以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
[被加工材およびロール成形部品]
まず、本開示で製造されるロール成形部品、並びに、このロール成形部品となる前の素材である被加工材について、図1~図3並びに図4(A)~(E)を参照して具体的に説明する。
本実施の形態では、ロール成形部品として、例えば、航空機胴体の製造に用いられる種々の骨格部材のうち、航空機胴体の断面方向(横方向)に用いられるフレームを例示する。図1、図2または図3に示すように、ロール成形部品20A~20C(フレーム)は、全体的に湾曲した形状を有しているが、長手方向(ロール成形部品20A~20Cの縦方向、材軸方向)に沿って、曲率が連続的に変化する部分を含んでいる。
具体的には、図1上図に示すロール成形部品20Aでは、その長手方向の両端部は、一定の曲率で湾曲する一定曲率部位20aおよび20cであるとともに、一定曲率部位20aおよび20cの間の部分は、一定曲率部位20aにおける一定の曲率から長手方向に連続的に曲率が変化するように湾曲する曲率変化部位20bである。
図1下図は、図1上図に示すロール成形部品20Aの長手方向の位置に対応する曲率半径の変化を示すグラフである。このグラフの横軸は、ロール成形部品20Aの一方の端部からの距離すなわちロール成形部品20Aの長手方向の位置であり、縦軸は、この位置における曲率半径を示す。また、図1上図に示すロール成形部品20Aを構成する各部位と図1下図に示すグラフにおける横軸の位置(距離)とは、互いに点線で対応づけている(なお、後述する図2および図3も同様である)。図1上図に示すロール成形部品20Aは、図1下図における一点鎖線のグラフで示すように、曲率変化部位20bにおける曲率半径が、一定曲率部位20aの曲率半径から徐々に小さくなって一定曲率部位20cにつながるように構成されている。
また、図2上図に示すロール成形部品20Bでは、その長手方向の両端部は、一定曲率部位20dおよび20fであるとともに、一定曲率部位20dおよび20fの間の部分は、一定曲率部位20dにおける一定の曲率から長手方向に連続的に曲率が変化するように湾曲する曲率変化部位20eである。図2上図に示すロール成形部品20Bは、図2下図のグラフに示すように、曲率変化部位20eにおける曲率半径が、一定曲率部位20dの曲率半径から徐々に大きくなって一定曲率部位20fにつながるように構成されている。
さらに、図3上図に示すロール成形部品20Cでは、その長手方向の両端部および中央部は、一定曲率部位20gおよび20kであるとともに、一定曲率部位20gおよび20kの間の部位は、曲率変化部位20h、一定曲率部位20iおよび曲率変化部位20jで構成されている。なお、説明の便宜上、曲率変化部位20hを第一曲率変化部位20hと称し、曲率変化部位20jを第二曲率変化部位20jと称する。
図3上図に示すロール成形部品20Cでは、図3下図のグラフに示すように、第一曲率変化部位20hの曲率半径が、一定曲率部位20gにおける一定の曲率から長手方向に連続的に曲率が変化するように湾曲し、第二曲率変化部位20jは、一定曲率部位20iにおける一定の曲率から長手方向に連続的に曲率が変化するように湾曲している。したがって、ロール成形部品20Cの一方の端部を構成する一定曲率部位20gから見れば、ロール成形部品20Cは、当該一定曲率部位20g、第一曲率変化部位20h、一定曲率部位20i、第二曲率変化部位20jおよび一定曲率部位20kの順でつながって構成されている。
図1に示すロール成形部品20Aの曲率変化部位20b、または、図2に示すロール成形部品20Bの曲率変化部位20eでは、その曲率変化は、長手方向に沿って徐々に大きくなるか小さくなっている(図1下図または図2下図参照)。これに対して、図3下図のグラフに示すように、図3に示すロール成形部品20Cにおける第一曲率変化部位20hでは、曲率半径が長手方向に沿って一旦小さくなって極小に至ってから大きくなるように変化しており、第二曲率変化部位20jでは、長手方向に沿って曲率半径が一旦大きくなって極大に至ってから小さくなるように変化している。
曲率変化部位20b,20e,20hおよび20jにおける曲率半径の変化は、前述した図1~図3に示す例に限定されない。同様に、一定曲率部位20a,20c,20d,20f,20g,20iまたは20kの具体的構成も特に限定されない。図1~図3のいずれに示す例においても、一定の曲率を有する曲線状(湾曲形状)に形成されているが、例えば、曲率半径が無限大すなわち直線状であってもよい。この場合、「一定曲率部位」を「直線部位」と言い換えてもよい。
なお、ロール成形部品20A~20Cの長手方向の位置を便宜上「部品位置」とする。この部品位置は、後述するように、ロール成形部品20A~20Cの一端を基準(例えば0mm)とする長手方向の絶対位置(一端からの長さまたは距離)として定義することができる。
ロール成形部品20A~20Cをまとめてロール成形部品20とすれば、ロール成形部品20の断面形状は特に限定されず、予め設定される所定の形状であればよい。ロール成形の特徴を生かした断面形状としては、例えば、図4(A)に示すように、断面方向の両縁部が互いに異なる方向に折り曲げられた形状、すなわち、アルファベットの「Z」字状(Z型)の形状を挙げることができる。
あるいは、ロール成形部品20の断面形状としては、図4(B)に示すように、断面方向の一方の縁部が折り曲げられた形状、すなわち、アルファベットの「L」字状(L型)であってもよいし、図4(C)に示すように、断面方向の両縁部が互いに同じ方向に折り曲げられた形状、すなわち、アルファベットの「C」字状(C型)であってもよいし、図4(D)に示すように、C型を互いに逆方向に組み合わせた形状(断面方向の両縁部が互いに反対方向に折り曲げられ、断面方向の中央部が両縁部に対向するように折り曲げられた形状)、すなわち、アルファベットの「S」字状(S型)であってもよいし、図4(E)に示すように、断面方向の両縁部に対して中央部を突出(もしくは陥没)させた形状、すなわち、ハット型(もしくはΩ型)であってもよい。
言い換えれば、ロール成形の特徴を生かした断面形状としては、断面方向の少なくとも一方の縁部を折り曲げた形状(Z型、L型、C型等)、あるいは、断面方向の中央部を折り曲げた形状(ハット型等)、あるいはその組合せ(S型等)を挙げることができる。もちろん、ロール成形部品20の断面形状は、図4(A)~(E)に示す形状以外であってもよいことは言うまでもない。
また、図4(A)に示すZ型の断面形状では、断面方向の両縁部のうち一方の縁部(図中上側)のみがさらに内側に折り曲げられた形状となっているが、Z型のロール成形部品20の横断面形状はこれに限定されない。例えば、他方の縁部のみがさらに折り曲げられてもよいし、両縁部の外側がそれぞれ折り曲げられた形状であってもよい。図4(B)に示すL型、図4(C)に示すC型、もしくは、図4(D)に示すS型の縁部においても、同様にさらなる折曲げ部が形成されてもよいし形成されなくてもよい。
また、例えば、図1~図3に示すロール成形部品20A~20Cが、いずれもその断面形状がZ型でれば、長手方向のいずれの部位においても、その断面形状は同一のZ型(図4(A)参照)であればよい。しかしながら、本開示で製造されるロール成形部品20はこれに限定されず、長手方向の部位ごとに断面形状の異なるもの(フレキシブル断面形状を有するもの)であってもよい。説明の便宜上、前者については「均一断面成形部品」と称し、後者については「フレキシブル断面成形部品」と称する。
また、ロール成形部品20の材質も特に限定されない。ロール成形部品20がフレーム等の航空機用部品であれば、当該ロール成形部品20の材質としては、アルミニウムまたはその合金(アルミニウム系材料)が挙げられるが、他の分野に用いられる部品であれば、鋼材等の鉄系材料(鉄または鉄を含有する合金)も挙げられる。
ロール成形部品20がフレキシブル断面形状を有する場合では、断面形状によっては断面剛性に違いが生じる可能性がある。また、同一のロールベンディング装置を用いて同じ形状のロール成形部品20に同じ湾曲を形成する場合、材質が異なれば、形状および湾曲が同一であっても断面剛性に違いが生じる。材質の相違としては、例えば、アルミニウム系材料と鉄系材料との相違のように、主成分となる金属材料の相違が挙げられる。また、アルミニウム系材料として分類される複数の合金材料であっても、合金の種類等によって異なる断面剛性を呈する場合が挙げられる。本開示で製造されるロール成形部品20は、このように当該ロール成形部品20の長手方向の途中から断面形状が異なる、あるいは、途中から材質が異なる等のように、異なる断面剛性を有するものであってもよい。
