以下、図面を参照して、本発明をより具体的に例示説明する。
図1に示す本発明の一実施形態である金属ガスケット1は、1枚の金属板からなる金属基板2を有しており、図3に示すように、内燃機関(エンジン)のシリンダブロック31とシリンダヘッド32との間に挟まれるように装着されて、燃焼ガス、並びに冷却水及び潤滑油等の液体のリーク(漏出)を防止するためのものである。
ここで、本願の金属ガスケット1が介装される内燃機関は、シリンダブロック31とシリンダヘッド32とを備える。シリンダブロック31には、筒状のシリンダライナ33が設けられている。シリンダライナ33を含むシリンダブロック31は、一体成型により形成することができる。また、シリンダヘッド32も一体成型により形成されたものとすることができる。なお、シリンダブロック31及びシリンダヘッド32の成形方法は特に限定されない。
図3の符号34aは、冷却水が通過するウォータージャケット34の内側壁面であり、符号34bは、ウォータージャケット34の外側壁面である。また、符号33aは、シリンダライナ33の孔の内周面である。
シリンダブロック31におけるウォータージャケット34の外側壁面34bと、シリンダブロック31の外壁面31aとの間には、潤滑油を通すためのオイル孔(図示省略)、及び締付けボルトB(図5参照)のためのボルト孔35が複数個設けられている。
シリンダヘッド32は、金属ガスケット1を挟んでシリンダブロック31の上方に重なるように配置される。シリンダヘッド32は、シリンダライナ33の上方に配置される燃焼室壁面32aを有する。また、シリンダヘッド32には、シリンダブロック31のウォータージャケット34、オイル孔及びボルト孔35にそれぞれ対応する位置に、ウォータージャケット36、オイル孔及びボルト孔37が設けられている。
本実施形態の金属ガスケット1を構成する金属基板2は無垢の1枚の金属板からなり、例えば基板全体を覆う薄い軟質ゴム材等のようなコーティングが施されていないものである。
金属ガスケット1は、シリンダライナ33に対応する位置に設けられたシリンダボア孔3(以下、単に「ボア孔」とも称する。)を有する。また、金属ガスケット1は、シリンダブロック31及びシリンダヘッド32に設けられたウォータージャケット34、36に対応する位置に設けられた冷却水孔4(液体孔)を有する。また、金属ガスケット1は、シリンダブロック31及びシリンダヘッド32に設けられたオイル孔に対応する位置にあるオイル孔5(液体孔)、及びボルト孔35,37に対応する位置にあるボルト孔6を有する。また、金属ガスケット1は、タイミングチェーン通過用空間に対応する位置にあるチャンバ孔7を有し、チャンバ孔7は、金属ガスケット1の外縁部の一部を構成する。
また、金属ガスケット1は、金属基板2の縁部を折返して形成された第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13を有し、金属基板2における第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13以外の平坦な部分を本体部10とする。第1折返し部11は、ボア孔3を取り囲むように、ボア孔3の内縁部に沿って設けられ、第2折返し部12はボルト孔6を取り囲むようにボルト孔6の内縁部に沿って設けられ、第3折返し部13は金属ガスケット1の金属基板2の外縁部に沿って設けられている。
第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13はそれぞれ、金属基板2の縁部を折り返して形成されており、金属基板2を構成する金属板2枚分の厚さとなるように構成されている。すなわち、第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13はそれぞれ、金属基板2の内縁部または外縁部を実質的に隙間なく2重に折ることで形成される。第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13をそれぞれ構成する上下に重なる板の間には他の部材が介在しない。
また、金属ガスケット1は、金属基板2における本体部10の上面及び下面から突出するように設けられた第1シールリング21、第2シールリング22、第3シールリング23、及び第4シールリング24を備える。第1シールリング21は、ボア孔3の周囲を全周にわたって取り囲む(囲繞する)環形状に形成されている。第1シールリング21は、3個のボア孔3をそれぞれ独立して取り囲むように配置されている。なお、3つの第1シールリング21は、それぞれ完全に独立している必要はなく、隣接する2つの第1シールリング21の間の間隔が狭小な部分においては、当該狭小部分において隣接する2つの第1シールリング21を合体させてもよい。第1シールリング21は、第1折返し部11の近傍(外周側)で当該第1折返し部11に沿うように配置されている。第2シールリング22は、全て(本例では3つ)のボア孔3及び全て(本例では17個)の冷却水孔4を外側からまとめて取り囲むように配置されている。第2シールリング22は、第1シールリング21との間に、ウォータージャケット34に沿って形成された複数の冷却水孔4を取囲むように配置されている。第3シールリング23は、5つのオイル孔5をそれぞれ独立して取り囲むように配置されている。第4シールリング24は、チャンバ孔7の内縁部に設けられた第3折返し部13に沿って、第3折返し部13に隣接して配置されている。第1シールリング21、第2シールリング22、第3シールリング23、及び第4シールリング24は、金属基板2の両面に形成されている。
