以下、本発明による多重成形体付き化粧料容器の好適な実施形態について図1~図10を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る多重成形体付き化粧料容器を示す斜視図、図2は、多重成形体付き化粧料容器の縦断面図、図3は、多重成形体、後部筒及び筒状カバー部材を示す縦断面図、図4は、図3中のIV-IV矢視図であり、本実施形態では、棒状化粧料繰出容器を化粧料容器として説明する。
図1及び図2に示すように、多重成形体付き化粧料容器100は、全体形状が筆記具の如き細長い丸棒状を呈するものであり、化粧料容器1と、化粧料容器1の後端部に連結され多重成形により形成された多重成形体2と、化粧料容器1と多重成形体2との間に介在し内部を覆う筒状カバー部材12とを主体として、外観が構成されている。
化粧料容器1は、軸線方向に延びる長尺な本体筒3を備え、図2に示すように、本体筒3内には、丸棒状の棒状化粧料Mと、棒状化粧料Mを支持すると共に螺合部の一方を備える移動体としての棒状化粧料支持体5と、螺合部の他方を備える雌螺子部材6と、雌螺子部材6と本体筒3内との間に介装された圧縮コイルバネ7と、本体筒3の後部内に配置され雌螺子部材6の略後半部を囲繞する後部筒4が配置されている。
本体筒3は、例えばPP(ポリプロピレン)、ABS樹脂等から形成され、長尺な円筒状を呈し、先端部の外周面が多少先細りする形状とされている。本体筒3の後部側の内周面には、後部筒4を軸線方向に係合するための凹部3aが円環状に設けられている。
本体筒3には、先端の開口3bから後方へ向かって延び棒状化粧料Mの摺動を可能とする棒状化粧料孔3cが設けられる。この棒状化粧料孔3cの周囲の複数箇所(ここでは四等配の位置)には、開口3bの近傍から本体筒3の軸線方向中程に亘って、棒状化粧料支持体5の後述する支持片5dを収容し摺動を可能とする支持片溝3dが連設される。そして、これらの棒状化粧料孔3c及び当該棒状化粧料孔3c周囲の支持片溝3d~3dにより、棒状化粧料M及び支持片5dが摺動する進退孔3eが構成される。ここでは、棒状化粧料孔3cは棒状化粧料Mと同様な断面円形とされる。そして、支持片溝3dの先端面が、棒状化粧料支持体5の支持片5dの先端が突き当たる棒状化粧料支持体5の前進限とされる。
また、本体筒3の軸線方向中程から後方で進退孔3eに続く部分には、段部3fを介して断面円形に拡径される大径孔3gが、圧縮コイルバネ7及び雌螺子部材6並びに後部筒4の前側の円筒部4dを収容する領域として設けられている。
棒状化粧料支持体5は、棒状化粧料Mの後端部を支持するための支持部5aと、支持部5aより後側に設けられ、雌螺子部材6の後述する雌螺子である螺合突起6bに螺合する雄螺子5bと、を備える。雄螺子5bは、軸線方向に長尺に延在する。
前側の支持部5aは、棒状化粧料Mの後端面を突き当てるための基部5cと、この基部5cから前方へ所定長突出し周方向の複数位置(ここでは四等配の位置)に設けられ、基部5cに突き当てられた棒状化粧料Mの後端部を相互間に挟んで支持する支持片5dと、を備える。
図5は、後部筒を示す斜視図、図6は、後部筒の側面図であり、後部筒4は、例えばABS樹脂等から形成される。後部筒4は、図2~図6に示すように、略有底円筒状を呈し、本体筒3との相対回転により棒状化粧料Mを進退させるためのものである。後部筒4の後部側の外周面には外方へ突出する鍔部4aが円環状に形成される。この鍔部4aは、その前面に、本体筒3の後端面が突き当てられると共に、その後面4g(図3参照)に、筒状カバー部材12の先端面12a(開放端面;図10参照)が突き当てられるものである。
後部筒4の鍔部4aより前側の円筒状の円筒部4dは、本体筒3の大径孔3gに収容され、鍔部4aより後側の有底円筒状の有底円筒部4fは、多重成形体2の後述の円筒状の筒状装着部11に内挿されるものである。後部筒4の円筒部4dの外周面には、本体筒3の凹部3aに軸線方向に係合するための凸部4bが円環状に設けられている。また、後部筒4には、その内周面に、周方向に沿って凹凸が連なり当該凹凸が軸線方向に延びるローレット4cが、雌螺子部材6を回転方向に係合するためものとして設けられている。
