以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
図1は、本実施形態の画像形成装置100の概略構成図であり、画像形成装置の断面を示した。画像形成装置100は、Legalサイズ紙対応の電子写真プロセス方式のレーザービームプリンタを用いた。画像形成装置100は、記録材Sの種類によってプロセスピードを2段階に切り替えることができ、記録材Sの坪量が105g/m2以下の場合には210mm/s、それ以上の坪量の厚紙やコート紙等の場合には70mm/sのプロセススピードで画像形成を行う。
図1に示す画像形成装置100は、着脱自在なプロセスカートリッジP(PY、PM、PC、PK)を備えている。これら4個のプロセスカートリッジPY、PM、PC、PKは、同一構造である。異なる点は、プロセスカートリッジが収容しているトナーの色、すなわち、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナーによる画像を形成することである。プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKは、それぞれトナー容器23Y、23M、23C、23Kを有している。
図1に示すプロセスカートリッジPY、PM、PC、PKは、さらにそれぞれ、像担持体である感光ドラム1Y、1M、1C、1Kを有している。加えてプロセスカートリッジPY、PM、PC、PKは、それぞれ帯電ローラ2Y、2M、2C、2Kと、現像ローラ3Y、3M、3C、3Kと、ドラムクリーニングブレード4Y、4M、4C、4Kと、廃トナー容器24Y、24M、24C、24Kを有している。
プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKの下方にはレーザユニット7Y、7M、7C、7Kが配置され、画像信号に基づく露光を感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対して行う。感光ドラム1Y、1M、1C、1Kは、帯電ローラ2Y、2M、2C、2Kに所定の負極性の電圧を印加することで、所定の負極性の電位に帯電された後、レーザユニット7Y、7M、7C、7Kによってそれぞれ静電潜像が形成される。
この静電潜像は現像ローラ3Y、3M、3C、3Kに所定の負極性の電圧を印加することで反転現像されて感光ドラム1Y、1M、1C、1K上に、それぞれY、M、C、Kのトナー像が形成される。尚、本実施形態で使用するトナーは、負極性に帯電されている。
中間転写ベルトユニットは、中間転写ベルト8、駆動ローラ9、張架ローラとしてのテンションローラ10、対向ローラ28から構成されている。また、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対向して、中間転写ベルト8の内側に1次転写手段としての1次転写ローラ6Y、6M、6C、6Kが配設されており、不図示の電圧印加手段により転写電圧を印加する構成となっている。
トナー像が形成された感光ドラム1Y、1M、1C、1Kは矢印方向に回転し、中間転写ベルト8が不図示の中間転写ベルト駆動手段によって矢印Z方向に回転する。そして、1次転写ローラ6Y、6M、6C、6Kに正極性の電圧を印加することにより、中間転写ベルト8上に1次転写される。すなわち、感光ドラム1Y上のトナー像から順次、中間転写ベルト8上に1次転写され、4色のトナー像が重なった状態となる。なお、光学センサである色ずれ検知センサ27により、中間転写ベルト8上に形成されたキャリブレーション用のトナーパターンを検知可能とされている。これにより色ずれ検知センサ27で4色のトナー像が重なり、カラーのトナー像が形成されるようにされている。この色ずれ検知センサ27は、駆動ローラ9の近傍に設置される。
そして、図1において、2次転写ローラ11と対向ローラ28で形成される2次転写ニップ部(記録材に画像を形成する画像形成部として、以下転写ニップ部N1と記す)に記録材が搬送され、記録材にトナー像が2次転写される。この転写ニップ部N1は、記録材搬送方向の上流側に位置する上流側搬送部として構成可能である一方、後述する定着ニップ部N2は、記録材搬送方向の下流側に位置する下流側搬送部として構成可能である。
また、本実施形態では、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対して、1次転写ローラ6Y、6M、6C、6Kが中間転写ベルト8を介して離接可能な構成となっている。これにより、中間転写ベルト8が感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに当接した状態から離間した状態へ変更可能な構成としている。
給搬送装置12は、記録材Sを収納する給紙カセット13内から記録材Sを給紙する外径16mmの給紙ローラ14と、給紙された記録材Sを搬送する外径16mmの一対の搬送ローラ15(第1の対の搬送ローラ15で第1の搬送ニップ部を形成)とを有している。そして、給搬送装置12から搬送された記録材Sは、外径16mmの一対のレジストローラ16(第2の搬送ニップ部を形成)によって転写ニップ部N1に搬送される。ここで、一対の搬送ローラ15から一対のレジストローラ(第2の対の搬送ローラ)16までの搬送距離は60mm、一対のレジストローラ16から転写ニップ部N1への搬送距離は100mmになるように搬送路を設計した。
中間転写ベルト8から記録材Sへトナー像を転写するために、2次転写ローラ11には正極性の電圧を印加する。これにより、搬送されている記録材Sに、中間転写ベルト8上のトナー像を2次転写することができる。本構成においては2次転写ローラ11には駆動源を設けておらず、トナー像が転写された記録材Sは、一対のレジストローラ16の搬送力および、中間転写ベルト8の回転に従動することによって搬送される。
これにより、トナー像が転写された記録材Sは、記録材Sの先端の搬送位置をガイドする搬送ガイドとしての2次転写後搬送ガイド29及び定着入口ガイド30に沿わせて、記録材の下流側搬送部材としての定着装置(定着部)17まで搬送される。定着装置17では、定着ニップ部N2を形成する一対の定着部材が設けられ、本実施形態ではその一方に加圧ローラが用いられ、この加圧ローラは定着モータと連結される。ここで、転写ニップ部N1から定着ニップ部N2への搬送距離は50mmになるように搬送路を設計した。
定着装置17は、外径18mmの定着フィルム18と、外径22mmの加圧ローラ19からなる定着ニップ部N2を備えている。定着装置17では、加圧ローラ19はギアを介して不図示の定着モータMから駆動力が伝達されるように配置されている。