なお、ロール成形部品20が、航空機用部品である場合、当該ロール成形部品20の具体例としてはフレームに限定されず、例えば、ストリンガー、スティフナー、スパー、フロアビーム、リブ、フレーム等を挙げることができる。これらは、航空機の骨格部材であるが、ロール成形部品20は、このような骨格部材に限定されず、他の航空機用部品であってもよい。加えて、本開示で製造されるロール成形部品20は、航空機用部品に限定されず、自動車分野または建材分野等の他の分野で用いられる、湾曲を有する部品にも好適に用いることができる。
本開示においては、例えば、所定の断面形状が予め形成された長尺型材に対して湾曲が形成(湾曲が付与)されることによりロール成形部品20が製造されてもよいし、所定の断面形状が形成される前の平坦な長尺板材に対して、所定の断面形状が形成される工程に連続して、湾曲が形成される工程が行われてもよい。本開示においては、図1~図3に示すような「ロール成形部品20」を「湾曲が形成された部品(または部材)」と定義とすれば、「湾曲が形成される前の部品(または部材)」を、便宜上「被加工材」と称する。
ロール成形部品20に対して、断面形状の形成および湾曲の形成以外に、他の公知の加工がなされていれば、「被加工材」には、何ら加工がなされていない板材(あるいは原料素材)だけでなく、湾曲形成以外の加工が既になされているものも含まれる。断面形状の形成またはこれ以外の他の加工は、公知の方法で行われればよい。特に、断面形状の形成は、本開示における湾曲の形成とともに公知のロール成形により行うことができる。
[ロール成形部品の製造装置]
次に、本実施の形態に係るロール成形部品の製造装置について、図5(A),(B)を参照して具体的に説明する。
図5(A)に示すように、本実施の形態に係るロール成形部品の製造装置10A(以下「製造装置10A」と略す)は、支点ロール11、曲げロール12、搬送ロール13、制御部30、曲率半径データベース31、およびロール移動部32等を備えている。製造装置10Aは、支点ロール11および曲げロール12を少なくとも備えており、被加工材である例えば長尺型材21をその長手方向に沿ってロールベンディング加工することにより、前述したロール成形部品20を製造する。なお、製造装置10Aにおいて、長尺型材21を搬送してロールベンディング加工する経路をベンディング経路と称する。
支点ロール11は、曲げロール12から見てベンディング経路の上流側に位置し、ベンディング加工時に長尺型材21を支持するか、または、長尺型材21の曲げの支点となる。曲げロール12は、支点ロール11から見てベンディング経路の下流側に位置し、支点ロール11の位置に対して移動可能に構成されている。曲げロール12が移動することによって支点ロール11の位置で長尺型材21に曲げを付与することができる。
搬送ロール13は、支点ロール11から見てベンディング経路の上流側に位置し、長尺型材21を支点ロール11に向けて搬送(送出)する。したがって、製造装置10Aにおいては、ベンディング経路の上流から搬送ロール13、支点ロール11、および曲げロール12の順で位置している。なお、支点ロール11および曲げロール12の間におけるベンディング経路を、説明の便宜上「ロール間経路」と称する。
支点ロール11、曲げロール12、および搬送ロール13の具体的な構成は特に限定されず、ロールベンディング装置の分野で公知の種々の成形ロールを用いることができる。例えば、図5(A)に示す構成では、支点ロール11、曲げロール12、および搬送ロール13のいずれも単一のロールであるが、後述する変形例に示すように、少なくともいずれか一つのロールが、対抗する2つのロールにより構成されるロール対であってもよい。
制御部30は、製造装置10Aの動作を制御する。特に本実施の形態では、後述するように、曲率半径データベース31を参照してロール移動部32の動作を制御する。曲率半径データベース31は、被加工材である長尺型材21に対して所望の曲率半径(または曲率)を付与するために、曲率半径(または曲率)の設計値等をデータベースとして記憶する。ロール移動部32は、支点ロール11の位置を基準として、曲げロール12の位置を相対的に変化させるように、支点ロール11および当該曲げロール12の少なくとも一方を移動させる。
本実施の形態では、支点ロール11の位置が固定され、曲げロール12のみロール移動部32により移動するよう構成されている。曲げロール12は、ベンディング経路(被加工材の搬送方向または送出方向)に対して交差する方向(例えば垂直方向)にストローク移動するよう構成されている。
なお、曲げロール12の移動方向は、ストローク移動のような一次元の移動に限定されず、二次元的に移動してもよい。支点ロール11が移動可能な場合も、その移動方向は曲げロール12の移動方向と同様にストローク移動してもよいし二次元的に移動してもよい。また、後述する変形例のように、曲げロール12が、対向する2つのロールにより構成されるロール対である場合、このロール対は、ストロークを伴っても常にベンディング経路(被加工材)に対して交差する方向(例えば略垂直方向)になるように、ロール対そのものを回転する回転軸を備える構成であることが好ましい。
図5(A)において、支点ロール11が長尺型材21(被加工材)に当接する位置を便宜上、支点ロール当接位置11aとする。同様に、曲げロール12が長尺型材21に当接する位置を便宜上、曲げロール当接位置12aとする。支点ロール当接位置11aおよび曲げロール当接位置12aは、いずれも図5(A)において短い破線で囲んだ領域として図示している。
制御部30、曲率半径データベース31、ロール移動部32の具体的な構成は特に限定されず、ロールベンディング装置の分野で公知の制御構成または移動機構を好適に用いることができる。例えば、制御部30は、マイクロコンピュータまたはマイクロコントローラのCPUで構成されればよい。曲率半径データベース31は、マイクロコンピュータまたはマイクロコントローラが読み出し可能な記憶部として構成されていればよい。この記憶部は、製造装置10Aに内蔵される構成であってもよいし外部接続される構成であってもよい。
ロール移動部32は、成形ロールの位置を変化させることのできる公知のアクチュエータ等であってもよいし、公知のリニアガイド等に沿ってロール12を移動させることができる構成であってもよい。例えば、曲げロール12によって長尺型材21に曲げが加えられる方向を第一方向とする。このとき、図5(B)に示すように、ロール移動部32は、第一方向であるX-X方向に沿ってリニアガイド等を設けることにより、曲げロール12をX-X方向に移動させることができる。
また、曲げロール12が成形中の長尺型材21に当接している場合に、その当接部位における略法線方向、言い換えれば、ロール当接位置12aにおける略法線方向を、第二方向とする。このとき、図5(B)に示すように、ロール移動部32は、第二方向であるY-Y方向に沿ってリニアガイド等を設けることにより、曲げロール12を、X-X方向だけでなくY-Y方向に移動させることもできる。
さらに、支点ロール当接位置11aと曲げロール当接位置12aとの間隔が変更されると、後述するように、ロール成形部品20の長手方向を複数の単位間隔に区分する際、もしくは、長尺型材21に付与される曲率半径を算出する際等において、単位間隔の設定もしくは曲率半径の算出が煩雑になる可能性がある。そこで、支点ロール当接位置11aと曲げロール当接位置12aとの間隔を調整するために、ロール移動部32は、曲げロール12の移動方向として回転方向を与えるように構成されてもよい。
例えば、図5(B)に示すように、ロール移動部32が、第一方向であるX-X方向、および、第二方向であるY-Y方向に曲げロール12を移動可能に構成している場合に、さらに、Z-Z方向に曲げロール12を移動可能に構成されてもよい。このZ-Z方向は、曲げロール12の位置を回転するように移動させる方向(回動方向)であればよい(この回動方向は、曲げロール12の自転方向ではない)。
なお、図5(A)では、ロール移動部32は機能ブロックとして図示している。また、図5(A)では、ロール移動部32のブロックと曲げロール12とを実線の線分でつないで図示している。これにより、ロール移動部32が曲げロール12を移動可能に構成されることを模式的に示している。また、図5(A)では、制御部30のブロックと、曲率半径データベース31およびロール移動部32のブロックとを点線の線分でつないで図示している。これにより、制御部30が、曲率半径データベース31からデータを読み出したりロール移動部32を制御したりすることを模式的に示している。
