング方向における角変位は、例えば、台車12a、12bのヨーイング方向における角速度ψtj(ψt1〜ψt2)を用いることにより実現される。
<請求項3、4>
前記コスト関数として前記第1のコスト関数のみを用いて構成される前記方程式は、例えば、(84)式、(88)式を用いることにより実現される。
前記鉄道車両が前記左右方向の前記他方側に曲がる前記軌道を走行している場合は、例えば、鉄道車両が右側に曲がる曲線軌道を走行している場合に対応する。この場合、前記第1の接触角は、例えば、接触角αL iに対応する((84)式を参照)。また、予め定められた下限値は、例えば、下限値α^を用いることにより実現される((80)式を参照)。
前記鉄道車両が前記左右方向の前記一方側に曲がる前記軌道を走行している場合は、例えば、鉄道車両が左側に曲がる曲線軌道を走行している場合に対応する。この場合、前記第2の接触角は、例えば、接触角αR iに対応する((88)式を参照)。また、予め定められた下限値は、例えば、下限値α^を用いることにより実現される((85)式を参照)。
<請求項5>
第2のコスト関数は、例えば、(75)式を用いることにより実現される。
前記コスト関数として前記第1のコスト関数および前記第2のコスト関数を用いる場合には、前記方程式で未知数となる前記接触角を、前記第1の接触角および前記第2の接触角として、前記第1の接触角および前記第2の接触角を算出することは、例えば、(79)式を用いて、αk+1(=(αL i,αR i)k+1)を算出することにより実現される。
<請求項6>
前記コスト関数として前記第1のコスト関数および前記第2のコスト関数を用いて構成される前記方程式を用いて算出した前記第1の接触角および前記第2の接触角の双方が、予め定められた下限値以下にならない場合は、例えば、(79)式により算出された接触角αL i、αR iの双方が、下限値α^以下にならない場合(即ち、(79)式により算出された接触角αL i、αR iの双方が、下限値α^よりも大きい場合)に対応する。
当該第1の接触角および当該第2の接触角を採用することは、例えば、接触角算出部407が、(79)式を用いて算出した接触角αL i、αR iを採用し、出力部408に出力することにより実現される。
そうでない場合には、前記コスト関数として前記第1のコスト関数のみを用いて構成される前記方程式を用いて算出した前記第1の接触角または前記第2の接触角を採用することは、例えば、接触角算出部407が、(84)式または(88)式を用いて算出した接触角αL i、αR iを採用し、出力部408に出力することにより実現される。
<請求項7>
フィルタ演算手段は、例えば、フィルタ演算部405を用いることにより実現される。
状態方程式は、例えば、(9)式、(10)式、(13)式〜(21)式、(34)式〜(39)式の運動方程式を用いることにより実現される。
観測方程式は、例えば、(34)式〜(37)式、(9)式、(10)式、および(15)式の横振動を記述する運動方程式を用いることにより実現される。
前記台車および前記輪軸の左右方向の加速度は、例えば、台車12a〜12bの左右方向における加速度yt1・・〜yt2・・、輪軸13a〜14dの左右方向における加速度yw1・・〜yw4・・を用いることにより実現される。
前記前後方向力が、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と、当該輪軸が設けられる前記台車のヨーイング方向の角変位との差に応じて定まる力であることは、例えば、前後方向力T1〜T4が、(22)式〜(24)式を用いて表されることにより実現される。
前記台車の前記左右方向の変位および速度は、例えば、台車12a〜12bの左右方向における変位yt1〜yt2、速度yt1・〜yt2・を用いることにより実現される。
前記台車のヨーイング方向の角変位および角速度は、例えば、台車12a〜12bのヨーイング方向における角変位ψt1〜ψt2および角速度ψt1・〜ψt2・を用いることにより実現される。
前記台車のローリング方向の角変位および角速度は、例えば、台車12a〜12bのローリング方向における角変位φt1〜φt2および角速度φt1・〜φt2・を用いることにより実現される。
前記輪軸の前記左右方向の変位および速度は、例えば、輪軸13a〜13dの左右方向における変位yw1〜yw4および速度yw1・〜yw4・を用いることにより実現される。
前記鉄道車両に取り付けられている空気バネのローリング方向の角変位は、例えば、台車12a〜12bに配置された空気バネ(枕バネ)のローリング方向における回動量(角変位)φa1〜φa2を用いることにより実現される。