記録材S上の未定着トナー像は、定着ニップ部N2で加熱、加圧されて記録材S表面にトナー像が定着され、定着された記録材Sは一対の排紙ローラ20によって排出される。
トナー像が記録材Sに転写された後、感光ドラム1Y、1M、1C、1K表面に残った1次転写残トナーは、それぞれドラムクリーニングブレード4Y、4M、4C、4Kによって除去され、廃トナー容器24Y、24M、24C、24Kに回収される。
また、2次転写残トナーは、中間転写ベルト8が矢印Z方向に回転した後、清掃部材としてのクリーニングブレード21によって掻き取られ、廃トナー回収容器22へと回収される。
また画像形成装置100は、画像形成装置100の制御を行うための電気回路が搭載された制御基板25を備え、制御基板25にはCPU(中央演算装置)等の制御部26が搭載されている。制御部26は、記録材Sの搬送に関る中間転写ベルト8、給搬送装置12、一対のレジストローラ16、定着装置17の駆動源(不図示)や、プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKの駆動源(不図示)等の制御、画像形成に関する制御を司る。更には、制御部26は、故障検知に関する制御など、画像形成装置の動作を一括して制御している。
(ループ量制御)
ここで、本願明細書におけるループ量とは、記録材Sの撓み量を指す。記録材Sは、記録材Sの先端が転写ニップ部N1を通過後、記録材Sの後端が転写ニップ部N1を通過完了する前に、定着ニップ部N2へ記録材Sの先端が進入する。このようにして、転写ニップ部N1から定着ニップ部N2間においては、未定着トナー像が載った記録材Sを搬送するため、記録材Sの搬送速度の変化によって生じる記録材S上の未定着トナー像の乱れることがある。
そこで転写ニップ部N1と定着ニップ部N2の間の記録材搬送路において、記録材Sを撓ませ、所定のループ量を持たせる。これにより、転写ニップ部N1と定着ニップ部N2の間に位置する記録材Sの長さを転写ニップ部N1と定着ニップ部N2の最短距離に比べ、長くする。この結果、記録材Sが一定量のループ量を有する状態となるようにし、定着ニップN2等から記録材Sを介して伝わる衝撃を緩和できるようにし、転写ニップ部N1で記録材Sにトナー像が転写される際に生じる画像不良の発生を抑制できるようにしている。
そして、転写ニップ部N1と定着ニップ部N2の間の記録材搬送路における記録材Sのループ量が一定値へ近づくようにループ量の検知結果を基に記録材Sの搬送速度を制御するループ量制御を行うことで記録材Sを安定的に搬送可能としている。
(ループ量検知)
図1、図2に示すように転写ニップ部N1と定着ニップ部N2の間の記録材搬送路における記録材Sのループ量は、ループ量検知器31により検知される。本実施形態では、ループ量検知器31は、転写ニップ部N1の上端と定着ニップ部N2の下端を結んだ最短経路(直線経路A)に対し、この直線経路Aと直交する方向における記録材Sが通過する位置との距離(ループ量)を検知する。
本実施形態では、直線経路Aにおいて定着ニップ部N2の位置から記録材搬送方向へ13mm上流側の位置で、直線経路Aと直交する方向に5mm離れた位置(ループ量5mm)となる点を記録材Sが通過する状態を設計値とした構成を例にとり、説明を行う。図2(C)はループ量が設計値(5mm)の場合、図2(A)はループ量が設計値よりも大きい場合、図2(B)はループ量が設計値よりも小さい場合を示している。
ループ量 検知器31は、図2(C)に 示すように、記録材Sに当接可能なフラグ311と、光センサ314、揺動軸312、揺動バネ313 、電装基板315を備える。フラグ311は、揺動軸312を軸として揺動可能に入口ガイド30に保持されている。またフラグ311は、揺動バネ313で記録材Sの搬送路側へ向かって付勢され、入口ガイド30の記録材Sをガイドする入口ガイド搬送面30aに対して、フラグ先端部311aが突出するようにされる一方、不図示の回転止めで回動可能な角度が規制されている。
このようにして、揺動バネ313で記録材搬送部側へ突出させられたフラグ先端部311aが直線経路A上、または直線経路Aを多少超えた位置で回転止めさせられるようにした。なお本実施形態では、フラグ311は、摺動性の高いPET(ポリエチレンテレフタレート)を用い、揺動軸312からフラグ先端部311aの末端までの距離は18mmになるようにした。また、発光素子から照射された光を遮断する遮光面311bは、揺動軸312から18mmの長さを有するようにした。
電装基板315は、不図示のビスにより入口ガイド30(図1、図2(A))に固定され、光センサ314が半田付けで実装されている。光センサ314は、透過光量を検知する、いわゆる透過型のフォトインタラプタを用いている。図2(D)は、図2(A)の上方側から見た光路に沿った光センサ214の概略構成図である。図2(D)に示すように、発光素子314c(赤外線発光ダイオード)と、受光素子314b(フォトトランジスタ)と、スリット314aと受光素子314bの間で受光素子314bの近くに設けられたスリット314aを備えている 。
フラグ311は、記録材Sと接触するフラグ先端部311aと、光(赤外光)を遮断する遮光面311bと、を備え、揺動軸312で揺動可能とされている(図2(A)(B)(C))。ループ量検知器31では、フラグ311が揺動バネ313で付勢され、発光素子から照射された光を遮断しない初期位置での姿勢、もしくは光センサ314のスリット314aに進入し、発光素子から照射された光が遮断される姿勢、いずれであるかを検知する。
より詳細には、フラグ311が記録材Sと接触しない状態にあっては、フラグ311は揺動バネ313で図示しない位置決め部に付勢され、初期位置に位置させられている。このとき、フラグ311は、スリット314aに進入することなく、発光素子から照射された光が遮光面311bで遮断されることなく、受光素子で検知可能状態(オン状態)となっている。
一方、記録材Sのループ量が大きくなることにより、フラグ先端部311aが記録材Sと接触して押され、フラグ311が記録材Sで揺動軸312を中心として回動させられる。そして、記録材Sのループ量が一定以上の大きさとなり、フラグ311が所定角度回転させられることにより、フラグ311がスリット314aに進入し、発光素子から照射された光が遮光面311bで遮断される状態(オフ状態)となったことを検知する。
このように、光センサ314(受光素子)の出力電圧の差を検出することで、記録材Sでフラグ311が所定角度回転以上、回転させられているか否かを通して、間接的にループ量が一定以上の大きさとなっているか否かを検知する。