本実施の形態では、曲率半径データベース31には、部品位置(ロール成形部品20の長手方向の位置)に基づいて、設計曲率半径、初期曲率半径、および中間曲率半径の3種類の曲率半径データが少なくとも記憶されている。また、曲率半径データベース31には、曲率半径に関連する他のデータが記憶されてもよい。これら曲率半径は、ロール成形部品20の所定の部品位置に対応する部位に設定される。
まず、設計曲率半径について説明する。例えば、図6(A)に示すように、ロール成形部品20の長手方向を複数の単位間隔Dに区分したとする。図6(A)では、ロール成形部品20における搬送方向(図中ブロック矢印で示す)の下流側の一端を「基準端20p」として規定している。基準端20pは、部品位置としては0mmとなる。単位間隔Dは、一定距離の部品位置d1mm,d2mm,d3mm,d4mm,d5mm・・・の間として設定される。設計曲率半径は、ロール成形部品20におけるそれぞれの単位間隔Dに対応する単位部位20qについての曲率半径の設計値である。
なお、「単位部位20q」とは、ロール成形部品20におけるそれぞれの単位間隔に対応する部位(部分)を意味する。単位部位20qの設定は特に限定されないが、図6(A)に示す例では、単位間隔Dの両端の部品位置のうち搬送方向の上流側(基準端20pの反対側、他端側)の部品位置を、当該単位間隔Dの単位部位20qとして設定している。具体的には、図6(A)に示すように、基準端20pから1番目の単位間隔Dであれば、部品位置d1mmに対応する部位が当該単位間隔の単位部位20qに相当する。基準端20pから2番目の単位間隔Dであれば、部品位置d2mmに対応する部位が当該単位間隔Dの単位部位20qに相当する。それぞれの単位間隔Dの設計曲率半径は、これら単位部位20qに対して設定される。
また、ロール成形部品20は、製造装置10Aによりベンディング加工が施された部材(加工済部材、加工製品)であるが、図6(A)に示すように、単位間隔Dは、ロール成形部品20だけでなく、ベンディング加工が施される前の「被加工材(あるいは原材)」である長尺型材21にも設定することができる。それゆえ、長尺型材21においても、ロール成形部品20と同様に、基準端21pが規定され、この基準端21pからの絶対位置が部品位置であり、任意の部品位置に対応する部位21qが単位部位21qであり、単位間隔Dは、一定距離の部品位置の間として設定される。
したがって、後述する説明では、「部品位置」、「単位間隔D」、および「単位部位20q」という用語(定義)は、加工済部材であるロール成形部品20だけでなく、製造装置10Aでベンディング加工されている途中の長尺型材21にも適応されるものとする。
ここで、図5(A)に示すように、支点ロール11および曲げロール12の間には所定の距離(間隔)が形成される。また、ベンディング加工中の長尺型材21は、支点ロール11および曲げロール12の間のロール間経路を搬送される。任意の部品位置20qに所定の曲率半径を付与する上では、当該長尺型材21(ロール成形部品20)の長手方向の絶対位置(部品位置20q)に加えて、支点ロール11および曲げロール12の間の相対位置についても定義する必要がある。
支点ロール当接位置11aと曲げロール当接位置12aとの間の距離(すなわちロール間経路の長さ)を、説明の便宜上「ロール間隔」と略すと、図6(B)に示すように、支点ロール当接位置11aにおいて、支点ロール11が長尺型材21に当接している理想的な当接点を、ロール間隔の「開始位置Rs」(黒のブロック矢印Rs)と定義することができる。また、曲げロール当接位置12aにおいて、曲げロール12が長尺型材21に当接している理想的な当接点を、ロール間隔の「終了位置Rt」(黒のブロック矢印Rt)と定義することができる。
この開始位置Rsから終了位置Rtまでの距離(ロール間隔)は、単位間隔Dと同一の複数の間隔(下位間隔)に区分される。ロール間隔の区分数(下位間隔の数)は特に限定されず、図6(B)に示す例では、4つの下位間隔に区分されている。具体的には、開始位置Rsを「相対位置n0」とし、終了位置Rtを「相対位置n4」として、これらの間に等間隔の「相対位置n1~n3」を設定する。隣接する相対位置n0~n4の間隔(下位間隔)は、長尺型材21(ロール成形部品20)の単位間隔Dと同一であればよい。
言い換えれば、製造装置10Aの具体的な構成に基づいて、支点ロール11および曲げロール12の間のロール間経路を、例えば整数の等間隔に区分して複数の相対位置を設定し、この相対位置の間隔に合わせて、ロール成形部品20および長尺型材21の単位間隔Dを設定することができる。なお、図6(A)では、「単位部位」を説明する便宜上、「20q」という符号を付しているが、図6(B)、並びに、後述する説明で参照する図7等においては、相対位置n0~n4を図示する便宜上、長尺型材21の単位部位を図示しない。また、図7等を参照して説明する際にも「単位部位」には「20q」の符号は付さない。
ここで、相対位置n0~n4は、支点ロール11および曲げロール12が長尺型材21に対して接する理想点な接点を基準としている。しかしながら、実際のベンディング加工においては、支点ロール11および曲げロール12は、長尺型材21に対して「点」ではなく「線」または所定の「区間」(もしくは区間の一部)が当接することになる。それゆえ、図6(B)に示すように、ロール間隔の区分は、理想的な「点」である相対位置n0~n4ではなく、図中点線で囲んで示す「相対区間z0~z4」(下位間隔に対応)として設定することもできる。
相対区間z0は、ロール間隔の開始位置Rsを中央点とする区間として設定され、この区間の距離は、長尺型材21(ロール成形部品20)の単位間隔Dと同一であればよい。同様に、図6(B)に示す例では、相対位置n1~n4を中央点とする相対区間z1~z4を設定することができる(したがって、相対区間z4は、ロール間隔の終了位置Rtを中央点とする区間として設定される)。相対区間z1~z4の距離は、いずれも相対区間z0と同様に単位間隔Dと同一であればよい。
次に、初期曲率半径について説明する。初期曲率半径は、支点ロール当接位置11aにおいて長尺型材21等の被加工材に付与される曲率半径の値である。具体的には、この初期曲率半径は、長尺型材21が曲げロール当接位置12aを通過した後、すなわち、スプリングバック後あるいは曲げモーメントが開放された後には、所望の曲率半径(すなわち設計曲率半径と同値)になるように予め計算された値であり、被加工材への曲げの付与によるスプリングバックが生じる前もしくはひずみが低減する前に、当該被加工材に対して付与される曲率半径の値として設定される。
さらに、曲げロール当接位置12aから長尺型材21等の被加工材が送出されるときにこの被加工材に残存する曲率半径を、最終曲率半径とする。前記の通り、ロール成形部品20においては、予め各単位部位においてそれぞれ具体的な設計曲率半径が設定されているので、実際に製造されたロール成形部品20では、各単位部位において設計曲率半径の具体的な値が実現されることになる。それゆえ、理想的には、設計曲率半径は、実質的に最終曲率半径と同一であればよく、あるいは、ロール成形部品20において要求される曲率半径の精度の範囲内で、最終曲率半径が設計曲率半径に近似していればよい。
ここで、支点ロール11から長尺型材21等の被加工材が送出されると、支点ロール当接位置11aから曲げロール当接位置12aに至るまでの区間では、長尺型材21における曲率半径は滑らかに変化する。具体的には、ロール成形部品20の同一の単位部位においては、長尺型材21に付与される曲率半径は、後述するように、支点ロール11を通過したときの初期曲率半径から、曲げロール12を通過したときの最終曲率半径に滑らかに変化する。それゆえ、この滑らかな曲率半径の変化を考慮して、各単位部位において設計曲率半径の個別の値が設定される。
ロール成形部品20の全ての単位部位において、設計曲率半径の具体的な値が設定されるので、これら設計曲率半径の具体的な値に対応する初期曲率半径の具体的な値も設定され、これら曲率半径の具体的な値がセットとなって、曲率半径データベース31に準備される。
次に、中間曲率半径について説明する。前述したように、長尺型材21に対しては、曲げロール12の移動により支点ロール当接位置11aにおいて曲げが付与される。ただし、前記の通り、支点ロール11および曲げロール12の間には所定の距離(ロール間隔)が形成されており、長尺型材21は、支点ロール当接位置11aから曲げロール当接位置12aに向かって搬送される。それゆえ、ベンディング経路のうちロール間経路では、支点ロール当接位置11aで曲げが付与された部位に対しては、その後に曲げロール12からも応力が加えられることになる。