なお、ここでは、棒状化粧料Mの移動ストロークを長くとるべく、図3に示すように、ローレット4cを後部筒4の鍔部4aより後側へと延ばした有底円筒部4fとしているが、ローレット4cは当該部位まで延びてなくても良く、有底円筒部は円柱部であっても良く、要は、外周面が円形(詳しくは後述)な軸部であれば良い。従って、上記有底円筒部を以降は軸部4fと呼ぶ。
雌螺子部材6は、例えばPOM(ポリアセタール)等から形成され、図2に示すように、略円筒状を呈し、軸線方向中程より多少前側に円環状の鍔部6aを備える。この雌螺子部材6の鍔部6aより後側の部分が、後部筒4に内挿される。雌螺子部材6の内周面の先端部には、棒状化粧料支持体5の雄螺子5bに螺合する一対の螺合突起(雌螺子)6b,6bが対向して設けられる。また、雌螺子部材6の鍔部6aより後側には、周方向に沿って離間され軸線方向に延びる突条6cが、後部筒4のローレット4cを回転方向に係合するものとして設けられる。
圧縮コイルバネ7は、雌螺子部材6の鍔部6aより前側の部分を囲繞すると共に、本体筒3の段部3fと雌螺子部材6の鍔部6aとの間に挟まれるように配置される。なお、圧縮コイルバネ7に代えて例えば樹脂バネ等を用いても良い。
そして、先ず、雌螺子部材6の螺合突起6b,6bに棒状化粧料支持体5の雄螺子5bを、基部5cと雌螺子部材6の先端面とが接するように螺子込み、次いで、本体筒3の段部3fに当接するように圧縮コイルバネ7を本体筒3に内挿する。そして、棒状化粧料支持体5及び雌螺子部材6を、その先端側から本体筒3の後端側に内挿し、その支持片5dが本体筒3の支持片溝3dに進入するようにして、進退孔3eに内挿する。従って、棒状化粧料支持体5の支持片5dが進入する支持片溝3dは、棒状化粧料支持体5の回り止めとされ、棒状化粧料支持体5は、本体筒3に対して軸線方向に移動可能且つ軸線周りに同期回転可能に装着される。
次いで、後部筒4の鍔部4aより前側の円筒部4dを、本体筒3の大径孔3gに進入させ、雌螺子部材6の突条6cを後部筒4のローレット4cに進入させ回転方向に係合することによって、雌螺子部材6と後部筒4とを軸線周りに同期回転可能とし、後部筒4の先端面を、雌螺子部材6の鍔部6aの後端面に突き当てると共に、後部筒4の鍔部4aの先端面を、本体筒3の後端面に突き当て、後部筒4の凸部4bが本体筒3の凹部3aに軸線方向に係合することによって、本体筒3に対して後部筒4が軸線方向に移動不能且つ軸線周りに回転可能に装着される。
この状態で、雌螺子部材6の鍔部6aは、圧縮コイルバネ7の付勢力により後方へ押圧され、雌螺子部材6の鍔部6aは後部筒4の先端面に当接した状態になっている。この圧縮コイルバネ7は、そのバネ定数が、筆圧よりも大きく設定されていると共に、多重成形体付き化粧料容器100を例えば落下させたとき等に雌螺子部材6に作用する衝撃等を緩衝し、雌螺子部材6に螺合する棒状化粧料支持体5の棒状化粧料Mを保護する役目を果たす。
そして、棒状化粧料Mは、本体筒3の開口3bから挿入され棒状化粧料支持体5の支持片5dに支持される。棒状化粧料Mは、ここではリップ用とされているが、他の用途に用いる棒状化粧料であっても勿論良い。
次に、多重成形体2について説明する。図7は、多重成形体を示す斜視図、図8は、多重成形体の側面図、図9は、図8の左側面図であり、多重成形体2はアイキャッチ効果を高めるために化粧料容器1の後端部に設けられたものである(図1及び図2参照)。
多重成形体2は、色の異なる溶融樹脂を金型内に順番に射出し一体的に成形する工法により得られるものであり、図7~図9に示すように、透明な樹脂材料から形成された柱体8と、柱体8内に埋設され、樹脂材料から形成されて着色された立体有形物Tと、を備えている。
透明な樹脂材料としては、例えば、AS(アクリル・スチレン)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(アクリル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等が挙げられる。また、樹脂材料の着色は、例えば上記透明な樹脂材料に例えば顔料等の色材を加えることにより成される。
柱体8は、透明な樹脂材料から形成され天面9及び底面10を有する筒状体を有し、筒状体と立体有形物Tとの間に、透明な樹脂材料が充填されることにより多重成形体2が形成されている。柱体8は、ここでは、円柱とされている。