金属基板2に設けられた第1折返し部11は、各ボア孔3の内周縁部を上方に立上げた後、径方向外側に45度程度カールさせ、最終的に平坦になるように折返して形成される。また、第1折返し部11は、平面視においてシリンダブロック31とシリンダヘッド32とが重なり合う重合面の範囲内に配置されるように構成されている。つまり、第1折返し部11は、図3に示すシリンダライナ33の内周面33aよりも径方向内側(シリンダライナ33の中心軸側)に突出しないように配置される。これにより、第1折返し部11の最大の厚さを有する部分の上面及び下面全体が、それぞれシリンダヘッド32の下面とシリンダブロック31の上面に当接することとなる。
第2折返し部12は、図3に示すように、ウォータージャケット34の外側壁面34bから、シリンダブロック31の外壁面31aに至る間に配置される。第2折返し部12は、各ボルト孔6を取り囲むように、各々のボルト孔6の内周縁部を上方に立上げた後、径方向外側に45度程度カールさせ、平坦になるように折返して形成される。第2折返し部12は、シリンダヘッド32とシリンダブロック31とが重なり合う重合面の範囲内に配置されるように構成されている。つまり、第2折返し部12は、図3に示すシリンダブロック31のボルト孔35の内周面、及びシリンダヘッド32のボルト孔37の内周面よりも径方向内側(中心軸側)に突出しないように構成されている。これにより、第2折返し部12の最大の厚さを有する部分の上面及び下面全体が、それぞれシリンダヘッド32の下面とシリンダブロック31の上面に当接することとなる。
第3折返し部13は、金属ガスケット1の外側輪郭形状を形成する金属基板2の外縁部の少なくとも一部を上方に立上げた後、内側に45度程度カールさせ、平坦になるまで折返して形成される。また、第3折返し部13は、シリンダヘッド32とシリンダブロック31とが重なり合う重合面の範囲内に配置されるように構成されている。つまり、第3折返し部13は、図3に示すシリンダブロック31の外壁面31a及びシリンダヘッド32の外壁面32bよりも外側に突出しないように構成されている。これにより、第3折返し部13の最大の厚さを有する部分の上面及び下面全体が、それぞれシリンダヘッド32の下面とシリンダブロック31の上面に当接することとなる。
図1のX-X線に沿う断面を表した図2に示すように、第1折返し部11の厚さ(最大厚さ)T1と、第2折返し部12の厚さT2と、第3折返し部13の厚さT3とは全て同一(つまり、T1=T2=T3)となっている。
第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13の厚さ方向の中心を通るラインL1は、金属基板2の本体部10の厚さ方向の中心と同一面上に位置している。
図2の断面図に示すように、本体部10の上面の高さを示すラインL4と、第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13の上面の高さを示す上面ラインL2との距離(金属基板2の厚さ方向の距離)T4は、本体部10の下面の高さを示すラインL5と、第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13の下面の高さを示す下面ラインL3との距離(金属基板2の厚さ方向の距離)T5に等しくなっている。つまり、T4=T5の関係にある。また、本体部10の上面から、上面ラインL2までの距離(高さ)T4と、本体部10の下面から、下面ラインL3までの距離(高さ)T5とは、金属基板2の板厚の2分の1である。
第1シールリング21の上面側の高さT6(金属基板2の本体部10上面からの高さ)と、下面側の高さT7(金属基板2の下面からの高さ)は同一(つまり、T6=T7)となっている。
第2シールリング22の上面側の高さT8(金属基板2本体部10上面からの高さ)と、下面側の高さT9(金属基板2の下面からの高さ)は同一(つまり、T8=T9)となっている。第3シールリング23、及び第4シールリング24の高さは、第2シールリング22の高さT8と同一とすることができる。
金属基板2は、例えばステンレス鋼、アルミ材やアルミ合金、銅や銅合金等の金属板で形成することができるが、実施例としてはステンレス鋼を使用した。その理由としては、熱伝導性確保にはアルミ材やアルミ合金、銅、銅合金等が有利だが、内燃機関燃焼時の高温及び振動条件下を考慮して、シリンダヘッド用金属ガスケットに多用されて長年の実績を持つステンレス鋼を用い、且つ、折返し部11~13を形成するための深絞り加工性も重視して冷間圧延ステンレス鋼SUS-304材を用い、その基材硬度はJIS規格におけるビッカース硬さ(HV)190を用いた。また、良好な熱伝導性を確保するために、引用文献2等に記載された軟質ラバー等を基材の表面には施さず、且つ、全く表面処理をしない材料を用いた。