前記の通り、支点ロール11および曲げロール12は所定のロール間隔を開けて位置している。そのため、後述するように、支点ロール11で曲げが付与された長尺型材21の任意の部位は、ロール間経路を搬送されて曲げロール当接位置12aに向かって進む間に、作用しているひずみもしくは曲げモーメントが徐々に変化する。それゆえ、ロール間経路に位置する単位部位に対しては、ひずみもしくは曲げモーメントの変化を考慮した曲率半径である「中間曲率半径」を設定する必要がある。
この中間曲率半径は、支点ロール当接位置11aから曲げロール当接位置12aに至るまでの単位部位のそれぞれに対して、初期曲率半径から設計曲率半径に連続的に変化させるように設定されるものであればよい。この中間曲率半径の具体的な設定方法は特に限定されないが、本実施の形態では、任意の単位部位が支点ロール当接位置11aにあったときに付与された初期曲率半径の値と、当該単位部位が曲げロール当接位置12aに至るまでに変化するひずみまたは曲げモーメントとから設定することができる。
長尺型材21の単位部位においては、通常、曲げロール当接位置12aに近づくに伴ってひずみまたは曲げモーメントは暫時的に(徐々に)低減する。それゆえ、中間曲率半径は、支点ロール当接位置11aで付与された初期曲率半径、並びに、ひずみまたは曲げモーメントの低減の程度に基づいて設定すればよい。
制御部30は、曲率半径データベース31を参照して、長尺型材21等の被加工材が支点ロール11から送出されるときに、支点ロール当接位置11aから曲げロール当接位置12aに至るまでにおける、単位部位ごとの曲げ位置の変化量を積算して、曲げロール12の移動量である「ロール移動量」として算出する。この変化量については後述する。制御部30は、この積算量(ロール移動量)に基づいて、ロール移動部32により支点ロール11および曲げロール12の少なくとも一方を移動させる。図5(A)に示す構成では、積算量に基づいて曲げロール12のみを移動させる。これにより、得られるロール成形部品20においては、長手方向の所望の位置に、曲率が連続的変化する部分を形成することができる。
[制御部によるロール移動部の制御例]
次に、本実施の形態に係る製造装置10Aにおいて、制御部30がロール移動部32を制御して、支点ロール11に対する曲げロール12の相対位置を変化させて、得られるロール成形部品20に対して曲率変化部位20b(図1参照),曲率変化部位20e(図2参照)、もしくは第一曲率変化部位20hまたは第二曲率変化部位20j(図3参照)を形成する構成について、図7および図8を参照して具体的に説明する。
例えば、図7に示すように(図5(A)に示す状態と同じ)で、被加工材である長尺型材21が支点ロール11から曲げロール12に向かって(ブロック矢印Fで示す搬送方向に向かって)送出されているとする。このとき、支点ロール当接位置11aと曲げロール当接位置12aとの間には、前記の通り、ロール間隔を等分するように相対位置n0~n4が設定される。相対位置n0~n4同士の距離は、前記の通り、単位間隔Dと同一の距離(間隔)である。また、相対位置n0~n4に代えて相対区間z0~z4を設定してもよい(図6(B)参照)。
長尺型材21に対しては、前記の通り、ロール間隔を等分した相対位置n0~n4の間隔と同一の距離となるように複数の単位間隔Dが設定されている(図6(A)参照)。これら単位間隔Dに対応する各単位部位(図6(A)参照)には、前記の通り、設定曲率半径、初期曲率半径、および中間曲率半径が設定される。
図7に示す例では、ロール間隔は単位間隔Dと同じ間隔で模式的に4つに区分している。そのため、このロール間隔には、支点ロール当接位置11aおよび曲げロール当接位置12aを含めて、合計5つの相対位置が模式的に設定される。図7では、支点ロール当接位置11aを相対位置n0と設定すれば、ロール間隔には、ベンディング経路の下流側に向かって単位間隔Dごとに相対位置n1、相対位置n2、相対位置n3および相対位置n4が設定される。相対位置n4は曲げロール当接位置12aに相当する。
ロール成形部品20に対しては、単位間隔Dごとの単位部位に設計曲率半径が設定されている。単位間隔Dの具体的な数値は特に限定されないが、本実施の形態では、1つの単位間隔Dを例えば10mmに設定する。図7の下図には、曲率半径データベース31として記憶されている設計曲率半径、初期曲率半径および中間曲率半径等のデータの一例を、表T0として図示している。
ここで、図7に示すように、長尺型材21がロール間経路に搬送された任意の時点では、任意の単位部位が支点ロール当接位置11aに位置しているとともに、搬送方向Fの下流側に位置する別の単位部位が曲げロール当接位置12aに位置している。また、支点ロール当接位置11aおよび曲げロール当接位置12aの間(ロール間経路)には、複数(図7では3つの単位部位)が位置している。
そこで、説明の便宜上、支点ロール当接位置11aに位置する単位部位を「支点ロール単位部位」とし、曲げロール当接位置12aに位置する単位部位を「曲げロール単位部位」とする。また、これら単位部位の間に位置する単位間隔ごとに対応する単位部位を「中間単位部位」とする。図7に示す例では、相対位置n0に位置する単位部位が「支点ロール単位部位」であり、相対位置n4に位置する単位部位が「曲げロール単位部位」であり、相対位置n1~n3に位置する単位部位がそれぞれ「中間単位部位」である。
前記の通り、ロール間隔は、単位間隔Dと同一長さの複数の間隔に区分されている。それゆえ、相対位置n1に位置する中間単位部位は相対位置n0から見て1つ目の単位間隔Dに対応する単位部位であり、相対位置n2に位置する中間単位部位は相対位置n0から見て2つ目の単位間隔Dに対応する単位部位であり、相対位置n3に位置する中間単位部位は相対位置n0から見て3つ目の単位間隔Dに対応する単位部位である。
長尺型材21の任意の単位部位は、ロール間経路に搬送される過程で、支点ロール単位部位となり、複数の中間単位部位となり、曲げロール単位部位となる。つまり、長尺型材21の搬送の過程で、同一の単位部位が、支点ロール単位部位、中間単位部位、または曲げロール単位部位に順次移行するとみなすことができる。そして、任意の単位部位が、支点ロール単位部位であるときには、当該単位部位の部品位置に応じた値の初期曲率半径が付与され、曲げロール単位部位であるときには、当該単位部位の部品に応じた値の設計曲率半径が付与される。
さらに、任意の単位部位が中間単位部位であるときには、その曲率半径が、支持ロール単位部位であるときの初期曲率半径の値から、曲げロール単位部位であるときの設計曲率半径の値まで連続的に変化する値である中間曲率半径となっている。図7に例示する表T0では、長尺型材21(ロール成形部品20)の任意の単位部位(部品位置)における、初期曲率半径、設計曲率半径、および中間曲率半径がまとめられている。
具体的には、表T0では、部品位置1000mmから10mmごとの合計6つの部品位置を例示(1000mm,1010mm,1020mm,1030mm,1040mm,および1050mm)しているため、単位間隔DとしてはD1~D5の合計5つが例示されている。なお、図7では、搬送方向Fの下流側(部品位置の数値の小さい側)から単位間隔D5,D4,D3,D2,D1と図示している。
また、各単位間隔D1~D5に対応する単位部位は、本実施の形態では、前記の通り、当該単位間隔D1~D5の下流側の部品位置に設定する。例えば、表T0における単位間隔D1は、部品位置1040mm~1050mmの間であるが、この単位間隔D1に対応する長尺型材21の部品位置は、下流側の1040mmの単位部位である。
そして、表T0においては、図中左側から順に、部品位置(単位部位)のカラム(図中「部品」)、部品位置に対して設定される設計曲率半径のカラム(図中「R0」)、部品位置に対して設定される初期曲率半径のカラム(図中「n0」)、各相対位置n1~n3に部品位置が到達したときに当該部品位置に対して設定される中間曲率半径のカラム(図中「n1~n3」)、相対位置n4に部品位置が到達したときに当該部品位置に対して設定される曲率半径のカラム(図中「n4」)である。
本実施の形態では、相対位置n1~n3の各カラムにはそれぞれ中間曲率半径が設定されている。これら中間曲率半径は、これら相対位置に達した任意の単位部位が支点ロール単位部位であったときに付与された初期曲率半径と、その後に曲げロール単位部位に移行するまでに変化するひずみまたは曲げモーメントとから推算される推算値である。
また、相対位置n4に設定される曲率半径は、設計曲率半径と同一となる値である(R0のカラムおよびn4のカラムの数値参照)。相対位置n4は、任意の単位部位が曲げロール単位部位であるときに対応する。それゆえ、任意の単位部位が曲げロール単位部位であれば(相対位置n4に達すれば)、当該単位部位の部品位置に対応する値の設計曲率半径が付与されることになる。