着色された立体有形物Tは、ここでは、ピンク色のリーフ(葉っぱ)とされている。立体有形物Tは、上下方向に傾くように斜めに配置されると共に、透明な樹脂材料の柱体8の外周側を除く位置を埋めるように配置されている(図3参照)。なお、立体有形物Tは、リーフに限定されるものではなく、例えば球や蝶のような他の立体有形物を採用することもできる。また、色もピンクに限定されるものではなく、例えば赤や緑等を採用することもできる。また、アイキャッチ効果の観点からすれば、立体有形物Tは2個以上であっても良く、立体有形物を色違いにしたり、大きさを異ならせたり、違う形状として良い。
柱体8の底面10には、柱体8と共に透明な樹脂材料から一体成形された筒状装着部11が、柱体8を化粧料容器1の後端部の軸部4fに固定するためのものとして設けられている。筒状装着部11は、円筒状を呈し、その外周面が、柱体8の外周面より小径とされ、筒状装着部11の筒内に、化粧料容器1の後部筒4の軸部4fが内挿され、接着固定される。
筒状装着部11の外周面で、柱体8とは反対側の端部側(図7及び図8の左側)の位置には、外方へ突設し筒状カバー部材12を回転方向に係合する回り止めとしての突起13が設けられている。突起13は、ここでは、バランスや組立性を考慮して、周方向に沿って4等配の位置に設けられているが、好ましくは一対、最低でも1個あれば良い。
また、図10に示す円筒状の筒状カバー部材12が、筒状装着部11を覆うように外挿されている。筒状カバー部材12の内周面には、図10に示すように、軸線方向に延びてその両端が外部開放され、突起13に対応するスライド溝14が4個凹設され、突起13がスライド溝14に進入することにより、筒状カバー部材12と筒状装着部11の回り止めが構成されている。なお、筒状カバー部材12は、ここでは、アルミより形成されているが、例えば樹脂等の他の材質より形成しても勿論構わない。
そして、後部筒4の外面、及び、筒状カバー部材12の全面(内外周面及び端面)は黒色に塗装されている。この着色は、例えばドブづけやスプレー等で行うことが可能である。
このような多重成形体2と後部筒4の軸部4fとの連結、及び、筒状カバー部材12の装着は、以下のようにして行う(図3及び図4参照)。先ず、多重成形体2の筒状装着部11の突起13が、筒状カバー部材12のスライド溝14に進入するようにして、筒状カバー部材12を筒状装着部11の開放端側から外挿し回り止めした状態で、筒状カバー部材12の柱体8側の端面を、柱体8の底面10に突き当てる。
そして、接着剤が塗布された軸部4fを筒状装着部11に内挿し、軸部4fと筒状装着部11とを接着固定し連結する。すると、鍔部4aの後面である軸部側の面4g(図2、図3及び図6参照)が、筒状カバー部材12の開放端面12aに当接し、筒状カバー部材12は、柱体8の底面10の外周側と軸部4fの鍔部4aとの間に挟み込まれ軸線方向に移動不能とされると共に、突起13とスライド溝14との回り止めにより回転不能とされ、筒状カバー部材12は、化粧料容器1側から後部筒4の鍔部4aにより閉じられた状態となる。なお、筒状カバー部材12に内挿される筒状装着部11の開放端も、鍔部4aの軸部側の面4gに当接していても良い。そして、このようにして図1及び図2に示す多重成形体付き化粧料容器100が得られる。ここでは、図1に示すように、多重成形体付き化粧料容器100の先端から後端に亘って、本体筒3、鍔部4a、筒状カバー部材12、多重成形体2の柱体8の外周面が同形を成し、面一に繋がる外観に構成されている。
このような多重成形体付き化粧料容器100を用い、使用者により、本体筒3と、多重成形体2又は筒状カバー部材12(後部筒4の鍔部4aでも可)とが一方向である繰り出し方向に相対回転(回転操作)されると、本体筒3と同期回転可能な棒状化粧料支持体5の雄螺子5bと、後部筒4と同期回転可能な雌螺子部材6の螺合突起6b,6bによる螺合作用が働き、棒状化粧料支持体5が前進し、棒状化粧料Mは本体筒3の開口3bから出現し塗布に供することができる。塗布が終了し、使用者により、上記部品が一方向の反対方向である繰り戻し方向に相対回転(回転操作)されると、棒状化粧料支持体5が後退し、棒状化粧料Mが本体筒3の開口3bから没入する。