ここで金属基板2を構成する冷間圧延ステンレス鋼SUS-304材の板厚は、シールリング21~24の使用時の圧縮性や復元性を確保するために1mmとした。
本例の金属ガスケット1は、3個のボア孔3を有し、それぞれのボア孔3を取り囲むように第1折返し部11が形成されている。それぞれの第1折返し部11の外側には第1折返し部11を取り囲むように第1シールリング21が形成されている。
第1シールリング21の外側には、ボア孔3の冷却効果を考慮した位置に冷却水孔4が複数形成されている。複数の冷却水孔4及びシールリング21を取囲むように一本の連続した第2シールリング22が形成されている。第2シールリング22の周囲を取り囲むように、ボルト孔6が間隔を空けて8個形成されている。
8個のボルト孔6をそれぞれ取り囲むように第2折返し部12が形成されている。また、ボルト孔6の近傍には、オイル孔5が5個形成されている。5個のオイル孔5をそれぞれ取り囲むように第3シールリング23が形成されている。また、金属ガスケット1は、タイミングチェーン通路用空間に対応するチャンバ孔7を有し、チャンバ孔7を取り囲むように第3折返し部13が形成されている。第3折返し部13の外側には、第4シールリング24が形成されている。
ここで、金属基板2の外側輪郭形状8は、少なくとも平面視でシリンダブロック31とシリンダヘッド32とが重なりあう重合面よりも内側に位置するように形成されている。すなわち、金属基板2は、平面視において、シリンダヘッド32及びシリンダブロック31相互の重合面の外側に露出しないように構成されている。外側輪郭形状8を構成する金属ガスケット1の外縁部に沿って、第3折返し部13が間欠的に複数個設けられている。
ここで、図4は、金属基板2の折返し部11~13を形成した後に行われる金型を用いた立上げ加工(プレス加工)の様子を示している。図2に示す上記の高さT4が高さT5と同一となるように、すなわち、折返し部11~13の厚さ方向中心と本体部10の厚さ方向中心とが全て同一平面上(ラインL1上)に配置されるように加工する。図4の立上げ金型40は、上型41、下型42共に凸型形状をしていて、凸部の高さは上下共に、金属基板2の板厚の半分の高さであり、本実施形態の場合は、加工終了時においてT4とT5の高さが共に0.5mmになるように形成されるが、これに限られない。
ここで、第1シールリング21の材料は、具体的な材料としては特に限定されないが、安価で成形が容易であること、及び、シリンダヘッド32とシリンダブロック31との間に金属ガスケット1を挟んで締結する際に、締付けボルトBの締結荷重を小さくする観点から、弾性材料であることが好ましく、特にゴム状弾性材料であることが望ましい。具体的に、本例の第1シールリング21の好適な材料としては、耐熱性、耐オイル性、耐水性が求められ、特に耐熱性を重点的に考慮すると、シリコーンゴム(VMQ)、フッ素ゴム(FKM)等が好適である。なお、金属基板2上への一体成型や二次加硫をする上で、全てのシールリング21~24を同一材料で形成するために、フッ素ゴム(FKM)を使用した。
第1シールリング21は、シリンダブロック31とシリンダヘッド32との間のボア孔3から燃焼ガスが漏れるのを防止するものであって、各ボア孔3の周囲に、それぞれ独立して設けられている。第1シールリング21は、第1折返し部11と重ならないように設けられている。詳細には、図1、2に示されるように、金属基板2の上下面の第1折返し部11の近傍に沿って3個独立して設けられ、金属基板2の板厚中心線L1に線対称となる位置で、図2におけるT6=T7を満たすように設けられている。また、第1シールリング21は、第1シールリング21の圧縮後高さ(T1、T2、T3)が0.5mmであるから、初期(成型時)の高さは0.65mmに設定した。
第1シールリング21の金属基板2への形成方法は、例えばフッ素ゴム(FKM)を使用し、金属基板2と一体成型する方法があるが、これに限定されない。具体的には、図6に示すように、第1シールリング21が位置するラインL4が通る金属基板2上に連結孔51が貫通しており(図6)、第1シールリング21は連結部52を介して上下に連続して形成されている。
すなわち、連結孔51は第1シールリング21を加硫成形する際に、金属基板2上の一方に充填した成形用ゴム材を反対側の金属基板2上まで連続して流し込むためのものである。これにより、上下の第1シールリング21は、連結部52を介して互いに拘束されるので、接着性も強固になる。連結孔51は、第1シールリング21に沿って適当な間隔で複数形成されている。
