JP7085105B2 - ビタミンd3誘導体の製剤 - Google Patents

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本発明は、ビタミンD誘導体の新規な医薬製剤に関する。
天然のビタミンD類を化学修飾した、非天然の活性型ビタミンD誘導体は、多様な生理活性を有しており、それらの化合物は医薬品として開発されている。特に式(1)
Figure 0007085105000001

で表される1α,25-ジヒドロキシ-2β-(3-ヒドロキシプロポキシ)ビタミンD(化合物(1))は、骨粗しょう症治療薬として開発されている(特許文献1、非特許文献1)。化合物(1)の製剤としては、化合物(1)を油脂に溶解させた油状製剤(特許文献2)が知られているが、錠剤等の固形製剤は知られていない。なお、天然のビタミンD類の製剤として、ビタミンDとアミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを含む固形製剤(特許文献3)や、ビタミンD類をポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(AEA)等の塩基性高分子中に分散させる固形製剤、若しくはビタミンD類、有機溶媒に易溶性の賦形剤(ポリビニルピロリドン等)及び塩基性物質(リン酸水素2ナトリウム等)からなる固形製剤(特許文献4)が知られている。しかしながら、これらの製剤は天然のビタミンD類に関するものであり、非天然のビタミンD誘導体、特に化合物(1)の固形製剤は知られていなかった。また、特許文献3に記載の天然型ビタミンDの製剤は、50℃30日での残存率が92~95%程度であり、分解物の生成量については報告がない。また、特許文献4に記載のビタミンD類の固形製剤については、ビタミンD類の分解物の生成を抑制できるかについては触れられていなかった。さらに、熱異性体の生成を抑制するためには、微粉化操作が必要であった(特許文献4)。
特公平6-23185号 特開2012-72169号 特開平4-208225号 特開平5-279260号
ドラッグス、2011年、71巻、1755-1770ページ
本発明は、化合物(1)の新規な医薬製剤を提供する。
厚生労働省発行のガイドライン(ICH Harmonized Tripartite Guideline (Impurities in New Drug Products, Q3B(R), ICH Steering Committee, 2003)によると、製剤中のある分解物の含量が1%を越える場合は、その分解物の安全性を確認することが必須条件とされている。したがって、薬物の製剤化に際しては、製剤中の各分解物の含量がそれぞれ1%を越えないことが重要となる。
そこで本発明者らは、鋭意検討した結果、化合物(1)を塩基性高分子に分散させた製剤において、化合物(1)の分解物の生成を、医薬品として実用的な範囲に抑制できることを見出し、さらに先行技術を応用した製剤よりも熱異性体の生成を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下に関する。
[1]
式(1)
Figure 0007085105000002