変換変数は、例えば、変換変数e1〜e4を用いることにより実現される((26)式〜(29)式を参照)。
<請求項8>
第1の周波数調整手段は、例えば、第1の周波数調整部404を用いることにより実現される。
<請求項9>
第2の周波数調整手段は、例えば、第2の周波数調整部406を用いることにより実現される。
Claims (11)
- 車体と台車と輪軸とを有する鉄道車両の車輪と軌条との接触位置における接平面と左右方向とのなす角度である接触角を推定する接触角推定システムであって、
前記鉄道車両を軌道上で走行させることにより測定される測定値のデータである計測データを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段により取得された前記計測データと、前記接触角を未知数とする方程式からなる第1のフィルタとを用いて、前記接触角を算出する接触角算出手段と、を有し、
前記計測データは、前記左右方向の一方側および他方側の前記車輪のそれぞれにおける輪重および横圧の測定値のデータと、前記鉄道車両の走行速度の測定値のデータと、前後方向力の測定値のデータとを含み、
前記前後方向力は、前記輪軸と、当該輪軸が設けられる前記台車との間に配置される部材に生じる前後方向の力であり、
前記部材は、軸箱を支持するための部材であり、
前記前後方向は、前記鉄道車両の走行方向に沿う方向であり、
前記左右方向は、前記前後方向と、前記軌道に対し垂直な方向である上下方向との双方に垂直な方向であり、
前記方程式は、前記接触角の関数であるコスト関数の更新前の前記接触角における微分値と、前記コスト関数の更新前の前記接触角における値と、緩和係数と、更新前の前記接触角と、更新後の前記接触角との関係を表す式を含み、
前記コスト関数は、前記車輪と前記軌条との接触位置での法線荷重の前記左右方向の成分の、前記左右方向の一方側および他方側の前記車輪のそれぞれにおける値と、前記車輪と前記軌条との接触位置での横クリープ力の前記左右方向の成分の、前記左右方向の一方側および他方側の前記車輪のそれぞれにおける値とを加算した値と、前記車輪と前記軌条との接触位置での前記左右方向の一方側および他方側の前記車輪のそれぞれにおける前記横圧を加算した値と、の差を含む第1のコスト関数を含み、
前記方程式における前記接触角は、前記左右方向の一方側の前記車輪と前記軌条との接触位置における接平面と前記左右方向とのなす角度である第1の接触角と、前記左右方向の他方側の前記車輪と前記軌条との接触位置における接平面と前記左右方向とのなす角度である第2の接触角とを含み、
前記方程式において未知数となる前記接触角は、前記第1の接触角と前記第2の接触角との少なくとも何れか一方であり、
前記横圧、前記輪重、前記法線荷重、および前記横クリープ力は、前記車輪と前記軌条との接触位置における値であり、
前記第1のコスト関数における前記横クリープ力は、前記横クリープ力を用いずに、前記輪軸の前記左右方向の速度と、前記台車のヨーイング方向における角変位と、前記前後方向力と、前記鉄道車両の走行速度と、を用いて表現され、
前記ヨーイング方向は、前記上下方向を回動軸とする回動方向であり、
前記接触角算出手段は、前記第1のフィルタに含まれる前記方程式に前記更新前の接触角を与えて前記更新後の前記接触角を算出することを、所定の条件が成立するまで行うことを特徴とする接触角推定システム。 - 前記所定の条件は、更新の回数が1回であるという条件であり、
前記接触角算出手段は、前回のタイミングで前記第1のフィルタを用いて算出した前記更新後の接触角を前記更新前の接触角として前記第1のフィルタに含まれる前記方程式に与えることにより前記更新後の接触角を今回のタイミングにおける前記接触角として算出することを特徴とする請求項1に記載の接触角推定システム。 - 前記接触角算出手段は、前記コスト関数として前記第1のコスト関数のみを用いて構成される前記方程式を用いる場合であって、前記鉄道車両が前記左右方向の前記他方側に曲がる前記軌道を走行している場合には、前記方程式で未知数となる前記接触角を、前記第1の接触角とし、前記方程式における前記第2の接触角を、予め定められた下限値で一定として、前記第1の接触角を算出し、