ここで、第2シールリング22、第3シールリング23、及び第4シールリング24の材料としては、具体的な材料は特に限定されないが、安価で成形が容易であること、及び、シリンダヘッド32とシリンダブロック31との間に金属ガスケット1を挟んで締付けボルトBで締結する際に(図5参照)、締付けボルトBの締結荷重を小さくする観点から、弾性材料であることが好ましく、特にゴム状弾性材料であることが望ましい。また、好適な材料としては、耐熱性、耐オイル性、耐水性が求められるが、特に第2シールリング22、第3シールリング23、及び第4シールリング24においては耐オイル性、耐水性を重点的に考慮すると、ニトリロゴム(NBR)、水素化ニトリロゴム(HNBR)、フッ素ゴム(FKM)等のゴム状弾性材料等が好適である。本例では、金属基板2上への一体成型や二次加硫をする上で、全てのシールリング21~24の条件を合わせるために、フッ素ゴム(FKM)を使用した。また、シールリング21~24の設置方法は上述の一体成型以外にパターン印刷等も好適だが、場合によっては、成形品を後付けすることも可能である。
第2シールリング22は、冷却水孔4からの冷却水の漏れを防止するものであり、ボルト孔6の内縁部に形成された第2折返し部12と重ならないように設けられている。第2シールリング22は、金属基板2に設けられた3個の第1シールリング21、及び平面視メガネ状のウォータージャケット34に沿って形成された複数個の冷却水孔4の全域を取り囲むように配置されている。第2シールリング22は、上下方向(金属基板2の厚さ方向)に対称となるように金属基板2の厚さ方向にそれぞれ突出する形状であり、第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13の上面ラインL2及び下面ラインL3よりもそれぞれ突出している(図2参照)。
第3シールリング23は、オイル孔5の周囲を取り囲むように配置され、オイル孔5からのオイル漏れを防止するものである。第3シールリング23は、ボルト孔6の内縁部に形成された第2折返し部12、及び金属基板2の外縁部に形成された第3折返し部13に重ならないように配置される。
第4シールリング24は、チャンバ孔7からのオイル漏れを防止するものであって、第2折返し部12、及び、第3折返し部13と重ならないように、チャンバ孔7近傍の第3折返し部13に沿って配置されている。本例の第4シールリング24は、チャンバ孔7とウォータージャケット34間の隙間が狭く、特に間隔が狭小な部分においては、第2シールリング22と第4シールリング24とを狭小部分において合体させる手法を用いたが、これに限定されるものではなく、チャンバ孔7とウォータージャケット34間の隙間が十分に広い場合は、それぞれ別体としてもよい。第2シールリング22、第3シールリング23、及び第4シールリング24の圧縮時(図5参照)の高さ(T1、T2、T3)は0.5mmであることから、初期(成型時)の高さは0.65mmに設定している。
第2シールリング22、第3シールリング23、及び第4シールリング24の金属基板2への形成方法は、例えばフッ素ゴム(FKM)を使用し、金属基板2と一体成型する方法があるが、これに限定されない。各シールリング22、23、24が位置する金属基板2上には、図6に示すような連結孔51が貫通しており、各シールリング22、23、24は連結部52を介して金属基板2の上下に連続して形成されている。すなわち、連結孔51はシールリング22、23、24を加硫成形する際に、金属基板2上の一方に充填した成形用ゴム材を金属基板2の反対側に流し込むためのものである。これにより、上下のシールリング22、23、24は、連結部52を介して互いに拘束されるので、接着性も強固になる。連結孔51はシールリング22、23、24に沿って適当な間隔で複数形成されている。
図2に示すように、第1シールリング21は、略台形形状をしていて、台形の上面は、第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13の上面ラインL2よりも突出している。さらに、第1シールリング21は、台形の上面部に半円形状に突出するビード部を設けた形状とした。第1シールリング21の断面形状は、金属基板2の本体部10の厚さ方向の中心線L1に対して線対称であり、第1シールリング21の上面側の高さT6(本体部10の上面からの高さ)と、下面側の高さT7(本体部10の下面からの高さ)は同一(つまり、T6=T7)となっている。
第1シールリング21以外のシールリング22、23、24は、第1シールリング21よりも幅が小さい略台形形状をしていて、台形の上面は、第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13の上面ラインL2よりも突出しており、さらに、台形の上面部に半円形状に突出するビード部を設けた形状とした。シールリング22、23、24の断面形状は、金属基板2の本体部10の厚さ方向の中心線L1に対して線対称であり、シールリング22、23、24の上面側の高さT8(金属基板2の上面からの高さ)と、下面側の高さT9(金属基板2の下面からの高さ)は同一(つまり、T8=T9)となっている。
