以下に、本発明の実施の形態にかかる列車制御システム、運行管理装置、および列車制御方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる列車制御システムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる列車制御システム100は、運行管理装置10と、複数の車上装置20と、通信システム30と、信号システム40とを備える。
運行管理装置10は、複数の車上装置20と通信システム30を介して通信可能に接続される。複数の車上装置20は、直流電化区間を走行する複数の列車1に各々搭載される。各列車1は、レール5を走行するための車輪2と、架線6から供給される電力供給を受けるためのパンタグラフ3とを備える。
架線6は複数の変電所7に接続されており、変電所7から列車1への電力供給が行われる。架線6は、互いに異なる変電所7に接続される架線61,62を含む。なお、変電所7から架線6へは、直流電力が供給される。
列車1は、パンタグラフ3を介して架線6から供給される電力供給を受け、列車1に設けられた不図示のモータを駆動させることで車輪2を回転させる。これにより、列車1がレール5上を走行することができる。
通信システム30は、レール5に沿って互いに間隔を空けて配置される複数の地上通信装置31と、複数の地上通信装置31と運行管理装置10との間に設けられる通信網32とを含む。運行管理装置10は、通信網32を介して複数の地上通信装置31から情報を取得することができる。また、運行管理装置10は、地上通信装置31および通信網32を介して各列車1に搭載された車上装置20との間で通信することができる。
信号システム40は、レール5に沿って互いに間隔を空けて配置される複数の軌道回路41と、複数の軌道回路41と運行管理装置10との間に設けられる通信網42とを含む。複数の軌道回路41は、レール5のうち互いに異なる区間での列車1の在線の状態を検出する。運行管理装置10は、通信網42を介して複数の軌道回路41から各列車1の在線情報を取得することができる。
なお、図1に示す例では、列車1、変電所7、地上通信装置31、および軌道回路41を各々2つずつ示しているが、列車1、変電所7、地上通信装置31、および軌道回路41の数は、図1に示す例に限定されない。
架線6には、空気を絶縁体として変電所7間で異なる電力系統を絶縁するエアセクションと呼ばれる設備が設けられている。図1に示すエアセクションでは、互いに異なる変電所7に接続された架線61と架線62とが並行に敷設されている。かかるエアセクション内に在線する列車1は、パンタグラフ3が架線61,62のいずれにも接触する。
ここで、変電所7から架線6を介した列車1への直流電力の供給について説明する。図2および図3は、実施の形態1にかかる列車が変電所のき電区間に在線する場合の電力供給を説明するための図である。図4は、実施の形態1にかかる列車がエアセクション内に在線する場合の電力供給を説明するための図である。なお、列車1がエアセクション内に在線するとは、パンタグラフ3がエアセクション区間にある架線6に接触している状態の列車1が在線することを意味する。
ここで、図2から図4に示すように、架線61と架線62とが並行に敷設されているエアセクションの区間をエアセクション区間と記載する。また、パンタグラフ3が架線61のみに接触する区間を変電所71のき電区間と記載し、パンタグラフ3が架線62のみに接触する区間を変電所72のき電区間と記載する。
図2に示すように、変電所71は、電力会社から供給される交流電力を直流電力に変換する受変電機器711を有している。同様に、変電所72は、電力会社から供給される交流電力を直流電力に変換する受変電機器712を有している。かかる受変電機器711,712は、例えば、不図示の断路器と不図示の遮断器とを備えており、列車1への電力供給を行う電力供給回路の開閉制御を行うことができる。
受変電機器711は、電路721によって架線61に電気的に接続され、電路731によってレール5に電気的に接続されており、電路721,731、レール5、および架線61を介して列車1へ直流電力を供給することができる。同様に、受変電機器712は、電路722によって架線62に電気的に接続され、電路732によってレール5に電気的に接続されており、電路722,732、レール5、および架線62を介して列車1へ直流電力を供給することができる。
図2に示すように、列車1が変電所71のき電区間を走行中である場合、列車1のパンタグラフ3は、架線61に接触している。そのため、受変電機器711、電路721、架線61、パンタグラフ3、車輪2、レール5、電路731、および受変電機器711の順に電流I1が流れる閉ループR1の電気回路が形成される。したがって、変電所71のき電区間を走行中である列車1には、電流I1が流れることで変電所71から電力が供給される。
また、図3に示すように、列車1が変電所72のき電区間を走行中である場合、列車1のパンタグラフ3は、架線62に接触している。そのため、受変電機器712、電路722、架線62、パンタグラフ3、車輪2、レール5、電路732、および受変電機器712の順に電流I2が流れる閉ループR2の電気回路が形成される。したがって、変電所72のき電区間を走行中である列車1には、電流I2が流れることで変電所72から電力が供給される。
また、図4に示すように、列車1がエアセクション区間を走行中である場合、列車1のパンタグラフ3は、架線61と架線62とに接触している。そのため、上述した閉ループR1の電気回路と、上述した閉ループR2の電気回路が共に形成される。したがって、エアセクション区間を走行中である列車1は、変電所71および変電所72の一方からまたは変電所71と変電所72とから同時に電力の供給を受けることが可能である。
このように、変電所71のき電区間と変電所72のき電区間との間にエアセクションが設けられているため、列車1は架線6から連続して電力供給を受けることができる。また、架線61と架線62とが電気的に互いに絶縁されるため、き電事故の影響範囲を限定することができる。
パンタグラフ3を上げた状態の列車1がエアセクション内で停止していると、架線61,62の一方の架線にき電事故が発生した場合、他方の架線にもき電事故の影響が及ぶ可能性がある。なお、列車1がエアセクション内で停止しているとは、パンタグラフ3がエアセクション区間にある架線6に接触している状態で列車1が停止していることを意味する。
また、列車1がパンタグラフ3を上げた状態で、エアセクション内に停止し、その状態が長時間継続する場合に、パンタグラフ3と架線61との接触状況、パンタグラフ3と架線62との接触状況、列車に対する電力供給の状況などにより、架線61,62の溶断などを引き起こす可能性がある。
そこで、実施の形態1にかかる列車制御システム100は、エアセクション内に在線し停止している列車1のパンタグラフ3を下降する。図5は、実施の形態1にかかるエアセクション内で停止している列車のパンタグラフの制御を説明するための図である。