本実施形態では、図2(C)に示したように、ループ量が5mmのとき、フラグ311が、記録材Sで揺動軸312を中心に回転させられ、遮光面311bがスリット314a、受光素子314b(光センサ314)と重なるように配置した。即ち、本実施形態のループ量検知器31は、記録材のループ量が設計値のループ量である5mmを閾値として、大小を検知可能な構成とした。
つまり、図2(A)に示すように、記録材Sのループ量が5mmよりも大きい場合、フラグ先端部311aは入口ガイド30側に押し込まれ、遮光面311bは発光素子314cの光を遮ることがないため、オン状態であることを検知するようにした。また、図2(B)に示すように、記録材Sのループ量が5mmよりも小さい場合は、遮光面311bは発光素子314aの光を遮り、オフ状態であることを検知するようにした。
(定着モータを用いたループ量制御)
ループ量検知器31が検知したループ量の設計値に対する大小情報は、画像形成装置100に設けられた制御部26に入力される。制御部26は、ループ量の設計値に対する大小情報に応じて、駆動源(定着モータM)の単位時間当たりの回転数を制御し、定着装置17における加圧ローラ19の周速を加減速させ、ループ量を大小させるフィードバック制御(ループ量制御)を行う。
つまり、加圧ローラ19がループ量検知器31の検知結果がオフ状態のとき、周速V(L)で回転し、ループ量検知器31の検知結果がオン状態とき、周速V(H)で回転するように、定着モータMは、2段階の回転数で駆動可能とされている。
一方で転写ニップ部N1においては、ループ量検知器31の検知結果がオフ状態、オン状態であるかによって変化しない、画像形成装置のプロセススピードに対応する回転速度V(N)(基準搬送速度)で記録材Sが搬送するように構成されている。
具体的には制御部26は、周速V(L)が定着フィルム18、加圧ローラ19の外径公差、熱膨張、耐久による摩耗などを公差しても、転写ニップ部N1における周速V(N)よりも必ず遅くなる設定とし、式(1)の関係になるように制御する 。
V(L)=V(N)×0.97 ・・・式(1)
また制御部26は、周速V(H)が定着フィルム18、加圧ローラ19の外径公差、熱膨張、耐久による摩耗などを公差しても、転写ニップ部N1における周速V(N)よりも必ず速くなる設定とし、式(2)の関係になるように制御する。
V(H)=V(N)×1.03 ・・・式(2)
すなわち、式(1)の関係にすることで、記録材Sのループ量が5mmより小さいと検知した場合は、定着ニップ部N2では転写ニップ部N1より遅い速度で記録材Sを搬送し、ループ量が大きくなるように制御する。また、式(2)の関係にすることで、記録材Sのループ量が5mmより大きいと検知した場合は、定着ニップ部N2では転写ニップ部N1より速い速度で記録材Sを搬送し、ループ量が小さくなるように制御する。
ループ量制御が実行されている間は、設計値に対するループ量の大小を高速で検知し、定着モータ速度を高速で加減速することで、ループ量が設定値である5mmに近づくように制御する構成とした。なお、本実施形態においては、制御部26には20MHzのシステムクロック周波数を有するCPUを用い、フラグ311の暴れやモータ速度の追従性を考慮して、10ms毎にループ量検知器31の検知結果に基づく加減速制御を行う構成とした。
上述したようなループ量制御を実施することで、加圧ローラ19の熱膨張や、外径寸法の製造バラつきが生じた場合でも、転写ニップ部N1から定着ニップ部N2間のループ形状を設計値に近づけるように制御することが可能である。
(記録材先端が転写ニップ部を経て定着ニップ部に達するまでの光センサ出力)
図3を用いて、記録材Sの先端が転写ニップ部N1を通過し、定着ニップ部N2へ至り、進入するまでフラグ31の姿勢と光センサ314の出力の関係について、時系列に沿って説明する。図3(A)は、記録材Sの先端が転写ニップ部N1を通過後、フラグ31よりも搬送方向上流側に位置しているときの状態を示す。図3(B)は、記録材Sの先端が入口ガイド搬送面30aに沿ってガイドされながら移動した後、フラグ311に接触したときの状態を示す。
図3(C)は、記録材Sの先端が入口ガイド搬送面30aに沿ってガイドされながらフラグ311を回動させつつ移動した後、フラグ311のフラグ先端部311aが入口ガイド搬送面30aから突出しない状態とされたときの様子を示す。図3(D)は、記録材Sの先端が定着ニップ部N2へ至り、進入した後、記録材Sのループ量が所定値(設計値)となったときの状態を示す。すなわち、図3(D)は遮光面311bが発光素子314a、すなわち受光素子(光センサ314)の位置に重なる状態を示す。図4は、図3(A)から(D)の状態へ遷移するまでの間の光センサ314の出力を示す。
転写ニップ部N1を通過した記録材Sの先端は、2次転写後に搬送ガイド29及び定着入口ガイド30に沿って、画像形成動作におけるプロセススピードで定着ニップ部N2に向けて搬送される。図3(A)の状態においては、記録材Sの先端は定着入口ガイド30の入口ガイド搬送面30aに沿って搬送されており、図4の期間(A)で示すように、光センサ314は遮光状態(オフ状態)を示す。
記録材Sが搬送されると、記録材Sの先端がフラグ311に接触し、フラグ311が回動させられ、フラグ先端部311aは記録材Sの先端によって図3(C)のように入口ガイド搬送面30aが突出しない位置まで押し込まれる。この記録材Sによってフラグ先端部311aが入口ガイド搬送面30aから突出しない位置まで押し込まれる過程において、光センサ314の検知結果は、オフ状態からオン状態に遷移する(図3(B))。
その後、さらに記録材Sの搬送が進み、記録材Sの先端が定着ニップ部N2に到達し、進入するとき(図3(D))には、揺動バネ313の付勢力により、フラグ先端部311aは入口ガイド搬送面30aから突出した状態に戻る。この記録材Sの先端が定着ニップ部N2に到達し、進入するまでの揺動バネ313によりフラグ先端部311aが入口ガイド搬送面30aから突出する過程において、光センサ314の検知結果は、図4においてポイントDで示すように、オン状態からオフ状態に遷移する。
このように、記録材Sの搬送開始から図4のポイントDに至るまでの期間は、ループが形成されていない状態であるため、加圧ローラ19の周速はV(L)と一定とされている(V(L)区間)。一方、図4のポイントD以降においては、記録材Sは記録材搬送経路内においてループを形成するため、光センサ314の検知結果に基づき加圧ローラ19の周速が加減速を行い、ループ量制御を行う(図4に示すループ制御区間)。
(ループ量検知器31の検知ずれに関する判別)
以下、本実施形態の特徴である、ループ量検知器31の検知ずれに関する判別について説明する。