ここで、相対位置n4は、曲げロール当接位置12aでありロール間隔の終了位置Rtである。それゆえ、相対位置n4に到達した部品位置に対して設定される曲率半径は、「終了位置曲率半径」ということができる。終了位置曲率半径は、前記の通り設計曲率半径と同一の値である。また、相対位置n0は支持ロール当接位置11aであり、ロール間隔の開始位置Rsでもある。それゆえ、相対位置n0に到達した部品位置に対して設定される曲率半径は、前記の通り初期曲率半径であるとともに、「開始位置曲率半径」ということができる。言い換えれば、「開始位置曲率半径」として初期曲率半径と同一の値を設定すると表現することができる。
なお、表T0においては、中間曲率半径が初期曲率半径から設計曲率半径に連続的に変化させるように設定された値であることを理解しやすくする便宜上、中間曲率半径が10mmずつ等量で連続的に変化するように記載している。しかしながら、実際には、ひずみが累乗的に変化するように、相対位置n1から相対位置n4までの区間での曲率半径も累乗的に変化している。それゆえ、設定される中間曲率半径も累乗的に変化する値として設定すればよい。
任意の単位部位における設計曲率半径、初期曲率半径、中間曲率半径、および終了位置曲率半径の一例について、例えば、部品位置1010mmの単位部位を挙げて説明する。部品位置1010mmの単位部位では、表T0に示すように、設計曲率半径は2000mmに設定される。この単位部位が支点ロール当接位置11aに達するとき(支点ロール単位部位に移行したとき、あるいは、相対位置n0に達したとき)には、支点ロール11により長尺型材21に対して付与される初期曲率半径は1960mmに設定される。
その後、この単位部位が、支点ロール当接位置11aから下流側の相対位置n1まで進めば(第一の中間単位部位に移行すれば)、その中間曲率半径は1970mmに設定される。この単位部位がさらに下流側の相対位置n2まで進めば(第二の中間単位部位に移行すれば)、その中間曲率半径は1980mmに設定される。この単位部位がさらに下流側の相対位置n3まで進めば(第三の中間単位部位に移行すれば)、その中間曲率半径は1990mmに設定される。
この単位部位が、さらに下流側の相対位置n4まで進めば、その終了位置曲率半径は設計曲率半径と同じ値である2000mmに設定される。相対位置n4は、ロール間経路の最終位置(ロール間隔の終了位置Rt)であり、曲げロール当接位置12aである。それゆえ、部品位置1010mmの単位部位は曲げロール単位部位に移行したことになり、当該部品位置に応じた設計曲率半径が付与される。
なお、ロール間経路における中間単位部位の数は特に限定されない。図7に示す例では、ロール間隔が4つに等分され、5つの相対位置n0~n4が設定される。それゆえ、相対位置n1~n3に位置する単位部位が中間単位部位となるので、図7では、3つの中間単位部位が設定されることになる。前記の通り、ロール間隔を複数の相対位置(または相対区間)に区分する数は特に限定されないので、中間単位部位の数は、これら相対位置の区分数に応じた数となる。それゆえ、中間単位部位の数は1つ以上あればよい。
支点ロール当接位置11aすなわち相対位置n0において、設計曲率半径と同じ値(例えば、部品位置1010mmでは曲率半径2000mm)を長尺型材21に対して付与したとする。本発明者らの検討によれば、長尺型材21が支点ロール当接位置11aから送出されていくと、相対位置n0で最大ひずみが与えられ、下流側の相対位置n1~n4にそれぞれ達した時点では、同じ部品位置におけるひずみが累乗的に低減し、相対位置n4を通過したときに残存するひずみが永久変形として最終的な形状を形成することが明らかとなった。これは、いわゆるスプリングバック後の形状ということができる。
より具体的には、本発明者らの検討によれば、従来のロール成形部品の製造装置では、曲率が連続的に変化するロール成形部品20を製造するために、被加工材の所定の位置で単純に曲率に比例するように、ロール移動部32により支点ロール11を基準として曲げロール12の位置の相対変化を付与しても、所望の曲率変化が得られず屈曲したり曲げそのものが形成されなかったりすることが明らかとなった。
また、本発明者らの検討によれば、曲げロール12による曲げの付与に際しては、(1)支点ロール11に対する曲げロール12の相対的な位置を後述するように徐々に変化させなければ、連続的な所望の曲率の変化が得られないこと、並びに、(2)曲げロール12による曲げの付与では、被加工材にスプリングバックが発生するが、スプリングバックの影響を考慮して、相対位置n0に位置する単位部位に対して、単に初期曲率半径の付与に相当するように曲げロール12の位置を変化させるだけでは、所望の曲率の変化が得られないことが明らかとなった。
この理由は、(1)被加工材に対する最大の曲げひずみの付与は、実際には支点ロール当接位置11aで発生していること、並びに、(2)支点ロール11および曲げロール12の間では、被加工材がすでに支点ロール11を通過しているため、当該被加工材が曲げられた状態になっていること、に起因しているためである。したがって、支点ロール11に対する曲げロール12の相対位置を、単純に連続的な曲率の変化に比例するような値で変化させるだけでは、最終的に得られるロール成形部材に対して所望の連続的な曲率変化が得られない。
そこで、本開示においては、支点ロール当接位置11aすなわち相対位置n0において、設計曲率半径と同じ値ではなく、ひずみの低減およびスプリングバック(あるいは、曲げモーメントの付与による見かけ上の曲がり具合)を見込んだ初期曲率半径を付与する。例えば、長尺型材21における部品位置1010mmの単位部位を、便宜上「注目部位」とすれば、この注目部位に対しては、設計曲率半径2000mmに対する初期曲率半径1960mmを付与する。
その後、長尺型材21が送出されて注目部位が相対位置n1に達したときには、当該注目部位の曲率半径は、相対位置n1における中間曲率半径の値1970mmに変化する。同様に、注目部位が相対位置n2に達したときには、当該注目部位の曲率半径は、相対位置n2における中間曲率半径の値1980mmに変化し、相対位置n3に達したときには、当該注目部位の曲率半径は、相対位置n3における中間曲率半径の値1990mmに変化し、相対位置n4すなわち曲げロール当接位置12aに達したときには、当該注目部位の曲率半径は、相対位置n4における終了位置曲率半径の値2000mm、すなわち、注目部位(部品位置1010mmとなる単位部位)における設計曲率半径と同一となる値まで変化する。したがって、曲げロール当接位置12aにおける曲率半径は、最終曲率半径であって、図7に示す例では、最終曲率半径が設計曲率半径に一致している。
図7に示す模式的な状態では、部品位置1010mm~部品位置1050mmまでの5つの単位部位がロール間経路に位置している。この5つの単位部位においては、設計曲率半径が2000mmから1800mmまで変化している。言い換えれば、この5つの単位部位に対応するロール成形部品20の一部は、前述した曲率変化部位20b,曲率変化部位20e、もしくは第一曲率変化部位20hまたは第二曲率変化部位20j(あるいはこれらの一部)に対応する。それゆえ、支点ロール当接位置11aに送出されてくるそれぞれの単位部位に対しては、ひずみの低減またはスプリングバックを考慮した初期曲率半径となるように曲げが付与されることになる。
また、図7に示す模式的な状態、すなわち、長尺型材21における部品位置1050mmの単位部位が支点ロール当接位置11aすなわち相対位置n0に送出されており、この部品位置1050mmの単位部位に対する設計曲率半径が1800mmであり、この部品位置1050mmの単位部位に対して初期曲率半径1760mmが付与されるとする。このとき、直前に曲げが付与された部品位置1040mmの単位部位を注目部位とすれば、この注目部位は相対位置n0から相対位置n1まで送出されている。相対位置n1に達した注目部位(部品位置1040mmの単位部位)においては、その曲率半径は、付与された初期曲率半径1810mmから相対位置n1における中間曲率半径の値1820mmに変化している。
同様に、部品位置1040mmの単位部位よりも前に曲げが付与された部品位置1030mmの単位部位は相対位置n0から相対位置n2まで送出されている。そこで、部品位置1030mmの単位部位を注目部位とすれば、相対位置n2に達した注目部位においては、その曲率半径は、付与された初期曲率半径1860mmから相対位置n2における中間曲率半径の値1880mmに変化している。
同様に、部品位置1030mmの単位部位よりも前に曲げが付与された部品位置1020mmの単位部位は相対位置n0から相対位置n3まで送出されている。そこで、部品位置1020mmの単位部位を注目部位とすれば、相対位置n3に達した注目部位においては、その曲率半径は、付与された初期曲率半径1910mmから相対位置n3における中間曲率半径の値1940mmに変化している。