で表される化合物(化合物(1))及び塩基性高分子を含む医薬製剤。
[2]
塩基性高分子の量が、化合物(1)の1質量倍以上である、[1]に記載の医薬製剤。
[3]
塩基性高分子が、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーEである、[1]に記載の医薬製剤。
[4]
添加剤として抗酸化剤を含む、[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の医薬製剤。
[5]
抗酸化剤が、α-トコフェロールである、[4]に記載の医薬製剤。
[6]
添加剤として賦形剤を含む、[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の医薬製剤。
[7]
賦形剤が、結晶セルロース、マンニトール又は乳糖である、[6]に記載の医薬製剤。
[8]
固形製剤である、[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の医薬製剤。
本発明により、化合物(1)の分解物および熱異性体の生成が抑制された新規医薬製剤が提供できた。
実施例1、2及び比較例1の製剤の、安定性試験の結果を示す。
以下、さらに詳細に本発明を説明する。
本発明に用いる塩基性高分子としては、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE(オイドラギットE)等の(メタ)アクル酸の共重合体類、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(AEA)等のポリビニルアセテート類等が挙げられる。好ましい塩基性高分子は、(メタ)アクル酸の共重合体類であり、より好ましくは、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーであり、さらに好ましくはアミノアルキルメタアクリレートコポリマーE(オイドラギットE100)である。
塩基性高分子の使用量は、化合物(1)に対して1質量倍以上、好ましくは10~200000質量倍であり、より好ましくは100~20000質量倍である。
本明細書中、「化合物(1)の分解物」とは、化合物(1)を保存した際に生成する主要な分解物を意味する。化合物(1)の分解物としては、例えば、特開2012-72169号に記載された、タキステロール型異性体(化合物(2))が挙げられる。
Figure 0007085105000003
本明細書中、「化合物(1)の熱異性体」とは、固体および溶液中で化合物(1)と平衡関係にある異性体であり、式(3)で表される化合物を意味する。
式(3)
Figure 0007085105000004
本発明の医薬製剤は、必要に応じてさらに適当な添加物(賦形剤、結合剤、崩壊剤、抗酸化剤、抗酸化剤との共働体、着色剤、滑沢剤、低融点油脂状物質等)を加えてもよい。
本発明の医薬製剤は公知の方法に従い、例えば錠剤、顆粒剤、散剤等の固形製剤とすることができる。好ましい固形製剤は、錠剤である。
賦形剤としては、例えばデンプン(例、トウモロコシデンプン等)、結晶セルロース、デキストリン、乳糖、マンニトール、ソルビトール、無水リン酸カルシウム、白糖、タルク(天然合水ケイ酸マグネシウム)、カオリン、沈降炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、酸化チタン、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。好ましくは、結晶セルロース、マンニトール又は乳糖である。
結合剤としては、例えばデンプン、デキストリン、トラガント、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えばデンプン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カンテン末等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、レシチン、α-トコフェロール、ヒドロキノン、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、没食子酸イソアミル、ノルジヒドログアイアレティック酸、グアヤク脂、α-ナフチルアミン、プロトカテキュ酸エチル(EPG)アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、システイン塩酸塩、アスコルビン酸ステアリン酸ナトリウム、チオグリセロール、チオソルビトール等が挙げられる。好ましくは、ブチルヒドロキシトルエン又はα-トコフェロールであり、より好ましくは、α-トコフェロールである。
抗酸化剤の共働体としては、例えばジヒドロキシエチルグリシン、エチレンジアミン四酢酸、グリセリン、フェニルアラニン、ソルビトール、トリプトファン等が挙げられる。
着色剤としては、例えば厚生省令で定めた医薬品等に使用することができるタール色素等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えばタルク、デンプン、ステアリン酸マグネシウムおよびカルシウム、ホウ酸、パラフィン、ココアバター、マクロゴール、ロイシン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
低融点油脂状物質としては、例えばアルキレンオキシド(例、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン等)の重合体又は共重合体が挙げられる。
本発明の一つの態様として、添加剤として抗酸化剤を含む医薬製剤が挙げられる。なお、前述の天然型ビタミンDの製剤(特許文献3:特開平4-208225号)及びビタミンD類の製剤(特許文献4:特開平5-279260号)には、抗酸化剤は含まれていない。
化合物(1)及び塩基性高分子を含む医薬製剤は、例えば次の方法により製造される。化合物(1)を有機溶媒に溶解した溶液を、塩基性高分子の有機溶媒溶液に加えて撹拌、混合し、その後、この溶液を賦形剤(例、乳糖、マンニトール、シクロデキストリン、カゼイン、デンプン等)に添加し、混合して均一とし、次いで有機溶媒を留去する。
ここで用いる有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒;ジクロルメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒などが挙げられる。好ましい有機溶媒は、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒である。有機溶媒は、2種以上を混合して用いてもよい。
以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例および試験例中、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを意味する。
実施例1
化合物(1)(0.5mg)をエタノール(0.5mL)に溶解し、これにα-トコフェロールのエタノール溶液(50mg/mL、0.5mL)を加えた。これをアミノアルキルメタアクリレートコポリマーE(オイドラギットE100)のエタノール溶液(250mg/mL、2mL)と混合した。この溶液を粒状の結晶セルロース(9.5g)に加え、混合した。ついでこれを30℃、18時間で真空乾燥してエタノールを留去し、固形製剤を得た。