前記コスト関数として前記第1のコスト関数のみを用いて構成される前記方程式を用いる場合であって、前記鉄道車両が前記左右方向の前記一方側に曲がる前記軌道を走行している場合には、前記方程式で未知数となる前記接触角を、前記第2の接触角とし、前記方程式における前記第1の接触角を、予め定められた下限値で一定として、前記第2の接触角を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の接触角推定システム。 - 前記接触角算出手段は、前記車輪が前記軌条にフランジ接触していると見なせる場合に、前記第1の接触角および前記第2の接触角のうちの一方を、前記方程式で未知数となる前記接触角として算出し、他方を、前記予め定められた下限値で一定とすることを特徴とする請求項3に記載の接触角推定システム。
- 前記コスト関数は、前記第1の接触角と前記第2の接触角との和と、予め定められた一定値との差を含む関数である第2のコスト関数を更に含み、
前記接触角算出手段は、前記コスト関数として前記第1のコスト関数および前記第2のコスト関数を用いる場合には、前記方程式で未知数となる前記接触角を、前記第1の接触角および前記第2の接触角として、前記第1の接触角および前記第2の接触角を算出することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の接触角推定システム。 - 前記接触角算出手段は、前記コスト関数として前記第1のコスト関数のみを用いて構成される前記方程式を用いる場合であって、前記鉄道車両が前記左右方向の前記他方側に曲がる曲線軌道を走行している場合には、前記方程式で未知数となる前記接触角を、前記第1の接触角とし、前記方程式における前記第2の接触角を、予め定められた下限値で一定として、前記第1の接触角を算出し、
前記コスト関数として前記第1のコスト関数のみを用いて構成される前記方程式を用いる場合であって、前記鉄道車両が前記左右方向の前記一方側に曲がる前記軌道を走行している場合には、前記方程式で未知数となる前記接触角を、前記第2の接触角とし、前記方程式における前記第1の接触角を、予め定められた下限値で一定として、前記第2の接触角を算出し、
前記コスト関数として前記第1のコスト関数および前記第2のコスト関数を用いて構成される前記方程式を用いて算出した前記第1の接触角および前記第2の接触角の双方が、予め定められた下限値以下にならない場合には、当該第1の接触角および当該第2の接触角を採用し、そうでない場合には、前記コスト関数として前記第1のコスト関数のみを用いて構成される前記方程式を用いて算出した前記第1の接触角または前記第2の接触角を採用することを特徴とする請求項5に記載の接触角推定システム。 - 前記計測データと、状態方程式と、観測方程式と、を用いて、データ同化を行う第2のフィルタを用いた演算を行うことにより、前記状態方程式で推定値を決定すべき変数である状態変数の推定値を決定するフィルタ演算手段を更に有し、
前記計測データは、前記台車および前記輪軸の左右方向の加速度の測定値を更に含み、
前記前後方向力は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と、当該輪軸が設けられる前記台車のヨーイング方向の角変位との差に応じて定まる力であり、
前記ヨーイング方向は、前記上下方向を回動軸とする回動方向であり、
前記状態方程式は、前記状態変数と、前記前後方向力と、変換変数と、を用いて記述される方程式であり、
前記状態変数は、前記台車の前記左右方向の変位および速度と、前記台車のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記台車のローリング方向の角変位および角速度と、前記輪軸の前記左右方向の変位および速度と、前記鉄道車両に取り付けられている空気バネのローリング方向の角変位と、を含み、前記輪軸の前記ヨーイング方向の角変位および角速度を含まず、
前記ローリング方向は、前記前後方向を回動軸とする回動方向であり、
前記変換変数は、前記輪軸の前記ヨーイング方向の角変位と前記台車の前記ヨーイング方向の角変位とを相互に変換する変数であり、
前記観測方程式は、観測変数と、前記変換変数と、を用いて記述される方程式であり、
前記観測変数は、前記台車および前記輪軸の左右方向の加速度を含み、
前記フィルタ演算手段は、前記観測変数の測定値と、前記前後方向力の値および前記変換変数の実績値を代入した前記状態方程式と、前記変換変数の実績値を代入した前記観測方程式と、を用いて、前記観測変数の測定値と推定値との誤差または当該誤差の期待値が最小になるときの前記状態変数の推定値を決定し、
前記変換変数の実績値は、前記前後方向力の測定値を用いて導出され、