列車制御システム100の運行管理装置10は、複数の列車1のうちエアセクション内に在線し且つ停止している列車1の車上装置20へ、パンタグラフ3を降下させるためのパンタグラフ下降遠隔操作信号を送信する。エアセクション内に在線し且つ停止している列車1の車上装置20は、パンタグラフ下降遠隔操作信号が受信された場合、図5に示すように、上昇状態のパンタグラフ3を下降する。なお、パンタグラフ3が上昇状態である場合、パンタグラフ3が架線6に接触し、パンタグラフ3が下降状態である場合、パンタグラフ3が架線6に接触しない状態である。
これにより、き電事故の影響範囲を限定したり、パンタグラフ3の損傷および架線61,62の溶断を防止したりすることができる。また、列車制御システム100では、運行管理装置10によって各列車1がエアセクション内に在線しているか否かが判断される。そのため、車上装置20に複数のエアセクションの位置を含む地上設備情報をあらかじめ登録しておく必要がなくエアセクション内で停止した列車1のパンタグラフ3を制御することができる。
また、パンタグラフ3を上げた状態の列車1がエアセクション内で停止しており、かつエアセクションに隣接するき電区間に列車1が在線する場合にも、架線61,62間に大電流が流れ、パンタグラフ3の損傷、架線61,62の溶断などを引き起こす可能性がある。以下、エアセクションに隣接するき電区間を隣接き電区間と記載する。
図6および図7は、実施の形態1にかかる二台の列車がエアセクション内と変電所のき電区間とに各々在線する場合の電力供給を説明するための図である。なお、図6および図7では、二台の列車1を互いに区別するために列車11,12と表し、列車11のパンタグラフ3をパンタグラフ31と表し、列車12のパンタグラフ3をパンタグラフ32と表している。
図6に示すように、列車11は、エアセクション内に在線し且つ停止している状態でパンタグラフ31が上昇状態であるため、上述した閉ループR1の電気回路が構成される。そのため、列車11には、電流I1が流れることで変電所71から電力が供給される。また、列車12は、変電所72のき電区間を走行中であるため、上述した閉ループR2の電気回路が構成される。そのため、列車12には、電流I2が流れることで変電所72から電力が供給される。
また、列車11がエアセクション内に在線しパンタグラフ31が上昇状態であるため、架線61と架線62とが電気的に接続された状態である。そのため、架線61と架線62との電位差によって、列車11,12のいずれかを含む閉ループがさらに構成される場合がある。
図6に示す例では、架線61の電位が架線62の電位よりも高いため、列車12を含む閉ループR3の電気回路が構成されていることを示している。閉ループR3は、受変電機器711、電路721、架線61、架線62、パンタグラフ32、車輪2、レール5、電路731、および受変電機器711の順に電流I3が流れる閉ループである。
図6に示す状態で、電流I3が大きくなるほど、架線61,62間に流れる電流が大きくなり、パンタグラフ3の損傷、架線61,62の溶断などを引き起こす可能性がある。そこで、列車制御システム100では、図6に示す状態の場合、上昇状態のパンタグラフ31を下降させ、列車12が変電所72のき電区間を通過するまでパンタグラフ31を上昇させないようにすることができる。
また、図7に示す例では、架線62の電位が架線61の電位よりも高い状態において、列車12はエアセクション内に在線し且つ停止している状態でパンタグラフ32が上昇状態であり、かつ列車11は変電所71のき電区間を走行中である状態を示している。
この場合、図7に示すように、閉ループR1の電気回路と閉ループR2の電気回路に加え、閉ループR4の電気回路が構成される。閉ループR4は、受変電機器712、電路722、架線62、架線61、パンタグラフ31、車輪2、レール5、電路732、および受変電機器712の順に電流I4が流れる閉ループである。
図7に示す状態では、電流I4が大きくなるほど、架線61,62間に流れる電流が大きくなり、パンタグラフ32の損傷、架線61,62の溶断などを引き起こす可能性がある。そこで、列車制御システム100では、図7に示す状態の場合、上昇状態のパンタグラフ32を下降させ、列車11が変電所71のき電区間で停止するまでパンタグラフ32を上昇させないようにしている。
図8および図9は、実施の形態1にかかるエアセクション内で停止している列車のパンタグラフの制御を説明するための図である。実施の形態1にかかる列車制御システム100の運行管理装置10は、複数の列車1のうちエアセクション内に在線し且つ停止している列車1の車上装置20へパンタグラフ下降遠隔操作信号およびパンタグラフ上昇規制信号を送信する。
図6に示す状態の列車11の車上装置20は、パンタグラフ下降遠隔操作信号を受信した場合、図8に示すように、上昇状態のパンタグラフ31を下降する。また、図6に示す状態の列車11の車上装置20は、パンタグラフ上昇規制信号を受信した場合、列車11の不図示の操作部にパンタグラフ31を上昇させるための操作が行われても、パンタグラフ31の上昇を行わない。これにより、架線61,62間に大電流が流れることを防止することができる。その後、運行管理装置10は、列車12が変電所72のき電区間を通過すると、列車11の車上装置20へのパンタグラフ上昇規制信号の送信を解除する。
また、図7に示す状態の列車12の車上装置20は、パンタグラフ下降遠隔操作信号を受信した場合、図9に示すように、上昇状態のパンタグラフ32を下降する。また、図7に示す状態の列車12の車上装置20は、パンタグラフ上昇規制信号を受信した場合、列車12の不図示の操作部にパンタグラフ32を上昇させるための操作が行われても、パンタグラフ32の上昇を行わない。これにより、架線61,62間に大電流が流れることを防止することができる。その後、運行管理装置10は、列車11が変電所71のき電区間で停止すると、列車12の車上装置20へのパンタグラフ上昇規制信号の送信を解除する。
次に、エアセクション内で停止してパンタグラフ3を下降した列車1が走行を再開する場合について説明する。図10は、実施の形態1にかかるエアセクション内で停止している列車の制御を説明するための図である。
運行管理装置10は、隣接き電区間で列車1が走行していない場合、エアセクション内に在線している列車1の車上装置20に、パンタグラフ上昇規制信号を送信しないが、列車1がエアセクション内に在線していることを示すエアセクション内在線信号を送信している。エアセクション内に在線している列車1の車上装置20は、パンタグラフ上昇規制信号を受信していない場合、パンタグラフ3の上昇制御を制限しないため、図10に示すように、パンタグラフ3を上昇させることができる。
また、エアセクション内に在線している列車1の車上装置20は、エアセクション内在線信号を受信している場合、列車1に設けられた不図示の操作部へのノッチ出力操作による力行ノッチの制御を制限する。これにより、列車1の走行が再開した場合、架線61,62間に大電流が流れることを防止することができる。
以下、実施の形態1の列車制御システム100にかかる運行管理装置10および車上装置20の構成および処理についてさらに具体的に説明する。まず、運行管理装置10の構成を具体的に説明する。図11は、実施の形態1にかかる運行管理装置の構成の一例を示す図である。