上述した通り、画像形成装置100は、ループ量検知器31のループ量検知結果に基づいて定着モータMの単位時間当たりの回転数を増減し、加圧ローラ19の周速(回転速度)を加減速制御し、定着ニップ部N2における記録材Sの搬送速度を変動させる。このように転写ニップ部N1においては記録材Sの搬送速度を一定(基準搬送速度)とした状態で、定着ニップ部N2における記録材Sの搬送速度を変動させ、設計値のループ量に制御する構成としている。
つまりこのループ量制御により、フラグ311が発光素子の光を検知可能な位置と、遮断される位置と、の狭間の姿勢(位置)となるように収束させることで、ひいてはフラグ先端部311aに接触する記録材Sのループ量が設計値の5mmとなるようにしている。このようにしてループ量を設計値に近づけることにより、転写ニップ部N1から定着ニップ部N2間のループ形状を所定の形状とし、記録材Sが安定的に搬送されるようにし、画像不良の発生を抑制している。
しかし、ループ量検知器31の検知位置は、光センサ314の組み付け位置公差や、フラグ311の部品公差や、定着ニップ部N2と転写ニップ部N1の組み付け位置公差などの影響を受ける。特に電装基板315に対して光センサ314が半田付けで実装される場合にあっては、取り付け位置のバラつきが大きくなる傾向があり、ループ量検知器31の検知位置のバラつくことがあった。このように、ループ量検知器31の検知位置がずれた場合、ループ量制御中のループ量が設計値である5mmから大きいまたは小さい値に収束するように制御されてしまい、前述したように、画像不良が生じる恐れがあった。
これに関し本発明者は、記録材先端が転写ニップ部N1から定着ニップ部N2へ搬送される過程のフラグ311と光センサ314の位置関係と、光センサ314の出力波形を基に、ループ量検知器31の検知位置の設計値に対するずれ量を判別できることを見出した。さらに、判別した検知位置のずれ量に応じて、加圧ローラ19の周速の制御を変更することで、ループ量制御により収束させられる記録材Sのループ量をより設計値に近づけ、画像不良の発生を抑制可能とすることができることを見出した。具体的な実施構成について、以下に述べる。
本実施形態では、所定搬送速度で記録材Sを搬送し、図4のオフ状態からオン状態に遷移するポイント(ポイント(B))からオン状態からオフ状態に遷移するポイント(ポイント(D))までの時間(戻り時間)を利用し、ループ量検知器31の検知位置の設計値に対するずれ量を判別する構成とした。図3(C)に示したオン状態における、遮光面311bと発光素子314a(すなわち受光素子)との最大距離Dは、設計値では1.5mmになるように設計しているものの、前述した光センサ314の実装ばらつきなどで、0.9~2.1mm程度バラつく恐れがあった。
例えば距離Dが長くなる場合、フラグ311の遮光面311bに対し、光センサ314が搬送路側にずれている状態である。この状態においては、フラグ先端部311aが搬送面30aから突出しない位置まで押し込まれてから、遮光面311bと発光素子314aが重なる位置まで戻る際の戻り時間は長くなる。また、光センサ314の遮光面311bと発光素子314aが重なる位置(検知位置)は設計値よりも搬送路面側にずれるため、ループ量制御時のループ量は、設計上のループ量に対し小さくなる。
逆に、距離Dが短くなる場合、発光素子314aの位置が搬送路から遠ざかるようにずれている状態である。この状態においては、フラグ先端部311aが搬送面30aから突出しない位置まで押し込まれてから、遮光面311bと発光素子314aが重なる位置まで戻る際の戻り時間が短くなる。また、光センサ314の遮光面311bと発光素子314aが重なる位置(検知位置)は設計値よりも搬送路面から遠ざかるようにずれるため、ループ量制御時のループ量は、設計上のループ量に対し大きくなる。
このように、フラグ311の戻り時間を測定する。すなわち、所定搬送速度で記録材Sを搬送し、正規の検知位置に位置する場合のフラグ311の戻り時間に比べ、実際に画像形成装置100に組み付けられたループ量検知器31のフラグ311の戻り時間の差を測定する。これにより、ループ量検知器31の検知位置の設計値に対するずれ量を判別することができる。
そこで、時間の測定にあたり、フラグ先端部311aが入口ガイド搬送面30aから突出しない位置まで押し込まれた状態とされた時の遮光面311bから発光素子314aまでの距離Dが異なるサンプル(0.9mm、1.5mm、2.1mm)を用意した。そして、サンプル毎にメモリハイコーダ8860(日置電機株式会社製)を用いて光センサ314からの出力を測定し、時間を計測した。図5に計測よって得られた遮光面311bから発光素子314aまでの距離Dと戻り時間の関係を測定した結果を示す。
なお、本検証では、Letterサイズで坪量200g/m3の光沢紙であるLaser Glossy Brochure Paper 200(hp社製)を70mm/sのプロセススピードで、ブラックのハーフトーン(50%)画像を10枚、印刷して測定し、戻り時間の測定を行った。記録材Sの搬送制御は、図4に示すように、記録材Sの搬送位置によって切り替える制御とした。
この結果、図5に示すように、距離Dと戻り時間には直線的な相関(比例関係)が見られ、上下限で100ms程度の時間差があることが確認できた。ループ量制御の制御周期である10msに比べて十分な時間差があり、戻り時間からループ量検知器31の検知位置の設計値に対するずれ量を判別できることを確認できた。より具体的には、戻り時間は、図5で示したように、距離Dが1.5mmの場合にあっては170ms程度となった。距離Dが1.5mmより大きい2.1mmの場合には220ms程度、距離Dが1.5mmより小さい0.9mmの場合には110ms程度となった。
つまり、戻り時間と距離Dは、正の相関があり、最大距離Dの設計値1.5mm程度のときには、160ms~180msとなることが分かった。したがって、戻り時間が160ms~180msの範囲のときには、最大距離Dは設計値1.5mm程度であることが特定できる。さらに戻り時間が160ms~180msの範囲より大きいときには、最大距離Dは設計値1.5mmより大きく、戻り時間が160ms~180msの範囲より小さいときには、最大距離Dは設計値1.5mmより小さい、とういことが特定することができる。
なお、この時間測定において、距離Dが設計値の1.5mmのときには画像不良は発生しなかった。しかし、距離Dが0.9mm、2.1mmのときは、記録材後端から100mmの位置、即ち一対のレジストローラ16を記録材後端が抜けたタイミングでバンド状の画像不良がそれぞれ10枚中6枚、10枚中1枚発生していた。
距離D=0.9mmのとき、即ちループ量が設計値よりも大きいときは、一対のレジストローラ16を記録材後端が抜けて、記録材後端側の搬送力が無くなる。その結果、過度なループによる記録材Sの撓みを解消する、搬送方向上流に向かった力が、転写ニップ部N1で発生する。このため、転写ニップ部N1で記録材が滑り、バンド状の画像不良につながったと考えられる。
