JP7083140B1 - 板材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ヤシ樹幹の同一切り出し部から分別された維管束と柔組織を、その特性に応じ両者を合わせて有効利用することによって原料の無駄を生じることなく十分な強度と良好な外観を有する板材を得る。【解決手段】ヤシ樹幹の同一切り出し部から分別された維管束を主体とする第1分別部とヤシ樹幹から分別された柔組織を主体とする第2分別部が使用され、第1分別部で所定厚の基板部11が構成されるとともに、第2分別部で基板部11の少なくとも一方の面を覆う表層部12が構成され、基板部11と表層部12が熱圧着されている。【選択図】 図1

Description

本発明は板材およびその製造方法に関し、特にヤシ樹幹を分別して得られる維管束を主体とした基板部と柔組織を主体とした表層部で構成される板材およびその製造方法に関するものである。
ヤシ繊維から製造される繊維板については特許文献1に示されており、ここでは、水中に浸漬したココヤシのヤシ殻を解繊しあるいは油ヤシの空果房を解繊して得たヤシ繊維を加熱圧縮して得られる繊維板が提案されている。また、特許文献2には合板やパーティクルボード等の木質板の表面に、柔組織を含むヤシの粉砕物と多価カルボン酸とを含有するバイオマス組成物を熱圧成形して、木質板の表層に耐水性を付与した木質複合板の製造方法が示されている。
特開平9-314524 特開2019-89249
しかし、特許文献1では、ヤシ殻や空果房から得られたヤシ繊維を使用した繊維板を提案するのみで、ヤシ樹幹を構成する柔組織の利用については何も示唆していない。一方、特許文献2では柔組織を含むバイオマス組成物を表面に形成することによって、針葉樹や広葉樹を材料とするパーティクルボード等の木質板の表面硬度を向上させることが示されているが、ヤシ樹幹を構成する維管束の有効利用については何も示唆していない。ヤシ樹幹は主に維管束と柔組織から構成されており、ヤシ樹幹から得られるこれら維管束と柔組織をその特性に応じて両者合わせて有効利用することによってヤシ樹幹を無駄なく使用することが環境保護の観点から求められている。
ここにおいて本発明はこのような要請に鑑みたもので、ヤシ樹幹から分別された維管束と柔組織を、その特性に応じ両者を合わせて有効利用することによって原料の無駄を生じることなく十分な強度と良好な外観を有する板材を得ることを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本第1発明の板材(1)は、ヤシ樹幹から分別された成分のみからなり維管束を主体とする第1分別部とヤシ樹幹から分別された成分のみからなり柔組織を主体とする第2分別部が使用され、前記第1分別部で所定厚の基板部(11)が構成されるとともに、前記第2分別部で前記基板部(11)の両面を覆って全体の曲げ強度および曲げヤング係数を向上させる所定厚の表層部(12)が構成され、前記基板部(11)と前記表層部(12)が熱圧着されている。
本第1発明によれば、維管束を主体とする第1分別部からなる基板部の少なくとも一方の面に柔組織を主体とする第2分別部からなる表層部が熱圧着されていることにより、板材は十分な機械的強度を発揮する。加えて、表層部の存在によって良好な外観が得られる。また、ヤシ樹幹を主に構成する維管束と柔組織を両者合わせて使用することにより、ヤシ樹幹を無駄なく使用することができ、環境保護に大きく資することができる。また、合成樹脂系接着剤を全く使用することなくヤシ樹幹に含まれるリグニンや糖類、デンプンによると思われる自己接着作用によって第1分別部や第2分別部の内部、および第1分別部と第2分別部が熱圧着され相互に接着されるから、上述のように十分な機械的強度が発揮されるとともに接着剤の使用によるシックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド等の発生も十分に抑えることができる。
本第2発明では、前記第1分別部が500~900重量部使用されるとともに前記第2分別部が100~300重量部使用され、板材全体の比重が0.7~0.9である。
本第3発明では、前記分別は重力分級を主とするものである。
本第3発明によれば、重力分級によって第1分別部および第2分別部を簡易な構造で効率的に分別することができる。
本第4発明の板材の製造方法は、ヤシ樹幹から維管束を主体とする第1分別部と柔組織を主体とする第2分別部を分別し、層状とした前記第1分別部の両側に、層状とした前記第2分別部を重ねて、これら第1分別部と第2分別部を熱圧着することにより、前記第1分別部のみで構成された基板部(11)と前記第2分別部のみで構成されて全体の曲げ強度および曲げヤング係数を向上させる表層部(12)を有する板材(1)を得る。