図11に示すように、運行管理装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを備える。通信部11は、通信システム30の通信網32に接続される第1通信部51と、信号システム40の通信網42に接続される第2通信部52とを備える。
記憶部12は、地上設備情報を記憶している。地上設備情報は、エアセクション情報、き電区間情報、軌道回路情報、地上通信装置情報などを含む。エアセクション情報には、エアセクションの位置を示す情報が含まれる。き電区間情報には、各変電所7のき電区間の位置を示す情報と隣接するエアセクションの情報が含まれる。
軌道回路情報には、軌道回路41の識別情報と軌道回路41の位置の情報とが関連付けられた情報が含まれる。地上通信装置情報には、地上通信装置31が通信可能な列車1の位置と地上通信装置31の識別情報とが関連付けられた情報が含まれる。
また、記憶部12は、列車位置情報および列車速度情報なども記憶される。列車位置情報は、車上装置20が搭載された列車1の位置を示す情報と列車1の識別情報とを含む。列車速度情報は、車上装置20が搭載された列車1の速度を示す情報と列車1の識別情報とを含む。
制御部13は、取得部53と、在線判定部54と、停止判定部55と、隣接列車判定部56と、送信処理部57とを備える。取得部53は、通信部11を介して、列車1の車上装置20、地上通信装置31、および軌道回路41から送信される情報を取得し、取得した情報に基づいて、列車位置情報および列車速度情報を記憶部12に記憶することができる。
例えば、取得部53は、第1通信部51を介して各列車1の車上装置20から位置情報を取得することができる場合、取得した位置情報を列車位置情報として記憶部12に記憶することができる。車上装置20から取得される位置情報には、列車1の位置を示す情報と列車1の識別情報とが含まれる。
また、取得部53は、第2通信部52を介して各軌道回路41から在線状態情報を取得することができる場合、取得した在線状態情報に基づいて生成される列車位置情報を記憶部12に記憶することができる。例えば、在線状態情報には、軌道回路41の識別情報と列車1の在線の有無を示す情報とが含まれており、取得部53は、列車1が在線している軌道回路41の識別情報に基づいて、記憶部12に記憶された軌道回路情報に含まれる軌道回路41の位置を示す情報を抽出する。そして、取得部53は、抽出した軌道回路41の位置を列車1の識別情報に関連付けた情報を列車位置情報として記憶部12に記憶することができる。
また、取得部53は、第2通信部52を介して各地上通信装置31からの通信状態情報を取得することができる場合、取得した通信状態情報に基づいて生成される列車位置情報を記憶部12に記憶することができる。例えば、通信状態情報には、地上通信装置31の識別情報と地上通信装置31と通信確立している列車1の識別情報とが含まれており、取得部53は、地上通信装置31の識別情報に基づいて、記憶部12に記憶された地上通信装置情報に含まれる地上通信装置31が通信可能な位置を示す情報を抽出する。そして、取得部53は、抽出した位置を示す情報を列車1の識別情報に関連付けた情報を列車位置情報として記憶部12に記憶することができる。
なお、車上装置20からの位置情報、軌道回路41からの在線状態情報、および地上通信装置31からの通信状態情報の各々に優先順位を割り当てることもできる。取得部53は、取得できた情報のうち最も優先順位が高い情報に基づいて、列車位置情報を記憶部12に記憶することができる。また、取得部53は、車上装置20からの位置情報、軌道回路41からの在線状態情報、および地上通信装置31からの通信状態情報のうち予め選択された一つの情報に基づいて、列車位置情報を記憶部12に記憶することもできる。
また、取得部53は、第1通信部51を介して各列車1の車上装置20から速度情報を取得することができる場合、取得した速度情報を列車速度情報として記憶部12に記憶することができる。車上装置20から取得される速度情報には、列車1の速度を示す情報と列車1の識別情報とが含まれる。
在線判定部54は、複数の列車1のうちエアセクション内に在線している列車1を判定する。例えば、在線判定部54は、記憶部12に記憶された列車位置情報と地上設備情報とに基づいて、地上設備情報に含まれるエアセクションの位置と位置が一致または重複する列車1をエアセクション内に在線している列車1と判定することができる。
停止判定部55は、記憶部12に記憶された列車速度情報に基づいて、在線判定部54によってエアセクション内に在線していると判定された列車1が停止しているか否かを判定することができる。
隣接列車判定部56は、記憶部12に記憶された列車位置情報と地上設備情報とに基づいて、停止判定部55によってエアセクション内に停止していると判定された列車1が在線するエアセクションに隣接するき電区間で他の列車1が走行中であるか否かを判定することができる。
例えば、隣接列車判定部56は、列車11,12が図6に示す状態である場合、エアセクション内に停止していると判定された列車11が在線するエアセクションに隣接するき電区間で他の列車12が走行中であると判定することができる。
送信処理部57は、第1通信部51から各列車1の車上装置20へ各種の信号を出力する。車上装置20へ出力可能な信号には、例えば、エアセクション内在線信号、エアセクション内停車状態信号、パンタグラフ下降遠隔操作信号、パンタグラフ上昇規制信号などがある。エアセクション内停車状態信号は、列車1がエアセクション内で停車していることを示す信号であり、パンタグラフ上昇規制信号は、パンタグラフ3の上昇を規制するための信号である。
例えば、送信処理部57は、在線判定部54によってエアセクション内に在線していると判定されている列車1の車上装置20へエアセクション内在線信号を繰り返し送信する。送信処理部57は、エアセクション内に在線していた列車1がエアセクション内を通過したと判定された場合、エアセクション内在線信号の送信を解除する。
また、送信処理部57は、停止判定部55によってエアセクション内に停止していると判定された列車1の車上装置20へエアセクション内停車状態信号を繰り返し送信する。送信処理部57は、エアセクション内に停止していると判定された列車1が停止判定部55によってエアセクション内で走行を再開したと判定された場合、エアセクション内停車状態信号の送信を解除する。
また、送信処理部57は、停止判定部55によってエアセクション内に停止していると判定された列車1の車上装置20へパンタグラフ下降遠隔操作信号を送信する。なお、送信処理部57は、パンタグラフ下降遠隔操作信号を送信しない構成であってもよい。
また、送信処理部57は、隣接列車判定部56によって隣接するき電区間で他の列車1が走行中であると判定された場合、停止判定部55によってエアセクション内に停止していると判定された列車1の車上装置20へパンタグラフ上昇規制信号を繰り返し送信する。送信処理部57は、例えば、列車11,12が図6に示す状態である場合、列車11の車上装置20へパンタグラフ上昇規制信号を送信する。