また、距離D=2.1mmのとき、即ちループ量が設計値よりも小さいときは、記録材Sと中間転写ベルト8の距離が近すぎる。このため、一対のレジストローラ16を記録材後端が抜けたときのショックによって、記録材が振動した結果、転写ニップ部N1付近で2次転写前後のトナー像を乱してしまい、画像不良につながったと考えられる。
これらの結果を基に本実施形態では、測定した戻り時間に応じて、加圧ローラ19の周速制御を変更し、一対のレジストローラ16を記録材後端が抜ける前のループ量を補正する制御を行うこととした。本実施形態における制御の詳細について、単一の記録材Sの搬送位置を時系列に応じて示した画像形成装置の部分断面図(図6)と記録材Sの搬送位置に応じた期間を順次有する定着モータMの速度制御の関係図(図7)を用いて説明する。
なお、加圧ローラ19の周速は、定着モータMと加圧ローラ19間のギア列に変更が加えられることがないため、定着モータMの回転速度・単位時間当たりの回転数に応じて比例し変化するものとされている。つまり、定着モータMの回転速度・単位時間当たりの回転数が増加した場合にあっては、加圧ローラ19の周速は増加し、定着モータMの回転速度・単位時間当たりの回転数が減少した場合にあっては、加圧ローラ19の周速は減少するように構成される。このため、加圧ローラ19の周速を制御する具体的な手段として、定着モータMの速度・単位時間当たりの回転数を制御した構成を例にとり、説明を行う。
図6(A)の状態、即ち記録材先端が給紙ローラ14によって給紙されてから、図6(B)の状態、即ち定着ニップ部N2から下流側に9mm搬送された位置に到達するまでを、図7では、(i)固定速区間と示している。この(i)固定速区間は、搬送タイミングとして初期段階の区間である。この第1の区間(期間)では、記録材Sが一定速度の所定搬送速度で搬送されるように定着モータMの回転数が制御されている。なお、本実施例では加圧ローラ19の周速が一定の速度V(L)で回転するように定着モータMの回転数を制御した。そして、この第1の区間において、上述したような戻り時間の測定を行い、制御部26の記憶部に戻り時間を記憶しておく。
続いて、図6(B)の状態から図6(C)の状態、即ち記録材Sの先端が定着ニップ部N2から下流側に69mm搬送された位置(図6(C)で図示しない記録材後端が一対の搬送ローラ15の位置)に到達するまでを、図7では第2の区間(期間)として(ii)ループ量制御区間と示している。
この第2の区間では、ループ量制御を実施し、加圧ローラ19の周速を加減速すべく、定着モータMはループ量検知器31の検知結果に基づいて単位時間当たりの回転数(速度)を増減させる。この第2の区間では、第1の区間における周速V(L)と、基準搬送速度V(N)より速い周速V(H)に適宜、切り替え、速度制御される。図7では、基準搬送速度を中心としたループ量制御が行われる(基準搬送速度を維持するようにしたループ量制御)。
続いて、図6(C)の状態から図6(D)の状態、即ち記録材Sの後端が図示しない一対のレジストローラ16の上流側へ5mm搬送された位置に到達するまでを、図7では第3の区間(期間)として(iii)補正制御区間と示している。この第3の区間での制御が本実施形態の特徴的な構成となっており、第1の区間で読み取った戻り時間に応じて、加圧ローラ19の周速を制御すべく、定着モータMの単位時間当たりの回転数を切り替える(複数の搬送速度から選択する)。これにより、記録材Sが一対のレジストローラ16を抜ける前にループ量を補正するような構成としている。
すなわち、戻り時間が基準範囲である160~180msであった場合は、図5で示したように、距離Dが約1.5mmであり、設計値通りの検知位置であると判断する。そして、図7の定着モータ速度の(C)補正制御区間に長い破線で示すように、定着モータMを変え、加圧ローラ19の周速がV(N)となるように駆動する。
また、戻り時間が180msより長い場合は、距離Dが約1.5mmより長く、設計値よりもループ量が小さくなるような検知位置であると判断する。そして、図7の定着モータの単位時間当たりの回転数を(C)補正制御区間に実線で示すように、加圧ローラ19の周速がV(L)となるように駆動し、ループ量を検知位置よりも増やして、設計値に近づけるようにする。
そして、戻り時間が160msより短い場合は、距離Dが約1.5mmより短く、設計値よりもループ量が大きくなるような検知位置であると判断する。そして、図7の定着モータ速度の(C)補正制御区間に短い破線で示すように、加圧ローラ19の周速がV(H)となるように駆動し、ループ量を検知位置よりも減らして、設計値に近づけるようにする。
このように、一対のレジストローラ16を抜ける状態(図6(D))に至る前のループ量を補正することで、一対のレジストローラ16を記録材後端が抜けたタイミングでのループ量を設計値に近づけ、ショックによる画像不良を抑制するようにした。なお、この区間の光センサ314の出力の透過、遮光状態は、定着装置17の温度や加圧ローラ19の外径などの影響を受けて、一定の傾向を示さないため、図示していない。
続いて、図6(D)の状態から図6(E)の状態、即ち記録材後端が転写ニップ部N1から下流側に5mm搬送された位置に到達するまでを、図7では第4の区間(期間)として(D)ループ量制御区間と示している。この第4の区間では、ループ量制御を実施し、定着モータMはループ量検知器31の検知結果に基づいてモータ速度を増減速する。
続いて、図6(E)の状態、即ち記録材後端が転写ニップ部N1から5mm下流側に搬送された位置に到達した後を、図7では第5の区間(期間)として(E)固定速区間と示している。この第5の区間では、加圧ローラ19は周速V(L)で回転するように定着モータMの単位時間当たりの回転数は一定とされている。
(本実施形態の効果)
本実施形態の定量的な効果を、以下に説明する。比較例として、図7の(C)補正制御区間を備えない図4で示したループ量制御を実施した場合と、本実施形態(実施例1)に係る図7の(C)補正制御区間を実施した場合の画像不良の枚数を確認した結果を表1に示す。
表1に示すように、本実施形態(実施例1)では図7の(C)補正制御区間を適用することで、比較例に比べて、画像不良の発生枚数を低減することができた。また、D=0.9mmで発生した画像不良も視認が困難なレベルであり、実用上問題ないレベルであった。なお、上記の確認時における図7の(B)ループ量制御区間の加圧ローラ19の周速に応じた定着モータMの平均回転数は、608rpmであった。