本第5発明では、前記熱圧着を、圧力2~4MPa、温度160~200℃で、20~40分間行う。
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
以上のように、本発明によれば、ヤシ樹幹から分別された維管束と柔組織を、その特性に応じ両者を合わせて有効利用することによって原料の無駄を生じることなく十分な強度と良好な外観を有する板材を得ることができる。
板材の構造を示す概略断面図である。
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
本発明の板材の構造の一例を図1に示し、板材1は中央の基板部11と、その両面に形成された表層部12とから構成されている。基板部11は、ヤシ樹幹のから物理的に分別された、維管束を主体とする成分からなり、表層部は、ヤシ樹幹から物理的に分別された、柔組織を主体とした成分からなる。
物理的な分別とは化学的処理を伴わない分別を意味し、例えば特許第6699040号に示されているような、ロータリレースでかつら剥きにされたヤシ樹幹の乾燥した単板を重力分級機で重量物と軽量物に分別し、その後、重力分級機の後段に設けた篩機によって、上記重量物から維管束を主体とする分別部Lや柔組織を主体とする分別部SSを得るとともに、上記軽量物を集塵機で捕集して柔組織を主体とする分別部BFを得るものである。ここで、分別部Lは特許請求の範囲にいう第1分別部に相当し、分別部SS,BFは特許請求の範囲にいう第2分別部に相当する。分別に科学的処理を伴わないことにより、各分別部L,SS,BFはヤシ樹幹本来の成分のみで構成される。
表1には、分別部L、分別部SS,分別部BFの組成の一例を示す。表1から明らかなように、分別部Lは、2mmの網目で捕集される成分が1.1wt%、1mmの網目で捕集される成分が62.9wt%、355μmの網目で捕集される成分が31.1wt%、250μmの網目で捕集される成分が1.7wt%、180μmの網目で捕集される成分が1.0wt%、180μmの網目を通過した成分が2.2wt%である。他の分別部SS,BFについても同様に表1からその組成が看取できる。
Figure 0007083140000002
ヤシ樹幹の維管束は大部分が2mmないし1mmの網目で捕集されると考えられ、一方ヤシ樹幹の柔組織は大部分が355μm、250μm、180μmの網目で捕集され、ないし180μmの網目を通過するものであると考えられる。したがって、分別部Lはその組成が維管束を主体とするものであり、分別部SS,BFはその組成が柔組織を主体とするものであることが明らかである。
総じて、分別部Lは1mm以上の網目で捕集される平均長さ10~30mmの維管束が60wt%以上を占めるものである。また分別部SSは長さ5mm未満のそれほど機械的強度に影響しない維管束を含むものの、355μmの網目で捕集される柔組織が60wt%以上を占めるものである。そして、分別部BFは180μmの網目を通過する柔組織が60wt%以上を占めるものである。
このような各分別部L,SS,BFを使用して、圧力2~4MPaで熱圧成形することにより25cm角で10~12mm厚、比重0.63~0.87の板材を得た。その結果を表2に示す。なお、表中の曲げ強度(MOR)および曲げヤング係数(MOE)の測定はJISA5908で規定される方法によった。
Figure 0007083140000003
表2から判明する特徴的な事項は以下のとおりである。なお、表中の「構成」欄の単位は重量部(g)である。
(1)分別部Lだけを700g使用した一層構造のものを160℃で30分間熱圧成形して得られた板材(表2中の比較例)のMORは2.49N/mm2、MOEは774N/mm2であるのに対して、分別部SSを100g使用した層の上に、分別部Lを700g使用した層を重ね、さらにその上に分別部SSを100g使用した層を重ねた三層構造のものを同条件で熱圧成形すると(表2中の実施例1)、MORは4.78N/mm2、MOEは1603N/mm2と大きく向上する。
このことは、維管束を主体とする分別部Lよりなる基板部11だけから構成された板材1よりも、維管束を主体とする分別部Lよりなる基板部11の両側に、柔組織を主体とする分別部SSよりなる表層部12が熱圧着された板材1の方が優れた機械的強度を有することを示している。また、当該板材1は上記表層部12を有することによって表面が滑らかで見栄えが良い。
なお、表2中の参考例は、分別部Lを500g使用した基板部11の上下に、分別部SSをそれぞれ100g使用した表層部12を形成した板材1についてものであり、これによると比重やMORは比較例とほぼ同等であるが、MOEは大きくなっている。これは、分別部Lよりなる基板部11の両側に分別部SSよりなる表層部12を形成することで充填効果が高まって剛性(MOE)が向上することを示している。