実施例2
化合物(1)(0.5mg)をエタノール(0.5mL)に溶解し、これにα-トコフェロールのエタノール溶液(50mg/mL、0.5mL)を加えた。これをアミノアルキルメタアクリレートコポリマーE(オイドラギットE100)のエタノール溶液(250mg/mL、2mL)と混合した。この溶液をマンニトール(9.5g)に加え、混合した。ついでこれを30℃、18時間で真空乾燥してエタノールを留去し、固形製剤を得た。
比較例1
化合物(1)(0.5mg)をエタノール(0.5mL)に溶解し、これにα-トコフェロールのエタノール溶液(50mg/mL、0.5mL)を加えた。これを有機溶媒に易溶性の高分子である、ポリビニルピロリドン(PVP)のエタノール溶液(250mg/mL、2mL)と混合し、さらに水酸化ナトリウム溶液(1mol/L,1mL)を加え、混合した。この溶液を粒状の結晶セルロース(9.5g)に加え、混合した。ついでこれを30℃、18時間で真空乾燥してエタノールを留去し、対照物1を得た。
試験例1
実施例1、2及び比較例1の製剤を60℃で保管し、化合物(1)、熱異性体、類縁物質の量をHPLCで測定した。なお残存率は、保存開始時の化合物(1)と熱異性体の合計量に対する保存後の合計量(保存開始時、保存後の何れも、HPLC定量により算出。HPLC定量は、検量線法に従い行った。)の比率を表す。また、熱異性体含量及び類縁物質総量は、HPLCで検出されたピークの総面積を100%とした際の、各ピークの比率を表す。経時変化を図1に示す。
試験例1で用いたHPLC測定条件
装置:アジレントテクノロジーズ Agilent1260
カラム:クロマニックテクノロジーズ製SunShell C18(3.0mm×100mm、粒子径2.6μm)
カラム温度:30℃
移動相A:水
移動相B:アセトニトリル
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を表1のように変えて濃度勾配制御した。表中、「Vol」は体積を意味する。
Figure 0007085105000005
流速:0.4ml/分
検出器:紫外吸光光度計(265nm、光路長60mm)
また、試験例1の安定性試験の結果を、表2に示す。
Figure 0007085105000006
図1および表2に示される通り、本発明の固形製剤は、化合物(1)の含量低下を抑制し、熱異性体および類縁物質の生成を抑制した。
実施例3
化合物(1)(10mg)をエタノール(20mL)に溶解した。この化合物(1)エタノール溶液(20μL)に、オイドラギットE100のエタノール溶液(100mg/mL、200μL)を加え、さらにマンニトール(180mg)を加え、撹拌した。ついでこれを30℃、21時間で真空乾燥してエタノールを留去し、化合物(1)の固形製剤を得た。
実施例4
化合物(1)(10mg)をエタノール(20mL)に溶解した。この化合物(1)エタノール溶液(20μL)に、オイドラギットE100のエタノール溶液(100mg/mL、200μL)およびα-トコフェロールのエタノール溶液(50mg/mL、2μL)を加え、さらにマンニトール180mgを加え、撹拌した。ついでこれを30℃、21時間で真空乾燥してエタノールを留去し、化合物(1)の固形製剤を得た。
比較例4
化合物(1)(10mg)をエタノール(20mL)に溶解した。この化合物(1)エタノール溶液(20μL)に、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(AEA)のエタノール溶液(100mg/mL、200μL)を加え、さらにマンニトール(180mg)を加え、撹拌した。ついでこれを30℃、21時間で真空乾燥してエタノールを留去し、化合物(1)の固形製剤を得た。
実施例6
化合物(1)(10mg)をエタノール(20mL)に溶解した。この化合物(1)エタノール溶液(20μL)に、オイドラギットE100のエタノール溶液(100mg/mL、200μL)を加え、さらに乳糖水和物(180mg)を加え、撹拌した。ついでこれを30℃、21時間で真空乾燥してエタノールを留去し、化合物(1)の固形製剤を得た。
比較例2
化合物(1)(10mg)をエタノール(20mL)に溶解した。この化合物(1)エタノール溶液(20μL)に、ポリビニルピロリドンのエタノール溶液(100mg/mL、200μL)を加え、さらにマンニトール(180mg)を加え、撹拌した。ついでこれを30℃、21時間で真空乾燥してエタノールを留去し、対照物2を得た。
比較例3
化合物(1)(10mg)をエタノール(20mL)に溶解した。この化合物(1)エタノール溶液(20μL)に、ポリビニルピロリドンのエタノール溶液(100mg/mL、200μL)を加え、さらにマンニトール(170mg)およびリン酸水素二ナトリウム(10mg)を加え、撹拌した。ついでこれを30℃、21時間で真空乾燥してエタノールを留去し、対照物3を得た。
試験例2
実施例3~4、6及び比較例2~の固形製剤を、60℃で1週間及び2週間保存した後、化合物(1)、熱異性体、類縁物質の量をHPLCで測定した。残存率、熱異性体含量及び類縁物質総量は、試験例1と同じ方法で算出した。安定性試験の結果を表3に示す。
Figure 0007085105000007
試験例2で用いたHPLC測定条件
装置:アジレントテクノロジーズ Agilent1260
クロマニックテクノロジーズ製SunShell C18(3.0mm×100mm、粒子径2.6μm)
カラム温度:20℃
移動相A:水
移動相B:アセトニトリル
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を表4のように変えて濃度勾配制御した。表中、「Vol」は体積を意味する。
Figure 0007085105000008

流速:0.6ml/分
検出器:紫外吸光光度計(265nm、光路長60mm)
表3に示される通り、本発明の固形製剤は、化合物(1)の含量低下を抑制し、熱異性体および類縁物質の生成を抑制した。
本発明により、化合物(1)の分解物および熱異性体の生成が抑制された、新規医薬製剤が提供できる。

Claims (7)

  1. 式(1)

    Figure 0007085105000009
    で表される化合物(化合物(1))及びアミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを含む医薬製剤。
  2. アミノアルキルメタアクリレートコポリマーEの量が、化合物(1)の1質量倍以上である、請求項1に記載の医薬製剤。
  3. 添加剤として抗酸化剤を含む、請求項1又は2に記載の医薬製剤。
  4. 抗酸化剤が、α-トコフェロールである、請求項に記載の医薬製剤。
  5. 添加剤として賦形剤を含む、請求項1乃至のいずれか1項に記載の医薬製剤。
  6. 賦形剤が、結晶セルロース、マンニトール又は乳糖である、請求項に記載の医薬製剤。
  7. 固形製剤である、請求項1乃至のいずれか1項に記載の医薬製剤。
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