第1シールリング21は、他のシールリング22、23、24と高さは同一であるが、他のシールリング22、23、24よりも幅が大きくなっており、したがって、第1シールリング21は、他のシールリング22、23、24よりも断面積が大きくなっている。この断面形状の違いは、シールリング材のボリューム差を利用して、燃焼ガスやオイル、冷却水の発生圧力差を吸収しようとするものである。すなわち、シールリング21、22、23、24と、シリンダヘッド32及びリンダブロックCBとの接合面が、折返し部11、12、13の上下面の高さまで圧縮され、同一高さの締結状態になった時点で、シールリング21、22、23、24の圧着状態に差を持たせて、ボア孔3の高圧燃焼ガスのシール効果を高めるためである。本例では、第1シールリング21の幅を他のシールリング22、23、24よりも大きくすることで、第1シールリング21のシール効果を高めているが、これに限られず、同一の断面形状としてもよいし、逆に第1シールリング21の幅を他のシールリング22、23、24よりも小さくしてもよい。第2シールリング22、第3シールリング23、及び第4シールリング24の形状も特に限定されず、それぞれ異なる形状としてもよい。
上述のように、本実施形態の金属ガスケット1にあっては、金属基板2に設けた第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13の厚さ(T1、T2、T3)が全て同一であり、それぞれの上面ラインL2及び下面ラインL3も同じ高さとなっている(同一平面上に位置する)。これにより、エンジン運転時及び停止時間の熱膨張によるシリンダヘッド32及びシリンダブロック31のスラスト方向の動きに対応することができ、また、エンジン実働時の爆発燃焼時のシリンダヘッド32とシリンダライナ33の口開きを防止することができる。すなわち、シリンダヘッド32の締付けボルトBの締付トルクをやや高めに設定しても、金属基板2に設定した折返し部11~13の高さは、ラインL2及びL3において一定であり、従来の金属ガスケットのようにシリンダライナ側のフルビードを軸としてハーフビード側に曲がるといったことがない。すなわち、本実施形態では、シリンダヘッド32およびシリンダブロック31がラインL2、L3の高さにおいて水平に締付けられることになり、多少の締付けトルク変動には影響を受けず、ボア孔3の変形は大きく改善される。
また、シールリング21~24は軟質シールリングであり、ゴム状弾性部材で形成されているため、ミクロシール効果も有している。これにより、従来の金属ガスケットのように金属基板にコーティングしていた薄いゴム塗膜を設ける必要がないので、ゴム塗膜による熱伝導性低下を防止することができ、高い熱伝導性を発揮することができる。
具体的に、第1折返し部11は、内燃機関の熱発生部であるシリンダライナ33の周囲を各々囲んでいるので、内燃機関の熱伝導性が極めて良好となる。同部分はガスシールするために、従来型の金属ガスケットではゴム塗膜が必須であったところ、本実施形態ではシリンダライナ上にゴム塗膜を必要としないため、確実な熱伝導効果が得られ、これにより、シリンダライナ33の熱歪を防止する上で大きな改善となる。
また、第2折返し部12は、その上面全体がシリンダヘッド32に当接し、下面全体がシリンダブロック31に当接するようにボルト孔6の周囲に設けられているため、ゴム塗装の無い第2折返し部12を通して、シリンダヘッド32とシリンダブロック31との間の熱伝導も大きく改善される。特にボルト孔6の近傍部分は、金属ガスケット1を挟み込んでシリンダヘッド32及びシリンダブロック31を確実に固定するため、金属ガスケット1の最大面圧が発生する部分であり、この部分にゴム塗膜を必要としないことで、より高い熱伝導効果が得られ、シリンダライナ33の熱歪を防止する上で大きな改善となる。
また、第3折返し部13は、金属ガスケット1の外縁部を内側に折り返して、シリンダヘッド32及びシリンダブロック31双方内部に位置するように設定しているので、ゴム塗装の無い第3折返し部13を通して、シリンダヘッド32及びシリンダブロック31双方の外縁部近傍の熱伝導効果も高めることができる。
金属基板2は、各折返し部11~13の厚さ方向の中心を通るラインL1が、本体部10の厚さ方向の中心を通るように形成されている。また、本体部10にフッ素ゴム(FKM)によるシールリング部21~24を一体成型したので、金属基板2の両面側における、折返し部11~13およびシールリング部21~24以外の部分には空隙が形成される。図10に示すように、本例では設計上0.5mmの空隙が、シリンダブロック31の上面およびシリンダヘッド32の下面と本体部10との間に、金属基板2の両面側に存在することになる。すなわち、従来の金属ガスケットでは得られなかった0.5mmの空隙が、ウォータージャケット34及び冷却水孔4の周囲に存在し、冷却水はウォータージャケット34を挟んだ第1シールリング21及び第2シールリング22に挟まれた全域に存在することになる(図10の破線矢印参照)。このような構成により、従来のような密着型の金属ガスケットでは得られなかった冷却水の流通が可能となり、シリンダヘッド32及びシリンダブロック31間における熱伝導効果の大きな改善が見込まれる。