(2)表層部12を上記(1)に示した分別部SSで構成するのに代えて分別部BFを使用した板材1(表2中の実施例2)のMORは12.08N/mm2、MOEは2769N/mm2と、その機械的強度がJISA5908で規定されている建築用板材として十分使用可能な程度に大きくなる。また表層部12の存在によって板材1の表面は滑らかで見栄えも良い。
(3)上記(1)と同様の三層構造としたものを、180℃で30分間熱圧成形して得られた表層部12、基板部11、表層部12よりなる板材1(表2中の実施例3)のMORは8.06N/mm2、MOEは1868N/mm2と機械的強度が増大する。
このことは、熱圧成形時の温度が高い方が板材の機械的強度が高くなることを示している。ただ、温度を高くするとこれに応じて設備費や運転費も増大するから自ずから限度があり、200℃までが現実的である。また、熱圧時間は20~40分が好適な範囲である。
なお、本板材の湿潤時のMORは0.94N/mm2、厚さ膨潤は34.6%であり、ある程度の湿潤環境でも使用可能である。
(4)分別部SSを200g使用した層の上に、分別部Lを500g使用した層を重ね、さらにその上に分別部SSを200g使用した層を重ねた三層構造のものを180℃で30分間熱圧成形して表層部12、基板部11、表層部12よりなる板材1(表2中の実施例4)にすると、そのMORは10.02N/mm2、MOEは2457N/mm2と機械的強度はさらに大きくなる。
(5)さらに分別部SSを240g使用した層の上に、分別部Lを840g使用した層を重ね、さらにその上に分別部SSを240g使用した層を重ねた三層構造のものを180℃で30分間熱圧成形して表層部12、基板部11、表層部12よりなる板材1(表2中の実施例5)にすると、そのMORは11.85N/mm2、MOEは3032N/mm2と機械的強度はより一層大きくなる。
総じて、板材1の比重は0.7~0.9とするのが良く、板材1における分別部Lは500~900重量部の範囲とし、分別部SS又はBFは100~300重量部の範囲とするのが良い。
板材1は、合成樹脂系接着剤を全く使用しておらず、各分別部L,SS,BFに含まれるリグニンや糖類、デンプンによると思われる自己接着作用によって互いに結合しているから、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの放出は極めて少ない。ちなみに小形チャンバー法試験の結果では、ホルムアルデヒド発散速度は、第三種ホルムアルデヒド発散建築材料に区分される0.005mg/m2h~0.02mg/m2hの範囲に収まっている。
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態において、表層部12は基板部11のいずれか一方のみに形成するようにしても良い。
物理的な分別方法としては上記実施形態に記載したもの以外に、例えばハンマーミルと篩の組み合わせ等がある。
1…板材、11…基板部、12…表層部。

Claims (7)

  1. ヤシ樹幹から分別された成分のみからなり維管束を主体とする第1分別部とヤシ樹幹から分別された成分のみからなり柔組織を主体する第2分別部が使用され、前記第1分別部で所定厚の基板部が構成されるとともに、前記第2分別部で前記基板部の両面を覆って全体の曲げ強度および曲げヤング係数を向上させる所定厚の表層部が構成され、前記基板部と前記表層部が熱圧着されている板材。
  2. 前記第1分別部が500~900重量部使用されるとともに前記第2分別部が100~300重量部使用され、板材全体の比重が0.7~0.9である請求項1に記載の板材。
  3. 前記分別は重力分級を主とするものである請求項1に記載の板材。
  4. ヤシ樹幹から維管束を主体とする第1分別部と柔組織を主体とする第2分別部を分別し、層状とした前記第1分別部の両側に、層状とした前記第2分別部を重ねて、これら第1分別部と第2分別部を熱圧着することにより、前記第1分別部のみで構成された基板部と前記第2分別部のみで構成されて全体の曲げ強度および曲げヤング係数を向上させる表層部を有する板材を得る、板材の製造方法。
  5. 前記第1分別部を500~900重量部使用するとともに前記第2分別部を100~300重量部使用して、全体の比重が0.7~0.9の板材を製造する請求項4に記載の板材の製造方法。
  6. 前記熱圧着を、圧力2~4MPa、温度160~200℃で、20~40分間行う請求項4に記載の板材の製造方法。
  7. 前記分別は重力分級を主とするものである請求項4に記載の板材の製造方法。
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