また、送信処理部57は、隣接列車判定部56によって隣接するき電区間で他の列車1が走行中でないと判定された場合、停止判定部55によってエアセクション内に停止していると判定された列車1の車上装置20へのパンタグラフ上昇規制信号の送信を解除する。
次に、車上装置20の構成について具体的に説明する。図12は、実施の形態1にかかる車上装置の構成の一例を示す図である。図12に示すように、車上装置20は、通信部21と、位置検出部22と、速度検出部23と、操作部24と、列車制御部25と、中央制御部26と、記憶部27とを備える。
通信部21は、通信システム30の地上通信装置31と無線によって通信を行う。位置検出部22は、GPS(Global Positioning System)受信機を含み、列車1の位置を検出する。速度検出部23は、車輪2の回転速度を計測し、かかる計測結果に基づいて列車1の速度を検出する。なお、速度検出部23は、列車制御部25に含まれる構成であってもよい。また、速度検出部23は、位置検出部22によって検出された列車1の位置の変化に基づいて列車1の速度を検出する構成であってもよい。
操作部24は、運転手によるノッチ出力操作を受け付ける。操作部24は、例えば、マスコンハンドルを含む。操作部24は、力行の場合、例えば、五段階の出力を切り替えることができる。操作部24へのノッチ出力操作があった場合、操作部24からノッチ操作信号が中央制御部26へ出力される。
また、操作部24は、パンタグラフ3を上昇させるスイッチ、およびパンタグラフ3を下降させるスイッチなども含む。パンタグラフ3を下降させるスイッチが操作された場合、操作部24から中央制御部26へパンタグラフ下降操作信号が送信される。また、パンタグラフ3を上昇させるスイッチが操作された場合、操作部24から中央制御部26へパンタグラフ上昇操作信号が送信される。
列車制御部25は、中央制御部26からの制御に基づいて、列車1の制御を行う。例えば、列車制御部25は、中央制御部26からのパンタグラフ下降制御信号に基づいて、パンタグラフ3を下降させ、中央制御部26からのパンタグラフ上昇制御信号に基づいて、パンタグラフ3を上昇させることができる。また、列車制御部25は、中央制御部26からのノッチ制御信号に基づいて、不図示のモータをノッチ制御信号の値に基づく回転数で駆動させて車輪2を回転させることができる。
中央制御部26は、送信処理部61と、受信処理部62と、パンタグラフ制御部63と、出力制限処理部64とを備える。送信処理部61は、位置検出部22によって検出された列車1の位置を示す位置情報と速度検出部23によって検出された列車1の速度を示す速度情報を通信部21から運行管理装置10へ送信することができる。
受信処理部62は、通信部21を介して運行管理装置10から、エアセクション内在線信号、エアセクション内停車状態信号、パンタグラフ下降遠隔操作信号、パンタグラフ上昇規制信号などを受信する。
また、受信処理部62は、パンタグラフ3の状態を示すパンタグラフ状態情報を列車制御部25から取得し、取得したパンタグラフ状態情報を記憶部27に記憶する。パンタグラフ状態情報は、パンタグラフ3が上昇状態および下降状態の何れであるかを示す情報である。また、受信処理部62は、位置検出部22によって検出された列車1の位置を示す位置情報を記憶部27に記憶し、速度検出部23によって検出された列車1の速度を示す速度情報を記憶部27に記憶する。
パンタグラフ制御部63は、記憶部27に記憶された速度情報に基づいて、列車1が走行中であるか否かを判定する。パンタグラフ制御部63は、列車1が走行中でない状態で、受信処理部62によってパンタグラフ下降遠隔操作信号が受信された場合、列車制御部25へパンタグラフ下降制御信号を送信することで、上昇状態のパンタグラフ3を下降する。
なお、パンタグラフ制御部63は、運行管理装置10の送信処理部57がパンタグラフ下降遠隔操作信号を送信しない構成である場合であっても、列車制御部25へパンタグラフ下降制御信号を送信することができる。例えば、パンタグラフ制御部63は、列車1が走行中でない状態で、受信処理部62によってパンタグラフ内在線信号が受信された場合、列車制御部25へパンタグラフ下降制御信号を送信することもできる。
また、パンタグラフ制御部63は、列車1が走行中でなく、かつ受信処理部62によってパンタグラフ下降遠隔操作信号が受信されていない状態において、受信処理部62によって操作部24からパンタグラフ下降操作信号が受信されている場合、列車制御部25へパンタグラフ下降制御信号を送信する。パンタグラフ制御部63は、受信処理部62によってパンタグラフ上昇規制信号が受信される場合、操作部24からパンタグラフ下降操作信号を受信した場合であっても、列車制御部25へパンタグラフ下降制御信号を送信せずにパンタグラフ3を下降状態に維持する。
出力制限処理部64は、受信処理部62によってエアセクション内停車状態信号が受信されている場合、操作部24へのノッチ出力操作による出力を予め設定された閾値Nth以下に制限する。例えば、出力制限処理部64は、受信処理部62によってエアセクション内停車状態信号が受信され、かつ操作部24から出力されるノッチ操作信号の値が閾値Nthを超える場合、ノッチ制御信号の値を閾値Nthの値に変更する。出力制限処理部64は、閾値Nthの値にしたノッチ制御信号を列車制御部25へ出力する。
また、出力制限処理部64は、受信処理部62によってエアセクション内停車状態信号が受信されない場合、ノッチ操作信号の値をノッチ制御信号の値にする。出力制限処理部64は、ノッチ操作信号の値と同じ値のノッチ制御信号を列車制御部25へ出力する。
次に、運行管理装置10の処理について具体的に説明する。図13は、実施の形態1にかかる運行管理装置の処理の一例を示すフローチャートであり、運行管理装置10の制御部13によって繰り返し実行される。なお、図13に示す処理は、列車1ごとに行われる。以下、図13に示す処理の対象になる列車1を対象列車と記載する。また、対象列車に搭載される車上装置20を対象車上装置と記載する。
図13に示すように、運行管理装置10における制御部13の取得部53は、車上装置20からの位置情報、軌道回路41から在線状態情報、または地上通信装置31からの通信状態情報を取得し、取得した位置情報、在線状態情報、または通信状態情報に基づいて、記憶部12に各列車1の列車位置情報を記憶する(ステップS10)。また、取得部53は、車上装置20からの速度情報を取得し、取得した速度情報に基づいて、記憶部12に各列車1の列車速度情報を記憶する(ステップS11)。
次に、制御部13の在線判定部54は、記憶部12に記憶されている対象列車の列車位置情報とエアセクション情報とに基づいて、対象列車がエアセクション内に在線しているか否かを判定する(ステップS12)。
制御部13の送信処理部57は、対象列車がエアセクション内に在線していると判定された場合(ステップS12:Yes)、対象車上装置へエアセクション内在線信号を送信する(ステップS13)。