ここで、組付け時や実働時の熱応力によるシリンダライナの歪は、ピストン摺動時に伴うフリクションの増大や、出力低下や燃費悪化等の原因を助長させる。また、それに付随して生じるオイル消費やブローバイガスの増大、摩擦損失の増大、ピストン打音等の軽減を達成するために、シリンダブロック31及びシリンダヘッド32に加わる荷重を分散させたが、上記問題への取組み大きく寄与したのは、第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13の存在である。また、折返し部11~13を中心に、金属ガスケット1における各部の高さを上述のT1~T9に設定したことで、金属ガスケット1をシリンダヘッド32及びシリンダブロック31間で締め付けた時(図5参照)に、両接合面間は極めてフラットな状態で締め付けられることになり、シリンダライナ歪から生じる問題点は軽減され、実働時にフリクションの少ない、極めてスムーズで静謐な実働が可能となった。
本発明における金属基板2は、一枚のSUS-304の金属板からなり、第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13を設けたことで他の金属箔等で構成される段差調整板も不要であるため、部品点数が削減される。また、金属箔を金属基板と一体化する場合には、箔が非常に薄いために取扱いが難しいが、本発明によれば、このような困難な工程が削減される。
また、第1折返し部11、第2折返し部12、及び第3折返し部13の加工は、金属基板2における各折返し部11~13を構成する縁部を同時に略垂直に立上げた後、カールさせ、また折返してフラット状態にする工程をゆうし、当該一連の工程は、プレス金型を用いた一連作業によって可能で、とりわけ新規な、複雑な作業工程を必要としない。
そして、折返し部11~13を形成した金属基板2の本体部10上に、ゴム状弾性材料を焼付け一体化してシールリング21~24を形成することで作業工程が終了となる。これにより、従来のようにフルビード及びハーフビード型を用いて金属板の一部分を折曲げて形成する作業工程を不要とすることができる。従来の金属ガスケットと比較して、部品点数の削減と相まって、大きな相違は金属基板2のミクロシール用のゴムを薄くコーティングする必要がないことである。ゴムによるコーティングは、ゴム材のヒビや剥離の問題点解消のために、ゴム材と金属板との強固な接着力の確保、及び、金属板上に一定膜厚(0.025mm程度)をむらなくコーティングする必要上からかなり大きな自動化ラインが必要となる。また、金属基板両面にコーティングされたゴム層は、金属ガスケットに要求される熱伝導性能を阻む最も大きな因子であり、このゴム層を無くすことは、熱伝導性能向上、及び、作業工程削減という利点がある。
発明者は、金属ガスケット1の構造において、シリンダライナ歪の状況を確かめる為に、「社団法人自動車技術会 学術講演会前刷集9306200「メタルヘッドガスケット耐久信頼性の単体評価手法」(以下、参考文献という)を基に、シリンダライナ歪量の確認試験を行った。
上記参考文献は、金属ガスケットの燃焼ガスシール性能評価確認の一手法を開示したもので、従来、金属ガスケットのシール性能評価確認は、実機のシリンダヘッド及びシリンダブロックに金属ガスケットを挟み込み、これを締付けボルトBで締付けた時の、シリンダライナ内壁に貼付した歪ゲージの示す歪量から金属ガスケットのシール性能を知ろうとするものである。
当該手法は、ホーニング仕上げ時は真円だったシリンダライナの内周縁部が、シリンダライナ上部の面が金属ガスケットで押圧されることによって真円から略ひし形状に変化する際の歪を応用したもので、「歪量=シリンダライナ歪量」として捉え、かつ、「シリンダライナの歪量=燃焼ガスシール性能」として金属ガスケットのシール性を確認しようとするものである。
発明者はここで上記試験を行うにあたり、効果確認試験用の実施例と比較例をそれぞれ制作した。実施例として、上述の図1に示す金属ガスケット1を用いた。また、比較のために制作した比較例1~3の金属ガスケットの各概要は以下の通りである。
比較例1の金属ガスケット100は、板厚0.20mmのバネ鋼用SUS301-H材に特許文献2に記載されたゴム塗装を施し、図9(a)の断面図に示すように、フルビード102及びハーフビード103を加工した金属基板101を対向配置で2枚重ねたものである。金属ガスケット100は、フルビード102及びハーフビード103の頂点部を突き合わせた構成であり、段差調整板を持たない構成となっている。
比較例2の金属ガスケット200は、板厚0.20mmのバネ鋼用SUS301-H材に特許文献2に記載されたゴム塗装を施し、図9(b)の断面図に示すように、フルビード202及びハーフビード203を加工した金属基板201と、金属基板201に固定された板厚0.05mmの段差調整板204とを備えるものである。段差調整板204は、金属基板201にカシメ加工により固定されており、図9(b)の符号205は、カシメ部である。