前記接触角算出手段は、前記第1のコスト関数における、前記輪軸の前記左右方向の速度および前記台車のヨーイング方向の角変位として、前記フィルタ演算手段により決定された前記状態変数の推定値を用いることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の接触角推定システム。 - 前記前後方向力の測定値の時系列データから、前記鉄道車両が前記軌道の曲線部を走行することに起因して生じる低周波成分の信号強度を低減する第1の周波数調整手段を更に有し、
前記変換変数の実績値は、前記第1の周波数調整手段により低周波成分の信号強度が低減された前記前後方向力の値を用いて導出され、
前記第1のフィルタを構成する前記方程式、前記状態方程式、および前記観測方程式は、前記軌条の曲率半径を含まない式であることを特徴とする請求項7に記載の接触角推定システム。 - 前記状態変数の推定値から、前記鉄道車両が前記軌道の曲線部を走行することに起因して生じる低周波成分の信号強度を低減する第2の周波数調整手段を更に有し、
前記接触角算出手段は、前記第1のコスト関数における、前記輪軸の前記左右方向の速度および前記台車のヨーイング方向の角変位として、前記第2の周波数調整手段により低周波成分の信号強度が低減された前記状態変数の推定値を用いることを特徴とする請求項7または8に記載の接触角推定システム。 - 車体と台車と輪軸とを有する鉄道車両の車輪と軌条との接触位置における接平面と左右方向とのなす角度である接触角を推定する接触角推定方法であって、
前記鉄道車両を軌道上で走行させることにより測定される測定値のデータである計測データを取得するデータ取得工程と、
前記データ取得工程により取得された前記計測データと、前記接触角を未知数とする方程式からなる第1のフィルタとを用いて、前記接触角を算出する接触角算出工程と、を有し、
前記計測データは、前記左右方向の一方側および他方側の前記車輪のそれぞれにおける輪重および横圧の測定値のデータと、前記鉄道車両の走行速度の測定値のデータと、前後方向力の測定値のデータとを含み、
前記前後方向力は、前記輪軸と、当該輪軸が設けられる前記台車との間に配置される部材に生じる前後方向の力であり、
前記部材は、軸箱を支持するための部材であり、
前記前後方向は、前記鉄道車両の走行方向に沿う方向であり、
前記左右方向は、前記前後方向と、前記軌道に対し垂直な方向である上下方向との双方に垂直な方向であり、
前記方程式は、前記接触角の関数であるコスト関数の更新前の前記接触角における微分値と、前記コスト関数の更新前の前記接触角における値と、緩和係数と、更新前の前記接触角と、更新後の前記接触角との関係を表す式を含み、
前記コスト関数は、前記車輪と前記軌条との接触位置での法線荷重の前記左右方向の成分の、前記左右方向の一方側および他方側の前記車輪のそれぞれにおける値と、前記車輪と前記軌条との接触位置での横クリープ力の前記左右方向の成分の、前記左右方向の一方側および他方側の前記車輪のそれぞれにおける値とを加算した値と、前記車輪と前記軌条との接触位置での前記左右方向の一方側および他方側の前記車輪のそれぞれにおける前記横圧を加算した値と、の差を含む第1のコスト関数を含み、
前記方程式における前記接触角は、前記左右方向の一方側の前記車輪と前記軌条との接触位置における接平面と前記左右方向とのなす角度である第1の接触角と、前記左右方向の他方側の前記車輪と前記軌条との接触位置における接平面と前記左右方向とのなす角度である第2の接触角とを含み、
前記方程式において未知数となる前記接触角は、前記第1の接触角と前記第2の接触角との少なくとも何れか一方であり、
前記横圧、前記輪重、前記法線荷重、および前記横クリープ力は、前記車輪と前記軌条との接触位置における値であり、
前記第1のコスト関数における前記横クリープ力は、前記横クリープ力を用いずに、前記輪軸の前記左右方向の速度と、前記台車のヨーイング方向における角変位と、前記前後方向力と、前記鉄道車両の走行速度と、を用いて表現され、
前記ヨーイング方向は、前記上下方向を回動軸とする回動方向であり、
前記接触角算出工程は、前記第1のフィルタに含まれる前記方程式に前記更新前の接触角を与えて前記更新後の前記接触角を算出することを、所定の条件が成立するまで行うことを特徴とする接触角推定方法。 - 請求項1〜9の何れか1項に記載の接触角推定システムの各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
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