ステップS13の処理が終了すると、制御部13の停止判定部55は、記憶部12に記憶されている対象列車の列車速度情報に基づいて、対象列車が停止中であるか否かを判定する(ステップS14)。送信処理部57は、対象列車が停止していると判定された場合(ステップS14:Yes)、対象車上装置へエアセクション内停車状態信号を送信する(ステップS15)。
送信処理部57は、ステップS15の処理が終了すると、対象車上装置へパンタグラフ下降遠隔操作信号を送信済であるか否かを判定する(ステップS16)。送信処理部57は、対象車上装置へパンタグラフ下降遠隔操作信号を送信済ではないと判定した場合(ステップS16:No)、対象車上装置へパンタグラフ下降遠隔操作信号を送信する(ステップS17)。
制御部13の隣接列車判定部56は、パンタグラフ下降遠隔操作信号を送信済であると判定した場合(ステップS16:Yes)、またはステップS17の処理が終了した場合、対象列車が在線するエアセクションに隣接するき電区間である隣接き電区間に列車1が在線しているか否かを判定する(ステップS18)。ステップS18の処理において、隣接列車判定部56は、記憶部12に記憶されている対象列車以外の各列車1の列車位置情報に基づいて、対象列車以外の各列車1が在線するき電区間を判定する。そして、隣接列車判定部56は、記憶部12に記憶されているき電区間情報に基づいて、隣接き電区間に列車1が在線しているか否かを判定する。
隣接列車判定部56は、隣接き電区間に列車1が在線していると判定した場合(ステップS18:Yes)、隣接き電区間に在線している列車1が走行中であるか否かを判定する(ステップS19)。ステップS19の処理において、隣接列車判定部56は、記憶部12に記憶されている隣接き電区間に在線している列車1の列車速度情報に基づいて、隣接き電区間に在線している列車1が走行中であるか否かを判定する。
送信処理部57は、隣接列車判定部56によって隣接き電区間に在線している列車1が走行中であると判定された場合(ステップS19:Yes)、対象車上装置へパンタグラフ上昇規制信号を送信し(ステップS20)、図12に示す処理を終了する。
送信処理部57は、対象列車がエアセクション内に在線していないと判定された場合(ステップS12:No)、対象列車が停止していないと判定された場合(ステップS14:No)、隣接き電区間に列車1が在線していないと判定された場合(ステップS18:No)、または隣接き電区間に在線している列車1が走行中ではないと判定された場合(ステップS19:No)、または、ステップS20の処理が終了した場合、図12に示す処理を終了する。
次に、車上装置20のパンタグラフ制御処理について説明する。図14は、実施の形態1にかかる車上装置のパンタグラフ制御処理の一例を示すフローチャートであり、車上装置20の中央制御部26によって繰り返し実行される。
図14に示すように、中央制御部26のパンタグラフ制御部63は、速度情報およびパンタグラフ状態情報を記憶部27から取得する(ステップS30)。なお、記憶部27に記憶される速度情報およびパンタグラフ状態情報は、受信処理部62によって繰り返し更新される。
次に、パンタグラフ制御部63は、ステップS30で取得した速度情報に基づいて、列車1が走行中であるか否かを判定する(ステップS31)。パンタグラフ制御部63は、列車1が走行中ではないと判定した場合(ステップS31:No)、ステップS30で取得したパンタグラフ状態情報に基づいて、パンタグラフ3が上昇状態であるか否かを判定する(ステップS32)。
パンタグラフ制御部63は、パンタグラフ3が上昇状態であると判定した場合(ステップS32:Yes)、運行管理装置10からのパンタグラフ下降遠隔操作信号が受信処理部62によって受信されているか否かを判定する(ステップS33)。
パンタグラフ制御部63は、パンタグラフ下降遠隔操作信号が受信されていないと判定した場合(ステップS33:No)、操作部24からのパンタグラフ下降操作信号が受信処理部62によって受信されているか否かを判定する(ステップS34)。
パンタグラフ制御部63は、パンタグラフ下降遠隔操作信号が受信されていると判定した場合(ステップS33:Yes)、または、パンタグラフ下降操作信号が受信されていると判定した場合(ステップS34:Yes)、パンタグラフ下降制御信号を列車制御部25へ出力する(ステップS35)。列車制御部25は、パンタグラフ下降制御信号を受信すると、パンタグラフ3を下降する制御を行う。
パンタグラフ制御部63は、パンタグラフ3が上昇状態ではないと判定した場合(ステップS32:No)、操作部24からのパンタグラフ上昇操作信号が受信処理部62によって受信されているか否かを判定する(ステップS36)。パンタグラフ制御部63は、パンタグラフ上昇操作信号が受信されていると判定した場合(ステップS36:Yes)、運行管理装置10からのパンタグラフ上昇規制信号が受信されているか否かを判定する(ステップS37)。
パンタグラフ制御部63は、パンタグラフ上昇規制信号が受信されていないと判定した場合(ステップS37:No)、パンタグラフ上昇制御信号を列車制御部25へ出力する(ステップS38)。列車制御部25は、パンタグラフ上昇制御信号を受信すると、パンタグラフ3を上昇する制御を行う。
中央制御部26は、ステップS35の処理が終了した場合、ステップS38の処理が終了した場合、列車1が走行中であると判定した場合(ステップS31:Yes)、パンタグラフ下降操作信号が受信されていないと判定した場合(ステップS34:No)、パンタグラフ上昇操作信号が受信されていないと判定した場合(ステップS36:No)、または、パンタグラフ上昇規制信号が受信されていると判定した場合(ステップS37:Yes)、図14に示す処理を終了する。
なお、運行管理装置10がパンタグラフ下降遠隔操作信号を送信しない場合、パンタグラフ制御部63は、ステップS33の処理に代えて、運行管理装置10からのエアセクション内在線信号に基づく処理を行うことで、ステップS35の処理を行うことができる。例えば、パンタグラフ制御部63は、運行管理装置10からのエアセクション内在線信号が受信処理部62によって受信されているか否かを判定する。パンタグラフ制御部63は、エアセクション内在線信号が受信されていると判定した場合、パンタグラフ下降制御信号を列車制御部25へ未送信であるか否かを判定する。そして、パンタグラフ制御部63は、パンタグラフ下降制御信号を列車制御部25へ未送信であると判定した場合に、ステップS35の処理に移行し、パンタグラフ下降制御信号を列車制御部25へ未送信ではないと判定した場合に、ステップS34の処理に移行する。
次に、車上装置20のノッチ制御処理について説明する。図15は、実施の形態1にかかる車上装置のノッチ制御処理の一例を示すフローチャートであり、車上装置20の中央制御部26によって繰り返し実行される。
図15に示すように、中央制御部26の出力制限処理部64は、パンタグラフ状態情報を記憶部27から取得する(ステップS40)。出力制限処理部64は、ステップS40で取得したパンタグラフ状態情報に基づいてパンタグラフ3が上昇状態であるか否かを判定する(ステップS41)。