比較例3の金属ガスケット300は、板厚0.20mmのバネ鋼用SUS301-H材に特許文献2に記載されたゴム塗装を施した金属基板301に、実施例の金属ガスケット1と同様のボア孔、冷却水孔、オイル孔、ボルト孔、チャンバ孔のみをカット加工したものである。また、金属ガスケット300は、図9(c)の断面図に示すように、段差調整板、フルビード及びハーフビードを持たないフラットな1枚の金属基板301で構成されている。この比較例3は、折返し部やビード部等の厚肉部分によるシール性能及び効果をキャンセルした比較例として構成した。
以下に、上記の実施例及び比較例を用いたシリンダライナの歪量測定について説明する。図8は、試験結果を示すグラフである。当該グラフ上の横軸はシリンダヘッド32のボルトの締付トルクで、グラフ右側に向かうほど金属ガスケットを締付けるシリンダヘッドボルトの締付トルクが大きいことを意味する。また、縦軸は各締付けトルクでの歪ゲージが示した歪量である。当該歪ゲージが示した歪量は、シリンダライナの内壁における、ライナの上面部から深さ40mmの位置において、周方向に均等に貼付した8個の歪ゲージが示した歪量を平均したものである。当該歪はシリンダライナの上面部が押圧されることにより発生するから、歪ゲージの示す歪度は、シリンダライナの歪量に相当すると考えることが出来る。
図8のグラフに示す実施例及び比較例1~3の線は、横軸に示す各締付けトルク時の歪ゲージが示した歪量の測定結果であって、段差調整板無しの比較例1と、段差調整板で高さを調整した比較例2とを確認すると、シリンダライナの変形は段差調整板の存在によって大きく左右されるのがわかる。
シリンダライナの歪量によって、燃焼ガスのシール性が変化するため、シリンダライナ歪量が大きいほど、燃焼ガスシール性能が良好であるものと考えられる。
シリンダライナ歪は、平面視において真円からひし形への4次変形でもあり、ひし形への変形が種々の問題点を生んでいることから、図8においてシール性良好(シリンダライナ歪量が大)となるほど、シリンダライナの真円度悪化すると考えることができる。
図8の比較例3は、1枚の金属基板301で構成され、段差調整板やフルビード及びハーフビードを持たないフラットな金属基板301であるから、実施例の性能を比較する上での好対照と思われ、この点において、実施例は比較例3と同様に極めて歪ゲージの歪発生量は少なく、シリンダライナの歪は殆ど進んでいないと考えられる。
比較例3において、平坦な1枚の金属基板301を締め付けることになるから、シリンダライナの歪は殆ど生じないと考えられるが、ある程度の歪発生が確認できるのは、締付けボルトを締付けることによりシリンダブロックに設けられた雌ネジ部の近傍のみが締付ボルトによって引上げられた故と思われる。
近年のガスケットの燃焼ガスシール性能向上への対策として、金属ガスケットの構造は比較例1から比較例2へと進化してきたが、図8から確認できるように、シリンダライナ歪量の増加(=歪ゲージの歪量増加)となって表れている。このことから、実施例はシリンダライナ歪が極めて少ない金属ガスケット1であることが確認された。
実施例の金属ガスケット1は極めて少ないシリンダライナ歪を達成し得たが、上記のシリンダライナ歪試験において、従来の考察から判断し得る良好な燃焼ガスシール性を有する金属ガスケットは、比較例2、比較例1の順である。すなわち、良好な燃焼ガスシール性を持つ金属ガスケットを求めようとすれば、シリンダライナ歪量を多くするようにしなければならない。その理由を、図8を参照しつつ説明すると、当業者がシリンダライナ歪(=歪ゲージの歪量)から推測する燃焼ガスの限界シール性能は、締付試験時規定締め付けトルクFgにおいて、必要なシール圧力に対応するシール限界線がP1である時、シール限界線P1を越える歪ゲージの歪量を持つ金属ガスケット構造にする必要がある。比較例1は、規定締付トルクFgにおいて歪ゲージの歪量はSp1でシール限界線P1を上回ることが出来ないから、当エンジンには使用できない。
ここで0.05mm厚の段差調整板を持つ比較例2は、締付トルクFg点において、歪ゲージの歪量はSp2でシール限界線P1を超えており、従って金属ガスケットの燃焼ガスシール性能は充たしていることになる。
ここで実施例は、締付トルクFgにおいて、歪ゲージの歪量はSp3の位置であって、エンジン実働時のシール性能を維持する上でのシール限界線P1には遠く及ばない結果である。
しかし、本発明の実施例の金属ガスケット1は、燃焼ガスシール用のフルビード加工や液体シール用のハーフビード加工を施さず、また段差調整板も取付けずに、シールを必要とする部分にはFKMからなるゴム弾性材料からなるシールリングを設けている。これにより、シリンダライナ歪が極めて少ない状態において各部位のシール効果を求めるものであるから、Fg点において、シール限界線P1には遠く及ばないとしても、これ自体設計時に意図したものであって何ら問題はない。