このようにして使用されるアイキャッチ効果を有する多重成形体付き化粧料容器100にあっては、特に図3及び図4を参照にすれば、透明樹脂材料から成る筒状装着部11は、黒色の筒状カバー部材12に内挿されるため、筒状装着部11の外周面に設けられ回り止めを構成する突起13は、黒色の筒状カバー部材12の側方から見えなくなる。また、黒色の筒状カバー部材12の側方からの光は当該筒状カバー部材12により遮断される。また、透明樹脂材料から成る筒状装着部11に内挿された黒色の軸部4fにより、透明樹脂材料から成る柱体8を通して入射する光は吸収され、光量が大幅に低減されると共に、柱体8から入射し、黒色の筒状カバー部材12と軸部4fとの間において透明樹脂材料から成る筒状装着部11及び軸線方向に延びるスライド溝(空間)14で乱反射し、筒状装着部11の柱体8とは反対側の端部側に位置する突起13に達しようとする光は、外側の黒色の筒状カバー部材12、内側の黒色の軸部4f、及び、突起13の後ろに位置する鍔部4aの軸部側の黒色の面4gにより閉じ込められて吸収され、突起13は柱体8の天面9側から見え難くなる(殆ど見えなくなる)。このように、化粧料容器1と多重成形体2との連結部を構成する突起13は見え難くなり、見映えの良い多重成形体付き化粧料容器100となる。なお、ここでは、鍔部4aを含む後部筒4の外面を全て黒色にしているが、軸部4fの外面及び鍔部4aの軸部側の面4gが黒色であれば、同様な作用・効果を奏する。
因みに、光の吸収率が高く突起13を格別に見え難くする効果があるとして、筒状カバー部材12、及び、後部筒4(軸部4fの外面及び鍔部4aの軸部側の面4g)を黒色としているが、例えば、紺色や灰色等、白色以外の有色であれば採用できる。これは、筒状カバー部材12、又は、後部筒4の軸部4f、又は、鍔部4aの軸部側の面4gの何れかを白色にすると、光の殆ど(可視光線の99%程度)を反射して吸収せず、突起13が、柱体8の天面9側から見えやすくなってしまうからである。従って、白色以外の有色であれば、白色よりも光を吸収し突起13を見え難くすることができる。
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、棒状化粧料Mを、断面円形としているが、例えば楕円芯でも良く、扁平芯でも良い。この場合は、棒状化粧料の形状に合わせて進退孔3e等を変更する必要がある。
また、上記実施形態においては、柱体8を円柱としているが、柱状の例えば多角柱等とすることもできる。また、筒状カバー部材12は、回り止めを有する内周面が円形であれば、外周面は円形に限定されず、多角形や非円形等とすることもでき、要は、柱体8、筒状カバー部材12、鍔部4aの外周面は、化粧料容器1の外周面の形状に合わせるのが好ましい。また、筒状装着部11は、柱体8の底面10で当該柱体8の側面より内側の位置から軸線方向に沿って延出した筒状体であれば良く、回り止めを有する外周面が円形であれば良い。
また、軸部4fの外周面と筒状装着部11の内周面の形状も限定されるものではなく、嵌合固定、接着固定等、連結できる形状であればその形状は限定されない。また、軸部4fの外周面にローレットを設けると共に、筒状装着部11の内周面に複数のリブを設け、ローレットとリブを回転方向に係合させ回り止めした状態で、軸部4fと筒状装着部11とを接着固定しても良い。
また、上記実施形態においては、筒状カバー部材12を、柱体8の底面10の外周側と後部筒4の鍔部4aとの間に挟み込み軸線方向に移動不能とすると共に、突起13とスライド溝14との回り止めにより回転不能としているが、筒状カバー部材12を筒状装着部11に接着固定しても良い。この場合も、接着前の組立時において、突起13とスライド溝14との回り止めにより、筒状装着部11に対する筒状カバー部材12の組立性を向上できる。
また、上記実施形態においては、多重成形体2を化粧料容器1の後端部に連結しているが、例えば、化粧料容器のキャップの先端側に対して連結しても良い。
また、上記実施形態では、筒状装着部11の外周面に突起13を設けると共に、筒状カバー部材12の内周面にスライド溝14を設けているが、筒状装着部11の外周面にスライド溝14を設けると共に、筒状カバー部材12の内周面に突起13を設ける構成であっても良い。
さらにまた、本発明は、棒状化粧料Mを繰り出して使用する化粧料容器1以外にも適用可能であり、液状化粧料を収容し塗布に供する液状化粧料容器や、粉体化粧料を収容し塗布に供する粉体化粧料容器等に対しても適用可能であり、要は、化粧料を収容する化粧料容器全てに対して適用可能であり、さらには、顧客が店頭で手軽に試供可能なテスターとしても採用できる。