D=0.9mmのときは、図7の(C)補正制御区間においては、加圧ローラ19の周速V(H)に応じた定着モータMの単位時間当たりの回転数は600×1.03=618rpmである。そこで、図7の(B)ループ量制御区間よりも速い速度で記録材Sを搬送する。このため、一対のレジストローラ16を記録材後端が抜けるタイミングでは、狙い通り、検知位置よりも小さいループ量にすることができたと考えられる。
また、D=2.1mmのときは、図7の(C)補正制御区間においては、加圧ローラ19の周速V(L)に応じた定着モータMの単位時間当たりの回転数は600×0.97=582rpmである。そこで、図7の(B)ループ量制御区間よりも遅い速度で記録材Sを搬送する。このため、一対のレジストローラ16を記録材後端が抜けるタイミングでは、狙い通り、検知位置よりも大きいループ量にすることができたと考えられる。その結果、一対のレジストローラを抜ける前の転写定着間のループ量を補正することができ、抜けショックによる画像不良の発生を低減することができたと考えられる。
なお、本実施形態においては、一対のレジストローラを記録材後端が抜けるタイミングの画像不良に対して、一対のレジストローラを抜ける前のループ量を補正する構成を用いたが、他の搬送部材においても、本実施形態の構成を適応することができる。具体的には、給紙ローラ14、一対の搬送ローラ15を記録材後端が抜けるショックによる画像不良が発生する場合には、給紙ローラ14、一対の搬送ローラ15を記録材後端が抜ける前にループ量を補正するような構成としても良い。
また、記録材先端が一対の排紙ローラ20に突入(進入)するショックによる画像不良が発生する場合も同様に、記録材先端が一対の排紙ローラ20に突入する前にループ量を補正するような構成とすれば良い。即ち、本構成の効果は、搬送部材の種類や場所によって限定されるものでは無い。
また、本実施形態においては、200g/m3の坪量のグロス紙に対して画像形成、搬送する構成を用いて効果を説明したが、本構成の効果は紙種によって限定されるものではない。一方、坪量の小さい紙等の両面に画像形成可能な場合は、記録材のカールの影響により、戻り時間の測定に誤差を与えることがあるため、二面目を通紙するときには、一面目で測定した戻り時間の結果を適用する構成とした方が、より望ましい。
また、本実施形態においては、グロス紙を70mm/sのプロセススピードで画像形成、搬送する構成を用いて効果を説明したが、本構成の効果はプロセススピードによって限定されるものではない。一方、プロセススピードが速いと、戻り時間の絶対値が小さくなるため、制御周期に対する測定誤差の影響が入り易くなり、検知位置の測定精度が劣化することがある。このような場合には、遅いプロセススピードで測定した戻り時間および検知位置のずれ量を制御基板上に記憶しておき、以降の速いプロセススピードでの画像形成時には記憶した値を用いるような構成としても良い。
また、本実施形態においては、戻り時間を通紙するすべてのページにおいて常に検知する構成としたが、一度検知した戻り時間および検知位置のずれ量を制御基板上に記憶しておき、以降の画像形成時には記憶した値を用いるような構成としても良い。
また、本実施形態においては、戻り時間を、フラグが光センサに対して、透過状態から遮光状態に戻る時間を用いて検知する構成を用いたが、フラグの形状によっては、遮光状態から透過状態になる過程で検知する構成とすることができる。即ち、本構成の効果は、フラグ形状や、検出手段によって限定されるものでは無い。
また、本実施構成では、戻り時間の検知時間に応じ、図7の(C)補正制御区間の加圧ローラ19の速度、つまり定着モータMの単位時間当たりの回転数を3段階とする構成とした。しかしながら、戻り時間に応じて、図7の(B)ループ量制御区間と同じループ量制御を実施するような構成としても良い。具体的には、戻り時間が180msより長い場合には、即ちループ量が小さくなる側では、ループ量が大きい場合よりも画像不良の発生率が低いため、図7の(B)ループ量制御区間を継続するような構成としても良い。
また、本実施形態においては、戻り時間に応じて定着モータMの単位時間当たりの回転数を変え、加圧ローラ19の速度を増減速することで、ループ量を補正する構成を用いたが、本構成に限定されるものではない。すなわち、2次転写ローラが別途駆動源(モータ)を持つような場合でも適用できる。
このような構成で、戻り時間が短い場合には、ループ量が小さくなるように、2次転写ローラの回転速度を遅くするようにモータを制御すればよい。逆に、戻り時間が長い場合には、ループ量が大きくなるように、2次転写ローラの回転速度を速くするようにモータを制御とすればよい。
要は戻り時間に基づいて、記録材の先端より下流側が搬送されるときのループ量を所定ループ量(設計上のループ量)に近づけるように、転写ニップ部と定着ニップ部のいずれか一方における記録材の搬送速度をモータの回転速度で制御するものであれば良い。
《第2の実施形態》
図7の(C)補正制御区間に関し、本実施形態においては、図7の(B)ループ量制御区間中に記録材の平均搬送速度に対応した加圧ローラ19の平均周速、つまり定着モータMの平均回転数を取得する。そして、図7の(C)補正制御区間において、取得された加圧ローラ19の平均周速、つまり定着モータMの平均回転数に応じて、加圧ローラ19の周速、つまり定着モータMの回転数補正をする構成を用いた。
本実施構成では、図7の(B)ループ量制御区間、(C)補正制御区間のみ、第1の実施形態と動作が異なる。本実施形態では、図7の(B)ループ量制御区間で、制御基板25は、加圧ローラ19の平均周速、つまり定着モータMの平均回転数(rpm)を10ms毎に記憶し続ける。そして、図7の(C)補正制御区間に移行する直前のタイミングで、図7の(B)ループ量制御区間の平均周速V(Ave)つまり定着モータMの平均回転数(rpm)を取得(算出)する。
続いて図7の(C)補正制御区間では、図7の(A)固定速区間で読み取った戻り時間と、図7の(B)ループ量制御区間で算出した平均周速(平均回転数)に基づいて、加圧ローラ19の周速(定着モータMの単位時間当たりの回転数)を切り替える。これにより、一対のレジストローラ16を抜ける前にループ量を補正するような構成とした。
すなわち、図7の(A)固定速区間で読み取った戻り時間が、基準範囲である160~180msであった場合は、以下のように制御する。すなわち、上述した距離Dが約1.5mmであり、設計値通りの検知位置であると判断し、加圧ローラ19の周速がV(Ave)となるように定着モータMの単位時間当たりの回転数を制御する。
そして、戻り時間が180msより長い場合は、距離Dが約1.5mmより長く、設計値よりもループ量が小さくなるような検知位置であると判断し、加圧ローラ19の周速がV(Ave)×0.97の速度となるように定着モータMの単位時間当たりの回転数を制御する。これにより、ループ量を検知位置よりも増やして、設計値に近づけるようにする。