しかし、この時点においてシールリングのシール性能は未確認であり、シール性能の確保を担保しない限りシリンダヘッド用金属ガスケットとして使用できない。よって、後述する蒸気冷熱試験を行い、本願金属ガスケットのシール性能を担保することとした。
すなわち、発明者は、シール部にFKMからなるゴム弾性材料を採用したことによるシール性能、耐久性、及び、シリンダライナ歪を少なくするために、金属基板2に上記の第1折返し部11、第2折返し部12、第3折返し部13を設け、折り返し構造によるネガや構成評価を含め、エンジン実働時の冷熱状態を再現した蒸気冷熱試験を行うこととした。
蒸気冷熱試験の概要は以下の通りである。自動車用の内燃機関は、実働時と停止が繰り返されるために温度変化が大きく、その頻度も多く、その冷間熱間時の間でエンジン本体は膨張収縮を繰り返している。特に金属ガスケットはシリンダヘッドとシリンダブロック間に介挿して使用されていることから、上記の冷熱サイクルによるエンジンの膨張収縮を直接受けるため、使用の際には充分な冷熱下における確認が必要となる。実施例においても、シリンダライナ部の燃焼ガスリークの防止の他に、金属基板全体の変形防止に加えて、折返し部の変形や深絞り部の亀裂が無いこと、同時に、上記冷熱現象はFKMからなるゴム弾性材料にも亀裂やシール効果の持続が求められる。そこで、実機を用いたシリンダヘッドとシリンダブロックとの間に、実施例からなる金属ガスケット1を装着し、蒸気と冷水とを交互に両実機内のウォータージャケット34に流入して、上記の不具合の有無を確認した。
具体的に熱間設定は、高圧蒸気及びヒータ併用によって行われ、冷熱サイクルの冷間時用として冷却水を流通させていた電磁弁を閉じると同時に、高圧蒸気を一気にシリンヘッド側のインテークポート、排気ポートに設置した蒸気流入孔より高圧の蒸気をシリンダライナ部と対のシリンダヘッドに設定された燃焼室内に流入させると共に、更に蒸気の一部をシリンブロックに設けた流入孔よりウォータージャケット34内へ流入させるとともに、更に、金属ガスケットの冷却水孔を通してシリンダヘッドへ流入させて、エンジン本体全域を20~30分を規定時間として電熱ヒータと共に加圧加熱する。
具体的に冷間設定は、冷却塔を介した冷水によって行われ、蒸気加圧を電磁弁によって停止させると同時に加熱ヒータも停止し、冷水部の電磁弁を開き、シリンブロック側のウォータージャケット34の流入孔より一気に冷水を流入させると共に、金属ガスケットのウォータージャケット34の溝孔を通してシリンダヘッドへも冷水を流入させてエンジン全域を20~30分を規定時間として冷却する。そして、規定の加熱時間及び冷却時間の間を1サイクルとして、これを所定のサイクル数繰り返す方法である。この基本的な冷熱サイクルの熱間側の温度は高圧蒸気と熱ヒータを併用して180℃、冷間側は冷却塔経由温度、サイクル回数は600回を目標とし、サイクル回数は600回終了時点で下記の窒素ガス加圧試験を行い、所定の加圧圧力で窒素ガス漏れのないことを確認の条件とした。
上記の蒸気冷熱試験を終えたエンジン本体から、蒸気流入装置および冷水流入装置を取り外して、燃焼室、各オイル孔、ウォータージャケット34の溝孔及びチャンバ孔に、窒素ガスを送り込んでも、本願の金属ガスケットとエンジンとの接合面以外から漏れることのないようにエンジン本体の各部を完全に封止した後、一定圧力で加圧した窒素ガスを各部に送り込み、金属ガスケットと両シリンダ接合面間、及び隣り合うシリンダライナ間、各オイル孔、ウォータージャケット34の溝孔から漏れをエアーフローメータ確認した。なお、窒素ガスの加圧圧力は、シリンダライナ部燃焼室内には10MPa、オイル、チャンバ孔及び冷却水関連は1MPaを加えて確認した。
蒸気冷熱試験及び窒素ガス加圧試験の結果は以下の通りである。上述のシリンダライナ部燃焼室内には10MPa、冷却水、オイル及びチャンバ孔部には1MPaを加えて確認した結果、それぞれの加圧圧力において窒素ガスの漏れは確認されず各シールリングのシール性能の耐久性に問題がないことを確認した。また外観上において、冷熱下におけるシリンダヘッド及びシリンダブロックの収縮からシールリングの切れやクラック等、及び、ガスケット基板を折り返すことによって構成した折返し部の、深絞り部分のクラックや折返し部分の戻り変形等は確認されなかった。すなわち、上記の蒸気冷熱試験及び窒素ガス加圧試験はガスケット性能を確認する上で重要な試験であり、これを問題なく確認し終了できたことにより、本発明の金属ガスケットが、シリンダライナ変形を極力抑えた上で、かつ、高圧の燃焼ガスのシール及び冷却水やオイル等の液体のシールも同時に可能であることが実証できた。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、第1折返し部、第2折返し部は、平面視で全周にわたって連続した環状の構成に限らず、部分的に間欠した構成でもよい。また、シリンダボア孔、冷却水孔、オイル孔、ボルト孔、及びチャンバ孔の数やその配置等は特に限定されず、内燃機関を構成するシリンダヘッド及びシリンダブロックの形状等に応じて適宜変更可能である。また、シールリングの断面形状、及び平面視での形状等も適宜変更可能である。