同様に、部品位置1020mmの単位部位よりも前に曲げが付与された部品位置1010mmの単位部位は相対位置n0から相対位置n4すなわち曲げロール当接位置12aまで送出されている。そこで、部品位置1010mmの単位部位を注目部位とすれば、曲げロール当接位置12aに達した注目部位においては、その曲率半径は、付与された初期曲率半径1960mmから相対位置n4における終了位置曲率半径の値2000mmすなわち設計曲率半径と同値に変化している。したがって、図7において点線で囲んでいるように、表T0では、同時刻における各単位部位の曲率半径は、斜め右上方向に沿った数値となる。
このように、所定の部品位置で所定の設計曲率半径を実現するためには、当該部品位置において、支点ロール当接位置11aにおいて、ひずみの低減またはスプリングバック(あるいは見かけ上の曲がり具合)を考慮した初期曲率半径を付与することになる。また、前記の通り、長尺型材21における単位間隔とロール間隔における下位間隔とは同一の長さ(距離)に設定している。それゆえ、制御部30は、支点ロール当接位置11aにおいて初期曲率半径を付与できるように、同時刻における任意の部品位置が相対位置n0に位置すれば、当該部品位置よりも先に(基準端21p側に)位置する部品位置は、それぞれ相対位置n1~n4に位置するように、すなわち、表T0における斜め右上方向の反った数値を実現するように、ロール移動部32により曲げロール12を移動させる(支点ロール11および曲げロール12の少なくとも一方を移動させる)ことが必要である。
図5(A)(および図7)に示すように、長尺型材21(被加工材)のうち相対位置n0に到達した単位部位に対しては、所定の初期曲率半径を付与するとともに、相対位置n1~n4に到達した単位部位に対しても、所定の曲げ(これら相対位置における中間曲率半径または終了位置曲率半径の値)を付与する必要がある。そこで、制御部30は、相対位置n0~n4に到達したそれぞれの単位部位における曲げ位置を積算して曲げロール12の変化量を算出し、この積算量すなわちロール移動量に基づいてロール移動部32を制御する。
ロール間隔における曲げロール12の変化量は、長尺型材21の単位間隔ごとの単位部位に対して設定される、個別の初期曲率半径の具体的な値に基づいて算出することができる。例えば、図7に示す長尺型材21の曲げ状態について、当該長尺型材21、支点ロール11および曲げロール12を模式化した図8を想定する。図7および図8に示す状態とは、ロール間経路の相対位置n0~n4に、長尺型材21(ロール成形部品20)の任意の単位間隔D1~D5が一致した時点に対応する。
図8では、長尺型材21を太線で模式化し、支点ロール11および曲げロール12をブロック矢印で模式化し、長尺型材21の曲げ方向を含むX-Yの二次元平面PL(点線で図示)を設定している。また、図8では、説明の便宜上、単位間隔D1~D4に対応する単位部位に対して、21-1~21-4の符号を付している。長尺型材21の単位部位21-1~21-4の部品位置は、相対位置n1~n4に一致している。
長尺型材21の単位間隔D1は、相対位置n0および相対位置n1の間に対応する。前記の通り、この単位間隔D1に対応する単位部位21-1に対して、表T0に所定の中間曲率半径が付与される。このとき、図8に示すように、相対位置n0に対応する単位間隔D1の始点A0から相対位置n1に対応する単位間隔D1の終点A1までの距離は、X方向の距離X1およびY方向の距離Y1として算出することができる。
また、単位間隔D1の下流側である単位間隔D2では、相対位置n2に対応する終点A2、すなわち、単位間隔D2に対応する単位部位21-2に対して、当該相対位置n2に対応する中間曲率半径の値が付与される。単位間隔D2の始点A1は、単位間隔D1の終点であり前記の通り相対位置n1に相当する。このとき、単位間隔D2の始点A1から当該単位間隔D2の終点A2の間の距離は、X方向の距離X2およびY方向の距離Y2として算出することができる。
同様に、単位間隔D3においても、終点A3すなわち単位部位21-3に対して、相対位置n3に対応する中間曲率半径の値が付与される。それゆえ、単位間隔D3の始点A2から終点A3までの距離を、X方向の距離(X3)およびY方向の距離(Y3)として算出することができる。同様に、単位間隔D4においても、終点A4すなわち単位部位21-4に対して、相対位置n4に対応する最終曲率半径の値(設計曲率半径と同値)が付与される。それゆえ、単位間隔D4の始点A3から終点A4までの距離を、X方向の距離(X4)およびY方向の距離(Y4)として算出することができる。
制御部30は、曲率半径データベース31を参照して、長尺型材21(被加工材)が支点ロール11から送出されるときに、支点ロール当接位置11aから曲げロール当接位置12aに至るまで(ロール間隔)に位置する、長尺型材21の単位間隔D1~Dnごとの距離X1~Xn,Y1~Ynを積算してロール移動量を取得する。なお、このロール移動量(積算値)は、ロール成形部品20の部品形状から毎回算出してもよいが、予め算出された値を曲率半径データベース31に記憶してもよいし、予め算出された値からNCプログラム化したものを制御部30等に登録してもよい。
図7および図8に示す例では、前記の通り、ロール間隔に5つの相対位置n0~n4が設定され、これらの間に4つの等間隔(下位間隔)が設定される。隣接する相対位置n0~n4の距離は単位間隔Dの距離と同値であるので、ロール間隔には、4つ分の単位間隔D1~D4の距離が存在することになる。そこで、制御部30は、任意の単位部位の始点が相対位置n0に達した時点において、4つ分の単位間隔D1~D4の距離を積算すればよい(X1+X2+X3+X4,Y1+Y2+Y3+Y4)。制御部30は、この積算量(ロール移動量)に基づいて、ロール移動部32を制御して、支点ロール11に対する曲げロール12の相対的な位置を変化させる。ロール間隔がn個の相対位置(または相対区間)に区分されていれば、ロール間隔には、n個の単位間隔D1~Dnの距離が存在することになる。それゆえ、n個分の単位間隔Dの距離を積算すればよい。
言い換えれば、制御部30においては、被加工材の曲げ方向を含む二次元平面PLを設定して(図8参照)、この二次元平面PLの二次元座標の数値を利用して、変化量を積算してもよい。曲げ方向を含む二次元平面PLを設定することで、前記の通り、各相対位置における中間曲率半径または最終曲率半径に基づく二次元座標(始点から終点までの距離)がそれぞれ得られる。そこで、この二次元座標の数値に基づく距離の絶対値を積算することにより、曲げロール12の位置に対応する二次元座標を得ることができる。制御部30は、得られた二次元座標に曲げロール12が位置するように、ロール移動部32を制御すればよい。
なお、制御部30によるロール移動部32の具体的な制御は、前述したような距離の積算または二次元座標を利用した制御に限定されないことはいうまでもない。制御部30においては、他のさまざまな制御手法を用いてロール移動部32を制御することができる。
[曲率半径の変化と曲げロールの相対位置の変化との関係]
次に、ロール成形部品20の曲率半径の変化と、曲げロール12の相対位置の変化との関係について、図9(A)および(B)を参照して具体的に説明する。曲げロール12は、本実施の形態では、ベンディング経路に対して交差(直交)する方向にストローク移動するので、曲げロール12の相対位置を「ストローク位置」と称する。
図9(A)および(B)に示すグラフは、いずれも同じものであり、横軸がロール成形部品20の部品位置であり、第一縦軸が部品位置に対するロール成形部品20の曲率半径であり、第二縦軸が曲げロール12のストローク位置である。また、このグラフは、図3に示すロール成形部品20Cの製造に対応するものである。
なお、図8(A),(B)では、第二縦軸における曲げロール12のストローク位置とは、ロール成形部品20となる被加工材(長尺型材21)の任意の部品位置が支点ロール当接位置11aにあるときのストローク位置である。これは、被加工材の任意の部品位置が支点ロール11を通過しているときに、当該被加工材に最大曲げが付与されることを説明する便宜上のためである。
この第二縦軸におけるストローク位置を、便宜上、支点ロール当接位置11aを基準としたストローク位置と称すれば、図9(A),(B)における第二縦軸を、曲げロール当接位置12aを基準とした場合には、ストローク位置を示すグラフは、図9(A),(B)に示す位置から右側にオフセットされたように図示される。第二縦軸における曲げロール12のストローク位置を、被加工材の任意の部品位置が曲げロール当接位置12aにあるときのストローク位置とすれば、基準位置が支点ロール当接位置11aから曲げロール当接位置12aに変更される。それゆえ、図9(A),(B)におけるストローク位置を示すグラフは、曲げロール12および支点ロール11の間隔(すなわちロール間隔)の分だけ右側にオフセットされて図示されることになる。