出力制限処理部64は、パンタグラフ3が上昇状態であると判定した場合(ステップS41:Yes)、運行管理装置10からのエアセクション内在線信号が受信処理部62によって受信されているか否かを判定する(ステップS42)。
出力制限処理部64は、エアセクション内在線信号が受信されていると判定した場合(ステップS42:Yes)、運行管理装置10からのエアセクション内停車状態信号が受信処理部62によって受信されているか否かを判定する(ステップS43)。
出力制限処理部64は、エアセクション内停車状態信号が受信されていると判定した場合(ステップS43:Yes)、出力モードをノッチ出力制限モードに設定する(ステップS44)。ステップS44の処理において、出力制限処理部64は、例えば、出力制限処理部64内の出力モードフラグを「1」にすることで、出力モードをノッチ出力制限モードに設定する。出力モードは、ノッチ制御信号の出力についてのモードであり、ノッチ制御信号の値を制限するノッチ出力制限モードと、ノッチ制御信号を制限しないノッチ出力非制限モードとがある。
出力制限処理部64は、ステップS42において、エアセクション内在線信号が受信されていないと判定した場合(ステップS42:No)、出力モードをノッチ出力非制限モードに設定する(ステップS45)。ステップS45の処理において、出力制限処理部64は、例えば、出力制限処理部64内の出力モードフラグを「0」にすることで、出力モードをノッチ出力非制限モードに設定する。
出力制限処理部64は、ステップS44の処理が終了した場合、ステップS45の処理が終了した場合、またはエアセクション内停車状態信号が受信されていないと判定した場合(ステップS43:No)、操作部24からのノッチ操作信号が受信処理部62によって受信されているか否かを判定する(ステップS46)。
出力制限処理部64は、ノッチ操作信号が受信されていると判定した場合(ステップS46:Yes)、出力モードがノッチ出力制限モードに設定されているか否かを判定する(ステップS47)。出力制限処理部64は、出力モードがノッチ出力制限モードに設定されていると判定した場合(ステップS47:Yes)、ノッチ操作信号の値が予め設定された閾値Nthを超えているか否かを判定する(ステップS48)。
出力制限処理部64は、ノッチ操作信号の値が予め設定された閾値Nthを超えていると判定した場合(ステップS48:Yes)、ノッチ操作信号の値を閾値Nthに変更し、変換後の値のノッチ制御信号を列車制御部25へ出力する(ステップS49)。これにより、閾値Nth以下の値を有するノッチ制御信号が列車制御部25へ出力される。
例えば、力行ノッチのノッチ操作信号の値のうち最も小さい値を閾値Nthとすることで、列車1の走行が再開した場合において、列車1の走行速度が操作部24で操作可能な最も遅い速度に制限することができるため、列車1の消費電力を抑えることができる。そのため、列車1の走行が再開した場合、架線6を介してパンタグラフ3に大電流が流れることを防止することができる。
出力制限処理部64は、出力モードがノッチ出力制限モードに設定されていないと判定した場合(ステップS47:No)、またはノッチ操作信号の値が予め設定された閾値Nthを超えていないと判定した場合(ステップS48:No)、ノッチ操作信号の値をノッチ制御信号の値にし、ノッチ操作信号の値を設定したノッチ制御信号を列車制御部25へ出力する(ステップS50)。
出力制限処理部64は、ステップS49の処理が終了した場合、ステップS50の処理が終了した場合、パンタグラフ3が上昇状態でないと判定した場合(ステップS41:No)、またはノッチ操作信号が受信されていないと判定した場合(ステップS46:No)、図15に示す処理を終了する。
図16は、実施の形態1にかかる運行管理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図16に示すように、運行管理装置10は、プロセッサ101と、メモリ102と、インタフェイス回路103とを備えるコンピュータを含む。
プロセッサ101、メモリ102およびインタフェイス回路103は、バス104によって互いにデータの送受信が可能である。通信部11は、インタフェイス回路103によって実現される。記憶部12は、メモリ102によって実現される。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、取得部53、在線判定部54、停止判定部55、隣接列車判定部56、および送信処理部57の機能を実行する。プロセッサ101は、処理回路の一例であり、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processer)、およびシステムLSI(Large Scale Integration)のうち一つ以上を含む。
メモリ102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、およびEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)のうち一つ以上を含む。また、メモリ102は、コンピュータが読み取り可能な上述のプログラムが記録された記録媒体を含む。かかる記録媒体は、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルメモリ、光ディスク、コンパクトディスク、およびDVDのうち一つ以上を含む。なお、制御部13は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を含んでいてもよい。
また、車上装置20の通信部21、中央制御部26、および記憶部27も図16に示す構成とすることができる。通信部21は、インタフェイス回路103によって実現される。記憶部27は、メモリ102によって実現される。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、送信処理部61、受信処理部62、パンタグラフ制御部63、および出力制限処理部64の機能を実行することができる。なお、中央制御部26は、ASICおよびFPGAなどの集積回路を含んでいてもよい。
以上のように、実施の形態1にかかる列車制御システム100は、複数の列車1に各々搭載される複数の車上装置20と、複数の車上装置20と通信可能に接続された運行管理装置10とを備える。運行管理装置10は、在線判定部54と、停止判定部55と、送信処理部57とを備える。在線判定部54は、複数の列車1のうちエアセクション内に在線している列車1を判定する。停止判定部55は、在線判定部54によってエアセクション内に在線していると判定された列車1が停止しているか否かを判定する。送信処理部57は、停止判定部55によって停止していると判定された列車1の車上装置20へパンタグラフ下降遠隔操作信号を送信する。各車上装置20は、受信処理部62と、パンタグラフ制御部63とを備える。受信処理部62は、パンタグラフ下降遠隔操作信号を受信する。パンタグラフ制御部63は、受信処理部62によってパンタグラフ下降遠隔操作信号が受信された場合、列車1のパンタグラフ3を下降する。これにより、列車制御システム100は、車上装置20に地上設備情報を登録することなくエアセクション内で停止した列車1のパンタグラフ3を制御することができる。