また、戻り時間が160msより短い場合は、以下のように制御する。すなわち、距離Dが約1.5mmより短く、設計値よりもループ量が大きくなるような検知位置であると判断し、加圧ローラ19の周速がV(Ave)×1.03の速度となるように定着モータMの単位時間当たりの回転数を制御駆動する。これにより、ループ量を検知位置よりも減らして、設計値に近づけるようにする。
本実施形態では、このように、一対のレジストローラ16を抜ける前のループ量を補正することで、一対のレジストローラ16を記録材後端が抜けたタイミングでのショックによる画像不良を抑制することができる。
本実施形態の定量的な効果を、以下に説明する。比較の為に、比較例として、本実施に形態係る図7の(C)補正制御区間を備えない図4で示したループ量制御を実施した場合と、本実施形態(実施例2)に係る図7の(C)補正制御区間を実施した場合の画像不良の枚数を確認した結果を表2に示す。
表2に示すように、本実施形態の補正制御を適用することで、比較例に比べて、画像不良の発生枚数を低減することができた。また、D=2.1mmでも画像不良は発生しておらず、第1の実施形態の構成よりも画像不良の発生を抑制することができた。なお、上記の確認時における図7の(B)ループ量制御区間の加圧ローラ19の平均周速、つまり定着モータMの平均回転数は、第1の実施形態と同様の608rpmであった。
本実施形態においては、加圧ローラ19の平均速度、つまり定着モータMの平均回転数を算出しているため、定着装置17の温度状態変化などの影響を受けずに、狙い通りのループ量の補正を実施できた。その結果、第1の実施形態よりも画像不良の発生を抑制できたと考えられる。
具体的には、D=0.9mmのときの図7の(C)補正制御区間においては、定着モータMの単位時間当たりの回転数を608×1.03=626rpmとしたため、第1の実施形態の618rpmよりも速い速度で記録材Sを搬送できている。このため、一対のレジストローラ16を記録材後端が抜けるタイミングでは、第1の実施形態よりも、より設計値に近いループ量で搬送することができたと考えられる。
また、D=2.1mmのときは、図7の(C)補正制御区間においては、定着モータMの単位時間当たりの回転数を608×0.97=590rpmとしたため、図7の(B)ループ量制御区間よりも遅い速度で記録材Sを搬送できている。このため、一対のレジストローラ16を記録材後端が抜けるタイミングでは、狙い通り、検知位置よりも大きいループ量にすることができたと考えられる。
以上、本実施形態の構成により、一対のレジストローラを抜ける前の転写定着間のループ量を補正することができ、抜けショックによる画像不良の発生を低減することができた。なお、本実施形態においても、一対のレジストローラを記録材後端が抜けるタイミングの画像不良に対して、一対のレジストローラを抜ける前のループ量を補正する構成を用いたが、他の搬送部材においても、本実施形態の構成を適応することができる。
具体的には、給紙ローラ14、一対の搬送ローラ15を記録材後端が抜けるショックによる画像不良が発生する場合には、給紙ローラ14、一対の搬送ローラ15を記録材後端が抜ける前にループ量を補正するような構成としても良い。
また、記録材先端が一対の排紙ローラ20に突入するショックによる画像不良が発生する場合も同様に、記録材先端が一対の排紙ローラ20に突入する前にループ量を補正するような構成とすれば良い。即ち、本構成の効果は、搬送部材の種類や場所によって限定されるものでは無い。
また、本実施形態においては、第1の実施形態と同様、戻り時間に応じて加圧ローラ19の周速、つまり定着モータMの単位時間当たりの回転数を増減速することで、ループ量を補正する構成を用いた。しかしながら、2次転写ローラが別途駆動源(モータ)を持つような場合でも適用できる。要は戻り時間に基づいて、記録材の先端より下流側が搬送されるときのループ量を所定ループ量(設計上のループ量)に近づけるように、転写ニップ部と定着ニップ部のいずれか一方における記録材の搬送速度をモータの回転速度で制御するものであれば良い。
また、本実施構成においては、戻り時間の検知時間に応じて、図7の(B)ループ量制御区間における加圧ローラ19平均周速V(Ave)、つまり定着モータMの平均回転数(rpm)、に乗じる値を3段階持つ構成にした。しかしながら、戻り時間に応じて線形に変わる値を乗じるような構成としても良い。具体的には、図8に示すように、戻り時間に応じて、乗じる値を線形に変えることで、検知位置のずれに応じた補正が無段階でできるようにでき、より補正効果を高めることができる。
《第3の実施形態》
図7の(C)補正制御区間に関し、本実施形態においては、図7の(B)ループ量制御区間を変形させたループ量制御を行う構成を用いた。本実施構成においては、図7の(C)補正制御区間のみ、第1の実施形態と動作が異なる。本実施形態では、図7の(C)補正制御区間で、図7の(B)(D)のループ量制御区間と同様にループ量制御を実施するが、図7の(A)固定速区間で読み取った戻り時間に応じて、最小値V(L)、最大値V(H)の少なくとも一方を変更する。これにより、一対のレジストローラ16を抜ける前にループ量を補正するような構成とした。
一般的に、ループ量制御においては、V(L)、V(H)の速度差を利用してループ量を所定の量に近づけようとするため、記録材のループ量はある程度の振幅を持って制御されている。具体的には、ループ量制御中のモータ速度がV(L)のときには、所定量よりも僅かに大きなループ量を持ち、V(H)のときには所定量よりも僅かに小さなループ量を持つ。よって、V(L)、V(H)の速度差が小さい中でループ量制御を実施できれば、ループ量の振幅は小さくなる。
ここで、V(L)、V(H)の速度を共に遅い設定にしてループ量制御を実施すると、ループ量が僅かに大きい側である程度の振幅を持ってループ量制御が実施さる傾向がある。また、V(L)、V(H)の速度を共に速い設定にしてループ量制御を実施すると、ループ量が僅かに小さい側である程度の振幅を持ってループ量制御が実施される傾向がある。本構成は、図7の(C)補正制御区間において、この傾向を利用することで、ループ量を補正する構成とした。
図7の(A)固定速区間で読み取った戻り時間が、基準範囲である160~180msである場合は、前述した距離Dが約1.5mmであり、設計値通りの検知位置であると判断し、式(1)(2)の設定のV(L)、V(H)でループ量制御を実施する。