図9(A),(B)のいずれにおいても、曲率半径のグラフを一点鎖線で示し、ストローク位置のグラフを実線で示している。また、図9(B)では、部品位置に対する曲率半径のグラフとストローク位置のグラフとのずれを説明する便宜上、図9(A)には付していない変化点を示す符号を付している。
ロール成形部品20が送出されて、長手方向の位置(部品位置)が変化するに伴い、ロール成形部品20における最終曲率半径の変化と、曲げロール12のストローク位置(支点ロール11に対する曲げロール12の相対位置)の変化とは、図9(A),(B)に示すように、複雑なずれを示すことになる。
前記の通り、ロール成形部品20は、その長手方向に沿って、一定の曲率半径が維持される一定曲率部位20g,20i,20k、並びに、曲率半径が連続的に増加または減少するように変化する第一曲率変化部位20hおよび第二曲率変化部位20jを含む(図3参照)。制御部30は、図9(A)に示すように、ロール移動部32を制御して、被加工材において一定曲率部位20g,20i,20kに対応する部位では、その曲率半径が一定であるので、曲げロール12のストローク位置を一定に維持すればよい。図9(A)に示すように、一定曲率部位20g,20i,20kに対応する部品位置では、曲率半径もストローク位置も変化が見られず一定である。
なお、一定曲率部位20g,20i,20kにおける一定の曲率半径を便宜上、「基準曲率半径」とし、このときの曲げロール12における一定のストローク位置を便宜上、「基準位置」とする。図9(A),(B)では、部品位置に対する曲率半径の変化の挙動(一点鎖線のグラフ)と、曲げロール12のストローク位置の変化の挙動(実線のグラフ)とのずれを分かりやすくするために、基準曲率半径および基準位置を重ね図示している。
第一曲率変化部位20hにおける部品位置に対する曲率半径の変化は、図3にも示すように、連続的に曲率半径が減少して極小値に達してから基準曲率半径に戻るように増加し、さらに連続的な増加が継続して極大値に達してから基準曲率半径に戻るように減少する。
図9(B)に示すように、第一曲率変化部位20hにおける曲率半径の極小値をVe1とし、曲率半径の極大値をVe2とし、基準曲率半径をVb1またはVb2とすれば、第一曲率変化部位20hでは、曲率半径の変化は、極小値Ve1に達するまで連続的に減少し、その後は連続的な増加に転じて基準曲率半径Vb1に達し、その後も連続的に増加して極大値Ve2に達し、その後は連続的な減少に転じて基準曲率半径Vb2に戻ることになる。
また、第二曲率変化部位20jにおける部品位置に対する曲率半径の変化は、図3にも示すように、第一曲率変化部位20hとは逆に、連続的に曲率半径が増加して極大値に達してから基準曲率半径に戻るように減少し、さらに連続的な減少が継続して極小値に達してから基準曲率半径に戻るように増加する。
図9(B)に示すように、第二曲率変化部位20jにおける曲率半径の極大値をVe3とし、曲率半径の極小値をVe4とし、基準曲率半径をVb3またはVb4とすれば、第二曲率変化部位20jでは、曲率半径の変化は、極大値Ve3に達するまで連続的に増加し、その後は連続的な減少に転じて基準曲率半径Vb3に達し、その後も連続的に減少して極小値Ve4に達し、その後は連続的な増加に転じて基準曲率半径Vb4に戻ることになる。
これに対して、第一曲率変化部位20hにおける部品位置に対する曲げロール12のストローク位置の変化は、連続的にストローク位置が増加して極大値に達してから基準位置に戻るように減少し、さらに連続的な減少が継続して極小値に達してから基準位置に戻るように増加する。ただし、図9(A),(B)に示すように、曲率半径の変化の開始となる部品位置は、当然のごとく曲げロール12のストローク位置の変化の開始となる部品位置と実質的に同じである。しかしながら、部品位置に対するストローク位置の変化は、曲率半径の変化に対して完全に逆方向に変化するのではなく、図9(A),(B)に示すように独特のずれが生じる。
図9(B)に示すように、第一曲率変化部位20hにおけるストローク位置の極大値をPb1とし、ストローク位置の極小値をPb2とする。さらに、曲率半径が極小値Ve1に達したときの部品位置におけるストローク位置をPe1とし、曲率半径が極大値Ve2に達したときの部品位置におけるストローク位置をPe2とする。
第一曲率変化部位20hにおけるストローク位置の変化についてみると、曲率半径が極小値Ve1となる部位に達した時点のストローク位置Pe1は、ストローク位置の極大値Pb1の絶対値の45~55%の範囲内の値に対応し、第一曲率変化部位20hの曲率半径が基準曲率半径Vb1に戻った時点のストローク位置Pe2は、ストローク位置の極小値Pb2の絶対値の90%以上100%未満の値に対応するストローク位置となる。
また、第二曲率変化部位20jにおける部品位置に対する曲げロール12のストローク位置の変化は、連続的にストローク位置が減少して極小値に達してから基準位置に戻るように増加し、さらに連続的な増加が継続して極大値に達してから基準位置に戻るように増加する。
図9(B)に示すように、第二曲率変化部位20jにおけるストローク位置の極小値をPb3とし、ストローク位置の極大値をPb4とする。さらに、曲率半径が極大値Ve3に達したときの部品位置におけるストローク位置をPe3とし、曲率半径が極小値Ve4に達したときの部品位置におけるストローク位置をPe4とする。
第二曲率変化部位20jにおけるストローク位置の変化についてみると、曲率半径が極大値Ve3になる部位に達した時点のストローク位置Pe3は、ストローク位置の極小値Pb3の絶対値の45~55%の範囲内の値に対応し、第二曲率変化部位20jの曲率半径が基準曲率半径Vb3に戻った時点のストローク位置Pe3は、ストローク位置の極大値Pb4の絶対値の90%以上100%未満の値に対応するストローク位置となる。
第一曲率変化部位20hおよび第二曲率変化部位20jのいずれにおいても、曲率半径が最終的に基準曲率半径(Vb2またはVb4)に戻った部品位置では、曲げロール12のストローク位置は未だ変化中(ピーク時(極値)の90~100%)であり、ストローク位置の変化が基準位置に戻るのは、曲率半径が基準曲率半径に戻ってから、位置的にかなり後(ベンディング加工の時間として見ても、時間的にかなり後)になる。
このような、曲率半径の変化に対するストローク位置の変化は、次に説明するようにまとめることができる。
ロール成形(ベンディング)において、形状を決定するための曲げは、支点ロール当接位置11aで支点ロール11により与えられる。すなわち、ロール成形部品20における曲率の異なる部位に対応する被加工材(長尺型材21)の部位が、支点ロール当接位置11aを通過するのであれば、その曲率に対応するひずみ(あるいは曲げモーメントと言い換えることができる)を与える必要がある。
しかしながら、支点ロール当接位置11aで与えられるひずみは、支点ロール11のみにより与えられるのではなく、支点ロール11および曲げロール12の相対的な移動により与えられる。それゆえ、製造装置10Aが、例えばロールフォーミングおよびロールベンディングの双方がつながったような構成を含んでいれば、下流側に位置する曲げロール12を移動(動作)させることによって、支点ロール当接位置11aに到達している部位にひずみ(あるいは曲げモーメント)を導入することが可能となる。
あるいは、支点ロール当接位置11aに到達している部位の形状は、曲げロール12の移動位置によって決定されるということができる。ただし、支点ロール当接位置11aおよび曲げロール当接位置12aの間には、その瞬間よりも前に曲げられた部位(便宜上「曲げ済部位」とする)が存在する。それゆえ、曲げロール12の移動位置は、前記の曲げ済部位を考慮した(曲げ済部位の曲げを反映させた)位置にする必要がある。
特に、被加工材が支点ロール当接位置11aから曲げロール当接位置12aに進むにしたがって、曲げられた被加工材の任意の部位に作用しているひずみあるいは曲げモーメントは徐々に低減していく。そのため、支点ロール当接位置11aおよび曲げロール当接位置12aの間に位置する被加工材の部位においては、支点ロール当接位置11aに近接するほど、曲げロール12による曲げの影響の度合いが大きいものとなる。その結果、曲げロール12のストローク位置の変化は、曲率半径の変化よりも、やや「遅れた」ような挙動を示すことになる。
[変形例]