また、列車制御システム100は、複数の列車1に各々搭載される複数の車上装置20と、複数の車上装置20と通信可能に接続された運行管理装置10とを備える。運行管理装置10は、在線判定部54と、停止判定部55と、送信処理部57とを備える。在線判定部54は、複数の列車1のうちエアセクション内に在線している列車1を判定する。停止判定部55は、在線判定部54によってエアセクション内に在線していると判定された列車1が停止しているか否かを判定する。送信処理部57は、停止判定部55によって停止していると判定された列車1の車上装置20へエアセクション内停車状態信号を送信する。各車上装置20は、受信処理部62と、パンタグラフ制御部63とを備える。受信処理部62は、エアセクション内停車状態信号を受信する。パンタグラフ制御部63は、受信処理部62によってエアセクション内停車状態信号が受信された場合、上昇状態のパンタグラフ3を下降する。これにより、列車制御システム100は、車上装置20に地上設備情報を登録することなくエアセクション内で停止した列車1のパンタグラフ3を制御することができる。
また、各車上装置20は、受信処理部62によってエアセクション内停車状態信号が受信される場合、搭載されている列車1の操作部24へのノッチ出力操作による出力を予め設定された閾値Nth以下に制限する出力制限処理部64を備える。これにより、列車制御システム100は、列車1の走行速度を制限することができるため、列車1の消費電力を抑えることができる。そのため、列車1の走行が再開した場合、架線6を介してパンタグラフ3に大電流が流れることを防止することができる。
また、運行管理装置10は、複数の列車1が走行する軌道に設けられた複数の軌道回路41の各々から複数の在線状態情報を取得する取得部53を備える。在線判定部54は、取得部53によって取得された複数の在線状態情報に基づいて、エアセクション内に在線している列車1を判定することができる。これにより、例えば、列車制御システム100は、運行管理装置10が車上装置20から位置情報を取得できない場合であっても、車上装置20に地上設備情報を登録することなくエアセクション内で停止した列車1のパンタグラフ3を制御することができる。
また、取得部53は、複数の列車1が走行する軌道に沿って配置された複数の地上通信装置31と複数の車上装置20との通信状態を示す通信状態情報を取得する。在線判定部54は、取得部53によって取得された通信状態情報に基づいて、エアセクション内に在線している列車1を判定することができる。これにより、列車制御システム100は、例えば、運行管理装置10が車上装置20から位置情報を取得できない場合であっても、車上装置20に地上設備情報を登録することなくエアセクション内で停止した列車1のパンタグラフ3を制御することができる。また、信号システム40の介在が不要となるため、導入コストを低減することができる。
また、取得部53は、複数の車上装置20から各々対応する列車1の位置を示す位置情報を取得する。在線判定部54は、取得部53によって取得された速度情報に基づいて、エアセクション内に在線している列車1を判定することができる。これにより、列車制御システム100は、列車1の位置を精度よく把握することができ、エアセクション内で停止した列車1のパンタグラフ3を精度よく制御することができる。また、信号システム40の介在が不要となるため、導入コストを低減することができる。
また、運行管理装置10は、停止判定部55によってエアセクション内に停止していると判定された列車1が在線するエアセクションに隣接するき電区間で列車1が走行中であるか否かを判定する隣接列車判定部56を備える。送信処理部57は、隣接列車判定部56によって隣接するき電区間で他の列車1が走行中であると判定された場合、停止判定部55によってエアセクション内に停止していると判定された列車1の車上装置20へパンタグラフ上昇規制信号を送信する。受信処理部62は、パンタグラフ上昇規制信号を受信する。パンタグラフ制御部63は、受信処理部62によってパンタグラフ上昇規制信号が受信される場合、パンタグラフ3を下降状態に維持する。これにより、列車制御システム100は、パンタグラフ3の損傷、架線61,62の溶断などを抑制することができる。
実施の形態2.
実施の形態2にかかる列車制御システムでは、実施の形態1にかかる運行管理装置10の処理の一部が車上装置で実行される点で、実施の形態1にかかる列車制御システム100と異なる。
図17は、本発明の実施の形態2にかかる列車制御システムの構成の一例を示す図である。図18は、実施の形態2にかかる運行管理装置の構成の一例を示す図である。図19は、実施の形態2にかかる車上装置の構成の一例を示す図である。
図17に示すように、実施の形態1にかかる列車制御システム100Aは、運行管理装置10Aと、複数の車上装置20Aと、通信システム30と、信号システム40とを備える。
運行管理装置10Aは、図18に示すように、制御部13に代えて制御部13Aを有する点で、運行管理装置10と異なる。制御部13Aは、停止判定部55を有しておらず、エアセクション内停車状態信号およびパンタグラフ下降遠隔操作信号を送信しない点などで、制御部13と異なる。
車上装置20Aは、図19に示すように、中央制御部26に代えて中央制御部26Aを有する点で、車上装置20と異なる。中央制御部26Aは、パンタグラフ制御部63および出力制限処理部64に代えて、パンタグラフ制御部63Aおよび出力制限処理部64Aを備える点で、中央制御部26と異なる。
パンタグラフ制御部63Aは、記憶部27に記憶された速度情報に基づいて、列車1が走行中であるか否かを判定する。パンタグラフ制御部63Aは、列車1が走行中でなく、かつエアセクション内在線信号が受信処理部62によって受信されている状態において、列車制御部25へパンタグラフ下降制御信号を送信していない場合、パンタグラフ下降制御信号を列車制御部25へ出力する。
また、出力制限処理部64Aは、記憶部27に記憶された速度情報に基づいて、列車1が走行中であるか否かを判定する。出力制限処理部64Aは、列車1が走行中でなく、かつエアセクション内在線信号が受信処理部62によって受信されている場合、出力モードをノッチ出力制限モードに設定する。
以下、運行管理装置10Aの処理について具体的に説明する。図20は、実施の形態2にかかる運行管理装置の処理の一例を示すフローチャートであり、制御部13Aによって繰り返し実行される。図20のステップS60~S63,S64~S66の処理は、図13に示すステップS10~S13,S18~S20の処理と同じである。
このように、実施の形態2にかかる運行管理装置10Aの制御部13Aは、図13に示すステップS15~S20に示す処理を行わない点で、実施の形態1にかかる運行管理装置10の制御部13と異なる。