また、戻り時間が180msより長い場合は、距離Dが約1.5mmより長く、設計値よりもループ量が小さくなるような検知位置であると判断し、V(H)を図7の(B)ループ量制御区間におけるV(H)から式(3)の関係になるように変更する。一方、V(L)は、式(4)に示すように、図7の(B)ループ量制御区間におけるV(L)から変更しない。このように、本実施形態では、図7の(C)補正制御区間において、
図7の(B)ループ量制御区間を変形させたループ量制御を行う(図7の(B)ループ量制御区間におけるV(H)、V(L)の少なくとも一方を変更する)。
本実施形態では 、図7の(C)補正制御区間におけるV(H)の速度設定を遅くすることで、ループ量制御下においても出来るだけ大きなループ量で振幅を小さくして制御することを狙った速度設定とした。
V(H)=V(N)×1.01 ・・・(3)
V(L)=V(N)×0.97 ・・・(4)
戻り時間が160msより短い場合は、距離Dが約1.5mmより短く、設計値よりもループ量が大きくなるような検知位置であると判断し、V(L)の設定を式(5)の関係になるように変更する。また式(6)に示すように、V(H)は速度変更を実施せずにループ量制御を実施する。式(1)(2)の速度設定に対して、V(L)の速度設定を速くすることで、ループ量制御下においても出来るだけ小さなループ量で振幅を小さくして制御することを狙った速度設定とした。
V(L)=V(N)×0.99 ・・・(5)
V(H)=V(N)×1.03 ・・・(6)
このように、一対のレジストローラ16を抜ける前のループ量を補正することで、一対のレジストローラ16を記録材後端が抜けたタイミングでのショックによる画像不良を抑制することができる。本実施形態の定量的な効果を、以下に説明する。比較例として、本実施形態に係る図7の(C)補正制御区間を備えない図4で示したループ量制御を実施した場合と、本実施形態(実施例3)に係る図7の(C)補正制御区間を実施した場合の画像不良の枚数を確認した結果を表3に示す。
表3に示すように、本実施形態の補正制御を適用することで、比較例に比べて、画像不良の発生枚数を低減することができた。また、第1の実施形態と同様に、D=0.9mmで発生した画像不良も視認が困難なレベルであり、実用上問題ないレベルであった。なお、上記の確認時における図7の(B)ループ量制御区間の定着モータMの平均回転数は、実施形態1、2同様、608rpmであった。
また、D=0.9mmのときの図7の(C)補正制御区間における定着モータMの平均回転数は614rpmであり、図7の(B)ループ量制御区間よりも速い速度で記録材Sを搬送できている。これにより、一対のレジストローラ16を記録材後端が抜けるタイミングでは、狙い通り、検知位置よりも小さいループ量にすることができたと考えられる。
また、D=2.1mmのときの図7の(C)補正制御区間における定着モータMの平均回転数は595rpmであり、図7の(B)ループ量制御区間よりも遅い速度で記録材Sを搬送できている。これにより、一対のレジストローラ16を記録材後端が抜けるタイミングでは、狙い通り、検知位置よりも大きいループ量にすることができたと考えられる。
以上示したように、本実施形態の構成により、一対のレジストローラを抜ける前の転写定着間のループ量を補正することができ、抜けショックによる画像不良の発生を低減することができる。
なお、本実施形態においても、一対のレジストローラを記録材後端が抜けるタイミングの画像不良に対して、一対のレジストローラを抜ける前のループ量を補正する構成を用いたが、他の搬送部材においても、本実施形態の構成を適応することができる。具体的には、給紙ローラ14、一対の搬送ローラ15を記録材後端が抜けるショックによる画像不良が発生する場合には、給紙ローラ14、一対の搬送ローラ15を記録材後端が抜ける前にループ量を補正するような構成としても良い。
また、記録材先端が一対の排紙ローラ20に突入するショックによる画像不良が発生する場合も同様に、記録材先端が一対の排紙ローラ20に突入する前にループ量を補正するような構成とすれば良い。即ち、本構成の効果は、搬送部材の種類や場所によって限定されるものでは無い。
また、本実施形態では、戻り時間に応じて定着モータMのループ量制御の設定速度を変更することで、ループ量を補正する構成を用いたが、第1、第2の実施形態と同様に本構成の効果はループ量制御を実施するモータの位置によって限定されるものではない。すなわち。2次転写ローラが別途駆動源(モータ)を備える場合でも適用できる。要は戻り時間に基づいて、記録材の先端より下流側が搬送されるときのループ量を所定ループ量(設計上のループ量)に近づけるように、転写ニップ部と定着ニップ部のいずれか一方における記録材の搬送速度をモータの回転速度で制御するものであれば良い。
(変形例1)
上述した実施形態において、戻り時間を取得する時間取得手段と、戻り時間に基づいて所定ループ量となるように記録材の搬送速度を制御する制御部とは、CPU26(図1)が両方の機能を有する構成としても良い。あるいは、時間取得手段と制御部とが、別部材として機能分担する構成としても良い。
そして、上述した実施形態において、第1の区間(期間)である(A)固定速区間で取得された戻り時間を第3の区間(期間)である(C)補正制御区間で反映し、第2の区間(期間)をループ量制御区間とした。しかしながら、これに限られず、第2の区間も第3の区間と同じ(C)補正制御区間としても良い。
(変形例2)
上述した実施形態では、図7において第1の区間(期間)を「固定速区間」として、記録材の先端が搬送される所定搬送速度を一定速度としたが、本発明はこれに限らず、所定搬送速度として所定の速度分布形状を備えた搬送速度としても良い。要は、記録材の先端が所定搬送速度で搬送されるときのループ量検知器の出力がオン、オフの一方から他方を介して前記一方に戻る時間(戻り時間)を取得することができれば、速度分布形状は任意のもので構わない。
(変形例3)
上述した実施形態では、透過型のループ量検知器を用い、ループ量検知器の出力がオフ(遮光状態)からオン(透過状態)を介してオフ(遮光状態)に戻る時間を戻り時間として取得したが、本発明はこれに限られない。すなわち、反射型のループ量検知器を用い、ループ量検知器の出力がオン(反射光あり)からオフ(反射光なし)を介してオン(反射光あり)に戻る時間を戻り時間として取得しても良い。すなわち、ループ量検知器の出力がオン、オフの一方から他方を介して前記一方に戻る時間を取得すれば良い。
(変形例4)
上述した実施形態では、フラグとセンサを備えるループ量検知器31におけるセンサとして光量センサを用いたが、光量以外を検知するセンサを用いても良い。
また、記録材の先端が所定搬送速度で搬送されるときのフラグおよびセンサによる、すなわちループ量検知器によるループ検知のずれ量を取得する取得手段として、戻り時間を用いたが、これ以外を用いることもできる。