前述した製造装置10Aは、図5(A)に示すように、制御部30が曲率半径データベース31を参照する構成であったが、本開示はこれに限定されない。例えば、図10に示す製造装置10Bは、曲率半径データベース31を備えていない構成である。すなわち、本開示においては、製造装置10Aが備える曲率半径データベース31は必須構成ではなく、製造装置10Bのように制御部30およびロール移動部32を備え、曲率半径データベース31を備えない構成であってもよい。
前述したように、制御部30は、ロール間隔における単位間隔ごとの距離の積算値をNCプログラム化して制御部30等に登録してもよい。それゆえ、図10に示すように、制御部30がプログラム30aを図示しない記憶部等に記憶しておき、制御部30は、当該プログラム30aに基づいてロール移動部32を制御するよう構成されてもよい。この構成では、曲率半径データベース31を参照して積算値を算出しなくてもよい。それゆえ、本開示においては、曲率半径データベース31は必須構成でなくてもよい。
また、前述した製造装置10Aは、図5(A)に示すように、ロール移動部32が曲げロール12のみを移動させる構成であったが、本開示はこれに限定されない。図11に示す製造装置10Cは、前述したように、ロール移動部32が、支点ロール11および曲げロール12の双方を移動可能に構成されている。また、図示しないが、ロール移動部32が支点ロール11のみを移動可能とし、曲げロール12は固定する構成であってもよい。なお、製造装置10Cの他の構成は、製造装置10Aと同様であるためその説明は省略する。
また、前述した製造装置10Aにおいては、曲げロール12により曲げが付与される直前の被加工材は、その断面方向における折返し部位または折曲げ部位を含む断面構造を有するもの、すなわち、長尺型材21であったが、被加工材はこれに限定されず、所定の断面構造を有しない平板状の長尺板材であってもよい。
また、前述した製造装置10Aでは、制御部30は、同じ部品位置におけるひずみが累乗的に低減している(スプリングバックもひずみと同様に累乗的に生じている)ことに基づいて、ロール間隔における単位間隔ごとの曲げロール12の変化量を積算し、この積算量に基づいて、ロール移動部32を制御しているが、本開示はこれに限定されない。例えば、ひずみの累乗的低減(またはスプリングバックの累乗的な発生)を、直線的(比例的)なひずみの低減(またはスプリングバックの発生)に近似的に置き換えた上で、単位間隔ごとの変化量を積算してもよい。
また、前述した製造装置10Aでは、制御部30は、設計曲率半径が最終曲率半径と実質的に同一になるように、支点ロール当接位置11aにおいて初期曲率半径を付与しているが、本開示はこれに限定されない。前述したように、ロール成形部品20において要求される曲率半径の精度の範囲内で、最終曲率半径が設計曲率半径に近似してもよいし、ロール成形部品20に対して施される後加工等も考慮して、最終曲率半径を設計曲率半径とは異なる値に設定してもよい。
例えば、航空機用のアルミニウム合金を成形する場合には、成形した後に人工時効を行う。ここで、成形したアルミニウム合金の部材を人工時効すれば格子係数が異なってしまうために、成形品の形状が若干変化することが知られている。そこで、このような場合には、最終曲率半径を、設計曲率半径から変化分だけ異なる値に設定すればよい。
また、前述した製造装置10Aでは、曲率半径データベース31には、単位間隔(部品位置)ごとの設計曲率半径に対して、単一の初期曲率半径が設定されて記憶されているが、本開示はこれに限定されない。初期曲率半径としては、少なくとも被加工材の物性に基づいて複数の異なる値が設定されてもよい。例えば、被加工材に対する熱処理またはその他条件によっては、被加工材の強度等の物性が異なってくる場合がある。そこで、曲率半径データベース31には、このような被加工材の物性の相違に対応して、単位間隔ごとの設計曲率半径に対して被加工材の強度に応じて初期曲率半径を設定してもよい。制御部30は、初期曲率半径の異なる値に応じて、ロール移動部32を適宜制御して曲げロール12の相対位置を変化させればよい。
また、前述した製造装置10A、製造装置10Bまたは製造装置10Cが備える支点ロール11および曲げロール12は、いずれも単一のロールを例示していたが、本開示はこれに限定されない。例えば、図12に示す製造装置10Dのように、支点ロール11および曲げロール12の少なくとも一方が、長尺型材21(被加工材)を挟み込むロール対として構成されてもよい。図12に示す製造装置10Dでは、製造装置10Aまたは10Bにおける支点ロール11が支点ロール対15に置き換えられている。なお、図12では、支点ロール対15が長尺型材21(被加工材)に当接する位置を、支点ロール当接位置15aとして図示している。また、支点ロール11ではなく曲げロール12がロール対に置き換えられてもよいし、支点ロール11および曲げロール12の双方がロール対に置き換えられてもよい。
ここで、支点ロール11および曲げロール12の少なくとも一方がロール対である場合には、図12に示すように、製造装置10Dは、ロール対の位置を長尺型材21(被加工材)に対して面直となるように調整するロール対位置調整部33をさらに備えていればよい。ロール対位置調整部33の具体的な構成は特に限定されず、ロールベンディング装置等の分野において公知の面直機構等を好適に用いることができる。また、図12では、ロール対位置調整部33は、ロール移動部32とは別の機構として設けられているが、ロール対位置調整部33とロール移動部32とが単一の機構としてまとめられていてもよい。
また、本開示においては、図11に示す製造装置10Cのように、搬送ロール13からみてベンディング経路の上流側に、成形ロール部14を備えていてもよい。この成形ロール部14としては、平板状の長尺板材22に対して所定の断面構造を付与するロール装置を挙げることができる。この成形ロール部14は、単に、所定の断面構造を付与するだけでなく、その長手方向に沿って幅および厚さの少なくとも一方が連続的に変化する部位を付与できるように構成されてもよい。なお、図11では、成形ロール部14を単一のロール対として模式的に図示しているが、もちろんこの構成に限定されない。
言い換えれば、本開示で製造されるロール成形部品20は、曲率半径が連続的に変化する部位を含むだけでなく、その長手方向に沿って幅および厚さの少なくとも一方が連続的に変化する部位も含むものであってもよい。また、図3に示すロール成形部品20Cでは、第一曲率変化部位20hおよび第二曲率変化部位20jは、ロール成形部品20の一部であったが、ロール成形部品20の長手方向全体において曲率半径が連続的に変化してもよい。
加えて、ロール成形部品20には、曲率半径の変化が連続的ではなく段階的に変化する部位を含んでもよい。この場合、製造装置10Aまたは10Bにおいては、曲率半径の変化を段階的に付与するように制御部30がロール移動部32を制御して曲げロール12の相対的な位置(ストローク位置)を変化させてもよい。
このように、本開示によれば、製造されるロール成形部品20の長手方向の位置に対して予め設計曲率半径を設定するとともに、この設計曲率半径に対して、スプリングバックが生じる前もしくはひずみが低減される前の曲率半径である初期曲率半径を設定してデータベース化しておき、制御部30は、このデータベースを参照して、被加工材が支点ロール11から送出されるときに、支点ロール当接位置11aから曲げロール当接位置12aに至るまでに、各単位間隔における個別の設計曲率半径に基づく曲げロール12の変化量を積算し、支点ロール11に対する曲げロール12の相対的な位置の変化が、この積算量に基づく変化量となるように、ロール移動部32を制御している。
この構成では、支点ロール当接位置11aに注目して初期曲率半径を設定するだけでなく、支点ロール当接位置11aから曲げロール当接位置12aに向かって先に進んだ被加工材に対して、曲げ形状を累積していくかたちになるように、支点ロール11に対する曲げロール12の位置を確定することになる。これにより、被加工材に対して連続的な曲率の変化を付与するために、支点ロール11に対する曲げロール12の相対的な位置を徐々に変化させることができる。その結果、得られるロール成形部品20においては、長手方向の所望の位置に連続的に曲率が変化する部分を形成することができる。長手方向の少なくとも一部に曲率を自在に変化させた部分を含む成形部品をロール成形により製造することが可能となる。
なお、本開示には、前述した構成のロール成形部品の製造装置だけでなく、ロール成形部品の製造方法も含まれることはいうまでもない。
また、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。