なお、通信システム30を介して運行管理装置10Aと車上装置20Aとの間で速度情報の送受信が難しい場合、制御部13Aは、ステップS61,S64~S66の処理を行わない構成であってもよい。
また、通信システム30を介して運行管理装置10Aと車上装置20Aとの間で送受信する情報を速度情報に代えて停車中信号とすることもできる。この場合、車上装置20Aの中央制御部26Aは、列車1が停止している場合、速度情報に代えて停車中信号を運行管理装置10Aへ送信する。運行管理装置10Aの制御部13Aは、ステップS65において、隣接き電区間に在線する列車1から停車中信号を取得しているか否かに基づいて、隣接き電区間に在線する列車1の走行状態を判定することができる。例えば、制御部13Aは、隣接き電区間に在線する列車1から停車中信号を取得していない場合、隣接き電区間に在線する列車1が走行中であると判定する。また、制御部13Aは、隣接き電区間に在線する列車1から停車中信号を取得している場合、隣接き電区間に在線する列車1が走行中ではないと判定する。
次に、車上装置20Aのパンタグラフ制御処理について説明する。図21は、実施の形態2にかかる車上装置のパンタグラフ制御処理の一例を示すフローチャートであり、車上装置20Aの中央制御部26Aによって繰り返し実行される。図21のステップS70~S72,S75~S79の処理は、図14に示すステップS30~S32,S34~S38の処理と同じであり、説明を省略する。
図21に示すように、パンタグラフ制御部63Aは、パンタグラフ3が上昇状態であると判定した場合(ステップS72:Yes)、運行管理装置10Aからのエアセクション内在線信号が受信処理部62によって受信されているか否かを判定する(ステップS73)。パンタグラフ制御部63Aは、エアセクション内在線信号が受信されていると判定した場合(ステップS73:Yes)、パンタグラフ下降制御信号を列車制御部25へ未送信であるか否かを判定する(ステップS74)。
パンタグラフ制御部63Aは、パンタグラフ下降制御信号を列車制御部25へ未送信であると判定した場合(ステップS74:Yes)、処理をステップS76へ移行する。また、パンタグラフ制御部63Aは、パンタグラフ下降制御信号を列車制御部25へ未送信ではないと判定した場合(ステップS74:No)、処理をステップS75へ移行する。
次に、車上装置20Aのノッチ制御処理について説明する。図22は、実施の形態2にかかる車上装置のノッチ制御処理の一例を示すフローチャートであり、車上装置20Aの中央制御部26Aによって繰り返し実行される。図22に示すステップS80~S82,S84~S90の処理は、図15に示すステップS40~S42,S44~S50の処理と同様であるため、説明を省略する。
図22に示すように、出力制限処理部64Aは、ステップS83において、記憶部27に記憶された速度情報に基づいて、列車1が停止中であるか否かを判定する。出力制限処理部64Aは、列車1が停止中であると判定した場合(ステップS83:Yes)、ステップS84の処理に移行する。また、出力制限処理部64Aは、列車1が停止中ではないと判定した場合(ステップS83:No)、ステップS86の処理に移行する。
実施の形態2にかかる運行管理装置10Aのハードウェア構成例は、図16に示す運行管理装置10と同じである。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部13Aの機能を実行することができる。また、車上装置20Aの通信部21、中央制御部26A、および記憶部27も図16に示す構成とすることができる。この場合、プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、送信処理部61、受信処理部62、パンタグラフ制御部63A、および出力制限処理部64Aの機能を実行することができる。
以上のように、実施の形態2にかかる列車制御システム100Aは、複数の列車1に各々搭載される複数の車上装置20Aと、複数の車上装置20Aと通信可能に接続された運行管理装置10Aとを備える。運行管理装置10Aは、在線判定部54と、送信処理部57とを備える。在線判定部54は、複数の列車1のうちエアセクション内に在線している列車1を判定する。送信処理部57は、在線判定部54によってエアセクション内に在線していると判定された列車1の車上装置20Aへエアセクション内在線信号を送信する。各車上装置20Aは、受信処理部62と、パンタグラフ制御部63Aとを備える。受信処理部62は、エアセクション内在線信号を受信する。パンタグラフ制御部63Aは、受信処理部62によってエアセクション内在線信号が受信され、かつ複数の列車1のうち対応する列車1が停止中であると判定した場合、上昇状態のパンタグラフ3を下降する。これにより、列車制御システム100Aは、車上装置20Aに地上設備情報を登録することなくエアセクション内で停止した列車1のパンタグラフ3を制御することができる。また、列車制御システム100Aは、通信システム30を介して運行管理装置10Aと車上装置20Aとの間で速度情報の送受信が難しいような場合であっても、エアセクション内で停止した列車1のパンタグラフ3を制御することができる。
また、各車上装置20Aは、受信処理部62によってエアセクション内停車状態信号が受信され、かつ複数の列車1のうち対応する列車1が停止中であると判定した場合、複数の列車1のうち対応する列車1の操作部24へのノッチ出力操作による出力を予め設定された閾値Nth以下に制限する出力制限処理部64Aを備える。これにより、列車制御システム100Aは、パンタグラフ3の損傷、架線61,62の溶断などを抑制することができる。
なお、隣接列車判定部56は、隣接き電区間で列車1が走行している場合に、パンタグラフ上昇規制信号を運行管理装置10,10Aへ送信するが、パンタグラフ上昇規制信号の送信条件は、隣接き電区間で列車1が走行していることに限定されない。
例えば、隣接列車判定部56は、隣接き電区間で走行している列車1の速度が閾値Vth以上であるか否かを判定し、隣接き電区間で走行している列車1の速度が閾値Vth以上であると判定した場合、パンタグラフ上昇規制信号を運行管理装置10,10Aへ送信する構成であってもよい。
また、隣接列車判定部56は、エアセクションに隣接する2つのき電区間で走行している列車1の数が閾値TH以上であるか否かを判定し、隣接き電区間で走行している列車1の数が閾値TH以上であり、かつ隣接き電区間で走行している列車1の速度が閾値Vth以上であると判定した場合に、パンタグラフ上昇規制信号を運行管理装置10,10Aへ送信する構成であってもよい。
また、運行管理装置10,10Aは、架線61と架線62との間の電位差を検出または推定する処理を行う電位差情報取得部を有する構成であってもよい。隣接列車判定部56は、検出または推定された架線61と架線62との間の電位差が閾値以下である場合には、隣接き電区間で走行している列車1が走行中であっても、パンタグラフ上昇規制信号を運行管理装置10,10Aへ送信しない構成であってもよい。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。